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*このブログは名探偵コナン・ごくせん・花より男子・君に届け&ゲーム(ラブレボ・新撰組など)の二次小説のブログになります。
*このブログは管理人個人によるファンサイトです。 原作者や出版社等とは何の関連もありません。
*あくまでも管理人の二次世界の小説ですので、人によってはイメージに大幅なずれがある場合もございますのでご注意ください。
*閲覧については自身の責任においてお願いいたします。
*このブログについての誹謗中傷・クレームなどの書き込みはおやめください。
*このブログの無断転載複製を禁じます。
*万が一このブログをお読みになって不快感を感じられたとしても責任は負いかねますのでご了承ください。

挑発

Category : 乙女的恋革命☆ラブレボ!(若月×ヒトミ)
 エレベーターから出ると、ヒトミの姿が目に飛び込んできた。  
 どうやらヒトミも郵便物を見に来たところらしい。
「あ、一ノ瀬さん」
 蓮に気付いてにっこりと微笑む。その無防備な笑顔は時に罪だということを、彼女は知らない。
「・・・久しぶりだな」
「そういえばそうですね~。一ノ瀬さんたちが卒業してから、もう1ヶ月ですもんね。前は学校でも会えましたけど、今は・・・神城先輩にもしばらく会ってないなあ」
 懐かしげに目を細めるヒトミを見つめる蓮。その瞳に、どこか切なさがにじんでいることに、ヒトミは気付かない。
「・・・先生も、元気そうだな」
「え?」
「若月先生だよ。昨日見かけた。お前は毎日会ってるだろう」
「あ、は、はい、まあ・・・。そ、そうですね、相変わらずですよ」
 顔を赤らめ、慌てたように視線をさまよわせながら答えるヒトミに、思わず苦笑いする。
 これでごまかしているつもりなんだろうか。全く分かりやすい・・・。
 ヒトミが、かの不良保険医、若月龍太郎と付き合っているということは、とっくに知っていた。当人達は隠しているつもりだろうが、龍太郎はともかく、ヒトミは思っていることが全て顔に出るタイプで、蓮には彼女の考えていることなど手に取るようにわかるのだった。
 分からなければ、きっとこんな苦々しい思いもしなくて済んだだろうに・・・。
 だが、その苦しい思いすら蓮には新鮮なもので・・・。高校を卒業した今でもこのマンションにとどまっているのは、このヒトミが原因という事実を認めざるをえないほど・・・。

 ふと、マンションの入り口のほうへ目を向けると、龍太郎がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
 いつも飄々として、蓮に対しても余裕のある態度を崩さない龍太郎。そんなところも癪に障るのだが、今は更に憎い恋敵という要素も加わって、彼の姿を見つけたとたん、蓮の眉間には深いしわが寄せられた。
「一ノ瀬さん?どうしました?」
 ヒトミが不思議そうに小首を傾げる。
 今のヒトミの位置はちょうど入り口に背を向けていて、彼女はまだ龍太郎の存在に気付いていなかった。
 それに気付いた蓮は、何かを思いつき、ほんの少し口の端を上げて微笑んだ。
 その怪しげな笑みに、ヒトミは一瞬どきりとするが・・・。
「桜川」
「はい?」
「お前、ずいぶんときれいになったな」
「―――――は?」
 空耳かと、疑うようなせりふだった。一ノ瀬蓮の口から、そんな言葉が出てこようとは、ヒトミは予想だにしなかったのだ。
「なんだ、褒めてやってるのにその顔は」
「だだ、だって、一ノ瀬さんがそんなこと・・・ど、どこか具合でも・・・」
「俺はいたって健康だ。失礼なこと言うな」
 むっと顔をしかめた蓮にヒトミは慌てて謝ろうとするが・・・。
「まあいい。しかし、本当にきれいになった。それじゃさぞかしもてるだろう」
「そ、そんなことはないですけども・・・」
 蓮に、言われなれないことを立て続けに言われ、ヒトミは明らかに慌て、しどろもどろになっていた。
「そういえば先日、鷹士さんに会ったときもこぼしていたぞ。お前宛に、ラブレターらしきものが届くようになって心配だと。あの人は相変わらずのシスコンだな」
 クックッとおかしそうに笑う蓮。ヒトミは思わず顔を赤らめた。
「お、お兄ちゃんてば・・・たまたま、なんですよ。別に、そんなにしょっちゅうもらってるわけじゃ・・・」
「・・・妬けるな」
 低く、少し甘さを含んだ蓮の声に驚き、顔を上げるとそこには見たこともないような、優しい笑みを浮かべた蓮の顔があり・・・。
「あ、あの・・・・・?」
 どぎまぎと騒ぐ心臓を静めるように、胸の前で手を合わせるヒトミ。
 そのヒトミの頬に、蓮の繊細な手が優しく触れ・・・
「―――――よお」
「!!」
 突然後ろからかけられた声に、それこそ飛び上がるほど驚き、はじかれたように振り向いたヒトミの目の前には、とてつもなく不機嫌な顔をした龍太郎が立っていたのだった。
「せ、先生!び、びっくりした!いつの間に?」
「・・・たった今、だよ。そんなにびっくりするほどやばい場面だったのか?」
 不機嫌そうに言い放つ龍太郎に、ヒトミはあわてて首を振ったが・・・。
 見ていた蓮は愉快そうにニヤニヤと笑っている。
「――――一ノ瀬、ずいぶん楽しそうだな」
 龍太郎の言葉に連は肩をすくめ、
「別に・・・。いつも余裕のある先生にしてはずいぶんと虫の居所が悪いようだと思っただけですよ」
 と言った。
 その言葉に、龍太郎の眉間にはますます深いしわが刻まれる。
「―――――じゃあ、僕はもう行きますよ。桜川、またな」
 蓮の声に、ヒトミはまたも赤くなり、
「あ、は、ハイ!おやすみなさい!」
 と言う声も上ずり・・・・
 龍太郎の不機嫌さは最高潮・・・。


「―――――何してたんだよ?」
 そのままエレベーターの前で、蓮の姿が見えなくなると龍太郎が口を開いた。
「え?何って、わたしは郵便物を取りに・・・」
「じゃなくて、一ノ瀬と何してたっつってんだよ?」
「べ、別に何も・・・」
 先ほどのことを思い出し顔を赤らめるヒトミに、龍太郎の眉はピクリと吊り上がり・・・
「何も?へーえ・・・じゃあ俺の見間違いか?あいつがこうして―――」
 と言って、龍太郎はヒトミの頬に手を添えた。
「お前に触れてたように見えたんだがなあ?」
「え、えーと、それは・・・・」
 ヒトミは何か言おうとしたが、どうしてそうなったのかヒトミ自身にもわからないため、言う言葉が見つからない。
 と、突然ダンッと鈍い音と共に龍太郎の拳がヒトミの顔のすぐ横の壁を叩いた。
「・・・・・・気にいらねえ・・・・・」
「へ・・・・・?」
 完全に目の据わってしまっている龍太郎に、ヒトミはいやな汗が背中を伝っていくのを感じていた。
「一ノ瀬のヤローの、あの人を小馬鹿にしたような態度も、おめえの、あいつと一緒にいるときの態度も・・・・気にいらねえっつってんだよ!」
「わ、わたし別に!あれは一ノ瀬さんが突然変なこと言うからびっくりして・・・!」
「変なこと?」
「あ・・・・」
「・・・・・なんだよ、言ってみろよ?あいつはなんて言ったんだ?」
「えと・・・・き、きれいになったって・・・」
「・・・・・ほーーーお・・・・」
「そ、そんなこと、言ったことないんですよ!いつもいやみばっかりで、ほめられたことなんて・・・。だから、びっくりしちゃって・・・」
「・・・・・ふん」
 不機嫌なオーラを出しまくってる龍太郎の顔を、下から恐る恐る覗き込むヒトミ。
 どきどきしながらも、先ほどから頭にある疑問を口に出してみる。
「あの・・・先生、もしかして・・・」
「ああ?」
「あの・・・・妬いてます・・・・?」
 ヒトミの言葉に、龍太郎は一瞬目を見開いたが、すぐにまた眉間に皺が寄ってしまった。
「おまえ・・・・・」
「は・・・?」
「遅い!!」
「へ・・・・・?」
「気付くのが、遅いっつってんだよっ!」
 龍太郎の剣幕に目をぱちくりさせるヒトミ。
 そんなあまりにも鈍いヒトミに、龍太郎は大きくため息をつき・・・
「!?んっ!!!」
 突然、噛み付くようなキスをした。
 当然ヒトミは事態が飲み込めずに目を白黒・・・。
 龍太郎を押し返すようにその胸を押したが、龍太郎はびくともせず、やがて深いキスにだんだんと体の力は抜け、立っていられなくなり・・・・ずるっと崩れそうになったところで漸く開放され、ヒトミの体は龍太郎の力強い腕に支えられた。
「は・・・・も・・・・こ、こんなとこで・・・!」
 息も絶え絶えに言葉を紡ぎ、龍太郎を睨み付けるヒトミ。が、龍太郎は平然とそれをかわし、肩を竦めて見せた。
「何か問題でもあるか?」
「だって、誰かに見られたら!」
「いいじゃねえか、見せ付けてやれば。ちょうどいい虫除けになる」
「む、虫・・・?」
「油断してると、すぐに一ノ瀬みてえな虫が寄ってきやがるからな。大体、隙だらけなんだよお前は」
「そ、そんなこと・・・」
「―――――まあいい。で?」
「え?で・・・って?」
「もちろん、俺んとこに寄ってくんだろ?ヒトミちゃん」
 にっこりと満面の笑みで、だが有無を言わせぬ雰囲気で龍太郎が迫り・・・
「え、え~と、この場合、わたしに選択肢は・・・?」
「ねえな」
 即答され、肩を抱かれる。
 ―――――ああ、やっぱり・・・
 半分あきらめつつも、その腕の力強さが、どこか暖かいことがなんだかうれしいヒトミだった・・・・。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

先生の次に、お気に入りの一ノ瀬さんです。
こんな人が身近にいたら、目の保養になるだろうなあ・・・。
クールビューティばんざいvv

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 そんなわけで、サイトにアップしていたのはここまで。
またラブレボネタも書きたいなあ。と思ってます。

 ランキングのご協力、いつもありがとうございます(^^)
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Angel~それぞれの想い~

Category : Angel (コナン・新蘭)
 ケーキ屋を出た蘭と快斗は、快斗の家に向かって歩き出した。
「なあ、そのケーキ、1つ多くねえ?」
 快斗が、蘭が持っているケーキの箱を見て言った。
「え?そんなこと無いでしょ?おば様と、快斗と、わたしと・・・」
「あと1つは?」
 その言葉に、蘭はくすっと意味深な笑みを浮かべた。
「な、なんだよ?」
「もうひとつは青子ちゃんの分よ」
 蘭の言葉に、快斗の頬が赤く染まる。先ほどまで新一に見せていた意地の悪そうな顔とは別人のようだ。
「なんで、あいつの分なんか・・・」
「あら、青子ちゃんってケーキ好きでしょう?こういうものは大勢で食べたほうがおいしいし。それに・・・」
「それに?」
「快斗だって、一緒に食べたいでしょ?」
 その言葉に、快斗はじろりと蘭を睨む。蘭のほうは涼しい顔で前を向いている。
「あのなあ、俺は別にあいつとは・・・」
 顔を赤らめながら文句を言う快斗を、蘭は面白そうに眺め、
「ふーん、そう?」
 と言った。
 青子と言うのは、快斗の家の隣に住む同じ年の女の子だ。快斗の幼馴染で、蘭とも顔なじみ。高校が違うため、園子や志保たちとは面識がないのだ。その青子のことを、快斗は少なからず想っているのだが、その想いは青子に伝わってはいない。蘭のほうはそんな快斗の想いに気付いていて、いろいろ気を使ってくれているのだが・・・。

 快斗は、こっそりと溜息をついた。
 鈍感で、いまいち子供っぽいところのある青子。実は蘭が快斗の家に同居することになって、1番喜んでいるのは青子だったりするのだから、快斗としては複雑だ。少しは、ヤキモチを焼いてくれても良いのに・・・。

 そんなわけで、最近ちょっと不貞腐れ気味の快斗。自分と蘭を見て、やきもきしている新一についいやみを言ったりしてしまうのも、そのせいかもしれない。
 
 一方の蘭は、なんだか妙にうきうきしている自分を不思議に思ったりしていた。
 ―――新一さんと、本当はもうちょっとゆっくりお話したかったなあ。この間会ったばっかりなのにすごく親近感が沸くのはどうしてだろう?まるですごく昔から知っている人みたいに、一緒にいると落
ち着く感じがする・・・。今度、本当に何かお菓子を作って、持っていこうかな・・・。


 そして、こちらはすこぶる機嫌の悪い新一―――。
 喫茶店のテーブルでコーヒーのおかわりをがぶ飲みしているところだった。
 そこへ、ひょいと顔を出したのは・・・
「ちょっとォ、なあんで新一さんがこんなところにいるわけえ?」
 心底驚いた顔で新一の顔を覗き込んできたのは園子である。その後から顔を出したのは志保。
「・・・別に。コーヒー飲みに来ただけだよ」
 そっけなく答えた新一からテーブルに目を移すと、そこには食べ終えたケーキ皿とティーカップが1つ・・・。
「・・・もしかして、誰かとデートだった?」
 園子の言葉に、新一は肩をすくめた。
「んなんじゃねえよ」
「ご機嫌斜めね。誰かさんに振られたのかしら?」
 新一の向かい側に座って、クスリと笑う志保に、新一の眉がぴくりとつり上がる。
「おめえな・・・」
「あら、図星?」
「え――!うっそー、新一さん、振られたのお!?」
 志保の隣に座りながら大げさにびっくりして見せる園子に、新一の顔が引き攣る。
「そんなんじゃねえ!おめえら、勝手なこと言ってんじゃねえよ!」
「あら、こわい」
 まったくこたえていない顔で肩をすくめる志保ときょとんとした表情で新一を眺める園子。
 新一は溜息をついた。
 ―――こいつらに何言っても無駄、だよな・・・。
「―――おい、志保」
「何?」
「おめえ、蘭さんに妙なこと言うなよな」
「妙なことって?」
「俺が、女をとっかえひっかえ連れてるようなこと、言っただろ」
「あら、まずかった?」
「あたりめえだろ!?人のことプレーボーイみてえに・・・。彼女に誤解されたらどうしてくれるんだ」
 その新一のせりふに、志保と園子は顔を見合わせた。それを見て、新一はしまった!と思ったが、後の祭で・・・
「ふ―――ん、そういうことなんだァ」
 園子がニヤニヤしながら言うと、志保も意地の悪い笑みを浮かべ、
「それはそれは・・・。なんだったら協力して差し上げましょうか?お兄様」
 と言った。
 新一は引き攣った笑みを浮かべ、
「いや、結構・・・。俺、もう行くから」
 と言って、席を立ったのだが・・・
「あ、ねえ、新一さん。わたしたち、ここでケーキ食べて行きたいんだけどなあ」
「・・・食べてきゃいいだろ?」
「2人じゃ寂しいし、蘭でも呼びましょうか?」
「あ、それ名案vvじゃ、早速電話して・・・」
「・・・・・・これでいいだろ?」
 そう言って、溜息と共に新一がテーブルに置いたのは2枚の千円札・・・。
「あら、悪いわね、お兄様v」
「ほーんと。ご馳走さまァ、新一さんv」
「・・・・・・・・」
 
 喫茶店を出た新一がどっと疲れを感じたりしていたことは言うまでも無く・・・
 この恋を成就させるには、まだまだ苦難の道のりが続くであろうことは容易に想像できたのだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


またまた短いお話になってしまいましたが・・・。
楽しんでいただければ嬉しいです♪次回は、何とか2人をもう少し近付けてあげたいですね。

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Angel~接近~

Category : Angel (コナン・新蘭)
 ―――振り向かせてやろうじゃねーか。彼女をよ。―――
 

 あれから2週間・・・。結局新一は事件に追われる毎日でろくに学校にも行けず、当然蘭との仲も何の進展もなく・・・。
 
―――ったくよォ。なんだってこの世の中事件ばっか起きるかね。
 その事件が起きれば食事も忘れるほど夢中になってしまう人間のセリフとは思えなかったが、そんなことは棚にあげて、新一は溜息をついた。
 ―――彼女、どうしてるかな・・・。あの日もろくに話が出来なかったし・・・。また会いてえな。などと考えながら、近くの本屋に行くべく道を歩いていると―――
「あれ?新一さん?」
 その声に一気に心臓の鼓動が早くなり、パッと振り向く新一。
「あ、やっぱり。こんにちは」
 と言ってニッコリ笑ったのは、今まさに会いたいと思っていた人物・・・毛利蘭だった。
「お久しぶりです。あの・・・覚えてます?わたしのこと」
 ぽかんと口を開けたままの新一を不思議に思ったのか、蘭が小首を傾げて聞く。
「あ、ああ、もちろん、覚えてるよ。毛利蘭さん、だよね」
 漸く口を開いた新一。蘭も安心したように笑った。
「はい!良かったァ。1回しか会ってないから忘れられちゃったかと思った」
 と言って微笑む蘭は、まさに天使のように新一には見え・・・
 ―――かわいいなあ。やっぱり・・・。ここで会えたのも何かの縁だよな。
「蘭さん、今時間ある?」
「え?ええ、ありますけど・・・」
「良かったら、一緒にお茶でもどう?もちろん俺のおごりで」
「ええ?で、でも・・・」
 突然誘われ、蘭は戸惑っているようだった。
「ダメかな。今日、久しぶりに暇なんだけどちょうど1人で退屈してたんだ。少し話し相手になってもらえると嬉しいんだけど」
 決して強引にならないように。でも少しくらい良いかなと思わせるような言い方で。
 蘭はクスッと笑うと、
「はい、良いですよ」
 と言った。
 ―――やった!
 新一は思わず心の中でガッツポーズを決めた。
 

 2人は駅前のケーキがおいしいと評判の喫茶店に入った。
「前に、志保と園子が言ってたんだ。自分が入るのは初めてなんだけど」
「すごく素敵なお店。わたし、ケーキ大好きなんです」
「それは良かった。好きなもの頼んで良いよ」
「はい、それじゃあ遠慮なく」
 蘭は小さ目のケーキを2種類と紅茶を頼み、新一は蘭に勧められて、あまり甘くなさそうなケーキを1つとコーヒーを頼んだ。
 ほどなく出されたケーキをおいしそうに食べる蘭に、思わず見惚れる新一。
「これ、すっごくおいしい!」
「そう?良かったらもっと食べても良いんだぜ」
 というと、蘭はちょっと頬を染め、
「そんなに食べたら太っちゃいますよォ」
 と言った。そんな照れた表情もとても可愛く、新一は顔が綻ぶのを止められなかった。
「大丈夫、蘭さんならちょっとくらい太ったって。きっと可愛いよ」
「え・・・やあだ、新一さんってば。わたしにそんなこと言っても何も出ませんよォ」
「嘘じゃないって。蘭さん、すごく可愛いし。もてるだろ?」
 と新一が言うと、蘭は真っ赤になって首を振った。
「もてませんよお、わたしなんて。志保ちゃんのほうがよっぽど・・・」
「志保ォ?あいつは性格に問題あるからなあ」
「そんなこと・・・とっても優しいですよ。最初は冷たい感じに見えたけど、今は全然・・・」
「そうかね・・・」
「はい!わたしのことより・・・新一さんってすごくもてるんでしょう?新一さんの誕生日とクリスマス、バレンタインデ―には、家中が贈り物でいっぱいになるって言ってましたよ」
「家中・・・は大げさだけど・・・。まあ、贈り物はくるけど。知らない人からがほとんどだしね」
「そうなんですか?」
「うん。―――蘭さんは・・・彼氏とかいないの?」
 と、新一はさり気なく聞いてみた。すると、蘭はちょっと赤くなり、
「いないですよォ。言ったでしょう?わたしもてないんですよ」
 と俯いて言った。
「新一さんは?今はいるんですか?」
「え?今はって・・・」
「あ、ごめんなさい・・・。志保ちゃんが、たまに家に来たり、街で見かけるけどその度に彼女が違うって・・・」
 ―――あいつは~~~、余計なこと言いやがって・・・。
「それは、彼女じゃないよ」
「え?」
「俺、彼女なんていないよ。その、志保が見たって言う彼女たちは・・・その、勝手に家まで来ちゃったり・・・たまたま暇な時に誘ってきたりする子とかで・・・。別に彼女ってわけじゃないんだ」
「そう、なんですか?」
「うん。だから、親密な関係とかじゃないよ。映画見に行ったりするくらいでさ」
 新一の説明に蘭は納得したのか、笑って頷き、紅茶を飲んだ。
 ―――ったく、志保の奴、ろくなこと言わねえんだからな。彼女に誤解されちまったらどうするんだ!
「でも、新一さんてすごいですよね。いろんな難事件を次々に解決して・・・」
「や、別に・・・」
「すごいですよォ。―――ホント、うちのお父さんにも見習わせたい・・・」
「え?今なんて?」
 最後のほうのセリフが良く聞き取れず、新一が聞き返すと、蘭はハッとしたように手で口を抑え、
「あ、いえ、なんでも・・・」
 と言って、残っていたケーキを一切れ、口の中へ持って行こうとしたが―――
「いただき!」
 と、突然男の手が伸びてきたかと思うと蘭の腕を掴み、そのままケーキはその男の口へ―――
「!!快斗!」
 蘭が驚いてその人物を見て言った。
 そこに立っていたのは、新一に良く似た男で・・・
 新一の顔が一気に歪んだ。
 ―――こいつが・・・黒羽快斗って奴か?・・・そんなに似てるか?俺に。いや、そんなことより、今こいつ蘭のケーキを食いやがったな。蘭の使ってたフォークから・・・ってことは、間接キスしたってことじゃねェか!やろー・・・
「何で快斗がここにいるの?」
「そりゃこっちのセリフだよ。買い物に行ったんじゃねえのかよ?蘭」
 快斗が仏頂面をして応える。
「うん、そうだけど・・・たまたま新一さんに会って・・・あ、ごめんなさい新一さん、この人わたしの従兄弟で。黒羽快斗っていうんです。志保ちゃんとかに聞いたことあります?」
「ああ、あるよ。俺に似てるって言われたけど・・・」
「そうなんです。わたしもビックリして・・・テレビとかで新一さん見た時も似てるなって思ってたんですけど、実際会ってみて・・・やっぱり似てますよね」
「そう・・・かな」
「そんなに似てるかね。俺も実際会うのは初めてだけどさ」
 と言いながら、快斗は蘭の隣に座った。
 それを見た瞬間、新一の眉がピンっと跳ねあがり・・・。新一の方をチラッと見た快斗がそれに気付き、微かに笑みを浮かべた。
「で?工藤さんに会ったからって、何でここにいるわけ?」
 と快斗が聞くと、蘭が口を開く前に新一が、
「俺が誘ったんだ。お茶でもどうかってね」
 と言った。快斗と新一の視線が絡み、一瞬火花が散る。
「へェ、名探偵工藤新一もナンパとかするんだ?」
「ちょ、ちょっと快斗!!新一さんに失礼じゃない!」
 蘭が慌てて言うが・・・。新一の額にはすでに青筋が浮かんでいた。
「ご、ごめんなさい、新一さん。快斗って口が悪くって・・・もう!快斗も謝ってよ!」
 と蘭が快斗を睨むと、快斗は肩を竦め、そっぽを向きながら
「すいません」
 と言ったが・・・、ちっとも悪いと思っていないと言うのは傍目にも分かり・・・
「もう!!新一さん、ごめんなさい、本当に・・・」
「いや、蘭さんが悪いわけじゃないからね」
「すいません・・・あの、じゃあわたしはこれで・・・。今日はありがとうございました」
 と言って、蘭が席を立った。新一はそれを見てちょっと慌てて、
「え、もう行くの?」
 と言った。
 ―――せっかく会えたのに・・・
「はい。ご馳走様でした。あの、今度お礼に何か、差し入れ持って行きますね。ご迷惑じゃなかったら、ですけど」
 と言って、蘭はニッコリと笑った。その笑顔に新一は一瞬見惚れ・・・
「―――全然、迷惑なんかじゃないよ。お礼なんか別に良いけど・・・いつでも遊びに来てくれよ」
 と言った。蘭はちょっと頬を染め、嬉しそうに頷くと
「はい!じゃ・・・ほら、快斗行こう」
 いつのまにかケーキを全て平らげてしまった快斗の腕をとり、促した。
「あいよ。そんなにひっぱんなって―――。じゃ、失礼します。工藤さん」
 快斗は新一を見て意味深な笑みを浮かべると、そのまま出口に向かった。
 蘭も新一に向かってぺこりと頭を下げると快斗と一緒に出口に向かって行った。

「ね、ここのケーキおいしいでしょ?おば様に買っていこうよ」
「ああ、そうだな」
 仲良く話しながら歩いていく2人を見送りながら―――
 ―――あのやろォ・・・。ゼッテ―蘭はわたさねえぞ。従兄弟だってことをいいことにやりたい放題しやがって・・・。

 見たところ、蘭にとっては快斗はただの従兄弟。別に恋愛感情はなさそうだった。だが、快斗の態度は・・・新一の気持ちを知って面白がっているだけなのか、本気で蘭のことが好きなのか・・・その真意は測りかねたが、どちらにしろ新一にとって面白くないことには変わりない。

 蘭に近付くには、あの黒羽快斗をどうにかしなければいけない・・・。

 新一はそう思って、事件を解くとき以外では初めて、頭を悩ましたのだった・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 喫茶店の場面だけで終わっちゃいました。
 ま、快斗が出せたから良いか。
 またがんばって続き考えますね。
 それでは♪

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Angel~出逢い~

Category : Angel (コナン・新蘭)
☆このお話はパラレルです。
新一の妹に志保、志保の同級生に園子と蘭がいます。快斗は蘭のいとこという設定になっています。



 高校生探偵工藤新一。
 その名を日本全国に轟かせて数ヶ月―――。忙しさのあまり、学校の出席日数が危うく足りなくなりそうだったのだが、どうにか無事に2年生に進級することが出来――― 
 久しぶりに事件も何もない日、新一は学校からまっすぐに家に帰ると、リビングでコーヒーを飲んでいた。
 有名な推理作家である父優作と、元人気美人女優の有希子はアメリカに滞在していて、今、この大きな家には新一と、妹の志保が2人で住んでいた。
 志保は中学3年生。中学生にしては容姿も大人っぽく、妙に冷めたところのある女の子だった。兄に対してもいたってクールで、
「高校生なんかに頼っているようじゃ、日本の警察も先が思いやられるわね」
 と言い放った。頭も良く美人なのに男が寄り付かないのは、クールすぎる性格に問題がある、と新一は思っていた。


 玄関が開く音がして、女の子の話し声が聞こえてくる。
 ―――また園子が来たのか?
 志保のクラスメート、鈴木園子は鈴木財閥のお嬢様なのだが、気さくで明るい性格のため、お嬢様という感じのしない普通の女の子だった。なぜか志保と馬が合うようで、良くこの家にも遊びに来ているのだった。
 ―――ん?もう1人いるのか・・・?
 志保と園子の声に混じって、聞きなれない声が聞こえてきた。
「―――あら、いたの?珍しいわね」
 リビングに入って来るなり、志保が新一を見て言った。
「あのなァ―――」
 文句を言おうとして、志保のほうを見て―――止まってしまった。志保と園子に挟まれるようにして立っている少女。その少女の姿を見た途端、他のものが見えなくなってしまったように・・・新一の目は、少女にくぎ付けになってしまった。
 長い髪は黒く艶やかで、大きな瞳は潤んだようにキラキラと輝き桜色の唇は軽く結ばれている。華奢だが均整の取れた体つきで制服の上からでもその凹凸がはっきりと分かるほどだ。
 新一がその少女に目を奪われ言葉を発せられないでいると、両隣にいた園子と志保が顔を見合わせ、にやりと笑った。真ん中の少女はきょとんとした表情で新一を見ている。
「ふーん・・・。新一さんでもそんな顔することあるんだ」
 と言う園子の言葉に、新一はハッと我に帰った。
「―――どういう意味だよ?」
 軽く横目で睨みつける。が、園子はそれをものともせず、
「べっつにー」
 と、横を向いて言った。志保は相変わらずニヤニヤしていたが、蘭が自分の方を見たのに気付き、今度は優しくにこっと笑った。
「お兄ちゃん、紹介するわね。彼女、4月にうちのクラスに転校して来た毛利蘭さんよ」
 蘭、と呼ばれたその少女はペコッと頭を下げた。
「はじめまして、毛利蘭です」
 はにかむような笑顔で、新一を見る。
「あ、はじめまして―――工藤新一です」
 新一は慌てて立ち上がると、蘭のほうに一歩近づいた。そして、さり気なく右手を出す。蘭はちょっと躊躇いながらも右手を出し、2人は握手を交わした。2人の視線が絡み合う。
「蘭、わたしの部屋へ案内するわ」
 と、志保が2人の邪魔をするように、蘭の腕にそっと手をかけた。新一はチラッと志保を睨んだが、蘭は気付かずに頷いた。
「あ、うん」
「じゃあね、お兄ちゃん」
 クスッと笑い、意味ありげな視線を投げ、志保は蘭を連れて行ってしまった。園子もその後に続いて行こうとしたが、ふと入り口のところで止まるとパッと振り返り、ニヤッと嫌味な笑い方をした。
「―――んだよ?」
 と、新一が顔を顰めると、園子はちょっと後ろを振り返って見て、蘭たちが行ってしまったのを確認してから口を開いた。
「―――新一さん、もしかして蘭に一目ぼれ?」
「―――そんなんじゃねーよ」
 内心図星を指され、動揺していたが表面には出さず、ポーカーフェイスで言った。
「ふーん・・・?ま、良いけど。蘭を好きになると苦労するわよ」
「なんだよ、それ?そんなにわがままな子なのか?」
 見た目、そんなふうには見えないが・・・
「違うわよ。蘭はすっごくいい子よ。素直で優しくて・・・。ホント、いまどき珍しいような純粋な女の子って感じ」
 今時の女の子、園子が言うのも妙な気はするが――ー
「おまけに可愛くってスタイルも良くって運動神経も抜群―――とくりゃ、もてないほうがおかしいでしょう?」
「そんなに・・・もてんのか?」
「そりゃもう!男子たちの間じゃ蘭のファンクラブを作ろうなんて話が出てるくらいよ」
「そりゃすげーな・・・」
「けど・・・蘭てちょっと・・・」
 と言って、園子は困ったような顔をした。
「なんだよ?何か問題あんのか?」
「問題って言うか・・・あの子、気付いてないのよね」
「何に?」
「自分がもてることに」
「・・・は?」
「ぜんっぜん気付かないのよ。かなり本気で、自分のこと可愛いって思ってないのよ」
「・・・そりゃ、珍しいな・・・」
「でしょ?あれはほとんど天然ね。―――だからなんか、危なっかしいのよね。ほっとけない感じ」
 ―――分かる気はするなあ。守ってやりたくなるよなあ、あの笑顔見ると。
 と、先ほどの蘭の笑顔を思い出していると、園子が見透かしたようにニヤッと笑い、
「―――新一さん、マジで惚れてない?」
 と言った。
「ま、ファンクラブだなんて騒いでる男どもはさておき、かなり強力なライバルがいるから、がんばってね」
「強力なライバル?誰だよ、それ」
 思わずむっとして聞くと、
「あら、やっぱり気になる?」
 と、にやりと笑う。
「―――オメーなァ、からかってるんなら―――」
「いや―ね、からかってなんかないわよ。―――前に話したことあるでしょ?新一さんにそっくりな男の子のこと」
「ああ、マジシャンの子供だとか言う・・・」
「そう。黒羽快斗くんって言うんだけどさ、彼、蘭のいとこなのよ」
「へェ、けど、いとこなら別に―――」
「だって、いとこ同士って結婚できるじゃない」
「そりゃそうだけど―――」
「蘭ね、今快斗くんちに居候してるのよ」
「は?」
 新一は思わず目を丸くした。居候って、つまり・・・
「実は、蘭のご両親、今別居中でね。蘭はお父さんと一緒に住んでたんだけど、彼女お母さんの代わりに家事を全部こなしてたらしいのよ。んで、今年は受験でしょ?それじゃゆっくり勉強できないからってことで、快斗くんちに来ることになったらしいわ」
「ふーん・・・。じゃ、受験が終わったらかえんのか?」
「そういうことね。でもさ、あの2人かなりイイ感じなのよね。今日は、快斗くん用事があるからって先帰っちゃったけど、いつも行き帰りずっと一緒だし。学校でも快斗くんがいつも側にいるから他の男どもは近付けないって感じだもの」
 新一は聞きながら、胸がムカムカしてくるのを感じていた。学校でも家でもいつも蘭の側にいるというその男―――黒羽快斗に嫉妬していた。
 新一に言い寄ってくる女性は、まさに吐いて捨てるほどいる。“高校生名探偵”というネームバリューもあり、顔良しスタイル良し、頭も良くてスポーツ万能となれば、もてないはずはないのだが・・・。
 どんな美人に言い寄られても、新一は女性に本気でのめりこむことはなかった。きれいな女性といるよりも、難解な事件を解いているほうが新一にとってはよっぽど充実していたし、新一らしく在れた。そしてまた、どの女性も1度でも優しくしようものならすぐに勘違いし、終いには事件にばかり夢中になる新一を責め、新一に冷たくされれば泣き喚く―――。そんな女性ばかり見てきたので、女性、というと警戒してしまう癖までついてしまった。
 だが―――蘭に対してはそういった警戒心というものが全く働かない。そればかりか、もっと蘭を知りたい、彼女と話がしたい、とまで思ってしまっていたのだ。こんな気持ちは初めてだった。
 初恋、と言ってもいいかもしれないこの恋。
 ―――最初からそんなライバルがいるなんてな・・・。
 新一はニヤッと笑って思った。
 ―――けど、まだ付き合ってるとか言うわけじゃなさそうだし―――振り向かせてやろうじゃねーか。彼女をよ。
 新一の不敵な笑みを見て、園子は背筋が寒くなったような気がした。
「ちょっと、いつまで話し込んでる気?」
 入り口に、志保が腕を組んで立っていた。
「あ、ごめーん」
 園子がぺろっと舌を出す。
「蘭が待ってるわよ。ね、お茶とお菓子持っていくから手伝って」
「オッケー。じゃね、新一さん。がんばってね」
 ニッと笑って、志保の後についてキッチンへ行く園子。
「何のこと?」
 と、志保が訝しげに聞く。
「おい!余計なこと言うなよ!」
 新一が慌てて怒鳴る。志保に知られたら、後で何を言われるか分からない!
「はーい」
 クスクス笑いながらの返事。信用して良いものかどうか・・・いまいち心配な新一だった・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 蘭ちゃん出番少なくなっちゃいました。きららの個人的趣味で、また快斗が出て来ますが、今回はあくまでも新蘭メインです。
 次も読んで頂けたら嬉しいです♪

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有意義な時間の使い方。

Category : 乙女的恋革命☆ラブレボ!(若月×ヒトミ)
 日曜日。
 久しぶりに兄の鷹士は出かけていて、ヒトミの部屋に龍太郎が押しかけても誰も文句を言う人間はいない・・・はずだった。
 ソファに2人腰掛け、借りてきたDVDを鑑賞する。
 ヒトミは龍太郎の肩にもたれ、龍太郎の手がヒトミの髪をもてあそぶ。
 そんなゆったりとした時間を過ごしていた2人は、玄関のチャイムの音で現実に引き戻された。
「・・・・・・誰か来る予定でもあんのか?」
 おもしろくもなさそうに龍太郎が言うが、ヒトミは首を捻り
「さあ・・・そんな予定、なかったけど・・・。とりあえず出てきますね」
 パタパタと玄関に向かうヒトミの後姿を目で追っていた龍太郎だったが・・・。
「はい、どなた?」
 玄関に向かって声をかけるヒトミ。程なく扉の向こうから聞こえてきたのは・・・。
「あ、ヒトミちゃん、ボクだよ」
「透君?」
 声の主は、ヒトミの幼馴染、木野村透だった。
「どうしたの?」
「あの、お鍋を返しに来たんだけど・・・」
「あ!」
 何かに思い当たったように声を上げ、ヒトミが慌ててドアを開ける音が聞こえる。
 ――――鍋・・・?――――
 何の話だ・・・?
 わけが分からない龍太郎は眉間にしわを寄せ、耳をそばだてていたが・・・。
「返すのが遅くなっちゃってごめんね、ヒトミちゃん」
「ううん、そんなのいいけど。どう?具合は」
「うん、もうすっかりいいんだ。ヒトミちゃんのおかげだよ」
「そんなこと―――」
「おい」
 玄関先で話している2人の元へ、龍太郎が顔を出す。
「あ、先生」
 ヒトミが振り向き、にこりと笑う。
「あ、こ、こんにちは」
 透が驚いたように、ちょっと顔を赤らめながら言った。
「なんだ?その鍋」
 龍太郎が鍋を顎でさすと、ヒトミは鍋に目を移しながら口を開いた。
「あ、これ、うちのなんですよ」
「・・・・・お前んちの鍋を、どうして木野村が持ってるんだ?」
 ほんの少し、龍太郎の目が細められた・・・が、2人はまだ気付かない。
「先週の水曜日・・・だっけ?透君、風邪ひいて学校休んだんですよ。覚えてます?」
「・・・そうだったか?」
「うん。わたし、担任の先生に手紙を渡すように頼まれてたんで、夕方それを届けに透君の部屋に行ったんです。そしたら透君、熱出して寝込んでて・・・計ってみたら39度もあるんですよ!聞いたら病院にも行かずに寝てたって言うから・・・」
「・・・・で?」
「とりあえず風邪薬飲んだほうがいいと思って・・・。でも何か食べてからじゃないと、薬飲めないじゃないですか」
「・・・・・まあな」
「で、おかゆでも作ろうと思ったんですけど、透君ちのお鍋、穴が開いてて」
「最近、鍋を使った料理なんてしてなかったから」
 透が恥ずかしそうに頭をかきながら言うが・・・龍太郎は無言だった。
「で、うちからお鍋もって行っておかゆ作ったんですよ」
 にっこりと、無邪気に微笑むヒトミ。
 龍太郎は不機嫌そうに・・・それでも2人の関係を知っているので何も言わずにその話を聞いていたのだが、次の透の言葉に、耳を疑った。
「あの時は本当にありがとう。朝までついててもらったおかげで熱も引いたし、学校も1日休むだけですんだよ」
「いいってば。病気のときはお互いさま―――」
「おい、ちょっと待て」
「え?」
 突然龍太郎の声音が変わり、ヒトミは目をぱちくりとさせる。
「今・・・何つった?」
「え、病気のときは・・・」
「その前!木野村だよ。朝までって、言ったか・・・?」
 徐々に剣呑になっていく龍太郎の表情に、透はやばい空気を察したのか、開いたままの玄関から出て行こうと後ずさりし始めた。
「あ、あの・・・」
「だって、あのときの透君本当につらそうで、放って帰るなんてできなかったんですもん。お兄ちゃんだってわたしが熱出したときはいつもずっとついててくれてるし、具合悪い時って誰かにいてもらえると安心したりするじゃないですか」
 ニコニコとさも当たり前のことのように話すヒトミ。
 が、龍太郎の表情は更に険しくなり・・・
「あ、あの、ボク、これで・・・」
「あ、透君、帰るの?」
「う、うん、あの、ヒトミちゃん、本当にありがとう!それじゃ!」
 そそくさと逃げるように出て行ってしまった透を不思議に思って首を傾げるヒトミ。
「どうしたのかなあ?透君。ね、先生―――」
 と振り向いたところで―――龍太郎の、満面の笑みに出くわした。
「せ・・・先生・・・?」
 その満面の、しかしなぜか目は笑っていない龍太郎の笑顔に、ヒトミは一瞬固まった。
「なあ、ヒトミちゃん」
「は、はい?」
「1人暮らしの男の部屋に泊まるってことが、どういうことか、分かるか?」
「そ、それはあの、透君は男っていっても、お、幼馴染、だし・・・」
 距離がつまっているわけでもないのに龍太郎が迫ってくるような錯覚を感じ、ヒトミは後ずさった・・・が、後ろは玄関で、それ以上逃げようもなく・・・。
「幼馴染でも、男は男。その男の部屋に泊まって・・・まさか、眠りこけたりはしてねえよなあ・・・?」
「え・・・・・・」
 龍太郎の言葉に、ヒトミは思わずぎくりと体を震わせた。
 それを見た龍太郎の眉が、ピクリと吊り上る。
「おまえ・・・・・」
「で、でもあの、何もなかったし!だ、大体、透君がそんなことするわけ・・・!」
「ほお?お前さんの言う、そんなことってのはどんなことだろうなあ・・・?」
「へ・・・・・?」
「向こうでじっくり教えてもらおうか?なあ」
 そう言って、ずいっと近づいたかと思うと、あっという間にヒトミを横抱きに抱えあげてしまった。
「ちょ、先生!?」
「そんなにじたばたするな、落っことしちまうだろう。それともなんだ、ココで教えてくれんのか?」
 にやりと笑った、その意地の悪い笑みに、ヒトミは何も言い返すことができず・・・
「今日、確か鷹士は帰ってこないんだったよなあ?時間はたっぷりある。じっくり教えてもらうぜ、ヒトミちゃん?」
 龍太郎の足はまっすぐヒトミの部屋へと向かい・・・
 もはや、ヒトミは観念するほかなかったのである・・・・・。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そんなわけで。前作とあまり代わり映えしませんが、先生がヒトミちゃんにやきもちを焼く。
そんなパターンが大好きです♪

