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*このブログは名探偵コナン・ごくせん・花より男子・君に届け&ゲーム(ラブレボ・新撰組など)の二次小説のブログになります。
*このブログは管理人個人によるファンサイトです。 原作者や出版社等とは何の関連もありません。
*あくまでも管理人の二次世界の小説ですので、人によってはイメージに大幅なずれがある場合もございますのでご注意ください。
*閲覧については自身の責任においてお願いいたします。
*このブログについての誹謗中傷・クレームなどの書き込みはおやめください。
*このブログの無断転載複製を禁じます。
*万が一このブログをお読みになって不快感を感じられたとしても責任は負いかねますのでご了承ください。

Triangle vol.2 ~快蘭新~

Category : novels(コナン)
12月31日、大晦日。

 「蘭ちゃん、おはようv」
「あ、おはよう、快斗くん」
 にっこりと微笑む蘭の笑顔に、思わず快斗の頬も緩む。
「今日は何するの?」
「今日は、昨日出来なかったところの掃除をしながら、おせち料理の準備を」
「ふーん。蘭ちゃんてなんでも出来るんだな」
 快斗が感心したように言う。
 昨日は、あれから家中の大掃除を蘭がほとんど1人でやったのだ。工藤家は広い。1人では大変だろうと快斗と新一も手伝ったのだが、それも必要なかったんじゃないかと思うくらい、蘭の働きぶりは見事なものだった。そして、その日の夜作った食事も、そのまま店に出してもおかしくないくらいのもので・・・。
 ―――いつでも嫁に来れるな。
 と、2人同時に蘭との新婚家庭を想像してしまったのだった。

「なあ、蘭ちゃんてさ」
「え?」
「彼氏とか、いる?」
「え・・・いないけど・・・」
 ちょっと照れたように答える蘭が、また可愛かった。
「へえ、そんなに可愛いのに?」
「からかわないで。わたし、もてないもん。女子高だし」
「からかってなんかないって。そっか、女子高か。じゃ、デートとかしたことは?」
「・・・ない、よ」
「どっか行ってみたいとことかってある?」
 聞かれて、蘭はちょっと小首を傾げて考えるそぶりをする。
 ―――やっぱ可愛いなあ。新一より早く起きてきて正解だぜvv
「トロピカルランド、かな・・・」
「トロピカルランド?」
「うん。友達となら行ったことあるんだけどね。恋人といったら、もっと楽しいかなって、いつも話してるの」
「へえ・・・。じゃあさ、今度俺と一緒に行かない?」
 快斗がにっこり笑って言うと、蘭が、驚いて目を見開く。
「え・・・快斗くんと?」
「そ。デートしようよ」
 その言葉に、蘭の顔が真っ赤に染まる。
 ―――くうーーーっ、可愛いぜ!
 あまりの可愛さに、その頬に手を伸ばそうとした、その瞬間―――
『バシッ!』
「いってえ!!」
 手を思いっきり弾かれ、快斗が悲鳴を上げる。
 そんな快斗を冷ややかに見つめ、2人の間に割って入るように現れたのは、もちろん新一だった・・・。
「何すんだよ、新一!」
「うっせえ、てめえこそ何してやがんだよっ、いつもは休みだと昼過ぎまで寝てやがるくせに」
「ふん、お互い様だろ?」
 2人の間に、ばちばちと火花が散った。
「あ、あの・・・新一くん、おはよう」
 2人を見て困ったような顔をしながらも、とりあえず挨拶をする蘭。
「おはよう、蘭ちゃん。良く眠れた?」
「うん。あんな素敵なお部屋使わせてもらえるなんて思わなかったから、ちょっと緊張しちゃったけど」
 無邪気ににこにこと笑う蘭が可愛くて、2人して見惚れる。
 蘭の部屋は、鍵のついている客間。冬休みに入ってすぐ、アメリカの両親の依頼で業者が鍵を付けにきていたのだ。その時は何でそんなことするんだろうと、不思議に思ったのだったが・・・。
「あの、朝ご飯用意したの。今持って行くから2人とも座ってて?」
「あ、俺手伝うよ」
 と快斗が言えば、
「俺も。自分の分くらい運ぶよ」
 と新一も進み出る。
「ありがとう、2人とも」
 と、蘭に微笑まれ、途端に2人とも顔のしまりがなくなる。まさに似たもの同士、といったところである・・・。

「買い物?」
 朝食を食べながら、今日の予定などを話していて、蘭が買い物に行くと言い出した。
「うん。おせち料理の材料、昨日来る前に買っておいたんだけど、まだ足りないものがあって・・・」
「そっか。なら駅前のスーパーが良いんじゃないか?あそこ、大晦日は安売りやるし」
 と新一が言うと、快斗が、
「そうだな。けど、すっげー混んでて大変だぜ?俺も一緒に行くよ」
 と、身を乗り出す。
「それなら俺も行くよ。荷物持ちがいたほうが良いだろう?」
 新一も負けじと身を乗り出す。
「え、えっと、そんなに荷物多くないから大丈夫だよ?それより、2人とも今日は予定とかないの?」
「「全然」」
 という揃った答えに、蘭は苦笑いする。
 仲が良いのか、悪いのか・・・。


 3人で仲良くお買い物・・・というわけには行かず、スーパーまでの道中や、スーパーの中でも何かとぶつかる快斗と新一。そんなに仲が悪いなら一緒に行かなければ、と、2人の自分に対する気持ちにまったく気付いていない蘭は首を捻っていた。それでも、混み合うスーパーで、「こんなのいる?」と持ってくるものは決まって2人同じもの。そして「こっちのほうが良い!」と言い合ったりしているのを見て、蘭はまた苦笑い。
 ―――結局、本気でやりあってるわけじゃないのね。
 と、双子の無邪気なじゃれあいと、結論を出したのだった。

 無事、買い物を済ませ、外に出た頃には3人ともややバテ気味で。
「やっぱり混んでたね。ごめんね、2人とも。つき合わせちゃって」
 とすまなそうな顔をする蘭に、2人は同時に微笑んで見せ、
「気にすんなよ、こんくらい」
「そうそう、どうせ暇なんだし」
 と言った。そんな2人の優しさに、蘭の心も軽くなる。
「ありがとう・・・。ね、2人とも彼女とかいないの?」
 突然笑顔でそう聞かれ、ドキッとしたような表情になる2人。
「いねえよ、俺は。快斗のことはしらねえけど」
「!何言ってんだよ、そんなのいねえことくらい知ってんだろ?」
「だっておめえ、この間隣のクラスの子に告白されてたろ?」
「あ、あれは、断ったよ!新一こそ、3年生の結構きれいな人に告白されてたじゃねえか」
「そんなの断ってるに決まってんだろ?」
 2人が、ややむきになって言い合いをするのを、蘭はきょとんとしてみていた。
「へえ、2人とももてるのね。かっこいいもんね、2人とも。どうして彼女作らないの?」
 という蘭の言葉に、2人はちょっと顔を見合わせる。
「どうしてって・・・付き合いたいと思う人がいない、からかな」
 と新一が言うと、快斗も頷き、
「そうそう。なかなかそういう人って現れなくって。けど、俺蘭ちゃんなら全然オッケーなんだけど」
 と言い出したので、蘭は真っ赤になり、新一は焦った顔をする。
「!何言ってんだよ、おめえは!」
「何って、口説いてるに決まってんじゃん」
 としれっと言う快斗を見て、蘭は目をぱちくりさせてから、
「吃驚した・・・。一瞬本気かと思っちゃった」
 と言った。その言葉に2人は目が点になる。
 ―――俺、本気で言ったんだけど・・・。蘭ちゃんてひょっとしてすげえ鈍くねえか?
 ―――とりあえず、冗談だと思ってくれたみてえだな。あっぶねえ。それにしても、超鈍感だな・・・。

 この恋を実らせるには、目の前のライバルに勝つという事以外に、蘭にどうやって自分の気持ちをわかってもらうか、という問題もあるということを、認識した2人だった・・・。


 その日の夜。
 ようやく大掃除も終わり、おせち料理の準備も終わろうとしていた。
 3人は遅めの夕食を軽く済ませ、リビングでテレビを見ながらくつろいでいた。他愛のない話をしながら、和やかな時間が過ぎる。この2日間ですっかり気持ちもほぐれ、蘭もまるで昔からの友達のように2人と接していた。明るい笑い声を上げながら楽しそうにしている蘭に見惚れつつ、密かに火花を散らせている双子には、まったく気付いている様子はなかったが・・・。
 
「お、もう11時半か」
 新一が、ふと時計を見て言った。
「ああ、後30分で新年だな」
「そうだね」
「な、ちょっと外いかねえか?」
 新一が、2人を見て、にっと笑う。
「え?外」
 蘭が不思議そうに首を傾げる。快斗は、何か思いついたようで・・・
「ひょっとして、あそこに行くのか?」
「そ。蘭ちゃんに見せてやろうと思って」
「いいな、それ」
 快斗もにやりと笑うと、席を立った。
「ね、どこに行くの?」
「それはついてからのお楽しみ。蘭ちゃん、あったかいかっこしてきなよ、寒いからさ」
 と快斗に言われ、不思議に思いながらも蘭は外出の支度をしたのだった。


 2人に連れられ、蘭がやってきたのは、20分ほど歩いたところにある小高い丘の上。
「わあ、いい眺め」
 蘭が、そこから見える夜景を見て、嬉しそうな声を上げた。
「だろ?ちょっとした穴場なんだ。けど、本当の目玉はこれからさ」
 と、快斗が言うと、新一もにっと笑って、
「後5分。カウントダウンを待とうぜ」
 と言った。
 蘭は、不思議そうな顔をしながらも、言われたとおり黙って待つことにした。人気のない丘から見下ろす夜景。それだけでも充分きれいだと思っていたが・・・

 「―――そろそろだな」
 新一が、腕時計を見て言った。同じく快斗も腕時計を見る。
「―――カウントダウンだ・・・10,9,8,7,」
「6,5,4,」
 自然に,3人の声が重なる。
「「「3,2,1―――」」」
 その時,3人の目の前に現れたのは・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 第2話です~♪1話目もアップしてますので、こちらを先に読んじゃった人は1話目も見てくださいね♪

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Triangle vol.1 ~快蘭新~

Category : novels(コナン)
 12月30日。この日は工藤兄弟にとって、忘れられない日となる。

 「母さんたち、遅くねえか?」
 リビングのソファに寝そべってテレビを見ていた新一が言った。
 同じくリビングでマジックの練習をしていた、新一の双子の弟快斗が、新一を見る。
「ん?どうせ途中で買い物でもして時間かかってんだろ?」
 快斗の気のない返事に、新一も「かもな」と肩を竦めた。2人が中学生になったときにアメリカへ渡った両親。それから4年間、兄弟2人だけで暮らしている。その暮らしにも慣れ、たとえお正月と言えども両親が帰ってきても来なくても、大して気にしないようになっていた。かえって、口うるさく言う人間がいないほうが気楽だ、などと思っていたのだ。
 この兄弟、さして喧嘩をすることもなくずっと仲良くやってきたのだが・・・。それを揺るがす存在が、今まさに訪れようとしていた。

『ピンポー――ン』

「お、来たみてえだな」
 快斗がリビングを出て、玄関に向かう。新一はソファに起き上がったものの、そこから動こうとはしなかった。
「おっかえりー!」
 快斗は、玄関のドアを開けると同時に、得意のマジックで、そこに立っていた人物に花吹雪を浴びせたのだが・・・。
「きゃあっ」
「へ?」
 聞こえてきたのは、若い女の子の声。いくら2人の母親が元女優で若く見えるとはいえ、この声は明らかに母親の有紀子のものとは違っていた・・・。
「どうした!?」
 声を聞きつけ、新一もリビングから飛び出してくる。
 花吹雪が漸くおさまり、そこへ現れたのは・・・
「あ・・・びっくり、した・・・」
 大きな瞳を更に大きく見開き、2人を見つめる髪の長い少女・・・。
「あ、すいません、あの、工藤新一さんと、快斗さん、ですよね?」
 ふんわりと微笑みながら、その少女は言った。
 快斗と新一は、暫し時間を忘れ、その少女に見惚れていた。うっすらと頬を染め、ぽかんと口を開け・・・。そう、この瞬間、2人はこの少女に恋をしてしまったのである。


「家政婦協会?」
 少女―――名前は毛利蘭といった。―――をリビングへ通しソファに座らせ、2人はその向かい側に並んで座った。
「はい。そこへ工藤有紀子様からご依頼があって・・・わたしがこちらへ来ることになったんです」
「けど、君ずいぶん若いんじゃねえか?どう見ても俺らと同じくらいに見えるけど」
 と、新一が言うと、蘭はちょっと恥ずかしそうにはにかんだ表情を見せた。その表情がまた可愛く・・・2人は同時に頬を染めた。
「はい・・・。実は、わたし高校2年生なんです。本当は、高校生は雇ってくれないんですけど・・・。協会の会長さんとわたしの母が古い友人で、冬休みだけならっていうことでアルバイトさせてもらうことになったんです」
「それで、依頼って、どういうのなの?」
 と快斗が聞く。
「お家の大掃除と、お正月のおせち料理の準備です」
「ってことは・・・母さん、今年は帰ってこねえのか」
 と新一。
 2人は顎に手を当て、頭をフル回転させる。親がいないってのは願ってもないことだ。が、問題はこいつ・・・。
 ちらりと相手の顔色を伺う。
 なにせ双子の兄弟である。2人が同時に同じ女の子を好きになってしまったことにはとうに気付いていた。お互い、絶対に負けたくない相手だ。さて、どうするか・・・
「あの・・・?」
 蘭が不思議そうな顔をして、2人の顔を見比べる。
「あ、ごめん。え―と、蘭さんって、呼んで良いかな?」
 と、新一が優しい笑みを浮かべて言うと、蘭も安心したようににっこり笑う。
「はい」
 ―――すっげー、可愛い・・・
「おせち料理ってことは、正月までここにいるの?」
「はい。一応1月2日までこちらで働かせていただくことになってます。あの、何か不都合がありますか?」
「いや、全然。俺はいつまででもかまわねえよ?」
 と、新一が優しく言うと、蘭の頬がほんのり染まった。それを見て、快斗が新一をじろりと睨む。
 ―――やろお、点数稼ぎしやがって・・・
「ところで蘭ちゃん、堅っ苦しいから、その敬語止めようぜ?」
 と、今度は快斗が身を乗り出すように蘭に話し掛ける。
「え、でも・・・」
「俺ら同い年なんだしさ、もっと気軽にいこうよ。名前も、快斗さんとかじゃなくって、快斗で良いし」
「そ、そんなわけには・・・」
 蘭が、驚いて目を見開く。
「じゃ、せめて快斗くんって呼んでよ。俺、堅苦しいの苦手なんだ。ね?」
 快斗の親しみを込めた笑顔に、蘭もつられて笑顔になる。
「はい。じゃあ・・・快斗くん」
 快斗に向けられた笑顔を見て・・・今度は新一が快斗を睨む。
 
 さて、この戦い、どちらに軍配が上がるのか。それは神のみぞ知る、か・・・・・?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 本当は昨日アップするはずだったこのお話。何年か前にサイトでリアルタイム方式(?)ということで、30日から4日間かけて、アップしていった作品です。
これは1日遅れちゃったので、今日は2話続けてアップします♪

ヒミツ ~快蘭新~

Category : novels(コナン)
 「は!?蘭がいなくなったァ!?」
 新一が突然大声を上げ、周りにいた人々が新一を白い目で見る。
「ちょ、ちょっと新一君、声大きいわよ!」
 そのこが慌てて周りをきょろきょろしながら声を潜めるが、新一はそれどころではない。
「いなくなったってどういう事だよ!?園子!」
「だからァ、恭子がジュースでも飲みたいねって言い出してェ、蘭が、ちょうどコンビニに行く用事があったから買ってきてやるって言ったのよ。で、すぐそこのコンビニに行ったんだけど・・・」
「帰ってこねえのか」
「そういうこと」
 園子がこくんと頷く。
 新一は頭を抱えた。
 ―――ったくゥ、何やってんだよ、あいつは。
「ごめん、新一君。あの子が方向音痴だって分かってたんだけど・・・まさかすぐそこなのに、迷うなんて思わなくって・・・」
 園子の言うことはもっともだった。何しろ、園子らの泊っている旅館からそのコンビ二まで、ほんの50メートルほどしか離れていないのだから・・・。
 新一達は帝丹高校の修学旅行で、京都に来ていた。新一、蘭、園子は同じグループで、1日目、2日目と無事に楽しく旅行をしていた。そして2日目の夜、グループで行動するという制限つきで、自由行動が許されている。新一達も7時にグループ全員で集まり、夜の京都に繰り出すはずだったのだが・・・
「あいつの携帯は?」
「わたしが持ってる。あの子、すぐ戻るからって言って、置いてっちゃったのよ」
 新一はハアッと溜息をついた。
「―――とにかく、探しに行かないと・・・。園子、オメエはみんなと一緒に行動しろ。バラバラになるのはまずい」
「新一君は?」
「俺は、前に事件がらみでこっちに来たことあっから大丈夫だよ。―――何かあったら、携帯に電話くれ」
「うん、分かった。気をつけて―――」
 と、園子が全部言い終える前に、新一は走り出して行ってしまったのだった・・・。
「はや・・・。蘭のこととなると、ホント、人変わるわね」
 と園子は呆れたように言ったが、すぐに
「おっと、わたしも行かなきゃ」
 と言って、旅館のロビーに集まっていた同じグループの仲間の所へ駆けて行った。
 いなくなった、と入ってももう小さな子供ではないのだから、それほど心配しなくても・・・と思うのだが、新一の心配はそれとは違う所にあって・・・。
 ―――あいつを1人で歩かせたりしたら、ゼッテ―ナンパされんじゃねーか!
 というわけで・・・。蘭をナンパ男たちから守るべく、必死に探し回るのだった・・・。


 「は?青子がいない?」
 快斗が、素っ頓狂な声をあげる。
 こちらは、やはり京都に修学旅行にやって来た快斗達江古田高校の生徒たちが宿泊している旅館。
「そうなのよ。“トイレに行ってくる”って行って1人で出てったきり・・・。もう集合時間なのにィ」
 と困った顔で言うのは、青子の親友恵子だ。
「ったく、しょうがね―なァ、あいつは・・・。分かった、ちょっと俺その辺探してくっから、オメエ
らもうちょっとここで待ってろよ。まだ集合時間までに5分位あんだろ?」
「うん、そうね。分かった」
「じゃあな」
 快斗はひらひらと手を振って、外へと出て行った。

