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*このブログは名探偵コナン・ごくせん・花より男子・君に届け&ゲーム(ラブレボ・新撰組など)の二次小説のブログになります。
*このブログは管理人個人によるファンサイトです。 原作者や出版社等とは何の関連もありません。
*あくまでも管理人の二次世界の小説ですので、人によってはイメージに大幅なずれがある場合もございますのでご注意ください。
*閲覧については自身の責任においてお願いいたします。
*このブログについての誹謗中傷・クレームなどの書き込みはおやめください。
*このブログの無断転載複製を禁じます。
*万が一このブログをお読みになって不快感を感じられたとしても責任は負いかねますのでご了承ください。

恋の宿敵

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
「最近、蘭のやつ、変じゃねーか?」
 と、唐突に新一が言った。
「は?」
 きょとんとして新一を見たのはクラスメートで蘭の親友でもある鈴木園子だった。
 ここは学校の教室。時は朝。蘭は空手部の朝練で、まだ教室にやってきていなかった。
「変って?どういうこと?」
「どういうって・・・う~ん・・・なんつったらいいか・・・とにかく変なんだよ」
 園子は怪訝そうな顔をして、わけわかんない、という風に肩をすくめた。
「なんかこう・・・そわそわしてるっつうか・・・」
 必死に言葉を紡ぎ出そうとする新一をみて、園子も首を傾げてちょっと考えてみた。
「そわそわ、ねえ。そういや最近なんか楽しそうよ」
「楽しそう?」
「うん。たまにメールを見ちゃあニコニコしたりしてね」
 新一の顔に、一瞬動揺の色が走った。
「あら?あのメール・・・新一君からじゃないの?」
 園子がちょっとびっくりしたように言った。
―――ひょっとして、まずいこと言っちゃった?・・・
 と思っても後の祭りである。
「―――そのメール、いつきた?」
 平静を装いながら、新一が聞く。
「え・・・えーと・・・昨日新一君が目暮警部に呼び出されて、いなくなっちゃってから・・・かな。―――あ、あのさ、ほんとにあのメール、新一君からじゃないの?」
 と、恐る恐る聞いてみる。と、新一は仏頂面で、
「―――俺があいつにメール送るのは大体夜だよ。昼間、仕事してるときにメールなんかやってる暇 ねーよ」
 と言った。
「そっか―――。あたしが『いいわねー、ダンナからラブメール?』ってからかったら、あの子赤くなって『ちがうわよー』なんて笑ってたから、てっきり照れてるんだと思って・・・。ふーん」
 園子はちょっと意味深な含み笑いをした。
「何が言いたい?」
「べっつにー?ま、男からのメールとは限んないわよね。大阪の遠山さん・・・だっけ?彼女からかもしれないしィ。でもそれだったら赤くなったりしないか」
 園子が一人、ああでもない、こーでもないと言っているうちにチャイムがなった。そろそろ蘭もくるころだ。
「ま、がんばってね。あの子最近、特にきれいになってきたから、寄ってくる虫がウヨウヨいそうだし・・・。あの新出先生とか、ね」
 そう言って、最後に新一ににっと笑いかけてから、自分の席へと向かった。その後姿を苦虫を噛み潰したような顔でにらみながら、新一は心の中で毒づいた。
(園子の奴!何か俺に恨みでもあるのかよ)

―――それにしても、蘭は一体誰とメール交換してるんだ?―――
 新一がイライラと考えていると、蘭が教室に入ってきた。
「おはよう!」
 にっこり微笑みながら入ってくる蘭。新一は思わずその笑顔に見惚れていた。

―――あの子最近、特にきれいになってきたから―――

 さっきの園子の台詞を思い出す。そう、本当に蘭はきれいになった。昔からかわいかったしもてるほうだったが、最近特に・・・。新一と付き合っているということは皆知っているはずだが、それにもかかわらず蘭に言い寄ってくる 男がいるのだ。今だって、蘭の笑顔に見惚れているのは新一だけではなかったのだ・・・。
 蘭が、新一に気付いてにっこり笑う。

 その笑顔を独り占めしたい。他の誰にも渡したくない・・・。

 新一が蘭に話し掛けようとする前に、担任の教師が教室に入って来た。

―――チェッ・・・ま、いいか。後でも聞けるし・・・な。

 そう思い直して、改めて蘭の後姿を見た。「幼馴染」から「恋人」になって数ヶ月・・・。手を繋いだりする事にもようやくテレが無くなり、恋人らしくなってきたのだが―――

―――一体誰とメールなんか―――

 新一は心のもやもやを振り払うかのように首を振り、授業に集中することにした。
 その日の帰り、新一と蘭はいつものように手をつないで歩いていた。

―――結局、学校では聞けなかったな。園子の奴も側にいたし・・・でも・・・。

 3回。新一の勘が当たっていれば、少なくとも3回は蘭の携帯電話にメールが届いているはずだ。マ ナーモードにしている為、音は鳴らないが、それが振動した瞬間、蘭の体がそれに反応して一瞬動きを止める。が、すぐにそれを見ようとはせず、その後さりげなくトイレに立ったりするのだ・・・。

―――フン、見え見えだぜ。俺に隠し事をするなんて、いい度胸してんじゃねーか!

 蘭の家の前で、二人は足を止める。
「じゃ、また明日―――」
 そう言おうとする蘭の言葉を新一が遮る。
「ちょっと俺の家に来ないか?」
「―――ごめん、今日はお父さんに早く帰って来いって言われてるの」
 蘭がちょっと申し訳なさそうに言う。
「何か用事で?」
「うん。夜に、事務所で依頼者の人に会うことになってるんだけど、その前に夕飯、済ませちゃいたいからって・・・」
「そっか。じゃ、しょうがないな」
「ごめんね」
 ちょっと上目遣いで小首を傾げるその姿があまりにかわいくて、新一は思わず蘭を抱きしめ、その唇を奪っていた。
「―――っ」
一瞬びっくりして体を強張らせる蘭。だが、次第に力が抜けてゆき、その体を新一に預けていた。
 長く、深い口付け―――。 
 その甘さに酔い、このまま力づくで蘭を自分のものにしたい衝動に駆られる。

 ―――が、蘭の顔が息苦しそうに赤くなっていくのを見て、仕方なくその唇を放した。蘭の潤んだ瞳が新一を見つめる。
「蘭―――」
「何?」
「―――メール、誰から?」
「え!?」
 蘭は驚いて目を見開く。それはそうだろう。新一は構わずに続ける。「今日、携帯にメール来てたろ?誰から?」
 じっと目を見つめたまま聞く。蘭はちょっと慌てたように目をそらし、
「え、えっと、あの、か―――お母さんから!お母さんからよ!」
「―――ふーん」
 相変わらず蘭は嘘が下手だ。多分最初は『和葉ちゃんから』と言おうとしたのだろう。だが、もし 新一が平次にその話をしたらうそをついたのがすぐにばれてしまう。だから慌てて言い直したのだ。
 そんなことは名探偵でなくても容易に想像できた。
 だが蘭は、ばれているとは思いもしないようで、
「じゃ、もうわたし行くね」
 とにっこり笑って言った。
「ああ、じゃあな」
 新一も微笑んで、ちょっと手を上げた。蘭がくるりと新一に背を向けて階段を上がっていく。新一はそんな蘭の後姿を、見えなくなるまでじっと見つめていた・・・。

 その夜。
 毛利探偵事務所の3階・・・、蘭の部屋の窓を叩く者がいた。
 器用に窓枠につかまり、窓を叩くその男―――白いマントに白いシルクハット。口元には不適な笑み・・・そう、それは―――
「キッド!」
 窓を開けて、蘭がうれしそうに呼びかける。
「こんばんは、おじょうさん・・・。今夜は一段とお美しいですね」  と言って、キッドはニッと笑った。蘭はくすくす笑って、
「相変わらず気障ね」
 と言ったが、その顔はまんざらでもない様子。

 その様子を陰から見て、怒りに身を震わせているのは―――もちろん、新一だった。
 ―――なんでキッドが蘭のところに!?それに蘭のあのうれしそうな顔はなんだよ!?俺という彼氏 がいるのに!!

 ギリギリと歯を食いしばりながら見ている新一の目の前で、キッドと蘭はロミオとジュリエットよ ろしく、月明かりの下見つめあいながら談笑している。
 ふと、キッドの手が伸び、蘭の頬に触れた。新一の体がカッと熱くなる。

 ―――もう我慢できねー!!!
「キッド!蘭から離れろ!!」
 物陰から飛び出して叫んだ新一を、蘭が驚いて見る。
「新一!?どうして―――」
「やっぱり来ましたね。名探偵君」
 と言って、キッドはニヤッと笑ったのだった―――。

 「―――どういうことか、ちゃんと説明しろよ」
 新一が横目で蘭を睨みながら低い声で言う。
 場所は夜の公園。いくらなんでもあそこで喧嘩を始めるわけには行かず・・・。時間が時間だし、小五郎に気付かれたら面倒だ。それに―――“キッドの姿を他人に見られたらまずいから”という蘭の主張があったからだ。キッドをかばう蘭に苛立ちを覚えながらも、新一は仕方なく黙ってここまできたのだった。

 蘭は新一の視線に困ったような顔をした。
「まあそう睨むなよ。蘭が怯えてるぜ?」
 相変わらずキッドがニヤニヤしながら言う。
 その言葉に新一はむっとして、
「―――何でおめ―が蘭を呼び捨てにすんだよ」
 つかみ掛かりそうな剣幕に、蘭が慌てて間に入る。
「あ、あたしが良いって言ったのよ!」
 その言葉に、新一はますます不機嫌になる。
「ちゃんと―――説明するから、ね」
 蘭が新一をじっと見つめて言った。新一は渋々それに頷く。
「前に―――園子の家の船上パーティーで、キッドに眠らされたでしょ?」
「ああ」
 そういえばそんなことがあったな、と新一は思い出す。
「そのとき、私、キッドの素顔見ちゃったのよ」
「な!?」
「それが―――新一そっくりで―――わたし、新一がキッドなのかと思ってびっくりした・・・。でも、次の日、新一にそっくりな男の子を街
で見かけて―――その人がキッドなんだって分かったの」
「何で警察に言わなかったんだよ?」
「だって、証拠は何も無かったし・・・。それに、悪い人には見えなかったから、何か理由があって やってることなんだって思ったの」
 そう言って、蘭はキッドを見てにっこりと笑った。キッドも蘭に微笑みかける。新一はますます面 白くない。
「で!?」
 半ばヤケクソ気味に話の続きを促した。
「そのときは、それだけで―――何事も無かったの。それからは街で見かけることも無かったし。でも、新一が戻ってきて―――1週間くらいたったころかな。一人で歩いている時に、偶然遭ったのよ」


 ―――回想―――

 その時、蘭はちょうど細い道から大通りへと歩を進めたところだった。
 そして、怪盗キッドこと黒 羽快斗は、大通りから細い道へ曲がろうとしたところで―――二人はちょうど、真正面から向き合う ように、ばったり遭ってしまったのだ。
 ―――やベー!!
 快斗は内心物凄く焦った。―――が、そこは天下の怪盗キッド。表情には全く出さずそのまま通り 過ぎようとしたのだが、そのとき蘭の口から思いもよらない言葉が発せられたのだ。
「久しぶり!!」
 そう言って、蘭はにっこりと笑った。その言葉が自分に向けられたものとわかっていながら、快斗 はそれが信じられず、
「―――誰に言ってんの?」
 と、間抜けなことを聞いてしまったのだった。
「あなたキッドでしょう?」
 まるで普通に友達に話し掛けるように言われて、快斗は青くなった。 ―――ととと突然何を言うんだ、この女あ!!!
 考えるよりも先に、快斗は蘭の手を掴むと人通りの少ない細い道へと蘭を引っ張って行った。