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そして闇の中へ 4

Category : My Little Girl series(コナン・新ちび蘭)
 「く、工藤さん・・・」
 探偵の男が、その体に似合わない頼りなげな声を出す。
「どうするんですか?これから・・・」
 新一は、その問いには答えずに、もう一度死体のそばに屈みこむと、その体を調べ始めた。
「でも、信じられないよ。雅美さんが広田さんの娘じゃなかったなんて・・・」
 蘭が、俯きがちにそう呟くのが聞こえた。
「その点は、警察が調べたんだ。間違いないだろう。―――ん?」
「でも・・・」
「ちょっと待て。この死体・・・まだあったかいし、血も生乾きだ」
「え?それって・・・」
「それに、10億もの大金を持ってるんだ・・・。犯人はまだ遠くには・・・」
 それを聞いた蘭が、はっと顔を上げた。
「そ、そういえば、さっきエレベーターですれ違った人!どこかで、会ったことあるような気がしたの。
髪型や雰囲気は違ってるけど・・・」 
「!そうか。あの体格と荷物の量!あれが・・・!」
「ま、雅美さん!?」
「よし、蘭、いくぞ!!」
「うん!!」
 2人が部屋を出ようと駆け出すと、後から、
「あ、あの、わたしはどうすれば!?」
 と言う、探偵の声。
「あなたはここで警察が来るのを待っていてください!」
 

 急いで階下に降り、ホテルを出た2人だったが、雅美と思しき女性はすでにタクシーに乗り込んだと
ころだった。
「あ―――!」
 蘭が思わず叫んだが、タクシーは走り出してしまい・・・
 新一が、次のタクシーに乗り込もうとドアを開けたが、その後ろに並んでいた家族連れの男が新一の
胸倉を掴み、
「おい!!割り込みする気か!!」
 と怒鳴って来た。と、そこへ蘭が来て、きっと男を睨みつけて言った。
「父が雪山でばらばら死体で生き埋めになって、早く行かないと間に合わないんです!!」
 むちゃくちゃだったが、男は蘭の迫力に押され、つい
「ど、どうぞ・・・」
 と譲ってしまっていた・・・。
 そして乗り込むと、運転手に
「前の車追ってください!」
 というと、今度は運転手が目を丸くして、
「え?雪山じゃないんですか?」
 と言ったのだった・・・。


「ねえ、新一、どういうことなの?」
 タクシーの中、前を走る雅美を乗せたタクシーを見つめながら、蘭が言った。
「・・・彼女と2度目に会ったとき、どこか雰囲気が違っていた」
「う、うん、そういえば・・・」
「あれは、広田さん発見の報告に焦って駆けつけ、変装が不完全だったからなんだ。そして、広田さん
が彼女に会ったときの、あの表情・・・あれは娘に見つかって驚いていたんじゃない。裏切った仲間に
仕返しされる恐怖に怯えていたんだ・・・」
「裏切った・・・仲間?」
「なぜ、2人の人間が、同時に広田健三さんを探していたのか?そしてなぜ、広田さんは殺されたのか
?さらに、広田さんを探していた2人も、1人は死に、1人は消えた・・・。空のジェラルミンケース
を残して、な」
 蘭は、黙って新一の話を聞いていた。
「だが、あのケースにこそ事件を解く鍵があったんだ。彼らが肉親でないと分かった今、3人の接点は
一見何もない。しかし、彼らを最近起こったあの事件に当てはめれば、全てのなぞが解ける!」
「あの事件・・・?」
「そう。あの・・・10億円強奪事件の3人組にな!!」
「10・・・億円・・・!?」
 蘭の瞳が、驚きに見開かれる。蘭も、その事件の話は聞いていたが、まさか今度のことがそんな事件
に関係しているなどとは思いもしなかったのだ。
「ケースの量からして、おそらく中身は奪われた10億円だ。だとすると、広田さんが車で毎日同じコ
ースを走っていたのも、逃走のためだったと説明がつく。計画は成功したが、その後、広田さんは金を
独り占めして、逃げた・・・。2人の仲間を裏切って!!」
「じゃ、じゃあまさか、その仲間って・・・」
「ああ、そうだ・・・。焦った2人は、広田さんの行方を急いで追った。自分の名前や素性を偽り、そ
れぞれ別の探偵を使って・・・」
「雅美さんが・・・」
 蘭の瞳に、涙が溢れる。本気で雅美のことを心配していた蘭にとって、信じがたいことだろう。その
気持ちがわかる新一は、蘭の肩をそっと抱き寄せた。
「そして・・・2人に居所を知られた広田さんは殺された・・・。目暮警部の言う首に残った手形から
見て、殺したのはたぶん大男のほうだろう。だが、その大男もあのホテルで死んだ・・・。いや、殺さ
れたんだ」
「ま、まさか、雅美さんが・・・!?」
「・・・・・・」
「嘘・・・嘘だよ!雅美さんがそんな、人殺しだなんて・・・!」
「蘭、けどな・・・」
「そんな人じゃない!あの人・・・雅美さんは、とっても優しい目をしてたもの。そんな人が、人殺し
なんてできるはず、ない・・・!」
 きっと前方を睨みつけ、そう言いきった蘭を、新一は複雑な表情で見つめていた・・・。


 タクシーが着いたのは、いくつもの船が止まる港。
 しかし、そこで2人は雅美を見失ってしまう。
「どうしよう、新一・・・」
「焦るな、蘭。この港に入ったのは確かだ。絶対この近くにいるはずだ!」
「う、うん」
「逃がしてたまるか!」
 そう言って走り出した新一の後を、蘭が慌てて追いかけていった・・・。


 いくつものコンテナの間を、女は歩いていた。コツコツと、パンプスの音が響く。
 そこへ、突然男の声が響く。
「ご苦労だったな、広田雅美・・・。いや・・・宮野明美よ」
 コンテナの間から姿をあらわしたのは、黒いコート、黒い帽子に身を包んだ2人組の男・・・。
 明美は、腰まである長い髪の男を見据えると、口を開いた。
「ひとつ聞いていいかしら?あの大男を眠らせるためにあなたに貰ったこの睡眠薬・・・」
 と、ポケットから小瓶を取り出す。
「飲んだ途端に、彼、血を吐いて動かなくなったわ・・・。どういうこと?」
「フ・・・それが、組織のやり方だ・・・」
 男は、冷たく笑った。
「さあ、金を渡してもらおうか・・・」
 男が、一歩、明美に近付く。
「ここにはないわ・・・。あるところに預けてあるの・・・」
「なにィ!」
 長髪の男の後ろに立っていた体格の良いサングラスをかけた男が明美の言葉にかっとなるが、長髪の
男に抑えられる。
「その前に妹よ!約束したはずよ!この仕事が終わったら、わたしと妹を組織から抜けさせてくれるっ
て・・・」
 明美は、サングラスの男にはかまわずに話を続けた。
「あの子をここへ連れて来れば、金のありかを教えるわ・・・」
「フ・・・そいつは出来ねえ相談だ。奴は、組織の中でも有数の頭脳だからな・・・」
「な!?」
「奴はおまえと違って、組織に必要な人間なんだよ・・・」
「じゃあ、あなたたち、最初から・・・」
 明美の声が、絶望的なものに変わる。
「最後のチャンスだ・・・。金のありかを言え・・・」
 そう言って、長髪の男は拳銃を構え、明美に向けた。
「甘いわね・・・。わたしを殺せば、永遠に分からなくなるわよ」
「甘いのはおまえのほうだ。大体の見当はついている・・・。それに言っただろ?最後のチャンスだと
・・・」
 男が、引き金をひいた―――。


「し、新一、あそこ・・・!!」
 先にその姿を見つけたのは、蘭だった。
「!!蘭!ブローチを貸せ!」
 彼女のそばに誰かいる!
 そのことに気付いた新一は、とっさにそう言って蘭のブローチを受け取ると、その音量を最大にし、
声を限りに叫んだ。
「警察だ!!おとなしくしろ!!」
 それと同時に、汽笛の音が聞こえ・・・それにかき消されるように、ひとつの銃声が・・・!
「雅美さん!!」
 2人が駆けつけたとき、すでにそこには男たちの姿はなかった。
 そして、崩れるようにその場に倒れる明美・・・。
「ま、雅美さん!」
 蘭が明美のそばに駆け寄る。撃たれたことを見て取った新一は、すぐにきびすを返す。
「救急車を呼ぶ!蘭はここにいてくれ!」
 走り去る新一。と、明美がその身を起こす。
「無駄よ・・・もう手遅れだわ・・・」
「しゃべっちゃだめ!」
「沙羅、ちゃん・・・・。どうしてここが・・・?」
 苦しそうに話す明美を庇うように、蘭は小さな手でその体を支えた。
「・・・新一が、あなたの腕時計に発信機をつけてたの・・・。それを追ってたらあのホテルにたどり
着いて・・・そこであなたと遭遇した。大きな荷物を運ぶあなたを見て、奪われた10億円に間違いな
いって・・・」
「そこまで、わかってるの・・・さすが名探偵ね・・・。あの時計にそんなものを・・・」
「あれは、あの大男の腕時計だったのね」
「いいえ、あれは彼が勢い余って広田さんを殺してしまったときに、広田さんが抵抗して、彼の時計が
壊れたから、わたしのをあげたのよ・・・。フフフ・・・計画は完璧だったのにみんな死んじゃったわ
・・・。運転技術をかって雇った広田さんも、腕っ節を見込んで仲間に入れた彼も・・・。そ、そして
このわたしも組織の手にかかって・・・」
「組織・・・?」
「闇に包まれた大きな組織よ・・・。ま、末端のわたしに分かっているのは、組織のカラーがブラック
ってことだけ・・・」
「ブラック!?」
 まさか・・・
「そ、そうよ。組織の奴らが好んで着るのよ・・・。カラスのような黒い服をね・・・」
 その言葉を聞いて、蘭の表情が強張る。
 まさか!!あの、黒ずくめの男・・・!?
 驚いて黙ってしまった蘭の手を、明美の血だらけの手が包んだ。
「さ、最後にわたしの言うこと・・・聞いてくれる・・・?」
「さ、最後って・・・」
「10億円の入ったスーツケースは・・・ホテルのフロントに預けてあるわ・・・。そ、それを奴らよ
り先に、取り戻して欲しいの・・・。もう奴らに利用されるのは・・・ご、ごめんだから・・・」
「し、しっかりして!もうすぐ救急車が・・・!」
「沙羅ちゃん・・・あなたを見てると、妹を思い出すわ・・・わたしの妹・・・志保を・・・」
 そこまで言うと、明美は目を閉じた。その手から、力が抜ける。
「死んじゃだめ!お願い・・・!早く、早く来て!!新一ィ!!」
 汽笛の音にまぎれ、救急車のサイレンの音が聞こえてきた・・・。


 彼女の言ったとおり、10億円は、ホテルのフロントに預けられていた・・・。奪われた10億円と
札番号が一致し、あの3人の犯行が明らかになった・・・。彼女の近くに落ちていた拳銃からは彼女の
指紋が発見され、彼女は罪に耐えかね自殺したとされ、事件は幕を閉じたかのように見えたが・・・。
 
 
 阿笠邸の客間。そのドアを、蘭が遠慮がちに叩く。
「どうぞ・・・」
 中から、力のない女性の声。ドアを開け、中に入るとその女性はベッドに横になったまま顔をこちら
に向けると、うっすらと微笑んだ。
「蘭ちゃん・・・」
「明美さん・・・具合、どう?」
「だいぶいいわ。ありがとう。蘭ちゃんのおかげよ・・・」
 そう。明美は死ななかったのだ。
 あの時、救急車よりも一足早くあの場所へ駆けつけたのは、英理だった。そして英理の乗ってきた車
に明美を乗せると阿笠邸へ運んだ。そこにあった拳銃は波止場近くに移動し、明美はそこで自殺を図り
、海に落ちたことになっていた。死体は、もちろん見つからない。
 あのまま明美が警察につかまり、組織のことを話しても何の証拠もない今、警察は信じないだろうと
思った新一の判断だった。そしてそれに賛同した英理が協力したのだ。明美が自殺を図った場所や海に
落ちたことなどの詳しいことは発表していないので組織に怪しまれることはないだろう。
「あの時・・・工藤くんが叫んでくれたおかげで、あいつ・・・ジンの気が一瞬それたのね」
 弾は心臓からそれ、わき腹をかすっただけに過ぎなかった。新一と蘭が現れたため、あの2人も明美
が死ぬのを確認する余裕がなかったのだろう。今頃は自殺の報道を信じて安心しているはずだった。
「わたしは何も・・・。新一や、お母さん、それに博士のおかげよ」
 蘭はにっこりと笑った。その笑顔を見て、明美も微笑んだ。
「蘭ちゃんを見てると、励まされるわ・・・。わたしも、がんばらなくちゃって」
 明美には、ここへ来てから全てを話していた。蘭が本当は高校生だということ。組織の作った毒薬を
飲み、体が小さくなってしまったこと・・・。明美が、何か組織について知っていればと思ったのだが、あの時蘭に話したこと以外は本当に知らないようだった。
「でも・・・もしかしたら、その毒薬の開発に・・・わたしの妹が関わっているのかもしれないわ・・・」
 と、明美は言った。明美の妹、宮野志保は組織の中で研究者として働いているらしかった。組織の中
では立場が違うため、めったに会う事はないということだったが・・・。
 どうにかコンタクトを取ってみるという明美に、新一は断固として反対した。
「今、あなたは死んだことになっているんだ。下手に動いて、組織にこちらのことを感づかれちゃまず
い。それに、あなたの妹さんにまで危害が及ぶことになりかねない」
 その言葉に、明美も納得したようだった。


「でも・・・あの事件の本当の首謀者は、闇に消えてしまったのね・・・」
 リビングのソファに座っていた蘭が、ポツリと言った。
 新一は、そんな蘭の頭を軽くぽんと叩き、
「そうだな・・・」
 と言った。
「でも・・・いつか、必ず!この俺が、闇から引きずり出してやる!!!」
 そう力強く言い切った新一を、蘭が涙を溜めた瞳で見つめた。
「新一・・・」
「そして、必ず蘭を元の姿に戻して見せる・・・」
「・・・うん!!」
 決意を新たにした2人の、闇の組織との戦いが始まろうとしていた・・・。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 このシリーズはまだまだ続きますが、今できているのはここまでです。
なかなか続きを書く暇がありませんが、わたしも大好きなシリーズなので、時間ができたらまた続きを書きたいと思っています♪
 

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そして闇の中へ 3

Category : My Little Girl series(コナン・新ちび蘭)
「ところで、何であんたは蘭から逃げようとしたんだ?」
 新一の家で。探偵と名乗るその男をリビングに通し、ソファに座らせると新一は聞いた。
「いや、そのお嬢さんが血相変えて追っかけてきたんでつい・・・」
「つい、ねえ・・・」
 新一は疑わしげな視線で男を見る。サングラスをかけ、口髭を生やした男はやくざと間違えられてもおかしくないような強面で・・・小さな女の子に怯えるようにはとても見えなかった。
「ほ、本当です。どうも根が臆病で・・・。このサングラスも、相手になめられないようにと・・・」
「へえ?」
 言うなり、新一は男に近づき、さっとそのサングラスを取ってしまった。
「え・・・」
 そして現れた男の顔は・・・
「ぶ・・・わーーーっはははは!!」
「ちょっと新一お兄ちゃん!」
 蘭が慌ててたしなめたが、新一が噴き出すのも無理はない・・・。男の目は、まるで少女漫画の女の子のように丸くて大きい・・・その体にそぐわないような可愛いものだったのだから・・・。
「真面目にこのおじさんの話聞いてよ!雅美さんの命がかかってるんだよ?」
 蘭の鋭い視線に、新一も漸く笑いを堪える。
「ご、ごめん・・・。で、あなたも広田健三さん探しの依頼を受けてたわけですね」
「はい・・・。でも、わたしが彼のアパートを突き止めたときには、もうあなた方が・・・。会話の内容からあなたもわたしと同じ依頼を受けた探偵だということは分かったんですが・・・ちょっとおかしなことが・・・」
「おかしなこと?」
「はい、広田さんの家族のことなんですが」
「家族?」
「わたしが広田さん探しの依頼を受けたのはこの人なんですが・・・」
 と言って、その探偵と名乗る男は、胸ポケットからさっき蘭たちに見せた写真を出した。
「この人はその時、確かこう言ったんですよ。“九州を出て東京に行ってしまった兄を・・・たった一人の肉親である兄を探してくれ”と・・・」
「たった一人の?・・・確か雅美さんも同じようなことを言ってたな。それに、雅美さんが出てきたのは山形だ・・・」
 新一は、眉間にしわを寄せ、考え込んだ。
「変と言えばもう1つ・・・。これは広田さんが勤めていたタクシー会社の人に聞いたんですがね」
 と、男は言った。
「広田さんは毎日夕方になると、客を乗せずにいつも同じコースを回っていたそうなんです。それも猛スピードで・・・」
「夕方・・・同じコースを猛スピードで・・・?」
 顎に手をやり、難しい顔で考え込む新一を、蘭と男は固唾を飲んで見守っていた。
「・・・で、この依頼者はどんな人なんですか?」
「え―っと、名前は広田明、28歳。身長は190cmを超える大男で・・・」
「大男!?じゃあ、まさか・・・!」
 蘭が、息を呑む。新一は、その言葉に頷くと、
「で、この大男に広田さんの居所を教えたんですね」
 と男に聞いた。
「ええ、一応。そしたらその後、広田さんが殺されたでしょう?これは何かあるなと思いまして・・・」
「し、新一・・・」
「ああ。おそらく広田さんを殺したのはこの男だろう。だが、分からないのはその後だ。俺たちは雅美さんの時計についた発信機をたどってあのパチンコ屋にたどり着いたのに、そこには彼女ではなく、その大男がいた・・・。そうだな?沙羅」
「う、うん。間違いないよ。あのパチンコ屋さんの前でぶつかったのはこの人だった」
 蘭が大きく頷く。
「彼女がしていたはずの時計を、その大男がしていたってことは・・・」
「ま、まさかその雅美さんという人も、すでに死んで・・・?」
 男が青ざめた顔で言う。臆病だというのはどうやら本当らしい。そして、蘭も目を見開き、真っ青になっている。
「ま、まさか・・・」
「いや、結論を出すのはまだ早い。まずはその大男の居場所を探そう」
 と言って、新一はポケットから追跡めがねを取り出した。
「こいつを博士に充電して貰おう。ちょっと待っててください。ら・・・沙羅、おめえも来るか?」
「え?あ、わたしはここで待ってるよ。ね、おじさん、コーヒーでも飲む?」
 と言って、蘭は男ににっこりと笑いかけた。男は吃驚したようにその女の子のような目をくりっと見開いた。
「え?あ、あの・・・」
「えへへ・・・さっき、犯人と間違えちゃったお詫び。すぐに入れてくるからちょっと待っててね?」
 そう言うと、蘭はパタパタとキッチンへ入っていった。
「はァ・・・可愛い子ですねえ。あなたの妹さんで?」
「・・・妹じゃありませんよ」
 男がぶっきらぼうに答える新一のほうを見ると、新一はさっきまでの冷静沈着な探偵の顔とは打って変わって、不機嫌そうに顔を歪ませていた。
「??あ、あの、何か・・・」
「別に・・・」
 と言う声は、やはり不機嫌そうで・・・。
「今、コーヒー落としてるから・・・あれ?新一お兄ちゃんどうしたの?博士の所行くんでしょう?」
 キッチンから顔を出した蘭が、不思議そうに言う。
「いや、その・・・」
「早く行かないと時間がなくなっちゃうよ?」
 怪訝そうな顔でそう言われ・・・新一は仕方なく腰を上げた。
「じゃ、行って来るけど・・・気をつけろよ?」
「?何に?」
 きょとんと首を傾げられ・・・
「何でもね・・・じゃあな」
「うん、いってらっしゃい」
 蘭の笑顔に見送られ、新一は家を出た。不機嫌な顔はそのままに博士の家に行く。
「どうしたんじゃ?そんな不機嫌そうな顔をして。蘭君は?」
「家にいる」
 新一は、博士に追跡用めがねを充電してもらっている間に、これまでのことを話していた。
「なあ、まだかよ?早く充電してくれよ」
 隣にいる蘭と男のことが気になって仕方がない新一は、イライラと言った。
「そんなにあせらんでも・・・いくらなんでも子供の蘭君に何かするわけなかろう」
 博士に呆れたように言われ、新一はうっと詰まる。
「そ、そんなことじゃね―よ。早くしね―と雅美さんの行方が・・・」
「にしてもじゃ、焦っても良い結果は出んぞ!君は昔からそうじゃ。いくら頭が切れても、落ち着いて行動せんと一人前の探偵とは言えんぞ!!」
 博士に一喝され、新一は黙ってしまう。
「ほれ、覚えとるか?この前おこった10億円輸送車強奪事件」
「ああ、3人組の・・・」
「不用意に犯人を取り押さえようとした警備員が、1人殺されておる。犯人を甘く見た結果じゃ。今回の事件はただの人探しから、殺人事件に発展しとる。なめて動くとえらい目にあうぞ!」
「あ、ああ・・・」
「冷静、沈着、かつ慎重に・・・。これがきみの好きなホームズだろう?」
「そうだな・・・」
 新一は充電の終わっためがねを受け取ると、表情を引き締め、自宅へ戻ったのだった。
「あ、新一、終わったの?」
 新一がリビングに入ると・・・なぜか、蘭は男の隣に座り仲良くあやとりなどをして遊んでいたのだった・・・。
 ―――何やってんだか・・・。心配する必要、なかったみてえだな。
「さ、早速行こう。あなたも行きますよね」
「あ、はい」
 男は丁寧にあやとりを手から外すと、蘭と一緒に立ち上がったのだった・・・。


 3人はタクシーに乗り、新一が追跡用メガネを見ながら運転手に行き先を指示した。
 そして着いた先は、とあるホテル。
「ここに、あの大男が・・・?」
 蘭が、ホテルを見上げて言った。
「ああ・・・しかし妙だな・・・さっきから目標物が動かねえ・・・」
 ―――まさか、時計を外して逃げたんじゃ・・・
「急ぐぞ!!」
 新一はそう言って、ホテルに駆け込んだ。

「ああ、この人なら・・・802号室に・・・」
 あの大男の写真をフロントで見せると、従業員がそう言った。その言葉を聞き終える前に、新一はエレベーターに向かって走り出していた。蘭と探偵の男もその後を追う。
 上から降りてくるエレベーターを、新一たちはイライラと待った。
 そしてエレベーターが開き・・・中から、台車にスーツケースを3つ乗せた若い女性が降りてきたが・
・・
「あ・・・」
 女性が台車を押した瞬間、上に載せていたスーツケースがガラガラと崩れ落ちた。
「うわっ」
「きゃっ」
 危うく蘭にぶつかりそうになったところを新一が受け止め・・・。3人は、仕方なく台車にスーツケースを乗せてやった。
「すいません」
 女性は笑顔で会釈すると、またがらがらと台車を押して行ってしまった。
 ―――ったくこんなときに・・・
 漸くエレベーターに乗り込み、8階のボタンを押す。
 ふと蘭を見ると、蘭はなぜか眉を寄せて何か考えている。
「どうした?蘭」
「ん・・・今の人、どっかで・・・」
「?そうか?俺、急いでて良く見なかったけど・・・」
「気のせいだと思うけど・・・」


 新一は、部屋の前まで来ると、ドアを激しく叩いた。が、中からは何の反応もない。
 ―――逃げられたか?
 一瞬そう思ったが、試しにドアノブを回してみると・・・すっとドアが開いた。
「開いてる・・・?」
 不審に思いながらも、用心しながらドアを開けてみる。
 そして、それはすぐに3人の目に映った。ドアの真正面、壁に寄りかかるような格好であの大男は座り込んでいた。手に持ったビールの缶からは飲み終わっていない中身が零れ、ぐったりと頭を項垂れて
いる。そしてその目は大きくかっと見開かれ、口からは血が溢れ出していた・・・。
「し、死んでる・・・!?」
 壮絶なその姿に、さすがの新一も息を呑む。
 そして、はっと蘭のほうを見ると、蘭はその瞳を大きく見開き真っ青になって震えていた。
「蘭!!向こうへ行ってろ!」
 もう、演技をしている余裕はなかった。新一の言葉に、蘭は我に帰り、
「ま、雅美さんは!?」
 と言った。
 新一は、こんなときにも他人の心配をする蘭を愛しく想い・・・同時に自分の役目を思い出すことが出来た。
「待ってろ」
 そう言うと、新一は大男に近寄り、ポケットからハンカチを出すと、それで男の手にあるビールの缶をそっと取り上げた。
「この匂いは、青酸カリ・・・」
「ま、まさか自分の犯した罪に耐えかねて自殺したんじゃ・・・」
 と、青くなっている探偵の男が言った。
「とにかく、警察に連絡を」
「は、はい!」
 男が慌てて部屋の電話を取る。
「新一・・・」
 蘭が、いつの間にか隣に来て、不安げな面持ちで新一のシャツをぎゅっと握っていた。
 新一は、やさしく蘭の頭をなでると、大男の腕に目を落とした。
 ―――雅美さんの腕時計だ・・・。やっぱりこの男、彼女の時計を奪って・・・
 そこまで考えて、新一ははっと部屋の中を見回した。その部屋にはいくつかの空のジェラルミンケースが、開けっ放しのまま無造作に放り出されていた。
 ―――なんで空のジェラルミンケースがこんなところに・・・?・・・!!待てよ!?同じ人物を探していた、話の一致しない2人の依頼者・・・車で同じコースを毎日回っていた広田健三さんの奇妙な行動・・・そしてこのジェラルミンケース・・・も、もしかしたら・・・


「ええ!!?広田さんが独身!?」
 その時、警察に電話し、たまたま電話に出たらしい目暮警部にこちらの状況を話していた探偵の男が突然大きな声を上げた。
「!!」 
 新一の頭の中で、一瞬にして1つのジグソーパズルがその形を成した。
「く、工藤さん、広田さんには娘なんかいないと・・・。それに、生まれも育ちも東京だって・・・」
「どういうこと!?」
 蘭もわけがわからない、といった顔をして新一を見る。
「そうか・・・そうだったんだ・・・」
「新一?何かわかったの!?」
 蘭の声に、新一はきっと顔を上げた。その瞳に、一瞬光が走る。
「ああ・・・よめたぜ、この事件!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 第3話UPです。そういえば、アニメのほうでは、まったく違うストーリーだったんですよね。
 今回は原作に沿った話にしているのでコミックを読んだ方にはこの先も分かると思いますが、わたしのモットーはハッピーエンドなので・・・。ちょっとだけ違う形になると思います。一応次回で話は終
わる予定です。
 それではまた♪

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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そして闇の中へ 2

Category : My Little Girl series(コナン・新ちび蘭)
『お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません・・・』
 無機質なテープの声が新一の耳に響く。
「―――おかしいな」
「どうしたの、新一?」
 新一の家で紅茶を入れていた蘭が、新一に声をかける。
「何度かけても繋がらないんだよ」
「?どこに?」
「広田雅美さんの家だよ。この間父親を探して欲しいって依頼に来たろ?」
「ああ、山形からわざわざ来た・・・」
「どうもあの後のことが気になって・・・」
「その番号、あってるの?」
 蘭が、電話番号が書かれた紙を覗き込んで言う。
「これはあの子本人が書いたものだから間違いないはずだけど・・・連絡はいつも向こうからで、こっちからかけたことはないからな・・・」
「まだ故郷に帰ってないのかなあ」
「・・・何かいやな予感がするな・・・」
「いやな予感って・・・」
「ちょっと、これからあのアパートに行ってくるよ」
「わたしも行く!」
 そうして2人は手早く身支度をすると、家を出た。


 「し・・・死んだ・・・?」
 アパートに着き、広田健三の部屋へ行ってみたが、誰もいる様子はなかった。そこで、1階にいる大家の女性に尋ねたのだが、返ってきた言葉はあまりにも衝撃的な事実だった。
「昨夜、部屋で首をつっているのが見つかってねえ・・・大変な騒ぎだったよ」
「そんな・・・」
 蘭の大きな瞳に涙が溢れた。
 大家はさも迷惑そうな顔をし、
「全く迷惑な話さ。あんなことが起きちゃ、アパートの評判がた落ちだよ」
 と言った。
「その人の娘さんはどうしたんですか?」
 新一が聞くと、大家は怪訝そうな顔をした。
「娘?」
「その人を探しに来た広田雅美さんですよ」
「な―んだあの人家出人だったのかい」
「え?」
「いやね、あの人ちょっと様子が変だったのさ。家賃を1年分前払いするから、何も聞かずに入れてくれってね・・・」
「1年分を・・・」
「それも全てピン札で・・・。なんかわけありだとは思ったけど、家出人とはねー」
 ―――1年分の家賃をピン札で・・・?
 新一は、顎に手をやり考え込んだ。
「まあ娘が来てたとしたら、その子もどっかで殺されてるかもしれないよ」
 大家の言葉に、新一はふと顔を上げる。
「その子もって・・・広田さんは自殺じゃ・・・」
「死体を見た刑事さんが言ってたのさ、これは殺しだってね・・・」
「な・・・!」
 新一と蘭は驚きに目を見開き、顔を見合わせたのだった・・・。


 「ああ、そうだ・・・。あれは他殺だ。首を絞めて殺した後で、天井から吊るしたんだ」
 新一と蘭が警察に行き、事情を聞くと目暮警部が説明してくれた。
「ロープや天井から被害者以外の指紋が見つかっている、間違いない!」
「目的は、金・・・ですか?」
「おそらくな。被害者の部屋からは金目のものが全て持ち出されていて・・・残っていたのは猫くらいだったよ。まだ誰の仕業かは分かっておらんが、首に残った大きな手形から見て、犯人はかなりの大男
らしい」
「大男・・・」
「君のいう被害者の娘さんはいなかったが・・・現場の近くにこんなものが落ちていたぞ」
 と言って警部が差し出したのは。ふちの丸いめがね・・・。
「!それ、雅美さんの・・・!」
 蘭が、思わず新一の服にしがみついて言った。
「じゃあ、雅美さんは・・・」
 新一が、苦々しげに呟く。
「ああ、まだ死体は見つかってはおらんが、おそらくどこかで・・・」
「そ、そんな・・・」
 蘭の瞳から、ぼろぼろと涙が溢れ出した。
「ところで工藤君、この女の子は・・・」
 警部が、不思議そうに蘭を見る。
「隣の、博士の家で預かっている子なんです。今、博士が留守なので代わりに僕が・・・」
「そうか。あまり、小さい子には聞かせたくなかったんだが・・・」
「―――そうですね、すいません。それじゃあ僕はこれで・・・。何かわかったら知らせていただけますか?」
「ああ、わかった」
 新一は警部に礼を言うと、警察を後にした。
 その帰る道すがら、蘭はずっと泣いていた。
「蘭・・・」
「せっかく、せっかくお父さんに会えたのに・・・こんなのって、ひどすぎるよ~~~!!」
「―――まだ殺されたとはかぎらねえぜ」
「―――え?」
 新一の言葉に、蘭は足を止める。
「どういう意味?」
「―――すっかり忘れてたけど・・・。あの、最初の日に、こいつの性能を試してみようと思って、貼っておいたんだよな」
 と言って、新一がポケットから取り出したのはあの日博士が作ってくれた、犯人追跡めがねだった。
「こいつの発信機を、雅美さんの腕時計につけておいたんだ」
「ホント!?」
「ああ。こいつのスイッチを入れて・・・」
 と言いながら新一はめがねをかけた。
「ど、どう?」
 蘭が、緊張した面持ちで聞く。
「―――お!移動してる・・・位置はここから北西4km・・・新宿、か。そんなに遠くねえな。行ってみよう、蘭!」
 そう言って、新一が蘭の手をとると、蘭はニッコリ笑って、
「うん!移動してるってことは・・・雅美さん、生きてるのよね?」
「ああ、その可能性が高い!行こう!」
 そうして走り出した2人が行き着いたところは・・・
「パ、パチンコ屋!?」
 派手なネオンが光るパーラーの前に立ち、蘭は目を丸くした。
「ねえ、新一、ホントにここに・・・」
「ああ・・・やべ、これの電池がもうすぐ切れちまう」
「ええ!?」
「俺は中を捜してくるから、蘭はここにいてくれ!」
「あ、新一!!」
 新一は、蘭を残しパーラーの中へと入って行ってしまった。
「もう・・・でも、ホントに雅美さんがここに・・・?」
 蘭は信じられないような思いで、閉まってしまった自動扉の前で、中の様子を伺った。しかし見えるのはたくさんのパチンコ台と、その前に座っている客たち・・・。その中には雅美の姿はないように見えた。
「新一、まだかな・・・」
 15分も経っただろうか、蘭に不思議そうな視線を投げて中に入って行く客たちの横から店内を覗いていた蘭だが・・・

 ドンッ

「キャッ」

 突然視界を遮られ、蘭は突き飛ばされてしまった。
 ―――な、何?
「チッ、ガキが・・・うろちょろしてんじゃねえよ」
 不機嫌そうな、低い男の声。蘭が見上げると、身長190cmはあろうかという大男が、蘭の目の前に立っていた。
 男はジロリと蘭を見下ろし、そのまま去っていってしまった・・・。
 ―――ビックリした・・・。それにしても大きい人・・・。
 蘭が、まだ立ち上がれずに座り込んでいると、
「蘭?どうした?」
 と、新一が店から出てきて、驚いたように言った。
「新一・・・。なんでもないの。ちょっと出て来た人にぶつかっちゃって」
「大丈夫か?ごめんな。1人にして」
「ううん。それより、雅美さんはいた?」
「いや、いなかったよ。あの装置の電池が完全に切れちまって・・・。中を捜してみたけど、見つからなかった」
「そう・・・。どこに行ったんだろう?雅美さん」
 その後2人はその周辺を探し回ったが、結局雅美の姿は見つけることが出来ず、帰ることになった。


 「じゃ、わたしそろそろ夕飯作りに行ってくるね。出来たら電話するから来てね」
 あれから新一の家に帰った蘭が、時計を見て言った。いつのまにか時間は7時を回っていた。
「1人で大丈夫か?俺も一緒に・・・」
 と新一が言うのを遮るようにニコッと笑い、
「大丈夫よ、すぐそこだもん。まだ調べ物あるんでしょ?」
「ああ・・・気を付けて行けよ」
「うん、分かってる。じゃあね」
 蘭は新一の家を出ると博士の家に向かって歩き出したが―――
 ふと、視線を感じ、振り返った。
 新一の家から20mほど離れた電柱の陰に、男が1人立っていた。
 ―――あの人、どこかで・・・。!!確か、雅美さんのお父さんの住んでいたアパートのそばでわたしたちのほうを見ていた・・・!そういえば、雅美さんのお父さんを殺したのは大柄な男だって警部さんが言ってた。あの人・・・180cmはあるかしら・・・。もしかして、あの人が・・・?
 蘭は、キッとその男を睨むと、迷わずにその男に向かって駆け出した。
 男は、予想もしていなかったのか、蘭が近づいてくるのを只呆然と見ているようだった。
「―――どこなの・・・?」
「え・・・」
「雅美さん、どこに連れてったのよ!?」
 男は蘭の気迫に暫しうろたえるようなそぶりを見せ―――突然きびすを返し、走り出した。
「!待ちなさい!」
 蘭は反射的に男の後を追いかけた。子供の足では追いつけるはずもないが、とにかく必死で走った。
 そして、男は1台の車に駆け寄り、ドアに鍵を差し込んで開けようとしていたが、なかなか開けられないようで・・・。その間に蘭は男に追いつくことが出来た。
「逃がさないから!」
 そう叫んで、蘭は男の腕にしがみついた。
「は、離してくれ、わたしは・・・」
「おい!!何してやがる!」
 そこへ走ってやってきたのは、新一だった。
「ら・・・沙羅!!大丈夫か!?」
 ・・・どう見てもしがみ付いて離れないのは蘭のほうなのだが、新一からは男が蘭にくっついて離れないように見えるらしく・・・
「新一、この人捕まえて!」
「ん?オメエは・・・あのアパートの近くでうろうろしてた奴だな・・・。まさか・・・オメエが雅美さんのお父さんをやったのか!?」
 新一は、男の胸倉を掴んで引き寄せた。
「ち、違いますよ!わ、わたしは・・・」
「何者だ?」
「あ、あなたと一緒です」
「ああ?」
 新一が思いっきり怪訝な顔をする。
「探偵なんです。わたしも・・・」
「―――え?」
 意外な男の応えに、新一の手が緩む。男は自分のスーツの胸ポケットをなにやら探りながら言った。
「ひょっとしたら、あなたもわたしと同じ依頼を受けたんじゃないかと気になって・・・」
「同じ依頼?」
「ほら、広田さんを探してくれという・・・。わたしは、この男に頼まれたんです・・・」
 と言って男が見せたのは、人相のあまり良くない男の写真で・・・
「!?」
 その写真を見た途端、蘭が息を呑んだ。
 ―――この人・・・!わたしがあのパチンコ屋さんでぶつかった―――!
「沙羅?どうした?」
 新一の声が、どこか遠くで聞こえていた・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 どうでしょう?原作と違って、新一と蘭が一緒に捜査をしています。
ちょっと無理があるかもしれないですが・・・。自分的には結構気に入ってます。

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そして闇の中へ 1

Category : My Little Girl series(コナン・新ちび蘭)
「強盗に誘拐に、殺人、か・・・。ったく事件が絶えねーな―」
 新聞を見ながら、新一が言った。
 博士の家、蘭と二人でコーヒーを飲みながら寛ぐ時間。最近は前よりも蘭と一緒にいられる時間が増えたことを、密かに喜んでいたりする新一。
 ―――やべえなァ、あの黒ずくめのやつらのことを早く調べなきゃなんね―のに・・・。
 とは思うものの、蘭の笑顔を見ていると、つい顔が綻んでしまうのだった。
 とそこへ、
「まー、だからこそ君の推理が役にたっとるんじゃないか」
 と言いながら入って来たのは阿笠博士。今まで地下の研究室にいたのだ。
「ホレ、完成したぞ!ワシが発明した犯人追跡用めがねじゃ!」
「めがねェ?俺めがねなんてかけね―ぜ?」
 と、怪訝な顔をして新一が言う。
「まあまあ、必要なときだけかければ良いんじゃ。―――横のボタンを押してみい」
 言われた通り、めがねの横についているボタンを押すと、“キュイイイン”という音とともに、片方のレンズにレーダーが写った。
「おっすげー!」
 思わず新一は感嘆の声をあげた。蘭も目を見開き、感心したように見ている。
「この点滅してるのは?」
「近所の野良猫にこれと同じ発信機をつけたんじゃ」
 と言って博士は、手に持った小さな丸いものを見せた。
「その位置じゃと、2キロ東のゴミ捨て場にいるな。―――この発信機をつけておくと、半径20キロ以内ならどこにいても居場所が割り出せる。これはシールになっておるから、普段はボタンなんかにくっつけておけば良い」
「へェ、なるほどな」
「すごーい、博士天才!!」
 蘭がニコニコしながら言うと、博士の顔も一気に緩む。
「いやいや・・・」
 ニヤニヤする博士をチロッと睨みつつ、新一は席を立った。
「ありがとな、博士。あ、この発信機、もう1つ作っといてくれな?」
「ん?おお、良いが。どうするんじゃ?」
「1つは蘭に持たせる。俺がいねー間に何かあったら困るからな」
 と言って、蘭に笑いかけると蘭も嬉しそうに微笑む。
「新一、帰るの?」
「ああ、実はこれから依頼者が来ることになってんだ。―――蘭も来るか?」
「え、良いの?」
「ん。お茶とか、用意してくんねーか?」
「うん!」
 蘭は嬉しそうに頷き、新一と一緒に玄関に向かった。