 
 「っとに世話の妬ける奴だなあ。高校生にもなって迷子になるなっつ―の」
 快斗はぶつぶつ言いながら、夜の京都の町を歩いていた。
「離してください!」
 ―――あん?
 突然聞こえてきた女の声。快斗が足を止め、声のしたほうを見ると―――。繁華街を少し外れた暗く細い横道に、女子高生と、3人の男たち―――。
 ―――!あの子は・・・
 それは、見覚えのある女の子だった。艶やかな長い黒髪、大きな瞳の可愛い顔立ち、すらっとした体躯のその女子高生は・・・。
 ―――毛利蘭、だったか・・・。工藤新一の彼女じゃねえか。何でここに?あいつらも修学旅行か?
 いかにも柄の悪そうな3人の男たちは、しつこく蘭に絡んでいる。
「そんなつれないこと言わんで、まあ付き合えや」
「ここらの楽しいとこ教えたるさかい、な」
「ねーちゃんみたいなベッピンさん、1人であるいとったら危険やろォ?」
「オメエらのほうがよっぽど危険だろうが」
 いつのまにか、男たちのすぐ後ろに立っていた快斗が低い声で言った。
「うわっ、なんじゃおまえ」
「いつの間に―――なんや、このねーちゃんのこれか?」
 男が、いやらしい笑いを浮かべ、親指を立てる。
「オメエらの知ったこっちゃね―よ。良いからその手、離せよ」
 蘭の手を掴んでいた男の手を捻り上げる。
「いてェ!何すんねん、このどアホ!」
「アホにアホって言われたくねーよ!と」
 言いながらその男を突き飛ばし、そばにいた男にぶつけ2人一緒にその場に倒れた。
「や、やろォ」
 もう1人の男がちょっと怯んだ隙に、快斗は蘭の手を取り、走り出した。
「ちょ、ちょっと!」
 蘭は驚いて目を丸くしている。
「良いから走れ!」
 快斗に怒鳴られ、蘭は追求を止め、素直に走り出した。
「ま、またんかい!」
 後ろのほうで男の声がしたが、2人とも構わず走りつづける。
 人通りの多い、明るい通りまで出てようやく快斗は足を止めた。
 さすがに蘭はまだ呼吸が整わず、肩で息をしている。
「だいじょうぶか?」
 と快斗が聞くと、蘭はこくんと頷いた。
「ありがとう、助けてくれて」
 と言って、ニッコリ笑って顔を上げ、快斗を見るとちょっと目を丸くした。
「あ、あなた―――」
「え?」
 快斗はドキッとした。―――ばれてはいないはずだが。以前、蘭に変装した怪盗キッドが自分だということ・・・。
「何?」
「あ―――ううん、ちょっと知ってる人に似てたから・・・。あの、あなた、東京の人・・・?」
「ああ。江古田高校の3年。修学旅行で来てるんだ。おたくもだろ?」
「うん。わたしは帝丹高校。あの、名前聞いても良い?わたしは毛利蘭」
「俺は黒羽快斗。よろしくな」
「よろしく!さっきは本当にありがとう。助かりました」
 ふわり、と微笑む。快斗は、ちょっと赤くなって目を逸らした。
 ―――可愛いじゃん・・・。あいつらが騒ぐのも頷けるな・・・。
 快斗は、蘭が新一の彼女であるということ以外でも蘭のことを知っていた。
 それは以前、空手部の連中が話しているのを偶然聞いて―――。

 「なァ、今度の大会、カメラ持って来いよ」
「分かってるって。毛利蘭の写真、取るんだろ?」
 その言葉に、快斗はふとそちらを見た。
 ―――毛利蘭って、あの毛利蘭?
「毛利?」
 と、快斗は思わず言った。
 話をしていた空手部の男が快斗を見る。
「なんだよ、黒羽、知ってんの?」
「あ、いや・・・聞いたことがあるような気がして・・・」
 と、あいまいに誤魔化す。
「ふーん?彼女、去年の空手の都大会で優勝したんだけどさ、すげー可愛くって、ちょっとしたアイドルなんだぜ、空手界の」
「へェ、そんなに可愛いんだ?」
「可愛いし、きれいだし、強いし、な。今回最後の大会だから、ばっちり写真とっとかないと!」
 妙に気合を入れて話をしている連中を見て、
 ―――オメエら、気合入れるところが違うだろ・・・
 と思ったのだった。


 「こんな夜に女の子の1人歩きは危ないぜ?」
 と、快斗が言うと、蘭は恥ずかしそうに笑った。
「そんなか弱くもないけど・・・一応空手やってるし。でも、あそこで空手技使ったらまずいものね」
「停学になるとか?」
「それくらいなら良いけど・・・。今後、修学旅行で夜の外出禁止、とかになったらいやだし」
 快斗はちょっとビックリした。停学を“それくらい“と言ってしまうのもすごいが、そんなことを考えて、空手技を出さなかったのか・・・。
「けど、何で1人で?」
 と快斗が聞くと、
「それが・・・なんか、道に迷っちゃったみたいで・・・」
 頬を赤らめてそう言う蘭。
 ―――こっちも迷子かよ。
 と思ったとき、快斗の携帯電話が鳴り出した。
「おっと。―――もしもし―――は?いた?どこに?―――裏口に行ってたァ?何で・・・」
 電話をしてきたのは恵子。迷子になったと思っていた青子が、実は何を勘違いしたのか、裏口に行っていたとのこと。
「―――ったく・・・え?俺?あ―、今ちょっと離れちまってるな―――いいよ。オメエらだけで行ってろよ。俺はあとで合流するから。―――じゃあな」
「―――友達を探してたの?」
 快斗が電話を切ると、蘭が言った。
「ああ。ちゃんといたみてーだけど。―――なァ、え―と、毛利さん、携帯電話持ってね―の?」
「うん。実は、友達に預けたままなの。すぐに戻るつもりだったから・・・」
「じゃ、俺の貸してやるからさ、電話してみろよ。友達が心配してんじゃねーの?」
 と言って携帯電話を差し出すと、蘭はニッコリと笑って、それを受け取った。その笑顔を見て、思わず頬を染める快斗。
 ―――なんつー無防備な・・・。あいつも苦労するな・・・。
「―――もしもし、新一?」
 電話した先は、やはり新一。
「蘭!?オメエ、どこにいんだよ!?」
「ご、ごめ・・・道に迷っちゃって・・・」
「知らねー土地で1人歩きなんかすっからだよ。ったくゥ・・・で、大丈夫なのか?」
「う、うん」
「今、どこに―――」
 と言いかけ、新一は突然言葉を切った。
「新一?」
「・・・オメエの携帯、園子が持ってんだよなァ」
「あ、うん。だからなかなか連絡できなくって・・・」
「んなことは良いけど、今、どっからかけてる?公衆電話じゃねーだろ?」
「うん、えーと・・・」
 蘭はちょっと詰まった。変な男たちに絡まれたことを話すと、新一はすごく心配するだろう。でも、今快斗といることをどうやって説明しよう?
 と思って黙っていると、快斗が声をかけてきた。
「何?彼氏にかけてんの?」
 その声は、新一にも聞こえ・・・
「―――おいっ、今の誰だ?」
「え、あ、え―と、あの、黒羽くんっていって、その、さっきちょっと・・・知り合って」
「知り合ったってなんだよ?どうしてそいつとオメエが一緒にいんだよ?」
「えっとォ、実はさっき変な人たちに絡まれて・・・で、助けてくれたのが黒羽くんで・・・」
 後ろで、快斗がニヤニヤと笑っていた。
 ―――くくっ、おもしれー。あの名探偵も彼女のことになると必死だな。
 新一が大きな声を出すので、快斗にも聞こえるのだ。
「―――で?今、どこにいんだよ?」
 新一がイライラと言う。
「どこって―――どこだろ?黒羽くん、分かる?」
「ん―?俺もよくわかんね―けど・・・蘭ちゃんが泊ってるとこってどこ?」
 新一に聞こえるように、わざとなれなれしく名前を呼んでみる。
「―――おい、蘭、そいつと電話変われよ」
「え?でも―――」
「俺がそいつと話すから」
「う、うん・・・」
 蘭は戸惑いながらも、携帯を快斗に渡した。
「もしも―し」
「・・・気安く蘭に話しかけんじゃね―よ」
 ―――いきなりそれかよ。
 快斗はちょっとムッとして顔を顰める。
「だって話さなきゃ道教えらんね―だろ?」
「俺が聞く。俺がそっちに行くから、場所教えろよ」
「・・・でもなァ、俺もこの辺よくわかんねーし。説明ってもな―、けっこー賑やかなとこにいっけど・・・」
「賑やか?」
「ああ。そーだ、オメーらも今、自由行動の時間なんだろ?俺もそーだし、ちゃんと時間内にそっちの旅館、送り届けるからさ、それまで俺ら2人、別行動してるってのは?」
「はあ?何言ってんだ、てめえ」
「え?黒羽くん?」
 快斗の言葉を聞いて、蘭も戸惑う。
「だって場所説明すんの面倒くせ―しさー、旅館の名前が分かればタクシーですぐに帰れっけど、それからまた出かけたら時間ね―じゃん。もったいね―だろ?」
「勝手なこと言ってんじゃねーよ!さっさとタクシー拾って蘭を返せよっ」
「ひで―言い方。蘭ちゃん助けたの俺だぜ?なァ?蘭ちゃん」
 そう言って蘭に向かって微笑みかけると、蘭も思わず、
「え、うん、そうだね」
 と応えてしまう。
「つーわけで、どうしても心配なら探し当ててみろよ。それまで俺は蘭ちゃんと夜の京都を満喫してっから」
 そう言い放つと、快斗はさっさと電話を切ってしまった。
「あッ、おい待て!このヤロ―!」
 新一は慌てて声をかけたが、電話はもう切れてしまっていた。
「ちっ」
 かけ直したくても、相手の番号は非通知になっていて、かけ直すことが出来ない。
「―――探すしかねーな」
 新一はそう呟くと、夜の町を走り出した。
 ―――あのヤロォ、なめやがって!もしも蘭に手ェ出しやがったら、ぶっ殺してやる!!


 「あの・・・黒羽くん・・・?」
 蘭が困ったような顔をして快斗を見る。
「あ、ごめん。迷惑・・・だった?」
 新一の言い草に腹が立って、思わずあんなことを言ってしまったのだが、蘭は困ってしまうだろう。
 実際なんでそこまで腹が立ったのか、自分でも分からなかった。最初、おもしろ半分に奴を挑発したのは確かに自分だけれど。その後の“蘭は自分のもの”と思っているのがありありと分かる新一の発言に、なぜかすごく腹が立ったのだ。
「迷惑ってわけじゃ・・・。でも黒羽くんも、これから友達と合流するんじゃないの?わたし、タクシー拾って、1人で帰るから・・・」
「え、待ってよ。それじゃ遊ぶ時間、なくなんだろ?」
「わたしが勝手に迷っちゃったんだもん。仕方ないよ」
 ちょっと恥ずかしそうに、小首を傾げて笑う、その顔がすごくきれいで・・・快斗の胸が高鳴る。
 ―――ここで分かれて、それっきり・・・?んなの・・・冗談じゃねーぞ。もっと一緒にいたい。もっと・・・知りたいんだ、蘭ちゃんのこと・・・。
「黒羽くん?」
 何も言わない快斗を、蘭が不思議そうに見る。
「あの・・・あ、そうだ。助けてもらったお礼、したいんだけど・・・」
 何が良い?と微笑む蘭を見て、快斗はちょっと考え口を開いた。
「―――なんでもいいの?」
「うん。そんなに高いものは買えないけどね」
「・・・じゃ、一緒にお店に行こうよ。そこで選ぶからさ」
「え、でも・・・」
「それ終わったら、タクシー捕まえてあげるよ。なら良いだろ?」
 ニッコリ笑う快斗につられ、蘭も笑う。
「敵わないなあ、黒羽くんには」
「・・・できれば、名前で呼んで欲しいんだけど」
「え?」
「快斗で良いよ。俺も、蘭ちゃんて呼ぶし」
 人懐っこく笑う快斗に、蘭も自然に気持ちが軽くなる。
「うん。じゃ、快斗くん、どこのお店に行く?」
「さっき、向こうのほうで見たお店、結構センス良さそうだったから、行ってみようぜ」
「うん」
 2人一緒に歩き出す。
 そして歩きながら快斗は気づいた。さっきから、蘭のことを見てる男の多いことに・・・。すれ違ったり、追い越していく男のほとんどが蘭を見ていくのだ。本人が、それに気付いている様子はないが・・・。
「すげーな・・・」
 と思わず呟くと、蘭がキョトンとして、
「え?何が?」
 と、目をぱちくりさせる。そんな表情も可愛くて、快斗は目を奪われる。
「視線・・・気になんない?」
「え?誰の?」
 と、蘭はきょろきょろしている。
「誰って・・・え―と・・・」
「もしかして女の子?快斗くん、かっこいいもんね」
 とニッコリ笑われ、思わず赤面してしまう。
 ―――参ったな・・・。この子の前じゃ、ポーカーフェイスなんてできねーよ・・・。
「や、ちがくって・・・。ま、わかんないなら良いんだけどさ」
 と、ぼそぼそ呟く快斗を、不思議そうにキョトンと見つめる蘭。
 ―――まるっきり自覚ね―な・・・。そんな目で見られたら、緊張するっつーの・・・。


 おしゃれな文具や小物などが売っているこじんまりした店に2人で入る。男の子が持ってもおかしくないものがたくさんあって、店の中には男の子だけで来ている客もいた。
「へェ、おしゃれだね」
「だろ?さっき逃げてるときに見つけて、目ェつけてたんだ」
「あんなときに、良くそんな余裕あったね」
 と、蘭が目を丸くする。
 2人で店内を見て回る。京都らしい和紙で作られた小物がとてもきれいだった。
「あ、これ、いいな」
 快斗が手に取ったのは、紺を基調にした模様の和紙が張られたシステム手帳。
「わァ、おしゃれだね。快斗くんに合ってるかも」
「そォ?んじゃ、これにしようかな」
「良い?じゃ、買ってくるよ」
「あ、待って―――蘭ちゃんは何か気に入ったものないの?」
「え?わたし?―――そうだね、ここのもの全部素敵だけど・・・」
 と言って、蘭が視線を向けた先には、赤い和紙が張られた小さな可愛い手鏡があった。快斗がスッとそれのそばまで行くと、手に取った。
「へェ、可愛いじゃん。蘭ちゃんらしいな」
「え、そお?」
「うん、可愛いよ。これ、このポーチとお揃いじゃん」
 快斗はその隣にあった手鏡とお揃いのポーチを手に取った。
「あ、そうだね」
「―――な、これ、俺からプレゼントさせてよ」
 と快斗が言うと、蘭はえ!と驚いて、慌てて首を横に振った。
「そんな!わたしが助けてもらったお礼しようと思ったのに、そんなのもらえないよ!」
「俺が、プレゼントしたいんだ。それとも俺からじゃ受け取れない?彼氏に悪い?」
「え・・・そういうわけじゃ・・・」
 蘭が困ったように眉を寄せる。
「こんなとこで知り合えた記念。同じ都内の高校とはいえ、もう会えないかも知れないだろ?」
「う・・・ん・・・そうだけど・・・」
「だから。変な意味じゃなく、友達として、受け取ってくれない?」
 ニッコリ微笑まれて。他意のなさそうな快斗の笑顔に蘭も安心したのか、クスッと笑うと
「うん。じゃあ、せっかくだから・・・ありがと、快斗くん」
 そして、2人して店を出て歩きながら、プレゼントを交換した。
「サンキュ。大事にするよ、これ」
「こっちこそ、ありがと。大切にするね」
 微笑み合う2人。
 そろそろ別れの時間が迫っていた。なんとなく寂しくなり、口数が減る・・・。
「―――あのさ、蘭ちゃん」
 と、快斗が口を開いたときだった。
「蘭!!」
 という声が後ろから聞こえ―――
「新一!!」
 驚いて振り向く蘭。そこに立っていたのは新一だった。
「―――オメエが黒羽か」
 ずっと走って来たのか、肩で息をしながら新一が近づいてくる。
 ジロリと快斗を睨みつける。
「チェッ、もう見つかっちまったか」
 と、快斗が舌打ちする。
「テメエ・・・どういうつもりだ。蘭を引っ張りまわしやがって・・・!」
 噛み付きそうな勢いで迫る新一の前に出たのは、蘭だった。
「待って、新一。快斗くんはわたしのこと助けてくれたのよ。それに、元はといえば道に迷ったわたしが悪いんだから・・・」
「蘭・・・」
「それに、わたし引っ張りまわされてなんかないよ?助けてもらったお礼がしたいからって言ったのはわたしなんだから」
 その言葉に、快斗の方がビックリする。確かに間違っちゃいないが、タクシーで帰ろうとする蘭を半ば強引に引き止めたのは自分なのに・・・。快斗は、自分を庇ってくれている蘭が、たまらなく愛しくなった。
 新一は蘭の言葉を聞き、溜息をつくと、
「―――わあったよ。今回はそういうことにしといてやるよ。―――もう帰るぞ」
 と言って、蘭の手を取った。
「あ、うん。―――快斗くん、今日は本当にありがとう」
 蘭が快斗を見てニッコリ笑った。快斗はその笑顔にはっと我に帰り、
「あ―――待って」
 と言った。
「え?」
 新一がまた、ギロッと睨む。
 快斗はその視線に気付かない振りをして言った。
「―――最後に、握手しようよ」
 そう笑って右手を差し出すと、蘭もつられて右手を出す。
 快斗はキュッと、蘭の華奢な手を握る。
「―――じゃ」
 と言って、離そうとした蘭の手を、グッと自分のほうへ引き寄せた。
「キャッ!?」
「!!」
 当然、蘭の体は快斗の方へ倒れこみ、予測していなかった行動に、新一も思わず手を離してしまう。
 快斗は倒れこんだ蘭の体を優しく抱きしめ、素早く蘭の頬に掠めるようなキスをした。
「!!」
 途端に蘭の頬が真っ赤に染まる。それを見た新一は、ショックのあまり固まってしまった・・・。
 そして快斗は、唇を離した瞬間、新一に聞こえないくらいの小さい声で囁いた。
「今日はとても楽しかったですよ。ありがとう、素敵なお嬢さん」
「!!」
 蘭の瞳が大きく見開かれる。
 快斗が見事にウィンクを決め、パッと蘭から離れる。
 と、やっとそこで我に帰った新一は、
「て、テメエ!何しやがる!」
 と言って飛び掛ろうと腕を伸ばしたが、快斗はひょい、とそれをかわし、
「じゃあな、名探偵!また合おうぜ!」
 と言って、あっという間に走り去り、人ごみの中に消えてしまった。
 新一は、ちっと舌打ちし、蘭を見た。
 蘭はまだ瞳を大きく見開き呆然としていたが、ふいに、
「―――やっぱり、彼だったんだ・・・」
 と、小さな声で呟いた。新一は、顔を顰め
「今なんて言った?蘭」
 と言った。その声に蘭ははっとして、
「―――え?あ、ううん。なんでもないの―――。新一、ごめんね心配かけて」
 と言って笑う蘭は、いつもの蘭で・・・新一は気が抜け、怒る気が失せてしまった。
「―――や、良いけどよ・・・。もう自由時間、終わっちまうな」
「うん。あ・・・ごめんね、新一まで何も出来なくなっちゃったね。それに園子達・・・」
「ああ、あいつらなら大丈夫だよ。さっき電話して、“蘭は見つかったから、オメエら適当に遊んでろ”って言っといたから」
「そっかァ・・・」
「俺のことは気にすんな。―――オメエがいないなら、自由時間なんて意味ねーし・・・」
「え?」
 蘭がビックリして新一の顔を見ると、新一はちょっと頬を赤らめ、そっぽを向いていた。
 蘭は嬉しそうにニッコリ笑うと、
「―――ありがと、新一」
 と言った。新一はしばらく決まり悪そうに黙っていたが、ふと思い出したように、口を開いた。
「そうだ!あいつ、最後にオメエに何か言っただろ!?」
「え?あ・・・」
「なんて言ったんだよ?あいつ」
 新一が憮然として聞く。蘭はその言葉を思い出し、顔を赤くして新一から目をそらすと、
「・・・ないしょ」
 と言ったのだ。
「な!何でだよ?俺に言えないようなことなのか!?」
 新一が焦って問い詰めようとするが、蘭はスタスタと前を歩き、
「ね、もう帰んなきゃ。道、わかるんでしょ?歩いて帰ろう」
 と言って、行ってしまう。
「おい!待てって!―――なァ、教えろよ?なんて言ったんだよ?」
「あ、そういえば、快斗くん江古田高校って言ってた。同じ都内だし、また偶然会ったりするかもね」
 ―――会いたかねーッつーの!何でそんなに嬉しそうに言うかな?
 ヤキモキしながら自分の後を着いて来る新一をチラッと見て、蘭は新一に気付かれないようにぺろっと舌を出した。
 ―――ごめんね新一。でも言えないよ。名探偵っていわれる新一だったら、きっとわかっちゃうもの。快斗くんが何者かってこと・・・。だからこれは、わたしと快斗くんだけの秘密・・・。ね、快斗くん。