「ちょっと痛いじゃない!」
 大通りからだいぶ離れたところまで来て、快斗はようやく蘭の手を放した。
「もう、なんなのよ?」
 蘭は訳が分からない、と言った風に頬をぷくっと膨らませて快斗を睨んだ。
「そっちこそ!なんだってあんなこと言うんだよ!?」
 と、快斗も負けじと蘭を睨み返した。
「あんなことって―――キッドって言ったこと?」
「他に何かあんのか?」
「だって、あなたキッドでしょ?船上パーティーでわたしを眠らせた―――」
「うわ――――――!!」
 突然快斗が大声を出したので、蘭が驚いて両手で耳を塞いだ。
「―――何よォ!びっくりするじゃない!」
「こ、こんな所でなんてこと言うんだ!誰かに聞かれたりしたら―――!」
 真っ赤になって怒る快斗を、きょとんとした顔で見ていた蘭は、暫しの沈黙の後、急にぷっと吹き 出したかと思うとクスクスと笑い出した。
「な、何がおかしいんだよ!?」
 快斗はますます顔を赤くして声を荒げた。
 ひとしきり笑った後、蘭は顔をあげ、快斗を見て、またにっこり笑った。
「ごめん、つい・・・素顔は案外かわいいんだなあと思ったらおかしくなっちゃって・・・」
「あ、あのなァ」
「ごめんね?」
 小首を傾げて、上目遣いで快斗を見つめる。その顔がやけにかわいくて、快斗は思わず赤くなって 顔を背けた。
 蘭はそんな快斗を不思議そうに見ている。

 ―――なんだか、こいつに怒るの馬鹿らしくなってきたぜ。
「―――どうして、今まで俺のこと黙ってたんだ?」
 少し落ち着いて、快斗が聞く。蘭は肩を竦め、
「だって、証拠、無いもの。それに―――眠らされる直前にチラッと見ただけだから、絶対っていう 確信が無かったし」
「けど・・・誰かに相談くらいしようと思わなかったのか?彼氏とか・・・」
「新一のこと知ってるの?」
「有名だからな」
「・・・そっか。でも、あの時は側にいなかったし・・・」
「いただろ?」
 快斗が、蘭を真っ直ぐに見て言った。
「―――やっぱり知ってるのね?コナン君が―――」
 そこまで言って、蘭は口をつぐんだ。
「―――まあね。気配みたいなもんがあるし。そう考えると全て辻褄が合うんだよ」
「そう。―――さすがね。でも、わたしはまだ、あの時知らなかったもの」
「全然?」
「―――疑ってはいたけど、確信は無かった。それに―――そうよ!あなた、新一にも変装してるでしょ?」
 急に思い出したように、蘭は快斗を睨んで言った。
「アハハ・・・バレてた?」
「もう。おかげでこっちは混乱しっぱなしよ」
「まァまァ・・・で?もう奴は元の姿に戻ったんだろ?」
「それも知ってるの?」 蘭が目を丸くする。
「何で俺のこと言わないんだ?」
 快斗がそう聞くと、蘭はそれには答えず、じっと快斗を見つめた。 不思議な瞳・・・優しくて、儚い、弱いけど、強い、きらきらと輝く宝石のような瞳に、吸い込ま れそうになる。
 快斗は胸の鼓動が早くなるのを感じて困惑した。
 青子に似てる。―――最初に見た時からそう思っていた。だからか?―――いや、ちょっと違うな。 似てるけど、ちがう。こいつにまっすぐな瞳で見つめられると―――なんだかドキドキしてしまうのだ。
「―――何か、理由があるんでしょう?あんなことをしている理由」
「―――どうしてそう思う?」
「あなたの目がとても優しかったから―――きっと、何か深いわけがあるんだと思ったの。園子から 聞いた怪盗キッドの話―――あれはあなたじゃない。いくらなんでもそんなおじさんじゃないもの。―――でも、あなたがあんなことをするのは、その昔のことも関係してるんじゃない?」
「・・・・・」
「別に答えなくっても良いわ。―――疑われるのは仕方ないと思うけど、わたしはあなたのこと、誰 にも言うつもりは無いわ。新一にも―――。もっとも、新一だったらそのうち気付くかもしれないけど・・・。それまでは黙ってるから」
 そう言って蘭は、にっこりと笑った。
「―――信用できない?」
 どう答えるべきか、快斗は悩んでいた。あの名探偵の彼女を、信用して良いものかどうか―――。
  だが、今まで誰にも言っていないというのも事実のようだ。それなら・・・これからも、言わないだろうか?
「どうしたら信じてもらえる?」
 蘭は小首を傾げて聞いた。
 その時、快斗の頭にある考えが浮かんだ。
「―――そうだな。交換条件っていうのはどう?」
 そう言って、快斗はニヤリと笑った。


「交換条件だって?」
 新一が訝しげに言った。
「そ。ま、そんな必要なかったかもしんねーけど、一応な」
 そう言って快斗は肩を竦めた。
「―――で?どんな条件なんだ?」
「新一―――怒らないで聞いてね?」
「―――俺が怒るようなことなのか?」
 蘭がちょっと困ったような顔をすると、快斗がすかさず言った。
「大丈夫だって、蘭。蘭は名探偵のことが心配なだけなんだからさ。それに、言い出したのは俺なんだし」
「―――で?何なんだよ?」
 新一がイライラと言う。
「ボディーガードだよ」
「ボディーガード?―――蘭のか?」
「ちがうちがう、名探偵のさ」
「は!?俺!?」
 新一は驚いて目を見開いた。
「そ。やっぱ探偵なんかやってると危険と隣り合わせだろ?特に“工藤新一”は有名な名探偵。逆恨 みされることだってあるだろうし、恋人としては心配だよな。でも、蘭がずっとおまえについて回る ことはできない。そこで、俺の出番ってワケ。―――おまえが警察に呼び出されたら、蘭がメールで 俺に知らせてくれることになってるんだ。で、俺はおまえの側で、気付かれないように見守ってるっ てワケ。途中経過なんかを、時々メールで送りながらね」
 ―――なるほど、それでメール・・・でも、ちょっと待てよ。今日、俺はずっと学校にいたぞ。
「・・・気付いちゃった?」
 キッドは楽しそうにクスクスと笑う。
「実は、メール交換したり、夜、直接蘭の家に報告に行ったりしてるうちになんか気が合っちゃってさ。用事が無くってもメール送ったり、会いに来たりするようになっちゃったんだよね」
 とキッドは悪びれもせずに言う。
「あの・・・黙っててごめんね、新一」
 蘭ははにかむように言った。ちょっと上目遣いで見るその表情はとてもかわいく、許してあげたい 気持ちにもなるのだが―――
「ボディーガードなんか必要ね―よ。余計なことすんな。―――それに、蘭が警察に言っちまったところで、どうにでも誤魔化すことができるだろ?何でわざわざ交換条件なんか―――」
「まーね。でも、そのほうが蘭が安心するんじゃないかと思ったんだよ。―――なんかほっとけない んだよなー、蘭ってさ」
 と、キッドが言うと、蘭はちょっと照れたように頬を染めた。
「ま、そーゆーワケだから、あんまり蘭を責めないでやってくれよ」
 キッドは新一にウィンクしてみせると、さっとマントを翻し
「じゃ、またな」
 と言って、二人に背を向けた。
「あ、おい!ちょっと待てよ!!」
 と新一が言ったときには、すでにキッドの姿は無かったのである。


 
「新一~、そんなに怒んないでよ~」
 ムスッとして腕を組んだままベンチに座り黙ってしまった新一に、蘭が一生懸命謝っている。
「でも、ね、キッドって悪い人じゃないんだよ。ちゃんと新一がどんな様子だったかわたしに報告し てくれて・・・わたしを心配させないようにしてくれたんだよ」
「―――それが大体気にいらねーっつってんだよ。俺に黙ってそんなこと―――」
「だって言ったら怒るじゃない」
「当たり前だ!!ボディーガードなんていらねーんだよ。それも、よりによって怪盗キッドが・・・ あいつは、泥棒なんだぜ!?」
「わかってるわよ・・・」
「どーだかな―――それに、最近はあいつが寄越すメールを楽しみにしてんじゃね―のか?今日、あいつが来た時だって妙に嬉しそうだったじゃねーか」
「そんなこと・・・」
「俺に隠れてあいつとこそこそ逢って・・・。ったく、どういうつもりなんだよ!」
 新一の怒りはなかなかおさまらない。
「ご、ごめんって・・・でも、別に話したりするだけだから・・・」
「当たり前だろ!?それ以上のことがあったら許さね―よ」
「そ、それに・・・キッド、好きな女の子がいるのよ」
「え?」
 蘭の言葉に新一が意外そうな顔をする。ようやく自分の方を見てくれたことにホッとし、蘭は微笑 みながら続けた。
「幼馴染の女の子でね、わたしにちょっと似てるらしいんだど・・・。キッドね、その子の話ばっかりするのよ。よく喧嘩するらしくって、その愚痴とか・・・うまくいってる時は、とっても嬉しそ うだし。ホント、普通の男の子よ。新一とも結構気が合うんじゃないかと思うんだけど・・・」
「ジョーダンじゃねーよ!!何で俺が―――」
 と、また怒って言ったが、キッドに好きな女の子がいると分かって、少しホッとしているようだった。表情が幾分やわらかくなって、蘭を見る。
「―――もう、隠してること無いだろうな?」
 じろっと蘭を睨む。
「うん。もう無いよ。―――ホント、ごめんね。もう隠し事しないから―――」
「絶対だぞ」
「うん、約束する」
 蘭はニッコリと笑って頷いた。
 夜の公園でほの暗い街灯の下、微笑む蘭はまるで白く輝く天使のように見えた・・・。

 新一は、そっと腕を蘭の肩に回すと、そのまま自分の方へ引き寄せ、静かに唇を重ねた。蘭もされるがままになっている・・・。
 徐々に深くなっていく口付け―――。蘭の舌に自分の舌を絡ませ、口の中を貪るように味わう。
 時々、蘭の口から漏れる甘い吐息と、甘い髪の匂いに新一の理性がだんだん溶かされていくのを感じた。
 が、しかし・・・
 ―――幾らなんでもここじゃまずいよな・・・。初めてなんだし、せめて俺の家とか・・・。そんなことを考えながら唇を放し、蘭の潤んだ瞳を見つめる。
「―――蘭、これから、俺んち来ない?」
「これから?」
 蘭が驚いて聞き返す。
「ああ―――。だめか?」
「う・・・ん―――。お父さんに黙って出てきちゃったし・・・。明日も学校あるでしょう?」
「・・・そうだな」
 新一はがっくりと肩を落とした。
「ごめんね」
 申し訳なさそうに、蘭が言う。
「いや、良いよ。そうだよな。平日はまずいよな、やっぱ―――。じゃ、週末にでも泊りに来いよ」
 なるべく明るく言う。実際、週末は蘭が新一の家へ泊りに行くことが多い。
 蘭もその言葉にニッコリ笑って、
「うん、分かった」
 と言ったのだった―――。


 蘭を家まで送っていき、新一が自分の家の門を開けたのはもう夜中の12時を回っていた。小さくため 息をつきつつ門を開け、中に入った時、ふと、後ろに人の気配を感じて振り向いた。
「よ、名探偵。さっきはどうもな」
キッドが不敵な笑みを浮かべ、門に寄りかかって立っていた。
「―――なんで、こんな物置いてった?」
 新一がジーパンのポケットから出したのは小さなカードだった。
 それには“今宵、あなたの大切な蘭の花を頂きに参ります”と言う内容が書かれていた。これを見 たから、新一はあんな時間に蘭の家まで行ったのだ。
「好きな子がいるんだろ?」
「蘭に聞いたのか。―――ただの幼馴染だよ。蘭が勝手に勘違いしてんだ」
「―――蘭のことはどう思ってるんだ?」
 キッドは、ニッと笑って新一を見返したが、その目は笑っていなかった。
「彼女は、俺の大切な宝石だよ。―――一緒にいると楽しいし、あの笑顔を見てると、ドキドキする ―――。できれば攫っちまいたいくらいだが―――」
 新一は、射るようにキッドを睨んでいる。キッドはさり気なくその視線をかわし、
「今はまだ、その時じゃないな。―――俺が欲しいのは蘭の心だ。無理やり奪うことはできない」
「蘭は渡せねーよ」
「ああ。でも、俺は諦めない。―――今日は、このまま隠しておくのは蘭が気の毒だったし、フェア じゃないと思ってね。今度行くときは予告状なんかださね―ぜ」
 と言って、キッドはニッと笑うと、門の上にふわりと見を躍らせた。
「じゃーな、名探偵。また会お―ぜ」
 新一が何か言おうとしたが、口を開いたときにはもう、キッドの姿はそこには無かったのである・・・。
「ちっ、かっこつけやがって・・・」
 一人呟くと、新一はため息をつきつつ、家の中へと入って行った。