 蘭が小さくなってしまってから、新一はとにかく蘭と一緒にいたがる。蘭の身が心配というのが大半の理由だが、それを建前に蘭と一緒にいられるのが嬉しいから、というのもあるようだった。


 「お願いします、探偵さん!わたしの父を探してください!!」
「は・・・はい・・・」
 その依頼者、広田雅美は開口一番、新一にそう言った。
 おさげ髪にめがね、といういかにも田舎から出てきたばかりという感じの素朴な少女は、目に涙を溜めながら新一に訴えた。
「東京に出稼ぎにきてた父がこの1ヶ月間行方不明なんです・・・。働いていたタクシー会社も辞めてしまっていて・・・警察にも探してもらったんですが、全然見つからなくて・・・」
「それで僕の所へ?」
「はい・・・高校を休んで、山形から探しに出て来たんです。もう探偵さんしか頼む人がいないんです!」
「・・・分かりました。で、お父さんの写真なんかはお持ちですか?」
 新一が聞くと、雅美はポケットから1枚の写真を出して新一に見せた。
「これが父の広田健三です。身長は170cm、年齢は40歳です・・・」
「この猫は?」
 と新一は、写真の中で広田が抱いている黒い猫を見て言った。
「それは父が飼っている猫で、名前は“カイ”です」
「カイ?」
「父は猫好きで、他にも“テイ”“ゴウ”“オウ”の3匹を飼っています」
「なるほど・・・猫と暮らしていたわけですね」
 蘭は、新一が雅美と話している間に、お茶を入れていた。お盆にお茶を乗せ、雅美の所へ運ぶ。
「どうぞ」
「あ・・・ありがとう」
 雅美は蘭を見ると、何か懐かしむような眼をして、微笑んだ。
「・・・可愛いわね。工藤さんの妹さん?」
「あ、ううん。わたしは隣に住んでて・・・お兄ちゃんの家には、時々遊びに来てるの」
 と、蘭は子供らしく言った。最近は大分子供の振りも板についてきた。
「そう・・・」
 ―――?この人・・・
 蘭は、なんとなく雅美に違和感のようなものを感じていた・・・。
「小さいころに母を亡くして・・・父はわたしのたった1人の身寄りなんです・・・。もし父の身に何かあったら、わたし・・・わたし・・・う、うっ・・・」
 大粒の涙を流し、顔を伏せる雅美。
「だ・・・大丈夫だよ!雅美さん!」
 蘭の声に、雅美は顔を上げた。
「新一お兄ちゃん、名探偵だもん!きっと見つかるよ!」
 雅美は、蘭を優しい目で見つめ、ふっと微笑んだ。
「・・・ありがとう」


 それから1週間、新一は広田健三を探しつづけた。広田が勤めていたタクシー会社、ペットショップ、飲み屋など、思いつく限りの捜索をしたが、すぐに見つかるだろうという予想に反し、広田はなかなか見つからなかった。
「ええ、まだ・・・すいません。必ず見つけますんで・・・じゃあ・・・」
 新一が電話を切ると、側にいた蘭が心配そうに新一を見た。
「また雅美さん?」
「ああ・・・今日だけで2度目だ・・・クソッ、付き合いの悪い男だったらしくて仕事場でも誰も行方を知らねーし、娘がいたことさえ話さなかったみて―なんだ」
「そう・・・」
「もう1週間もたつってのによー」
 頭を掻き毟る新一。高校生名探偵として有名になり、様々な依頼が舞い込むようにはなったが、人探しというと殺人事件の捜査とはまた違った難しさがあるようだった。
 何とか新一の役に立ちたいと思っている蘭だが、どうして良いか分からず・・・と、そのとき点けっ放しにしていたテレビから競馬の実況中継の声が聞こえてきた。
『お―――っとその差は4馬身から5馬身!!ぶっちぎりだ――!!』
 蘭がテレビを見ると、1頭の馬が後続の馬に大差をつけてゴールするところだった。実況のアナウンサーが興奮した声で告げる。
『ゴーカイテイオー、G1、5連勝―――!!』
 ―――ゴーカイ・・・テイオー・・・?この名前って・・・!そうだ、広田さんの飼ってた猫の名前、確か・・・
 蘭は電話の横においてあったメモ用紙とボールペンをとると、テーブルの上で文字を書き出した。
「蘭?どうしたんだ?」
 新一が不思議に思って、蘭の手元を覗き込む。
 ―――「カイ」・・・「テイ」・・・「ゴウ」・・・「オウ」・・・これを並べ替えると・・・
「ゴウカイ・・・テイオウ・・・?」
「そうよ!今テレビで言ってた馬の名前!広田さんってきっと競馬が好きだったのよ!だから自分の猫に馬の名前をつけたのよ!」
 勢い込んで言う蘭に、新一はメモを見ながら、
「うーん・・・そうかも知れねえけど・・・」
 と、首を捻る。
「ね?だから!きっと競馬場にいるよ!行ってみよう!」
「へ?・・・って今からか?」
「もちろん!今テレビで流れてたVTRの馬・・・ゴーカイテイオーって、今日の3時半からやるメインレースに出るみたい。今、1時でしょ?今から行けば間に合うよ!」
 ・・・というわけで、なぜか博士も一緒に3人で競馬場へと向かったのだった・・・。


 競馬場についたのは3時10分。後20分でメインレースが始まるとあって、場内はたくさんの人でごった返していた。馬券売り場にはたくさんの人が並び、オッズやパドックの様子を伝えるモニターテレビの前にもたくさんの人だかりがしていた。この中で一人の人間を探すというのは至難の業に思えたが・・・。
「わーっ、わたし競馬場なんてはじめて―!!すごーい!!」
 と、蘭は目を輝かせている。
 ―――ったく、のんきなやつ・・・。
 新一は半ば呆れた様子で蘭を見た。そんな蘭にチラッと視線を投げる人間も結構いて・・・
「おっ、可愛いなあ。お嬢ちゃん馬が好きなの?」
 なんて声をかけていくのもいて、そのたびに新一は鋭い視線を投げて牽制するのだった・・・。
「早く雅美さんのお父さんを見つけなきゃ!」
 と言ってきょろきょろ周りを見回す蘭に対し、博士と新一は
「しかし、この人ごみじゃのォ・・・」
「ああ、そう簡単には・・・」
 といったとき・・・
「あ―――!!」
 と、蘭が大声を出した。
「「え?」」
 と、博士と新一が同時に振り向く。と、蘭の視線の先には―――

 ―――いた―――っ!!

 信じられないことに、本当にあの写真で見た広田健三その人が競馬新聞を見ながら歩いていたのだった―――。
「ねっ見て見て!わたしって名探偵!!」
 と、はしゃぐ蘭。
 ―――んな馬鹿な・・・。
 思わず自分の目を疑う新一だった・・・。


 その後3人は広田の後をつけ、彼の住んでいるアパートを確認してから一度新一の家に戻り、雅美に連絡をした。
 雅美は“すぐに行きます!”と言っていた言葉どおり、30分ぐらいで新一の家にやって来た。


「ありがとうございます、探偵さん!!父を見つけていただいて!」
 息を切らしながら礼を言う雅美に、少々呆気に取られながらも、
「あ、いえ・・・」
 と応える新一。
「しかし早いですね。ついさっき連絡したばかりなのに」
「嬉しくて飛んできたんです!それで父は今どこに?」
「練馬区の、アパートに・・・」
 と言いつつ身支度を整えながら、新一は何か妙な気がしていた。
 ―――あれ?彼女・・・こないだとずいぶん雰囲気が違うな。服装が大人っぽくなってるし、化粧もしてる・・・。

 疑問に思いつつも、それは表には出さず身支度を終えると、雅美、蘭とともに家を出た。
 本当は蘭は置いて行こうかと思ったのだが、博士が出かけてしまい、1人で留守番をさせるのは心配なので連れて行くことにしたのだ。

 広田のアパートにつき、ちょうど出てきた雅美と広田が対面する。
 広田は雅美の顔を見るなり手に持っていたゴミ袋を落とし、驚きに目を見開いた。
「ずっと・・・ずっと探してたのよ・・・お父さん!!」
 雅美は広田に抱きつき、泣き崩れた。それは、感動的な親子再会の場面のように見えたが―――
 なぜか、新一はその光景に違和感を覚えた。なぜだかは分からない。強いて言うなら探偵の勘、だとでも言うべきか・・・。 
 が、その理由は結局分からず、雅美に挨拶をすると、2人はその場を後にした。


「良かったね。雅美さん、お父さんが見つかって」
 蘭が無邪気に笑って新一を見る。新一は、
「ん・・・」
 と言ったきり、顎に手をやり考え込んでいた。
「新一・・・?」
 蘭は不思議そうに首を傾げたが・・・。ふと視線を感じ、後ろを振り向いた。それに気付いた新一も、後ろを振り返る。
 と、サングラスにくたびれたコートといういでたちの体格の良い男が、電柱の陰からこちらを伺っていた。が、2人が男を見ると、サッと背を向け、行ってしまったのだ・・・。
「・・・んだ?あいつ・・・」
 
 

 新一と蘭はまだ知らなかった。この日、広田健三が命を落とすことになるのを・・・。
 そして、事件がそれだけでは終わらないことを・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 何とかここまで終わりました~。やっぱり難しいですね。なるべく明るい話に持っていきたかったんですけど・・・。ここまでは原作に忠実に進めてみました。これからは微妙に・・・変わっていくはずなんですけど・・・。どうなることやら・・・。
 競馬場での描写には妙に力が入ってしまいました。ただ、未成年が入場できたかどうかちょっとわからなかったので、博士を連れてっちゃいました。子供連れで行ったことは何度もあるんですけどね・・・。
 と言うわけで、今回はこれにて♪

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学校へ行こう!

Category : My Little Girl series(コナン・新ちび蘭)
 「―――あ、浅見、沙羅です・・・。よろしくお願いしますっ」
 真っ赤な顔で、沙羅―――蘭はペコッと頭を下げた。帝丹小学校の1年生としてやって来た蘭。小さな子供とはいえ、大勢の前に立つのは、やはり緊張してしまうものだ。
 そんな蘭を見て、クラスの子供たちはざわざわと騒ぎ出す。
「かわいー!」
「すげームツカシイ字だなー」
 などといった声が、あちこちで聞こえて来る。
「じゃ、浅見さんの席は、あの1番後ろの開いている席ね」
「あ、はい」
 蘭はとことこと歩いて行くと、言われた席に座り、ホッと息をつく。まだちらちらと自分を見ている視線が痛かったが―――。
「さあ、じゃあこれからみんなで浅見さんに校内を案内してあげましょうか」
 と、担任の女性教師がそういったので、蘭は思わず、
「あ、大丈夫です。知ってますから―――」
 と言いかけて、“まずい!”と思った。蘭はこの小学校の卒業生。知っていて当然なのだが、今、それを口にしたらまずいだろう。
「知ってるって・・・」
 先生が訝しげに蘭を見る。
「あ、いえ、あの・・・と、隣に住んでるお兄さんがこの学校の卒業生で―――聞いてるんです、その―――いろいろと・・・」
「あ、そうなの。それじゃあ・・・」
 と、少々訝りながら、それでも一応先生は納得したようだった・・・。
 蘭は、ホッと息をつくと改めて回りを見回した。当然のことながらみんな小学1年生。
 ―――可愛いなあ・・・。わたしと新一も、昔はこんなだったのよね。なんか懐かしい・・・。
 もう一度小学校へ通うことなど考えたこともなかったので、今自分がこんな姿で、この場所にいることがなんだか信じられなかった。
 1年生は給食が終わると、すぐに下校時間になる。
 蘭はランドセルに教科書をしまい、帰ろうと席を立ったが・・・
「浅見さん!」
 と、女の子が1人寄ってきたのだが、その名前にまだ慣れていない蘭は、そのまま帰ろうとして、
「浅見さんってば!」
 と、腕をつかまれ、ハッとした。
 ―――あ、わたしの事だ。
「あ、ご、ごめんね。ボーっとしてて・・・何?」
 蘭の腕を掴んだその女の子はニコッと笑った。瞳の大きな、なかなか可愛い女の子。黒髪は肩でそろえられ、どことなく、蘭に似ているような・・・。
「あたし、吉田歩美。よろしくね」
「あ、うん、よろしく」
 蘭も、ニッコリ笑う。
「ね、沙羅って字、ムツカシイ字書くんだね。はじめて見たよ」
「う、うん、そう?」
「さらちゃん・・・って呼んでもいいかなあ?」
 歩美が可愛らしく首を傾げる。蘭は思わず笑って、
「もちろん!わたしも、歩美ちゃんって呼んでいい?」
「いいよ。みんなそう呼んでるし」
 ニコニコ笑っている歩美を見て、蘭も微笑んだ。
 ―――可愛い女の子。なんか、妹とか欲しくなっちゃう。
「あれ?歩美ちゃん、何話してるんですか?」
 と、顔を出したのは、まじめそうな、顔にそばかすのある男の子。
「あ、光彦君」
「よお、帰ろうぜ」
 その後ろからぬっと出て来たのは、体の大きな男の子。
「元太くんも。ね、4人で帰ろうよ。さらちゃん、いいでしょ?」
 歩美が嬉しそうに言う。蘭はニッコリ笑って、
「もちろん!」
 と言ったのだった―――。


 「ただいまァ」
 蘭が博士の家のドアを開けた。
「おお、帰ってきたか。お帰りなさい、ら・・・沙羅君・・・」
 出て来た博士が慌てて言い直したのは、蘭の後ろから、3人の子供たちが顔を出したからで・・・。
「あ、博士、ただいま。あのね、同じクラスのお友達。歩美ちゃんと、光彦君と、元太くん・・・。遊びに来てくれたんだけど・・・。上がってもらってもいい?」
「おお、もちろんじゃよ。さあどうぞ。いや、早速友達が出来たのか。良かったのォ」
 博士に促され、3人はリビングに入って行った。蘭はそれを見送ってから、
「ごめんなさい、博士。なんか断りきれなくて・・・。あの子達、すっごく可愛いの」
 まるで、自分の子供のことでも話しているかのような蘭の口調に博士は笑い、
「いいんじゃよ。ここは蘭君の家でもあるんじゃから。これからも、どんどん友達を連れてきなさい。―――わしも、これからは沙羅君と呼ぶようにしなきゃならんのォ」
「ふふ・・・。ありがとう、博士」
 蘭は安心したように笑い、自分もリビングに行き、3人に加わった。
「さて、ジュースがあったかのォ」
 といいながら博士は、キッチンへ向かったのだった。


 新一はその日、学校が終わると急いで帰ってきた。今日1日、蘭のことが気になって仕方なかったのだ。今日は、蘭の転校初日だ。あいつ、大丈夫だったかな・・・。
 新一は自分の家には帰らずに、真っ直ぐに博士の家に向かった。勝手知ったるなんとかで、持っていた鍵でドアを開け、中に入る。――― 
 と、中から子供たちの声が聞こえてきた。
「?」
 不思議に思いつつ、リビングに入ってみると―――
「あ、新一―――お兄ちゃん、お帰りなさい」
 と、先に気付いた蘭がいうと、他の3人がほぼ同時に顔を上げた。
「え、さらちゃんのお兄さん?」
「へェ、オメエ兄ちゃんがいたのか」
「ちがいますよ。隣に住んでるお兄さん、でしょう?」
 次々に口を開く3人に、ちょっと苦笑いしながら蘭が口を開く。
「うん、そう。隣に住んでる、工藤新一・・・お兄さん。―――お兄ちゃん、わたしの新しいお友達・・・歩美ちゃん、光彦君、元太君よ」
 そう言われて、呆気にとられていた新一がはっと我に帰る。
「あ、ああ、こんにちは・・・」
「こんにちは――!!」
 元気一杯の3人に、気押され気味の新一・・・。早々に少し離れてその様子を見ていた博士の元へと逃げてしまった。
「―――なんでいきなり・・・」
「ま、良いじゃないか。蘭君は友達が出来て、嬉しそうじゃぞ?」
「―――っつーより、妹と弟が出来たみたいで喜んでんじゃねーか?あいつも一人っ子だし」
「かも知れんな」
 なんにしろ良いことじゃと目を細める博士。新一は、子供たちの中で何の違和感もなく、自然に溶け込み遊んでいる蘭を見た。
 歩美となにやら楽しそうにおしゃべりし、元太の取る行動を笑い、光彦の話に耳を傾け、目をぱちくりさせたり、笑ったり・・・。ころころ変わるその表情が可愛くて、見惚れていたが・・・その表情は、なぜかだんだんと険しくなって行った。 
 それに気付いた博士が、声をかける。
「なんじゃ、新一。不機嫌そうな顔をして」
「―――べつにっ、んな顔してね―よ」
 だがそんな言葉とは裏腹に、その表情はどんどん不機嫌になっていき・・・
「―――あいつ、何であんなに楽しそうなんだよ?」
 ボソッと呟く新一。博士が、ん?と新一の顔を見る。
「俺がいること、忘れてんじゃね―のか?あの光彦ってガキも、やたら蘭に話し掛けやがって―――。蘭が笑うと、顔赤くしたりしてよォ、ガキのくせに・・・。元太ってガキなんか、馴れ馴れしく“さら”って呼び捨てにしやがって・・・。あいつら調子に乗りすぎだぜ」
 ぶつぶつ文句を言いつづける新一を、ビックリしたように博士は見ていたが・・・
「んだよ!?」
 その視線に気付いた新一の声に、耐え切れなくなったかのように・・・
「ブワ―――ッハッハッハッハッ」
 と、笑い始めたのだった。突然の笑い声に、子供たちも皆、驚いて博士を見る。
「は、博士?」
 大きな瞳を、さらに見開く蘭。
「ど、どうしたんですか?」
 と言ったのは、光彦。
「おい・・・博士・・・」
 さすがに、博士の笑い出した原因に見当がついた新一が、ばつの悪そうな顔をして、博士を見る。
「ファッハッハッ」
「おい・・・笑い過ぎだって・・・」
「い、いや、すまん、つい・・・くくく」
 目に涙を浮かべつつ、笑いを堪える博士。
 子供たちは、そんな博士を不思議に思いつつも、また遊びに戻る。新一は、まだ微かに肩を震わせている博士を横目で睨んだ。
「おい・・・博士・・・」
「す、すまん、思わず・・・。しかし、名探偵も蘭君の前じゃと形無しじゃのォ」
「うっせーよ・・・」
「しかし相手は子供じゃぞ?蘭君はそれこそ、彼らのお姉さんのような気持ちで遊んでやってるんじゃろうから、心配は無用じゃと思うがの?」
「―――んなこと、分かってるよ。別に、本気で心配してるわけじゃね―さ・・・」
 と新一は言ったが、やはりその顔を不機嫌で・・・。


 3人が帰ってから、新一と蘭はようやくゆっくり話すことが出来た。
「ね、あの子達可愛いでしょう?歩美ちゃんはね、すっごく素直で優しい子なの。好奇心一杯って感じでね。あ、新一のこと”かっこいいお兄さんだね”って言ってたよ。元太君は、やることは乱暴だけどホントは優しいのよ。光彦君はとっても物知り。まじめでね・・・フフフ」
 3人のことを話しながら、急に含み笑いをはじめた蘭を、新一が訝しげに見る。
「なんだよ?急に・・・」
「うふ。光彦君ね、歩美ちゃんのことが好きみたいなのよ」
「へえ?」
「元太君も、そうだと思うけど。歩美ちゃんて可愛いし、優しいし人気がありそうだから大変ね、2人とも」
 と、のんきに笑う蘭。
 ―――オメエも多分、そうなるぜ?
 と新一は、密かに思ったりしていたのだった・・・。
「蘭君」
 地下に行っていた博士が、いつのまにか戻ってきて蘭に声をかけた。
「あ、博士」
「ちょっとこれを使ってみてくれんかの?」
 と言って博士が差し出したのは、赤いリボンのついたブローチで・・・
「?これ・・・裏に何かついてますよ?」
 リボンの裏を見ると、何かダイヤルのようなものがついていた。
「それはな、ブローチ型変声機なんじゃよ」
「ブローチ型・・・」
「変声機・・・?」
 蘭と新一が、眼をぱちくりさせながら博士を見る。博士は得意そうに笑い、
「そうじゃ。そのダイヤルを調節してな、どんな声でも出せるんじゃ。その丸いのがマイクになっとる」
「へ、へえ・・・」
「りぼんは取り外し可能じゃから、他のものをつけてブローチにすることもできる」
「・・・で、何に使うんだよ?これ」
「いやァ、蘭君もたまにはお父さんと話したり、友達と話したりしたいんじゃないかと思ってのォ」
「え・・・」
 蘭が、目を見開いて、博士を見る。
「幾ら女の子で変声期がないと言っても、子供の声じゃ、いつ怪しまれるかわからんじゃろう」
「で、これか?けど、それなら別に、他の声はいらないんじゃ―――」
「わしも最初はそう思ったんじゃが、これから何があるか分からんじゃろう?もしかしたら、何かの役に立つかも知れんじゃないか」
 蘭は、そのブローチを自分の胸につけてみた。
「蘭君には赤い色が似合うからのォ。今日のその紺のワンピースにも良くあっとるし。どうじゃ?」
「うん、可愛い。博士、ありがとう、すっごく嬉しい」
 満面の笑みを浮かべ、博士を見る蘭。満足そうに頷く博士・・・と、ソレをつまらなそうに見る新一・・・。
「―――じゃ、早速電話してみようかな・・・。お父さんと・・・それから園子に」
 そう言うと、蘭は電話に駆け寄った。
 蘭は今、留学の準備のために、母親の英理のところにいることになっていた。
 蘭が電話で話し始めるのを見て、新一はボソッと呟いた。
「本当は、会いたい、だろうな」
「そうじゃな・・・。しかしあの姿ではのォ・・・」
 2人で小さな蘭の後姿を見つめる。ブローチを使い、16歳の蘭の声で電話している姿は、どこか痛々しくもあり・・・。
「―――早く、戻してやんなきゃな・・・」
「うむ。わしもがんばって、薬の研究をしてみるとしよう」
「ああ、頼むよ。俺は―――ゼッテ―あの黒ずくめの奴らを探し出して、刑務所にぶち込んでやるっ―――見てろよ」
 新一の胸に、また静かな怒りの炎が燃え上がっていた・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 どうでしょう?新一の場合は、「小学生なんて!」とすごく嫌がってる感じだったけど、蘭ちゃんだったら、こんな感じなんじゃないかとおもって、作ってみました。そして、またジェラ新です。
 本当はオリジナルキャラとか出そうかと思ってたんですけど、それはやめておきました。
 次回はいよいよ宮野明美の登場予定です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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My Little Girl 3

Category : My Little Girl series(コナン・新ちび蘭)
 予定である3時10分前に、英理がやって来た。さすがに母親だけあって、蘭のことはすぐに気付いてしまった。もちろん驚いていたし、事情を説明しても、すぐには信じることが出来なかったようだが・・・。 
 目の前に小さくなった蘭がいるのは紛れもない事実。
「蘭・・・」
 英理は蘭の前に屈み込むと、娘の体をやさしく抱きしめた。泣き虫な蘭の瞳からはポロポロと涙が流れる。
「お母さん・・・」
「例え、あなたがどんな姿をしていても、わたしの娘には違いないわ。そうでしょう?」
「うん、うん」
 英理は蘭の目をまっすぐに見て、微笑んだ。
「安心なさい。あなたが元の姿に戻れるように、わたしもできる限りの事はするわ」
「うん、ありがとう」
 英理は蘭をソファに座らせると、向かい側のソファに座っている博士と新一を見た。
「それで、これからどうしようと思ってるの?新一君」
「はい。それなんですが・・・とりあえず、学校には本当のことを言うわけにはいかないので・・・」
「そうね。あんまり長く休むとお友達も心配するだろうし。こういうのはどう?海外に留学したことにするの」
「留学・・・」
「そう。とりあえず半年・・・いえ、1年ということにしておいて、その前に戻れたら留学先で事故があったとかいう事にして戻ったら?」
 新一はあごに手をやり、少し考えてから、
「・・・そうですね。蘭、それでいいか?」
「うん」
 蘭はこくんと頷いた。
「細かいことはまた後で決めましょう。それから・・・蘭、このこと、あの人に言うつもりはない?」
 あの人、とは、父、小五郎のことだろう。
「・・・うん。お父さんにはそのうち話そうと思ってる。今はまだ、余計な心配かけたくないの。」
「そう。分かったわ。安心して。あの人のことはわたしが何とかするわ。新一君、任せてくれる?」
「はい、もちろん。お願いします」
 英理に言われ、頷く新一。
 ―――やっぱ、この人苦手だ・・・。有無を言わせねェ雰囲気をもってんだよな・・・。
 などと考えていた新一。しかし、顔には出さないようにして、話を続ける。
「それで、住む所なんですが、とりあえず博士のところにいてもらっていいでしょうか」
「ここに?」
「はい。あの時の奴ら・・・あいつらは人を殺してもなんとも思わないような奴らだ。蘭が目撃した取引のことを考えても裏で相当の悪事を働いているはずだ。そいつらが、もし蘭が生きていると分かったら・・・蘭を放って置くはずがない」
「うん・・・」
 蘭は頷きながら、薬を飲まされたときの恐怖を思い出して青ざめた。英理がそんな蘭をきつく抱き寄せる。
「おそらく、蘭のことはもう調べているはずだ。あの時俺と一緒にいるところも見られているんだから、調べれば蘭が何者かってことも分かっちまう。そうなれば、おっちゃん、おばさん、俺の周りも当然調べるだろう」
「でもそれなら、あなたの家の隣に住んでる博士のことだって調べるんじゃなくて?」
 と、英理が言う。
「―――かもしれません。でも、そこに小さな女の子がいても、すぐに蘭とは結びつかないでしょう。博士と蘭は、今までそれほど交流があったわけじゃない。それに・・・」
 そこで言葉を切ると、新一はチラッと蘭を見た。
「博士の家にいれば、俺が側にいられる・・・守ってやることが出来ます。何か変化があれば、すぐに分かります。だから・・・」
 本当はもっと側に・・・自分の家に置いておきたいところなのだが、幾ら子供の体になっているとはいえ、やはりそれは許してもらえないだろう。
「でも・・・博士は?いきなり蘭と一緒に暮らせ、なんていっても博士の生活があるでしょう?」
「わしは構わんよ」
 と、博士がのんきに言った。
「蘭君は一通りなんでも出来るじゃろう?わしは研究室にいることが多いしの。いろいろやってもらってかえって助かるくらいじゃし・・・それに、なんだか孫ができたみたいで楽しいんじゃよ、ハハハ」
 大口を開けて笑う博士を、新一がチラッと横目で睨む。その光景を見て英理はほっとしたように笑い、
「博士がそうおっしゃるなら・・・。お願いしますわ、蘭のこと」
 と言った。蘭もペコッと頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「それで・・・蘭、学校の事だけど」
 と、英理が蘭に向き直った。
「学校・・・?」
「あなたの体・・・多分10年前くらいに戻ってるのね。とすると、今は6歳ってことになるわ。ちょうど小学1年生よ」
「え・・・って、まさか・・・もう1回小学校に行けってこと?」
 蘭が、心なしか顔を引きつらせて言う。
「もちろんよ!こんな小さい子が毎日家にいたらおかしいでしょう?」
「で、でも、家から出ないようにすれば・・・」
「ダメよ!」
 英理がいつになく厳しく、キッと蘭を見て言ったので、蘭は思わず見を竦めた。
 英理はそんな蘭に今度はふわりと優しく微笑みかけ、そっと抱き寄せた。
「・・・蘭、あなた今、すごく不安でしょう?無理しなくてもいいのよ。でもね、ずっと家の中に篭ってたら、それこそその不安に押しつぶされてしまう。博士は研究室にいることが多いだろうし。新一くんだって学校があるわ・・・。あなたを1人ぼっちにしたくないの。分かるでしょう?」
「お母さん・・・」
 蘭は、英理を見上げた。
「わかったわ。わたし、学校に行く」
「ところで、名前なんだけど・・・」
 と、新一が蘭に向かって言った。
「学校へ行くんだったらなおさら、本名のままじゃまずいと思うんだ」
「そうね・・・」
 と、英理がまじめな顔をして頷いた。蘭はちょっと戸惑ったような顔をして、
「でも、なんて名前にしよう・・・?」
「そうだなあ・・・蘭・・・乱歩・・・江戸川・・・ってのは?」
「江戸川ァ?」
 蘭があからさまにいやそうな顔をする。新一は心外、と言う顔をして、言った。
「なんだよ、そのいやそうな顔・・・。じゃ・・・コナン・ドイルの、コナン、とか・・・」
「外国人じゃないのよ?」
「・・・んじゃ、明智小五郎の明智・・・」
 蘭は、ハアッと溜息をついた。
「・・・なんで全部、そういう類の名前なのよ?」
「・・・他に思いつかね―んだよ」
「にしたって、明智じゃすぐ連想できて・・・わたしやあよ。怪人20面相とか言われるの」
「あら、じゃあ浅見は?」
 と、英理が口をはさんだ。
「浅見?」
「ええ。浅見光彦って知らない?」
「知ってる!あのドラマのやつよね」
「ああ、あの探偵気取りのルポライターとか言う・・・」
「わたし、あの人好き!」
 途端にうれしそうな顔をして蘭が言う。新一は、蘭の口から他の男(ドラマの中の人間だが・・・)を好きという言葉を聞いて、ギョッとした。
 ―――す、好きって、そんな・・・
「お、おい、蘭―――」
「決めた!苗字は浅見にするゥ」
 蘭は、新一の様子に気付くことなく、嬉しそうにそう言い切った。
「下の名前はどうするの?」
 と英理。もはや新一抜きで、話は進められていた・・・(泣)。
「下の名前・・・光子・・・じゃなんかなァ・・・」
「そうね。そのまんまだものね」
 と、2人で考え込む。
「V.I.ウォーショースキー・・・」
 新一がボソッと言った。
「は?何それ?」
 と、蘭が怪訝な顔をする。
「ウォーショースキーって・・・確かサラ・パッキーが書いた小説に出てくる探偵ね。本名はヴィクトリア・ウォーショースキー・・・元弁護士で、空手の達人という・・・」
 と英理が言った。
「へえ?わたし知らないけど・・・」
「蘭にぴったりだろ?」
「そうね、確かに。でも、V.I.とかヴィクトリア・・・っていう名前はちょっと・・・」
「・・・新一って、ネーミングセンスないよねェ」
「全くじゃ」
 蘭と博士が頷きあって言うので、新一はブスッとして、黙り込んでしまった。
「あらでも、作者の名前ならいいんじゃないの?“サラ”ってきれいな名前よ」
「そういえばそうね。浅見サラ・・・か。うん、良いかも。サラっていう漢字は後で考えるね」
「じゃ、決まりね。浅見サラで・・・。じゃ、漢字が決まったら連絡頂戴。わたしはそろそろ行くわ」
 と言って、英理は席を立った。蘭や新一、博士も慌てて立ち上がる。
「―――じゃあね、蘭。くれぐれも気をつけて。何かあったらすぐに連絡するのよ」
「うん、ありがと、お母さん。―――お父さんのこと、よろしくね」
「分かってるわ。―――新一君」
「!はい」
 急に名前を呼ばれ、新一の心臓が跳ね上がる。
「蘭のこと、よろしくね。その組織のこと、わたしも調べてみるから・・・何かわかったら知らせてね」
「はい」
「博士・・・ご迷惑をおかけしますけど、どうぞよろしく」
「ああ、任せなさい」
 博士は相変わらずニコニコ笑っていた。じゃあ、と英理が帰り、再び3人になる。
「さて、じゃあ早速蘭君の小学校の転入手続きをしとかなきゃならんな」
「博士、頼めるか?」
「おお、わしの遠い親戚の子で、両親が海外に行くことになった、ということにしておこう。かまわんかな?蘭君」
「はい」
 2人が微笑み合う。傍から見ていると、本当におじいちゃんと孫、という感じだ。
 その後、また博士が地下の研究室に行ってしまうと、新一と蘭は2人で紅茶を飲んだ。
「サラ・・・か。これからは外でそう呼ばなきゃなんね―な」
「ん。・・・あ、わたしも“新一”って呼び捨てじゃおかしいよね。―――新一お兄ちゃん・・・って呼ぶ?」
 その言い方になぜか新一は照れて、
「好きにしろよ」
 と言った。
「―――なァ、蘭」
「ん?」
「さっきはああ言ったけど・・・その・・・もしおまえが不安なら、俺の家に来ても良いんだぞ・・・?」
「え・・・」
 蘭が大きな瞳をさらに大きく見開き、少し顔を赤らめて新一を見る。
「ほ、ほら博士はあの通りだしさ。1人じゃ寂しいだろ・・・?」
 蘭は新一の顔をじっと見つめていたが、やがて新一が見惚れるような笑顔になると、
「ありがと、新一。じゃ、さびしくなったら新一のところに行くね」
 と言った。
「あ、ああ」
「でも、新一も1人じゃ寂しいでしょ?」
「へ?」
「ご飯とか、一緒に食べようよ。こっちで3人分、作るから。―――あ、もし警察に呼び出されたりして一緒に食べれないときは、新一の家の冷蔵庫に入れておくよ。―――行っても、良い?」
「ああ、かまわねーよ。合鍵、作っとくから、好きなときに来いよ」
 と新一は言った。
 ―――こんな状況じゃなかったら、ゼッテ―言えなかったな。ホントは喜んでる場合じゃねーんだけど・・・少しくらい、楽しんだって良いよなァ?
 無邪気にニコニコ笑っている蘭を見つめながら、思わず顔が緩んでくる新一だった・・・。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 一応ここで終わります。次回はちょっとタイトル変えて・・・蘭の小学校転入編なんてやってみようかなあと思ってます。もちろん少年探偵団も出てくる予定です。

 今日はちょっと早め更新。
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My Little Girl 2

Category : My Little Girl series(コナン・新ちび蘭)
 次の日、いつもより早く目が覚めてしまった新一は、ソファで眠る蘭の顔をボーっと見つめていた。
 好きな子と同じ屋根の下で眠る・・・こんなにおいしいシチュエーションはない。はずなのだが・・・。

―――まさか、こんな姿になっちまった蘭に手ェ出すわけにいかねーもんなァ。それじゃ犯罪だって・・・。

 新一は大きな溜息をついた。それに反応したかのように、蘭がちょっと身動きした。
「・・・う・・・ん」
 少し口を開け、あどけない顔で眠る蘭。
 ―――かわいい、よなあ。こんなにかわいかったっけか、こいつ・・・。
 じっと見惚れているうちに、新一は心臓が高鳴ってくるのを感じた。

 ―――ちょっとくらい・・・キスくらい・・・してもいいな・・・。こいつ、一度寝たらなかなか起きねーし・・・それくらいじゃ起きねーよな・・・。
 新一は、高鳴る胸を押さえつつ、そっと蘭に近づき、蘭の桜色のかわいい唇に、自分のそれを・・・
 ガチャッ
 突然、ドアが開く音がして新一は飛びのくように蘭から離れた。

「お?新一、起きとったのか。早いのォ」
 と、言いながら阿笠博士が入って来た。新一はちょっとばつが悪そうな、不貞腐れたような顔をして振り向いた。
「・・・なんじゃ、その顔は。昨夜は良く眠れたのかの?」
「いや・・・いろいろ考えてたから・・・」
「ふむ・・・そうじゃな。しかし・・・」
 博士はふと気付いたように、ニマッと笑うと、
「―――新一、何か不埒なことを考えていたんじゃあるまいな?」
「な―――!!」
「お?その顔は図星かの?何しろ好きな女の子と1つ屋根の下というシチュエーションはそうそうないからのォ」
「ば―――!俺はそんな―――!」
 真っ赤になって怒鳴り返す新一。名探偵も形無しである・・・。
「・・・うーん・・・新一ィ・・・?」
 新一の声が大きかったせいか、蘭が目を擦りつつ、体を起こした。
「ら、蘭―――!い、今の聞いて―――!」
「?・・・何のことォ?あ・・・博士、おはようございますゥ」
 博士を見つけた蘭は、かわいらしくニッコリ笑って言った。
「おはよう、蘭君。よく眠れたかの?」
「―――ハイ。すいません、お邪魔しちゃって・・・」
「いやいや、いいんじゃよ。自分のうちだと思って、寛いでおくれ。―――ところで新一、今日はこれからどうするんじゃ?」
「ああ、それなんだけど・・・蘭」
 新一は、真剣な顔をして蘭を見た。
「何?新一」
「今日は、これからのことを話し合おうと思ってたんだけど・・・」
「うん」
「おまえの体がこんなふうになっちまったこと、言っておきたい人間はいるか?」
「言っておきたい、人間・・・?」
「ああ。今のところ、いつ体が元に戻るか分からない状況だ。もちろん学校も休まなきゃなんねェ。当然、周りは変に思うはずだ。そういうことをいろいろ手を回して辻褄が合うようにしておかなきゃならねえだろ?」
「うん・・・」
 蘭は考え込むように下を向いた。
「もちろん、蘭が誰にも知られたくないなら、それでもいいよ。ただ・・・おっちゃんにどういう風に説明するか・・・それがちょっと問題なんだけどな」
「・・・・・」
 蘭はキュッと眉根を寄せて、考え込んでいる。新一と博士は、蘭が何か言うのをじっと待っていた。
 たっぷり1分ほど経ってから、蘭は突然顔をあげ、新一を見た。
「―――新一」
「ん?」
「・・・お母さんに、言っておきたいの」
「へ・・・お母・・・さん?」
 新一は一瞬、その顔を思い浮かべることが出来なかった。それはそうだろう。蘭の母親―――弁護士である妃英理は10年も前に家を出て、別居生活をしているのだ。当然その間、新一は会っていないわけで・・・。
―――どんな人だったっけ・・・?確か、蘭と遊びまわって泥だらけになって帰ると、スッゲー怒られたこととかは覚えてるけど・・・。ヤベ・・・怒られたことしか記憶にねーよ。
「蘭君のお母さんというと・・・弁護士の先生じゃったかな」
 と、博士も思い出したように言った。
「はい。・・・今は月に1回、お父さんに内緒で会ったりするくらいですけど・・・」
「月に1回、会ってたのか?」
「うん。やっぱり会いたいもん。まだ離婚したわけじゃないし」
 と、蘭はちょっと寂しそうに言った。
「そっか・・・。それでお母さんにだけ言いたいってことか?」
「うん。お母さんなら多分、今の状況を判ってくれると思うし、協力してくれると思うの」
「・・・そうだな。おっちゃんに隠しておくにはそのほうが好都合、か」
「学校には、言えないし。友達にも・・・このことに巻き込みたくないし・・・」
 友達思いの、優しい蘭らしい言葉だった。
「お父さんは心配性だし、元刑事の探偵だから、自分で何とかしようと思って危険なことしそうだし」
 蘭は、ちょっと苦笑いして言った。さすがに父親のことを良く分かっている。
「分かった。それなら・・・これから、会えるかな?おばさんに」
「うーん・・・。電話してみるけど・・・お母さん、忙しいから」
 と言いつつ、蘭は母親の妃英理に電話した。
「―――もしもし、お母さん?私、蘭・・・」
「蘭?どうしたの?こんな朝早く」
「うん。ちょっと・・・。ねェ、今日、時間ある?」
「今日?どうして?」
「ちょっと・・・。大事な話があって。ダメ?」
「急に言われてもね・・・。ちょっと待ってね」
 と言って、英理は電話を置いたようだ。今日の予定などを確認しているのだろう。
「・・・お待たせ。そうね、3時から5時・・・までなら何とかなるわ」
「ホント?ゴメンね、えっと、じゃあ・・・」
 蘭がチラッと新一を見る。新一は手振りで“ここで”と伝えた。
「あの、阿笠博士、知ってるでしょう?新一の家の隣に住んでる・・・」
「ああ、あのちょっと変わった人ね」
「う、うん・・・その、博士の家に来て欲しいんだけど・・・」
「あそこに?またどうして?」
「それは、今はちょっと言えないの・・・来てから全部、話すから」
「―――分かったわ。とにかく、3時に阿笠さんのお宅へ行けばいいのね」
「うん。ゴメンね、忙しいのに」
「何言ってんの。あなたがそんな事言うってことは余程の事だもの。大丈夫よ、ちゃんと行くから」
「うん・・・ありがとう」
 母の優しい言葉に思わず涙が溢れてくる。