 そのころ快斗は、と言えば、実はまだ2人の側にいたりして・・・。
 ―――おーおー、妬いてる妬いてる。ケケ、おもしれー。・・・けど、やっぱ気付いてたんだな、蘭ちゃん・・・。ま、いっか。彼女なら他人にばらしたりすることもなさそうだし・・・。そうだ、今度また、キッドの格好でもして会いに行こうかな・・・。
 あの天使のような微笑を、もう一度見たくって・・・。今度会った時のことを想像して、1人顔をほころばせる快斗だった・・・。





fin
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この作品は、以前のサイトでリクエスト権を取得してくださったもえ様のリクエストによる作品です。新蘭快の修学旅行というリクエストだったんですけど・・・。ごめんなさい。あんまり修学旅行って感じしないですね。新一の出番少ないし・・・。ホントすいません。これに懲りず、また遊びに来てくださいね・・・。

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キス未遂事件 ~平次編~

Category : novels(コナン)
 「お―――い、誰かおるかあ―――?」
 毛利探偵所に響く、関西弁。が、それに答える声はなく・・・
「・・・なんや、誰もおらへんのかいな?」
 平次はがっかりしながら、それでも未練がましくドアノブを回してみる―――と、いとも簡単にドアが開いた。
「なんや、無用心やなあ。それとも誰かおるんか?おーい、おっちゃん・・・?なんや・・・やっぱり誰も・・・」
 勝手知ったるなんとやら。ずかずかと入り込んで行った平次は、ふとソファを見て固まる。
 そこにいたのは、毛利蘭。
 蘭はソファに横になり、なんとも気持ち良さそうに、すやすやと寝息を立てていたのだ・・・。
 ―――なんつー無防備な・・・
 平次は呆れながらも、蘭の側に行き、声をかけてみた。
「おーい、姉ちゃん、こないなとこで寝とったら風邪引いてまうで―」
 が、蘭は一向に起きる気配無し。
「おーい・・・って、全然反応ないなあ。そういや、工藤のやつが言っとったなあ。姉ちゃんは1度寝たらなかなか起きんて・・・」
 さて、どうしたものか・・・。
 平次は、ちょっと顎に手をあて考えていたが・・・
 ―――ま、急ぐ用もないんやし・・・ちょっと待ったるかあ。そのうち、工藤かおっちゃんが帰ってくるかも知れんし。
 そう思い、蘭の向側のソファに腰掛ける。そして、暫く蘭の寝顔を眺めていたが・・・
「・・・なんか、掛けといた方がええんちゃうか?ほんまに風邪引きそうや。ええと、なんかないんか・・・?」
 きょろきょろと辺りを見回すと、部屋の隅に小五郎のものらしきジャケットを見つける。
「とりあえずあれでええやろ」
 そのジャケットを持ってきて、蘭にかけてやる。と―――
「ん・・・・・」
 ほんの少し身じろぎし、それまで閉じられていた唇が少し開いた。
 その瞬間、平次の心臓がどきんと音を立てた。
 ジャケットをかけるために蘭の顔の至近距離まで近づいていた平次は、そのままそのかわいらしい寝顔に釘付けになる。
 ―――やば・・・これは不意打ちや・・・。この姉ちゃん、こんなにかわいかったか・・・?
 顔が熱くなるのを感じ、頭ではそこから離れようと思うのだが、体が言うことをきかず・・・心臓はどきんどきんと、早鐘を打つ。
 ―――やばい・・・やばいて・・・。こんな場面工藤の奴に見つかったらどうなるか・・・。
 そう思っても、まるで金縛りにあったかのように体を動かすことが出来ない。
 そして、いつの間にか平次の掌は蘭の頬に・・・
 ひんやりとした感触。陶器のように白く、滑らかな肌が平次の掌に吸い付くようだった。
「あかん・・・止められへんかも知れん・・・」
 平次の目は、蘭のその花のような唇に引き寄せられ、そのまま誘われるように顔を近付けていったが・・・

「・・・し・・・いち・・・」
 不意に零れた声に、平次ははっとして蘭から離れた。
 蘭はまだ眠ったままだ。
 その穏やかな寝顔に、平次はほおっと溜息をついた。
「・・・・危ないとこやった・・・。にしても、やっぱり邪魔するんはあいつやなあ・・・」
 ふっと苦笑いを零し、蘭の前髪をそっと撫でる。
 まだ起きる気配のない蘭をじっと見つめていた平次は、そっと顔を寄せ、その額にほんの少し触れるだけのキスをした。
「・・・・これくらいやったら、許されるやろ・・・」

「ただいまー」
「お―、やっと帰ってきたか。何遊び歩いとんねん」
「あ?なんだよ、おめえいつ・・・」
 事務所に入ったコナンは、そこにいた平次と、ソファに寝ている蘭を見てぴたりと動きを止めた。
「よお寝てるで。しっかし鍵くらい閉めとかなあかんよなあ。入って来たのが俺だったから良かったようなものの・・・って、なんや、その目ェは。俺は何にもしてへんで」
「・・・・・俺は何も言ってねえぜ・・・?」
 コナンにジト目と低い声で突っ込まれ、思わず平次はぎくりとする。
「あ、いや、おまえがそんな目ェで見るからやなあ・・・」
 と、慌てて言い訳しようとしたとき、蘭が身じろぎをして目を開いた。
「んー・・・コナンくん、お帰り―。・・・あれ?服部くん、来てたの?」
「お、お―、姉ちゃんが気持ち良さそうに眠っとったから、起こすのも悪い思うてな。あ、あかん、もう時間のうなってしもうた。ほなら、また連絡するし!」
 そう言いながらいそいそと出口へ向かう平次を、不思議そうに見つめる蘭。
「え??もう帰るの?お父さんに何か用でも・・・あ、服部くん!」
 あっという間に閉じられてしまったドアを、目をぱちくりさせながら見ている蘭。
 コナンが、タタっと駆けて窓際に行くと窓を開け、下を見下ろした。それにつられ、蘭も窓際へ行ってみる。ちょうど、平次が外へ出て来たところだった。
「ねえ、服部くん!何か用事だったんじゃないの?」
 蘭の声に、平次が振り向く。そして、コナンと蘭の顔を見比べたかと思うと、ふと悪戯っぽい笑みを浮かべて、こう言った。
「ええんや。たいした事やないし。それよりも、ここへ来てええもん見してもろうたからな。今日は怪我せんうちに退散するわ。また近いうちに邪魔するわ。・・・そん時は、未遂で終わらせんかも知れんけどな!!」
 そして、大きく手を振ると、ちょうどそこへきたタクシーを捕まえ、さっさと乗り込んでいってしまった・・・。

「??どういう意味だろうね?ええもん見してもろうたとか、未遂とか・・・。コナンくん、分かる?」
 それまで黙り込んでいたコナンは、蘭の声にはっとして、
「え?あ、ううん、僕にもわからないや・・・。何言ってんだろうね?平次兄ちゃん・・・」
「ねえ・・・あ、電話!」
 蘭は、ちょうど鳴り出した電話を取った。
 コナンは、再び外の通りに視線を戻す。

 ―――あいつの、あの慌てよう・・・ええもん・・・未遂・・・まさか、服部の奴・・・?

 ざわざわと、胸が騒ぎ出す。
 後では、蘭が電話の相手―――どうやら小五郎らしい―――に何やら怒っていたが、コナンの耳には入ってこない。
 近いうちにまた来る、と言っていた平次。最悪の事態を避けるには・・・まず、蘭からどうにかしなくてはならない。知っている人だからといって、100%信用してしまうこの無防備な彼女に、どうやって警戒心というものを理解してもらうか・・・。
 はっきり言って、どんな謎解きよりも難しいその問題を、コナンはこれからずーっと考えていくことになるのだった・・・・。



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 平→蘭です♪私自身、かなり楽しんで書いてしまいました。皆さんにも、楽しんでいただけたらいいのですが・・・。

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キス未遂事件~智明編~

Category : novels(コナン)
 「失礼しま~す」
 明るい女生徒の声とともに、保健室のドアが開いた。
 智明が振り向くと、入り口に2年生の鈴木園子と毛利蘭が立っていた。
 蘭の姿を見た途端、智明の胸の鼓動が早くなる。
「やあ、どうしたんだい?」
「すいません。蘭、ちょっと熱があるみたいで・・・」
「熱?」
 言われてみれば、蘭の頬はほんのりピンク色に染まり瞳は潤み、唇は微かに開いて息苦しそうだった。
「大丈夫かい?とりあえずベッドの横になって・・・。今、体温計を出すから」
 蘭は素直にベッドに横になった。園子が心配そうに付き添う。
「大丈夫?全く無理しちゃって。学校なんて休んじゃえば良かったのに」
「だって・・・今日、お父さん仕事で群馬まで行かなきゃならないのよ。わたしの具合が悪いなんて知ったら、行くのやめちゃうかもしれないじゃない」
 なんとも蘭らしい言葉に園子も只溜息をつくしかなかったようだ。

「―――38.0℃・・・。今日は帰った方が良いね」
 と智明が言うと園子も頷く。しかし蘭は首を振り、
「今日は・・・部活で大事なミーティングがあるんです。主将のわたしが出ないと・・・」
 と言った。
「それって、今日じゃなきゃいけないの?違う日に変えてもらうとか・・・」
「ダメだよ・・・。みんな忙しいし・・・。大丈夫。ちょっとここで休ませて貰えば・・・」
 智明と園子は顔を見合わせた。蘭はこう見えても意外と頑固なのだ。こうと決めたらてこでも動かない所がある。
「―――分かりました。それじゃあ放課後になったら声をかけるから、それまではちゃんと寝ていないとだめだよ」
 と智明が言うと、蘭は嬉しそうに微笑んで、
「はい。ありがとうございます、先生・・・」
 と言った。その笑顔があまりにもきれいで、思わず緩みそうになる顔をかろうじて理性で抑える。

「―――じゃ、先生、お願いしますね、蘭のこと・・・」
 園子が保健室を出ようと入り口まで行って、そう言った。
「ええ、分かってます」
 と智明は笑顔で応える。
 園子は、ちょっと何か言いたそうに智明の顔をじっと見つめた。
「どうしたんだい?」
「―――いえ、別に・・・」
 と園子は言って、ドアを閉めようとしたが・・・
「先生」
「はい?」
「寝てる間に悪さしちゃ、ダメですよ?」
 と小声で言った。
 智明は何か心の中を見透かされたような気がして、焦って言い返した。
「な、何を言うんだい!ぼ、僕は・・・」
 と、園子はしてやったりという顔でくすくす笑い、
「冗談ですよ。信用してますからね、先生」
 と言って、今度こそ本当にドアを閉めて出て行ったのだった・・・。

 ―――なんだか、釘をさされたみたいだな・・・。
 智明は苦笑いし、自分の机に戻るとやりかけていた仕事に取り掛かった。
 しかし、同じ空間で蘭が寝ているのだと思うとどうも落ち着かない。衝立の向こうに何度も視線が向きかけ、そのたびに首を振って、神経を仕事に集中させる。それを繰り返しているうちになんだか肩がこって来てしまい、結局半分も終わっていない仕事を中断し、お茶を飲むことにした。
 ―――いけないなあ、こんなことじゃ・・・。高校生じゃないんだから、こんなことくらいで動揺してどうするんだ。
 と自分に言い聞かせるものの、どうにも気になって仕方がないのだ。
 ―――蘭さん、大丈夫かな。一応薬は飲ませたけれど・・・。少し様子を見てみるか。
 智明はそっと衝立の陰から蘭の寝顔を覗いてみた。
 まだ熱があるのだろう、赤い顔をして荒い呼吸を繰り返している蘭。そんな蘭の姿を見るのは胸が痛んだ。そっと、そばまで行って額に手を当てる。
 ―――まだ熱いな・・・。こんな調子でミーティングなんかやって大丈夫なんだろうか。無理にでも家に帰すべきだろうか・・・。 
 そんなことを思っていると、智明の手が気持ち良いのか、蘭がその手に擦り寄るように首を振った。
 
 ドキンッ

 智明の心臓が跳ね上がる。
 ―――寝ているとはいえ・・・無防備な人だな・・・。
 智明がそっと、蘭の頬を撫でると、蘭は気持ち良さそうに首を竦めた。その顔は、なんとなく微笑んでいるようにも見え・・・。
 ―――きれいだな、本当に・・・。
 智明は蘭の横にひざまづくと、その顔に見入った。
 ―――君は知らないだろう。この学校で臨時の保険医をやらないかという話が来た時、どんなに僕が嬉しかったか。これで、学校では毎日君を見ることができる。そう思って、どんなに嬉しかったか・・・。しかし現実は甘くないんだな。同じ校内にいても早々会うことはないし、会えたとしても・・・君の隣にはいつもあの名探偵、工藤新一がいるのだから。
 しばらく大きな事件に巻き込まれ学校を休んでいた新一は、戻って来てからも相変わらず警察に呼び出されたりすることが多く、あまり学校には来ていないが、学校にいる間は恋人である蘭のそばから片時も離れようとしないのだ。特に智明が保険医として学校に来てからは、極力蘭を保健室に近付けないようにしているらしい・・・。当の蘭はそんな新一の思惑には全く気付かず、智明に対しても以前と変わらない態度で接してくる。そんな蘭の様子を見てやきもちを焼いている新一の姿を見るのも、結構面白いと思っていたのだが・・・。
 ―――今日は、工藤君は事件でまたいない。そんなことが嬉しいと思えるなんて、僕も情けないな。
 智明は苦笑いして蘭の顔を見つめた。
 ―――こんな場面を見たら、きっと工藤君は怒るんだろうな。自分以外の人間が、彼女に触れるのをすごく嫌がる人だから・・・。
 そう思うと、なんとなく楽しい気分になってきた。彼の知らない2人の時間―――。今だけは、蘭は自分のすぐそばにいる。こうして触れることもできる。そうだ、その気になれば、キスだって―――
 ついそんなことを考え、智明ははっとする。
 ―――何を考えてるんだ!
 慌てて手を引っ込め、首を振る。
 すると蘭が、微かにうめき声を上げ、苦しそうに身を捩った。
「蘭さん?」
 ハッとして声をかけるが、蘭はすぐにまた静かな寝息を立て始めた。
 智明はホッと息をついた。
 ―――まるで10代の男の子のようだな。こんなふうに彼女の表情一つ一つに動揺してしまうなんて・・・。
 智明はもう一度蘭の頬に触れてみた。
 すべすべして、柔らかい肌の感触。ずっと、離したくなくなる・・・。10代の男の子なら、迷わず彼女にキスしているんじゃないだろうか?こんなきれいな寝顔を見て、平気でいられる男などいるものか・・・。そう、きっと工藤君なら迷わずキスしているだろう。彼はそれが許された人間・・・。
 智明の心の中の悪魔が囁いた。
 ―――寝ている間にしてしまえばいい―――。今なら誰も見ていない。彼女にも、彼にも知られることはない―――。

 そっとその唇に、自分の唇を近付ける・・・。
 後少し・・・数センチで彼女の唇に触れる、というところで―――

「蘭!!」
 保健室のドアが勢い良く開き、聞き覚えのある男の声が―――
 智明は蘭からパッと離れ、その場に立ち上がった。
「工藤くんかい?―――彼女なら寝ているよ」
 そう言いながら衝立から姿をあらわし、新一の前に出た。
 新一はちょっと智明に探るような視線を投げてから、軽く会釈をし蘭の寝ているベッドのそばへ行った。
「―――蘭・・・」
 他の人間には向けることのないやさしい眼差しで蘭を見つめる新一。それを横目で見ながら、智明は新一に気付かれないよう、そっと息を吐き出した。
 ―――何をしているんだか・・・。もう少しで、彼女の唇に触れてしまう所だった・・・。もし触れてしまったら、もう離せなくなっていたかもしれない・・・彼女のすべてを求めて、彼女を傷つけていたかもしれない・・・。だから、きっとこれでよかったんだ。彼が現れて・・・

「新一・・・?」
 蘭が、微かに目を開き、新一の姿を見つけた。
「蘭、大丈夫か?―――送っていくから帰ろう」
 新一がやさしく言ったが、蘭はゆっくりと首を振り、
「ダメ、だよ・・・。今日のミーティング、わたしが出なきゃ・・・」
 と言った。だが、その言葉を遮るように
「バーロ、そんな状態で何がミーティングだよ。空手部の奴らには俺から言っとく。だから今日は帰って休め。無理すると長引いちまうぞ」
 と、新一が有無を言わせぬ口調でそう言うと、蘭はなおもまだ迷っている様子だったが、やがてこくんと頷き、
「―――分かった・・・。ごめんね、新一、せっかく学校に来たのに・・・」
「オメエはそんなこと気にすんな。―――さ、行くぞ」
 そういうと新一は、蘭の身体を抱き起こし、支えながら立たせて靴をはかせた。
「―――歩けるか?」
「うん、大丈夫。―――先生」
 蘭が、急に智明を見て言った。2人のことをボーっと見ていた智明は、その声にはっと我に帰り、
「あ、はい」
 と返事をした。蘭は弱々しい微笑を浮かべ、
「ありがとうございました。すいません、我侭聞いてもらったのに・・・」
 とすまなそうに言う。それを横で聞いている新一は、冷静な顔はしているものの、どこか面白くなさそうにも見え・・・。
 ふと、智明は意地悪をしてやりたくなった。
「いえ、構いませんよ。調子が悪いときはいつでもここのベッドを使ってください。僕も1人でいると退屈ですし。たまには話し相手をしに来てくださいよ」
 と言ってニッコリ笑うと、新一の顔がぴくっと引き攣るのがわかった。蘭は、そんな新一の様子には気付かず、
「はい。じゃあ今度こっそりお菓子でも差し入れしますね」
 と言って笑った。もちろん、蘭としては深い意味もなく言った軽い冗談なのだろうが・・・。それを聞いた新一の顔が一気に険しくなったのを、智明は見逃さなかった。
「―――行くぞっ、蘭」
 蘭の肩を抱き、半ば強引に保健室の外へ連れて行ってしまった。
「待ってよ、新一ィ。先生すいません、失礼します・・・」
 連れて行かれながらも律儀に挨拶を忘れない蘭・・・。
 やがて2人の足音が遠ざかり、智明は溜息をつくと机に戻り、椅子に座って、もうぬるくなったお茶を飲んだ・・・。苦い緑茶の味が口の中に広がる。智明の口に、自然と笑みが浮かんだ。

 ―――敵いませんね、彼女には。・・・きっと、あの工藤新一にあんな顔をさせられるのも彼女だけなのだろう・・・。おそらく、彼女はそれには気付いていないのだろうが・・・。全く、罪な人だな・・・。しばらく、あの柔らかな頬の感触と、艶やかな唇を忘れることは出来そうにない―――。
 そうだな。もしまた今度、こんなことがあったら・・・そのときは、本当に奪ってしまおうか。その唇も、彼女の心も・・・。もちろん、あの探偵がそうやすやすと諦める筈もないが・・・あんなふうに焦った表情を見るだけでも楽しませてくれそうだ・・・。