「本当はぜーんぜんフェアじゃないんだよなァ」
 と言ったのは、工藤家の庭にある大きな木の天辺に立っているキッドである。
「あっちはすでに恋人同士・・・全く、あんな濃厚なキスシーン見せ付けやがって」
 キッドは公園での一部始終を見ていたのだ。キッドにとって、それは意外なほどショックな光景だ った。二人の関係はわかっていたはずなのに・・・。キッドの胸にジェラシーと言う名の炎が燃え上がっていた。今までに感じたことの無い、鈍い痛み・・・。青子に対する気持ちとは、明らかに違うものだった。
「だが、本当の勝負はこれから・・・。名探偵、覚悟しとけよ」


 こうして、戦いの火蓋は切って落とされた・・・。
 名探偵工藤新一と怪盗キッドの蘭をめぐる恋のバトルは、今、始まったばかり―――。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
快蘭新のお話です。
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混戦模様  1

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
「どうにか間に合ったな」

 新一は腕時計を見ながら呟いた。

 朝から目暮警部に呼び出され、先ほど事件を解決したところだった。学校へ続く道を、やや早足で歩く。―――蘭の奴、びっくりするかな。今朝、電話したときは俺が学校にいけないと知って、がっかりしていたみたいだし・・・。校売でパンでも買って、蘭と屋上で一緒にメシを食おう。

「よォ!名探偵、ずいぶんゆっくりの登校だな」

 この声は―――

 新一は、おもむろに顔をしかめ、振り向いた。

「んでおまえがこんな所にいんだよ?」

 そこに立っていたのは、ガクラン姿の黒羽快斗だった。

「ご挨拶だね。ちょっと用事があってね。これから学校に戻るとこだよ。新一は?何か事件か?」

「まあな」

 この二人、探偵と怪盗という関係の他に、蘭を巡る恋のライバルでもあった。今のところ、新一のほうがリードしているのだが・・・。

「ちょうどいいや。おまえに言っときたい事があったんだ」

 と、快斗が言った。

「言っときたいこと?」

「ああ。―――おまえの学校に、新出とかいう校医がいるだろ?」

「・・・なんでオメエが新出先生の事知ってんだよ?」

「蘭に聞いた」

 快斗はニッと笑って言った。途端に新一の鋭い蹴りが飛ぶ。それをひらっとかわして、塀の上に飛び乗った快斗。

「いきなり何すんだよ」

「っるせー!オメエまた蘭の家に行ったな」

「まあね―――」

「しかも夜だろ!?」

「7時くらいだよ」

「かわんね―よ!いいか、俺に断りも無くあいつのとこに行くな!!」

「へーんだ、こっちは夜しか会いに行けねーんだからしょうがね―だろ。そっちこそいつもいつも週末に蘭を独り占めしやがって、ずり―じゃねーか」

「俺は良いんだよ!」

「勝手なこと―――」

「おい、ちょっと待てよ。新出のことで話があるんじゃね―のか」

 と、急に思い出したように新一が言った。

「あ、そーだった。―――あいつ、気をつけたほうが良いぜ」

「どういう意味だよ?」

 新一が怪訝な顔をして聞く。

「この間、夕方ころ蘭の家に行ったら、蘭の奴、あいつの車に乗って帰ってきたんだぜ」

「な・・・にィ!?」

 サッと新一の顔色が変わる。

「そいつが帰っちまってから、蘭を捕まえて聞いたら、それが初めてじゃないって言ってたんだよ。今までも、新一が呼び出されていない時、部活で帰りが遅くなったりすると送ってくれてたらしいぜ」

「―――なんだよそれ、聞いてねーぞ」

「蘭は、一人で歩いてるところを偶然あの先生が車で通りかかるだなんて言ってたけど―――」

「そんなに何回も偶然遭うかよ!」

「だろ?俺もそう思ったんだけど、蘭の奴はあいつのこと信じちまってて―――っつーか、あの先生に下心があるとか、そんなことは思ってもいね―みて―なんだよな」

「あ・・・の鈍感女!!」

「何とかした方が良いんじゃね―のか?学校の中でのことは、俺じゃどうしようもないし。悔しいけ

どオメエに任せるしかね―んだよな」

「―――なるほどな。それで今日はわざわざここまで来たわけ?」

「それだけじゃねーけどな。ま、もうひとつは今日じゃなくても良かったんだけどさ。蘭のことが気になっちまって―――。んじゃ、そーゆーことで、頼んだぜ」

「ああ」

 という、新一の短い返事が終わるか終わらないかの内に、快斗の姿は見えなくなっていた。

「―――ったく、すばしっこい奴」

 呆れたように言ってから、再び学校へ向かって歩き出したが・・・なんとなく胸騒ぎがして、結局ほとんど全速力で学校に向かったのだった。


 学校に着き、乱れた息を整えつつ教室へ入っていくと、もう昼休みに入ってそれぞれ仲の良いグループで固まって、お弁当を広げている姿があった。が・・・蘭の姿が見当たらない。

「―――でさ、なんかイイ雰囲気で―――入るに入れなくなっちゃったのよ」

「うっそ―――、マジィ?」

 一際賑やかなのは、園子のいる女の子4人組。いつもならそこに蘭の姿もあるはずなのだが・・・。

「ねー、それって・・・」

 だんだん小声になっていく一人の声に合わせるように、4人が顔を寄せ合う。ぼそぼそと何かの話に夢中で新一がすぐ後ろまで来ているのにも気付かないようだ。

「よォ」

 と、新一が声をかけると、

「キャ―――――!!」

 という、耳を劈くような悲鳴が4人から発せられたのだ・・・。

「―――っ!!な、なんなんだよ!?一体!!」

 あまりの煩さに耳を塞ぎつつ、新一が文句を言うと、恐る恐るという感じで、園子が振り向く。

「あ―――し、新一君・・・来たの・・・?」

「来ちゃワリ―かよ。―――蘭は?」

 と言うと、なぜか4人とも固まってしまった。

「おい・・・?」

「あ―――えーと・・・蘭?さ、さあ、どこ行ったのかしら・・・ねえ?」

 園子が他の3人に振ると、3人が3人とも、視線を宙に彷徨わせながら、

「さ、さあ・・・」

「わ、わたし知らない・・・」

「わ、わたしも・・・」

「―――まさか・・・保健室・・・か?」

 と、新一が聞くと、4人はドキッとしたように顔を見合わせ、固まっている。

「・・・さっきの会話、ひょっとして、蘭の事・・・か?」

『イイ雰囲気』とか何とか、聞こえたような・・・

「ち、ちがうのよ、新一君。4時間目、体育の授業でさ、バスケやってたら、蘭、突き指しちゃって・・・で、保健室に行っただけで―――」

「やっぱ、保健室にいんだな」

 保健室には当然、校医である新出智明がいる。

「た―――多分、そろそろ戻ってくるんじゃない・・・?」

 と、園子が一生懸命説明しようとしたのだが、中の一人が、

「でも、もう30分以上経ってるよね?」

 と、小声で言ったのを、新一は聞き逃さなかった。

「わ、馬鹿!何言ってんのよ―――!」

 園子が突っ込むと、その子が慌てて手で口を抑えた。

「・・・・・」

 新一は無言で4人に背を向けるとそのまま教室を出て行ってしまった。

「―――あ―あ、どうすんの?怒ってるよ、新一君」

 園子がため息をついた・・・。



 『イイ雰囲気』?『30分以上』?ジョーダンじゃねーぞ!新出のヤロー・・・

 教室から保健室まで・・・新一がどんな顔で歩いていたか―――すれ違う人全てがギョッとした顔をして、慌てて避けるのを見れば―――お分かり頂けるだろう・・・。

 ようやく保健室に着き、そのドアを勢い良く開けようとしたが―――中から良く知っている、さわやかな笑い声・・・

「・・・クスクス、先生、そんなこと言ったんですか?信じらんない」

「そうなんですよ。僕も言ってから気が付いて・・・あ、もうこんな時間ですね」

「え?―――あ、ホント。じゃ、わたし教室に戻ります。すいません、長々とお邪魔しちゃって・・・」

「いえいえ、僕のほうはいつでも大歓迎ですよ」

 蘭がドアに近づいてくる気配がして、新一は慌ててその場を離れようとしたが―――考えてみれば、別に隠れる必要なんか無いんだ、と思い直し、そのまま蘭が出てくるのを待った。

「―――じゃ、失礼します」

 と言いながら、蘭がドアを開けて出てきた。保健室のほうを向いたままペコッと頭を下げ、ドアを閉めて、くるりと振り向いた。

「キャッ!!」

 蘭が短い声をあげた。

「―――新一!びっくりするじゃない!」

 胸に手をあて、目を大きく見開いたまま息をつく。

 まあ、驚くのも無理は無い。振り向いたら、いきなり目の前に新一がいたのだから。しかもその差、2cm程のところに・・・。

「―――いつ来たの?新一」

 まだ目を見開いたまま、蘭が新一に聞く。新一は仏頂面で、

「さっき」

 とだけ答えた。

「そう。―――お昼は?何か持ってきたの?」

「いや・・・」

「じゃ、校売でパンでも買う?わたし、教室にお弁当取りに行くから、先に屋上で待っててくれる?」

「―――ああ」

 蘭は新一の様子をそれほど気にしていないように、ひらひらと手を振りながら行ってしまった・・・。



 「―――意外と早かったね、来るの」

 屋上で、蘭はお弁当を広げつつ新一に言った。

「―――新一?どしたの?」

 新一の返事が無いので、蘭がちょっと心配そうな顔を向けていった。

「―――おまえ、何か俺に隠し事してない?」

 ようやく口を開いた新一の顔は、不機嫌そのものだった。

「隠し事って・・・?」

「新出・・・先生のこととか―――」

「新出先生?先生がどうかしたの?」

 相変わらずきょとんとした表情で、蘭が聞き返す。

 新一はそれには答えずじっと蘭を見つめていたが、やがてがっくりしたようにため息をついた。

「新一?」

「ったく・・・ホンッとにおまえって鈍感だよな」

「?何それ?」

「最近、俺がいないときに新出先生の車で送ってもらったりしてんだろ?」

 と、新一が言うと、蘭はびっくりしたように目を見開き、

「どうして・・・」

 と言いかけたが、すぐに思いついたようで、「―――快斗君ね」

と言った。

 最近、蘭はキッドのことを本名の“快斗”と呼ぶようになっていた。それは他人に聞かれてはまずいから、というのもあったが、快斗の方がそう呼んで欲しい、と言ったらしい。そして、夜、蘭に会いに行くときもキッドではなく、快斗の姿で逢いに行っていた。

「何で俺に黙ってたんだよ?」

 新一がちょっと咎めるような口調で言う。

「だって・・・新出先生のこと話すと、新一すっごく不機嫌になるじゃない」

 その言葉に、新一はちょっとびっくりした。

「なんだ、気付いてたのか?」

 鈍感な蘭のことだから、きっと気付いてないと思っていたのだ。

「当たり前よ。ムスッとして、わたしの話、聞こえなくなっちゃうじゃない。どうしてそんなに新出先生のこと嫌うの?」

 ―――やっぱ、理由まではわかんね―のか。全く・・・あの男の下心がわかんね―なんて・・・

「・・・とにかく、だな」

 新一は蘭の質問を無視して言った。

「もう、送ってくれるって言っても、あの人の車に乗ったりすんなよ」

「どうして?親切で言ってくれてるのに悪いじゃない」

「どうしてってなァ・・・」

「別に、新出先生は妙な下心なんて持ってないわよ」

「何でそんなこと分かる?」

「何でって・・・なんとなく、だけど・・・新出先生だってそう言ってたし・・・」

「先生が?なんて言ったんだ?」

「初めて『送りますよ』って言われた時、わたし断ったのよ。そんなに遠くないし・・・。そしたら先生、『僕のことが信用できませんか?』って・・・。そうじゃないって言ったら、『下心なんてありませんよ。もし君に何かあったら、僕は絶対後悔する事になります。どうぞ乗って下さい』って言われたの。そこまで言われたら、乗らないわけにいかないじゃない?」

 と言って、蘭は微笑んだ。

 ―――なんつー気障なやつ・・・。

 と、自分のことを棚に上げて、新一は思った。

「何で新一が新出先生を嫌ってるのか知らないけど、先生、良い人よ。気さくだし、妙に気まずくならないようにいろんな話してくれるし・・・。頭良いから新一とも話し合いそうだけどなあ」