 ―――電話を切ると、蘭はちょっと目を押さえ、新一と博士のほうに向き直った。
「おばさん、来れるって?」
「うん。3時から5時までなら何とかなるって」
「そっか・・・。じゃあ、それまでどうすっか」
「新一、今日学校あるでしょ?行って来ていいよ」
「え?けど、おまえ・・・」
「わたしなら大丈夫。博士もいるし」
 と言って、蘭はニッコリ笑ってみせた。
「そうじゃな。3時なら学校から少し早めに帰ってくれば間に合うじゃろう」
 と言って、博士も頷いた。
 新一としては、少しでも蘭の側についていたかったのだが・・・蘭がそういうのでは仕方がない。
 
 新一は一度自分の家に戻り、制服に着替え学校へ行く準備をして再び博士の家へ行った。
 博士の家では、博士と蘭が朝食の準備をしているところだった。体が小さくなってやりづらそうではあるが、さすがに家で毎日家事をしていただけあって、てきぱきと動いている。そんな蘭を見ながら、“いい嫁さんになるなあ”などと不謹慎なことを考えている新一だった・・・。


 「じゃあ、行ってくるよ」
 朝食を食べ終わり、玄関へ向かった新一とそれを見送りについてきた蘭。博士は早々に地下の研究室に行ってしまった。
「いってらっしゃい」
 と言ってニッコリ笑う蘭はとってもかわいく、新一は諦めきれずに、
「なァ、やっぱ俺もいたほうが・・・」
 などと言い出した。
「大丈夫だってば。ね、心配しないで行ってきて」
「―――分かったよ。・・・あ、そうだ!」
 と、突然新一が大きな声を出したので、蘭はビックリして目をぱちくりさせる。
「何?急に」
「ちょっと待ってろ!」
 と言うと、新一は自分の家へ走って行き、蘭が呆気にとられている間に、またすぐに戻ってきた。
「どうしたの?」
「これ―――」
 と言って、息を切らしながら新一が差し出したのは、小さな袋・・・。
「?これ、何・・・?」
「昨日、おまえを待たせて買いに行ったもの。本当は昨日のうちに渡すつもりだったのに・・・すっかり忘れちまってた」
 蘭はその袋を受け取ると、丁寧に開けて中のものを手のひらに出した。
「わあ・・・かわいい!これ、わたしが欲しがってた奴ね?」
「ああ」
「新一、覚えてくれてたんだ。興味なさそうにしてたのに・・・」
「・・・つけてやるよ」
 新一は真っ赤になった自分の顔を隠すように蘭の後ろにまわり、ペンダントをつけてやった。蘭は嬉しそうにそのペンダントを見つめている。
「ありがとう、新一。とってもうれしい」
 満面の笑みでそう言われ、ますます赤くなる新一。
「じゃ、じゃあ、俺もう行くから・・・」
「うん。行ってらっしゃい」
 後ろ髪を惹かれつつ、新一は学校への道を歩き出した。蘭は、その姿が見えなくなると家の中に入り、玄関の鍵を閉めた。
 本当はすごく不安だったのだ。こんな体になって、怪しげな組織に狙われ、これから先のことが何も見えない不安に、蘭の小さな胸は押しつぶされそうになっていたのだ。
 でも・・・蘭は胸に揺れる雫型のペンダントを見つめた。

 ―――不思議・・・。なんだかこれをつけてると、新一が側にいてくれるみたい・・・。
 蘭はなんだかうれしくなって、いつも家でそうしてるように博士の家の掃除や洗濯などを始めたのだった・・・。


 新一は結局我慢できずに、昼休みに入るとすぐに学校を後にした。蘭のことが心配で授業どころではなかった。それに、滅多に休まない蘭が学校を休んだので、蘭の親友園子が新一に根掘り葉掘り聞いてくるのに心底閉口し、早々に逃げ出したかったというのもあった。
「ただいま!」
 勢いよくドアを開け、博士の家の中へ入る。ちょうど居間でお昼ご飯を食べていた博士と蘭が、ビックリして新一を見た。
「新一?ずいぶん早いね、どうしたの?」
「どうしたって、そりゃ心配で・・・・って、蘭、その格好・・・」
 新一は蘭を見て目を丸くした。
 蘭は朝まで着ていたトレーナーと半ズボンという格好とは打って変わり、かわいらしいピンクのワンピースを着ていた。襟や裾には白いレースがあしらわれ、椅子にちょこんと座っている姿は、まさにお人形のようだった。
「デパートに、博士と買い物に行って、買ってもらっちゃったの・・・変?」
 恥ずかしそうに頬を赤らめて首を傾げる蘭。ボーっと見惚れていた新一は、蘭の言葉にハッと我に帰り、
「い、いや、変じゃね―よ!すげ―似合ってる!」
「ホント?良かった」
 えへへ、とテレ笑いする蘭。その横で、まるで孫でも見るように目を細めて蘭を見つめる博士・・・。
 なんとなく、新一は面白くない。
「買い物に行くなら、俺も一緒に行ったのに・・・」
「だって、新一は学校あるでしょ?それに、わたしだって朝はそんなつもりなかったし・・・でも博士が」
「どうせ必要になるもんじゃしの。昨日、その下着を借りに行った家で聞いておいたんじゃ。小さい女の子の服を買うのはどこが良いか。そこのお宅にも昨日のお礼に何か買っていこうと思ってたんでな」
「そっか・・・」
「新一、お昼は?何か食べたの?」
「いや」
「じゃ、食べなよ。これ、まだあるから」
 蘭が自分の前のチャーハンを指差す。
「ああ。じゃあ食べるよ。―――あ、いいよ。俺が取ってくるから」
 椅子から降りようとする蘭を手で制し、新一は台所のフライパンに残っていたチャーハンを皿に盛って、席についた。
「これ、博士が作ってくれたのよ」
 と、蘭がニコニコして言う。
「へえ、やるじゃん、博士」
「いやいや、蘭君がやってくれると言ったんじゃが、やはり危ないじゃろう?その小さな体では」
「ごめんなさい、役に立たなくて・・・」
 蘭が申し訳なさそうに言う。
「何をいっとるんじゃ。掃除や洗濯までしてくれて、大いに助かっとるよ。それにわしも孫が出来たようで楽しいんじゃよ」
「・・・ずいぶん、仲良くなったみて―だな」
 と、ちょっと不貞腐れたように新一が言う。
「なんじゃ、新一。やきもちか?」
 博士が二カッと笑って新一を見ると、新一の顔が一気に耳まで赤くなる。
「バッ、何言ってんだよっ」
 一方の蘭も、顔を赤くして俯いている。そんな2人を、博士は笑いながら楽しそうに眺めていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ちょっと短め。新一、博士に嫉妬するの巻って感じで。会話が多くなってしまいました。
 次回は英理さん登場と、蘭の仮の名前が決まります。

 なつかしいなあ。このシリーズを書くのもとっても楽しかったです。
 また時間があれば、続きを書きたいんだけど・・・

 へたっぴいな文章ですが、楽しんでいただけたらうれしいです♪
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My Little Girl 1

Category : My Little Girl series(コナン・新ちび蘭)
―――ったく、どこに行ったんだよ!?
 新一は雨のトロピカルランドの中を、蘭を探して必死に走っていた。
―――蘭!!一体何があったんだ!?
 もうすっかり夜になっていた。後10分ほどで閉園の時間。雨のせいもあり、遊びに来ていた客は皆、出口に向かって歩いていた。その中を逆走するように、新一は走る。
 今日は、蘭とトロピカルランドに遊びに来ていた。空手のと大会で優勝したご褒美に・・・。最近は、新一が事件で呼び出されることが多く、あまり2人で出かけることもなくなっていたので、久しぶりに蘭と2人で楽しい休日を過ごすはずだったのだが・・・。2人で乗ったミステリーコースターで殺人事件が起き、とんでもないデートになってしまった。事件が解決し、やっと警察から解放されても、蘭はずっと泣いていて・・・。
「しょうがね―な―、ちょっと待ってろよ」
「?どこに行くの?」
「良いから、そこから動くなよ!」
 そう言って、新一は駆け出した。蘭に、今日の記念とお詫びに、昼間見かけて蘭がほしそうにしていたペンダントをプレゼントしようと思ったのだ。雫型の、中に天使の羽が見えるかわいいペンダント。
 きっと蘭に似合うはず。
 これを蘭に渡して・・・そして、自分の気持ちを言うつもりだった。
 ―――ずっと、好きだった、と・・・
 なのに。

 蘭がいたはずの場所へ戻ってみると、蘭がいなかったのだ。すぐに近くを探したが、どこにもいない。怒って先に帰っちまったのかな?とも思ったが、蘭の性格からして、新一に何も言わずに帰
るというのは考えられなかった。そのうち雨も降ってきて、閉園時間も迫り、人がどんどん出口へ向かって流れ始めたが、その中にも蘭の姿は見当たらなかった。
―――どうしたんだ?どうしてどこにもいないんだ?蘭―――!!
 迷宮無しの高校生名探偵といわれる新一も、こと蘭のことになると途端に普通の高校生に戻ってしまう。気ばかり焦って、冷静な判断ができない。蘭はそんなこと知る由もないが・・・。
 新一は、もう一度出口のほうまで戻り、また端から探していくことにした。蘭が、自分から行くとは思えないような建物の裏のほうも隅から隅まで・・・。

 そして、ようやく見つけたその姿は―――
 そこは、本当に人気のない、暗くて何もない空間だった。そこに、女の子が一人倒れていた。5,6歳くらいだろうか。新一は一瞬、迷子かと思った。迷った子供が、疲れて眠ってしまったのかと。
 が、すぐに異変に気付いた。それは、その少女が着ている服・・・。それは、今日蘭が着ていた服と同じものだった。
 新一はその少女の側に駆け寄った。雨でびしょぬれになっている少女を、そっと抱き起こす。その顔は・・・
「―――ら、ん・・・?」
 小さい頃の蘭に、そっくりなその顔・・・だが、まさか・・・そんなことはありえない。
「おい、大丈夫か?おい―――」
 少女の体を揺さぶり、声をかける。
「―――うっ・・・」
 苦しそうにうめいて、少女がうっすらと目を開けた。そして、新一の顔を見上げる。
「・・・ん・・・ち・・・?」
「・・・!」
 かすれて、聞き取れないくらい小さい声。だが、その口は確かに”新一”と言っていた・・・。
「蘭・・・蘭なのか?本当に?」
 驚き、目を見開く新一を不思議そうに見る大きな瞳。
「何・・・言ってるの?わたし・・・イタッ」
 起き上がろうとして、頭を押さえる。そのとき、新一は初めて蘭らしきその少女が、頭に怪我をしていて血が出ていることに気付いた。
「怪我・・・してるのか。―――とりあえず、帰ろう。話はそれからだ」
 新一は、軽々と少女を抱き上げ、足早に出口へと向かった。少女は、まだ意識が朦朧としているのか、新一の腕の中でおとなしくしていた。
「・・・んいちィ・・・」
 虚ろな目で新一を見つめ、新一の名を呟く。
「―――少し、眠ってろ。大丈夫、俺がついてるから」
 と、新一が言うと、少女は小さく頷き、そっと目を閉じた。


 「―――博士!博士!俺だ!ここを開けてくれ!!」
 新一は阿笠博士の家にたどり着くと、大きな声で博士を呼んだ。呼び鈴を押そうにも、両手が塞がっているので出来ないのだ。
「―――なんじゃ、新一、どうしたんじゃ?」
 中から阿笠博士が出て来て、新一を中に入れた。
「その子は?今日は、蘭君とデートじゃなかったのか?」
 新一の腕の中で眠っている少女を、不思議そうな顔で見ると、博士が言った。
「―――あとで説明するよ。こいつ、怪我してるんだ。救急箱、出してくれないか?それからタオルと―――着替え、なんてね―よな」
「当たり前じゃろう。わしには娘も孫もおらんからなあ」
「しょうがねえな。俺、ちょっと家から昔の俺の服、取ってくるよ。男物だけど、ないよりましだろ」
「ああ、分かった。わしは、この子の怪我の手当てをしておいてやろう」
「頼む」
 新一は、隣の自分の家へ走っていき、急いで子供の頃の服を探し出した。そして、トレーナーと半ズボンを取り出すと、それを手に、また阿笠邸へと引き返した。
「ワリィな、博士」
「うむ。とりあえず居間のソファに寝かせたが―――あの子は一体なんなんじゃ?」
「―――ゴメン、今はまだ、応えられねーんだ・・・」
「どういうことじゃ?」
「それより博士、女の子のパンツ、調達してきてくんねーか?」
「パ、パンツゥ?」
「ああ。さすがに俺もそんなもん持ってね―し」
「し、しかし、どうやって―――」
「近所にさ、5,6歳くらいの女の子がいる家、ねーか?そこに行ってさ、親戚の子が遊びに来てて、おもらししちゃったんだけど替えがないとか何とか言ってさ」
「う、うむ・・・そうじゃな。確か、3件先の家に小さい女の子がいたと思うが・・・」
「頼むよ、博士。俺が行ったら、ちょっと怪しまれそうだしよ」
「―――そうじゃな。よし分かった、行ってこよう」
「サンキュー、恩に着るよ」
 新一は博士を送り出すと、改めて蘭らしきその少女の元へ行った。頭に白い包帯が巻かれて、顔色も良くなかった。雨に濡れてしまったから、風邪を引いたのかもしれない。新一は持ってきた着替えを置き、そっと少女の側にひざまづくと、おでこに触れてみた。
 やはり少し熱い気がする。来ていた服は博士によって脱がされ、体にはバスタオルが巻かれ、その上に毛布がかけられていた。髪も一応拭いてあったが、まだ少し湿っていた。
「―――蘭」
 そっと呟いてみる。博士に事情を説明したかったが、どう言えばいいのか分からない。新一自身でさえ訳が分からず、混乱しているような状態なのだ。
「・・・う・・・」
 突然、少女が苦しそうにうめいた。
「蘭?どうした?」
「う・・・あ・・・いやあ!来ないで!」
「蘭!!」
 激しく身を捩り、苦しそうに叫ぶ蘭。新一は驚いて、何とか落ち着かせようと、蘭を抱きしめるようにその体を覆った。
「蘭・・・蘭・・・!」
「こ・・・ないでェ!助けて・・・新一ィ・・・!」
「蘭・・・!俺はここだ。ここにいるから・・・!」
 震える体を優しく抱きしめ、あやすように背中をさすった。
 ―――一体、何があった?蘭・・・!
 何か、よほど恐ろしい目にあったのか、蘭の体はぶるぶると震えていた。
「蘭―――大丈夫だ。俺がいるから・・・ずっと側にいるから・・・」
 背中をさすりながら、耳元に囁きつづけるうち、ようやく蘭は落ち着いてきたようだった。
「う・・・ん・・・新一・・・?」
 うっすらと目を開け、焦点の定まらない目で新一を見る。
「蘭―――大丈夫か?」
「わたし・・・一体・・・ここは?」
「阿笠博士の家だよ。今、ちょっと出てるけど・・・蘭、話、できるか?」
「うん・・・大丈夫」
 弱々しくではあるが、蘭は頷いて言った。
「俺と別れてから、何があった?どうしてあの場所を離れたんだ?」
 新一は、なるべく優しい口調で聞いた。
「あの時・・・」
 蘭は、少し遠い目をして、何か思い出そうとするように話し始めた。
「新一が行っちゃってから・・・その場所でちゃんと待ってようと思ってたの。そしたら、あの―――新一が気になるって言ってた、あの黒ずくめの服の男の人が・・・いたの」
「あの2人が!?」
「ううん、1人よ。その時は、髪の長い人はいなかったの。それで・・・何か、建物の裏のほうに入って行ったの。別に、何かしようと思ってたわけじゃないの。ただ、新一に知らせようにも、新一、どこに行ったのか分からなかったし・・・。あの人がどこへ行くのか・・・ただそれだけを確かめようと思って・・・。その人の後をついて行ったの」
「―――馬鹿!どうしてもう少し俺のことを待ってなかったんだっ」
 つい、声を荒げてしまう。蘭は、ちょっと怯えたように身を竦めた。その姿が、少女のものだけに、新一はすごくいけないことをしたような気がして―――ハッとした。
「―――ゴメン。俺のために、してくれたんだよな」
 蘭はちょっと首を振って、また口を開いた。
「―――ホントに馬鹿なこと、したと思ってる。わたし―――そこで、とんでもないもの見ちゃったの」
「とんでもないもの?」
 蘭はこくんと頷いた。大分、意識がはっきりしてきたようだった。 
 そして―――意識がはっきりして来るにつれ、蘭は違和感を感じ始めていた。
 
 ―――何かがおかしい。何かが・・・
 
 それがなんなのか、わからないまま、話を続けた。
「その人は、建物の裏の―――人気のない薄暗い場所にいたの。そこには、もう1人男の人がいて―――その人はアタッシュケースを持ってた。それを黒ずくめの男の人に渡していて―――」
「おい、それって―――」
「ん―――。何かの取引みたいだった。すぐに新一に知らせようと思って―――戻ろうと思ったら、いきなり後ろから棒のようなもので殴られたの」
「それが、髪の長いほうの奴か?」
「ん。それで、わたしは倒れて・・・気を失う前に、何か―――カプセルのようなものを飲まされたの」
「カプセル?」
「うん。男が、『組織が新開発した毒薬』だって言ってた。『死体から毒が検出されない完全犯罪が可能なシロモノ』だって・・・」
 蘭は、その時の事を思い出したのか、ブルっと身震いすると、毛布をぎゅっと握り締めた。
「わたし―――殺されちゃうんだって思った。もう―――新一に、会えないんだって・・・」
「蘭・・・」
「でも・・・良かった・・・。わたし、生きてるんだよね―――」
「・・・ああ・・・」
 新一は頷いた。だが、その表情は、どこか悲しげに歪んでいた。
「?・・・新一・・・?どうしたの・・・?」
「蘭・・・おまえ、今自分がどんな姿してるか・・・わかんねーか?」
「姿って・・・」
 言われて、蘭は気付いた。この違和感。これは・・・そして、恐る恐る自分の手を目の前に上げてみた。
「―――――!!」
 それは、今までの自分の手ではなく・・・小さな、子供の手だった・・・。そして、そっと毛布をめくり、バスタオルに巻かれた自分の姿を見下ろした―――。
「・・・これ・・・何?どうして・・・」
 体が、ガクガクと震えだす。何がどうなってしまったのか、わからない。そういえば、声も子供の声・・・。感じた違和感はこれだったのだ―――。崩れそうになる蘭の体を、新一が支えるようにして抱きしめた。
「―――し、んいち・・・わたし・・・」
「蘭・・・大丈夫。俺が、側にいるから―――。守ってやるから―――」
 蘭は、新一の真剣な声と、優しい腕のぬくもりに、少しずつ体の震えが治まってくるのを感じていた。
「その―――毒薬が、どんなもんなのかわかんね―けど・・・原因は、それ以外に考えらんねー。蘭・・・、その薬のこと、もう少し詳しく話せるか」
「・・・詳しくって言っても・・・」
「分かることだけで良いよ」
 優しい口調の新一に、蘭は安心して話し始めた。
「ん・・・。飲んだときは、別に何も感じなかったの。それが・・・あいつらが見えなくなった直後位から、急に体が熱くなって・・・体が・・・骨が溶けるんじゃないかと思うくらい・・・。心臓がすごく苦しかった。鼓動が早くなって、息苦しくって・・・体が焼けるような感覚の後・・・意識がなくなったの」
「―――そうか・・・」
「ホントに・・・もうだめだと思った。だって、あの長髪の男は、必ず死ぬって言ってたから・・・」
「―――そいつは、本当にオメエが死んだと思ってるだろうな。闇取引きの現場を見られたんだ。ほおって置くわけはねえ。もし、生きていると分かったら・・・」
「分かったら・・・?」
 蘭の体が、また恐怖に震え始めた。
 新一が、抱きしめる腕に少し力を入れた。
「新一・・・わたし・・・どうなるの?こんな体になっちゃって・・・どうしたら良いの?」
 蘭の瞳から、ポロポロと大粒の涙が零れ落ちた。震えが止まらない。頭が、おかしくなりそうだった―――。
 新一は、蘭を安心させようとするようにその髪を撫で、そっと瞳に口付けた。ビックリして、目を見開く蘭。そんな蘭を優しく見つめながら、新一は口を開いた。
「蘭・・・好きだよ」
 蘭の目が、これ以上ないという位、大きく見開かれる。
「・・・え?」
「俺・・・蘭が好きだ」
 こんな時に言う台詞じゃないかもしれなかったが、新一はそうしなければいけない、と思ったのだ。
 蘭は今、パニックに陥っている。新一だってそうなのだが・・・。一度殺されかけ、助かったと思ったら自分の体が小さくなっていて、さらに、また命を狙われるかもしれないと分かったら―――。パニックにならないほうがどうかしているというもの。新一は、そんな蘭をどうにかして安心させてやりたい、守りたい、と思った。それを、蘭に伝えたくて―――告白したのだ。
 蘭は、ビックリしすぎて、体の震えが止まってしまっていた。
「新一・・・?今、なんて・・・」
「好きだって言ったんだよ。ずっと・・・ずっと前から好きだった。そして、これからも―――。俺が、ずっと側にいる。オメエを、守ってやる。だから―――泣くな。俺が絶対、オメエを元の姿に戻してやるから・・・心配するな」
 優しく、包み込むような笑顔で見つめられ・・・。蘭の体から、少しずつ力が抜けていった。そして、その瞳からは、また涙が零れ落ちた。
「新一・・・ありがとう。わたし・・・」
「泣くなっつったろォ?ったく、泣き虫なんだからなー」
 新一が呆れたように言った。
「だってェ・・・」
 そのとき、ドアが開いて、博士が部屋に入ってきた。
「新一、持って来たぞ。―――おや、気がついたのかね」
「ああ、博士、サンキュー。蘭、俺の服でワリィけど、着替えとけよ。俺たちは部屋の外にいるから」
「ん、ありがと・・・」
 蘭が弱々しく微笑んで頷いた。
「おい、蘭って―――」
「博士、こっち来て」
 驚いて何か言いかける博士の腕を取り、新一は部屋を出た。


 「―――おい!新一、どういうことなんじゃ?あの子は一体―――」
「あれは、蘭だよ」
「蘭くん―――じゃと?馬鹿な!ありゃ―どう見たって子供じゃないか」
「ああ―――とにかく、こっち来てくれよ。説明するからよ―――」
 新一は、地下の研究室に博士を連れて行くと、今までのことを全て博士に話した。
「そんなこと―――信じられんのォ。人間の体が縮むなんて・・・。そんな薬が存在するとは―――」
「ああ。多分そいつらは、蘭が死んだと思ってるだろう。なぜか分からないが、蘭にはその毒薬が効かなかった。そのかわり―――あんな体になっちまった。その薬の中の成分の何かが蘭の体を縮めてしまった―――。それしか、考えらんね―んだよ」
「ふむ・・・。で、これからどうするつもりなんじゃ?」
「博士に、頼みがあるんだ」
「わしに?」
「ああ。―――蘭の体を元に戻す薬を作ってくれね―か」
「な―――なんじゃと!?」
 博士が驚いて、目を見開いた。
「そんなこと、簡単にできるわけないじゃろう!?」
「分かってるよ。けど、こんなこと他に頼める人、いね―んだよ。蘭を―――1日も早く、元の姿に戻してやりて―んだ・・・。頼むよ、博士」
 博士は、新一の目をじっと見つめていたが―――やがて、ふうっと溜息をついて言った。
「分かった―――。できるかどうか分からんが、努力してみよう―――。で、これから蘭君をどうするつもりじゃ?」
「それなんだよな。あの状態の蘭を見たら、おっちゃん卒倒しそうだし・・・。それに、あの黒ずくめの奴らが蘭のことを調べて、あの家に行ったりしたら厄介だしな・・・。とりあえず、今日はここに泊めてやってくんねーか?その後のことは、蘭とも相談しないと・・・」
「そうじゃな。ああ、さっきコンビニでおにぎりを買って来たんじゃ。新一も腹が減っておるじゃろう?持って行って2人で食べたらどうじゃ?」
「ああ、サンキュー。博士は?」
「わしは、ここでやりたいことがあるんでな。ああ、蘭君には、わしのことは気にせず自由にやってくれて良いと言っておいてくれんか」
「分かった。―――博士」
 新一は部屋を出ようとして、足を止め、振り向いた。
「ん?なんじゃ?」
「―――サンキューな」
「―――いいんじゃよ」


 「蘭、入っていいか?」
 新一は、居間のドアをノックして言った。
「うん」
 中から、蘭の声が聞こえた。
 ドアを開け、中に入ると新一の持ってきた水色のトレーナーと紺の半ズボンをはいた蘭が、ちょこんとソファーに座っていた。髪も、もう乾いていた。
 大きな目でちょっと不安そうに新一を見上げる蘭。その姿のかわいさに、新一はこんな状況だというのに、胸が高鳴ってくるのを感じた。
「―――新一?どうしたの?」
 小首を傾げ、聞いてくる蘭。
―――スッゲー、かわいい・・・
「あ・・・なんでもね―よ。おにぎり、食うか?博士が買ってきてくれたんだ」
「うん、ありがと。博士は?」
「下にいるよ。やりて―ことがあんだって。―――蘭、今日はここに泊れよ」
「え?」
 蘭がビックリして目を見開く。そんな表情も、とてもかわいく見えた。
「そんな姿でさ、帰りたくねーだろ?オメーもさ」
「う、ん・・・確かに」
「明日、今後のことを話し合おう。今日は、オメエも疲れてるだろうし。博士も自由にして良いって言ってくれてっから、遠慮すんなよ」
「―――新一は・・・?」
 蘭は、不安そうに新一を上目遣いで見上げた。
「俺は・・・すぐ隣にいるし・・・」
「帰っちゃうの・・・?」
 蘭の瞳がますます不安に揺れ、涙が溢れてくる。
―――うう・・・んな顔すんなって~~~
「いや、その・・・ほら、博士もいるしさ」
「・・・帰っちゃうんだ・・・」
 蘭はしょんぼりして、下を向いた。必死に涙を堪えているようだった。
 新一は観念して、
「・・・いるよ、俺もここにいる」
 と言った。
「ほんと!?」
 蘭がぱっと顔を上げた。新一が頷くと、うれしそうにニッコリ笑う。
―――か、かわいすぎる~~~
「良かった・・・」
「あ、そ、そうだ。おっちゃんに電話しねーとな」
「あ、うん。そうだね」
 蘭は立ち上がって、部屋の隅にある電話のところへ行き、家に電話をかけた。
「―――あ、もしもし、お父さん、わたし・・・」
 子供の声、と言っても女の子は声変わりがないので、ちょっと大人っぽい声を出せば、何とか誤魔化せるようだ。
「・・・うん、そう。博士が具合悪そうだから・・・。お年寄り一人じゃ、何かと大変でしょ?だから・・・うん、ゴメンね、じゃあ・・・」
 ふう、と溜息をつきながら、蘭は電話を切った。あまり嘘をついたことのない蘭にはつらい電話だったのだろう。だが、振り向いたときには笑顔で新一を見ていた。
「おにぎり、食うか」
 と、新一が笑顔で言うと、蘭はニッコリ笑って頷いた。2人でおにぎりを食べながら、しばらく他愛のない話をした。新一はこんな場合ながら、小さくなった蘭の姿に見惚れていた。小さな手でおにぎりを持ち、小さな口で一生懸命食べる姿が、あまりにも愛らしくて・・・。このまま、どこかに閉じ込めてしまいたい位、かわいかった。 
 新一の視線に気付いた蘭は、頬を赤らめ、上目遣いで新一を見た。
「なあに?新一。じろじろ見て・・・」
「や、別に・・・あのさ、蘭」
「え?」
「あのさ・・・さっきの話だけど・・・」
「さっきの話?」
 蘭がきょとんとした顔で聞き返す。
「その・・・俺は蘭が好きだって言っただろ?」
 新一が顔を赤くして言うと、蘭も真っ赤になって下を向く。
「う、うん・・・」
「―――オメエは?」
「え?」
「オメエの気持ち・・・俺、まだ聞いてね―んだけど・・・」
 そう。実は、新一はさっきからずっとそのことが気にかかっていたのだ。蘭が自分のことをどう思っているのか・・・。嫌われてはいないだろうというのは分かるが・・・。幼馴染という関係はとても微妙で・・・居心地の良い分、その関係を壊したくなくて、ずっと告白できずにいた。誰よりも蘭の近くにいるはずだが、蘭の中で、自分がどういう存在なのか・・・。ただの幼馴染なのか、それとも自分と同じように想ってくれているのか・・・。
 迷宮無しの名探偵にも、それは解けない謎だった・・・。
「蘭―――?」
 下を向いて黙ってしまった蘭に不安を感じ、新一が蘭の顔を覗き込むようにして見た。
 蘭は、真っ赤な顔をちょっと上げ、新一を見た。
 ドキンッと新一の心臓が跳ね上がる。
「・・・いしょ」
「へ?」
「内緒・・・って言ったのっ」
 再び赤い顔をして、俯く蘭。
「な、内緒って―――!」
 なんだよ、そりゃ?人が必死の思いで告白したっつーのに・・・。
「・・・戻ってから・・・」
「え?」
「戻ってから、言いたいの。本当の・・・高校生のわたしに戻ってから・・・。それまで・・・待っててほしいの・・・」
「・・・・・」
「・・・ダメ?」
 小首を傾げ、上目遣いで新一を見る蘭。新一が最も弱い表情・・・。そんな顔をされて、新一がダメと言えるわけがない。
「・・・分かったよ。待ってる・・・。でも、約束だぞ?」
「うん」
 そう言ってニッコリ笑う蘭。そして、またまたその笑顔に見惚れる新一。
―――少しは期待してても良いってことかな・・・


 おにぎりを食べ終わり、お茶を飲んでから、
「―――もう寝るか?疲れただろ、今日は」
 と、新一が笑顔で言うと、蘭はちょっと恥ずかしそうに、
「うん・・・。あの、お風呂、入って良い・・・?」
「あ、そっか。入ってなかったよな。待ってろ、今準備してくっから」
 新一は立ち上がり、お風呂の準備をするべく、部屋を出て行った。それを見送ると、蘭は小さな溜息をついた。両手を、目の前にかざして見る。
 ―――小さな子供の手。どうしてこんなことになってしまったのか・・・。あの時、新一の言うことを素直に聞いて、あそこで待っていれば・・・。後悔しても、もう遅かったが―――
 ―――ゴメンね、新一・・・。新一の気持ち、すっごくうれしかった・・・。わたしもずっと好きだったから・・・。でも・・・。
 蘭は、また溜息をついた。
 ―――いつ、この体が元に戻るか分からない・・・もしかしたら、ずっと戻らないかもしれない。そしたら・・・こんな体になってしまったわたしよりも、もっと新一に相応しい人が現れるかもしれない・
・・。もちろんそんなことあって欲しくないけど・・・もしもそうなってしまったときに、新一の邪魔にはなりたくない・・・。それに、そんなの惨め過ぎるよ・・・。
 蘭の瞳に涙が溢れる。それを堪えようと、フルフルと頭を振る。
 ―――ダメ、泣いちゃ!・・・新一は、言ってくれたもの。守ってくれるって・・・ずっと、側にいてくれるって・・・。今はそれを信じなきゃ―――それを・・・新一を、信じるしかないもの・・・。


 一方、新一は・・・お風呂の準備をしながら、大きな溜息をついた。
「チェッ・・・元の姿に戻るまで内緒・・・か」
 あんなふうに言われると、余計に気になってしょうがね―じゃねーか。―――こうなりゃ、早くあの黒ずくめの奴らを捕まえて、蘭を元の姿に戻すっきゃねーよな・・・。よしっ明日っから気合入れてく
ぞ!
 風呂洗い用のスポンジを握り締め、なぜか気合を入れて風呂掃除をする新一だった・・・。



""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""

やっちゃいました~。この話は原作に沿って、半永久的に(笑)続きます。あ、でも基本的にこれは推理ものではなく、恋愛ものなので、中間の推理しているときの話や、管理人が「かけない!!」と思ったものは飛ばしていきます。


 そんなわけで、お楽しみいただけましたでしょうか♪
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スイッチ

Category : 乙女的恋革命☆ラブレボ!(若月×ヒトミ)
☆このお話は「乙女的恋革命☆ラブレボ!」の二次創作小説になります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 あと少し。ほんの3メートルほどで目的の場所に着こう、としたその瞬間、
「桜川!」
 という、自分を呼ぶ声にヒトミは足を止めた。
 振り向くと、そこには同じクラスの華原雅紀がいた。
「華原君?どうしたの?」
 はやる気持ちを抑え、華原に笑顔を向ける。
「あのさ、今日放課後時間あるかな?」
「え・・・」
「期末前で部活ないだろ?ちょっと買い物付き合って欲しいんだけど」
 にっこりとさわやかに微笑まれ、非常に断りづらい雰囲気だった。
 ヒトミは、ちらりと壁に目を向けた。
 壁の向こうーーー保健室で、ヒトミを待っているであろう人物の姿を頭に思い浮かべ・・・。
「えっとあの・・・」
「だめ?」
 眉を寄せ、少しさびしそうな表情。
 ――――うっ・・・こ、断りづらい・・・
 もともと、人に頼まれるといやとはいえない性格だ。
 買い物付き合って、早めに帰れば・・・
 なんてことを考えて口を開こうとした瞬間、後ろで扉の開く音がした。
「よお」
 ヒトミの胸が、大きく高鳴る。
 華原が、ちょっと目を見開く。
「若月先生」
「お前ら、今帰りか?」
 ゆっくり、近づいてくる気配。
 そしてぴたりとヒトミの後ろで止まる。
「はあ、まあ・・・」
 華原が答える。
「桜川」
 ヒトミの頭上で、龍太郎の声が響いた。
「は、はい?」
 名前を呼ばれ、そろそろと振り向く・・・と、にこやかに微笑む龍太郎と、目があった。
 にこやかに・・・でも見覚えのあるその笑顔に、ヒトミの背中を冷たいものが伝った。
「ちょっと頼みたいことがある。いいか?」
 と言って、あごで保健室を指す。
「あ・・・」
 華原が何か言おうと口を開く。と、龍太郎が華原にちらりと視線を投げ、
「悪いな、急ぎなんでちょっと借りるぜ」
 と言うと瞳の腕を取り、保健室の中へと引っ張って行ってしまった・・・・。


 保健室の扉を閉めると、龍太郎は無言でその場に立っていた。
 ヒトミが、不思議そうに顔を上げる。
「先生・・・?」
「しっ、少し黙ってろ」
 そう小声で言われ、その通りに黙り込むヒトミ。
 しばらくすると・・・廊下から、足音が聞こえた。
 おそらく華原の足音だろう。それは、ゆっくりと保健室の傍から遠ざかって行った・・・。


 足音が聞こえなくなると、龍太郎はゆっくりと息を吐いた。
「先生・・・?」
 ヒトミが、不思議そうに首を傾げる。と、龍太郎がヒトミに背を向けたまま、一言
「アホ」
 と、言い放った。
「は・・・?ア、アホって・・・ひど・・・!」
「アホだからアホッつったんだよ」
 くるりと振り返った龍太郎の顔は、明らかに不機嫌だった。
 その表情に、思わず言葉を飲み込むヒトミ。
 ―――わ、わたし、何かした・・・?
 わけがわからず戸惑うヒトミを見て、龍太郎は大きなため息をついた。
「お前、あいつの誘いにのろうとしたろ」
「あ・・・き、聞こえてた・・・」
「に決まってるだろ?」
「だって、なんか断りづらくって・・・」
「ほーお、で、俺様との約束はドタキャンってわけだ」
「そ、そんなこと!華原君の買い物に付き合ったらすぐに戻ろうと・・・」
「アホ」
 最後まで言い終えぬうちに一刀両断され、ヒトミは口をパクパクさせた。

 ―――ったく・・・なんでこいつはこう鈍いんだ・・・。
 龍太郎は更に深いため息をついた。

 ヒトミはかわいい。
 以前の100kgあったころから比べたら誰もが振り返るほどの美少女になった。
 だが、そんな見かけだけに惹かれるようなその辺の男子生徒なんかどうでも良かった。
 華原は・・・いや、華原だけではないが、あのマンションにいる男どもはみんな、ヒトミの内面の魅力を分かった上で、ヒトミになんとか近づこうとその隙を狙っているのだ。
 それをヒトミは、全くわかっていない。
 その連中を信頼し、その無邪気な笑顔を振りまく。
 そのたびに龍太郎の眉がピクリとつり上がるのにも気付かずに・・・。

 
 「えと・・・先生・・・?」
 急に黙り込んでしまった龍太郎の顔を、ヒトミが不安げに覗き込む。
 と―――――
「きゃっ??」
 突然すごい力で腕を引っ張られ、バランスを崩したヒトミは、そのままぽすんと龍太郎の胸の中に倒れこんでしまった。
「あ、あの・・・?」
 その近すぎる距離にどきどきしながら、なんとか言葉を紡ぎ出そうとするが、龍太郎の意外と繊細な手が伸びてきたかと思うとくいっと顎を上向かされ、あっという間に唇を奪われてしまった。
「!・・・・・んっ・・・・・」
 突然の乱暴なキスに息も出来ず、縋る様に龍太郎の白衣の裾を握る。
 ヒトミの苦しそうな表情に、漸くその唇を開放したころには龍太郎を見上げる瞳は潤んでいた。
「先生・・・」
「・・・・・あんまり、あせらせるな」
「え・・・?」
 普段あまり見ることのない、龍太郎の切なげな表情に、ヒトミの鼓動は早まる。
「自覚がないにも、ほどがあるっつーの・・・」
「自覚・・・?」
 まだ状況が理解できないヒトミは、きょとんと首を傾げる。
 そのあどけない、しかしまだ潤んだままの瞳が妙に色っぽい表情に天井を仰ぎ、そのまま再びヒトミを抱き寄せた。
「せんせ・・・」
「はなさねえから」
「!!」
「絶対・・・離れるなよ?俺から・・・」
 低く、甘い囁きに、ヒトミはその腕を龍太郎の背中に回し、ぎゅうっと抱きついた。
「離れませんよ」
「・・・・・その言葉、きっちり聞いたからな・・・・あとで訂正しても、きかねえぞ・・・?」
 疑り深い龍太郎の言葉に、ヒトミはくすくす笑う。
「もう、疑り深いなあ・・・。わたし、嘘なんかつきませんよ」
「よし、じゃあ・・・」
「?」
 急に口調の変わった龍太郎を不思議に思い、そっと顔を上げその表情を盗み見ようとすると・・・
「っきゃあ!?」
 突然抱きかかえられ、思わず龍太郎にしがみつく。
「せせせ、先生???」
「なにどもってんだよ?」
 見上げたその顔は、いつもの不敵な笑みを浮かべた表情。
 その足は、迷うことなくベッドのほうへ向けられていて・・・
「せ、先生、下ろしてください!」
「ああ?そりゃあ無理な相談だなあ」
「なななんで!?」
「そりゃあ、お前がスイッチを押しちまったからだろなあ」
「スイッチって、なんの?」
 ベッドまでたどり着くと、龍太郎はそこへヒトミを横たえ、逃げられないようにするかのようにその上に覆いかぶさった。
「俺様が、お前を味わうためのスイッチ、だよ」
 にっこりと悪魔のような、それでいてヒトミを捕らえて離さない妖しい笑みを浮かべ、ヒトミが何か言うよりも早くその唇を塞いだ。
 少し乱暴だけれど優しい熱を持ったその口づけはだんだんと深いものになっていき、もう逃げられないと諦めたヒトミは、龍太郎の首にそっと手を回したのだった・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 初・ラブレボ小説です。
 とにかく先生が大好き♪
 こんなゲームを待ってた!という感じ?
 時間はかかりますが、機会があればまた書いてみたいお話です♪