 智明は1人、その時を想像しながら顔をほころばせるのだった・・・。





                                      fin
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 初の智→蘭です!一度書いてみたいと思ってたんですよねえ。新出先生は動かすの本当に難しい!
でも楽しかったです。「キス未遂事件」のシリ-ズでは、普通だったら蘭とキスできなさそうな人との話にしようと思ってるのですが・・・。次は誰にしましょうか?やっぱ西の名探偵あたりかな。

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Christmas Fantasy ~快蘭新~

Category : X'mas novels(コナン)
「ねえ、新一、快斗はァ?」
 蘭が新一の家に入ってきたとたん、快斗の名を口にする。
 新一は思わず仏頂面になり、ふてくされたように答える。
「しらねえよ。今日はまだ顔見せてねえし」
「ふーん。そっか・・・」
「なんだよ?あいつがいなきゃいやなのか?」
「そんなこと言ってないじゃない。ただ、どうしたのかなって思っただけよ」
 蘭は不機嫌そうな顔をした新一を見て、呆れたように言った。
「今日は、3人でクリスマスパーティするって約束でしょ?」
 そう、今日はクリスマス・イヴ。3人でクリスマスパーティをしようと言い出したのは快斗。今日だけは新一も警部に言って、呼び出さないように頼んであるのだ。
 新一は、蘭に言われた通り朝から部屋の掃除や飾り付けをしていた。蘭は今日のパーティで出す料理の材料を調達しに朝から買い物に走り回っていた。下準備の終わっているものや自分で作ったクリスマスケーキを持って新一の家へやってきたのは午後の4時。もう外も暗くなってきていた。
 新一は蘭の持ってきたものを見て、目を丸くした。
「すげえな、それ全部食うもの?」
「うん。今から仕上げするから。オーブンとか借りるよ?」
「ああ。―――蘭」
「え?」
 振り向いた蘭に、新一がすばやくキスをする。
 驚いて、頬を赤らめる蘭。その表情を見て、新一がくすっと笑う。
「快斗が来る前に、な」
「もう」
 ぷうっと頬を膨らませながら、軽く新一を睨みつける。そんな表情も可愛くって仕方がない。クリスマス・イヴに愛する彼女と過ごせる、なんともいえない幸せ。
 ―――これで、蘭と2人きりならなァ。
 と思わずにいられないことは、蘭には内緒だ。
 それでも快斗が来ることがそんなにいやなわけではない。3人で一緒のクリスマスもきっと楽しい。
そんなふうに思えるようになったことが、自分でも意外だった。


 テーブルに料理を並べ、部屋の飾りつけも終わり、あとは快斗が来ればパーティの始まりだ。
 しかしその快斗が、なかなか現れない。蘭の表情が、次第に不安げになっていくのを見て、新一は溜息をついた。
 ―――ったく、あいつ何やってんだ。
「どうしたのかな、快斗・・・。来れなくなっちゃったのかな」
「だったら何か連絡してくるだろ。心配すんなよ、そろそろ来るって」
 新一がそう言って、優しく笑いかけると、蘭はちょっと安心したように頷いた。
 その瞬間明かりが消え、部屋は闇に包まれた。
「!!な、何?」
 蘭が驚いて、怯えたような声を出す。
「蘭、こっちに―――」
 と言って、新一が蘭のほうに手を伸ばしかけたときだった。
 テーブルの真中に、突然ぼおっと白い炎が現れた。
「こ、これ・・・」
 2人がその炎を見つめていると、今度はポンッという音と共にシャンパンの瓶を手にした怪盗キッドの姿が現れたのだ。
「!快斗!!」
「メリー・クリスマス!お2人さん」
 ウィンクと共にシャンパンのコルクを飛ばし、テーブルに並んでいたシャンパングラスにそれを注ぎ始めた。テーブルの上にあった白い炎はいつのまにか消え、部屋の明かりが付いた。
「てめえ、何やってたんだよ?」
 久しぶりに目にした白い装束姿の快斗を見て、新一が文句を言う。
「わりい、もっと早く来るつもりだったんだけどさ、ちょっと準備に手間取っちまって。―――蘭ごめんな」
「ううん。来てくれればいいの。何かあったんじゃないかと思ったから・・・」
 ふんわりと微笑む蘭。快斗はその頬にすばやくキスをした。
「!おいっ」
「クリスマスなんだから良いじゃん。な?蘭」
 快斗がにっと笑い、蘭はその笑顔につられて頷く。
「え、う、うん」
「っつーわけで、始めようぜ?パーティ」
「ったく、調子のいい奴だぜ」
 快斗がシャンパングラスを持ち上げると、新一も仏頂面をしながらも自分のそれを持ち上げる。そんな2人を見て蘭は楽しそうに笑いながら、自分もシャンパングラスを持った。
「「「メリー・クリスマス!!」」」
 3人の持ったシャンパングラスが軽く触れ合い、心地好い音を鳴らす。
「すげ―な、この料理。全部蘭が1人で作ったのか?」
 快斗が感心して言う。蘭は照れたように笑い、
「うん。今日はやっぱり豪華にしたくって・・・。味のほうは自信ないんだけど」
「おいしいぜ?」
 早速目の前の料理を口に入れながら新一が言う。
「ホント?良かったァ」
「ホント、蘭は料理上手だよなあ。いつでも嫁に来れるぜ?どう?明日にでも俺ンとこ来ない?」
 快斗が料理を食べながらにっと笑って見せると、蘭の頬が赤く染まった。
「―――おいっ、何どさくさに紛れてプロポーズみたいなこと言ってんだよっ」
「いーじゃん、言うだけはタダだろ?」
 しれっと言う快斗。
「ね、快斗、その服じゃ汚れない?着替えたら?」
 白い衣装のまま食事を進める快斗に、蘭が言った。
「大丈夫。俺は新一と違って食うのうまいから」
 思わず蘭がぷっと吹き出すと、新一が2人をじろりと睨む。
「余計なこと言ってんじゃねえよ」
 言い合いながらも、食事は楽しく進んでいった。テーブルに並んでいた料理もほとんどなくなり、満足したところで3人で食器を片付ける。  
 その後はコーヒー、紅茶を飲みながらおしゃべりしたり、ゲームをしたり。
 そしてそろそろ日付も変わろうかという時間になって、3人は順番にお風呂に入った。今日は、このまま新一の家に泊まっていくことになっている。
 ちょうど最後に入った新一がお風呂から出てきたとき、テーブルにはクリスマスケーキが用意されていた。もう一度飲み物を入れなおし、3人で再びテーブルにつく。
「んじゃ、改めて乾杯すっか」
 と新一が言うと、
「あ、待って。その前に・・・わたしから2人にクリスマスプレゼントがあるの」
 と蘭が言って、テーブルの下からごそごそと紙袋を取り出した。中からは、青い包装紙に包まれたものと、赤い包装紙に包まれたもの。それぞれ金色のリボンがかけられている。
「えっとね、青いほうが新一で、赤いほうが快斗なの。気に入るかどうかわからないけど・・・」
 照れながらそれぞれの包みを渡す蘭。
「サンキュー蘭。俺からもプレゼント」
 といって、快斗もポケットから小さな箱を出して蘭に渡した。
「俺も、ちょっと取って来るわ」
 と言うと新一は席を立って、部屋を出て行った。
「―――こんな楽しいクリスマス、初めてかも」
 と、蘭が嬉しそうに言うと、快斗はそんな蘭の笑顔に見惚れながら席を立った。
「実は、もう1つプレゼントがあるんだけど。今渡して良い?」
「え?う、うん。でも、そんなにたくさん―――」
「良いから。ちょっと立ってくれるか?」
 言われるままに蘭が席を立つと、その蘭を包み込むように快斗は白いマントをかけた。
「か、快斗?」
「ワン、ツー、スリー!」
 掛け声と共にマントをはずすと、そこには―――
「ええ?これ―――」
「うん、やっぱすげー似合ってるよ」
 快斗が満足そうに頷く。マントの下から現れた蘭は、真紅のドレスを身にまとっていたのだ。
 大きく開いた胸元には白い薔薇のコサージュ。大きく広がった裾はまるで大輪の花を思わせ、華やかな雰囲気が蘭にとてもよく似合っていた。
「すごい・・・けど、こんなドレス、わたし―――」
 戸惑っている蘭に、快斗は軽く口付けをした。
「かーいとォ!!てめえ何してんだよ!?」
 ちょうど戻ってきた新一がその光景を目にし、堪らず声を荒げる。が、快斗はにやっと笑い、
「今日はクリスマスなんだから大目に見ろって。大体俺がいない間におめえだってキスぐれーしてんだろ?」
「うっ・・・」
 図星を指され、思わず詰まる新一。蘭はなんと言って良いかわからず、ただ顔を赤くしていた。
「―――ったく・・・。あ、蘭、これ、俺からプレゼント」
 と言って、新一は持ってきた箱を蘭に渡した。
「あ、ありがとう・・。ね、開けても良い?快斗のも」
「もちろん。俺も開けようっと」
 それぞれがプレゼントの包みを開ける。
 蘭が2人に贈ったのは、色違いの手編みのマフラー。もちろん蘭が編んだものだ。新一には黒。快斗には青。
「あのね、今年は自分のも作っちゃったの。わたしは赤い色なんだ」
「じゃ、3人でお揃いか。なかなか良いじゃん。サンキュー蘭」
「すげーあったかい。ありがとう、蘭」
「えへへ・・・」
 照れくさそうに笑い、今度は自分のプレゼントを開ける蘭。快斗からのプレゼントは色とりどりの天然石が埋め込まれたクローバー型のブローチ。
「うわァ、可愛い。すっごくきれいね。ありがとう!快斗」
 そして新一からのプレゼントは―――
「あれ?これ・・・もしかして・・・」
 箱から出てきたのは、快斗のプレゼントとそっくりな天然石が埋め込まれたクローバー型の小さなイヤリング。どう見ても同じシリ-ズのもので・・・
「新一と2人で選んだんだよ。だぶったりするとうまくないと思ってさ」
「たっぷり時間かけて選んだからな。ゼッテー似合うと思うぜ」
 2人が、得意げににっと笑って言う。
 蘭は嬉しさのあまり声も出ず、呆然としていた。そんな蘭の様子に2人は顔を見合わせた。
「なんだよ、蘭?気にいらねえ?」
 と言う新一の声に蘭ははっと我に帰り、
「そ、そんなことないよ!!すっごく嬉しい!ほんとに・・・ありがとう、2人とも」
 嬉しそうに笑う蘭を見て、安心したように微笑む2人。3人の間に優しい空気が流れる。
「あ・・・雪・・・?」
 ふと、蘭が窓の外を見て言った。
 その声に2人も窓の外を見る。
「ほんとだ。珍しいな、クリスマスに東京で雪が降るなんて」
「ああ」
「ね、外出てみよう?」
 蘭の言葉に、2人はちょっと顔を顰める。
「寒いぜ?」
 と新一が言えば、
「そうだよ、風邪ひくって」
 と快斗も同意する。
「もー、2人ともジジくさいよ?」
 そう言うと蘭は、呆気にとられている2人に構わず、玄関に行くと外に出て行ってしまった。
「―――ジジくせ―とよ」
「しゃーね―な、お姫様に付き合うか」
 快斗がふっと笑い玄関に向かうと、新一も苦笑いしてその後に続いた。

 中庭に出ると、蘭が降ってくる雪を見上げて立っていた。
 真紅のドレスを着て雪の中に立っている様子は幻想的で、2人は思わずはっとして足を止めた。
 きっと、今2人は同じ想いで蘭を見つめているだろう。お互いそんなことを思い、顔を見合わせふっと微笑むと、一緒に蘭のそばへ行った。
 2人に気付いた蘭が振り向く。そして、さらさらと降りつづける雪の中、まるで天使のようにふわりと微笑むと、
「来年も・・・こんなクリスマスになると良いね」
 と言ったのだった。
「ああ、そうだな」
「蘭が望むなら、きっとそうなるよ」
 快斗の言葉に、新一が「気障な奴」とこぼすと、蘭も楽しそうに笑う。
 2人が蘭の両脇に立ち、3人で夜空を見上げる。
 隣に二人のぬくもりを感じ、蘭はそっと目を閉じた。
 ―――わたしって、すごく贅沢よね・・・。こんな素敵な2人に巡り会えて、大切にしてもらって・・・。本当に幸せ。できることなら、この幸せがずっと続いてほしい・・・。わたしの我侭だってことはわかってる・・・。でも今は・・・この幸せを逃したくない。ずっと3人でいられるのなら、どんなことだってするのに・・・。
 快斗と新一は、目を閉じ、佇む蘭を愛しそうにじっと見つめていた。誰よりも大切で、失いたくない存在。自分だけのものにしてしまいたくなるときもあるけれど・・・。蘭が幸せなら。微笑んでいてくれるなら。そう思ってきたけれど。本当は自分たちもこの方が良いと思っているのかもしれない。3人でいると安心できるのは、蘭だけの感情ではないのかもしれない。2人でいるよりも3人で。そんな形があっても良いんじゃないか。愛する彼女の側にはいつも自分のライバル。そんな光景がきっとこれからも続くのだろう。そして、それを望んでいる自分がいる。
 快斗と新一は、顔を見合わせると、ふっと微笑みあった。
 そして、同時に蘭を見つめ・・・
「きゃっ」
 両頬に感じた暖かい感触に、思わず蘭は目を開け、声をあげる。
「メリークリスマス、蘭」
「来年も一緒に―――な」
 2人がいたずらっぽい笑みを浮かべ、ウィンクする。
 蘭は2人に同時に頬にキスをされ驚いていたが・・・なんだかしてやられたような気がして、ぷうっと頬を膨らませた。
「もうっ、お返し!!」
「!」
「!!」
 と、今度は蘭から2人の頬にキス。
 あまり蘭からキスされることのない2人は感激してボーっとしていたが・・・
「―――っくしゅんっ」
 という蘭のくしゃみに我に帰る。
「ほら、そんな薄着で外に出るから!」
 新一が慌てて蘭の腕をとると、
 ―――ふわり
 快斗のつけていた白いマントが蘭を優しく包み込んだ。
「さ、部屋に戻ってケーキ食おうぜ」
「―――うん。飲み物、入れなおさなきゃね」
「あったかいやつな」
 3人で、微笑みあい、体を寄せ合いながら、家の中に入る。
 その後姿はとても幸せそうで・・・誰にもその幸せを壊すことなどできないだろう、と思えるのだった・・・。






                             Fin

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 おなじみ、快蘭新のクリスマスです。
 このシリーズでまた何かお話が出来たらいいなあ。

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The unexpected guest ~新蘭~

Category : X'mas novels(コナン)
 「クリスマスは、2人きりで過ごしたいな」
 頬をピンクに染めて、そう言ったのは蘭だ。そん時の顔が超絶に可愛くって、俺は2つ返事で承諾した。もちろんこの日ばかりは目暮警部にも言って、呼び出さないようにしてもらっていた。
 そして準備万端整え、明日の朝まで蘭との時間を堪能してやろうと思ってたんだ。
 それなのに・・・どうしてこうなるんだ?
 いや、確かに、今俺の家に蘭はいる。
 だけど!どうして2人きりのクリスマスのはずが、こうなっちまうんだ?
 俺は思いっきり溜息をついた。
「新一?どうかした?」
 蘭が、かわいらしく小首を傾げる。その表情は抱きしめたいほど可愛いってのに・・・。蘭の膝に抱かれたそれが邪魔で、それも叶わないなんて。
 それは、柔らかそうなキャラメル色の毛皮に包まれた、耳の長い小さなもの・・・
「なんで、クリスマスプレゼントにうさぎなんだ?」
 と、俺が先刻から疑問に思っていたことを口にする。蘭は嬉しそうに笑い、
「前にね、テレビで見てて可愛いって言ったのを覚えてくれてたみたい。このうさぎね、あのピーターラビットと同じ種類なんだって。ちゃんと血統書もついてて、大きさは2キロぐらいまでしか成長しないんだって。ホント可愛いよねえ、小さくって」
 と言うと、うっとりとそのうさぎを見つめた。
 そう、蘭の膝に抱かれたそのうさぎは、今日蘭の母親である妃英理からプレゼントされたものらしい。
 確かに小さくてふわふわしたその姿は愛らしいが・・・でも、なんだってここにつれて来るんだよ?
「この子、まだ赤ちゃんなのよ。お母さんと引き離されたばっかりで、すごく寂しいみたい。だから、一緒にいてあげたくて」
 蘭の言葉に、俺ははっとする。
 蘭は、小さい頃に母親が家を出てしまい、ずっと寂しい思いをしていたのだ。きっと、このうさぎに小さな頃の自分を重ねているんだろう。
 そう思うと、俺はもう、文句を言う気にはなれなかった。
「名前とか、あんのか?」
「うん。クリスマスプレゼントだからね、クリリン!」
 得意満面にそう言う蘭に、思わず俺はずっこける。
 ク、クリリン・・・。すげえネーミング・・・。
「何よォ、可笑しい?」
 俺の態度に、蘭は頬をぷうっと膨らませる。それがまた可愛くて・・・俺は、我慢できずに蘭のそのかわいらしい唇に、ちゅっとキスした。途端に、蘭の頬がポッと赤く染まる。
「おかしかねえけどさ。おめえ、ただでさえ部活とか家事で忙しいのにそいつの世話なんかできんのかよ?」
「うん、大丈夫。お父さんにも頼んであるし」
「おっちゃんに?大丈夫なのか?」
「うん。あれでもお父さん、結構世話好きなのよ?」
「ふーん・・・?」
 多少疑問は残るが・・・まあ、あの英理さんのプレゼントだもんな。たぶん、大丈夫なんだろう。

 蘭は、膝の上で寝てしまったクリリンを、そっと持ってきたカゴに入れた。
「お腹すいたでしょう?すぐ作るから待っててね。もう、ほとんど出来てるんだ。あとは火を通すだけで」
 と言って、さっさとキッチンへ行こうとする蘭の手を掴み、ぐっと引っ張る。
「きゃ!」
 引っ張られてよろけた蘭が、俺の膝の上に座る。
「ちょっと、新一!」
 文句を言おうとした蘭の唇を、自分のそれで塞ぐ。
「!―――――んっ―――」
 慌ててじたばたする蘭の体を抱き込み、更に深く口付ける。
 やがて、蘭の体から力が抜け、おとなしく俺の膝におさまると、俺は漸くその唇を解放した。
 蘭が真っ赤な顔をして、上目遣いに俺を睨む。その表情が、更に俺を煽ることも知らないで。
「もう・・・」
「仕様がねえだろ?さっきからずっと我慢してたんだから」
「我慢?」
 きょとんとした顔で小首を傾げる蘭が、また可愛くて、再びその頬にキスをする。
「あんっ、ね、ご飯作らなきゃ・・・」
「あとでいいよ」
 俺はその腕を緩めず、額に、耳に、キスを落とす。
「んっ・・・だって、今日はケーキもあるんだよ?」
 せっかく作ったのにと、頬を膨らませる蘭に、仕方なく俺は腕を緩めた。
「わーったよ。んじゃ、あとで、な・・・」
 にっと笑い、蘭の頬にもう一度キスをすると、蘭は赤くなりながらも小さく頷き、俺の膝から降りて、キッチンへ行ってしまった。その後姿を、愛しさを込めて見つめる。
 今日は、蘭も泊まっていくつもりで来てくれている。それがどうしようもなく嬉しかった。