 ―――ったく、人の気も知らないで・・・

 新一は、また溜息をつくと蘭の顔をじっと見つめた。

 蘭はきょとんとして新一を見つめ返す。

 キラキラ輝く大きな瞳、さらさらの長い髪、白い肌に桜色のつややかな唇・・・。昔から見慣れているはずなのに、クルクル変わるその表情はいつも新鮮で、見惚れずにはいられない。同じように蘭を好きになる男が他にいたとしても不思議じゃない。あの黒羽快斗や新出智明のように―――。
 だが、だからと言って蘭を他の奴に渡したりはできない。例え―――そう、例え、蘭が他の奴を好きになってしまったとしても・・・蘭だけは、渡せない・・・。

「―――新一?」

 そのつややかな唇から紡ぎ出される名前・・・それは、いつも俺であってほしい。―――新一はそう思わずにはいられないのであった。

 新一は蘭の瞳を見つめたまま、細い肩を抱き寄せ、そっと唇を重ねた。

 蘭が驚いて身を引こうとするが、構わず抱く腕に力を込める。

「ん・・・っ」

 声を発したその隙に、唇の隙間から舌を入れ、口の中を貪るように味わう。

「・・・・・」

 蘭はもう抵抗しなかった。おとなしく新一に抱かれ、されるがままになっている。

「・・・蘭」

 ようやく唇を離し、息の上がってしまった蘭に、新一が囁く。

 ちょっと頬を赤らめ、瞳を潤ませて、蘭が新一を上目遣いで見上げる。

「―――例え、スゲエ良い人でもやなんだ」

 新一は、蘭の肩に顔を埋めるようにして、耳元に囁く。

「―――え?」

「どんなに良い人でもさ・・・俺の知らない間に、蘭に近づく奴は・・・いやなんだよ」

 新一の耳はほんのりピンクになっていた。それを見て、蘭はちょっと幸せな気分になり、新一の方に頬を寄せるようにして言った。

「ダイジョーブ・・・。私が好きなのは新一だけだよ」

 途端に新一の耳がさらに赤くなり、蘭のほうも・・・自分で言ったくせにゆでだこのように真っ赤になってしまったのだった・・・。



 「―――ったく、犬も食わないとはこれのことよね」

「ホントホント」

「やってらんない」

「心配して損しちゃったわね」

「かえろかえろ」

 ―――と、勝手な話をしているのは園子他3名・・・自分たちのせいで二人が別れでもしたら大変・・・と心配して二人のことを見に来たのだが・・・ま、心配というよりは、ただの好奇心・・・二人の喧嘩を覗こうと思ったというのが正直なところだろう。が、喧嘩というところまでいかず、がっかり(?)していたところで、思わぬラブシーンが見れて、結構お得な気分になった4人なのであった・・・。



 その日の放課後―――、新一は蘭の部活が終わるまで待っていようと思っていたのだが・・・また、例によって目暮警部から呼び出しの電話がかかって来てしまったのだ。

「―――大丈夫よ、新一。わたし一人で帰るから」

 と、蘭はニッコリ笑って言った。

「けど―――また新出先生に会ったら―――」

「毎日会うわけじゃないし・・・。それに、新一、早く終わったら来てくれるんでしょう?」

「ああ、もちろん」

「じゃ、待ってるから」

 そしてまた、花のように笑う―――。この笑顔には逆らえない。

「ん―――分かった。じゃあ、なるべく早く終わらせて、迎えに来るから」

「うん」

 この二人の会話、誰も聞いていないと思ったら大間違い。他の話をしているような振りをして、実はかなりの人が聞き耳を立てていたりする・・・。そして聞いている人のほとんどがそのアツアツぶりに赤面しているのだが、当の本人たちは全く気付いていない―――という状況だったのだ・・・。


to be continued

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「恋の宿敵」の続きになります。
 この続きはまた後日アップしますね♪

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混戦模様  2

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
 そして、その日の部活は終わり・・・が、案の定新一はまだ来ていなかった。

『Prururururu・・・』

 一人教室で待っていた蘭の携帯電話が鳴った。

「―――もしもし」

『あ、蘭、ごめん。まだちょっと行けそうにねーんだ』

 電話の向こうで新一が言った。

「うん、分かった。じゃ、わたしもう帰るから・・・」

 と言って、蘭は電話を切った。

「フウ・・・」

 短い溜息をつくと、気を取り直したようにすくっと立ち上がり、教室を出た。

 分かってはいた・・・覚悟もしていたはずなのに・・・それでも一人で教室で待っていると、どうしても不安になってきてしまう。
 ―――でも、仕方ないんだ。―――
 自分に言い聞かせながら、蘭は早足で学校を出た。外はもうすっかり暗くなってしまっていた。

 ―――いつもこの辺で新出先生に会うのよね・・・。

 などと思いながら道を歩いていると後ろから車の来る気配・・・反射的にそちらを振り向く。

 車が蘭の横で静かに止まり、運転席から新出が顔を出した。

「やあ、毛利さん。また逢いましたね」

 人懐っこい笑顔で、声をかける。

 新一とは違う、大人の男の人。―――だが、蘭の中では男として、と言うよりは安心できる兄のような存在だった。蘭には兄弟がいないのでそんなふうに思えるのかもしれない。

「どうぞ、送りますから乗って下さい」

 と言って、新出が助手席のドアを開けてくれる。が、蘭は困っていた。

―――どうしよう?このこと新一が知ったら・・・やっぱり怒るかな。今日、言われたばかりだし・・・。でも、どうやって断ろう?

「蘭さん?どうしました?」

 新出が不思議そうな顔をして聞いてくる。

「あ、あの、わたし今日は―――」

 と、何とか断ろうと口を開いた瞬間、急に誰かが横に立った気配がした。

「―――!?」

 蘭と新出が驚いてみると、そこにはいつもの不敵な笑みをたたえた黒羽快斗が立っていたのだった―――。

「―――快斗君!!」

「よ、蘭。今帰り?」

「う、うん。まあ・・・」

 何がなんだかわからず、蘭はとりあえず返事をしたのだが、

「快斗君、どうしてここに?」

 やっと我に返って、そう聞いた。

「ん?ちょっと用事があってこの辺まで来てたんだ。なァ、せっかくだからこれから蘭の家に行っても良い?」

 快斗がニッコリと蘭に笑いかける。

「ああ、それなら2人とも車で送っていきましょう」

 と、それまで黙って2人を見ていた新出が言った。快斗はチラッと新出のほうを見てニッコリ笑うと、

「いや、良いっすよ。蘭とゆ~っくり話しながら歩きたいんで」

 と言った。新出は、そんな快斗を穏やかに見ていたが、

「―――そうですか。それじゃ、気をつけて。―――蘭さんを頼みます」

 というと、蘭にも笑顔を向け、ドアを閉めるとゆっくり走り去った・・・。
 

 「―――新出先生に、悪いことしちゃったかな」

 車を見送って、蘭が言った。

「気にすること無いって。偶然あっただけなんだろう?」

 と、快斗は歩きながら言った。

「うん。そうだけど・・・」

「―――何?あの先生のことそんなに気になるの?」

 と、快斗は蘭の顔を覗き込みながら、ちょっと低い声で聞いた。

「そうじゃないけど・・・。親切で言ってくれたのに悪いかなって」

 快斗は、ちょっと顔をしかめ、溜息をついた。

 ―――ホント、蘭って疑うことを知らないよなあ。ま、そこが良いんだけど。

「それより、こんな時間に一人歩きはやっぱ危ないからさ、新一がいない時は俺を呼びなよ。すぐ来るからさ」

「え?でも、悪いよ、わざわざ・・・。それに、そんなに家、遠くないし」

「けど、途中さびしい道だってあんだろ?もし蘭に何かあったら、俺、やだし。な?そうしろよ」

 なんだか言い含められて気がしないでもないが・・・。蘭はちょっと苦笑いして、

「ありがと、快斗君。でも彼女に怒られない?」

 というと、快斗はちょっと怒ったような顔をして、

「また、それ言う。あいつは只の幼馴染だってば」

「でも・・・」

「あのな、俺にとって青子って奴は、妹みたいなもんなんだよ。妹みたいだから心配もするし、すごく大事だとも思ってるよ。でも、恋愛対象ってのではないんだよ」

 少し落ち着いて、快斗が言った。それを聞いて、蘭もやっと納得したようだった。

「うん、わかった。ごめんね」

 そう言って笑った顔がかわいくて・・・

(く―――っ!抱きしめて―――!!)

 思わず顔が緩む。

 毛利探偵事務所の前まで来て、快斗はふと上を見上げた。

「―――あれ?明かり消えてるぜ」

「あ、うん。今日、お父さん帰ってこないから・・・」

「え?そうなの?―――なんだ、それを早く言えよ。だったら余計にあの先生に送ってもらったりしたらヤベーじゃんか」

「え、何で?」

 蘭はきょとんとして快斗を見る。

「何でって―――」

 どう言えば、蘭は分かってくれるんだ?