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2人の恋人

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
 俺の存在って、一体なんだろう?
 ふと、頭をよぎってしまった考え。
 1度浮かんでしまったその考えはなかなか消えてはくれず・・・


 「あ、快斗♪」
 新一の家へ行くと、蘭が出てくるところだった。
「やっぱここに来てたんだ。どっか行くの?新一は?」
「新一はさっき、目暮警部に呼び出されて行っちゃった。わたしはこれからお隣に行くの」
「お隣?」
「うん。志保さんがね、おいしい紅茶を頂いたから一緒にどう?って言うから」
「志保さん・・・」
 その名前を聞いた途端、思わず顔が強張る。
 苦手なんだよなあ、あの人・・・。
「ね、快斗も行こう。わたしね、今日はチーズケーキ作ってきたの。一緒に食べよう?」
 いかにも楽しそうに、にっこりと満面の笑みを向けられては断るわけにも行かない。
 ま、蘭の誘いを断るなんて、出来っこねえけど。
 隣の阿笠邸に行くと、宮野志保と阿笠博士が出迎えてくれた。
「あら、あなたもいたの」
 志保さんが俺の顔を見るなり、目を細めて言う。
「・・・すいませんね、お邪魔して」
「別に。どうぞ蘭さん、上がって」
 俺から視線を外すと、蘭ににっこりと微笑みかけ、中へと促す。
 この人の、独特の雰囲気ってどうも苦手なんだよなあ・・・。


 新一の家へ行き来するようになってから、自然、顔をあわせるようになった宮野志保。妙に蘭のことを気に入っていて、突然蘭の前に現れた俺のことを胡散臭く思っているような・・・そんな思いが表情にも表れているようで、俺を見る彼女の眼差しはどこか冷たく感じる。
 蘭は、「志保さんは優しい人だよ」なんて言うけどさ・・・。その台詞を聞いた新一の顔も複雑そうだったしな・・・。
 とにもかくにも俺たち4人は同じテーブルに付き、蘭の作ってきたケーキと志保さんの入れてくれた紅茶を頂くことにした。

「工藤君には残しておかなくて良いの?」
 小さな丸いチーズケーキをちょうど4つに切り分けた蘭の顔を見て、志保さんが聞いた。
「うん。実はもう一つ作ってきてたの。1つはここへ持ってこようと思ってて・・・」
「あら・・・ありがとう」
「ううん。いつも、お2人にはお世話になってるから」
 蘭が優しく微笑む。志保さんと阿笠博士は顔を見合わせ、うれしそうに微笑みあった。

 こういう時って、中に入っていけないよなあ。
 志保さんも、阿笠博士も蘭とはもう長い付き合いだ。俺の知らない3人のやり取りなんかもあるわけで・・・。こんなとき、どうしても蘭との間に距離を感じてしまう。
 愛しい蘭。誰よりも大切な存在。
 でも、蘭にとって俺は?一体どんな存在なんだろう。
 新一は、蘭の恋人だ。誰もが認めている2人。だけど俺は・・・?
 やっぱ、友達・・・かな。蘭が、俺のことも大切に思ってくれているのは知っているけど・・・でも、恋人じゃない、んだよな・・・。

「快斗?どうしたの?食べたくないの?」
 いつの間にか思いにふけっていて、手が止まってしまっていた。心配そうに俺の顔を覗き込んでくる蘭の視線にはっとする。
「あ、わりい。なんでもないんだ。ちゃんと食うよ、俺、チーズケーキ好きなんだ」
 いつものように、にっと笑ってケーキを口にすると、蘭もほっとしたように微笑んだ。
 一瞬、志保さんがちらりと意味深な視線を送ってきたが、気付かない振りをしてケーキに集中する。
「ホントに蘭君は料理が上手だのう。これならいつでもお嫁にいけるじゃろう」
 博士が、さりげなく言った一言が、俺の胸に響く。
 もちろん、博士は相手を新一と思って言っているのだろう。
 蘭が、頬を染める。
「そんなことないですよお」
「あら、もったいないくらいよ?工藤君にも、黒羽君にも・・・」
「へ?」
 突然自分の名前を言われ、思わず変な声を出してしまう。
 な、なに言い出すんだ、この人は―――!
 蘭は、というと真っ赤になって俯いている。
 ほら、蘭が困ってるじゃねえか・・・。
「突然何言うんですか」
「あら、不満だった?」
「べ、別に不満ってわけじゃあ・・・!」
 不満なわけねえだろお?相手が蘭ならいつだって大歓迎だけど、当の蘭が・・・
 チラッと蘭の顔を見ると、思ったとおり、真っ赤な顔のままチーズケーキを食べている・・・。
 それを見て、志保さんがクスリと笑う。阿笠博士はちょっと目をぱちくりさせていたが、肩をすくめ、再びケーキを食べ始めた。


 ケーキを食べ終わり、志保さんが皿を片付けるのを俺が手伝う。蘭が腰を上げかけてたけど、俺がそれを押しとどめ、皿をもってキッチンへ行く。
「わたしに何か言いたいことでも?」
 シンクに皿を置くと、志保さんが俺のほうを見ずに言った。
「・・・あんまり、蘭を困らせるようなこと言わないでくださいよ」
 と、俺が言うと志保さんはクスリと笑い、
「あなたも、工藤君とおんなじね」
 と言った。
「へ?」
「蘭さんのこととなると、ポーカーフェイスが出来なくなる・・・。そうじゃない?」
 横目でちらりと俺を見やる。
「・・・否定はしませんよ。けど、俺と新一は違う」
「そう?」
「違いますよ、全然」
 志保さんから目をそらし、自嘲気味に呟く。
 あ、やべ、つい・・・
 最近ずっと、胸に渦巻いている想いが胸に迫り、つい言葉に表れてしまった。
「俺のほうが良い男だし?」
 慌てて、わざとおどけて見せる。けど、この人には通じないんだろうな・・・。
「・・・わたしは興味ないけど」
 しれっと言われ、「はは・・・」と乾いた笑いを零す。
「でも、意外だったわ。工藤君が、あなたみたいな人が蘭さんに近付くのを許すとは思わなかったから」
「・・・ま、許してるわけじゃないと思いますけど」
「でも、他の男の人との反応が明らかに違うもの。・・・さ、そろそろ行きましょうか。蘭さんがヤキモチを妬くといけないから」
「は?」
 今、なんかすごい台詞を聞いたような・・・
「ヤキモチ?」
「そうよ。蘭さんね、今でこそわたしと普通に話してくれるけど、工藤君が元に戻ってから暫くは、わたしの事を避けてたのよ」
「避けてた?蘭が?」
 それは、普段の蘭からはあまり想像出来ないことだった。
「ええ。わたしは、あの事件の関係者で、工藤君と同じ境遇になっていた・・・。蘭さんから見れば、
わたしと工藤君が特別な関係に見えたんでしょうね。わたしと工藤君が、事件の話をしたり、工藤君が1人でここへ来たりしていると、すごく心配していたわ」
 そうか・・・。つまり、志保さんに対して嫉妬していたわけだ・・・。
「やっと普通に話してくれるようになったのは、2人が恋人同士という関係になってから。工藤君のことを信じられるようになったからでしょうけど・・・。嬉しい反面、少しつまらない気もするわね」
 ふふ、とちょっと意地悪な笑みを浮かべる。
「だから、こんなとこであなたとわたしが2人で話していたら、蘭さんがヤキモチを妬くかも」
「それはないと思うけど・・・」
「あら、そう?」
 志保さんが少し意外そうな顔をする。
 そりゃ、ヤキモチ妬いてくれたりしたらうれしいけどさ・・・。俺はまだ、蘭にとってヤキモチを妬いてもらえるような存在じゃないんだよな。
「ま、いいわ。もう行きましょう」
 志保さんはちょっと肩をすくめるとそう言って、さっさとキッチンを出て行った。俺もその後に続く。


「あら、博士は?」
 部屋に戻ると、蘭だけがいすに座ってテレビを見ていた。
「あ、さっき地下の研究室に行くって・・・」
「また?仕様がないわね・・・。わたしもちょっと行ってくるわね。蘭さんたちはゆっくりしていってね」
 志保さんはそう言って微笑むと、部屋を出て行った。
 俺は蘭の隣に座ると、残っていた紅茶を飲んだ。
 と、なぜか俺の顔をじっと見つめている蘭に気付く。
「?どした?」
「あ・・・ううん。志保さんと、何話してたのかなって・・・」
「別に、たいしたことじゃねえけど・・・なんで?」
 そう聞くと、蘭はちょっと首を傾げて、
「えっと・・・。最近、快斗も志保さんと仲良くなったなあと思って」
 と言ったから、驚いた。
「は?俺と志保さんが?何言ってんだよ」
「だって・・・良く、2人で難しい話してるじゃない。わたしには良く分からないような・・・」
 拗ねたように言う蘭に、俺は首を傾げる。
 そんな話したことあったっけ?
「良く覚えてねえけど・・・。別に、仲良くなったわけじゃねえよ。志保さんにとっちゃ、俺って蘭のおまけみたいなもんだろうし」
「おまけ?」
 きょとんとして、俺を見上げる蘭。
 あ、可愛い・・・。この角度に、弱いんだよなあ。
「そ。志保さんは蘭と話せるのを楽しみにしてるんだよ」
「そ、そうかなあ」
 ちょっと照れたように首を傾げる仕草が、また可愛い。
「でも、最初の頃に比べたら志保さんと快斗、仲良くなったよ。2人とも頭良いから、気が合いそうだし・・・」
「そおかあ?」
「うん。なんか、時々2人の会話に入っていけないことあるもん。そういう時って・・・ちょっと寂しいっていうか・・・悔しいっていうか・・・自分が嫌な子に思えちゃったりするの」
「嫌な子?」
 何言ってるんだ?蘭。蘭が嫌な子のわけねえじゃん。
「うん。だって・・・。わたしはヤキモチとか焼けるような・・・そんな、彼女みたいなこと言っちゃだめじゃない?彼女っていえるような立場じゃないのに、そんな・・・」
「ちょ、ちょっと待って!」
 蘭の台詞を、慌てて遮る。
 今、なんてった?ヤキモチって、そう言ったか?彼女みたいなって?
「蘭・・・もしかして、妬いてくれてたの?」
 そう聞くと、途端に真っ赤になる蘭。
「だ、だから、わたしはそんなこと言えるような・・・」
「妬いてたの?」
 もう一度畳み掛けるように聞く。と、真っ赤になりながらも、小さく頷く蘭。
 うあ~~~~~、まじ・・・?
「ご、ごめんね。ずうずうしいよね、こんなの・・・・」
 言いかけた蘭の体を、ぎゅうっと抱きしめる。
「か、快斗?」
「すっげえ嬉しい!蘭が、ヤキモチ妬いてくれるなんて・・・すげえ、嬉しいよ」
「快斗・・・でも、わたし・・・」
 おずおずと離れようとする蘭の唇に、素早くキスをする。不意打ちを食らって、目を見開く蘭。
 そんな蘭を優しく見つめて
「良いんだよ」
「え・・・・・」
「俺が、望んだんだから。蘭に新一っていう恋人がいても、それでもいいって望んだのは俺だから・・・。だから、蘭が罪悪感を感じる必要なんてどこにもないんだ」
「でも・・・」
「蘭、蘭さえ良ければ俺のこと2人目の恋人だと思ってくれよ」
「2人目の・・・?」
 きょとんとして、首を傾げる蘭。
「そう。『大切な友達』っていうのも良いけどさ。やっぱ俺としては恋人って言ってもらったほうが嬉しいし。『恋人』だったらヤキモチ妬いたって良いわけだろ?」
「そ、それは、でも・・・」
 困ったように、視線を彷徨わせる蘭に、もう一度優しいキスを送る。
 そこへ・・・
「な~~~にやってんだよっ、おめえらは!」
 入って来たのは新一。
 気配に気付いていた俺は、新一を見てにやりと笑う。
「し、新一!」
 蘭は真っ赤になって新一を見ている。でも、俺から離れようとはしない。
 蘭・・・良いんだな。
 俺が蘭を見つめると、蘭も俺を見上げて、少し恥ずかしそうに頬を染めて微笑んだ。
「だ~~か~~ら~~、な~~にしてんだよ、おめえらはっ」
「っせ~な~、せっかく2人きりで愛を深めてたのに、邪魔すんじゃねえよ」
「何が愛だよ!蘭、快斗から離れろ!」
「え・・・」
 新一に言われ、離れようとする蘭の肩を、ぐいと思い切り引き寄せる。
「ふん、はなさねえよ。蘭は俺にとっても恋人だからな!」
「な・・・!」
 絶句する新一。蘭は真っ赤になっている。
「・・・お取り込み中悪いんだけど、人の家でもめるの止めてくれる?」
 と、後ろから聞こえてきた声に振り返ると、志保さんが冷めた目で俺たちを見ていた。
「志保さん!」
「・・・蘭さん、いいの?」
「え?」
「この我侭な2人が恋人じゃあ、苦労するんじゃない?」
 志保さんの一言に俺と新一の眉がピンとつり上がる。
「苦労なんてさせねえよ」
 と新一。俺も、
「そうそう。蘭を悲しませるようなことは、ぜってえしねえから」
 と言い放つ。
 志保さんはちょっと肩をすくめると、蘭を見てふっと優しい笑みを漏らし
「だったら、蘭さん、もし2人があなたを悲しませるようなことをしたらわたしのところへいらっしゃい。わたしがあなたを守ってあげるから」
 と言った。
 これには俺も新一も(んなあぶねえことさせられるか!)と思ったが、蘭はいたく感動したようで、瞳をうるうると潤ませ、
「ありがとう、志保さん」
 と言って満面の笑みを浮かべたのだった。

 恋人になれたのは良いけれど。まだまだ安心できねえな。この状況じゃ・・・
 蘭に気付かれないように、そっと溜息をつき、ふと後ろの新一を見ると・・・やはり不貞腐れた顔の新一が、俺の視線に気付き、肩をすくめて見せた。
 
 ―――まだまだ、勝負は、これから、か・・・?

 負けるつもりはないけれど・・・とりあえず、蘭が笑っていてくれるなら、今はこれだけで満足しよう。1歩1歩ゆっくりと・・・前に進んで行ければ、それで良い・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 突発的に、どうしても書きたくなってしまった快蘭新。このシリーズを書いてるとすごくリラックスできる感じがするんですよ。ずっと書きたくってうずうずしてたから・・・。新蘭も好きだけど、やっぱり快蘭新かなあ、とか思ったり・・・。書くごとに、3人の中に進展があると楽しいかなと思ってます。この次のお話ではどうなるか?まだわたしも考えてませんが・・・明るいお話にしたいと思ってます。それでは!

 ということで、サイトにアップしたあとがきもそのまま移してみました。楽しんでいただければ幸いです(^^)

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それでは!

やさしさに包まれて

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
 「毛利さん、ちょっと良い?」
 放課後、1人で廊下に出たところで声をかけられた。新一はいつものように目暮警部に呼び出され早退、園子は先生に仕事を頼まれ手伝いに行ってしまっていた。
 わたしを鋭い眼差しで睨む3人組の女の子・・・。同じ3年生だが、違うクラスなので話をしたことはない。彼女たちは新一のファン。この学校には新一のファンがたくさんいる。それはそうだろう。あの有名な高校生探偵の工藤新一と同じ学校にいるのだ。中には新一に憧れてこの高校に入った女の子もいるくらいなのだ。
 そんな彼女たちにとって、新一と付き合っているわたしの存在が面白くないのは当然のこと。それでも、以前は彼女たちが直接文句を言ってくることはなかった。それは、新一がとっても堂々とわたしのことを「恋人」として扱ってくれたからで―――。新一の、わたしに対する態度が変わったわけではない。変わったのは、周りの状況―――。そう、快斗の存在によってわたしたちを取り囲む状況は変わった。


 新一が事件で呼び出されていないとき、快斗は学校まで迎えにきてくれる。わたしが呼んでいるのではなく、新一が快斗に知らせているらしい。それは、新出先生や他のナンパして来る男の人からわたしを守るため、らしいんだけど・・・。わたし、そんなにもてないから大丈夫だって言ってるんだけど。
2人とも、わたしを1人にするのをすごく嫌がる。1人にするくらいならどっちかがついているってことになってるらしくて・・・。そして、当然それを見た彼女たちが良く思うはずがなく・・・。新一に良く似た快斗と新一を、二股にかけてるという風に見えるのだろう。以前よりあからさまに睨んできたり、わざと聞こえるように悪口を言ってきたりするようになった。
 でも、それも仕方がない事だと思う。それをわたしに責めることなんか、できなくて―――前に、園子と一緒にいたとき、悪口を言われて―――
 園子が彼女たちを睨んで何か言おうとしたのを、わたしは止めた。園子はちょっと驚いて、
「蘭、気付いてたの?彼女たちのこと」
 と言った。
「うん・・・」
「へェ、超鈍感な蘭にしちゃ珍しいわね」
「園子!」
「ま、でも当然か。あんだけあからさまに悪口いわれりゃ、いくら蘭でも気付くわよね」
 いつもながらの園子の言い方に、わたしは苦笑いした。
「ね、でもさ、新一君に言っといたほうが良いんじゃないの?」
 と、園子が真剣な顔をして言った。
「新一に?」
「そうよ!あいつらそのうち絶対何かしてくるわよ!新一君から何か言ってもらってさ―――」
「そんなの・・・いいよ」
「蘭!」
 園子は不満そうだったけど・・・。でも、そんなこと出来ないよ・・・。園子は、わたしたち3人の関係を理解してくれる数少ない友達。それは、わたしや新一のことを昔から良く知っていて、新一がコ
ナン君だったことを知っているから・・・だからこそ、分かってくれるんだと思う。彼女たちにわたしたちのことを理解してもらうのは、難しいと思ってる。それに・・・わたしは以前、新一に告白した女の子が、振られて泣いているのを見てしまった事がある。その時の女の子を見て、思った。
「好き」っていう気持ちに、時間とか立場なんて関係ないんだって。わたしは、新一の幼馴染で、ずっと昔から一緒にいたことに安心していたのかもしれない。わたしが1番新一のことを知っていて、1番新一のことが好きなんだって、奢っていたのかも知れない。そう思ったら・・・彼女たちの意地悪にも何も言えなくなってしまって。わたしが我慢すればすむことなんだって、思うようになっていた。


 「あんたさ、工藤君と別れなさいよ」
 学校の裏庭まで連れて行かれ、向き直った彼女たちの中の1人、背の高い女の子に突然そう言われた。
「それは・・・できないよ」
 射るようにわたしを睨む3人の視線を受け止めながら、わたしは言った。
「工藤君に悪いと思わないの?二股なんてかけてさっ。どういうつもりよ!」
 もう1人が叫ぶように言った。他の2人も頷く。
「わたし、二股なんて・・・」
「かけてないって言うの!?じゃあ、工藤君がいないときにあんたに会いに来るあの男はなんなのよ!?」
「彼は・・・わたしの、大切な人よ」
 わたしの言葉を聞いて、一瞬彼女たちは息を呑んだ。わたしが、快斗のことを”ただの友達”とでも
言うと思っていたのだろう。
「な、何が大切な人よ!!工藤君がかわいそうじゃない!」
「そうよ!あんたみたいな人と付き合ってたら工藤君、幸せになれないわよ!」
 ―――どうして?
 そう聞きたかった。どうしてそんなこと分かるの?新一はわたしといると不幸になるの?快斗も?わたしは2人と離れたほうがいいの?わたしといたんじゃ幸せになれない・・・?
 彼女たちは次々に罵声を投げかけてきた。わたしはその言葉を聞きながら・・・だんだん重くなっていく心に、押しつぶされそうになっていった・・・。ずっと、わたしの胸の中にある想い。それから目をそらしていたわたし・・・。でも、いつかは出さなきゃいけない結論。2人と別れる?1人に決める?それとも・・・


「ちょっと、聞いてるの?毛利さん!」
「・・・聞いてるよ」
 ヒステリックに叫ぶ真ん中の女の子をじっと見つめ返すわたし。その視線が癪に触ったのか、彼女は一瞬顔を赤くしたかと思うと、目をつり上げ、手を高く振り上げた―――。
 それでも目をそらさずに、じっと彼女を見つめていると―――ふいに、彼女の手を、誰かが掴んだ。
「女の子が簡単に手なんか上げちゃいけませんよ、お嬢さん」
 そう言って現れたのは・・・
「か・・・いと・・・?」
「よ、蘭」
 と言って、快斗はわたしに向かって、軽くウィンクをした。
「なな、何よ、あんた!!」
 彼女は、顔を赤くして、快斗の手を振り払うと叫んだ。
「何って、俺は蘭のお・と・こ♪」
「!!あ、あんたこの人に二股かけられてんのよ!?」
 そう言われ、快斗の目がスッと細くなる。
「―――二股・・・?」
「そうよ!工藤君とね!」
「う~ん・・・その表現はちょっと違いますね、お嬢さん」
 と言って、快斗はニッと笑った。
「ち、違うって―――」
「俺も新一も、蘭のそばにいたいだけだから。俺たちが、好きで蘭のそばにいるんだよ」
 繰り返し言いながら、彼女たちを睨む。その目に、彼女たちが怯む―――と、そこへ、
「―――そうそう。これは俺たち3人の問題だから。口出ししないで欲しいんだけどね」
 と言ってわたしの肩を抱いたのは・・・
「新一!?」
「くく、工藤君!」
 いよいよ真っ赤になって、彼女たちが後ずざる。
「蘭は、俺たちにとってなくてはならない存在。もし蘭が別れたいって言っても、俺たちが承知しないさ」
 新一が言い、快斗と2人不敵な笑みを浮かべ、冷たい視線で彼女たちを睨む。そこへ今度現れたのは―――
「はいはい、どいたどいた。あ、あんたたちね、これから蘭を呼び出すときは、この園子様を通してからにしてくれる?蘭はあんたたちと違って忙しいんだから」
 と言って、園子が彼女たちを押しのけて蘭の前に現れたのである・・・。
「園子」
 わたしはもうわけがわからず、次々に現れた面々を見て目をぱちくりさせるしかなかった・・・。


 結局あの後彼女たちは何も言わず、退散してしまった。
 なんとなく申し訳ないような気がして彼女たちの後姿を見送っていたわたしに、園子が言った。
「蘭、大丈夫だった?もうビックリしたわよ~、教室戻ったら蘭がいなくて、聞いたらあいつらに呼び出されてったって言うじゃない!心配したんだからね!」
「あ・・・ご、ごめん。でも、どうして快斗と新一がここに?」
 わたしが不思議に思っていたことを聞くと、快斗が
「校門で蘭を待ってたら、鈴木さんが飛んできてさ、蘭がやばい連中に連れて行かれたから探してくれって言われたんだよ」
 と言った。
「俺は、事件が早く片付いて。まだ蘭が学校にいたら一緒に帰ろうと思って教室まで言ったら、教室に残ってた連中に蘭が誰かに呼び出されて、園子が探しに行ったって聞いて。園子に、あの連中のことは
聞いてたから」
「え?園子、話したの?」
 わたしが驚いて園子を見ると、園子はちょっとばつが悪そうに、
「ごめん。でも、心配だったのよ。蘭の事だから彼女たちの気持ちとか考えて、ひどいことされても黙ってるんじゃないかって」
 と言った。
「園子・・・」
 わたしは、園子の気持ちが嬉しくって、思わず抱きついた。
「ありがと、園子。ごめんね、心配かけて・・・」
「いいのよ。でも、これからはわたしにくらいはちゃんと言ってよね?これでもわたし、蘭の親友のつもりだし」
「うん、うん」
「もちろん、他に好きな人が出来たときも相談に乗るわよ」
 と言って、ニヤッと笑う。
「そ、園子・・・」
「いやなこと言うなよなあ、これ以上ライバルが増えて堪るかっつーの!」
 と、快斗が顔を顰めて言うと、新一も、
「んで、オメエはいつまで蘭に引っ付いてんだよ!?」
 と言いながら、園子をわたしから引き剥がした。
「あん、何よお、蘭のこと1番心配してるのはわたしなんだからァ」
「なあに言ってんだよ!?蘭のことに関しちゃゼッテ―オメーらには負けね―ぜ」
「新一はダメだよ、事件が起きたらさっさと行っちまうんだから。やっぱ蘭には俺がついてないと・・・」
「あら、学校でいつも蘭のそばにいるのはわたしでしょ?」
「オメエには京極さんがいんだろ?蘭にまでちょっかい出すな!」
「ちょっと、京極さんは今関係ないでしょ!」
「あ、なんだよ、鈴木さん男いんの?んじゃあ勝負あったじゃん。やっぱ蘭は俺が・・・」
 3人の掛け合いを聞きながら・・・わたしは笑いがこみ上げてくるのを抑えられなかった。クスクス笑い出したわたしに、3人が視線を向ける。
「ら~~ん?」
「何笑ってんだよォ?」
「ごめ・・・おかしくって・・・」
 と言いながら・・・でも嬉しくって・・・次は涙が出てきた。
「え?蘭?」
 新一がわたしの涙を見てギョッとする。
「どうした?」
「どっか痛いの?」
 快斗と園子も心配してわたしの顔を覗き込む。
「違うの・・・嬉しくって・・・わたし、すごく幸せ者だよね・・・こんなに幸せで、いいのかな・・・」
 わたしの言葉に3人は顔を見合わせ、そしてやさしく笑う。
「なあに言ってんのよ」
「それはこっちのセリフだぜ?」
 快斗の言葉に、わたしはキョトンとする。
「え?」
「あのさ、俺たちがやさしい気持ちになれるのは蘭がいるからなんだぜ?オメエはさ、損得とか関係なく人にやさしくすることができるだろ?たとえばさっきみたいな連中のことも、オメエはあいつらの気
持ちを考えて黙って殴られようとしてたろ?そういうやさしさは、俺たちには真似できねえよ。だからさ、守ってやりたくなるんだ。蘭にはいつでも笑っていて欲しいと思う。オメエの側にいれることが、
俺たちにとっての幸せなんだぜ?オメエのやさしさがあるから、俺たちもやさしい気持ちになれるんだ」
 快斗のやさしい声が響く・・・。
「オメエ、言いたい事全部言いやがったな・・・」
 と、新一が顔を顰め、そしてわたしを見てふっと笑った。
「オメエは、今のままで良いよ。そのままで俺たちの側にいてくれれば、充分なんだぜ」
「新一・・・」
「蘭、わたしのことも忘れないでね?今日みたいなことがあったときは必ずわたしに言わなきゃダメよ?この学校の中では、わたしが1番蘭の側にいるんだから」
「うん。ありがとう」
 3人のやさしさが、心に染み渡る。
 嬉しくって、心があったかくなる―――。わたしの存在が少しでも役に立つなら、わたしは側にいるよ。3人が、側にいて欲しいと願ってくれる限り、わたしは幸せ。他には、何もいらないよ・・・。
「帰るか」
 新一が言った。
「そうだな」
「ねえ、これからカラオケ行かない?」
「ゲ、カラオケ?」
 新一が、また顔を顰める。快斗がそんな新一を見てニヤッと笑い、
「いいねえ、名探偵のすばらしい歌でも聴きに行きますか」
「快斗、テメ・・・」
「ね、蘭、行こうよ」
 園子がわたしに腕を絡めて言う。
「うん、良いよ」
「ら~~ん・・・」
 新一が情けない顔でわたしを見る。わたしは可笑しくってクスクス笑う。
「蘭もそう言ってる事だし、決まりね」
「それは良いけどよ、鈴木さん、蘭に引っ付きすぎ」
「あら、あんたたち2人で蘭を取り合うよりこの方が良いわよねえ、蘭?」
「え?う、うん・・・」
 そして、また3人の掛け合いが始まる。

 ―――ありがとう。

 心の中で呟く。

 ―――みんな大好きだよ・・・。


                                          fin

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回は蘭視点のお話。ちょっと暗くなってしまいました。
でも最後には3人の蘭争奪戦ってことで・・・。この3人の掛け合いは、書いてて楽しかったです。


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そばにいて、そしてキスして

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
 その日、朝から俺は体がだるかった。
 昨日はまた事件で呼び出され、帰ったのは夜中の1時過ぎ。雨で体が少し濡れていたが、あまりに疲れていたのでそのまま着替えもせずに寝てしまったのだが―――。それがまずかったのかもしれない。
 
玄関で、ドアのチャイムが鳴った。
 ―――んだよ、日曜の朝っぱらから・・・。
 面倒くさいので、そのまま無視していたのだが・・・。
 やがて、玄関のドアが開き、誰かが入ってくる気配・・・。
 ―――蘭・・・?
「―――新一ィ?」
 ―――やっぱり、蘭・・・。
 知らず、顔が綻ぶ。ゲンキンだな、俺も・・・。
 だるい体を無理やり起こし、ベッドに座る。
「―――そういや、なんか約束してたよな」
 今日は蘭と快斗と3人で映画を見に行く約束をしてたんだった。快斗とは向こうの駅で待ち合わせ。
 蘭は、朝俺の家まで迎えに来て、一緒に行くことになってたんだよな・・・。
 部屋のドアが、ガチャリと開く。
「あ、新一、おはよう。寝てたの?」
 昨日、俺が夜遅かったのを知っている蘭が、気遣わしげに言う。
「いや、起きてたよ。今、着替えるからさ・・・」
 と言うと、ふと蘭は眉をひそめ、
「―――その服、昨日から着替えてないでしょ?」
 と言いながら、俺のそばまで来た。
「ああ、面倒くさくってよ」
 俺が肩を竦めて応えると、蘭はじっとオレを見て―――急に、その顔を俺に近付け、額をくっつけた。
「お、おい―――」
 カーッと顔が熱くなる。蘭の顔が、間近に迫って来て、心臓が早鐘を打ち始める。
「―――やっぱり!」
 と言うと、蘭はパッと顔を離し、
「熱、あるじゃない!」
 と言った。
「―――へ?熱?」
「そうよ!気付かなかったの?」
「・・・全然。そういや、体だるかったけど」
「んもう!ダメじゃない。どうせ昨日、雨に濡れたままお風呂にも入らずに寝ちゃったんでしょう!?」
 ―――ご名答・・・。
 俺が目を丸くしていると、蘭は溜息をつき、
「そのくらい、誰でも分かるわよ。―――今日は映画中止ね。とりあえずパジャマに着替えといて。わたし、薬持ってくるから」
「え?おい、中止って―――」
「行けるわけ、ないでしょう?そんな体で」
「けど、おまえ、あれ見たがってたじゃねーか」
「映画よりも、新一の体のほうが大事でしょ?」
 普通に、なんでもないことのように言われ、胸が熱くなる。
「けど・・・」
「快斗には、ちゃんと電話しとくから。良い?着替えたら、ちゃんと布団に入っててよ?」
 そう言いながら、蘭は部屋を出て言った。
 俺は言われた通り、パジャマに着替え、ベッドに寝転がって布団をかけた。
 ボーっとした頭で、それでも考えるのはやはり蘭のこと。
 蘭は、いつのまにか快斗を呼び捨てにするようになっていた。3人で行動するのも当たり前になってきて・・・。蘭の、俺に対する態度は少しも変わらないけど・・・。やはり胸の中は複雑だった。
 変わったのは、俺と蘭の、快斗に対する気持ちだろう。蘭は、俺に対するのと全く変わらない気持ちであいつに接している。天使のような微笑を向け、優しく語りかけ、恥ずかしがったり、拗ねてみたり・・・。

 2人でいれば、恋人同士以外の何物でもない。
 そして、俺の気持ち・・・。最初は、ただ面白くなかった。俺の知らない間に2人が知り合い、仲良くなって・・・。絶対、蘭は渡さない。そう思ってた。それが、変わってきたのはいつからだろう?
 あいつの蘭を見つめる優しい目。蘭のことを守りたい―――そんな気持ちが溢れているような目。その目を見て、俺は何も言えなかった。あいつの行動や、言動が、自分と重なる。俺と同じ気持ちなんだ、あいつは・・・。そして、あいつがいることによって、蘭は前のような、寂しげな表情をしなくなった。
 それが悔しいのに、俺は認めてしまった・・・。蘭には、あいつが必要だと。だからと言って、俺は蘭と離れられない。それは、蘭の俺に対する気持ちが、全く変わってないから・・・。俺も、蘭に必要とされてるんだと感じるから・・・。気持ちとしては、複雑なんだ。
 でも、最近は3人でいることが当たり前で・・・それを心地よくさえ感じてしまう。蘭が笑ってくれるから・・・。あいつも、そう思ってる。蘭が笑ってくれるなら、ずっとこのままでも良いと・・・。
 何時の間にか、ウトウトしていた。気がつくと、蘭がベッドの横にしゃがんでいた。
「蘭―――」
「新一、薬飲める?」
「ん、ああ・・・」
 俺は、そっと体を起こした。
「何か、食べてからのほうが良いから・・・。ヨーグルト持ってきたんだけど、食べれる?」
「ああ、サンキュ」
 俺はヨーグルトを食べ、薬を飲んだ。
「―――快斗には?」
「うん、電話したよ」
「何か言ってた?」
「ん・・・。うつされないようになって」
 蘭が苦笑いして言う。
「んだよ・・・。俺の心配もしろっつーの」
 と俺が言うと、蘭はクスクス笑って、
「心配してるのよ、あれでも。素直にそう言えないだけ。そういうとこ、新一と似てるよね」
「はァ?」
 思わず顔を顰めると、蘭はおかしそうに笑う。その笑顔に思わず見惚れて・・・気がついたら、蘭を抱きしめていた。
「―――新一・・・?」
「―――ずっと、そばにいろよ・・・蘭」
「・・・どうしたの?急に・・・」
「時々、不安になるんだよ。オメエがどっか行っちまうんじゃね―かって・・・」
「珍しいね。新一が弱音吐くなんて・・・。熱の所為?」
「―――かもな」
 蘭はふわりと笑うと、俺の背中に腕を回し、キュッとしがみついてきた。
「わたしはどこにも行かないよ?ずっと新一のそばにいるから・・・」
「蘭・・・」
「ん?」
「おめえさ・・・」
「何?」
「快斗と・・・キスしただろ?」
 蘭が、はっと息を呑むのが分かった。俺から離れようとするのを、抱きしめたまま止める。
「あの・・・」
「怒ってんじゃねーんだよ・・・。ただ、オメエの口から、ちゃんと聞きてえんだ」
「・・・・・うん・・・したよ・・・。快斗に聞いたの?」
「ああ―――。こないだ、プールに行った日・・・俺が事件解決して家に帰って来たら、あいつ―――快斗がいたんだ」
「快斗が?」
「ん。―――で、あいつ、しばらく何もいわねーで、事件のこととか聞いたりしてて・・・。おかしいと思って問い詰めたんだよ。そしたら、吐いた」
「そ・・・っか・・・。―――新一、怒んないの?」
 蘭が、小首を傾げてオレを見る。
「殴ってやりたかったよ、ホントはな。けど・・・オメエ、あいつに言ったろ?俺があいつのことライ
バルとして認めてるとか、フェアにやろうと思ってるとか」
「うん。―――だって、新一そう思ってたでしょ?」
 真っ直ぐに見つめられ、思わず詰まる。
「う・・・まあな。で、あいつにそれ言われて・・・そしたら、怒れねーだろ?俺はオメエと何度もキスしてるわけだし・・・」
 俺がちょっと不機嫌そうに言うと、蘭はニッコリ笑った。
「あんだよ?」
「ふふ・・・新一、やっぱり快斗のこと、結構好きでしょ?」
「バーロ、好きじゃねーよ」
 と俺が言うと、蘭は楽しそうに、クスクス笑った。
「素直じゃないんだから、ホント・・・」
 あんまり蘭が楽しそうだから、俺はちょっと苛めてやりたくなった。
 大体、蘭と付き合ってるのは俺のほうなのに、最近あいつばっかしおいしい思いしてねーか?
 俺は、蘭を抱く力を強めた。
 蘭の髪の甘い香りが俺の鼻をくすぐる。
「―――新一?」
 蘭が顔を上げ俺を見る。その瞬間、俺は蘭の唇を奪っていた。
「―――っ」
 蘭が驚いて、目を見開く。
 俺は、唇を離して、ニッと笑う。
「ざまーみろ。俺の風邪、移してやったぜ」
「な・・・!」
「オメエが変なことばっかり言うからだぜ。―――ま、心配すんな。オメエが風邪引いたら、俺がつきっきりで看病してやっからよ」
「―――事件が起きたら、すぐに行っちゃうくせに」
 蘭が悔しそうに拗ねたような顔で言う。そんな蘭が可愛くって、俺はクスクス笑う。
「んなもん、すぐに解決して戻るよ。オメエんとこにな。―――何しろ、俺の戻るところは、オメエのとこって決まってるからな」
 蘭の顔が、ポッと赤く染まる。―――可愛い・・・。
 俺はもう一度、蘭に口付けようと顔を近付けた・・・が、
「―――オメエがいなくたって、俺が蘭の側にいるから、安心しろよ」
「!」
 2人して振り向くと、そこにはドアに凭れて立っている快斗がいた。
「快斗!どうしたの?」
 蘭がビックリして言う。
「心配だったから、様子見に来たんだよ。―――ったく、病人が何してやがんだよ」
「っせーな、オメエはどうせ、俺じゃなくって蘭の心配をしてたんだろーが」
「ったりめーだろ。誰がオメエの心配なんかするか。どーせ、雨に濡れた体のまんま寝ちまったんだろ?」
 快斗にも見抜かれ、俺は思わず詰まってしまった。快斗が、勝ち誇ったようにニヤリと笑う。
「もうっ、2人ともやめてよっ。新一、もう寝てなきゃダメよ。お昼頃、またおかゆでも作って持ってくるから、ね」
 蘭が俺の体を離し、ベッドに押し付ける。
「そーそ、オメエはおとなしく寝てな。俺は蘭と下でコーヒーでも飲んでっからさ」
 快斗が蘭をぎゅっと抱き寄せる。
「おいっ」
「―――もう、快斗も、新一病人なんだから、あんまり興奮させちゃダメよ」
 蘭が快斗を押し戻し、顔を顰めて言う。
「―――なァ、蘭」
「何?新一」
「眠るまで、側にいてくんねェ?」
「え・・・」
 快斗の顔が、ぴくっと引きつる。
「バーロ、何もしね―よ。・・・さっき飲んだ薬が効いて来たみて―で、眠くなってきたんだよ。だから・・・な?蘭」
 と言って、俺が蘭の手を握ると、蘭の顔が赤く染まる。
 ―――たまには、甘えたって良いよな?こんなときくらいは、さ。
「ん―――分かった。じゃ、眠るまでここにいるから」
 蘭がニッコリ笑って頷く。
 快斗がやれやれといった感じで溜息をつく。
「―――んじゃ、俺は下でコーヒーでも飲んでるよ。―――蘭の分も入れとくから、ちゃんと来いよ?」
「うん、ありがと、快斗」
 快斗がひらひらと手を振って出て行った。
 蘭が俺の顔を覗き込んでクスクス笑う。
「なんだよ?」
「ん―ん、別に?ただ、風邪引くと新一も弱気になったりするんだなあと思って」
「―――ああ、そうだよ。だからさ、蘭」
 俺は手を伸ばして、蘭の頬に触れた。すべすべした肌が、熱い手に心地良い。
「ん?」
「ちゃんと安心して眠れるように・・・キス、してくれよ」
 と、俺が言うと、途端に蘭が赤くなる。
「―――さっき、したじゃない」
「蘭から、して欲しいんだって―――な?」
 俺が強請るように言うと、蘭は赤くなりながらも、しょうがないな、と言って顔を近付け―――軽く、触れるだけの優しいキスをしてくれた。
「―――風邪が治ったら、またしてくれよ?」
 俺が、ニッと笑って言うと、蘭は苦笑いして、
「もう・・・。分かったから、ちゃんと寝てよね?」
 と言った。
「ああ、分かってるよ。蘭―――」
「なあに?」
「サンキュ・・・な」
 蘭が、ふわりと、まるで―――そう、まるで花が咲くように笑った。その笑顔があれば・・・俺はなんだってできるよ。蘭が側にいてくれれば・・・きっと強くなれる・・・。
 そんなことを思いながら、俺は深い眠りに引き込まれていった・・・。

 ―――目が覚めたときも、蘭の笑顔が見たいな・・・。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 はい、新一フォロー編です。あんまりおいしくなかったかなあ?新一視点というのは初めてかも。
 三角関係も、暗くならずに書いていきたいと思ってるんですけどね。今回ちょっと暗かったかな?