 テーブルにちょっと豪華な料理が並べられ、シャンパンをグラスに注ぎ、2人きりのクリスマスパーティを始める。
「メリークリスマス、新一」
「メリークリスマス、蘭」
 チリン、とグラスの触れ合う音が響き、2人微笑み合う。こんなふうに2人きりの時間を過ごすのも久しぶりだった。
「蘭、いつも1人にさせてごめんな?」
 と、俺が言うと、蘭はふわりと笑い、
「ううん、いいの。わたしは、探偵をしてる新一も好きだから」
 嬉しさに、胸が詰まる。
「それに・・・」
「それに?」
「これからは1人じゃないもん」
 楽しそうに笑う蘭を、俺は訝しげに見つめる。
「1人じゃないって・・・どういうことだよ?」
「ふふ・・・。これからは、クリリンが一緒にいてくれるからね。寂しくないよ?」
 と言って、蘭はソファに置かれたカゴの中のクリリンを優しい瞳で見つめた。
「・・・・・」
 なんとなく、複雑な気分だった。蘭が寂しい思いをしなくてすむのは結構なことだが・・・。
 そんな顔、俺以外の奴に見せて欲しくないんだけど・・・。とは思っても、相手がうさぎではさすがに言いづらい。
「新一?食べないの?」
 蘭が黙ってクリリンのほうを見ていた俺を、不思議そうに見つめて言う。
「いや、食べるよ」
 俺は慌てて料理に手を伸ばした。
 時間をかけて作ったと言うだけあって、蘭の料理はどれもすごくおいしかった。全てが、見事に俺の好みにぴったりで、さすがと言うほかなかった。
「すっげー美味いよ」
 と言うと、蘭は嬉しそうに頬を染め、にっこりと笑った。
 くううーーっ、すげー可愛い!もう、ゼッテー離せねえよなあ、こいつだけは・・・
 俺が蘭の顔に見惚れていると、ソファのほうで、カタンと音がした。
「あ、クリリン、起きたみたい」
 見ると、カゴの中のクリリンが目を開けてこちらを見ていた。
「うふふ、こっち見てるよ?やっぱり可愛いねえ」
 うっとりとクリリンを見つめる蘭。
 ・・・だから、そういう顔を俺以外の奴に見せんなって・・・。
 俺は、蘭に気付かれないよう、そっと溜息をついたのだった・・・。


 クリスマスケーキは、俺の好みに合わせた、甘さ控えめの紅茶のシフォンケーキだった。
 これまた、店に出してもおかしくないほどの出来栄えだった。
「すげえな、ケーキ屋もできるぜ?おめえ」
「大げさだよォ。本見て作ったんだもん、誰にでもできるよ?」
 蘭は照れくさそうに、それでも嬉しそうに微笑む。
 軽くて、食べやすいそのケーキを2人であっという間に平らげた後、、紅茶を飲みながら、蘭がクリスマスプレゼントの包みを取り出した。
「ハイ、新一。今年は、ちょっとがんばって2つ作ってみたの」
 照れくさそうに渡された包みを受け取り、丁寧にそれを開ける。
 中から出てきたのは、オフホワイトのセーターと、お揃いの毛糸で編まれた手袋だった。
「へえ、すげえな、上達したじゃん」
「そう?新一、冬も外にいることが多いでしょう?だから・・・」
「ああ。サンキュー」
 俺は、プレゼントを自分の脇へ置くと、ソファの下に隠しておいた、小さな箱を取り出した。
「俺からは、これ」
 金色の包装紙に包まれたその箱を渡すと、蘭は丁寧にその包みを開けた。
 中から出てきたのは、赤いビロードで作られたハート型の箱。蘭は、無言のまま、その箱を開けた。
「・・・新一・・・」
「ん?」
「これ・・・」
「うん」
 箱に入っていたのは、小さなエメラルドのはめ込まれたシルバーの可愛いリング。
 俺は、呆然としている蘭の手からその箱を取ると、中の指輪を取り出した。
「蘭、手ェ出せよ」
「え?」
「手。―――はめてやるから」
 さすがに、ちょっと照れくさくてそっぽを見て言うと、蘭は瞳を潤ませながら、右手を差し出した。
 それを見て、俺は顔を顰める。
「おめえさ・・・」
「え?」
「普通、左手ださねえか?こういうとき」
 俺の言葉に、蘭ははっとし、顔を赤らめた。
「あっ、ご、ごめん、ボーっとしてて」
 慌てて左手を出す蘭に、俺は苦笑いする。
 ま、こういうところも可愛いんだけどな。
 俺は差し出された左手を取ると、その細い薬指に、指輪をはめた。
「良かった。ぴったりだな」
「新一・・・これ・・・」
「ん・・・これは、予約。本番ときは、もっとちゃんとしたやつやるから」
 顔を赤くして言う俺を、潤んだ瞳で見ながら、蘭は首を振った。
「蘭?」
 俺は、黙って首を振る蘭に、少し不安になった。
 いや、なのか?
「これでも・・・充分だよ。新一・・・ありがと・・・」
 とうとう堪えきれなくなったのか、大きな瞳から真珠のような涙をぽろぽろと流しながら言った。
「蘭・・・」
 俺はほっとして、蘭の体を抱き寄せた。蘭も素直に俺に体を預けている。
「蘭・・・俺、きっとおめえを幸せにするから・・・今はまだ半人前で、おめえに寂しい思いさせちまうこともあるけど。でも、絶対おめえのところに戻ってくるって約束するから・・・」
「新一ィ・・・」
「だから・・・ずっと、俺と一緒にいてくれよ・・・」
「うん・・・うん・・・」
 俺の肩に顔を埋めたまま、何度も頷く蘭。
 可愛くて、愛しくて、俺は力を込めて蘭を抱きしめた。
「蘭・・・顔、上げろよ」
「や・・・涙でぐちゃぐちゃだもん、恥ずかしい・・・」
「いいから・・・」
 恥ずかしがる蘭の顔を両手で包み込み、俺のほうに向けさせた。涙に濡れた瞳が、俺を映し出す。
「蘭・・・愛してる・・・」
「新一・・・わたしも・・・」
 蘭が、ゆっくりと瞳を閉じた。俺は、そっと顔を近付け、自分のそれを蘭の唇に重ねた。
 涙で、少ししょっぱい味のする唇に、何度も角度を変えながら口付ける。
 歯列をなぞり、その隙間から舌を滑り込ませると、その口内を徘徊し、蘭の舌を絡め取る。貪るようにその唇を味わい、蘭の息が続かなくなるまで続ける。そっと盗み見た蘭の表情はせつなげに眉が寄せられ、なんとも言えない色気を醸し出していて・・・俺は、自分の体が熱くなるのを感じた。
 力の抜けた蘭の体を、そっとソファに横たえようとした、ちょうどその時―――
『ガタタンッ』
 というすごい音がして、俺たちはギョッとして思わず動きを止めた。
「な、なんだ?」
「あ!」
 音のした方を見ると・・・クリリンの入っていたカゴの蓋が開き、クリリンがカゴの外に出てちょこんと座っていたのだった。
「クリリンっ」
 蘭が、パッと俺の腕の中から飛び出し、クリリンに駆け寄る。
 突然ぬくもりを失った俺の手は、行き場を失い、宙を彷徨った。
「・・・・・」
「もう、吃驚するじゃない。このカゴ、蓋の鍵が壊れてるのね。直るかなあ。ね?新一?」
 蘭が、くりんとこっちを見て言う。
「え?あ、ああ、直せると思うけど・・・ちょっと待ってろよ」
 と、俺は力なく言うとソファから立ち上がり、ドライバーを取りに行くべく、リビングを出たのだった・・・。
「はあ・・・」
 部屋を出たとたん、俺の口から大きな溜息が漏れる。
 何でこうなるかな・・・。いいところで邪魔しやがって・・・まさか、分かっててやってるんじゃねえだろうな、あのうさぎ。などと、我ながらバカらしいことを考えながら歩いていたが・・・ふと、あることを思いつき、立ち止まる。
 そうだ・・・あの蓋を直して、ちゃんと鍵がかかるようにしておけば、もう邪魔されねえんだよな?
 ・・・なんだ、簡単なことじゃねえか。よし!ゼッテー開かないようにしてやるぞ!
 俺は、さっきまでの落ち込みはどこへやら、急に元気になって口元に不敵な笑いを浮かべながら、張り切ってドライバーを取りに行ったのだった・・・。


 そしてその夜・・・カゴの中で暴れまくるクリリンに、何度も邪魔されることになることをこのときの俺は、まだ知らなかった・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 このお話は以前のサイトでキリ番のリクエストを実施していた際に10.000番をゲットして頂いたyosirou様のリクエストによる作品です。
 ラブラブなお話は、書いてて楽しいですね。そして、新一がバカなほど楽しい(笑)
 いかがだったでしょうか?楽しんでいただけたら嬉しいです♪

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 クリスマスまであと少しですね。
 どうか素敵なクリスマスになりますように♪
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今年は3人で?~新ちび蘭←平~

Category : X'mas novels(コナン)
 「ねえ、新一、てっぺんの星つけて」
「O.K.」
 新一が脚立に乗ってツリーのてっぺんに銀色の星をつけると、見事なクリスマスツリーの飾り付けが完成した。
「すっごく綺麗!ね、新一!」
 自分の何倍もの高さのツリーを見上げ、蘭が瞳を輝かせながら言う。
 そんな小さな姿の蘭をいとおしそうに見つめながら、新一は優しい笑みを作る。
 蘭が、なぞの組織の作った薬を飲まされ、小さな体になってしまってからと言うもの、2人の距離は以前よりもずっと近いものになったようだった。
「今日は、警察からの呼び出しは断っといたからな」
「え、ほんと?」
「ああ。だから、2人でゆっくりしような」
 新一の言葉に、蘭の頬が微かにピンク色に染まり、大きな瞳は嬉しそうにきらきらと輝いた。
「じゃ、がんばっておいしいもの作るね!」
「ああ、じゃあ―――」
 と、新一が何か言いかけたとき、部屋の隅の電話が鳴り出した。
 蘭の顔が、一瞬不安の色を浮かべる。
 新一は、そんな蘭を安心させるように微笑むと、
「大丈夫だって。今日は、絶対にどこにもいかねえよ」
 と言って、受話器を取った。
「はい、工藤―――」
 と新一が言いかけたとき、通話口から離れていても聞こえるような、明るい大阪弁が聞こえてきた。
『よおっ、工藤!元気しとるかあ!?』
 その声が聞こえた途端、受話器を戻そうとする新一。と、それが見えたかのように、
『待て待て!きんなや!』
 という声。
 きょとんとして新一の様子を見ている蘭にちらりと視線を投げ、溜息をひとつつき、再度受話器を耳に当てる。
「―――んだよ」
『なんや、気ィのない声出してからに。なあ、今沙羅ちゃんはいるんか?』
 沙羅と言うのは、蘭の仮の名前である。平次とは以前ある事件で新一が蘭を連れて大阪に行ったときに知り合ったのだが、その時に平次は新一と一緒にいた蘭をいたく気に入り、何かと理由をつけては東京に来て、蘭に会って行くのだった。新一がそんな平次を快く思わないのは当然のことで―――
「―――いたら、どうだって言うんだよ?」
『いるんやな?したら、今からそっちに行くから』
「はァ?今からァ?」
 新一が思わず声をあげると、蘭が側に来て、新一を見上げた。
「どうしたの?電話、服部君でしょう?服部君、なんだって?」
「―――今から来るとか、言ってやがる」
「え、ほんと?じゃ、お料理多めに作んなきゃ!作る前に分かって良かったァ!」
 パッと笑顔になってそう言った蘭に、新一が慌てて、
「ちょ、待てよ、今日はせっかく―――」
 2人きりのクリスマスなのに―――と言いかけたが、電話の向こうの声に遮られる。
『お、今の声沙羅ちゃんやろォ?何や、お料理作ってくれるんか?楽しみやなあ!』
「お、おいっ」
『ほなら急いでそっち行くわ!』
 ガチャン!と勢い良く電話を切られ、受話器から耳を離す新一。
「―――っ、あのやろ・・・おい、蘭―――」
 と振り向き、当の蘭がもう側にいないことに気付く。早速料理の準備をしに、キッチンへと行ってしまったようだった。
「ったくゥ。おーい、ら―――」
 と、キッチンへ行こうとしたその時―――

『ピンポーーーン』

「・・・・・」
 まさか、もう・・・?
 いやな予感にその場から動けないでいると、さらに追い討ちのように聞き覚えのある声が・・・
「お―――い、工藤!沙羅ちゃーんvvおるんやろお?開けてくれや!」
 その声に、キッチンへ行っていた蘭がひょっこりと顔を出す。
「今の、服部君!?もう来たの!?」
「・・・らしいな。あいつ、この家の前から電話してきたな」
 深い溜息をつき、仕方なく玄関に向かう。
 ドアを開けると、満面の笑みを浮かべた服部平次がそこに立っていた・・・。
「よお!久しぶりやなあ」
「・・・おめえな・・・」
 新一が呆れ顔で文句のひとつも言ってやろうと口を開く。と、その横から、蘭がひょいと顔を出した。
 途端に平次の顔がパッと嬉しさに輝き、新一を押しのけ、身を屈めて蘭にずいっと近寄った。
「沙羅ちゃん!元気しとったかあ?1ヶ月も会えんで、寂しかったんやでv」
「あ・・・う、うん。は・・・平次お兄ちゃんも、元気だった?」
「もっちろんや」
「・・・おい」
 危うく、2人の世界に入ろうとするのを、新一の低い声が遮った。
「なんや、工藤。今俺は沙羅ちゃんと話しとるんやで」
「てめ・・・大体なんだって今日、ここにいるんだよ?」
「沙羅ちゃんに会いに来たに決まっとるやないか」
 さらっと言ってのける平次に、新一の眉がなおのことつり上がる。
「な・・・っ」
「せっかくのクリスマスや。かわいい沙羅ちゃんと一緒に過ごしたい思ってなあ」
「おめえな―――」
 新一の額に青筋が浮かび・・・まずい、と思った蘭が、2人の間に入る。
「ね、ねえ、とりあえず、中に入ろうよ。ここ、寒いし。ね?」
 まさに、天使の微笑。2人はおとなしく部屋の中に入ったのだった。


「で、今日は沙羅ちゃんがお料理作ってくれるんか?楽しみやなあ。沙羅ちゃんの料理はほんまおいしいからなあ」
「えへへ・・・。ありがとう、平次お兄ちゃん」
「なんか手伝って欲しいことあったら言ってな。何でもするで」
「おめえはそこに座ってろ。手伝いなら俺がする」
 間に割って入る新一。2人の間に、火花が散っていた。
「なんや、遠慮せんでもええんやで」
 平次が目を細めつつ、それでも笑みを浮かべながら言う。と、蘭はそんな空気を知ってか知らずか無邪気に微笑みながら、
「わたしは1人で大丈夫だよv平次お兄ちゃんはお客様なんだからここにいて。新一お兄ちゃんも、平次お兄ちゃんの相手しててね」
 と言ったのだった・・・。


 蘭が行ってしまって、男2人無言で向き合う。
 ―――せっかくのクリスマスだってのに、なんだってこいつと2人で向き合ってなきゃいけねえんだよ。
 新一が、イライラと視線を彷徨わせていると、平次が新一を見て、にやりと笑った。
「―――何がおかしい?」
「いいや、別に。事件に向こうてるときと、別人みたいやおもおてな」
「そっちこそ」
「そりゃそうや。なんたって沙羅ちゃんとおるんやからな。強面の殺人犯なんかとはわけが違うわな」
 真面目な顔で言う平次に、新一は半分呆れながらも馬鹿正直とも言える平次の素直さに感心していた。
「俺はおまえみたいなむっつりスケベとは違うからな」
「な・・・!おめえな―――」
「そうや!工藤、おまえお隣さんいうのを良いことに、沙羅ちゃんを1人占めしてるやろ!なんや変なことしとるんちゃうやろなあ?」
「するわけねえだろ!?なんだよ、変なことって!」
「変なことは変なことや。なんせ沙羅ちゃんはかわいいからな。おまえがいつ変な気ィ起こさんとも限らんからな」
「あのなあ―――」
 さすがに、新一が頭に来て文句を言おうとしたところへ、蘭がひょいと顔を出した。
「ね、平次お兄ちゃん、お昼ごはん食べてきた?」
 途端に、平次の顔がだらしなく緩む。
「いや、まだやけど」
「ほんと?良かった。あのね、今サンドウィッチ作ったから、持って来るね」
「ほんま?そりゃあうれしいなあ」
「飲み物は、コーヒーでいいかなあ?」
「ああ、なんでもええで。俺もてつだおか?」
「大丈夫。すぐ持ってくるからね」
 そう言ってにっこり笑うと、またキッチンへと戻る。そんな蘭をとろけそうな顔で見ていた平次。
「ほんま、ええ子やなあ。ええ嫁さんになるで。もちろん相手は俺やけどな」
 その言葉に、当然新一の顔は引き攣る。
「おめえ、あんまり調子に乗ってんじゃねえぞ」
「お、何や、やるつもりか?相手になるで」
 2人の間に火花が散る中、蘭がコーヒーを乗せた盆を手に、チョコチョコとやってきた。その姿を見て、2人は同時に蘭に駆け寄る。
「ら・・・沙羅!俺が持つから貸せよ」
「こっちは俺が持つからええよ。工藤、おまえサンドウィッチを持ってきい!」
「ああ、わかった」
 新一がキッチンへ行ってしまうと、平次はにやりと笑うと沙羅の持っていた盆を受け取り、テーブルの上へと置いた。
「ありがとう、平次お兄ちゃん」
「礼なんてええよ。それより、今日は俺、沙羅ちゃんにクリスマスプレゼントを持ってきたんやで」
「え、わたしに?」
「そうや。ほら、これ」
 といって、平次がブルゾンのポケットから、小さなピンクの袋を出した。
「で、でも、悪いよ。わたし、何も用意してないのに・・・」
 蘭が困った顔をして断ろうとするのを、平次は手で軽く制して、蘭の手にその袋を持たせた。
「ええんやって。今日は俺が勝手に来たんやし。ほら、開けてみい」
 にっこりと満面の笑みでそう言われ、蘭は戸惑いながらもその袋を開けてみた。
 中から出てきたのは、ベロア素材で出来た、鮮やかな真紅のリボンだった。蘭が、大きく瞳を見開く。
「うわあ、きれい・・・」
「せやろ?絶対沙羅ちゃんに似合うと思うんや。こんなん、俺が持っててもしゃあないし。沙羅ちゃんに貰ってもらうんが、1番なんや。な?」
平次のやや強引なせりふに苦笑いしつつも、蘭はそれを受け取ることにした。
 なんとなく、憎めない人間なのだ。
「ありがとう、平次お兄ちゃん。今度、お礼するね」
「あ、ほなら、俺からリクエストしてもええか?」
「え・・・う、うん、いいけど・・・」
 蘭の言葉を聞くと、平次はにやりと笑い、身を屈めると蘭の目の前に自分の横顔を出して見せた。
「え・・・・・?」
「ここに、ちゅvとしてほしいんやけどなあ」
 途端に蘭の顔が真っ赤になる。
「で、で、でも―――」
「早くせな、工藤のやつが戻ってきてまう。ほら、早う!」
 平次に急かされ、蘭は何がなんだかわからないうちに、ええい!と平次の頬にチュッとキスしてしまった。と、その時―――
「おい!?」
 はっと我に帰り、振り向くと真っ青な顔をしてこちらを睨んでいる新一がいたのだった・・・。