 あまりの鈍さに、頭を抱える快斗だった・・・。



 快斗は蘭の部屋に入ると、適当に座ってくつろいだ。

「ちょっと待っててね。コーヒーで良い?」

 そう言って、蘭は部屋を出ようとする。

「ああ、ワリ―な」

「ううん、じゃ」

 ニッコリ笑って部屋を出て行く蘭。

 ―――あの顔に弱いんだよなあ・・・。

 などと思いながら、一人ニヤニヤしていると―――

『Pulululululu・・・』

 どこからか、携帯電話の電子音が聞こえてきた。

「ん―――?蘭の鞄か―――?」

 ちょっと悪いとは思いながら・・・そっと鞄を開け、中から携帯電話を取り出した。

 液晶画面を見ると、新一の名が・・・。

 快斗は何かを思いついたようにニヤッと笑うと、携帯電話のボタンを押し、耳に当てた。

「―――もしもし」

 と、蘭の声を真似て出る。

『あ、蘭か?今、どこ?』

「今、家に帰ってきたところよ」

『そっか。今日は・・・新出先生に会ったのか?』

 心配そうな新一の声。快斗は笑いを堪えつつ、話を続けた。

「うん。でも、大丈夫よ。快斗君と一緒だったから」

『は?快斗?何であいつと?』

「私のことが心配だったんですって。快斗君って優しいわよね―――」

『そ、そう・・・か・・・?』

「あ、今もね、一緒にいるの。お父さん、今日帰って来ないし一人じゃ不安だから泊ってってもらおうと思って♪」

『な・・・にィ――――――!!!??』

 耳を劈くような大声。

 新一の慌てふためく様子が目に浮かび、快斗は笑いを堪える。

『だ、だ、だめだぞ!絶対!!おま、何考えてんだ!!あいつを泊めるなんて―――おい!!聞いてんのか!?』

「聞いてるわよ」

 ―――そんな大声出されりゃ、いやでも聞こえるって。

 と、そこへ蘭が飲み物を載せたトレイを手に、部屋へ入って来た。

「―――お待たせ!あれ?電話?」

 その声が向こうにも聞こえたらしく―――

『―――おい、今の蘭、だよな。てことは・・・快斗、てめえ・・・』

 新一の声がだんだん低くなっていく。

「やっと気付いたのかよ?おせーぜ新一」

『な・・・なんでてめえが蘭と一緒に・・・!』

「今日はこのまま泊ってくから、邪魔すんなよ。じゃあな~新一君」

 そう言うと、快斗はさっさと電話を切り、ついでに電源まで切ってしまった。

「―――か、快斗君!?」

 呆然と、目の前の光景を見ていた蘭がようやく口を開く。

「今の・・・新一?」

「うん」

 ニッコリ笑う快斗。

 蘭はちょっと引きつったような笑顔で、

「なんか・・・泊ってくとかって、聞こえたんだけど・・・」

 気のせいよね?と快斗に問い掛ける。

「いや?確かにそう言ったぜ。俺」

 冗談とも本気ともつかない瞳で見つめられて、蘭は困ったような顔をした。

「快斗君?あの、わたし・・・」

 と、突然快斗がクックッと笑い出した。

「んな、困った顔すんなよ。冗談だって。ちゃんと帰るよ」

「―――もう!!人のことからかって・・・」

 ぷうっと膨れる蘭を、優しい瞳で見つめる快斗。

―――半分は、本気で言ったんだけど。なんか、このまま帰るのも癪だよなあ。どうせ、後10分もすりゃ新一の奴が来ちまうんだろうし。

 ふと、何か思いついたように、快斗は不敵な笑みを浮かべた。

「なァ?蘭、このまま俺、本当は泊っていきたいんだぜ?」

「え?な・・・何言ってるのよ、快斗君」

 大きな瞳をますます大きくする蘭を楽しそうに眺めて、

「ダメ?」

 と、ニッコリ笑って聞く。

「だ、ダメに決まってるでしょ」

「じゃ、さ、その代わり、今度俺とデートしてよ」

「デート!?」

「そ。蘭の行きたいところで良いからさ」

「でも・・・」

「もちろん、新一には内緒で。大丈夫、一日位バレないって」

「それは・・・でも・・・」

「蘭?俺のこと嫌い?」

 すっと顔を近付けて聞く。息がかかるくらいまで快斗の顔が迫ってきて。

 蘭はちょっぴりドキドキしている自分に驚いていた。

「き、嫌いなわけ・・・ないでしょ?」

「じゃ、良いじゃん。もうすぐ新一来るぜ?OKしてくれないなら、強引にでもここに泊ってくけど?」

 ニコニコしながら迫ってくる快斗。

「OKしてくれるなら、新一が来る前に帰るよ。喧嘩されんのやだろ?蘭」

「―――う・・・もう!!強引なんだから」

 半ばヤケクソ気味の蘭。

「じゃ、いんだな?」

「―――分かったわよ」

「んじゃ、下まで送ってくれる?」

 快斗は、蘭が入れてくれたカフェ・オレを一気に飲むと、

「うん、うまい、ご馳走さん」

 と言って、部屋を出た。

 全くもう、と溜息をついて、蘭はその後に続いた。2人で外に出る。



 「どこに行きたいか、考えといてよ。今度会うときまでに、さ」

「ん、分かった。帰り、気をつけてね」

 ニッコリ笑ってくれる蘭に、愛しさが溢れる。思わず抱きしめたくなるが・・・

「―――蘭!!」

 遠くから新一の声が聞こえた。

 ―――チッ、早すぎんだよ、来んのが。全く蘭のことになると、ホンット回り見えなくなるんだよな。―――ま、分かる気はするよ。同じ蘭を好きな男としては・・・。心配だもんなァ、この無防備で、自覚のないお姫様が・・・。

「新一」

「王子様の登場か」

 呟く快斗に、「え?」と顔を上げる蘭。上目遣いに見るその瞳に、悪戯心が刺激されて―――

「お休み、お姫様。またな」

 と言って、蘭の頬に軽くチュッとキスをした。

「―――快斗!!テンメェェ―――!!!」

 すごい形相で走って来る新一に一言、

「じゃーな―、新一!」

 と言って、あっという間に走り去ってしまった。

 呆然と突っ立っている蘭のところへ新一が駆け寄った時には、すでに快斗の姿はどこにも見えなかったのだ・・・。

「―――おい、蘭?」

 心持ち顔を赤くして突っ立ったままの蘭に、新一が声をかける。と、はっと我に返ったように、蘭は新一を見上げた。

「あ・・・新一、早かったね」

「“早かったね”じゃねーだろ?何で快斗がオメエの家にいんだよ?こんな時間に」

「だって、送ってもらったし・・・。飲み物くらい、飲んでって貰おうと思ったのよ」

 ちょっと拗ねたように言う蘭。新一は溜息をつき、

「―――おまえさ、いいかげん警戒心っつーもんを覚えろよ」

「って・・・快斗君は、大丈夫だよ?」

「どこがだよ?おまえんちに泊っていこうとしてたんだぞ!?おっちゃんのいない時に!」

「あれは冗談よ。結局帰ったじゃない」

「・・・・・おまえ、あいつになんかされなかったか?」

「え?」

 蘭はちょっとドキッとしてうろたえた。その様子を新一は見逃さない。

「えっと・・・あ、ほっぺにキス、されたけど・・・」

「そりゃ―オレも見てたっつーの」

 ―――くそっ、腹の立つ。わざと俺の見てる前でやりやがって、快斗の奴・・・。

「他には?」

「え・・・な、ないよ」

「・・・本当か?」

 新一はじっと蘭を見つめた。

 ―――あれは約束だから・・・別に何かされたわけじゃない、ものね。うん。

「本当よ」

 勝手に一人納得して、新一に笑顔で頷く蘭。はたして新一に、その言い分が通じるかどうか・・・

 が、とりあえず、蘭の笑顔に納得した新一はちょっと息をつくと、

「なら、良いけど」

 と言った。それを聞いて安心した蘭は、

「ね、上がってく?喉渇いたんじゃない?走って来て」

 と言って微笑んだ。新一はそんな蘭を見てちょっと頬を赤らめ、

「そ、だな。じゃ、ちょっと・・・」

 と言って、上がっていこうとしたのだが・・・

「―――おい!!オメエ、何してやがる!!」

 という怒鳴り声が聞こえ・・・

「!?お父さん!」

 振り返った蘭はびっくりして叫んだ。そこに立っていたのは紛れもない、毛利小五郎その人だった。

「ど、どうしたの?今日は帰って来ないんじゃ・・・」

「予定変更だよ。それより新一、こんな時間に若い女の部屋に上がり込むつもりじゃねーだろうな?」

 ジロッと新一を睨む。

「え、あ、いや、その・・・」

「お父さんってば!」

「蘭、帰るぞ。じゃあな新一」

 と言って、小五郎はさっさと階段を上がっていく。

「もう・・・!」

 蘭はぷうっと頬を膨らませて、溜息をついた。

「はあ・・・じゃ、オレ、帰るよ、蘭」

 新一は力なく言った。

「ごめんね、新一」

 蘭が申し訳なさそうに俯く。新一はそんな蘭の頭を手でクシャクシャっと撫でると、

「気にすんな。じゃ、また明日な」

 と、笑顔で言った。

「うん。じゃ・・・おやすみなさい」

「おやすみ」

 新一は蘭の額に軽くキスをすると、ちょっと手を振り、帰って行ったのだった・・・。

 蘭はそれを見送ってから、階段を上り、3階へ向かったのだが・・・。

 ドアの前に、小五郎が立っている。腕を組み、こちらを見下ろして・・・。蘭はふと立ち止まり、小五郎を見上げた。

 2,3秒、見詰め合ってから・・・

「―――快斗君、ね?」

 と言うと、小五郎はニッと笑い、組んでいた腕を解く・・・と同時に、その扮装を解き、あっという間に快斗の姿になった。

「さっすが蘭!」

 と言って、ウィンクする。蘭は溜息をついて、また階段を上って行った。

「全くもう・・・帰ったんじゃないの?」

「だって、あのまま帰っちまったら新一の奴を部屋に入れてたろ?あいつが黙って帰るわけね―じゃん。そんなことさせられっかよ!」

 と、ちょっと口を尖らせる。

「もう・・・で?もう帰るの?」

「うん。あ、でも蘭が泊っても良いって言ってくれんなら、泊ってくけど?」

 ニコニコと無邪気に笑いながら言う。

「言うわけないでしょ?」

「だーよな。んじゃ、帰るよ」

 そう言って快斗は、軽い足取りで階段を下りて行った。

「気を付けてね」

 と、蘭が上から声をかける。

「ああ、蘭もな。ちゃんと鍵、閉めろよ」

「ん、ありがと」

 蘭はニッコリ笑うと、ドアを開け、中に入って鍵を閉めた。それを見届け、外へ出る快斗。

―――ま、今日は帰ってやるさ。デートの約束も取り付けたしな。・・・1日くらい、彼氏の役目、代わってもらったって良いよな?いつも我慢してんだし。

 と、勝手に結論付け、軽い足取りで帰っていくのだった―――。



fin

************************
 本当は、もっと新出先生が出てくる予定だったのですが・・・。
結局単なる三角関係になってしまいました(^^;)


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ファーストデート 1

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
 「やっぱ、早すぎたな」

 トロピカルランドの最寄駅の改札口で、快斗は蘭を待っていた。約束の時間まであと20分もある。

 今日は蘭との初めてのデートだ。柄にもなく緊張して、前の日は良く眠れなかったのだが、初デー

トに遅刻していくわけには行かない、と早めに出てきたのだ。

 ―――ま、いっか。蘭が来るまでに気持ちを落ち着けてよう。

 と、思いはしたものの、蘭がちゃんと来るかどうか、なんとなく不安になってくる。この日までど

うにか新一にはバレずに済んでいたが、かなり強引にこのデートの約束を取り付けたので、少し心配

なのだ。

 電車が着いたのか、大勢の人が改札口を抜けてくる。快斗は、その中に蘭の姿を探していた。

 ―――まだ来ないかな―――と思ったとき、人ごみの中に蘭の姿を見つけた。

 夏っぽいノースリーブの、薄いピンクのワンピースを着た蘭は、大勢の中にいてもぱっと目を引く

ほどきれいだった。今も回りの男たちの視線を集めていたが、本人はそんなことには気付く様子もな

く、快斗を見つけると満面の笑みを浮かべ、手を上げた。

 改札を抜けると、小走りで快斗の元に駆け寄ってくる。長い髪が揺らめいて、キラキラと光ってい

るように見える。

 蘭が近づいて来るのに合わせ、快斗の鼓動が早くなった。

「おはよ!快斗君。早いのね」

 と言って、ニッコリ笑う蘭に、快斗は目を細めた。

 ―――やっぱ、かわいいなあ・・・

「行こっか」

 と言って、蘭は先に歩き出す。

「あ、ちょっと待った!」

 それを見た快斗が、慌てて蘭を止めた。蘭がキョトンとして快斗の顔を見た。

「何?」

「えっとさ、ひとつ、お願いがあるんだけど」

 と、快斗は今日のために考えていたことを口にした。

「お願い?」

「うん。―――今日は、1日オレの彼女になってくれない?」

 意を決し、そう言うと蘭は目をぱちくりさせていたが―――

「―――彼女?快斗君の?」

「うん」

「わたしが?」

「そう。今日1日だけ・・・新一のことは忘れてくれない?―――忘れるのは無理でも、今日1日だけ

只の幼馴染ってことで・・・。ダメ、かな?」

 快斗は蘭の顔を覗き込んだ。蘭はちょっと俯いて考えていたが・・・ふと顔をあげ、快斗を見ると、

「ん。分かったわ。今日1日だけね」

 と言って、ニッコリ笑ったのだった。

「ほんと!?」

「うん」

「やったァ!サンキュー、蘭!!」

 全身で喜びを表す快斗を、蘭は楽しそうに見て笑った。

「じゃ、行こうよ」

 と言って歩き出した蘭の後を慌てて追いかけた快斗は、サッと蘭の手をとり、握った。蘭が、ちょ

っと驚いて快斗を見る。快斗は悪戯っぽく笑うと、

「恋人なんだから、手位繋ごうぜ」

 と言って、ウィンクした。蘭はちょっと照れたように、

「うん」

 と笑って、快斗の手を握り返した。

 2人手を繋いでトロピカルランドまでの道を歩く姿は、どこから見ても仲の良い恋人同士のそれだった―――。





 「―――ね、腹減らない?何か食お―ぜ」

 ひとしきりアトラクションを楽しみ、トロピカルランドの中を手を繋いで歩きながら、快斗が言っ

た。

「うん、そういえば・・・もう1時だものね」

「何食べたい?おごるよ」

「え、いいよ、そんな―――」

 蘭が遠慮して言ったが、快斗はそれを遮り、

「おごらせてよ。今日は俺が彼氏なんだし。それ位、させてくれよな」

 と、明るく言った。蘭も思わず微笑む。

「うん。じゃ、ご馳走になろうかな」

「よし!そういや向こうに美味そうなレストランあったな。行ってみよーぜ」

「うん!」

 レストランに着き、オーダーを済ませると、2人はホッと息をついた。

「疲れた?快斗君」

「いや?すごく楽しいよ。蘭は?楽しい?」

「うん、とっても」

 と言って、蘭はニッコリ笑った。それを見て、快斗はちょっと赤くなって目を逸らした。

 蘭は、そんな快斗を見て、ちょっと不思議な気分になった。超がつくほど鈍感な蘭も、快斗が自分

に好意を持ってくれていることには気付いていた。それが恋愛感情によるものだということには気付

いていなかったが・・・。何でも話せる、大切な友達だと思ってくれていると思っていた。そして、

蘭にとっても快斗は大切な、かけがえのない友達になっていた。新一と似てはいるが、全く違う人物。

 明るく優しく、お調子者のようで、実はとっても気を使っている、そんな快斗に蘭は不思議な安ら
ぎを感じていた。快斗と一緒にいると安心できた。いつも忙しい新一に対しては、ちょっと無理をして笑って見せ、余計な心配をかけないよう、探偵の仕事に集中できるよう寂しいけれど我慢していた。