またがんばります。


おかげさまで、ランキングのほう、10位以内に入ることができました!
これからもがんばりますので、よろしくお願いします!
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きみといたいから

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
「プール行かない?」
 と、蘭から電話があったのは昨日のこと。もう夏休みも終わろうという頃だった。
 快斗はもちろん2つ返事でO.K.そして、当然新一も行くことになっている。この夏休み中、海やプールに行く話は何度もあったのに、なぜかいつも新一が事件で呼び出され、蘭と快斗2人で行くことは新一が許さないので結局3人とも、この夏1度も泳いでいないのだった。もう今年は諦めようと思っていたときに蘭から電話があったのだ。さすがに一度も海やプールに行けないことに蘭がキレて、新一を説得したらしい。
 そして3人で行った先は、流れるプールや波のプール、ウォータースライダーがある大きな室内プールだった。
 快斗が待ち合わせ場所に着いたときには蘭と新一はすでに着いていた。
「おはよう、快斗くん」
 蘭が、満面の笑みで迎えてくれる。
「おはよ!蘭。よお、新一。なんだよ?不機嫌そうなツラして」
 新一はなぜか不機嫌な顔で突っ立っていた。
「っせーな・・・」
「新一!ゴメンね、快斗くん。新一って昔から、プールとか海、あんまり好きじゃないみたいで・・・」
「は?そーなの?」
「うん。その割にわたしが友達同士で行ったりすると、“どうして俺も誘わなかったんだ!!”って怒るのよ」
 不思議そうに言う蘭を、新一は横目でチロッと睨む。それを見て、快斗はピンと来てしまった。
「ハーン・・・。新一、心狭いぜ」
 と言ってにやりと笑うと、新一は溜息をつき、
「オメーも今日、行きゃあ分かるよ」
 と言ったのだった。


 プールにつき、蘭と分かれて更衣室に入る。そこでなぜか、いそいそと着替える新一。
「?何急いでんだよ、新一」
「バーロ、蘭よりも先に出て待ってないとダメなんだよ!」
「って・・・。オメエ、独占欲強すぎだぜ。幾ら蘭がよくナンパされっからって、そこまで神経質になんなくってもよー」
 快斗が呆れ気味に言うと、新一はまた溜息をつき、快斗をジト目で睨んだ。
「そのセリフ、後で同じことが言えるかどうか楽しみにしてるぜ。―――さ、俺もう行くぜ」
「おい、待てよ―――」
 さっさと出て行こうとする新一に続いて、快斗も慌ててその場を後にしようとしたが・・・
「―――ちょっとスイマセン!」
 と、突然後ろから声をかけられた。2人が振り向くと、中学生くらいの男がオロオロした様子でこちらを見ていた。
「何?」
 と快斗が聞くと、その男は困り果てたように、
「その・・・コンタクト落としちゃって・・・一緒に探してもらえませんか?」
 と言った。
「コンタクトォ?」
 新一があからさまにいやそうな顔をする。
「はい。ここで外して、しまおうと思ったら落としちゃって・・・。お願いします!彼女が待ってるんです。待たされるのが大嫌いな子で・・・」
 と、泣きそうな顔をする。
 そんなの知るかよ、と新一は言いかけたが、それよりも早く快斗がそれを探し始めた。
「新一も探せよ。かわいそ―じゃん」
「あ、ありがとうございます!」
 男も一緒にしゃがんで探し出す。新一は、もう一度深い溜息をつき、仕方なくその場にしゃがんで探し始めたのだった。


 5分後、ようやくコンタクトレンズが見つかり、男は何度も頭を下げお礼を言って出て行った。新一と快斗も、更衣室を出て行ったが―――
「あれ?蘭のやつ、どこだ?」
 と、快斗がきょろきょろしていると・・・
「―――あれだよ」
 と、新一がうんざりしたように言って指差した方を見ると―――
「なんだ、ありゃ」
 と、快斗は呆気にとられてその光景を見た。
 そこには、確かに蘭がいた。しかしその側には蘭をナンパしている2人組の男。しかもそれだけではなく、まるで順番待ちしているかのように、2人組、3人組の男たちが蘭の周りに集まっているのだった。
「だから!早くって言ったんだ!」
 と、新一がいまいましげに言って駆け出した。快斗も慌ててその後を追う。
 ―――まさかあそこまでとは・・・。
 と、快斗は思った。今日の蘭の水着は明るいピンク地にラメが散りばめられたビキニで、肩紐は首の
後ろで、パンツは横で結ぶタイプのちょっと大胆だけれど、スタイルの良い蘭にはぴったりで・・・男
の視線を集めるには充分すぎるほど魅力的だった。
「―――おいこら!!人の女に手ェ出してんじゃねェ!」
 蘭の側へつくなり、周りにいた男どもを引き剥がす。何か言いたそうにしていた男どもも、殺気のこもった新一の声と2人の鋭い視線にたじろぎ、すごすごとその場を去っていった・・・。
「新一!快斗くん!ありがとう」
 蘭が嬉しそうに笑って言った。
「遅くなってゴメンな」
 と、快斗が言うと、蘭は首を振って、
「ううん。大丈夫だよ」
 と笑ってくれる。快斗が思わずその笑顔に見惚れていると、
「―――その水着、また園子と一緒に買いに行ったのか?」
 と、まだ不機嫌そうな顔をしたまま、新一が言った。
「うん。ピンクにラメのビキニなんて、ちょっと派手かなあと思ったんだけど、園子が絶対似合うから
って―――変?」
 蘭が、ちょっと恥ずかしそうに言う。
「いや、変じゃねーけどさ・・・」
「スッゲー似合ってるよ、蘭」
 快斗がそう言って、その肩を抱こうと手を伸ばすと―――
 パシッ
 寸前で、新一の手にはじかれてしまった。
「んだよォ、いて―なァ」
「調子にのんじゃねーよ。誰が触っても良いっつったよ!」
「な―んでオメエにいちいち断んなきゃなんね―んだよ」
 と、快斗もむっとして言う。
「蘭は俺の彼女なんだから当たり前だろーが!大体オメーは―――」
 と、噛み付きそうな勢いで新一が快斗に迫ろうとした時、不意に蘭が2人の間に入り、腕を取った。
「ね、行こうよ!せっかく来たんだし。わたし最初は流れるプールに行きたいな」
 まさに天使の微笑。この笑顔で言われれば、2人が嫌と言うはずもなく。
「あ、ああ・・・」
「よし、行こっか」
 と、3人で流れるプールへ向かったのだった。
 3人で泳いでいる間も、蘭は男たちの視線を集めまくっていた。おかげで新一も快斗も鋭い視線を周りに送りながら泳ぐことに・・・。

「ったくゥ・・・だからプールはいやだったんだ」
 蘭が少し前を浮き輪につかまりながら泳いでいるのを見ながら、新一が言った。
「ま、分かった気はする・・・。しかし、蘭って目立つよなあ。本人、全く自覚ねェけどさ」
「だから大変なんだって。あいつ、無防備すぎだし」
「―――だな」
 2人の気持ちを知ってか知らずか、蘭が2人を振り返って満面の笑みを送る。
 途端に2人のポーカーフェイスが崩れ、顔にしまりがなくなる・・・が、同時に2人とも、
 ―――んな顔、他のやつの前ですんじゃね―よ!!
 と思っていたのだった・・・。


 充分遊び、泳ぎまくった3人は、5時くらいになって帰り支度を始めた。
「なァ、この後どうする?どっかで飯でも食ってく?」
 と、快斗が言うと、新一も頷き、
「そーだな、腹減ったし・・・」
「わたし、何か作ろうか?新一の家で・・・」
 と蘭が言うのを、2人は慌てて制した。
「バーロ、何言ってんだよ。今日くらい休めよ」
「そーだよ、蘭。泳ぎまくって疲れてんだし。たまには外食しよーぜ」
「そ、そう?・・・じゃ、そうしようか」
「おし!決まり。じゃ、どこで―――」
 と、快斗が言いかけたとき、突然どこかで携帯電話の音が鳴り出した。
「この音・・・新一じゃない?」
 と、蘭。その言葉どおり、鳴っていたのは新一の携帯電話だった。
「―――もしもし。あ、警部―――はい・・・」
 新一の顔が、探偵の顔へと変わっていく。それを見て、蘭の顔が一瞬、寂しげに歪む。が、すぐにいつもの表情に戻った。
「―――はい、分かりました。じゃあ今から行きますので―――はい、では」
 電話を切ると、新一はすまなそうな顔をして蘭を見た。蘭はニッコリ笑うと、
「仕事なんでしょ?新一。気を付けてね」
 と言った。
「ああ、わりい・・・。帰り、大丈夫か?」
「大丈夫よ。快斗くんが一緒だもん」
「そうそう。新一は何も気にせず仕事に行って来いよ。蘭は俺がちゃ―んと家まで送り届けるからさ」
 と、快斗がニヤニヤしながら言うと、新一はムスッとして、
「―――手ェ出すんじゃねーぞ」
 と、低い声で言った。快斗はその言葉にニヤッと笑うと、
「ま、努力してみるよ」
 と軽く言ってのけた。
 いまいち心配は残っているが・・・。あまり遅くなるわけにもいかないので、新一は早々にその場を後にして、行ってしまったのだった・・・。
「―――さ、俺たちも着替えして帰ろうか」
 快斗は新一に向けたのとは全く違う優しい笑みを蘭に向けて言った。
「うん」
 蘭もつられてニッコリ笑う。
 快斗が更衣室に入ると、もう新一の姿はなくなっていた。
 ―――さすが、素早いな。
 快斗もさっさと着替え、外に出ると出口の側で蘭が出てくるのを待った。
 しばらくして蘭も出てきた。ノースリーブの赤いタンクトップに、白いホットパンツ。その下からは細くて長い、きれいな足が覗いていて快斗の目をくぎ付けにした。
「お待たせ、快斗くん。行こう」
 ふわりとした笑みに、思わず赤くなる。
「?どうしたの?」
 キョトン、と首を傾げる蘭。
 ―――全く、苦労するよな・・・。少しは自覚持てって・・・。
 脱力しながらも、気を取り直し微笑む快斗。
「いや、なんでもないよ。じゃ、行こうか。―――蘭、何食べたい?」
「ん―・・・なんでも良いよ。快斗くんの好きなもので」
「遠慮すんなよ。俺は魚以外ならオッケーだからさ、好きな物言ってよ」
 蘭はクスッと笑うと、
「魚、ダメなんだよねー、快斗くん」
 と、ちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「―――おい、まさか、寿司が食いてーとか言わね―よなあ?」
 と、快斗は顔を引きつらせる。そんな快斗を見て、蘭は思わずぷっと吹き出す。
「アハッ、おかし―快斗くん。大丈夫、そんなこと言わないから・・・。じゃ、私はスパゲティがいいかなあ」
「ったくゥ・・・O.K!じゃ、イタリアンレストランに行こ」
 2人は自然に手を繋ぎ、歩き出した。


 レストランでオーダーを済ませてから料理が運ばれてくるまでの間、快斗は蘭にマジックを見せていた。快斗の手から花やハンカチ、ボールなどがどんどん出て来て、蘭はそのたびに手をたたき嬉しそうに笑う。
「すごい!さすがだね、快斗くん」
「喜んでもらえた?」
「もちろん!ねェ、いつもそういうもの持ち歩いてるの?」
「うん。ポケットとかに入れとくの習慣になってっからね」
「へえ、すごーい」
 蘭は心底感激しているようだった。快斗はそんな蘭を優しい目で見つめる。
「―――蘭、俺の前では無理すんなよ」
「―――え?」
「新一が行っちまってさ、寂しいんだろ?ホントは」
 と快斗が言うと、蘭は驚いたように目を見開いた。そして、ふっと体の力を抜いて少し寂しそうに笑った。
「適わないなあ、快斗くんには・・・。全部お見通しなんだもん」
「そ、お見通し。だから、無理する必要ね―んだよ。―――前に蘭が言ってくれたろ?」
「え?わたし?」
「うん。俺といると安心できるって。側にいると不安が消えてくみたいだって」
「・・・うん」
「あれさ、おれスッゲー嬉しかったんだぜ。俺が蘭を癒してあげられてるんだと思ってさ。だから俺、ずっと側にいたいと思ったんだ。―――蘭は知らないだろうけど、俺も蘭に癒されてるんだぜ」
「快斗くんが?」
 蘭は目をぱちくりさせた。
「そ。俺、蘭の笑顔見てるとそれだけですげ―安心するんだ。蘭の笑顔に癒されてるんだよ。だからずっと、笑顔でいて欲しい。俺が側にいることで、蘭が笑顔になってくれるなら―――俺、ずっと側にいるよ」
「快斗くん・・・ありがと。すっごく嬉しいよ」
 と言って、蘭はふわりと微笑む。
「わたしと快斗くんって似たもの同士なのかな。なんか、すごく近い感じがするよ」
「かもな。だからさ、俺に遠慮なんかするなよな」
「うん、わかった」
「―――で、1つお願いがあるんだけど」
「お願い?」
 蘭はキョトンとして首を傾げる。快斗は悪戯っぽい笑みを浮かべて続けた。
「俺のこと、“快斗”って呼んで欲しいんだけどな」
「え・・・」
「だって新一のことは呼び捨てなのに、俺は君付けって、なんか距離を感じるんだよなあ」
 と言って、快斗はニヤニヤと笑っている。蘭は困ったような顔をして、
「でも・・・それで慣れちゃってるし・・・なんか恥ずかしいし・・・」
 と、しどろもどろになっている。頬はほんのりとピンクだ。
 ―――ホンット可愛いよな。けど、これは折れるわけにはいかね―からな。
「だから、遠慮すんなって。それに恥ずかしいのは最初のうちだけで、すぐ慣れるよ。な?」
 でも・・・と、まだ照れている蘭に、ぐっと顔を近付け、迫る快斗。
「ほら、呼んでみ?」
「え・・・と」
「ん?」
「~~~///」
「ら~ん♪」
 蘭はもうすでに真っ赤になっている。
「・・・かいと・・・」
「聞こえなーい」
「かいと・・・」
「ん―――?」
「快斗っ」
 俯いてゆでだこ状態になっている蘭を見て、クスクスと満足そうに笑う快斗。そしておもむろに、テーブル越しに蘭の頭を抱き寄せた。
「かわい――!らんっ」
「きゃっ、か、快斗く・・・」
「快斗、だろ?」
「か、快斗っ、あの・・・」
 ジタバタと抵抗を試みる蘭だが快斗は離そうとしない。と、そのとき・・・
「コホンッ」
 わざとらしい咳払い。2人同時にそちらを見ると、そこには赤面してばつが悪そうに立っている、ウェイトレスの女の子―――。
「―――!!」
 蘭は慌てて快斗を押し戻した。快斗はちょっとつまらなそうに目を細めた。
「あ、あの、お邪魔してしまってスミマセン。・・・大変お待たせいたしました。ミートソースとカルボナーラです」
 ウェイトレスの女の子は、スパゲティの皿を置くと、顔を赤くしたままそそくさと行ってしまった。
 そして、よく周りを見てみると・・・夏休みというだけあって、レストランはほぼ満席状態。その客たちのほとんどが、今、蘭と快斗に注目していたのだった・・・。


 「も―、恥ずかしかった~~~」
 レストランを出て、蘭の第一声がそれだった。
「―――スパゲティの味とか、良くわかんなかった・・・」
「そお?結構うまかったぜ」
「よく余裕で味わえるよね。わたしはもう、早く出たくって焦っちゃって・・・」
「ああ、だから食うの早かったんだ。なんかずいぶん急いでるなあとは思ったんだ」
「もう、のんきなんだから・・・」
 蘭は呆れて、快斗の横顔を眺めた。
 ―――でも、快斗くんらしいか・・・。
 蘭は、苦笑いして思った。
 2人並んで歩き、手を繋ぐ。2人でいるときは、自然とそうなっていた。新一といるときとはまた違う、なんともいえない安心感。最近は新一がいなくても、寂しいと思うことが少なくなった。それは、快斗のおかげ。蘭はそう思っていた。だから、プールで新一が呼び出されたときも、寂しいと思ったのはほんの一瞬で、すぐに“快斗が側にいてくれる“ということに安心したのだった。
 ―――快斗くん・・・“快斗”は・・・気付いてないのかな、わたしの気持ち・・・。
 蘭の視線に気付き、快斗が蘭を見て笑う。
「何?俺に見惚れてた?」
「―――半分、当たり」
 と蘭が言うと、快斗がビックリしたように目を見開き、顔を赤くした。それを見て、蘭がクスクス笑う。
「蘭~~~俺のこと、からかって遊んでない?」
 恨みがましい目で蘭を睨む。
「からかってなんかないよ。ホントにちょっと見惚れてたもん」
 と蘭が笑顔で言うと、快斗は真っ赤になり・・・だが、ちょっと複雑そうな顔をして目を逸らすと、小さな声で言った。
「―――あいつに似てるから?」
「え?」
「新一に似てるから―――見惚れてた?」
「快斗―――」
「―――ゴメン。・・・でも、俺と2人きりでいるときは、あいつのこと、忘れて欲しいんだ。せめて・・・2人でいるときはさ、俺のこと、見てくれよ」
 ちょっと苦しそうに、切なそうに言う快斗を見て、蘭は繋いでいた手を離すと快斗の真正面に立ち、その胸に飛び込んだ。
「ら、蘭―――??」
 突然の行動にビックリし、赤くなる快斗。
「馬鹿・・・。わたしが今見てるのは、快斗だよ」
「蘭―――」
「快斗のこと知ってから・・・知り合ってから、快斗と新一を見まちがえた事なんてないんだから―――。快斗は快斗だよっ?」
「蘭・・・」
 じわじわと、胸に暖かいものが広がってくる。蘭の気持ちが、全身から快斗に伝わってくるようだった。嬉しさがこみ上げて来る。
 快斗はそっと、蘭の頬を両手で包んだ。
 蘭が快斗を見上げる。
 ゆっくりと2人の顔が近づき・・・唇が触れ合う。
 甘くてやわらかい・・・蘭の唇・・・。
 一度離し、またすぐに唇を重ねた。何度も何度も、角度を変えながら口付けを交わし・・・蘭の体から力が抜け、快斗に寄りかかるようにしてよろけた。
 ようやく唇を離して、蘭を見つめる。
 潤んだ瞳、紅潮した頬、塗れた唇・・・。快斗の心臓が高鳴る。
「ヤベェ・・・ちょっと止めらんねーかも」
「え?何が?」
 蘭がキョトンとして快斗を見つめる。快斗は何も言わずに、ただ蘭を抱きしめた。蘭が愛しくてたまらなかった。蘭はされるがままになっていたが、自分の腕を快斗の背中に回すと、キュッと抱きついて
静かに言った。
「・・・新一ね、あれでも快斗のこと、認めてるんだよ?」
「認めてる・・・って?」
 ―――何だそれ?俺が蘭を付き合っても良いってことか?
「ん―――、ライバルとしてっていうのかな・・・」
 ―――んな訳ね―か・・・。
「なんかね、快斗とはフェアにやっていきたいと思ってるみたい」
「フェアにって・・・」
 ―――そんなこと言われると手ェ出しにくいじゃねーか・・・。
「快斗って、妙にこそこそしたりしないでしょう?だから結構信用してるみたいで。―――こないだね、1人で買い物に行った時、偶然新出先生に会ってちょっと話してたら、新一がそれ、見てたのね」
「ありゃ―――」
「で、すっごく不機嫌になっちゃって・・・。わたし、快斗くんと話しててもそんなに怒らないのにどうして?って聞いたの。そしたら、あいつは特別だって言ってたのよ」
「特別?」
 快斗はその言葉に驚いた。
「そう、特別・・・詳しくは言ってくれなかったけど、快斗のこと同士みたいに思ってるんじゃない?」
「同士、ねェ・・・」
「だからね、いつも”手ェ出すな”なんて言ってるけど、快斗だったら私とキスしたって知ってもそんなに怒んないような気がするの」
「そーかァ?」
 ―――めちゃめちゃ怒りそうだけど・・・。
「うん。新一も、意外と快斗のこと好きなんだよ」
「ふーん・・・」
 いまいち納得しきれていないような快斗を見て、蘭はクスクス笑うと、パッと離れて先を歩き出した。
「あ、ちょっ・・・」
 快斗が慌てて追いかけ、蘭の手を掴む。そしてそのまま、手を繋いで歩き出す。
「・・・ま、俺も嫌いじゃねーよ、新一のこと・・・」
 少し照れたように、小声で呟く快斗。その言葉を聞いて蘭は嬉しそうに笑った。
 そんな蘭を横目でそっと見ながら―――


 ―――ずっとこのままの関係ってのは無理かもしれない。―――けど、蘭の側にいられるなら・・・ずっとその笑顔が見れるなら・・・俺はそれでいいんだよ。蘭、きみが、好きだから―――。
      
 
                                             fin
**************************

 サイトにおいてた小説を順番に載せていこうと思ってるんですが・・・。えらく季節はずれなものが続いちゃいますね。
 このお話は快斗視点。
 次のお話は新一視点で・・・

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ファーストデート 2

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
ようやくトロピカルランドに着いた新一は・・・。
―――どこから探すかな・・・。
 闇雲に走り回っても、疲れるだけだ。蘭が行きそうなところは・・・
 新一はとりあえず蘭が好きなアトラクションを見て回ることにした。今、3時半だから日が暮れるまでにはまだ時間がある。それまでになんとしてでも探し出さないと!


―――その頃、快斗と蘭はというと・・・
「ね、快斗君?何でこんな格好しなきゃなんないの?」
 と、蘭が戸惑ったように言った。
 というのも、なぜか今蘭は着替えていて、黒い皮のピッタリと体に張り付くようなスタイルのミニ丈、ノ―スリーブのワンピースで、髪も大人っぽく一つにまとめ、メークもちょっと濃い目で、サングラスをかけていた。ちょっと見たくらいでは、まず蘭だとわかる人間はいないだろう。
 快斗の方は、金髪のロングヘアーに黒いTシャツ、黒い皮パンと、ミュージシャン風の格好で、やはりサングラスをかけ、こちらも快斗だとは分からない。
 もちろん新一から隠れるために変装しているのだが、何も知らない蘭には、わけがわからない。ちょっと恥ずかしそうに顔を赤くしている蘭に快斗は優しく笑いかけながら、
「ちょっと気分を替えようと思ってさ。けど、そういう格好もすっげー似合ってるよ、蘭」
 と言った。
「そ、そうかなあ・・・。なんか、恥ずかしいかも・・・」
 と、蘭は自信なさげだが、スタイルがいいのでボディコンシャスなワンピースもピッタリあっているし、いつもより大人っぽいメイクと髪型がほのかに色香を漂わせていて、周りにいる男たちが皆ポーっと見惚れたりしていた。もちろん、蘭は気付いていないが・・・。
 快斗は周りを威嚇しつつ、蘭の肩に優しく手をまわし、促した。
「さ、行こうか」
「う、うん」
 いつもよりちょっと男っぽい感じの快斗に肩を抱かれ、蘭はちょっとドキドキしていた。

 ―――快斗君って、こんなに男っぽかったっけ?
 いつもふざけてばかりで、近くにいてもこんなにくっついたことはなかったから、気付かなかったけど・・・。その腕も、肩幅も、蘭が思っていたよりもずっと男らしいような気がした。
 そう思うと、なんだか急に緊張してきてしまい、言葉が出てこなくなってしまった。
「蘭?どうした?」
 快斗が、不思議そうに蘭の顔を覗き込む。と、蘭の顔がぱっと赤くなる。
「な、なんでもないの」
「・・・もしかして、照れてる?」
「―――え・・・」
 図星を指され、絶句する蘭を見てニヤッと笑うと、
「照れんなよォ、俺たち今日は恋人同士だろ?」
「そ、そうだけど・・・」
「それとも、オレとこうして歩くのイヤ?」
 快斗は、ちょっと不安になって蘭に聞く。と、蘭は慌てて、
「そ、そんなことないよ!ただ、初めてだから、ちょっと緊張しちゃって・・・」
 と言った。快斗はふっと笑うと、
「・・・オレだって緊張してるよ?」
 と言った。
「え・・・ホント?」
「ん。だって、今日は蘭との初デートじゃん。最初っから緊張しっぱなしだよ」
 明るくそう言う快斗を見て、蘭の体から次第に力が抜けていく。
 安心したようにニッコリ笑う蘭を見て、再び快斗は歩き出した。
「さ、行こうぜ!」
「うん!!」


 「くっそ―――っ、あいつらどこにいるんだ!」
 新一は息を切らしながら、吐き捨てるように呟いた。
 腕時計を見ると、もう5時半になっていた。夏だからまだ明るかったが、そろそろ暗くなってしまう。
―――しかし、何で見付かんね―んだ?幾ら広いっつったって、こんだけ探していないなんて・・・まさか、もうここを出ちまったんだろうか?でも・・・
 新一が立ち止まって考え込んでいると、その目の前を、熊の着ぐるみを着た人間が通り過ぎた。それを見て、新一ははっとする。
 ―――そうか!変装だ!何で今まで思いつかなかったんだ?あいつは怪盗キッドなんだ、変装なんかお手のもんじゃねーか。きっと蘭にも変装させて・・・くそ!そうと分かっても、どうやって探しャ良いんだ?まさか、1人1人顔を引っ張るわけにはいかね―し・・・。
 1人考え込んでいる新一を、通り過ぎる人たちが不思議そうに見ていた・・・。


 その頃、快斗と蘭はベンチでジュースを飲みながら、休んでいた。
 ―――しかしさっきは焦ったなあ。
 快斗は1人考えていた。
 実は30分ほど前、アトラクションから出てきた2人のすぐ側に、新一がいたのだった。蘭は後ろを向いていて気が付かなかったが・・・。 新一はチラッと2人を見た。が、さすがに分からなかったようで、すぐに2人とは逆方向へと歩いて行ってしまったのだ。
 
 ―――まだまだ、観察力が足りないぜ、名探偵。
「どうしたの?疲れちゃった?快斗君」
 急に黙ってしまった快斗の顔を、下から覗き込みながら蘭が言った。
「あ、ゴメン。大丈夫だよ。全然平気」
「ホント?無理しないでね」
 心配そうに言う蘭を安心させるように笑うと、快斗は立ち上がった。
「平気だって。さ、行こうぜ」
「あ、うん。どこ行く?」
 蘭も立ち上がりながら言う。
「ん―――。あ、そういや、観覧車ってまだ乗ってなかったな」
「あ、そうだね。今から乗ったら、ちょうど夜景が見えるかも」
 蘭がうれしそうに笑って歩き出した。快斗がその肩を抱いて、2人並んで観覧車に向かって行った。
 観覧車のところまで来ると、行列が目に入った。
「わァ、結構並んでるね」
 と、蘭が言った。
「だな。ま、30分位だろ。並ぼうぜ」
「うん」
 2人は列の最後尾に並んだ。
 それから5分ほどして、ちょっと進んだところで快斗がふと、何か思い出したように言った。
「あ、そーだ。蘭、ワリ―けどちょっと待っててくれる?」
「え?どうしたの?」
「ちょっとな。すぐ戻るから」
 そう言うと、快斗は蘭を置いて走って行ってしまった。蘭は不思議に思いながらも、1人で並んで待っていたのだが・・・。
 いよいよ後少しで乗れる、というところまで来ても、快斗が戻ってこない。不安になってきて後ろをちらちら見ていると、少し離れたベンチでずっと蘭のほうを見ていた2人組みの男が、ニヤニヤしながら寄ってきた。
「ねえ、彼女、もしかして彼氏に置いてきぼりにされちゃったの?」
 と、1人の男がいやらしい笑みを浮かべ、話し掛けてきた。
「違います」
 蘭がむっとして答えると、もう1人がニヤニヤしながら、
「でも戻って来ないじゃん。あんな薄情な彼氏なんか放っといてさ、俺たちと遊ばない?」
 と言って、蘭の肩に手をかけようとした、その時―――
「オレの女にさわんじゃねーよ」
 と、低い声が聞こえたかと思うと、蘭の肩に手をかけようとしていた男がよろけた。
「な、なんだ、てめえ!」
 と、もう1人の男が言うと、いつのまにか蘭の隣にいた快斗がその男をジロッと睨み、
「それはオレの台詞だ。人の女にちょっかい出してんじゃねーよ」
 静かだが、凄みのある声でそう言われ、2人組みは青くなって早々に逃げて行ってしまった。
「大丈夫か?蘭。ゴメンな、遅くなっちまって」
 と、蘭の方を見ると、蘭は目をぱちくりさせながら、
「すごいね、快斗君。今のすっごいかっこ良かったよ!それに、あの人のこと触ってないように見えたのに、どうやったの?」
 と、無邪気に笑って言った。快斗はがくっと肩を落とし、は――っと大きく溜息をついた。
「・・・別に、たいしたことしてねーよ・・・。蘭、頼むからさ・・・もちょっと自覚してくれよ」
「?何を?」
「何って・・・その・・・ま、いいや。ほら、乗ろうぜ」
 いつのまにか、蘭と快斗が乗る番になっていた。
「あ、うん!」
 2人で観覧車に乗り込む。ゆっくりと動く観覧車の窓から外を見て、楽しそうに笑う蘭。そんな蘭を見て、快斗は目を細める。
「―――蘭、これ」
 快斗はポケットから小さな袋を出すと、蘭に差し出した。
「え?何?」
 蘭は、不思議そうな顔をして、その袋を受け取った。
「開けてみろよ」
「うん・・・」
 蘭は言われたとおり、その袋を開けた。そして、中のものを手のひらに出してみるー――。
「これ―――」
 それは、四角いシルバーの板に天使の絵が彫られたペンダントだった。
「かわいい―――」
「裏、見てみ」
 快斗が笑いながら言う。蘭が、そのとおり裏返してみると、そこには今日の日付とto ranの文字が・・・。
「これ―――!」
「今日の記念に、プレゼント。さっき、これを買いに行ってたんだ。んで、裏のそれ彫ってもらってたら、思ったより時間がかかっちまったってわけ」
 ちょっと照れたように、ニヤッと笑う快斗。蘭は、そのペンダントをボーっと見ていた。
「蘭?貰ってくれるよな?」
「あ、あの、でも、良いの?」
「もちろん!蘭に貰ってほしいから、名前入れたんだぜ。な?」
 快斗の言葉に、蘭はふっとうれしそうに笑って、
「ありがとう!大切にするね」
 と言ったのだった。その笑顔を見て、快斗の胸がドキドキと高鳴った。
「―――蘭、今日、楽しかった?」
 と聞くと、蘭はまたニッコリ笑って、
「うん!とっても!」
 と言った。
「じゃ、また来ようか。2人で、さ」
 と快斗が言うと、蘭はちょっとびっくりしたように目を見開いた。
 ―――まずかったかな?
 快斗はちょっと不安になった。
 ―――もう会わない・・・なんていわれたらどうしよう?そんなの耐えらんね―よ・・・。
 そんな快斗の想いを知ってか知らずか、蘭はふわり、と優しい笑みを浮かべると、
「うん、そうだね」
 と言ったのだった。
 今度びっくりするのは、快斗の方だった。
「え、マジ?良いの?」
「うん。ほんとに、楽しかったから・・・。快斗君といると、いつも楽しいよ。側にいるとすごく安心するし・・・」
 少し頬を染めながら話す蘭。快斗は、信じられないような思いでそれを見つめていたが・・・。
「蘭!!」
 思わず、蘭に抱きついていた。観覧車がその拍子に少し揺れた。
「キャ、ちょ、快斗君、危ないよ!」
 蘭が慌てて身を離す。
「あ、ああ、ワリィ。―――なァ、隣に座ってもいい?」
「え?うん、良いけど・・・」
 蘭がキョトンとして首を傾げる。快斗は蘭の隣に座ると、改めて蘭を見つめた。
「何?」
 ちょと照れたように蘭が聞く。
「ん、イヤ・・・なんか、すっげーうれしいんだけど・・・。ちょっと信じられなくってさ・・・。蘭って、俺のことただの友達くらいにしか思ってないと思ってたから・・・」
「ただの・・・なわけないじゃない。今日だって、ここに来るのすごく楽しみにしてたのよ」
「ホントに―――?けど、やっぱり1番好きなのは新一なんだろ?」
「うーん・・・。なんて言ったら良いのかな。新一とは比べられない・・・っていうか、全然別の気持ちなの。新一のことはもちろん好きだけど、快斗君のことも・・・」
 そこでちょっと躊躇いがちに、上目遣いで快斗を見る蘭。快斗は、その瞳にくらくらして・・・。そっと肩を抱くと、蘭の唇に自分のそれを重ねようと顔を近付ける・・・。
 とその時、
『Pululululu・・・』
 突然、蘭の携帯電話が鳴り出して、蘭がぱっと体を離した。
 心の中で、チェっと舌打ちする快斗。
 ―――いい所だったのに。
「―――新一」
 携帯の液晶画面を見て、蘭が呟く。
 快斗は、思わず顔を顰める。
「―――もしもし」
「―――最初から、こうすりゃ良かったんだよな」
 なぜか息の荒い、新一の声。
「え?」
「馬鹿正直に探し出してやろうなんて思ってた俺が馬鹿だったんだ」
「新一?何・・・」
 言ってんの?と言おうとした蘭の台詞を、新一が遮る。
「今、どこにいる?」
「え・・・どこって・・・」
「トロピカルランドにいることは知ってる。そんなかのどこにいるか聞いてんだよ」
 明らかに怒ってる、新一の低い声。
 蘭は、呆然として声が出なかった。
「おい、蘭?黙ってねーで何とか言えよ」
「あ、あの―――」
 何か言おうとして口を開いた蘭の手から、スッと携帯電話を取った快斗。
「よお、遅かったな、名探偵。何やってたんだ?」
 快斗の言葉に、再びビックリする蘭。
「っせーな、オメエ、変装してんだろ?」
「ふーん。ちゃんと気付いてたんだ」
「ったりめーだ!どこにいやがる!」
「なんだよ、自分で探し出すんじゃなかったのか?ギブアップ?」
 面白そうに笑って応える快斗に対し、新一は憮然として応える。
「―――蘭に聞いちゃいけないってルールはねーだろ。早く代われよ」
「やーなこった。今、いいところなんだからよ、邪魔すんなよなァ」
「・・・いいとこって、なんだよ!?てめえ、蘭に何かしやがったら―――」
「まだしてねーよ」
「ま、まだって―――!」
「ヒントやるよ。今、2人きりで夜景見てんだぜ。スッゲーキレ―。なァ、蘭?」
 と、突然話を振られ、蘭はあたふたしている。
「え?あ、あの、快斗くん―――」
「んじゃーな、新一君」
 快斗は勝手に話を終わらせると、さっさと電話を切ってしまった。
「か―――いと君・・・?あの・・・今のって・・・」
「―――ん。黙っててゴメンな。実は新一にばれちまってさ」
「そう・・・だったんだ・・・」
「うん。さっき、新一から電話がきてさ。蘭はトイレに行ってたから、黙ってたんだけど・・・。ゴメンな。もう少しデートを楽しみたかったからさ」
 快斗は、蘭が怒り出すかなと、少し不安に思いながら言ったのだが・・・。
「ううん、いいよ」
 と言って、蘭はニッコリ笑った。快斗は、その反応を意外に感じて、戸惑った。すると、蘭はちょっと照れたように首を傾げ、
「だって・・・今日は、わたしも楽しかったし・・・。今日は1日快斗君の彼女になるって約束でしょ?新一にバレたって分かってたら・・・こんなに楽しめなかったと思うから」
 なんて、本当はそんな風に思っちゃいけないかな、と小さい声で付け加える蘭。そんな蘭が愛しくて・・・快斗は、このままこの観覧車が地上に着かなければいいのにと思っていた。さっきのヒントで、多分新一はこの場所を突き止めるだろう。この観覧車が下へ着く頃には、新一もこの場所へ来ているだろう。そうしたら・・・この楽しいデートは終わってしまう。蘭はまた、新一の“恋人”に戻り、快斗
はただの“友達”に戻ってしまうのだ。
 快斗の胸が痛んだ。
 どうして、蘭は新一の恋人なのだろう?どうして、彼女の幼馴染が自分ではなかったんだろう?どうして・・・自分たちは出逢ってしまったんだろう・・・。
 いまさらながら、その想いが快斗の胸に重くのしかかって来るのだった・・・。
 暫し、二人は黙って見詰め合っていた。そして、蘭が快斗を見つめながら口を開く。
「―――あのね、快斗くん―――」
 ガタンッ!
 鈍い音とともに、観覧車が地上へ着いた。係員によって、扉が開かれる。
「ハイ!お疲れ様でした~」
 にこやかに笑う女性係員に促され、2人で外に出る。もう日はすっかり暮れていた。
 2人無言で歩き出す・・・と、先ほど蘭をナンパしてきた2人組みが座っていたベンチに、新一の姿があった。
 今度は変装に騙される事もなく、2人に気付いたようだ。
 腕を組んで立っている新一の顔は無表情だったが・・・蘭には分かった。その瞳の奥に、怒りの炎が静かに燃えていることが・・・。