 夜になり、蘭の作った料理もテーブルに並び、3人でのクリスマスパーティが始まった。
 平次は相変わらず上機嫌。新一は不貞腐れ、蘭は・・・
「沙羅ちゃんはまだなんか?」
「すぐに来るだろ。着替えにいっただけなんだからよ。それよりも、また今度あんな事したら出入り禁止だかんな」
 と言って、新一は平次を睨んだ。
 あんなこと、と言うのはもちろんキスのことだ。蘭が平次にキスしているのを見て、烈火のごとく怒った新一。蘭に、平次からプレゼントを貰ったお礼なのだと説明されても、当然納得はいかない。が、泣き出しそうな蘭の顔を見て、しぶしぶ許すことにしたのだ。それでも面白くないことに変わりはない。
 特に新一が怒ってもものともしない平次の態度には、どうにも腹が立って仕方がないのだ。
「なんや、怖い顔して。まだおこっとんのかいな。心の狭いやっちゃなあ。こっちは沙羅ちゃんにたま~にしか会えんのやから、あのくらいええやないか」
 相変わらずな平次に、溜息をつく。と、そこへ玄関の開く音が聞こえてきた。
「お、沙羅ちゃんが戻って来たんやな」
 2人同時に入り口のほうを見る。
「お待たせしてごめんね」
 そう言って入って来た蘭は・・・。
 髪には、平次に貰った真紅のリボンとその色に合わせた真っ赤なドレス。そして唇にはちょっと濃い目のルージュをひいていた。今の蘭にはちょっと背伸びしている様にも思われるそれが、ドレスとリボンの色に合ってとてもおしゃまに見えていた。
 あまりの可愛らしさに、2人とも暫し呆然と蘭を見つめていた。
 口をぽかんと開け、無言で蘭を見つめる2人を見て、蘭は首を傾げた。
「2人とも、どうかした?―――あの、わたしの格好、変?」
 ―――やっぱり口紅はやめたほうが良かったかなあ。
 なんとなく不安げな表情になってしまった蘭に、2人ははっとして我に帰る。
「変なわけ無いやろ!?ごっつう似合っとるわ!なあ、工藤!」
「あ、ああ」
「ほんと?」
 ちょっと頬を染めて嬉しそうに微笑む蘭が、たまらなくかわいかった。
 
 3人で席につき、蘭が腕を振るった料理を食べ始める。
 体が小さくなっても、料理の腕は変わらず見事なものだった。平次にべたべたに褒められ、少々困惑しながらも、とても嬉しそうな蘭。平次のことは気にいらないものの、蘭の可愛らしさと料理のおいしさに新一の気持ちも和らぎ、時間は和やかに過ぎていった。
 そして料理のあと、クリスマスケーキも3人で食べ、時間はあっという間に過ぎてゆき・・・


 「・・・どうすんだよ、こいつ・・・」
「どうするって言ったって・・・」
 2人が顔を見合わせ、同時に溜息をつく。
 ソファには、なぜか熟睡状態の平次が横たわっていた・・・。
「疲れてたのかな?」
「シャンパンに酔ったんじゃね―か?」
「え、あのシャンパン、ノンアルコールじゃなかったの?」
「ほんのちょっと、入ってんだよ。っつってもジュースみてえなもんだし、普通はあんくらいで酔っぱらわねーけどな」
 と、新一が呆れたように肩をすくめる。
「じゃ、やっぱり疲れてるんだよ。向こうで、忙しかったんじゃない?」
 確かに、2週と空けず蘭に会いに来ていた平次が、ここ1ヶ月はまるきり音沙汰無しだったのだ。大阪のほうで、ちょっとした難事件があったことは、新一も知っていた。こっちに来てから、そのことには一言も触れていなかったが、おそらくその事件が思いのほか大変なものだったのだろう。
「ね、寝室に運んであげようよ」
 と、蘭が言うと新一がいやそうな顔をする。
「おい、ここに奴を泊めんのか?」
「だって、起こすのかわいそうじゃない。どうせ明日は休みなんだし。いいでしょう?」
 蘭に上目遣いでお願いされ、新一が断れるわけがない。
 新一は仕方なく平次を担ぎ、来客用の部屋へ連れて行ったのだった。
「で、おめえはどうすんだ?」
 再びリビングに戻り、新一が聞く。
「どうするって?」
「今日は、帰るのか?」
「今日は・・・博士が、泊まってきても良いとは言ってくれたけど・・・」
「けど?」
「でも、服部君が・・・」
「服部がいるとまずいことでもあんのか?」
「そうじゃないけど」
「俺、やだぜ?せっかくのクリスマスをあいつと2人で迎えるなんて」
 心底いやそうな顔をする新一に、蘭は一瞬きょとんとしてから、ぷっと噴出した。
「笑うなよ」
「ごめ・・・。新一ってば、ほんとにいやそうな顔するんだもん。服部君がかわいそうだよ?」
「かわいそうじゃねえよ」
 まだくすくすと笑いつづけている蘭を横目で睨み、新一はふと手を伸ばして蘭の髪に触れた。
「・・・蘭」
 低く、甘さを含んだ声に、蘭はドキッとして笑うのをやめた。
「今日、泊まって行くだろ?」
「あ、あの・・・」
「泊まって、いくだろ?」
 顔を寄せ、耳元で囁かれ、蘭はポ―っとなりながらこくりと頷いた。
 新一は、蘭の頬に軽くキスをするとひょいと蘭の体を抱き上げた。
「し、新一」
「・・・だめって言っても、聞かないぜ?今日は散々邪魔されてっからな」
 にやりといたずらっぽい目で見つめられ、蘭の顔が赤く染まる。
 新一は蘭を抱っこしながら、階段を上っていった。
 そして、自分の部屋へ入ろうとしたその時―――
「何してんねん!工藤っ」
 平次が、客間の前で腕を組んで、こちらを睨みつけていたのだった・・・。
「服部、おめえ・・・」
「沙羅ちゃんを連れてどこ行くんや?まさか、おまえの部屋に連れてって、一緒に寝よう思ってるんちゃうやろなあ」
「寝てたんじゃねえのかよ・・・」
 新一ががっくりと肩を落とす。平次はにこにこしながら2人の側へ来た。
「ああ、なんや、ちょっと寝たらえらいすっきりしてしもうたわ。んで、ちょっと小腹空いてんねんけど、残りもんでええから、何かあるかな」
「あ、う、うん。まだお料理残ってるから・・・。じゃ、あっためなおして食べる?」
「おお。沙羅ちゃんやってくれるんか?」
「うん、良いけど・・・」
「そりゃええ。ほんならいこか」
 平次はそう言うと、新一の腕の中からひょいと蘭を抱えあげると呆然としている新一を置き去りにして、さっさと階段を下りていったのだった。
「―――お、おいっ、ちょっと待てって!」
 慌てて後を追ってくる新一。
 蘭は、にこにこと楽しそうな平次の腕の中で、どうにも困ってしまったのだった・・・。


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 新ちび蘭←平です♪どうでしょう?
関西弁、難しいですね。
すっごく変だと思うんですけど、ご勘弁を×××

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white angel ~新ちび蘭~

Category : X'mas novels(コナン)
蘭はその日、新一の家で黙々と働いていた。
 部屋の飾り付けから、料理、ケーキ作りまで、たった一人、小さくなってしまった体でチョコチョコと働くその姿はいじらしくもあったが・・・。
 時折大きなため息をついては、涙を堪えるように口をきゅっと結び、首をぶんぶんと振って、また動き出す。そんな動作を繰り返していた。
 時々窓から外を見る。どんよりと厚い雲が空を覆っていて、今にも雪が降り出しそうだった。
 

今日はクリスマスイヴだ。雪が振ったらさぞロマンチックだろうと蘭は思った。
 だが・・・
 蘭は時計を見て、また溜息をついた。
 ―――今日は、2人でパーティしようねって言ったのに・・・。
 また、涙が出そうになって、急いでぶんぶんと首を振り、それを堪える。
 博士は今日はマージャン仲間とドンチャン騒ぎである。新一と蘭を気遣ってのことかもしれないが1人モノが集まってのそれは毎年恒例のものらしかった。
 蘭はもう何日も前から飾り付けの準備をし、料理を考え、今日の日を楽しみにしていたのだ。新一も、何も言わないがクリスマスツリーを出してくれたりして、結構楽しみにしているようだったのだ。
 それなのに・・・
 また、事件で呼び出されてしまった。
「心配すんなよ。さっさと片付けて帰ってくるからさ」
そういって出かけていった新一。蘭もそれを信じて待っているのだが・・・
「もう、6時だよ、新一・・・」
 部屋の飾りつけも、料理の準備も大方終わってしまった。
「早く、帰ってきて・・・」
 決して本人には言えない言葉が、口から零れる。ソファに座り、膝を抱えて顔を伏せているうちに、いつしか蘭はうとうとし始めていた・・・。


 寒さに体が震え、ふと気付くともう時計は8時を回っていた。
「わたし、寝ちゃったんだ・・・。新一・・・まだ帰ってないの・・・」
 蘭はまた溜息をつき、外を見る。
「あ・・・雪・・・」
 窓の外は、さらさらと降る雪で幻想的な雰囲気を作り出していた。
 蘭は、玄関に行くと靴をはき、中庭に出てみた。
「きれい・・・」
 空を見上げる。降り続ける雪が、蘭の髪や頬に落ちては溶けてゆく。
「新一も、この雪見てるかな・・・」
 柔らかな雪が、蘭の凍えそうな心に優しく降り積もる。自然と蘭の顔に笑みが浮かぶ。
 目を瞑り、肌だけで雪を感じる。
 ―――大丈夫・・・。だって、約束したもの。新一は、約束破ったりしないもの。
だから、大丈夫・・・。
 そのとき・・・ふと後ろに人の気配を感じたかと思うと、蘭の体を暖かいものが優しく包んだ。
「風邪、引くぞ」
 新一が、自分の着ていたコートを蘭にかけ、優しく微笑んでいた。
「新一・・・」
「ごめんな、蘭、遅くなって」
 新一が、しゃがんで蘭と目線をあわせる。蘭は首を振り、にっこり笑った。
「大丈夫。だって約束したもん。新一、きっと帰ってきてくれるって思ってたよ」
「蘭・・・」
 新一は堪らなくなり、蘭の小さな体をぎゅっと抱きしめた。蘭もされるがままになっている。
「ホワイト・クリスマスなんて、すごいね」
「ああ・・・きれいだな」
「うん。―――新一と見れて、良かった」
 恥ずかしそうに言う蘭。そんな蘭の顔を覗き込み、はにかむような笑顔に見惚れる。
「俺も・・・蘭と見れて良かったよ」
「ふふ・・・」
「・・・帰ってきたら、蘭の姿が見えないから、怒って帰っちまったのかもしれないと思ったんだ」
「そんなこと、しないよお」
「そうだよな・・・。それで、外を見たら・・・最初、天使がいるのかと思ったよ」
「ええ?」
 新一の言葉に、蘭は真っ赤になる。そんな蘭がかわいくて、新一はくすくす笑う。
「ほんとだぜ?雪の中に、白い服着た蘭がいてさ。天使みたいだった。そのままにしといたら、どっかに消えちまいそうで、慌てて掴まえに来たんだ」
「・・・わたしは、どこにも行かないよ。ずっと新一の側にいるもん」
 頬をピンクに染めながら言う蘭に、新一は目を丸くする。
「蘭・・・」
「いつも、新一の側にいたい・・・。来年も側にいても良い?」
「・・・あたりまえだろう?たとえおめえがいやだっつっても、俺が離れねえからな。ずっと、蘭の側にいるよ。絶対離れねえ」
「新一・・・」
 蘭が、小さな手を新一の首に回し、きゅうっと抱きつく。新一は蘭の髪を優しくなで、そのつややかな黒髪に、そっとキスをした。蘭が驚いて、パッと離れる。新一が、ちょっと悲しそうな顔をした。
「いやか?」
 蘭は、真っ赤になりながらもぶんぶんと首を振った。
「い、いやじゃ、ないよっ。吃驚しただけで・・・。新一だったら、全然いやじゃない」
「らん・・・」
 新一は嬉しそうに蘭を見詰める。蘭は恥ずかしそうにもじもじしながら、新一を上目
遣いで見つめた。
 2人の目が合い、じっと見詰め合う。まるで、時間が止まってしまったようだった。降り続ける雪だけが、静かに時を刻んでいる。
 新一の大きな暖かい手が、蘭の冷えてしまった頬に触れる。その小さな顔を両手で包
み込むように、頬に手を添えると、そっとその顔を上向かせる。蘭は、少しだけ潤んだ瞳を閉じた。
 2人の距離がゆっくりと近づき、やがて新一の冷たい唇が蘭の小さなそれに触れた。
 優しく、掠めるようなキス。蘭は真っ赤になって俯いてしまった。新一はそんな蘭の顔をもう一度自分のほうに向かせると、再び唇を重ねた。優しく、何度も啄ばむようなキスを繰り返す。
 何度目かのキスのあと、新一はようやく蘭の唇を解放した。
 蘭は繰り返されたキスのせいで頬が上気し、瞳は潤んでいた。
 新一がくすっと笑うと、蘭はちょっと拗ねたように軽く新一を睨んだ。
「もう・・・」
「蘭・・・俺、おなかすいたんだけど」
 という新一の言葉に、蘭は一瞬きょとんとし、やがてぷっと噴出した。それを見て、今度は新一が蘭を睨む。
「なんだよ、仕様がねえだろ?朝、ここで朝食を食べて行ったきり、なんも食ってねえ
んだから」
「うん、そうだと思って、たくさん作っといたよ。新一が好きなもの」
「んじゃ、中に入るか」
 新一は優しく微笑むと立ち上がり、蘭の手を引いた。蘭はその手をきゅっと握り返し、新一と一緒に歩き出した。

 2人きりのクリスマスパーティを始めるために並んで歩いていく姿を、降りしきる雪だけが優しく見守っていた。

その後、2人がどんなクリスマスを過ごしたのか。それは、2人だけの秘密。
そう。雪だけが知っているのです。2人きりの甘いクリスマスを・・・。

 ―――来年のクリスマスも、絶対一緒にいようね―――

 小さな白い天使の囁きが、優しく雪にとけていった・・・。



                         Fin
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

以前にアップしたクリスマス小説です♪
新ちび蘭のクリスマス特別バージョンです。
覚えてる人もいるかな?
このお話はあくまでも番外編としてお読みくださいね♪

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 というわけで、久しぶりのアップになってしまいましたが、お楽しみいただければ幸いです♪
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miracle christmas ~新蘭~

Category : X'mas novels(コナン)
12月24日、クリスマスイヴ。
誰もが浮かれ、はしゃいでいるこの日に、蘭は一人学校にいた。
夜の8時。暗い教室の中、月明かりだけがほのかに蘭を照らし出していた。
「新一・・・。やっぱり今年も帰って来れないのかな・・・」
 窓から月を見上げながら呟く蘭。言葉と一緒に白い息が吐き出される。
「今日は・・・どこにいるのかな」
 そう呟いたときだった。突然、教室の後ろのドアが、ガラッと開かれた。
「!!?」
 驚いて振り向く蘭。誰もいないと思っていた学校に忍び込み、教室に入ってしまったのを、誰かに見つかってしまったのだろうか?
 だが、そこに立っていたのは、蘭が予想もしていなかった人物で・・・
「蘭・・・」
 その人物は、蘭の姿を見つけるとほっとしたようには―っと息を吐き出して言った。
「おめえ・・・何してんだよ、こんなとこで・・・」
「し・・・んいち・・・?」
 蘭は、信じられない思いで、その姿を見つめた。
 会いたくて会いたくて、仕方がなかったその人が、今自分の目の前にいる。
 ―――これは、現実?それとも、夢・・・?
「おい、蘭・・・?」
 目を見開いたまま、自分を見つめて何も言わずにいる蘭を、不思議に思いながら新一が近づく。
「どうしたんだよ?」
「ほんとに・・・新一・・・?」
「あたりまえだろ?他に何だっつーんだよ?」
「だって・・・新一がここに来るなんて・・・」
「―――って、じゃあ、他に誰が来るわけ?おめえ、ここで誰かと会う約束でもしてんの?」
 眉を顰め、蘭を軽く睨みつける新一。
 ―――ほんとに、新一だ・・・
 そう思った途端、蘭の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
「お、おい、蘭?」
 新一は、あせって蘭のそばに駆け寄ると、その顔を覗き込んだ。
 その瞬間、蘭は新一の胸に飛び込んだ。
「蘭・・・?」
「う・・・ばかー!!今まで・・・どこに行ってたのよォ!?どれだけ・・・わたしが、心配・・・」
 堰を切ったように声をあげて泣き出した蘭の肩に、新一はそっとその手を置いた。
「ごめん、蘭・・・」
「うう・・・コナン君まで・・・いなくなっちゃって・・・寂しくって・・・」
「うん・・・」
「新一・・・連絡くれないし・・・もう、わたしのことなんて、どうでもいいんだと・・・」
「んなわけねえだろ?その・・・俺の関わってきた事件が、漸く大詰めになってたもんだから・・・連絡できなくて、ごめん・・・。どうしても、今日までに帰ってきたくて、急いでたんだ」
 新一の言葉を聞きながら、ようやく落ち着いて来た蘭が、顔を上げた。
「事件、終わったの?」
「ああ、終わった。もうどこにもいかねえよ」
「ホント・・・に?わたし・・・もう待ってなくて良いの・・・?」
「ああ。ごめんな、ずっと待たせて・・・」
「う・・・新一ィ・・・」
「泣くなって・・・。それよりおめえ、何でこんなとこにいたんだ?すげえ探したんだぞ?」
 ふてくされたように言う新一を、蘭はきょとんとした顔で見つめ、
「そういえば、良く分かったね、ここ」
「全然わかんなかったよ。思いつく限りのところ探し回って、もうどこ行って良いかわかんなくなって・・・。おめえんちで待ってようかと思ったんだけど、ふと、思いついて・・・」
「ここに来たの?」
「ああ。特に理由はねえんだけど、なんとなくおめえがいるような気がして・・・」
「そっか・・・。今日はお父さんとお母さん、2人でレストランで食事してるの。わたしがセッティングしてね」
「ふーん」
「でも、そしたらあの家にわたし1人でしょう?なんか1人でいるのいやで・・・でも、街に出ても回りはカップルばっかりだし。どうしようかなって思って・・・。気が付いたら学校の前にいたの」
「ここにいても1人だろうが」
「そうだけど・・・」
「ったく・・・あせったんだからな。おめえが・・・もしかしたら誰かと出かけちまってんじゃねえかと思って・・・」
「誰かって?」
 蘭がきょとんとした顔で聞く。
「・・・別に・・・」
 新一はなぜか、少し顔を赤らめて横を向いた。そして、急に何か思いついたように、
「あ、そうだ。これ、サンキューな」
 と言って、新一は持っていた手提げ袋から、青い包装紙の包みを見せた。
「!それ・・・わたしが阿笠博士に預けた・・・」
「ああ。ちょうど家から出た時に博士に会ったんだ」
「・・・そっか・・・新一の家で待ってれば良かったね」
「けど、結局会えたんだからいいけどな。開けて良いか?」
「うん」
 新一は包みを開けると、中からオフホワイトのセーターを取り出した。
「なんか、いつも同じようなものなんだけど・・・その、他に思いつかなくて・・・」
 蘭が、頬を染めて恥ずかしそうに言う。新一はそんな蘭を愛しそうに見つめ、
「去年より上達したんじゃねえか?・・・サンキュー」
「えへへ・・・」
 蘭が嬉しそうに、頬を染めて笑う。
「俺からも、プレゼントあるんだけど・・・」
「え、ほんと?」
「ああ・・・蘭、手えだして」
「手?どっちの?」
「・・・左、かな」
 なんとなく新一の顔が赤い。蘭は不思議に思いつつも、左手を新一の前に出した。
 その蘭の手を取り、新一はポケットからそれを取り出すと、薬指にはめた。蘭の顔が、見る見る紅潮していく。
「し、新一、これ・・・」
 それは、小さなエメラルドの埋め込まれた、シルバーのリングだった。シンプルなデザインのそれは、蘭の細い指にとてもよく似合っていた。
「蘭・・・今まで待っててくれてありがとう。もう、絶対どこにも行かないから・・・。これは、その約束のしるし・・・。本物は、俺が自分で稼げるようになってから、な」
 照れたように言う新一を、蘭が潤んだ瞳で見上げる。言葉が出てこなかった。
 何も言わない蘭を、ちょっと不安そうに見る新一。
「蘭・・・?その、迷惑、だったか・・・?」
 蘭は、その言葉にはっとし、ぶんぶんと首を振った。
「ち、ちが、なんて言って良いかわかんなくて・・・。すごく、嬉しいよ。ほんとに・・・わたし、これ貰ってもいいの・・・?」
「あたりめえだろ?おめえ以外にやるつもりねえよ」
「新一・・・」
 蘭の瞳から、ぽろぽろと涙が溢れ出した。
「蘭、俺・・・蘭が好きだ。ずっと前から、好きだった」
「うん。わたしも・・・ずっと新一のこと、好きだったよ」
「蘭・・・」
 新一は、蘭の頬を両手でそっと包み、顔を上向かせると、その唇に自分のそれを重ねた。
 柔らかい唇を、味わうように口付ける。蘭は一瞬吃驚したように身を硬くしたが、やがて力が抜け、されるがままになっていた。
 長いキスのあと、新一は蘭の唇を解放し、その瞳を見つめた。
「蘭・・・。覚悟しとけよ?これからはゼッテーおめえをはなさねえからな」
 蘭は、ふんわりと微笑むと、頷いた。
「うん・・・。離さないで、絶対・・・」
 外では、いつのまにか雪が降りはじめていた。