 でも、快斗といるときは、我慢する必要はなかった。無理せず、自然に笑うことが出来る。本当の自分でいられる。そんな気がしていたのだ。

 ―――参ったな。

 快斗は、なんとなく落ち着かなくなっていた。

 蘭が眩しすぎる。1日だけでも1人占めしたくてこんなことを思いついたけれど・・・。楽しければ

楽しいほど、終わりが近づくにつれ、切なさも増していく。

 ―――参ったな・・・。これじゃあ離したくなくなっちまう。

 このままずっと、2人きりでいられたらどんなにいいか・・・。それは叶わないことだけど、そう思わずにいられなかった。





 その頃新一は・・・

 昨日の夜、また警察に呼び出されていた新一は、帰ってきたのが夜中の2時過ぎで、寝たのは3時過

ぎだったため、昼過ぎにようやく起きてきたのだった。

 いつもだったら日曜は、蘭と約束しているか、約束がなくても新一の家に蘭が泊っていて、ずっと

2人で過ごすのだが今日は違った。なんだか、母親の英理と約束があるので日曜日は会えない、と言

われたのだ。その言葉にがっかりはしたものの、いつも新一が“事件”でいなくなってしまうことが

多いので、文句を言うこともできず、仕方なく了解したのだった。

「あ―あ、つまんね―な―」

 ボソッと声に出して呟く。「夜、電話するから」と、蘭は言っていた。だが、それまでにだいぶ時

間がある。どうやって暇をつぶすかな・・・。

「やっぱ、本でも読むか」

 しかし、家にある本は、もう全て読んでしまった。となると・・・

「本屋に行ってくるか」

 新一は面倒くさそうに立ち上がり、うーんと伸びをすると、出かける支度をするべく2階の自分の

部屋へ上がっていったのだった。





 「さ、次は何に乗りたい?」

 食事が終わると、快斗が言った。蘭はちょっと小首を傾げて考えている。その仕草がかわいくて、

快斗は蘭に見惚れていた。蘭は、快斗が自分をじっと見詰めていることに気付いて、ポッと頬を赤ら

めた。

「やだ、快斗君てば、何じっと見てるの?」

「あ、いや―――あんまりかわいくて、さ」

 と、ちょっと照れたように言って、ぽりぽりと頭を掻く快斗を見て、蘭はますます顔を赤くする。

「な、何言ってんのよ―」

「へへ・・・あ、もう出ようか?」

 と言って、快斗が席を立ったので、蘭も一緒に立って2人はレストランを出た。

「あっちの方行ってみる?」

 快斗が蘭に手を差し伸べながら、促す。

「うん」

 ごく自然に快斗と手を繋ぎ、蘭はニッコリと微笑んだ。





 「あ!探偵の兄ちゃんだ!」

 すぐ後ろから、聞き覚えのある子供の声が聞こえた。

 新一が振り向くと、そこには懐かしい顔・・・元太、光彦、歩美の3人がこちらを見て立っていた。

「よォ!」

 久しぶりに会う旧友に顔をほころばせる。

「あれえ?お兄さん1人?蘭お姉さんは?」

 と、歩美が言った。

「今日は用事があってね、オレとは別行動」

「なんだよ。せっかくの日曜なのに1人かよ、サビシーな―」

 元太の言葉に、思わず顔が引きつる。

「元太君!失礼ですよ。お兄さんたちにも事情があるんですから」

 子供らしからぬ光彦の台詞に思わず苦笑いする。

 ―――相変わらずだな、こいつらは。

「そっか―。あたし、てっきり蘭お姉さんはお兄さんとデートだと思ってたのに」

「へ?」

 歩美の台詞にちょっと戸惑う。

「歩美ちゃん、それ・・・どういう意味?蘭と会ったのか?」

「うん。あたしね、昨日親戚の家に泊りに行ってて、今朝帰って来たんだけど、米花町の駅で蘭お姉

さん見たの」

「駅で?」

「うん。すっごくかわいいピンクのワンピース着てたよ。トロピカルランドに行くほうの電車だった

から、てっきりお兄さんとトロピカルランドに行くんだと思ったのに、違うんだ」

「・・・・・」

 新一は暫し黙ってしまった。

―――どういうことだ?いや、どこに行くかまでは聞いていないから、そっち方面のどこかで英理と

待ち合わせしているのかもしれないが・・・なんだか府に落ちない。ピンクのワンピース―――とい

うのは多分新一も知っているものだ。よくデートの時に着て来るお気に入りの服だ。ノースリーブで、ちょっと胸元が開いているデザインの・・・あれを着て行ったのか?母親と会うのに?

 ―――なんだか胸騒ぎがした。

 ―――まさか蘭の奴、オレに嘘をついてるのか・・・?

 だとしたらどうして?英理に会っているんじゃなければ一体誰と、どこに行ったっていうんだ?考

えられるのは・・・黒羽快斗。あいつしかいない・・・。考えたくはないが・・・。

 新一が突然黙ってしまったので、3人は戸惑って顔を見合わせたりしている。

「あの・・・お兄さん、どうかしたんですか?」

 光彦がやや遠慮がちに聞いてくる。

「え?―――あ、いや、なんでもないよ。ゴメン―――。歩美ちゃん、その・・・蘭は1人だった?」

「うん、1人だったよ。何かすごくウキウキしてるみたいだったよ」

 ―――ウキウキだって?ますます怪しい・・・。

「それ、何時ごろ?」

「ええっとねー・・・9時半くらいだったと思うけど・・・」

 9時半・・・トロピカルランドの開園は10時・・・。時間的にもぴったり合う・・・。

「どうもありがとう。じゃあ、またな」

 新一はニッコリ笑って3人に手を振ると、足早にその場を去っていった・・・。

 残された3人は、いつもと違う、ただならぬ雰囲気を漂わせた新一の後姿を呆然と見送っていたの

だった―――。



 新一は3人から見えないところまで来ると、ポケットの携帯電話を取り出し、まず蘭の携帯にかけ

てみる。―――が、電源を切っているのか、繋がらない。続けて、妃法律事務所へ―――。

「はい、妃法律事務所でございます」

 若い女性が出た。

「あ、お忙しいところすいません。工藤と申しますが、妃弁護士はいらっしゃいますか?」

「妃はただいま席を外しておりますが」

「そうですか・・・。どちらへいかれたか、分かりますか?」

「失礼ですが、どちらの工藤様でしょうか?」

 相手が、ちょっと警戒するように言った。

「あ、失礼しました。工藤新一と言います。あの・・・」

 と、新一が言いかけると、向こうで、ああ、と言う安心したような声が聞こえた。

「蘭ちゃんの―――妃先生のお嬢さんのお友達・・・ですね?」

「はあ―――まあ・・・」

 お友達、という言葉に、少し躊躇する。もちろん向こうは、新一が有名な高校生探偵だと言うこと

も知っているだろう。

「―――あの、それで・・・」

「あ、ごめんなさい。先生はちょっと人と会う約束をしていて、後1時間くらいは戻らないと思うわ」

「―――それは、依頼人と?」

「―――それは、ちょっと・・・」

「あ、すいません。そうですよね。―――じゃ、何時頃出られたかだけ、いいですか?」

「ええ。確か、1時ごろだったけど」

「1時・・・午前中は?どこか行かれてましたか?」

「え?いいえ。午前中はずっとオフィスにいたけど・・・それが何か?」

「あ、いえ、何でも・・・。すいません。お仕事中に失礼しました」

 新一は電話を切ると、またすぐに他のところに電話をかけた。

「――――もしも――し」

 と、明るい声で出たのは、快斗だ。

「なんだよ、新一、珍しいな。オメエが電話してくるなんて」

「―――オメエ、今、どこにいる?」

 新一は自然と低くなる声で聞く。

「あん?今?トロピカルランドだけど」

 ―――やっぱり!

「蘭と一緒にいんのか?」

「・・・・・な~んだ、もうばれちまったのか」

 拍子抜けするほどあっさり言われ、新一は一瞬言葉をなくした。が、すぐに自分を取り戻し、

「ふざけんな!!どういうつもりだよ!」

「どういうって、デートだよ、デート。オレと蘭のファーストデート。邪魔すんなよなァ」

「な・・・にがファーストデートだよ!おい、蘭に代われよ!」

「やーだね」

「―――んだとォ!?」

「蘭が困るだろォ?今日は、蘭はオレの彼女だかんな!オメエには渡さねーぜ」

「テメ・・・!」

「返してほしかったらここまで来れば?ま、簡単には見付かんね―と思うけど。

「―――そこにいんだな?」

「おー。お楽しみはこれからだからな」

「―――待ってやがれ、ぜって―見つけ出してぶん殴ってやっからな!!」

 そう言うと、新一は力任せに電話をブチッと切った。頭に血が上って、とても平静ではいられなか

った。

 ―――あのヤロ――!今日という今日はぜって―ゆるさねー!!

 新一は回りの人間を跳ね飛ばしそうな勢いで、駅に向かって走っていったのだった・・・。





 一方快斗の方は、蘭がトイレから出てくるのを待っていた。

「さあて、どうすっかな」

 快斗はポリポリと頭を掻いた。

 新一が快斗に電話をしてきた時点で“バレた”事はわかった。おそらく何かのきっかけで今日の蘭

の行動に疑問を抱いた新一は、まず先に蘭の携帯に電話をしたはずだ。そのとき蘭と快斗は、室内に

いたので通じなかったのだろう。そして、快斗に電話してきた時間を考えると、その後英理のところ

へ電話したのだろう。今日、蘭が言い訳に英理と会うと言っていたのは快斗も聞いている。で、そこ

でばれたわけだ、蘭の嘘が・・・。

 まあ、半分そうなることは予想していたし、誤魔化そうと思えばできたのだが・・・。蘭が怒られ

たりしたら可哀想だし。隠れて会うってのはやっぱりフェアじゃないし・・・。そう思ってあんなこ

とを言ったのだが・・・。あっさり蘭を連れ戻されたのでは面白くない。

 ―――ここはやっぱり、あれしかねーか・・・。

 トイレから出てくる蘭を見ながら、快斗は密かにほくそえむのだった・・・。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 また続きます。この辺で、蘭ちゃんの気持ちにちょっぴり変化が・・・。


 というわけで。お楽しみいただけましたでしょうか
 季節感ないですね。これは夏のお話です

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ファーストデート 2

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
ようやくトロピカルランドに着いた新一は・・・。
―――どこから探すかな・・・。
 闇雲に走り回っても、疲れるだけだ。蘭が行きそうなところは・・・
 新一はとりあえず蘭が好きなアトラクションを見て回ることにした。今、3時半だから日が暮れるまでにはまだ時間がある。それまでになんとしてでも探し出さないと!