「新一・・・」
 蘭は、新一の名を呟いた。新一がそれに反応するように、キュッと眉間にしわを寄せる。
「蘭・・・どういうことか、説明してくれよ」
「あの―――」
「俺が説明するよ」
 快斗が、スッと庇うように蘭の前に立った。新一が鋭い目で快斗を睨みつける。
「快斗君・・・」
 蘭が心配そうに、快斗を見上げる。
「―――大丈夫」
 快斗が蘭に、ニッと笑って見せる。その光景に、ますます険しい表情になる新一。
「―――こないださあ、オメエが事件でいなかったとき、俺が蘭を家まで送ってったろ?」
「ああ?」
「ほら、新出先生が車で蘭を送ってってるって話をした日だよ」
「―――ああ、覚えてるぜ」
「俺、あん時本当に本当は泊っていこうかと思ってたんだよ」
 新一の表情が、これ以上ないというくらい不機嫌になる。
「んで、そん時におとなしく帰る代わりに出した条件がこれなんだよ」
「これって・・・」
「1日デートしてってこと。あん時泊っていくのと、1日デートだったら1日デートのほうが良いだろ?おまえだってさ」
「どっちもダメに決まってんだろ!?」
「けど、蘭は1日デートを選んだ。オメエのためにも、な」
 快斗はニッと笑った。新一歯をくいしばり、快斗を睨みつける。
 蘭の行動は分かる。だが・・・理屈で分かるのと、だから納得出来るか、というのは違う。
「・・・だからって、俺に隠し通すことが出来ると思ってたのか?」
「イーヤ、全然。オメェなら、気付くだろうなとは思ってたぜ」
 快斗はしれっと言ってのけた。
「けど・・・気付かない可能性だってある。俺はそれに賭けた。たとえ半日でも・・・蘭を独り占めしたかった」
「―――蘭は、渡さねえ・・・」
 新一はそう言って快斗を睨みつけると、今度は快斗の後ろに立っている蘭に視線を移した。
「蘭・・・もう、隠し事はしねえって約束だったよな」
「―――ん・・・ゴメン・・・なさい・・・」
「・・・謝りゃ良いってもんじゃねえだろ?何でうそつくんだよ?オメエ・・・何考えてんだよ?まさか、本気で快斗のこと好きになったんじゃ・・・」
 新一の顔色が青くなる。蘭は慌てて、
「違うよ!そうじゃなくて―――」
 即否定する蘭に、新一は少しホッとし、快斗は、やっぱり、と落胆する。が、蘭が続けていった台詞に2人は目が点になる。
「でも、快斗君のことは好きだよ」
「―――は?」
「―――え?」
 2人の反応に、蘭はちょっと怯んだが、気を取り直して続けた。
「あの―――新一のこと好きっていう気持ちとは、ちょっと違うの。なんていうか・・・兄弟とかいたらこんな感じかなあって・・・。一緒にいるのがすごく自然で、隣にいて、手を繋いだりするのも当たり前みたいで・・・、肩、抱かれたりするとちょっとドキドキするけど・・・」
 そこですかさず新一の突っ込みが。
「―――肩、抱かれたのか?」
「え―――う、うん、まあ・・・」
 新一の顔が再び険しくなるのを止めるように、蘭は話を続けた。
「えっと。それでね、側にいると、すごく安心するの。―――新一といるときは、また事件が起きてどこかへ行っちゃうんじゃないかって不安があったり、逆に、新一がわたしのために何かしてくれるのが涙が出そうなくらい嬉しかったり、側にいるだけでドキドキしたり・・・。なんて言ったらいいのかな。新一のすることで一喜一憂してるの・・・。それは幸せなことだけど、やっぱり不安もあって・・・。快斗君といると、そういう不安が全部消えちゃうみたいな・・・そんな感じがするの。―――勝手なこと言ってるって分かってる。“浮気”っていわれたら、そうなのかも・・・でも・・・今のわたしは、快斗君がわたしの前からいなくなっちゃうことなんて、考えられないの。ずっと・・・側にいてほしいって・・・思ってるの」
「・・・・・」
「・・・・・」
 暫し、2人は無言だった。蘭がそんな風に思っていたなんて、快斗も新一も考えもしなかったのだ。
 蘭のほうはといえば、2人が黙ってしまったのを見て、しゅん、と俯いて言った。
「やっぱり・・・こんなの、ダメだよね。こんな勝手なの・・・。ゴメンね、快斗君。新一も・・・ゴメン。こんなわたし・・・いやだよね」
 その言葉に、先に反応したのは快斗だった。
「イ、イヤじゃねーよ!!」
 蘭が、顔を上げて快斗を見る。
「・・・スッゲーうれしいよ。蘭が、俺のことそんなふうに思っててくれたなんて、さ。俺がいることで蘭が安心できるなら・・・ずっと笑顔でいてくれるなら、俺、ずっと蘭の側にいるよ・・・側にいたいんだ」
「快斗君・・・」
 蘭の瞳が涙で潤んだ。それを見て、新一が重い口を開いた。
「蘭・・・」
「新一・・・あの・・・」
「俺とは、別れたいってことか?」
「ち、違うよ!そんなこと、思ってない!」
 蘭は、慌てて首を振った。知らず、涙が溢れてくる。
「わたし・・・新一が好きだよ。大好き・・・別れたいなんて・・・思ったこと、ない。―――でも、新一がこんなわたしを許せないなら・・・わたしのこと嫌いになっちゃったなら・・・。新一に、さよ
なら言われても、仕方ない・・・」
 蘭の頬を涙が伝った。もう、言葉を続けることができなかった。
 新一が蘭の側まで来て、その手で蘭の涙をすくった。
「―――俺から、さよならなんて、言えるわけねえだろ」
「新一・・・」
「俺には、オメエしかいない。オメエのことだけが、好きなんだからな」
「新・・・一・・・」
 新一は、優しく蘭を抱きしめた。そして、快斗の方を見て、
「蘭は、オメエには渡さね―。・・・けど、蘭がオメエを必要としてるなら・・・俺のせいで蘭が不安になって・・・その不安が、オメエといることで消えるなら・・・少し位、側にいても良いってことにしてやるよ」
「―――えっらそーになァ」
 快斗が、新一を睨みつける。
「そのかわり、ぜって―手は出すなよ。俺のいない間に・・・手ェ出しやがったら、今度こそ2度と蘭に会えね―ようにしてやっからな」
 低い声でそう言い睨みつけてくる新一の目をまっすぐ見返しながら、
「―――フン、俺は蘭を悲しませるようなこと、するつもりはねーよ。蘭がその気になりゃ―別だけどな」
 と言って、ニッと笑った。そんな快斗を、また睨みつける新一。その時―――
「あの・・・快斗君・・・」
 新一からちょっと体を離し、蘭が快斗を見上げた。
「ん?」
「あの・・・快斗君て・・・もしかして、私のこと、好き・・・なの?」
 赤い顔をして聞いてくる蘭。快斗も新一も、再び目が点になる。
「・・・は?」
「・・・蘭、いまさら何言ってんだ?」
 怪訝な顔をして聞いて来る新一に、蘭は戸惑ったような顔をした。
「え、だって・・・」
「―――蘭、もしかして、俺の気持ちに気付いてなかったの?」
 快斗が、恐る恐る聞く。
「え・・・じゃ、やっぱり快斗君、わたしのこと・・・?」
「ちょっと待て、蘭。じゃあ何で、快斗に”ごめん”って言ったんだ?」
「それは・・・快斗君はわたしのこと、友達だと思ってると思ったから・・・。あんなふうに、ずっとそばにいてほしいなんて、彼女みたいなこと言ったら悪いかなって・・・。すごい浮気者みたいで・・・友達でもいてもらえなくなると思ったから・・・」
 その言葉に、快斗も新一も大きな溜息をついて、肩をがっくりと落とした。
「あ、あのオ・・・」
 オロオロする蘭を、新一は恨めしそうにジト目で睨み、快斗はクックッと肩を震わせながら、笑い始めた。
「―――も、サイコ―、蘭・・・。新一、苦労するぜ、これじゃあ」
「笑ってんじゃねーよ。・・・人事じゃねーだろ?オメエもよ・・・」
 その言葉に快斗は顔を上げ、新一を見た。暫し、沈黙のあと、快斗はニヤッと笑って、
「そだな。これからは、オメエが事件に借り出されてる時は、俺が悪い虫がつかねーように見張ってなきゃなんねーからな」
 と言った。そして、サッと蘭を新一から離し、優しく包み込むように抱きしめると、蘭の頬にチュッとキスをして、耳元に囁いた。
「これからも・・・よろしくな」
「!!!てめええ―、手ェ出すなっつっただろうが―――!!」
 すかさず新一が、蘭を奪い返そうと手を伸ばす。が、快斗はサッと蘭の手を引っ張って駆け出すと、笑いながら新一に言った。
「今日の蘭は、俺の彼女なんだよ!明日になるまで、オメエには返さね―からな!行くぜ、蘭!」
「待てっ、このヤロ―!!」
 必死に追いかけてくる新一を見て、蘭は
「ごめんね、新一!今日は、快斗君と約束しちゃったから・・・後で電話するねー!」
 と言って、手を振ったのだった。
 それを見て、再び脱力する新一・・・。
「あいつ―――ホントに分かってんのか?この状況が・・・。勘弁してくれよ・・・」
 力なくうなだれる新一。だが、なぜか心は落ち着いていた。
「しょーがね―な・・・今日1日は、目ェつぶってやっか・・・」
 そう呟き苦笑いすると、ゆっくり出口に向かって歩き始める新一だった・・・。


                                          fin

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちょっと長くなってしまいました。変な終わり方ですいません。でもなんか、わたし的にこういう形がしっくりきてしまって・・・。

 このシリーズはわたしが初めて書いたお話です。今でもやっぱりこの組み合わせが大好き♪

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ファーストデート 1

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
 「やっぱ、早すぎたな」

 トロピカルランドの最寄駅の改札口で、快斗は蘭を待っていた。約束の時間まであと20分もある。

 今日は蘭との初めてのデートだ。柄にもなく緊張して、前の日は良く眠れなかったのだが、初デー

トに遅刻していくわけには行かない、と早めに出てきたのだ。

 ―――ま、いっか。蘭が来るまでに気持ちを落ち着けてよう。

 と、思いはしたものの、蘭がちゃんと来るかどうか、なんとなく不安になってくる。この日までど

うにか新一にはバレずに済んでいたが、かなり強引にこのデートの約束を取り付けたので、少し心配

なのだ。

 電車が着いたのか、大勢の人が改札口を抜けてくる。快斗は、その中に蘭の姿を探していた。

 ―――まだ来ないかな―――と思ったとき、人ごみの中に蘭の姿を見つけた。

 夏っぽいノースリーブの、薄いピンクのワンピースを着た蘭は、大勢の中にいてもぱっと目を引く

ほどきれいだった。今も回りの男たちの視線を集めていたが、本人はそんなことには気付く様子もな

く、快斗を見つけると満面の笑みを浮かべ、手を上げた。

 改札を抜けると、小走りで快斗の元に駆け寄ってくる。長い髪が揺らめいて、キラキラと光ってい

るように見える。

 蘭が近づいて来るのに合わせ、快斗の鼓動が早くなった。

「おはよ!快斗君。早いのね」

 と言って、ニッコリ笑う蘭に、快斗は目を細めた。

 ―――やっぱ、かわいいなあ・・・

「行こっか」

 と言って、蘭は先に歩き出す。

「あ、ちょっと待った!」

 それを見た快斗が、慌てて蘭を止めた。蘭がキョトンとして快斗の顔を見た。

「何?」

「えっとさ、ひとつ、お願いがあるんだけど」

 と、快斗は今日のために考えていたことを口にした。

「お願い?」

「うん。―――今日は、1日オレの彼女になってくれない?」

 意を決し、そう言うと蘭は目をぱちくりさせていたが―――

「―――彼女?快斗君の?」

「うん」

「わたしが?」

「そう。今日1日だけ・・・新一のことは忘れてくれない?―――忘れるのは無理でも、今日1日だけ

只の幼馴染ってことで・・・。ダメ、かな?」

 快斗は蘭の顔を覗き込んだ。蘭はちょっと俯いて考えていたが・・・ふと顔をあげ、快斗を見ると、

「ん。分かったわ。今日1日だけね」

 と言って、ニッコリ笑ったのだった。

「ほんと!?」

「うん」

「やったァ!サンキュー、蘭!!」

 全身で喜びを表す快斗を、蘭は楽しそうに見て笑った。

「じゃ、行こうよ」

 と言って歩き出した蘭の後を慌てて追いかけた快斗は、サッと蘭の手をとり、握った。蘭が、ちょ

っと驚いて快斗を見る。快斗は悪戯っぽく笑うと、

「恋人なんだから、手位繋ごうぜ」

 と言って、ウィンクした。蘭はちょっと照れたように、

「うん」

 と笑って、快斗の手を握り返した。

 2人手を繋いでトロピカルランドまでの道を歩く姿は、どこから見ても仲の良い恋人同士のそれだった―――。





 「―――ね、腹減らない?何か食お―ぜ」

 ひとしきりアトラクションを楽しみ、トロピカルランドの中を手を繋いで歩きながら、快斗が言っ

た。

「うん、そういえば・・・もう1時だものね」

「何食べたい?おごるよ」

「え、いいよ、そんな―――」

 蘭が遠慮して言ったが、快斗はそれを遮り、

「おごらせてよ。今日は俺が彼氏なんだし。それ位、させてくれよな」

 と、明るく言った。蘭も思わず微笑む。

「うん。じゃ、ご馳走になろうかな」

「よし!そういや向こうに美味そうなレストランあったな。行ってみよーぜ」

「うん!」

 レストランに着き、オーダーを済ませると、2人はホッと息をついた。

「疲れた?快斗君」

「いや?すごく楽しいよ。蘭は?楽しい?」

「うん、とっても」

 と言って、蘭はニッコリ笑った。それを見て、快斗はちょっと赤くなって目を逸らした。

 蘭は、そんな快斗を見て、ちょっと不思議な気分になった。超がつくほど鈍感な蘭も、快斗が自分

に好意を持ってくれていることには気付いていた。それが恋愛感情によるものだということには気付

いていなかったが・・・。何でも話せる、大切な友達だと思ってくれていると思っていた。そして、

蘭にとっても快斗は大切な、かけがえのない友達になっていた。新一と似てはいるが、全く違う人物。

 明るく優しく、お調子者のようで、実はとっても気を使っている、そんな快斗に蘭は不思議な安ら
ぎを感じていた。快斗と一緒にいると安心できた。いつも忙しい新一に対しては、ちょっと無理をして笑って見せ、余計な心配をかけないよう、探偵の仕事に集中できるよう寂しいけれど我慢していた。

 でも、快斗といるときは、我慢する必要はなかった。無理せず、自然に笑うことが出来る。本当の自分でいられる。そんな気がしていたのだ。

 ―――参ったな。

 快斗は、なんとなく落ち着かなくなっていた。

 蘭が眩しすぎる。1日だけでも1人占めしたくてこんなことを思いついたけれど・・・。楽しければ

楽しいほど、終わりが近づくにつれ、切なさも増していく。

 ―――参ったな・・・。これじゃあ離したくなくなっちまう。

 このままずっと、2人きりでいられたらどんなにいいか・・・。それは叶わないことだけど、そう思わずにいられなかった。





 その頃新一は・・・

 昨日の夜、また警察に呼び出されていた新一は、帰ってきたのが夜中の2時過ぎで、寝たのは3時過

ぎだったため、昼過ぎにようやく起きてきたのだった。

 いつもだったら日曜は、蘭と約束しているか、約束がなくても新一の家に蘭が泊っていて、ずっと

2人で過ごすのだが今日は違った。なんだか、母親の英理と約束があるので日曜日は会えない、と言

われたのだ。その言葉にがっかりはしたものの、いつも新一が“事件”でいなくなってしまうことが

多いので、文句を言うこともできず、仕方なく了解したのだった。

「あ―あ、つまんね―な―」

 ボソッと声に出して呟く。「夜、電話するから」と、蘭は言っていた。だが、それまでにだいぶ時

間がある。どうやって暇をつぶすかな・・・。

「やっぱ、本でも読むか」

 しかし、家にある本は、もう全て読んでしまった。となると・・・

「本屋に行ってくるか」

 新一は面倒くさそうに立ち上がり、うーんと伸びをすると、出かける支度をするべく2階の自分の

部屋へ上がっていったのだった。





 「さ、次は何に乗りたい?」

 食事が終わると、快斗が言った。蘭はちょっと小首を傾げて考えている。その仕草がかわいくて、

快斗は蘭に見惚れていた。蘭は、快斗が自分をじっと見詰めていることに気付いて、ポッと頬を赤ら

めた。

「やだ、快斗君てば、何じっと見てるの?」

「あ、いや―――あんまりかわいくて、さ」

 と、ちょっと照れたように言って、ぽりぽりと頭を掻く快斗を見て、蘭はますます顔を赤くする。

「な、何言ってんのよ―」

「へへ・・・あ、もう出ようか?」

 と言って、快斗が席を立ったので、蘭も一緒に立って2人はレストランを出た。

「あっちの方行ってみる?」

 快斗が蘭に手を差し伸べながら、促す。

「うん」

 ごく自然に快斗と手を繋ぎ、蘭はニッコリと微笑んだ。





 「あ!探偵の兄ちゃんだ!」

 すぐ後ろから、聞き覚えのある子供の声が聞こえた。

 新一が振り向くと、そこには懐かしい顔・・・元太、光彦、歩美の3人がこちらを見て立っていた。

「よォ!」

 久しぶりに会う旧友に顔をほころばせる。

「あれえ?お兄さん1人?蘭お姉さんは?」

 と、歩美が言った。

「今日は用事があってね、オレとは別行動」

「なんだよ。せっかくの日曜なのに1人かよ、サビシーな―」

 元太の言葉に、思わず顔が引きつる。

「元太君!失礼ですよ。お兄さんたちにも事情があるんですから」

 子供らしからぬ光彦の台詞に思わず苦笑いする。

 ―――相変わらずだな、こいつらは。

「そっか―。あたし、てっきり蘭お姉さんはお兄さんとデートだと思ってたのに」

「へ?」

 歩美の台詞にちょっと戸惑う。

「歩美ちゃん、それ・・・どういう意味?蘭と会ったのか?」

「うん。あたしね、昨日親戚の家に泊りに行ってて、今朝帰って来たんだけど、米花町の駅で蘭お姉

さん見たの」

「駅で?」

「うん。すっごくかわいいピンクのワンピース着てたよ。トロピカルランドに行くほうの電車だった

から、てっきりお兄さんとトロピカルランドに行くんだと思ったのに、違うんだ」

「・・・・・」

 新一は暫し黙ってしまった。

―――どういうことだ?いや、どこに行くかまでは聞いていないから、そっち方面のどこかで英理と

待ち合わせしているのかもしれないが・・・なんだか府に落ちない。ピンクのワンピース―――とい

うのは多分新一も知っているものだ。よくデートの時に着て来るお気に入りの服だ。ノースリーブで、ちょっと胸元が開いているデザインの・・・あれを着て行ったのか?母親と会うのに?

 ―――なんだか胸騒ぎがした。

 ―――まさか蘭の奴、オレに嘘をついてるのか・・・?

 だとしたらどうして?英理に会っているんじゃなければ一体誰と、どこに行ったっていうんだ?考

えられるのは・・・黒羽快斗。あいつしかいない・・・。考えたくはないが・・・。

 新一が突然黙ってしまったので、3人は戸惑って顔を見合わせたりしている。

「あの・・・お兄さん、どうかしたんですか?」

 光彦がやや遠慮がちに聞いてくる。

「え?―――あ、いや、なんでもないよ。ゴメン―――。歩美ちゃん、その・・・蘭は1人だった?」

「うん、1人だったよ。何かすごくウキウキしてるみたいだったよ」

 ―――ウキウキだって?ますます怪しい・・・。

「それ、何時ごろ?」

「ええっとねー・・・9時半くらいだったと思うけど・・・」

 9時半・・・トロピカルランドの開園は10時・・・。時間的にもぴったり合う・・・。

「どうもありがとう。じゃあ、またな」

 新一はニッコリ笑って3人に手を振ると、足早にその場を去っていった・・・。

 残された3人は、いつもと違う、ただならぬ雰囲気を漂わせた新一の後姿を呆然と見送っていたの

だった―――。



 新一は3人から見えないところまで来ると、ポケットの携帯電話を取り出し、まず蘭の携帯にかけ

てみる。―――が、電源を切っているのか、繋がらない。続けて、妃法律事務所へ―――。

「はい、妃法律事務所でございます」

 若い女性が出た。

「あ、お忙しいところすいません。工藤と申しますが、妃弁護士はいらっしゃいますか?」

「妃はただいま席を外しておりますが」

「そうですか・・・。どちらへいかれたか、分かりますか?」

「失礼ですが、どちらの工藤様でしょうか?」

 相手が、ちょっと警戒するように言った。

「あ、失礼しました。工藤新一と言います。あの・・・」

 と、新一が言いかけると、向こうで、ああ、と言う安心したような声が聞こえた。

「蘭ちゃんの―――妃先生のお嬢さんのお友達・・・ですね?」

「はあ―――まあ・・・」

 お友達、という言葉に、少し躊躇する。もちろん向こうは、新一が有名な高校生探偵だと言うこと

も知っているだろう。

「―――あの、それで・・・」

「あ、ごめんなさい。先生はちょっと人と会う約束をしていて、後1時間くらいは戻らないと思うわ」

「―――それは、依頼人と?」

「―――それは、ちょっと・・・」

「あ、すいません。そうですよね。―――じゃ、何時頃出られたかだけ、いいですか?」

「ええ。確か、1時ごろだったけど」

「1時・・・午前中は?どこか行かれてましたか?」

「え?いいえ。午前中はずっとオフィスにいたけど・・・それが何か?」

「あ、いえ、何でも・・・。すいません。お仕事中に失礼しました」

 新一は電話を切ると、またすぐに他のところに電話をかけた。

「――――もしも――し」

 と、明るい声で出たのは、快斗だ。

「なんだよ、新一、珍しいな。オメエが電話してくるなんて」

「―――オメエ、今、どこにいる?」

 新一は自然と低くなる声で聞く。

「あん?今?トロピカルランドだけど」

 ―――やっぱり!

「蘭と一緒にいんのか?」

「・・・・・な~んだ、もうばれちまったのか」

 拍子抜けするほどあっさり言われ、新一は一瞬言葉をなくした。が、すぐに自分を取り戻し、

「ふざけんな!!どういうつもりだよ!」

「どういうって、デートだよ、デート。オレと蘭のファーストデート。邪魔すんなよなァ」

「な・・・にがファーストデートだよ!おい、蘭に代われよ!」

「やーだね」

「―――んだとォ!?」

「蘭が困るだろォ?今日は、蘭はオレの彼女だかんな!オメエには渡さねーぜ」

「テメ・・・!」

「返してほしかったらここまで来れば?ま、簡単には見付かんね―と思うけど。

「―――そこにいんだな?」

「おー。お楽しみはこれからだからな」

「―――待ってやがれ、ぜって―見つけ出してぶん殴ってやっからな!!」

 そう言うと、新一は力任せに電話をブチッと切った。頭に血が上って、とても平静ではいられなか

った。

 ―――あのヤロ――!今日という今日はぜって―ゆるさねー!!

 新一は回りの人間を跳ね飛ばしそうな勢いで、駅に向かって走っていったのだった・・・。





 一方快斗の方は、蘭がトイレから出てくるのを待っていた。

「さあて、どうすっかな」

 快斗はポリポリと頭を掻いた。

 新一が快斗に電話をしてきた時点で“バレた”事はわかった。おそらく何かのきっかけで今日の蘭

の行動に疑問を抱いた新一は、まず先に蘭の携帯に電話をしたはずだ。そのとき蘭と快斗は、室内に

いたので通じなかったのだろう。そして、快斗に電話してきた時間を考えると、その後英理のところ

へ電話したのだろう。今日、蘭が言い訳に英理と会うと言っていたのは快斗も聞いている。で、そこ

でばれたわけだ、蘭の嘘が・・・。

 まあ、半分そうなることは予想していたし、誤魔化そうと思えばできたのだが・・・。蘭が怒られ

たりしたら可哀想だし。隠れて会うってのはやっぱりフェアじゃないし・・・。そう思ってあんなこ

とを言ったのだが・・・。あっさり蘭を連れ戻されたのでは面白くない。

 ―――ここはやっぱり、あれしかねーか・・・。

 トイレから出てくる蘭を見ながら、快斗は密かにほくそえむのだった・・・。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 また続きます。この辺で、蘭ちゃんの気持ちにちょっぴり変化が・・・。


 というわけで。お楽しみいただけましたでしょうか
 季節感ないですね。これは夏のお話です

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混戦模様  2

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
 そして、その日の部活は終わり・・・が、案の定新一はまだ来ていなかった。

『Prururururu・・・』

 一人教室で待っていた蘭の携帯電話が鳴った。

「―――もしもし」

『あ、蘭、ごめん。まだちょっと行けそうにねーんだ』

 電話の向こうで新一が言った。

「うん、分かった。じゃ、わたしもう帰るから・・・」

 と言って、蘭は電話を切った。

「フウ・・・」

 短い溜息をつくと、気を取り直したようにすくっと立ち上がり、教室を出た。

 分かってはいた・・・覚悟もしていたはずなのに・・・それでも一人で教室で待っていると、どうしても不安になってきてしまう。
 ―――でも、仕方ないんだ。―――
 自分に言い聞かせながら、蘭は早足で学校を出た。外はもうすっかり暗くなってしまっていた。

 ―――いつもこの辺で新出先生に会うのよね・・・。

 などと思いながら道を歩いていると後ろから車の来る気配・・・反射的にそちらを振り向く。

 車が蘭の横で静かに止まり、運転席から新出が顔を出した。

「やあ、毛利さん。また逢いましたね」

 人懐っこい笑顔で、声をかける。

 新一とは違う、大人の男の人。―――だが、蘭の中では男として、と言うよりは安心できる兄のような存在だった。蘭には兄弟がいないのでそんなふうに思えるのかもしれない。

「どうぞ、送りますから乗って下さい」

 と言って、新出が助手席のドアを開けてくれる。が、蘭は困っていた。

―――どうしよう?このこと新一が知ったら・・・やっぱり怒るかな。今日、言われたばかりだし・・・。でも、どうやって断ろう?

「蘭さん?どうしました?」

 新出が不思議そうな顔をして聞いてくる。

「あ、あの、わたし今日は―――」

 と、何とか断ろうと口を開いた瞬間、急に誰かが横に立った気配がした。

「―――!?」

 蘭と新出が驚いてみると、そこにはいつもの不敵な笑みをたたえた黒羽快斗が立っていたのだった―――。

「―――快斗君!!」

「よ、蘭。今帰り?」

「う、うん。まあ・・・」

 何がなんだかわからず、蘭はとりあえず返事をしたのだが、

「快斗君、どうしてここに?」

 やっと我に返って、そう聞いた。

「ん?ちょっと用事があってこの辺まで来てたんだ。なァ、せっかくだからこれから蘭の家に行っても良い?」

 快斗がニッコリと蘭に笑いかける。

「ああ、それなら2人とも車で送っていきましょう」

 と、それまで黙って2人を見ていた新出が言った。快斗はチラッと新出のほうを見てニッコリ笑うと、

「いや、良いっすよ。蘭とゆ~っくり話しながら歩きたいんで」

 と言った。新出は、そんな快斗を穏やかに見ていたが、

「―――そうですか。それじゃ、気をつけて。―――蘭さんを頼みます」

 というと、蘭にも笑顔を向け、ドアを閉めるとゆっくり走り去った・・・。
 

 「―――新出先生に、悪いことしちゃったかな」

 車を見送って、蘭が言った。

「気にすること無いって。偶然あっただけなんだろう?」

 と、快斗は歩きながら言った。

「うん。そうだけど・・・」

「―――何?あの先生のことそんなに気になるの?」

 と、快斗は蘭の顔を覗き込みながら、ちょっと低い声で聞いた。

「そうじゃないけど・・・。親切で言ってくれたのに悪いかなって」

 快斗は、ちょっと顔をしかめ、溜息をついた。

 ―――ホント、蘭って疑うことを知らないよなあ。ま、そこが良いんだけど。

「それより、こんな時間に一人歩きはやっぱ危ないからさ、新一がいない時は俺を呼びなよ。すぐ来るからさ」

「え?でも、悪いよ、わざわざ・・・。それに、そんなに家、遠くないし」

「けど、途中さびしい道だってあんだろ?もし蘭に何かあったら、俺、やだし。な?そうしろよ」

 なんだか言い含められて気がしないでもないが・・・。蘭はちょっと苦笑いして、

「ありがと、快斗君。でも彼女に怒られない?」

 というと、快斗はちょっと怒ったような顔をして、

「また、それ言う。あいつは只の幼馴染だってば」

「でも・・・」

「あのな、俺にとって青子って奴は、妹みたいなもんなんだよ。妹みたいだから心配もするし、すごく大事だとも思ってるよ。でも、恋愛対象ってのではないんだよ」

 少し落ち着いて、快斗が言った。それを聞いて、蘭もやっと納得したようだった。

「うん、わかった。ごめんね」

 そう言って笑った顔がかわいくて・・・

(く―――っ!抱きしめて―――!!)

 思わず顔が緩む。

 毛利探偵事務所の前まで来て、快斗はふと上を見上げた。

「―――あれ?明かり消えてるぜ」

「あ、うん。今日、お父さん帰ってこないから・・・」

「え?そうなの?―――なんだ、それを早く言えよ。だったら余計にあの先生に送ってもらったりしたらヤベーじゃんか」

「え、何で?」

 蘭はきょとんとして快斗を見る。

「何でって―――」

 どう言えば、蘭は分かってくれるんだ?

 あまりの鈍さに、頭を抱える快斗だった・・・。



 快斗は蘭の部屋に入ると、適当に座ってくつろいだ。

「ちょっと待っててね。コーヒーで良い?」

 そう言って、蘭は部屋を出ようとする。

「ああ、ワリ―な」

「ううん、じゃ」

 ニッコリ笑って部屋を出て行く蘭。

 ―――あの顔に弱いんだよなあ・・・。

 などと思いながら、一人ニヤニヤしていると―――

『Pulululululu・・・』

 どこからか、携帯電話の電子音が聞こえてきた。

「ん―――?蘭の鞄か―――?」

 ちょっと悪いとは思いながら・・・そっと鞄を開け、中から携帯電話を取り出した。

 液晶画面を見ると、新一の名が・・・。

 快斗は何かを思いついたようにニヤッと笑うと、携帯電話のボタンを押し、耳に当てた。

「―――もしもし」

 と、蘭の声を真似て出る。

『あ、蘭か?今、どこ?』

「今、家に帰ってきたところよ」

『そっか。今日は・・・新出先生に会ったのか?』

 心配そうな新一の声。快斗は笑いを堪えつつ、話を続けた。

「うん。でも、大丈夫よ。快斗君と一緒だったから」

『は?快斗?何であいつと?』

「私のことが心配だったんですって。快斗君って優しいわよね―――」

『そ、そう・・・か・・・?』

「あ、今もね、一緒にいるの。お父さん、今日帰って来ないし一人じゃ不安だから泊ってってもらおうと思って♪」

『な・・・にィ――――――!!!??』

 耳を劈くような大声。

 新一の慌てふためく様子が目に浮かび、快斗は笑いを堪える。

『だ、だ、だめだぞ!絶対!!おま、何考えてんだ!!あいつを泊めるなんて―――おい!!聞いてんのか!?』

「聞いてるわよ」

 ―――そんな大声出されりゃ、いやでも聞こえるって。

 と、そこへ蘭が飲み物を載せたトレイを手に、部屋へ入って来た。

「―――お待たせ!あれ?電話?」

 その声が向こうにも聞こえたらしく―――

『―――おい、今の蘭、だよな。てことは・・・快斗、てめえ・・・』

 新一の声がだんだん低くなっていく。

「やっと気付いたのかよ?おせーぜ新一」

『な・・・なんでてめえが蘭と一緒に・・・!』

「今日はこのまま泊ってくから、邪魔すんなよ。じゃあな~新一君」

 そう言うと、快斗はさっさと電話を切り、ついでに電源まで切ってしまった。

「―――か、快斗君!?」

 呆然と、目の前の光景を見ていた蘭がようやく口を開く。

「今の・・・新一?」

「うん」

 ニッコリ笑う快斗。

 蘭はちょっと引きつったような笑顔で、

「なんか・・・泊ってくとかって、聞こえたんだけど・・・」

 気のせいよね?と快斗に問い掛ける。

「いや?確かにそう言ったぜ。俺」

 冗談とも本気ともつかない瞳で見つめられて、蘭は困ったような顔をした。

「快斗君?あの、わたし・・・」

 と、突然快斗がクックッと笑い出した。

「んな、困った顔すんなよ。冗談だって。ちゃんと帰るよ」

「―――もう!!人のことからかって・・・」

 ぷうっと膨れる蘭を、優しい瞳で見つめる快斗。

―――半分は、本気で言ったんだけど。なんか、このまま帰るのも癪だよなあ。どうせ、後10分もすりゃ新一の奴が来ちまうんだろうし。

 ふと、何か思いついたように、快斗は不敵な笑みを浮かべた。

「なァ?蘭、このまま俺、本当は泊っていきたいんだぜ?」

「え?な・・・何言ってるのよ、快斗君」

 大きな瞳をますます大きくする蘭を楽しそうに眺めて、

「ダメ?」

 と、ニッコリ笑って聞く。

「だ、ダメに決まってるでしょ」

「じゃ、さ、その代わり、今度俺とデートしてよ」

「デート!?」

「そ。蘭の行きたいところで良いからさ」

「でも・・・」

「もちろん、新一には内緒で。大丈夫、一日位バレないって」

「それは・・・でも・・・」

「蘭?俺のこと嫌い?」

 すっと顔を近付けて聞く。息がかかるくらいまで快斗の顔が迫ってきて。

 蘭はちょっぴりドキドキしている自分に驚いていた。

「き、嫌いなわけ・・・ないでしょ?」

「じゃ、良いじゃん。もうすぐ新一来るぜ?OKしてくれないなら、強引にでもここに泊ってくけど?」

 ニコニコしながら迫ってくる快斗。

「OKしてくれるなら、新一が来る前に帰るよ。喧嘩されんのやだろ?蘭」

「―――う・・・もう!!強引なんだから」

 半ばヤケクソ気味の蘭。

「じゃ、いんだな?」

「―――分かったわよ」

「んじゃ、下まで送ってくれる?」

 快斗は、蘭が入れてくれたカフェ・オレを一気に飲むと、

「うん、うまい、ご馳走さん」

 と言って、部屋を出た。

 全くもう、と溜息をついて、蘭はその後に続いた。2人で外に出る。



 「どこに行きたいか、考えといてよ。今度会うときまでに、さ」

「ん、分かった。帰り、気をつけてね」

 ニッコリ笑ってくれる蘭に、愛しさが溢れる。思わず抱きしめたくなるが・・・

「―――蘭!!」

 遠くから新一の声が聞こえた。

 ―――チッ、早すぎんだよ、来んのが。全く蘭のことになると、ホンット回り見えなくなるんだよな。―――ま、分かる気はするよ。同じ蘭を好きな男としては・・・。心配だもんなァ、この無防備で、自覚のないお姫様が・・・。

「新一」

「王子様の登場か」

 呟く快斗に、「え?」と顔を上げる蘭。上目遣いに見るその瞳に、悪戯心が刺激されて―――

「お休み、お姫様。またな」

 と言って、蘭の頬に軽くチュッとキスをした。

「―――快斗!!テンメェェ―――!!!」

 すごい形相で走って来る新一に一言、

「じゃーな―、新一!」

 と言って、あっという間に走り去ってしまった。

 呆然と突っ立っている蘭のところへ新一が駆け寄った時には、すでに快斗の姿はどこにも見えなかったのだ・・・。

「―――おい、蘭?」

 心持ち顔を赤くして突っ立ったままの蘭に、新一が声をかける。と、はっと我に返ったように、蘭は新一を見上げた。

「あ・・・新一、早かったね」

「“早かったね”じゃねーだろ?何で快斗がオメエの家にいんだよ?こんな時間に」

「だって、送ってもらったし・・・。飲み物くらい、飲んでって貰おうと思ったのよ」

 ちょっと拗ねたように言う蘭。新一は溜息をつき、

「―――おまえさ、いいかげん警戒心っつーもんを覚えろよ」

「って・・・快斗君は、大丈夫だよ?」

「どこがだよ?おまえんちに泊っていこうとしてたんだぞ!?おっちゃんのいない時に!」

「あれは冗談よ。結局帰ったじゃない」

「・・・・・おまえ、あいつになんかされなかったか?」

「え?」

 蘭はちょっとドキッとしてうろたえた。その様子を新一は見逃さない。

「えっと・・・あ、ほっぺにキス、されたけど・・・」

「そりゃ―オレも見てたっつーの」

 ―――くそっ、腹の立つ。わざと俺の見てる前でやりやがって、快斗の奴・・・。

「他には?」

「え・・・な、ないよ」

「・・・本当か?」

 新一はじっと蘭を見つめた。

 ―――あれは約束だから・・・別に何かされたわけじゃない、ものね。うん。

「本当よ」

 勝手に一人納得して、新一に笑顔で頷く蘭。はたして新一に、その言い分が通じるかどうか・・・

 が、とりあえず、蘭の笑顔に納得した新一はちょっと息をつくと、

「なら、良いけど」

 と言った。それを聞いて安心した蘭は、

「ね、上がってく?喉渇いたんじゃない?走って来て」

 と言って微笑んだ。新一はそんな蘭を見てちょっと頬を赤らめ、

「そ、だな。じゃ、ちょっと・・・」

 と言って、上がっていこうとしたのだが・・・

「―――おい!!オメエ、何してやがる!!」

 という怒鳴り声が聞こえ・・・

「!?お父さん!」

 振り返った蘭はびっくりして叫んだ。そこに立っていたのは紛れもない、毛利小五郎その人だった。

「ど、どうしたの?今日は帰って来ないんじゃ・・・」

「予定変更だよ。それより新一、こんな時間に若い女の部屋に上がり込むつもりじゃねーだろうな?」

 ジロッと新一を睨む。

「え、あ、いや、その・・・」

「お父さんってば!」

「蘭、帰るぞ。じゃあな新一」

 と言って、小五郎はさっさと階段を上がっていく。

「もう・・・!」

 蘭はぷうっと頬を膨らませて、溜息をついた。

「はあ・・・じゃ、オレ、帰るよ、蘭」

 新一は力なく言った。

「ごめんね、新一」

 蘭が申し訳なさそうに俯く。新一はそんな蘭の頭を手でクシャクシャっと撫でると、

「気にすんな。じゃ、また明日な」

 と、笑顔で言った。

「うん。じゃ・・・おやすみなさい」

「おやすみ」

 新一は蘭の額に軽くキスをすると、ちょっと手を振り、帰って行ったのだった・・・。

 蘭はそれを見送ってから、階段を上り、3階へ向かったのだが・・・。

 ドアの前に、小五郎が立っている。腕を組み、こちらを見下ろして・・・。蘭はふと立ち止まり、小五郎を見上げた。

 2,3秒、見詰め合ってから・・・

「―――快斗君、ね?」

 と言うと、小五郎はニッと笑い、組んでいた腕を解く・・・と同時に、その扮装を解き、あっという間に快斗の姿になった。

「さっすが蘭!」

 と言って、ウィンクする。蘭は溜息をついて、また階段を上って行った。

「全くもう・・・帰ったんじゃないの?」

「だって、あのまま帰っちまったら新一の奴を部屋に入れてたろ?あいつが黙って帰るわけね―じゃん。そんなことさせられっかよ!」

 と、ちょっと口を尖らせる。

「もう・・・で?もう帰るの?」

「うん。あ、でも蘭が泊っても良いって言ってくれんなら、泊ってくけど?」

 ニコニコと無邪気に笑いながら言う。

「言うわけないでしょ?」

「だーよな。んじゃ、帰るよ」

 そう言って快斗は、軽い足取りで階段を下りて行った。

「気を付けてね」

 と、蘭が上から声をかける。

「ああ、蘭もな。ちゃんと鍵、閉めろよ」

「ん、ありがと」

 蘭はニッコリ笑うと、ドアを開け、中に入って鍵を閉めた。それを見届け、外へ出る快斗。

―――ま、今日は帰ってやるさ。デートの約束も取り付けたしな。・・・1日くらい、彼氏の役目、代わってもらったって良いよな?いつも我慢してんだし。

 と、勝手に結論付け、軽い足取りで帰っていくのだった―――。



fin

************************
 本当は、もっと新出先生が出てくる予定だったのですが・・・。
結局単なる三角関係になってしまいました(^^;)


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混戦模様  1

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
「どうにか間に合ったな」

 新一は腕時計を見ながら呟いた。

 朝から目暮警部に呼び出され、先ほど事件を解決したところだった。学校へ続く道を、やや早足で歩く。―――蘭の奴、びっくりするかな。今朝、電話したときは俺が学校にいけないと知って、がっかりしていたみたいだし・・・。校売でパンでも買って、蘭と屋上で一緒にメシを食おう。