「・・・ね、新一・・・」
「ん?」
「今は、何も話さなくて良いから・・・そのうち、わたしにも話してくれる?今までのこと・・・」
「蘭・・・」
「少しずつでいいから・・・コナン君のことも、哀ちゃんのことも・・・本当のこと、話してほしいの」
 新一は、驚いて目を見開いた。蘭は、窓の外を見つめていた。
「わたし、待ってるから・・・新一が話してくれるまで・・・」

 それから2人は、暫く黙ったまま、窓の外の雪に見惚れていた。
 どのくらい時間がたったのか。新一は、蘭の吐く息が白いのを見て、体が冷え切っていることに気付いた。
「蘭。俺んちにいかねえか?」
「え?」
「ここにずっといるわけにいかねえだろ?おっちゃんたちもいつ戻るかわかんねえし・・・ひょっとしたら戻ってこねえかもしんねえし」
「ふふ・・・そうだね」
「それに・・・まだ、離れたくねえし・・・」
 赤い顔でそう言う新一を見て、蘭は嬉しそうに笑った。
「うん。ね、じゃあクリスマスケーキ買っていこう?あと、チキンとか・・・」
「今頃売ってるか?」
「あるところにはあるのよ。ね、行こう」
「ああ」
 嬉しそうに新一の腕を掴み、先に歩き出す蘭と一緒に、新一も歩き出す。
 2人学校の外に出る頃には、もう雪は止んでいた。寒さは一段と厳しくなっていたが、今の2人にはそんなことは何の妨げにもならないようだった。
 頬を上気させながら歩いていく2人。まるで2人の周りだけが、春になってしまったかのように暖かい空気に包まれていたのだった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 クリスマス小説2つ目です♪
 あと3つ?だったかな?
 できれば・・・今年のオリジナルも、アップできたらいいなあと思ってるんですが・・・
 あまり期待せず、ちょこっとだけ楽しみにしててくださいまし。

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secret christmas~キ蘭~

Category : X'mas novels(コナン)
今日はクリスマスイヴ。街は派手なイルミネーションとクリスマスソング、そして恋人達で溢れていた。
「いいなあ・・・」
 ポツリと呟く。
 蘭は1人、屋上で街の灯りを見つめていた。父親は蘭の計らい(企み?)で母の英理と2人でレストランへ。コナンは少年探偵団と一緒に阿笠博士の家のクリスマスパーティに出かけている。蘭が1人になると知り、残ると言っていたのを蘭が無理やり行かせてしまったのだ。
「今日は・・・コナン君とは過ごせないよ・・・」
「どうして?」
 突然後ろから声をかけられ、蘭は吃驚して振り向く。
「キッド!!」
 白い装束姿の怪盗キッドが、優しい笑みを浮かべ、蘭を見つめていた。
「どうして、彼とは過ごせないんだい?」
 繰り返される質問に、蘭は俯いた。
「―――責めてしまいそうで・・・怖いの。彼には守らなきゃならない秘密がある。それがわかっているのに・・・。こんな日に2人きりになったらきっと責めてしまうから」
「だったら両親を会わせたりしなければ良いのに」
「だって・・・きっと2人とも本当は一緒にいたいと思ってるはずだから。それなのに、意地を張って会おうとしない。だから・・・」
「―――損な性格だね」
 キッドが少し呆れたように言うと、蘭はちょっと笑い、
「そうかもね。それで・・・あなたはどうしてここにいるの?彼女を待たせてるんじゃない?」
 蘭の言葉に、キッドはちょっと顔を歪める。
「俺にまで、気を使ってるの?」
「だって・・・待ってるんでしょう?彼女」
「彼女って誰だよ?俺は誰とも約束なんかしてないよ」
 少し怒ったように言うキッドに蘭は目を丸くする。
「今日は・・・蘭と一緒にいたくて、ここに来たんだけど?」
「―――嘘・・・」
「嘘なんてつかねえよ。蘭が、あの探偵君と一緒にいるようだったら黙って帰るつもりだったけど」
「え・・・」
「でも・・・わかんねえな。蘭があいつのこと考えてるってだけでこんなに・・・嫉妬しちまうんだから。一緒にいるところなんか見ちまったら、耐え切れなくて無理やり攫って行っちまうかもしれない」
 キッドがにやっと不敵な笑みを浮かべる。蘭は頬を赤らめながらも拗ねたような表情になり、
「もう、そんなことばっかり言って・・・」
 と言った。そんな蘭がかわいくて、くすくす笑いながら、その細い腰を抱き寄せる。
「だって俺、蘭のこと好きだもん」
「またそんな―――」
 と、言葉を続けようとした蘭の唇を、キッドのそれが塞ぐ。
 蘭の瞳が大きく見開かれる。
 触れるだけのキスのあと、キッドは蘭を真剣な眼差しで見つめた。
「嘘じゃ、ねえよ・・・。俺は蘭が好きだ・・・。その瞳も、唇も・・・蘭の全てが好きだ。蘭が・・・あいつを好きでも・・・」
「キッド・・・わたし・・・」
 再び何か言おうとした蘭の唇を、もう一度塞ぐ。
 その先は、聞きたくない。何も、言わせない。もう止まれないんだ・・・。
 激しく、長い口付け。震える舌を絡めとり、貪るように続けられるキスに、蘭の体から力が抜ける。
 かくん、と膝が折れ、キッドの胸に寄りかかるようにして体を支える。苦しそうに顔を歪める蘭を見て、ようやくキッドは唇を離す。
 潤んだ瞳が、キッドを見上げる。
「・・・ばか・・・」
「・・・かもな。叶わないってわかってるのに、こんなに好きになっちまうんだから」
「違うわよ!」
 自嘲気味に囁かれたキッドの言葉を遮るように、蘭が叫ぶ。
 キッドが驚いて蘭を見る。蘭は、怒ったような顔でキッドを見つめていた。
「蘭・・・?」
「もう・・・どうして勝手に決めちゃうのよ・・・。わたしだって、キッドのこと・・・」
 そこまで言って、蘭は頬を染め、俯いた。キッドは信じられないような想いで、蘭を見つめる。
「俺のこと・・・なんだよ?蘭が好きなのは、あいつだろ?だから今日だって・・・」
「・・・好き、だった。でも・・・あなたに惹かれてしまったの。だから・・・余計に今日は彼とは居られなかった。彼のことを責めて・・・そして、あなたへの想いも隠せなくなると思ったから・・・」
「ら・・・ん・・・」
「でも・・・こんな想いを抱えてるの、わたしだけだと思ってた・・・。あなたには、可愛い彼女がいるから・・・」
「俺だって!・・・俺だけだと思ってた。好きなのは・・・。蘭はずっとあいつのことしか考えてないんだと・・・」
 蘭がキッドに視線を戻す。
 2人は見つめ合い、そしてどちらからともなく、またキスをした。今度は甘く、痺れるようなキス。
 唇が離れたとき、2人は同時にクスリと笑った。
「最高のクリスマスプレゼント、だな」
「あ、ごめん、わたしプレゼント何も用意してな―――」
 言いかけた蘭の唇を、キッドの指が塞ぐ。
「今、言ったろ?最高のクリスマスプレゼント、貰ったから良いんだよ」
「―――うん」
「今日は・・・ずっと側にいたいな・・・」
「あ、でも・・・」
 小五郎はわからないが、コナンはもう帰ってくるかもしれないのだ。
「わかってるよ。蘭は・・・どうするつもりだった?」
「え?」
「あいつが帰ってきたら・・・2人きりだろう?」
「・・・さっさと寝ちゃおうかなって・・・」
「そっか。じゃあ、そうしろよ」
「え・・・」
「蘭が寝ちゃったらあいつも寝るだろう。あいつが完全に寝ちまったら・・・もう1度会いに行くよ、蘭の部屋に」
「―――うん」
 蘭が、嬉しそうにふわりと微笑む。キッドはそんな蘭をいとおしそうに見つめ、
「蘭まで、寝るなよ?」
「うん。待ってるから―――」
 再び、唇を合わせる。
 その瞬間、キッドは何かの気配を感じ取った。
「―――あいつが、帰ってきたらしいな」
「え?」
 蘭が、吃驚してキッドから離れる。
「今、階段を上がってくるところだ。じゃあ、俺は一旦退散するよ。―――蘭、忘れんなよ?」
 キッドがいたずらっぽい笑みを浮かべ、ウィンクをすると、蘭も笑って頷いた。
「キッドこそ、忘れないでね」
「あたりまえだろ?―――じゃあな」
 キッドが蘭から離れると、蘭は後ろを向き、駆け出した。
 その後姿を見つめ、キッドもその場を離れる。
 
 ―――secret christmas
 それは誰にも言えない秘密の時間。
 誰かを傷つけても、それでも会いたいと願う。
 どんな罰が待っていても、もう止めることはできない。
 本当の愛を知ってしまったから。
 その愛が罪なものでも、触れずにはいられない。
 お互い求めているものが一緒なら、
 きっとどこまでもいけるだろう。
 後ろを振り返らずに、どこまでも―――




              Fin
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

キ蘭のクリスマスです。
12月になったので、今までに書いたクリスマス小説を順番にアップしていこうと思ってます♪

 皆さんにもちょっと早くクリスマス気分を味わっていただけたらと思います♪
 
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キス未遂事件~コナン編~

Category : novels(コナン)
 「そろそろ帰ってくる頃かな」
 コナンは毛利探偵事務所のソファで、1人呟いた。小五郎は椅子の上で、ガーガーといびきをかいて眠っている。
 ったくしょーがね―な―、眠りの小五郎はよ、などと思いつつ、コナンは窓際に歩いて行くと、外を眺めた。外はもう日が暮れてきていて、通りを行き交う車のライトがきれいだった。
 そろそろ、蘭が部活を終えて帰ってくるはずだった。
 ボーっと下の通りを眺めていると、見覚えのある車が前の通りに寄って止まった。
 ―――あれは、確か・・・
 車の運転席のドアを開けて出来たのは、新出智明だった。
 ―――まさか・・・
 新出が車の前を回って、助手席のドアを開けた。そこから出てきたのは蘭だった。
 ―――なんで、新出と?
 コナンの胸に鈍い痛みが走る。
 蘭が、新出にぺこんと頭を下げる。お礼を言っているようだった。通りを行き交う車の音が煩くて、話し声までは聞こえないが、蘭は何やら恥ずかしそうに頬を染めている。コナンはイライラと2人を見ていた。新出が、ふと階段を見て何事か言った。そして、蘭に向かって何か言う。と、蘭が真っ赤になって目を見開き、手をぶんぶんと振った。
 ―――何の話をしてるんだ?何で赤くなってんだよ!?
 コナンは、我慢が出来なくなって叫んだ。
「蘭ね―ちゃん!!」
 2人が声に気付いて、2階の事務所を見上げた。
「コナン君!ただいま!」
 蘭が、のんきにニコニコ笑って言う。
 新出が、
「やあ」
 と言って、手を上げる。
 コナンは、チロッと新出を睨み、パッと後ろを向くと、急いで事務所を出て蘭の元へ向かった。
「蘭ね―ちゃん、どうしたの?」
 蘭のところへ駆け寄ると、コナンは新出と蘭の間に入り込むようにして立った。
「あ、あのね、ちょっと足、捻挫しちゃって・・・。新出先生のとこで見てもらってたのよ。そしたら、もう診療時間も終わりだからって、車で送ってくださったの」
「捻挫?大丈夫?」
「うん。そんな大したことはないの」
 と、蘭が笑って言うと、新出が
「馬鹿にしちゃいけませんよ。無理をして長引いちゃいけないからね」
 と、心配そうに言う。
「ここの階段、3階まで上がるのはちょっときついでしょう。おぶって行こうかと思ったんですが・・・」
「そんな!とんでもないです」
 蘭が赤くなって首を振る。
 ―――なるほど、さっき赤くなっていたのはそういうことか。それにしても・・・
「蘭ね―ちゃん、僕が肩を貸すよ」
「コナン君じゃ、ちょっと大変だと思うよ」
 新出が笑って言った。2人の間に、なんとなく緊張が走る。
「そうですよね。コナン君じゃ、潰れちゃいそう・・・」
 そんな空気に気付かず、蘭が呟く。
「僕が肩を貸しますよ。おぶるわけじゃないから、いいでしょう?」
 新出が、蘭に微笑みながら言うと、蘭も遠慮しながらも、納得したようだった。
 面白くないのはコナンのほうだった。
 蘭が新出の肩につかまり、新出が蘭の体を支えるように腰に手を回し、階段を上って行くのを拳を握り締めながら、睨んでいた。
 ―――くそっ、俺の体がこんなじゃなかったら―――!!


「―――ありがとうございます、先生」
「いえ、これ位、気にしないでください。それじゃあ、僕はこれで―――」
「あ、あの、少し上がっていきませんか?コーヒーくらい、入れられますから・・・」
 蘭が言うのを聞いて、コナンはジト目で蘭を睨んだ。蘭はただ単に、送ってもらったお礼として言っているのだろうが・・・。
 新出は、蘭の言葉に一瞬うれしそうな顔をしたが、すぐに残念そうに、
「すいません。実は、これから人と会う約束をしているので、せっかくなんですが・・・」
 と言った。
 コナンはホッと息をついた。
「あ、そうなんですが。わたしこそ、すいません。わざわざ送って頂いて・・・。今度、改めてお礼しますから」
「気を使わないでください。当然のことをしたまでですから」
 と言って、新出はニッコリ笑って蘭を見た。そして、ちょっと視線を落としてコナンを見た。その目には、微かだが挑戦的な輝きが見えたような気がした。
 自分の部屋へ行き着替えて出てきた蘭を、廊下で待っていたコナンが見上げる。
「?どしたの?コナン君」
 不機嫌な顔をしているコナンを、蘭が不思議そうに見る。
「―――なんか、ずいぶんうれしそうだね、蘭ね―ちゃん」
「え?そう?そんなことないけど・・・」
「新出先生に送ってもらって、うれしかった?」
「え?別に・・・新出先生、優しいから、たまに部活終わって1人で帰ってるとき、途中で会うと送ってくれるのよ。だから、なんか悪いなあとは思ってるけど―――」
「ちょ、ちょっと待って!」
 コナンは、慌てて蘭の言葉を遮った。
「ん?」
「あ、新出先生に送ってもらうのって・・・今日だけじゃなかったの?」
「うん。帰る時、新出先生のお宅の前通るでしょ?その時にね、時々先生車を磨いてたりするの。で、挨拶して・・・『もう暗いから送りましょう』って・・・いつも悪いから断ろうと思うんだけど・・・。あの笑顔で言われると、断りきれなくて・・・」
 と、ちょっと困ったように笑って、蘭は言った。
 ―――んだよそれ!んな時間に車磨いてるって!?ゼッテ―待ち伏せしてるに決まってんじゃねーか!何でそんくらいわかんね―んだよ、この女は・・・。
 怒りのあまり黙ったまま下を向いてしまうと、蘭は何を勘違いしたのか、
「あ・・・コナン君、もしかしておなかすいた?ゴメンね、今すぐ作るから」
 と言って、捻挫した足を庇いながら、台所へ向かって行った。
 その様子を見て、コナンははっと我に返った。
 ―――そうだった。蘭の奴、捻挫してたんだっけ・・・。今日送ってもらったのは仕方ない。としても、それまでのことは・・・。コナンとしては、新出にも頭に来ていたのだが、それ以上に、無防備すぎる蘭に腹を立てていたのだ。なんだってそんなにあの先生のことを信用しちまうんだよ?あの人のあの目・・・あれは、絶対に蘭に気があるのだ。車を磨く振りをして蘭を待ち伏せしているのを見ても、それは明らかなのに・・・!
 ムカムカと腹を立てながら、コナンは居間へ向かった。その後も、全く様子の変わらない蘭にイライラしながら、コナンは寝るまでの間、どうにか平静を保とうとしていた。