―――その頃、快斗と蘭はというと・・・
「ね、快斗君?何でこんな格好しなきゃなんないの?」
 と、蘭が戸惑ったように言った。
 というのも、なぜか今蘭は着替えていて、黒い皮のピッタリと体に張り付くようなスタイルのミニ丈、ノ―スリーブのワンピースで、髪も大人っぽく一つにまとめ、メークもちょっと濃い目で、サングラスをかけていた。ちょっと見たくらいでは、まず蘭だとわかる人間はいないだろう。
 快斗の方は、金髪のロングヘアーに黒いTシャツ、黒い皮パンと、ミュージシャン風の格好で、やはりサングラスをかけ、こちらも快斗だとは分からない。
 もちろん新一から隠れるために変装しているのだが、何も知らない蘭には、わけがわからない。ちょっと恥ずかしそうに顔を赤くしている蘭に快斗は優しく笑いかけながら、
「ちょっと気分を替えようと思ってさ。けど、そういう格好もすっげー似合ってるよ、蘭」
 と言った。
「そ、そうかなあ・・・。なんか、恥ずかしいかも・・・」
 と、蘭は自信なさげだが、スタイルがいいのでボディコンシャスなワンピースもピッタリあっているし、いつもより大人っぽいメイクと髪型がほのかに色香を漂わせていて、周りにいる男たちが皆ポーっと見惚れたりしていた。もちろん、蘭は気付いていないが・・・。
 快斗は周りを威嚇しつつ、蘭の肩に優しく手をまわし、促した。
「さ、行こうか」
「う、うん」
 いつもよりちょっと男っぽい感じの快斗に肩を抱かれ、蘭はちょっとドキドキしていた。

 ―――快斗君って、こんなに男っぽかったっけ?
 いつもふざけてばかりで、近くにいてもこんなにくっついたことはなかったから、気付かなかったけど・・・。その腕も、肩幅も、蘭が思っていたよりもずっと男らしいような気がした。
 そう思うと、なんだか急に緊張してきてしまい、言葉が出てこなくなってしまった。
「蘭?どうした?」
 快斗が、不思議そうに蘭の顔を覗き込む。と、蘭の顔がぱっと赤くなる。
「な、なんでもないの」
「・・・もしかして、照れてる?」
「―――え・・・」
 図星を指され、絶句する蘭を見てニヤッと笑うと、
「照れんなよォ、俺たち今日は恋人同士だろ?」
「そ、そうだけど・・・」
「それとも、オレとこうして歩くのイヤ?」
 快斗は、ちょっと不安になって蘭に聞く。と、蘭は慌てて、
「そ、そんなことないよ!ただ、初めてだから、ちょっと緊張しちゃって・・・」
 と言った。快斗はふっと笑うと、
「・・・オレだって緊張してるよ?」
 と言った。
「え・・・ホント?」
「ん。だって、今日は蘭との初デートじゃん。最初っから緊張しっぱなしだよ」
 明るくそう言う快斗を見て、蘭の体から次第に力が抜けていく。
 安心したようにニッコリ笑う蘭を見て、再び快斗は歩き出した。
「さ、行こうぜ!」
「うん!!」


 「くっそ―――っ、あいつらどこにいるんだ!」
 新一は息を切らしながら、吐き捨てるように呟いた。
 腕時計を見ると、もう5時半になっていた。夏だからまだ明るかったが、そろそろ暗くなってしまう。
―――しかし、何で見付かんね―んだ?幾ら広いっつったって、こんだけ探していないなんて・・・まさか、もうここを出ちまったんだろうか?でも・・・
 新一が立ち止まって考え込んでいると、その目の前を、熊の着ぐるみを着た人間が通り過ぎた。それを見て、新一ははっとする。
 ―――そうか!変装だ!何で今まで思いつかなかったんだ?あいつは怪盗キッドなんだ、変装なんかお手のもんじゃねーか。きっと蘭にも変装させて・・・くそ!そうと分かっても、どうやって探しャ良いんだ?まさか、1人1人顔を引っ張るわけにはいかね―し・・・。
 1人考え込んでいる新一を、通り過ぎる人たちが不思議そうに見ていた・・・。


 その頃、快斗と蘭はベンチでジュースを飲みながら、休んでいた。
 ―――しかしさっきは焦ったなあ。
 快斗は1人考えていた。
 実は30分ほど前、アトラクションから出てきた2人のすぐ側に、新一がいたのだった。蘭は後ろを向いていて気が付かなかったが・・・。 新一はチラッと2人を見た。が、さすがに分からなかったようで、すぐに2人とは逆方向へと歩いて行ってしまったのだ。
 
 ―――まだまだ、観察力が足りないぜ、名探偵。
「どうしたの?疲れちゃった?快斗君」
 急に黙ってしまった快斗の顔を、下から覗き込みながら蘭が言った。
「あ、ゴメン。大丈夫だよ。全然平気」
「ホント?無理しないでね」
 心配そうに言う蘭を安心させるように笑うと、快斗は立ち上がった。
「平気だって。さ、行こうぜ」
「あ、うん。どこ行く?」
 蘭も立ち上がりながら言う。
「ん―――。あ、そういや、観覧車ってまだ乗ってなかったな」
「あ、そうだね。今から乗ったら、ちょうど夜景が見えるかも」
 蘭がうれしそうに笑って歩き出した。快斗がその肩を抱いて、2人並んで観覧車に向かって行った。
 観覧車のところまで来ると、行列が目に入った。
「わァ、結構並んでるね」
 と、蘭が言った。
「だな。ま、30分位だろ。並ぼうぜ」
「うん」
 2人は列の最後尾に並んだ。
 それから5分ほどして、ちょっと進んだところで快斗がふと、何か思い出したように言った。
「あ、そーだ。蘭、ワリ―けどちょっと待っててくれる?」
「え?どうしたの?」
「ちょっとな。すぐ戻るから」
 そう言うと、快斗は蘭を置いて走って行ってしまった。蘭は不思議に思いながらも、1人で並んで待っていたのだが・・・。
 いよいよ後少しで乗れる、というところまで来ても、快斗が戻ってこない。不安になってきて後ろをちらちら見ていると、少し離れたベンチでずっと蘭のほうを見ていた2人組みの男が、ニヤニヤしながら寄ってきた。
「ねえ、彼女、もしかして彼氏に置いてきぼりにされちゃったの?」
 と、1人の男がいやらしい笑みを浮かべ、話し掛けてきた。
「違います」
 蘭がむっとして答えると、もう1人がニヤニヤしながら、
「でも戻って来ないじゃん。あんな薄情な彼氏なんか放っといてさ、俺たちと遊ばない?」
 と言って、蘭の肩に手をかけようとした、その時―――
「オレの女にさわんじゃねーよ」
 と、低い声が聞こえたかと思うと、蘭の肩に手をかけようとしていた男がよろけた。
「な、なんだ、てめえ!」
 と、もう1人の男が言うと、いつのまにか蘭の隣にいた快斗がその男をジロッと睨み、
「それはオレの台詞だ。人の女にちょっかい出してんじゃねーよ」
 静かだが、凄みのある声でそう言われ、2人組みは青くなって早々に逃げて行ってしまった。
「大丈夫か?蘭。ゴメンな、遅くなっちまって」
 と、蘭の方を見ると、蘭は目をぱちくりさせながら、
「すごいね、快斗君。今のすっごいかっこ良かったよ!それに、あの人のこと触ってないように見えたのに、どうやったの?」
 と、無邪気に笑って言った。快斗はがくっと肩を落とし、は――っと大きく溜息をついた。
「・・・別に、たいしたことしてねーよ・・・。蘭、頼むからさ・・・もちょっと自覚してくれよ」
「?何を?」
「何って・・・その・・・ま、いいや。ほら、乗ろうぜ」
 いつのまにか、蘭と快斗が乗る番になっていた。
「あ、うん!」
 2人で観覧車に乗り込む。ゆっくりと動く観覧車の窓から外を見て、楽しそうに笑う蘭。そんな蘭を見て、快斗は目を細める。
「―――蘭、これ」
 快斗はポケットから小さな袋を出すと、蘭に差し出した。
「え?何?」
 蘭は、不思議そうな顔をして、その袋を受け取った。
「開けてみろよ」
「うん・・・」
 蘭は言われたとおり、その袋を開けた。そして、中のものを手のひらに出してみるー――。
「これ―――」
 それは、四角いシルバーの板に天使の絵が彫られたペンダントだった。
「かわいい―――」
「裏、見てみ」
 快斗が笑いながら言う。蘭が、そのとおり裏返してみると、そこには今日の日付とto ranの文字が・・・。
「これ―――!」
「今日の記念に、プレゼント。さっき、これを買いに行ってたんだ。んで、裏のそれ彫ってもらってたら、思ったより時間がかかっちまったってわけ」
 ちょっと照れたように、ニヤッと笑う快斗。蘭は、そのペンダントをボーっと見ていた。
「蘭?貰ってくれるよな?」
「あ、あの、でも、良いの?」
「もちろん!蘭に貰ってほしいから、名前入れたんだぜ。な?」
 快斗の言葉に、蘭はふっとうれしそうに笑って、
「ありがとう!大切にするね」
 と言ったのだった。その笑顔を見て、快斗の胸がドキドキと高鳴った。
「―――蘭、今日、楽しかった?」
 と聞くと、蘭はまたニッコリ笑って、
「うん!とっても!」
 と言った。
「じゃ、また来ようか。2人で、さ」
 と快斗が言うと、蘭はちょっとびっくりしたように目を見開いた。
 ―――まずかったかな?
 快斗はちょっと不安になった。
 ―――もう会わない・・・なんていわれたらどうしよう?そんなの耐えらんね―よ・・・。
 そんな快斗の想いを知ってか知らずか、蘭はふわり、と優しい笑みを浮かべると、
「うん、そうだね」
 と言ったのだった。
 今度びっくりするのは、快斗の方だった。
「え、マジ?良いの?」
「うん。ほんとに、楽しかったから・・・。快斗君といると、いつも楽しいよ。側にいるとすごく安心するし・・・」
 少し頬を染めながら話す蘭。快斗は、信じられないような思いでそれを見つめていたが・・・。
「蘭!!」
 思わず、蘭に抱きついていた。観覧車がその拍子に少し揺れた。
「キャ、ちょ、快斗君、危ないよ!」
 蘭が慌てて身を離す。
「あ、ああ、ワリィ。―――なァ、隣に座ってもいい?」
「え?うん、良いけど・・・」
 蘭がキョトンとして首を傾げる。快斗は蘭の隣に座ると、改めて蘭を見つめた。
「何?」
 ちょと照れたように蘭が聞く。
「ん、イヤ・・・なんか、すっげーうれしいんだけど・・・。ちょっと信じられなくってさ・・・。蘭って、俺のことただの友達くらいにしか思ってないと思ってたから・・・」
「ただの・・・なわけないじゃない。今日だって、ここに来るのすごく楽しみにしてたのよ」
「ホントに―――?けど、やっぱり1番好きなのは新一なんだろ?」
「うーん・・・。なんて言ったら良いのかな。新一とは比べられない・・・っていうか、全然別の気持ちなの。新一のことはもちろん好きだけど、快斗君のことも・・・」
 そこでちょっと躊躇いがちに、上目遣いで快斗を見る蘭。快斗は、その瞳にくらくらして・・・。そっと肩を抱くと、蘭の唇に自分のそれを重ねようと顔を近付ける・・・。
 とその時、
『Pululululu・・・』
 突然、蘭の携帯電話が鳴り出して、蘭がぱっと体を離した。
 心の中で、チェっと舌打ちする快斗。
 ―――いい所だったのに。
「―――新一」
 携帯の液晶画面を見て、蘭が呟く。
 快斗は、思わず顔を顰める。
「―――もしもし」
「―――最初から、こうすりゃ良かったんだよな」
 なぜか息の荒い、新一の声。
「え?」
「馬鹿正直に探し出してやろうなんて思ってた俺が馬鹿だったんだ」
「新一?何・・・」
 言ってんの?と言おうとした蘭の台詞を、新一が遮る。
「今、どこにいる?」
「え・・・どこって・・・」
「トロピカルランドにいることは知ってる。そんなかのどこにいるか聞いてんだよ」
 明らかに怒ってる、新一の低い声。
 蘭は、呆然として声が出なかった。
「おい、蘭?黙ってねーで何とか言えよ」
「あ、あの―――」
 何か言おうとして口を開いた蘭の手から、スッと携帯電話を取った快斗。
「よお、遅かったな、名探偵。何やってたんだ?」
 快斗の言葉に、再びビックリする蘭。
「っせーな、オメエ、変装してんだろ?」
「ふーん。ちゃんと気付いてたんだ」
「ったりめーだ!どこにいやがる!」
「なんだよ、自分で探し出すんじゃなかったのか?ギブアップ?」
 面白そうに笑って応える快斗に対し、新一は憮然として応える。
「―――蘭に聞いちゃいけないってルールはねーだろ。早く代われよ」
「やーなこった。今、いいところなんだからよ、邪魔すんなよなァ」
「・・・いいとこって、なんだよ!?てめえ、蘭に何かしやがったら―――」
「まだしてねーよ」
「ま、まだって―――!」
「ヒントやるよ。今、2人きりで夜景見てんだぜ。スッゲーキレ―。なァ、蘭?」
 と、突然話を振られ、蘭はあたふたしている。
「え?あ、あの、快斗くん―――」
「んじゃーな、新一君」
 快斗は勝手に話を終わらせると、さっさと電話を切ってしまった。
「か―――いと君・・・?あの・・・今のって・・・」
「―――ん。黙っててゴメンな。実は新一にばれちまってさ」
「そう・・・だったんだ・・・」
「うん。さっき、新一から電話がきてさ。蘭はトイレに行ってたから、黙ってたんだけど・・・。ゴメンな。もう少しデートを楽しみたかったからさ」
 快斗は、蘭が怒り出すかなと、少し不安に思いながら言ったのだが・・・。
「ううん、いいよ」
 と言って、蘭はニッコリ笑った。快斗は、その反応を意外に感じて、戸惑った。すると、蘭はちょっと照れたように首を傾げ、
「だって・・・今日は、わたしも楽しかったし・・・。今日は1日快斗君の彼女になるって約束でしょ?新一にバレたって分かってたら・・・こんなに楽しめなかったと思うから」
 なんて、本当はそんな風に思っちゃいけないかな、と小さい声で付け加える蘭。そんな蘭が愛しくて・・・快斗は、このままこの観覧車が地上に着かなければいいのにと思っていた。さっきのヒントで、多分新一はこの場所を突き止めるだろう。この観覧車が下へ着く頃には、新一もこの場所へ来ているだろう。そうしたら・・・この楽しいデートは終わってしまう。蘭はまた、新一の“恋人”に戻り、快斗
はただの“友達”に戻ってしまうのだ。
 快斗の胸が痛んだ。
 どうして、蘭は新一の恋人なのだろう?どうして、彼女の幼馴染が自分ではなかったんだろう?どうして・・・自分たちは出逢ってしまったんだろう・・・。
 いまさらながら、その想いが快斗の胸に重くのしかかって来るのだった・・・。
 暫し、二人は黙って見詰め合っていた。そして、蘭が快斗を見つめながら口を開く。
「―――あのね、快斗くん―――」
 ガタンッ!
 鈍い音とともに、観覧車が地上へ着いた。係員によって、扉が開かれる。
「ハイ!お疲れ様でした~」
 にこやかに笑う女性係員に促され、2人で外に出る。もう日はすっかり暮れていた。
 2人無言で歩き出す・・・と、先ほど蘭をナンパしてきた2人組みが座っていたベンチに、新一の姿があった。
 今度は変装に騙される事もなく、2人に気付いたようだ。
 腕を組んで立っている新一の顔は無表情だったが・・・蘭には分かった。その瞳の奥に、怒りの炎が静かに燃えていることが・・・。