「よォ!名探偵、ずいぶんゆっくりの登校だな」

 この声は―――

 新一は、おもむろに顔をしかめ、振り向いた。

「んでおまえがこんな所にいんだよ?」

 そこに立っていたのは、ガクラン姿の黒羽快斗だった。

「ご挨拶だね。ちょっと用事があってね。これから学校に戻るとこだよ。新一は?何か事件か?」

「まあな」

 この二人、探偵と怪盗という関係の他に、蘭を巡る恋のライバルでもあった。今のところ、新一のほうがリードしているのだが・・・。

「ちょうどいいや。おまえに言っときたい事があったんだ」

 と、快斗が言った。

「言っときたいこと?」

「ああ。―――おまえの学校に、新出とかいう校医がいるだろ?」

「・・・なんでオメエが新出先生の事知ってんだよ?」

「蘭に聞いた」

 快斗はニッと笑って言った。途端に新一の鋭い蹴りが飛ぶ。それをひらっとかわして、塀の上に飛び乗った快斗。

「いきなり何すんだよ」

「っるせー!オメエまた蘭の家に行ったな」

「まあね―――」

「しかも夜だろ!?」

「7時くらいだよ」

「かわんね―よ!いいか、俺に断りも無くあいつのとこに行くな!!」

「へーんだ、こっちは夜しか会いに行けねーんだからしょうがね―だろ。そっちこそいつもいつも週末に蘭を独り占めしやがって、ずり―じゃねーか」

「俺は良いんだよ!」

「勝手なこと―――」

「おい、ちょっと待てよ。新出のことで話があるんじゃね―のか」

 と、急に思い出したように新一が言った。

「あ、そーだった。―――あいつ、気をつけたほうが良いぜ」

「どういう意味だよ?」

 新一が怪訝な顔をして聞く。

「この間、夕方ころ蘭の家に行ったら、蘭の奴、あいつの車に乗って帰ってきたんだぜ」

「な・・・にィ!?」

 サッと新一の顔色が変わる。

「そいつが帰っちまってから、蘭を捕まえて聞いたら、それが初めてじゃないって言ってたんだよ。今までも、新一が呼び出されていない時、部活で帰りが遅くなったりすると送ってくれてたらしいぜ」

「―――なんだよそれ、聞いてねーぞ」

「蘭は、一人で歩いてるところを偶然あの先生が車で通りかかるだなんて言ってたけど―――」

「そんなに何回も偶然遭うかよ!」

「だろ?俺もそう思ったんだけど、蘭の奴はあいつのこと信じちまってて―――っつーか、あの先生に下心があるとか、そんなことは思ってもいね―みて―なんだよな」

「あ・・・の鈍感女!!」

「何とかした方が良いんじゃね―のか?学校の中でのことは、俺じゃどうしようもないし。悔しいけ

どオメエに任せるしかね―んだよな」

「―――なるほどな。それで今日はわざわざここまで来たわけ?」

「それだけじゃねーけどな。ま、もうひとつは今日じゃなくても良かったんだけどさ。蘭のことが気になっちまって―――。んじゃ、そーゆーことで、頼んだぜ」

「ああ」

 という、新一の短い返事が終わるか終わらないかの内に、快斗の姿は見えなくなっていた。

「―――ったく、すばしっこい奴」

 呆れたように言ってから、再び学校へ向かって歩き出したが・・・なんとなく胸騒ぎがして、結局ほとんど全速力で学校に向かったのだった。


 学校に着き、乱れた息を整えつつ教室へ入っていくと、もう昼休みに入ってそれぞれ仲の良いグループで固まって、お弁当を広げている姿があった。が・・・蘭の姿が見当たらない。

「―――でさ、なんかイイ雰囲気で―――入るに入れなくなっちゃったのよ」

「うっそ―――、マジィ?」

 一際賑やかなのは、園子のいる女の子4人組。いつもならそこに蘭の姿もあるはずなのだが・・・。

「ねー、それって・・・」

 だんだん小声になっていく一人の声に合わせるように、4人が顔を寄せ合う。ぼそぼそと何かの話に夢中で新一がすぐ後ろまで来ているのにも気付かないようだ。

「よォ」

 と、新一が声をかけると、

「キャ―――――!!」

 という、耳を劈くような悲鳴が4人から発せられたのだ・・・。

「―――っ!!な、なんなんだよ!?一体!!」

 あまりの煩さに耳を塞ぎつつ、新一が文句を言うと、恐る恐るという感じで、園子が振り向く。

「あ―――し、新一君・・・来たの・・・?」

「来ちゃワリ―かよ。―――蘭は?」

 と言うと、なぜか4人とも固まってしまった。

「おい・・・?」

「あ―――えーと・・・蘭?さ、さあ、どこ行ったのかしら・・・ねえ?」

 園子が他の3人に振ると、3人が3人とも、視線を宙に彷徨わせながら、

「さ、さあ・・・」

「わ、わたし知らない・・・」

「わ、わたしも・・・」

「―――まさか・・・保健室・・・か?」

 と、新一が聞くと、4人はドキッとしたように顔を見合わせ、固まっている。

「・・・さっきの会話、ひょっとして、蘭の事・・・か?」

『イイ雰囲気』とか何とか、聞こえたような・・・

「ち、ちがうのよ、新一君。4時間目、体育の授業でさ、バスケやってたら、蘭、突き指しちゃって・・・で、保健室に行っただけで―――」

「やっぱ、保健室にいんだな」

 保健室には当然、校医である新出智明がいる。

「た―――多分、そろそろ戻ってくるんじゃない・・・?」

 と、園子が一生懸命説明しようとしたのだが、中の一人が、

「でも、もう30分以上経ってるよね?」

 と、小声で言ったのを、新一は聞き逃さなかった。

「わ、馬鹿!何言ってんのよ―――!」

 園子が突っ込むと、その子が慌てて手で口を抑えた。

「・・・・・」

 新一は無言で4人に背を向けるとそのまま教室を出て行ってしまった。

「―――あ―あ、どうすんの?怒ってるよ、新一君」

 園子がため息をついた・・・。



 『イイ雰囲気』?『30分以上』?ジョーダンじゃねーぞ!新出のヤロー・・・

 教室から保健室まで・・・新一がどんな顔で歩いていたか―――すれ違う人全てがギョッとした顔をして、慌てて避けるのを見れば―――お分かり頂けるだろう・・・。

 ようやく保健室に着き、そのドアを勢い良く開けようとしたが―――中から良く知っている、さわやかな笑い声・・・

「・・・クスクス、先生、そんなこと言ったんですか?信じらんない」

「そうなんですよ。僕も言ってから気が付いて・・・あ、もうこんな時間ですね」

「え?―――あ、ホント。じゃ、わたし教室に戻ります。すいません、長々とお邪魔しちゃって・・・」

「いえいえ、僕のほうはいつでも大歓迎ですよ」

 蘭がドアに近づいてくる気配がして、新一は慌ててその場を離れようとしたが―――考えてみれば、別に隠れる必要なんか無いんだ、と思い直し、そのまま蘭が出てくるのを待った。

「―――じゃ、失礼します」

 と言いながら、蘭がドアを開けて出てきた。保健室のほうを向いたままペコッと頭を下げ、ドアを閉めて、くるりと振り向いた。

「キャッ!!」

 蘭が短い声をあげた。

「―――新一!びっくりするじゃない!」

 胸に手をあて、目を大きく見開いたまま息をつく。

 まあ、驚くのも無理は無い。振り向いたら、いきなり目の前に新一がいたのだから。しかもその差、2cm程のところに・・・。

「―――いつ来たの?新一」

 まだ目を見開いたまま、蘭が新一に聞く。新一は仏頂面で、

「さっき」

 とだけ答えた。

「そう。―――お昼は?何か持ってきたの?」

「いや・・・」

「じゃ、校売でパンでも買う?わたし、教室にお弁当取りに行くから、先に屋上で待っててくれる?」

「―――ああ」

 蘭は新一の様子をそれほど気にしていないように、ひらひらと手を振りながら行ってしまった・・・。



 「―――意外と早かったね、来るの」

 屋上で、蘭はお弁当を広げつつ新一に言った。

「―――新一?どしたの?」

 新一の返事が無いので、蘭がちょっと心配そうな顔を向けていった。

「―――おまえ、何か俺に隠し事してない?」

 ようやく口を開いた新一の顔は、不機嫌そのものだった。

「隠し事って・・・?」

「新出・・・先生のこととか―――」

「新出先生?先生がどうかしたの?」

 相変わらずきょとんとした表情で、蘭が聞き返す。

 新一はそれには答えずじっと蘭を見つめていたが、やがてがっくりしたようにため息をついた。

「新一?」

「ったく・・・ホンッとにおまえって鈍感だよな」

「?何それ?」

「最近、俺がいないときに新出先生の車で送ってもらったりしてんだろ?」

 と、新一が言うと、蘭はびっくりしたように目を見開き、

「どうして・・・」

 と言いかけたが、すぐに思いついたようで、「―――快斗君ね」

と言った。

 最近、蘭はキッドのことを本名の“快斗”と呼ぶようになっていた。それは他人に聞かれてはまずいから、というのもあったが、快斗の方がそう呼んで欲しい、と言ったらしい。そして、夜、蘭に会いに行くときもキッドではなく、快斗の姿で逢いに行っていた。

「何で俺に黙ってたんだよ?」

 新一がちょっと咎めるような口調で言う。

「だって・・・新出先生のこと話すと、新一すっごく不機嫌になるじゃない」

 その言葉に、新一はちょっとびっくりした。

「なんだ、気付いてたのか?」

 鈍感な蘭のことだから、きっと気付いてないと思っていたのだ。

「当たり前よ。ムスッとして、わたしの話、聞こえなくなっちゃうじゃない。どうしてそんなに新出先生のこと嫌うの?」

 ―――やっぱ、理由まではわかんね―のか。全く・・・あの男の下心がわかんね―なんて・・・

「・・・とにかく、だな」

 新一は蘭の質問を無視して言った。

「もう、送ってくれるって言っても、あの人の車に乗ったりすんなよ」

「どうして?親切で言ってくれてるのに悪いじゃない」

「どうしてってなァ・・・」

「別に、新出先生は妙な下心なんて持ってないわよ」

「何でそんなこと分かる?」

「何でって・・・なんとなく、だけど・・・新出先生だってそう言ってたし・・・」

「先生が?なんて言ったんだ?」

「初めて『送りますよ』って言われた時、わたし断ったのよ。そんなに遠くないし・・・。そしたら先生、『僕のことが信用できませんか?』って・・・。そうじゃないって言ったら、『下心なんてありませんよ。もし君に何かあったら、僕は絶対後悔する事になります。どうぞ乗って下さい』って言われたの。そこまで言われたら、乗らないわけにいかないじゃない?」

 と言って、蘭は微笑んだ。

 ―――なんつー気障なやつ・・・。

 と、自分のことを棚に上げて、新一は思った。

「何で新一が新出先生を嫌ってるのか知らないけど、先生、良い人よ。気さくだし、妙に気まずくならないようにいろんな話してくれるし・・・。頭良いから新一とも話し合いそうだけどなあ」

 ―――ったく、人の気も知らないで・・・

 新一は、また溜息をつくと蘭の顔をじっと見つめた。

 蘭はきょとんとして新一を見つめ返す。

 キラキラ輝く大きな瞳、さらさらの長い髪、白い肌に桜色のつややかな唇・・・。昔から見慣れているはずなのに、クルクル変わるその表情はいつも新鮮で、見惚れずにはいられない。同じように蘭を好きになる男が他にいたとしても不思議じゃない。あの黒羽快斗や新出智明のように―――。
 だが、だからと言って蘭を他の奴に渡したりはできない。例え―――そう、例え、蘭が他の奴を好きになってしまったとしても・・・蘭だけは、渡せない・・・。

「―――新一?」

 そのつややかな唇から紡ぎ出される名前・・・それは、いつも俺であってほしい。―――新一はそう思わずにはいられないのであった。

 新一は蘭の瞳を見つめたまま、細い肩を抱き寄せ、そっと唇を重ねた。

 蘭が驚いて身を引こうとするが、構わず抱く腕に力を込める。

「ん・・・っ」

 声を発したその隙に、唇の隙間から舌を入れ、口の中を貪るように味わう。

「・・・・・」

 蘭はもう抵抗しなかった。おとなしく新一に抱かれ、されるがままになっている。

「・・・蘭」

 ようやく唇を離し、息の上がってしまった蘭に、新一が囁く。

 ちょっと頬を赤らめ、瞳を潤ませて、蘭が新一を上目遣いで見上げる。

「―――例え、スゲエ良い人でもやなんだ」

 新一は、蘭の肩に顔を埋めるようにして、耳元に囁く。

「―――え?」

「どんなに良い人でもさ・・・俺の知らない間に、蘭に近づく奴は・・・いやなんだよ」

 新一の耳はほんのりピンクになっていた。それを見て、蘭はちょっと幸せな気分になり、新一の方に頬を寄せるようにして言った。

「ダイジョーブ・・・。私が好きなのは新一だけだよ」

 途端に新一の耳がさらに赤くなり、蘭のほうも・・・自分で言ったくせにゆでだこのように真っ赤になってしまったのだった・・・。



 「―――ったく、犬も食わないとはこれのことよね」

「ホントホント」

「やってらんない」

「心配して損しちゃったわね」

「かえろかえろ」

 ―――と、勝手な話をしているのは園子他3名・・・自分たちのせいで二人が別れでもしたら大変・・・と心配して二人のことを見に来たのだが・・・ま、心配というよりは、ただの好奇心・・・二人の喧嘩を覗こうと思ったというのが正直なところだろう。が、喧嘩というところまでいかず、がっかり(?)していたところで、思わぬラブシーンが見れて、結構お得な気分になった4人なのであった・・・。



 その日の放課後―――、新一は蘭の部活が終わるまで待っていようと思っていたのだが・・・また、例によって目暮警部から呼び出しの電話がかかって来てしまったのだ。

「―――大丈夫よ、新一。わたし一人で帰るから」

 と、蘭はニッコリ笑って言った。

「けど―――また新出先生に会ったら―――」

「毎日会うわけじゃないし・・・。それに、新一、早く終わったら来てくれるんでしょう?」

「ああ、もちろん」

「じゃ、待ってるから」

 そしてまた、花のように笑う―――。この笑顔には逆らえない。

「ん―――分かった。じゃあ、なるべく早く終わらせて、迎えに来るから」

「うん」

 この二人の会話、誰も聞いていないと思ったら大間違い。他の話をしているような振りをして、実はかなりの人が聞き耳を立てていたりする・・・。そして聞いている人のほとんどがそのアツアツぶりに赤面しているのだが、当の本人たちは全く気付いていない―――という状況だったのだ・・・。


to be continued

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「恋の宿敵」の続きになります。
 この続きはまた後日アップしますね♪

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恋の宿敵

Category : Love scramble series(コナン・快蘭新)
「最近、蘭のやつ、変じゃねーか?」
 と、唐突に新一が言った。
「は?」
 きょとんとして新一を見たのはクラスメートで蘭の親友でもある鈴木園子だった。
 ここは学校の教室。時は朝。蘭は空手部の朝練で、まだ教室にやってきていなかった。
「変って?どういうこと?」
「どういうって・・・う~ん・・・なんつったらいいか・・・とにかく変なんだよ」
 園子は怪訝そうな顔をして、わけわかんない、という風に肩をすくめた。
「なんかこう・・・そわそわしてるっつうか・・・」
 必死に言葉を紡ぎ出そうとする新一をみて、園子も首を傾げてちょっと考えてみた。
「そわそわ、ねえ。そういや最近なんか楽しそうよ」
「楽しそう?」
「うん。たまにメールを見ちゃあニコニコしたりしてね」
 新一の顔に、一瞬動揺の色が走った。
「あら?あのメール・・・新一君からじゃないの?」
 園子がちょっとびっくりしたように言った。
―――ひょっとして、まずいこと言っちゃった?・・・
 と思っても後の祭りである。
「―――そのメール、いつきた?」
 平静を装いながら、新一が聞く。
「え・・・えーと・・・昨日新一君が目暮警部に呼び出されて、いなくなっちゃってから・・・かな。―――あ、あのさ、ほんとにあのメール、新一君からじゃないの?」
 と、恐る恐る聞いてみる。と、新一は仏頂面で、
「―――俺があいつにメール送るのは大体夜だよ。昼間、仕事してるときにメールなんかやってる暇 ねーよ」
 と言った。
「そっか―――。あたしが『いいわねー、ダンナからラブメール?』ってからかったら、あの子赤くなって『ちがうわよー』なんて笑ってたから、てっきり照れてるんだと思って・・・。ふーん」
 園子はちょっと意味深な含み笑いをした。
「何が言いたい?」
「べっつにー?ま、男からのメールとは限んないわよね。大阪の遠山さん・・・だっけ?彼女からかもしれないしィ。でもそれだったら赤くなったりしないか」
 園子が一人、ああでもない、こーでもないと言っているうちにチャイムがなった。そろそろ蘭もくるころだ。
「ま、がんばってね。あの子最近、特にきれいになってきたから、寄ってくる虫がウヨウヨいそうだし・・・。あの新出先生とか、ね」
 そう言って、最後に新一ににっと笑いかけてから、自分の席へと向かった。その後姿を苦虫を噛み潰したような顔でにらみながら、新一は心の中で毒づいた。
(園子の奴!何か俺に恨みでもあるのかよ)

―――それにしても、蘭は一体誰とメール交換してるんだ?―――
 新一がイライラと考えていると、蘭が教室に入ってきた。
「おはよう!」
 にっこり微笑みながら入ってくる蘭。新一は思わずその笑顔に見惚れていた。

―――あの子最近、特にきれいになってきたから―――

 さっきの園子の台詞を思い出す。そう、本当に蘭はきれいになった。昔からかわいかったしもてるほうだったが、最近特に・・・。新一と付き合っているということは皆知っているはずだが、それにもかかわらず蘭に言い寄ってくる 男がいるのだ。今だって、蘭の笑顔に見惚れているのは新一だけではなかったのだ・・・。
 蘭が、新一に気付いてにっこり笑う。

 その笑顔を独り占めしたい。他の誰にも渡したくない・・・。

 新一が蘭に話し掛けようとする前に、担任の教師が教室に入って来た。

―――チェッ・・・ま、いいか。後でも聞けるし・・・な。

 そう思い直して、改めて蘭の後姿を見た。「幼馴染」から「恋人」になって数ヶ月・・・。手を繋いだりする事にもようやくテレが無くなり、恋人らしくなってきたのだが―――

―――一体誰とメールなんか―――

 新一は心のもやもやを振り払うかのように首を振り、授業に集中することにした。
 その日の帰り、新一と蘭はいつものように手をつないで歩いていた。

―――結局、学校では聞けなかったな。園子の奴も側にいたし・・・でも・・・。

 3回。新一の勘が当たっていれば、少なくとも3回は蘭の携帯電話にメールが届いているはずだ。マ ナーモードにしている為、音は鳴らないが、それが振動した瞬間、蘭の体がそれに反応して一瞬動きを止める。が、すぐにそれを見ようとはせず、その後さりげなくトイレに立ったりするのだ・・・。

―――フン、見え見えだぜ。俺に隠し事をするなんて、いい度胸してんじゃねーか!

 蘭の家の前で、二人は足を止める。
「じゃ、また明日―――」
 そう言おうとする蘭の言葉を新一が遮る。
「ちょっと俺の家に来ないか?」
「―――ごめん、今日はお父さんに早く帰って来いって言われてるの」
 蘭がちょっと申し訳なさそうに言う。
「何か用事で?」
「うん。夜に、事務所で依頼者の人に会うことになってるんだけど、その前に夕飯、済ませちゃいたいからって・・・」
「そっか。じゃ、しょうがないな」
「ごめんね」
 ちょっと上目遣いで小首を傾げるその姿があまりにかわいくて、新一は思わず蘭を抱きしめ、その唇を奪っていた。
「―――っ」
一瞬びっくりして体を強張らせる蘭。だが、次第に力が抜けてゆき、その体を新一に預けていた。
 長く、深い口付け―――。 
 その甘さに酔い、このまま力づくで蘭を自分のものにしたい衝動に駆られる。

 ―――が、蘭の顔が息苦しそうに赤くなっていくのを見て、仕方なくその唇を放した。蘭の潤んだ瞳が新一を見つめる。
「蘭―――」
「何?」
「―――メール、誰から?」
「え!?」
 蘭は驚いて目を見開く。それはそうだろう。新一は構わずに続ける。「今日、携帯にメール来てたろ?誰から?」
 じっと目を見つめたまま聞く。蘭はちょっと慌てたように目をそらし、
「え、えっと、あの、か―――お母さんから!お母さんからよ!」
「―――ふーん」
 相変わらず蘭は嘘が下手だ。多分最初は『和葉ちゃんから』と言おうとしたのだろう。だが、もし 新一が平次にその話をしたらうそをついたのがすぐにばれてしまう。だから慌てて言い直したのだ。
 そんなことは名探偵でなくても容易に想像できた。
 だが蘭は、ばれているとは思いもしないようで、
「じゃ、もうわたし行くね」
 とにっこり笑って言った。
「ああ、じゃあな」
 新一も微笑んで、ちょっと手を上げた。蘭がくるりと新一に背を向けて階段を上がっていく。新一はそんな蘭の後姿を、見えなくなるまでじっと見つめていた・・・。

 その夜。
 毛利探偵事務所の3階・・・、蘭の部屋の窓を叩く者がいた。
 器用に窓枠につかまり、窓を叩くその男―――白いマントに白いシルクハット。口元には不適な笑み・・・そう、それは―――
「キッド!」
 窓を開けて、蘭がうれしそうに呼びかける。
「こんばんは、おじょうさん・・・。今夜は一段とお美しいですね」  と言って、キッドはニッと笑った。蘭はくすくす笑って、
「相変わらず気障ね」
 と言ったが、その顔はまんざらでもない様子。

 その様子を陰から見て、怒りに身を震わせているのは―――もちろん、新一だった。
 ―――なんでキッドが蘭のところに!?それに蘭のあのうれしそうな顔はなんだよ!?俺という彼氏 がいるのに!!

 ギリギリと歯を食いしばりながら見ている新一の目の前で、キッドと蘭はロミオとジュリエットよ ろしく、月明かりの下見つめあいながら談笑している。
 ふと、キッドの手が伸び、蘭の頬に触れた。新一の体がカッと熱くなる。

 ―――もう我慢できねー!!!
「キッド!蘭から離れろ!!」
 物陰から飛び出して叫んだ新一を、蘭が驚いて見る。
「新一!?どうして―――」
「やっぱり来ましたね。名探偵君」
 と言って、キッドはニヤッと笑ったのだった―――。

 「―――どういうことか、ちゃんと説明しろよ」
 新一が横目で蘭を睨みながら低い声で言う。
 場所は夜の公園。いくらなんでもあそこで喧嘩を始めるわけには行かず・・・。時間が時間だし、小五郎に気付かれたら面倒だ。それに―――“キッドの姿を他人に見られたらまずいから”という蘭の主張があったからだ。キッドをかばう蘭に苛立ちを覚えながらも、新一は仕方なく黙ってここまできたのだった。

 蘭は新一の視線に困ったような顔をした。
「まあそう睨むなよ。蘭が怯えてるぜ?」
 相変わらずキッドがニヤニヤしながら言う。
 その言葉に新一はむっとして、
「―――何でおめ―が蘭を呼び捨てにすんだよ」
 つかみ掛かりそうな剣幕に、蘭が慌てて間に入る。
「あ、あたしが良いって言ったのよ!」
 その言葉に、新一はますます不機嫌になる。
「ちゃんと―――説明するから、ね」
 蘭が新一をじっと見つめて言った。新一は渋々それに頷く。
「前に―――園子の家の船上パーティーで、キッドに眠らされたでしょ?」
「ああ」
 そういえばそんなことがあったな、と新一は思い出す。
「そのとき、私、キッドの素顔見ちゃったのよ」
「な!?」
「それが―――新一そっくりで―――わたし、新一がキッドなのかと思ってびっくりした・・・。でも、次の日、新一にそっくりな男の子を街
で見かけて―――その人がキッドなんだって分かったの」
「何で警察に言わなかったんだよ?」
「だって、証拠は何も無かったし・・・。それに、悪い人には見えなかったから、何か理由があって やってることなんだって思ったの」
 そう言って、蘭はキッドを見てにっこりと笑った。キッドも蘭に微笑みかける。新一はますます面 白くない。
「で!?」
 半ばヤケクソ気味に話の続きを促した。
「そのときは、それだけで―――何事も無かったの。それからは街で見かけることも無かったし。でも、新一が戻ってきて―――1週間くらいたったころかな。一人で歩いている時に、偶然遭ったのよ」


 ―――回想―――

 その時、蘭はちょうど細い道から大通りへと歩を進めたところだった。
 そして、怪盗キッドこと黒 羽快斗は、大通りから細い道へ曲がろうとしたところで―――二人はちょうど、真正面から向き合う ように、ばったり遭ってしまったのだ。
 ―――やベー!!
 快斗は内心物凄く焦った。―――が、そこは天下の怪盗キッド。表情には全く出さずそのまま通り 過ぎようとしたのだが、そのとき蘭の口から思いもよらない言葉が発せられたのだ。
「久しぶり!!」
 そう言って、蘭はにっこりと笑った。その言葉が自分に向けられたものとわかっていながら、快斗 はそれが信じられず、
「―――誰に言ってんの?」
 と、間抜けなことを聞いてしまったのだった。
「あなたキッドでしょう?」
 まるで普通に友達に話し掛けるように言われて、快斗は青くなった。 ―――ととと突然何を言うんだ、この女あ!!!
 考えるよりも先に、快斗は蘭の手を掴むと人通りの少ない細い道へと蘭を引っ張って行った。

「ちょっと痛いじゃない!」
 大通りからだいぶ離れたところまで来て、快斗はようやく蘭の手を放した。
「もう、なんなのよ?」
 蘭は訳が分からない、と言った風に頬をぷくっと膨らませて快斗を睨んだ。
「そっちこそ!なんだってあんなこと言うんだよ!?」
 と、快斗も負けじと蘭を睨み返した。
「あんなことって―――キッドって言ったこと?」
「他に何かあんのか?」
「だって、あなたキッドでしょ?船上パーティーでわたしを眠らせた―――」
「うわ――――――!!」
 突然快斗が大声を出したので、蘭が驚いて両手で耳を塞いだ。
「―――何よォ!びっくりするじゃない!」
「こ、こんな所でなんてこと言うんだ!誰かに聞かれたりしたら―――!」
 真っ赤になって怒る快斗を、きょとんとした顔で見ていた蘭は、暫しの沈黙の後、急にぷっと吹き 出したかと思うとクスクスと笑い出した。
「な、何がおかしいんだよ!?」
 快斗はますます顔を赤くして声を荒げた。
 ひとしきり笑った後、蘭は顔をあげ、快斗を見て、またにっこり笑った。
「ごめん、つい・・・素顔は案外かわいいんだなあと思ったらおかしくなっちゃって・・・」
「あ、あのなァ」
「ごめんね?」
 小首を傾げて、上目遣いで快斗を見つめる。その顔がやけにかわいくて、快斗は思わず赤くなって 顔を背けた。
 蘭はそんな快斗を不思議そうに見ている。

 ―――なんだか、こいつに怒るの馬鹿らしくなってきたぜ。
「―――どうして、今まで俺のこと黙ってたんだ?」
 少し落ち着いて、快斗が聞く。蘭は肩を竦め、
「だって、証拠、無いもの。それに―――眠らされる直前にチラッと見ただけだから、絶対っていう 確信が無かったし」
「けど・・・誰かに相談くらいしようと思わなかったのか?彼氏とか・・・」
「新一のこと知ってるの?」
「有名だからな」
「・・・そっか。でも、あの時は側にいなかったし・・・」
「いただろ?」
 快斗が、蘭を真っ直ぐに見て言った。
「―――やっぱり知ってるのね?コナン君が―――」
 そこまで言って、蘭は口をつぐんだ。
「―――まあね。気配みたいなもんがあるし。そう考えると全て辻褄が合うんだよ」
「そう。―――さすがね。でも、わたしはまだ、あの時知らなかったもの」
「全然?」
「―――疑ってはいたけど、確信は無かった。それに―――そうよ!あなた、新一にも変装してるでしょ?」
 急に思い出したように、蘭は快斗を睨んで言った。
「アハハ・・・バレてた?」
「もう。おかげでこっちは混乱しっぱなしよ」
「まァまァ・・・で?もう奴は元の姿に戻ったんだろ?」
「それも知ってるの?」 蘭が目を丸くする。
「何で俺のこと言わないんだ?」
 快斗がそう聞くと、蘭はそれには答えず、じっと快斗を見つめた。 不思議な瞳・・・優しくて、儚い、弱いけど、強い、きらきらと輝く宝石のような瞳に、吸い込ま れそうになる。
 快斗は胸の鼓動が早くなるのを感じて困惑した。
 青子に似てる。―――最初に見た時からそう思っていた。だからか?―――いや、ちょっと違うな。 似てるけど、ちがう。こいつにまっすぐな瞳で見つめられると―――なんだかドキドキしてしまうのだ。
「―――何か、理由があるんでしょう?あんなことをしている理由」
「―――どうしてそう思う?」
「あなたの目がとても優しかったから―――きっと、何か深いわけがあるんだと思ったの。園子から 聞いた怪盗キッドの話―――あれはあなたじゃない。いくらなんでもそんなおじさんじゃないもの。―――でも、あなたがあんなことをするのは、その昔のことも関係してるんじゃない?」
「・・・・・」
「別に答えなくっても良いわ。―――疑われるのは仕方ないと思うけど、わたしはあなたのこと、誰 にも言うつもりは無いわ。新一にも―――。もっとも、新一だったらそのうち気付くかもしれないけど・・・。それまでは黙ってるから」
 そう言って蘭は、にっこりと笑った。
「―――信用できない?」
 どう答えるべきか、快斗は悩んでいた。あの名探偵の彼女を、信用して良いものかどうか―――。
  だが、今まで誰にも言っていないというのも事実のようだ。それなら・・・これからも、言わないだろうか?
「どうしたら信じてもらえる?」
 蘭は小首を傾げて聞いた。
 その時、快斗の頭にある考えが浮かんだ。
「―――そうだな。交換条件っていうのはどう?」
 そう言って、快斗はニヤリと笑った。


「交換条件だって?」
 新一が訝しげに言った。
「そ。ま、そんな必要なかったかもしんねーけど、一応な」
 そう言って快斗は肩を竦めた。
「―――で?どんな条件なんだ?」
「新一―――怒らないで聞いてね?」
「―――俺が怒るようなことなのか?」
 蘭がちょっと困ったような顔をすると、快斗がすかさず言った。
「大丈夫だって、蘭。蘭は名探偵のことが心配なだけなんだからさ。それに、言い出したのは俺なんだし」
「―――で?何なんだよ?」
 新一がイライラと言う。
「ボディーガードだよ」
「ボディーガード?―――蘭のか?」
「ちがうちがう、名探偵のさ」
「は!?俺!?」
 新一は驚いて目を見開いた。
「そ。やっぱ探偵なんかやってると危険と隣り合わせだろ?特に“工藤新一”は有名な名探偵。逆恨 みされることだってあるだろうし、恋人としては心配だよな。でも、蘭がずっとおまえについて回る ことはできない。そこで、俺の出番ってワケ。―――おまえが警察に呼び出されたら、蘭がメールで 俺に知らせてくれることになってるんだ。で、俺はおまえの側で、気付かれないように見守ってるっ てワケ。途中経過なんかを、時々メールで送りながらね」
 ―――なるほど、それでメール・・・でも、ちょっと待てよ。今日、俺はずっと学校にいたぞ。
「・・・気付いちゃった?」
 キッドは楽しそうにクスクスと笑う。
「実は、メール交換したり、夜、直接蘭の家に報告に行ったりしてるうちになんか気が合っちゃってさ。用事が無くってもメール送ったり、会いに来たりするようになっちゃったんだよね」
 とキッドは悪びれもせずに言う。
「あの・・・黙っててごめんね、新一」
 蘭ははにかむように言った。ちょっと上目遣いで見るその表情はとてもかわいく、許してあげたい 気持ちにもなるのだが―――
「ボディーガードなんか必要ね―よ。余計なことすんな。―――それに、蘭が警察に言っちまったところで、どうにでも誤魔化すことができるだろ?何でわざわざ交換条件なんか―――」
「まーね。でも、そのほうが蘭が安心するんじゃないかと思ったんだよ。―――なんかほっとけない んだよなー、蘭ってさ」
 と、キッドが言うと、蘭はちょっと照れたように頬を染めた。
「ま、そーゆーワケだから、あんまり蘭を責めないでやってくれよ」
 キッドは新一にウィンクしてみせると、さっとマントを翻し
「じゃ、またな」
 と言って、二人に背を向けた。
「あ、おい!ちょっと待てよ!!」
 と新一が言ったときには、すでにキッドの姿は無かったのである。


 
「新一~、そんなに怒んないでよ~」
 ムスッとして腕を組んだままベンチに座り黙ってしまった新一に、蘭が一生懸命謝っている。
「でも、ね、キッドって悪い人じゃないんだよ。ちゃんと新一がどんな様子だったかわたしに報告し てくれて・・・わたしを心配させないようにしてくれたんだよ」
「―――それが大体気にいらねーっつってんだよ。俺に黙ってそんなこと―――」
「だって言ったら怒るじゃない」
「当たり前だ!!ボディーガードなんていらねーんだよ。それも、よりによって怪盗キッドが・・・ あいつは、泥棒なんだぜ!?」
「わかってるわよ・・・」
「どーだかな―――それに、最近はあいつが寄越すメールを楽しみにしてんじゃね―のか?今日、あいつが来た時だって妙に嬉しそうだったじゃねーか」
「そんなこと・・・」
「俺に隠れてあいつとこそこそ逢って・・・。ったく、どういうつもりなんだよ!」
 新一の怒りはなかなかおさまらない。
「ご、ごめんって・・・でも、別に話したりするだけだから・・・」
「当たり前だろ!?それ以上のことがあったら許さね―よ」
「そ、それに・・・キッド、好きな女の子がいるのよ」
「え?」
 蘭の言葉に新一が意外そうな顔をする。ようやく自分の方を見てくれたことにホッとし、蘭は微笑 みながら続けた。
「幼馴染の女の子でね、わたしにちょっと似てるらしいんだど・・・。キッドね、その子の話ばっかりするのよ。よく喧嘩するらしくって、その愚痴とか・・・うまくいってる時は、とっても嬉しそ うだし。ホント、普通の男の子よ。新一とも結構気が合うんじゃないかと思うんだけど・・・」
「ジョーダンじゃねーよ!!何で俺が―――」
 と、また怒って言ったが、キッドに好きな女の子がいると分かって、少しホッとしているようだった。表情が幾分やわらかくなって、蘭を見る。
「―――もう、隠してること無いだろうな?」
 じろっと蘭を睨む。
「うん。もう無いよ。―――ホント、ごめんね。もう隠し事しないから―――」
「絶対だぞ」
「うん、約束する」
 蘭はニッコリと笑って頷いた。
 夜の公園でほの暗い街灯の下、微笑む蘭はまるで白く輝く天使のように見えた・・・。

 新一は、そっと腕を蘭の肩に回すと、そのまま自分の方へ引き寄せ、静かに唇を重ねた。蘭もされるがままになっている・・・。
 徐々に深くなっていく口付け―――。蘭の舌に自分の舌を絡ませ、口の中を貪るように味わう。
 時々、蘭の口から漏れる甘い吐息と、甘い髪の匂いに新一の理性がだんだん溶かされていくのを感じた。
 が、しかし・・・
 ―――幾らなんでもここじゃまずいよな・・・。初めてなんだし、せめて俺の家とか・・・。そんなことを考えながら唇を放し、蘭の潤んだ瞳を見つめる。
「―――蘭、これから、俺んち来ない?」
「これから?」
 蘭が驚いて聞き返す。
「ああ―――。だめか?」
「う・・・ん―――。お父さんに黙って出てきちゃったし・・・。明日も学校あるでしょう?」
「・・・そうだな」
 新一はがっくりと肩を落とした。
「ごめんね」
 申し訳なさそうに、蘭が言う。
「いや、良いよ。そうだよな。平日はまずいよな、やっぱ―――。じゃ、週末にでも泊りに来いよ」
 なるべく明るく言う。実際、週末は蘭が新一の家へ泊りに行くことが多い。
 蘭もその言葉にニッコリ笑って、
「うん、分かった」
 と言ったのだった―――。


 蘭を家まで送っていき、新一が自分の家の門を開けたのはもう夜中の12時を回っていた。小さくため 息をつきつつ門を開け、中に入った時、ふと、後ろに人の気配を感じて振り向いた。
「よ、名探偵。さっきはどうもな」
キッドが不敵な笑みを浮かべ、門に寄りかかって立っていた。
「―――なんで、こんな物置いてった?」
 新一がジーパンのポケットから出したのは小さなカードだった。
 それには“今宵、あなたの大切な蘭の花を頂きに参ります”と言う内容が書かれていた。これを見 たから、新一はあんな時間に蘭の家まで行ったのだ。
「好きな子がいるんだろ?」
「蘭に聞いたのか。―――ただの幼馴染だよ。蘭が勝手に勘違いしてんだ」
「―――蘭のことはどう思ってるんだ?」
 キッドは、ニッと笑って新一を見返したが、その目は笑っていなかった。
「彼女は、俺の大切な宝石だよ。―――一緒にいると楽しいし、あの笑顔を見てると、ドキドキする ―――。できれば攫っちまいたいくらいだが―――」
 新一は、射るようにキッドを睨んでいる。キッドはさり気なくその視線をかわし、
「今はまだ、その時じゃないな。―――俺が欲しいのは蘭の心だ。無理やり奪うことはできない」
「蘭は渡せねーよ」
「ああ。でも、俺は諦めない。―――今日は、このまま隠しておくのは蘭が気の毒だったし、フェア じゃないと思ってね。今度行くときは予告状なんかださね―ぜ」
 と言って、キッドはニッと笑うと、門の上にふわりと見を躍らせた。
「じゃーな、名探偵。また会お―ぜ」
 新一が何か言おうとしたが、口を開いたときにはもう、キッドの姿はそこには無かったのである・・・。
「ちっ、かっこつけやがって・・・」
 一人呟くと、新一はため息をつきつつ、家の中へと入って行った。

「本当はぜーんぜんフェアじゃないんだよなァ」
 と言ったのは、工藤家の庭にある大きな木の天辺に立っているキッドである。
「あっちはすでに恋人同士・・・全く、あんな濃厚なキスシーン見せ付けやがって」
 キッドは公園での一部始終を見ていたのだ。キッドにとって、それは意外なほどショックな光景だ った。二人の関係はわかっていたはずなのに・・・。キッドの胸にジェラシーと言う名の炎が燃え上がっていた。今までに感じたことの無い、鈍い痛み・・・。青子に対する気持ちとは、明らかに違うものだった。
「だが、本当の勝負はこれから・・・。名探偵、覚悟しとけよ」


 こうして、戦いの火蓋は切って落とされた・・・。
 名探偵工藤新一と怪盗キッドの蘭をめぐる恋のバトルは、今、始まったばかり―――。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
快蘭新のお話です。
気に入っていただけましたら、下のバナークリックお願いいたします!

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サイト、閉鎖しました。

Category : diary
急なことでごめんなさい。

とりあえず、これから少しずつ、今までサイトで載せていた小説をアップしていく予定です。
心機一転、がんばりますので、楽しんでいただければ幸いです。

サイト閉鎖について

Category : diary
もお疲れちゃいました。

BBSを見てくださった方にはなんとなく分かっていただけるかな。
以前にも、似たような書き込みをされたことがありました。
更新が遅れていることは事実ですし、楽しみにしてくださってる方には本当に申し訳ないなと思っていました。
でも、だからといって、「カス」呼ばわりされる覚えはありません。

以前は、何度かレスしたところ謝罪の書き込みがあったので、その人の書き込みは全て削除させていただきました。

そのときにこのブログにも書いたとおり、書きたいと思ってすぐにかけるわけではありません。
今は育児・家事・仕事に終われる日々で、お話を考える暇も心の余裕もありません。
書きたいという気持ちはあるけれど・・・
それを全ての人にわかって欲しいというのはわたしのわがままです。
でも、どうしようもないことです。

今回の書き込みを見て、なんだか疲れてしまいました。
なかなか自分のサイトを見る暇もなく、漸く時間ができて見てみればあの書き込み・・・。

いろんな人に、申し訳ないという気持ちはありますが、もう限界です。
わがままでごめんなさい。

近日中に、サイトは閉鎖します。
でも・・・。
わたしも、いろんな人のサイトの閉鎖を見て、とても寂しい気持ちになったことがあります。そういう気持ちは充分にわかるつもりです。

このブログは、続けていきたいと思います。
それで、おそらくゆっくりではありますが、今までサイトに載せてきたお話を1つずつこちらのブログに移していきたいと思います。

今、わたしにできるのはこんなことくらいです。
今まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

今とても落ち込んでいるので・・・
気持ちがちょっとでも浮上してきましたら、また近況報告させていただきます。

それでは・・・。