「新一・・・」
 蘭は、新一の名を呟いた。新一がそれに反応するように、キュッと眉間にしわを寄せる。
「蘭・・・どういうことか、説明してくれよ」
「あの―――」
「俺が説明するよ」
 快斗が、スッと庇うように蘭の前に立った。新一が鋭い目で快斗を睨みつける。
「快斗君・・・」
 蘭が心配そうに、快斗を見上げる。
「―――大丈夫」
 快斗が蘭に、ニッと笑って見せる。その光景に、ますます険しい表情になる新一。
「―――こないださあ、オメエが事件でいなかったとき、俺が蘭を家まで送ってったろ?」
「ああ?」
「ほら、新出先生が車で蘭を送ってってるって話をした日だよ」
「―――ああ、覚えてるぜ」
「俺、あん時本当に本当は泊っていこうかと思ってたんだよ」
 新一の表情が、これ以上ないというくらい不機嫌になる。
「んで、そん時におとなしく帰る代わりに出した条件がこれなんだよ」
「これって・・・」
「1日デートしてってこと。あん時泊っていくのと、1日デートだったら1日デートのほうが良いだろ?おまえだってさ」
「どっちもダメに決まってんだろ!?」
「けど、蘭は1日デートを選んだ。オメエのためにも、な」
 快斗はニッと笑った。新一歯をくいしばり、快斗を睨みつける。
 蘭の行動は分かる。だが・・・理屈で分かるのと、だから納得出来るか、というのは違う。
「・・・だからって、俺に隠し通すことが出来ると思ってたのか?」
「イーヤ、全然。オメェなら、気付くだろうなとは思ってたぜ」
 快斗はしれっと言ってのけた。
「けど・・・気付かない可能性だってある。俺はそれに賭けた。たとえ半日でも・・・蘭を独り占めしたかった」
「―――蘭は、渡さねえ・・・」
 新一はそう言って快斗を睨みつけると、今度は快斗の後ろに立っている蘭に視線を移した。
「蘭・・・もう、隠し事はしねえって約束だったよな」
「―――ん・・・ゴメン・・・なさい・・・」
「・・・謝りゃ良いってもんじゃねえだろ?何でうそつくんだよ?オメエ・・・何考えてんだよ?まさか、本気で快斗のこと好きになったんじゃ・・・」
 新一の顔色が青くなる。蘭は慌てて、
「違うよ!そうじゃなくて―――」
 即否定する蘭に、新一は少しホッとし、快斗は、やっぱり、と落胆する。が、蘭が続けていった台詞に2人は目が点になる。
「でも、快斗君のことは好きだよ」
「―――は?」
「―――え?」
 2人の反応に、蘭はちょっと怯んだが、気を取り直して続けた。
「あの―――新一のこと好きっていう気持ちとは、ちょっと違うの。なんていうか・・・兄弟とかいたらこんな感じかなあって・・・。一緒にいるのがすごく自然で、隣にいて、手を繋いだりするのも当たり前みたいで・・・、肩、抱かれたりするとちょっとドキドキするけど・・・」
 そこですかさず新一の突っ込みが。
「―――肩、抱かれたのか?」
「え―――う、うん、まあ・・・」
 新一の顔が再び険しくなるのを止めるように、蘭は話を続けた。
「えっと。それでね、側にいると、すごく安心するの。―――新一といるときは、また事件が起きてどこかへ行っちゃうんじゃないかって不安があったり、逆に、新一がわたしのために何かしてくれるのが涙が出そうなくらい嬉しかったり、側にいるだけでドキドキしたり・・・。なんて言ったらいいのかな。新一のすることで一喜一憂してるの・・・。それは幸せなことだけど、やっぱり不安もあって・・・。快斗君といると、そういう不安が全部消えちゃうみたいな・・・そんな感じがするの。―――勝手なこと言ってるって分かってる。“浮気”っていわれたら、そうなのかも・・・でも・・・今のわたしは、快斗君がわたしの前からいなくなっちゃうことなんて、考えられないの。ずっと・・・側にいてほしいって・・・思ってるの」
「・・・・・」
「・・・・・」
 暫し、2人は無言だった。蘭がそんな風に思っていたなんて、快斗も新一も考えもしなかったのだ。
 蘭のほうはといえば、2人が黙ってしまったのを見て、しゅん、と俯いて言った。
「やっぱり・・・こんなの、ダメだよね。こんな勝手なの・・・。ゴメンね、快斗君。新一も・・・ゴメン。こんなわたし・・・いやだよね」
 その言葉に、先に反応したのは快斗だった。
「イ、イヤじゃねーよ!!」
 蘭が、顔を上げて快斗を見る。
「・・・スッゲーうれしいよ。蘭が、俺のことそんなふうに思っててくれたなんて、さ。俺がいることで蘭が安心できるなら・・・ずっと笑顔でいてくれるなら、俺、ずっと蘭の側にいるよ・・・側にいたいんだ」
「快斗君・・・」
 蘭の瞳が涙で潤んだ。それを見て、新一が重い口を開いた。
「蘭・・・」
「新一・・・あの・・・」
「俺とは、別れたいってことか?」
「ち、違うよ!そんなこと、思ってない!」
 蘭は、慌てて首を振った。知らず、涙が溢れてくる。
「わたし・・・新一が好きだよ。大好き・・・別れたいなんて・・・思ったこと、ない。―――でも、新一がこんなわたしを許せないなら・・・わたしのこと嫌いになっちゃったなら・・・。新一に、さよ
なら言われても、仕方ない・・・」
 蘭の頬を涙が伝った。もう、言葉を続けることができなかった。
 新一が蘭の側まで来て、その手で蘭の涙をすくった。
「―――俺から、さよならなんて、言えるわけねえだろ」
「新一・・・」
「俺には、オメエしかいない。オメエのことだけが、好きなんだからな」
「新・・・一・・・」
 新一は、優しく蘭を抱きしめた。そして、快斗の方を見て、
「蘭は、オメエには渡さね―。・・・けど、蘭がオメエを必要としてるなら・・・俺のせいで蘭が不安になって・・・その不安が、オメエといることで消えるなら・・・少し位、側にいても良いってことにしてやるよ」
「―――えっらそーになァ」
 快斗が、新一を睨みつける。
「そのかわり、ぜって―手は出すなよ。俺のいない間に・・・手ェ出しやがったら、今度こそ2度と蘭に会えね―ようにしてやっからな」
 低い声でそう言い睨みつけてくる新一の目をまっすぐ見返しながら、
「―――フン、俺は蘭を悲しませるようなこと、するつもりはねーよ。蘭がその気になりゃ―別だけどな」
 と言って、ニッと笑った。そんな快斗を、また睨みつける新一。その時―――
「あの・・・快斗君・・・」
 新一からちょっと体を離し、蘭が快斗を見上げた。
「ん?」
「あの・・・快斗君て・・・もしかして、私のこと、好き・・・なの?」
 赤い顔をして聞いてくる蘭。快斗も新一も、再び目が点になる。
「・・・は?」
「・・・蘭、いまさら何言ってんだ?」
 怪訝な顔をして聞いて来る新一に、蘭は戸惑ったような顔をした。
「え、だって・・・」
「―――蘭、もしかして、俺の気持ちに気付いてなかったの?」
 快斗が、恐る恐る聞く。
「え・・・じゃ、やっぱり快斗君、わたしのこと・・・?」
「ちょっと待て、蘭。じゃあ何で、快斗に”ごめん”って言ったんだ?」
「それは・・・快斗君はわたしのこと、友達だと思ってると思ったから・・・。あんなふうに、ずっとそばにいてほしいなんて、彼女みたいなこと言ったら悪いかなって・・・。すごい浮気者みたいで・・・友達でもいてもらえなくなると思ったから・・・」
 その言葉に、快斗も新一も大きな溜息をついて、肩をがっくりと落とした。
「あ、あのオ・・・」
 オロオロする蘭を、新一は恨めしそうにジト目で睨み、快斗はクックッと肩を震わせながら、笑い始めた。
「―――も、サイコ―、蘭・・・。新一、苦労するぜ、これじゃあ」
「笑ってんじゃねーよ。・・・人事じゃねーだろ?オメエもよ・・・」
 その言葉に快斗は顔を上げ、新一を見た。暫し、沈黙のあと、快斗はニヤッと笑って、
「そだな。これからは、オメエが事件に借り出されてる時は、俺が悪い虫がつかねーように見張ってなきゃなんねーからな」
 と言った。そして、サッと蘭を新一から離し、優しく包み込むように抱きしめると、蘭の頬にチュッとキスをして、耳元に囁いた。
「これからも・・・よろしくな」
「!!!てめええ―、手ェ出すなっつっただろうが―――!!」
 すかさず新一が、蘭を奪い返そうと手を伸ばす。が、快斗はサッと蘭の手を引っ張って駆け出すと、笑いながら新一に言った。
「今日の蘭は、俺の彼女なんだよ!明日になるまで、オメエには返さね―からな!行くぜ、蘭!」
「待てっ、このヤロ―!!」
 必死に追いかけてくる新一を見て、蘭は
「ごめんね、新一!今日は、快斗君と約束しちゃったから・・・後で電話するねー!」
 と言って、手を振ったのだった。
 それを見て、再び脱力する新一・・・。
「あいつ―――ホントに分かってんのか?この状況が・・・。勘弁してくれよ・・・」
 力なくうなだれる新一。だが、なぜか心は落ち着いていた。
「しょーがね―な・・・今日1日は、目ェつぶってやっか・・・」
 そう呟き苦笑いすると、ゆっくり出口に向かって歩き始める新一だった・・・。


                                          fin

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちょっと長くなってしまいました。変な終わり方ですいません。でもなんか、わたし的にこういう形がしっくりきてしまって・・・。

 このシリーズはわたしが初めて書いたお話です。今でもやっぱりこの組み合わせが大好き♪

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