 夜、コナンはなかなか眠れずに悶々としていた。
 夜中の12時になろうとした頃、コナンはトイレにたった。
「は―――、今日、俺眠れっかな――」
 1人ぶつぶつ呟きながら用を足し、部屋へ戻ろうとした時―――
『Pulululu・・・・』
 居間で電話が鳴った。
「―――なんだ?こんな時間に」
 蘭やおっちゃんが起きちまう!と、急いで受話器を取るコナン。
「もしもし、毛利です」
「―――あ、あの、夜分遅くすいません」
 聞こえてきたのは、若い男の声だった。コナンは、なんとなく胸騒ぎを覚えた。
「―――どちら様?」
「あの、僕、春日っていいます。あの―――蘭さん、いますか?」
「―――蘭ね―ちゃんならもう寝ちゃってるよ。お兄さん、蘭ね―ちゃんの友達?」
 子供らしく聞こえるようにいいながら、コナンは考えた。
 ―――春日?同じクラスの奴じゃねーな・・・。
「え、うん。そっか、寝ちゃったんだ・・・。やっぱり、忘れちゃったんだな」
 ぼそぼそと呟く声。
「何か、約束してたの?」
「あ、いや・・・」
「何か伝言があったら、僕、伝えておいてあげるよ」
 コナンの、いかにも子供らしい言い方に、相手はすっかり安心したようだった。
「そうかい?じゃあ・・・明日の朝、米花公園で待ってるって、伝えておいてくれるかな」
「米花公園ね。分かった―――それだけでいいの?」
「うん。それで、分かると思うから・・・じゃあ、こんな時間に悪かったね」
 ホントだぜ。常識のない奴だな。
「ううん。じゃあ、おやすみなさい」
 愛想よく言って、コナンは電話を切った。
 ―――表情は一変して険しくなる。
 胸がムカムカする。
 コナンの―――新一の中のどす黒い感情が、胸の中に広がり始めていた。
 ―――なんだよ?春日って。なんなんだよ!?
 相手は、蘭と何か約束しているような口ぶりだった。それを、蘭が忘れた・・・。
 一体、どういう関係なんだ?まさか、付き合ってるとか・・・?まさか!!
 コナンは、ぶんぶんと首を振った。
 そんなはずない!そんなはず―――でも、蘭が春日って奴と何か約束をしていたのは本当のようだ・・・何の?何の約束をしたっていうんだ?
 新出のことといい、春日って奴のことといい・・・蘭は本当にオレを待ってくれているのだろうか?
 それとも、もう待ちくたびれて、他の男と付き合おうとしているのだろうか・・・?考えたくない、そんなこと・・・でも・・・もし、蘭が他の男と付き合ってしまったら・・・俺以外の誰かを好きになってしまったら・・・俺はどうしたらいいんだ?一体、どこに帰ったらいいんだ?蘭・・・!
 コナンはのろのろと、小五郎の部屋へ戻ろうとして・・・ふと気が変わり、蘭の部屋へ向かった。
 静かにドアを開ける。中はもう真っ暗だった。蘭の穏やかな寝息が聞こえる。ベッドの側まで行き、蘭の寝顔を覗き込む。
「蘭・・・」
 そっと呼んでみる。もちろん、熟睡している蘭がそのくらいで起きるはずもない。
 長いまつげ、きれいな鼻筋、軽く開けられた桜色の唇・・・。どれをとっても愛しいものばかりだ。
 普段、一緒に暮らしていても触れられない・・・触れないようにしていた。一度触れてしまえば、押さえがきかなくなってしまいそうで・・・。
 だが、今日のコナンは、いつもと違っていた。胸に広がるどす黒い感情で、自分を見失いそうになっていた。
 そっと、蘭の顔に自分の顔を近付ける―――。もう少しで唇が重なる、というとき・・・。
「お取り込み中、失礼」
 と、突然後ろから声をかけられ、コナンは弾かれた様に振り向いた。そこに立っていたのは、白いマントに白いシルクハット、モノクルをかけ、不敵な笑みを浮かべる男・・・。
「か、怪盗キッド!?」
「こんばんは、探偵君」
 キッドは、ニッと笑ってみせた。
「な・・・なんでオメエがここに?」
「ちょいとヤボ用」
「ヤボ用って・・・まさか・・・蘭に会いに・・・?」
 コナンの顔から血の気が引いていく。
 それを見て、キッドは楽しそうにクスクス笑った。
「さあな?ところで、きみはここで何してるのかな?」
「そ、それは・・・」
 聞かれて、思わず詰まるコナン。
「・・・な―んか、不埒な事、考えてたんじゃないのかなァ?」
 ニヤニヤ笑いながら、ジト目でコナンを見ているキッド。
「・・・オメエには関係ね―だろ。で?そのヤボ用ってなんだよ?さっさと済まして、こっから出てけよ」
「こえ―なァ。まあ、そう焦らすなって。せっかく天使のかわいい寝顔を眺めようと思ってたのに、とんだボディガードがいたもんだな」
 コナンの眉がキュッとつり上がった。
「・・・てめえ、ここに来たの、初めてじゃねーな」
「お、さっすが名探偵。よく分かったな」
「ふざけんな!一体何しに来てやがる!」
「何って、決まってんじゃん」
 と言ってニッと笑うと、スッとベッドに近づき、コナンが動く前にすばやく蘭の胸のあたりに手を伸ばし―――
「!―――おい!!」
 焦るコナンの目の前で、その手は蘭の胸を通り過ぎ、ベッドと壁の間の隙間へ入り込んだ。
「おいっ何を―――」
 コナンが止めようとするのを全く無視して、キッドはその手をひょい、とあげて見せた。そこに握られていたのは、青く輝く小さなもの・・・
「それは―――!」
「3日前の獲物さ。ちょっと置かせてもらってた」
「置かせてって―――なんでこんなとこに・・・」
 呆気に取られて、コナンが言った。キッドは悪びれた様子もなく肩を竦め、
「灯台下暗しって言うだろ?誰もあの有名な眠りの小五郎の家にこんなものが隠されているとは思わない。だろ?」
「そりゃ・・・。けど、もし蘭が気付いたら―――」
「その時はその時。でも、彼女一度寝たら起きないタイプだろ?この家の中でも、1番安全だと思ったんだけど?」
「・・・・・」
 キッドの言葉に、コナンも納得せざるを得ない。男2人、自分のすぐ側で話をしているというのに、蘭は一向に起きる気配がなかった。
 キッドは楽しそうにクスクス笑った。
「かわいいよなあ、彼女。ここに来る度にその天使みたいな寝顔に悪戯心が刺激されんだけど・・・オメエのことを考えて我慢してんだぜ」
「それはどうも・・・って、ここに来る度、だと?オメエ・・・一体、何回目だ?ここにくんの」
「さあ。ここ1年くらい、利用させてもらってっから・・・4,5回は来てるかなあ?」
「ぬけぬけと・・・もうゼッテ―、来るんじゃねーぞ!」
 コナンの射るような視線をさらりと受け流し、
「ま、努力してやるよ。んなことより、もっと心配してることがあんじゃねーの?」
「な、なんのことだ・・・」
 コナンの顔に、動揺の色が走った。
「さあな。けど、心配することはないんじゃねェ?確かに彼女は魅力的で、周りの男はほっとかね―だろうけど、彼女の相手は決まってんだろ?」
「決まってる・・・?」
「ああ。この間ここへ来たとき、寝言で言ってたぜ。『新一』ってな・・・。すごく幸せそうな顔してさ。良い夢だったんだろうな」
 と言って、キッドはウィンクして見せた。コナンの顔がパッと赤くなる。その顔を見て、キッドはまたクスクスと笑った。
「彼女のことになると、ポーカーフェイスが崩れんだな」
「っせー!いつまでここにいる気だよ?ここから警察に電話したって良いんだぜ」
「そいつは遠慮しとくよ。なんかオメエ、元気なかったみて―だから、つい気になっちまってよ。心配事は早く取り除いといたほうがいいぜ。―――じゃな!」
 そう言って、キッドは、サッとマントを翻した。と、
 ボンッ
 という音とともにキッドの姿は、陰も形もなく消え去っていた。
「・・・うーん・・・何ィ・・・?」
 さすがにその音に気付いた蘭が、目をこすりながらむくっと起き上がった。
 ―――あのヤロオ・・・わざとやりやがったな・・・
「あれ?・・・コナン君?どうしたの?」
 蘭がコナンを見て、目をぱちくりさせる。
「あ、あの・・・な、なんか物音がしたみたいだったから、様子見に・・・」
 あたふたと説明するコナンを、不思議そうな顔で見つめる蘭。まだ完全に目が覚めていないらしく、ちょっとボーっとしている。
「・・・ふーん?そう・・・あれ?窓・・・わたし、開けっ放しにしてたかな・・・」
 開け放たれたままの窓から風が吹き込んできていた。
「あ、僕、閉めとくよ・・・」
 コナンは、慌てて窓を閉めに行った。ふと、外を見ると、白いハンググライダ―が遠ざかって行くのが見えた・・・。
「コナン君?どうかした?」
「あ、いや・・・」
 窓を閉めながら、キッドの言葉を思い出す。

 “心配事は、早く取り除いといたほうがいいぜ”―――

「・・・ねェ、蘭ね―ちゃん」
 コナンは、蘭に背中を向けたまま、口を開いた。
「ん?なあに?」
「―――春日って、誰?」
「春日?」
 蘭はキョトンとして聞き返す。
 ―――まだ寝ぼけてんのか?それとも―――
「さっき、電話かかってきたよ。―――明日の朝、米花公園で待ってるって―――」
「米花・・・公園・・・?」
 相変わらず、蘭はキョトンとしている。
 ―――ホントに知らないのか?
 コナンは、やっと振り向いて蘭の顔を見た。
「何か、約束してたんじゃないの?そんな口ぶりだったよ。『もう寝ちゃった』って言ったら、『やっぱり忘れちゃったんだ』って・・」
 蘭は首をひねって、一生懸命考えているようだった。
 ―――この反応は・・・ホントに知らないくせえな・・・。
「―――あ、もしかして・・・」
 そう言って蘭はベッドから降りると、机の上においてある鞄に手を伸ばした。
「まだ読んでなかったけど・・・」
 鞄を開け、ごそごそと中を探って、取り出したのは数通の手紙・・・。
 それを見て、コナンは目を丸くした。
「これ・・・」
 蘭はちょっと困ったように笑うと、コナンを見て言った。
「時々ね、下駄箱に入ってるの・・・。こういう手紙」
 ―――って、それってラブレターじゃねーか!!こいつ・・・そんなにもてんのか?
 コナンは、内心物凄く焦っていた。
「・・・春日君って、今朝、教室の外にいて、わたしにこれ渡してった人じゃないかなあ。違うクラスだから、名前思い出せなくって・・・。前に、園子が格好良いって言ってたことがあるから、顔は覚えてたんだけど・・・」
 と言いながら、手紙の束の中から、1通の手紙を取り出した。薄い水色の封筒の封を切り、中からやはり薄い水色の便箋を出して広げる。
「―――あ、やっぱりそうだ。名前、書いてある。―――やだ、”今日、5時に米花公園で”って・・・わたし、読んでなかったから行かなかったよ」
 コナンは、体から一気に力が抜けていくのを感じて、肩を落とした。
 ―――なんだ・・・別に、約束してたわけじゃね―のか・・・。向こうが勝手に待ってただけ・・・。
「春日君、きっと待ってたのよね。悪いことしちゃった・・・」
「気にすることないよ。手紙渡した、その日を指定するのが悪いんだから。普通、次の日とかにするでしょ?」
 と、コナンが冷静に言うと、蘭はちょっと笑顔を作った。
「そうね・・・。でも、一応謝らなきゃね。明日の朝、米花公園にいるのよね」
「うん。―――行くの?」
 ちょっと、不満そうな顔をした。
「うん。ちゃんと会って話をしなきゃ、相手に失礼でしょ?」
 ―――ったく、妙に生真面目なんだからなァ。ま、朝なら相手が変なことする心配もねーか・・・。
 この様子じゃ、付き合うつもりとかはなさそうだし・・・。
 1つ胸のつかえが取れ、安心したコナンは、もう1つの胸のつかえを取るべく、蘭の顔を見た。
「ねェ、蘭ね―ちゃん」
「ん?」
「あのさ・・・新出先生のこと、どう思ってるの?」
「え?」
 蘭は大きな目をぱちくりさせて首を傾げた。
「新出先生?」
「うん。―――なんかさ、恋人同士みたいじゃない。車で送ってもらったりしてさ」
 とコナンが言うと、蘭は一瞬ビックリしたように目を見開いてから、ぷっと吹き出した。
「やーだ、コナンくんてば。新出先生に失礼だよ、そんなの。新出先生は大人だし、素敵な人だけど・・・わたしにはもったいないよ」
「そう?」
「うん。―――あんなお兄さんがいたらいいなあとは思うけど。先生もわたしのこと、妹みたいに思ってくれてるんじゃないかしら」
 と言って、無邪気にニコニコ笑っている蘭。
 コナンは溜息をつくと、ジト目で蘭を見て言った。
「蘭ね―ちゃんって・・・ホンットに鈍感だよねェ」
「え?な、何で?どういう意味?」
 コナンに思いがけない突っ込みを入れられ、蘭はオロオロしている。
「・・・なんでもないよ。それより、お兄さんみたいだからって毎回車で送ってもらったりするのはやめたほうがいいと思うよ」
 と言うと、蘭はちょっと笑って、
「そうだね。やっぱ悪いもんね。・・・今度からは断ろうと思ってたんだ。園子にもこないだ言われちゃったし・・・」
 ―――園子も知ってんのか。あいつは当然気付いてるんだろうな。・・・元の姿に戻ったら、いやってほどからかわれそうだ・・・。
 コナンはその時のことを考え、また溜息をついた。
「コナン君、いろいろ心配してくれてありがとう。―――でも、こんな時間まで起きてて大丈夫?明日学校でしょ?もう寝なきゃ」
「う、うん。そうだね。じゃあ、僕行くよ・・・」
 引きつった笑いを浮かべつつ、コナンは部屋を出ようとドアを開けた。
「あ、待って、コナン君」
 蘭が後ろから声をかけてきた。
「?何?」
 コナンが振り向くと、蘭が近づいて来て、コナンと目線を合わせて身を屈めた。
「お休み、また明日ね」
 と言ってニッコリ笑うと、コナンの頬に軽くチュッとキスをしたのだった・・・。
「じゃあね」
 目の前でドアが閉められても、コナンはしばらく呆然とその場に突っ立っていた。やがて、徐々に頭に血が上り・・・。まさに、ゆでだこ状態・・・。ついさっき、蘭の唇を奪おうとしていたとは思えないほどの狼狽振りだった。
 そして、ふと気付くと足元に小さな紙切れが・・・
「?」
 拾い上げて、裏を見ると・・・
「―――!」
 それには、人をなめたようなキッドの似顔絵とともに、こんなメッセージが・・・



 ―――せっかくのキスのチャンスを奪ってしまって申し訳ない。今度 は成功することを祈ってるよ。
                                               ―――快盗キッド




 ・・・あのヤロオ・・・


 その後、コナンが蘭にキスすることが出来たかどうか・・・それはまた、別の話・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 これはもうず~っと前に考えたお話です。
 今見ると恥ずかしいですね(^^;)

 それでも皆さんに楽しんでいただければうれしいです♪

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My Little Angel 2

Category : My Little Angel(コナン・快蘭新)
「ね、快斗、どう?変じゃない?」
と言って、らんは快斗の前でくるりと回って見せた。その瞬間、制服のスカートがひらりと揺れ、らんのきれいな足が快斗の目に飛び込んできて、思わずドキッとする。
「あ・・・いや、変じゃねえよ。似合ってる」
「ホント?良かった」
 安心したように、にっこり微笑むらん。その笑顔にボーっと見惚れていると、後ろからバシッと頭を叩かれた。
「いて!」
「いやらしい目でらんを見てんじゃねえよっ」
「てめ・・・。なんだよ、おめえ、またそんな子供のかっこうして」
仏頂面をして立っていた新一は、人間の子供の格好で、メガネなどかけていた。
「仕様がねえだろ?この格好じゃなきゃ外出るなって哀がうるせえんだ」
「で、そのめがねは?おめえ、目が悪かったのか?」
「ああ?んなわけねえだろ?これはダテだよ。こうしてると賢そうに見えんだろ?」
にやっと、子供らしからぬ顔で笑う新一を、呆れ顔で見ていると・・・
「あなたの名前は、江戸川コナンよ」
 と、後ろにいた哀が突然言った。
「はァ?何だよそれ?」
 新一が思いっきり顔を顰める。
「あら、変装するなら名前だって変えたほうがいいじゃない。以前人間界に来たときに読んだ小説の作家の名前を組み合わせてみたの。なかなか良い名前だと思うけど?ねえ、らん」
「え?うん、そうだね。良いんじゃない?」
 らんが新一を見てにっこり笑う。途端に新一の顔が緩み、
「ま、まあらんがそう言うなら良いけどよ・・・」
 などと言っている。
「わたしは宮野志保。人間になるときはその名前でと、昔から決めているの」
「?その名前になんか意味があるの?」
 らんが不思議そうな顔をして聞く。
「別に。ただ単に気に入ってるのよ」
「・・・ふーん・・・」
「なあ、らんも何か偽名を使うのか?」
 と快斗が聞くと、
「らんはそのままで良いわよ。ただ漢字を当てれば。蘭っていう花があるでしょう?その字が良いと思うわ。姓は・・・毛利でどう?」
「毛利?何か意味あるの?」
「別に。単なる思い付きよ」
「・・・・・」
 何はともあれ、3人の名前が無事に決まったのだった・・・。


 「毛利蘭です。よろしくお願いします」
 にっこりと微笑む美少女に、教室中がざわめく。続いて蘭の横に立っていた哀が
「宮野志保です。よろしく」
 といって軽く頭を下げた。
 ―――2人同じクラスに入ったのか・・・哀の仕業だろうなあ・・・。
 快斗が呆れて溜息をつくと、らんがちらりとこちらを見た。気付いてちょっと手をあげると、にっこりと満面の笑み。途端に快斗の顔も緩む。
 ―――まいっか。これからは学校でもらんと一緒にいられるんだし♪
 などと思っていると前に座っていた生徒がくるっと振り返った。
「なんだよ、快斗。おまえ彼女のこと知ってんのか?」
「え?あ、ああ、ちょっとな・・・」
「マジ?もしかしておまえの彼女とか?」
「え・・・」
「ただのお隣さんよ」
 と、いつの間にか側へ来ていた哀が、突然話に割って入った。
「お隣?」
「そう、らんとわたしが住んでいるのが、彼の住んでいるアパートの隣なの。ただそれだけよ」
「へ、へえ・・・」
 哀は、後ろにいたらんを促して指示された空いている席についた。

「なんか変わった感じの子だな」
「・・・そうだな・・・」
「けど、あの髪の長い子の方、すっげえ俺ごのみなんだけど。おまえの彼女とかじゃねえなら、狙っちゃおうかなあ」
 ニヤニヤしながら言うクラスメイトに、快斗は目を見開く。
「な、何言ってんだよっ」
 が・・・ふと気付けば、クラス中の男がらんと哀に注目していた。美少女2人の転校生。
 ―――これは、思ったより大変なことになりそうな気が・・・
 先のことを思うと、また溜息をつかずにはいられない快斗だった・・・。


「学校って楽しいねえ」
 瞳をきらきらさせながら話すらん。人懐っこいその笑顔と親しみやすいキャラクターであっという間にクラスにも溶け込んでしまったようだった。
「良かったわね、らん」
 そんならんを見守る哀は、あくまでもクールで、どこか人を寄せ付けない雰囲気だが、らんを見つめる眼差しはとても優しいものだった。
 帰り道、3人は小学校に行っていた新一と合流し、4人で歩く。
「新一、どうだった?学校」
 らんが聞くと、新一は不機嫌そうに顔をゆがめ、
「別に、どうってことねえよ。それよりそっちは?変なやつに絡まれたりしなかったか?」
 と言った。
「心配無用よ。わたしがついてるんですからね」
 と答えたのは哀だ。
「ふん・・・。らん、楽しそうだな」
「えへへ、分かる?すっごく楽しかったよ。お友達もできたし♪」
 にこにこと笑うらんを、穏やかな笑顔で見つめる新一。
 ―――へえ、悪魔でもこんな笑顔するんだな。
 と快斗が思っていると、新一がじろりと快斗を睨み、
「おめえ、らんに変なことしてねえだろうな」
 と言った。
「な、なんだよへんなことって。するわけねえだろ?」
「ふん、どうだかな」
 らんを見るときとは別人のような鋭い眼差し。
 快斗は溜息を付いた。


 快斗の住むアパートの10メートルほど手前まで来たときに、哀がぴたりと足を止めた。
「どうしたの?哀」
 気付いたらんが不思議そうに聞く。
「今日からわたしとらんはここに住むのよ」
 そう言って哀が見上げたのは快斗のアパートの隣にあるちょっとおしゃれな感じの白いマンションだった。
「え?」
「は?」
「なんだよ?それ!?」
 3人の反応に、哀が肩をすくめて答えた。
「あら、らんには言っておいたはずよ?人間として快斗の側にいたいと思うのなら一緒には住めないって」
「あ・・・そういえば・・・」
「おい、ちょっと待てよ、じゃあ俺はどうすんだよ?」
 と言ったのはもちろん新一。
「あなたは快斗のところにでもいれば?」
「な、なんでだよ!?俺もらんと一緒に・・・!」
「だめよ。悪魔と一緒に住んでるなんて大天使様に知れたらまたなんと言われるか・・・。快斗と一緒に住むのが嫌なら魔界に帰るのね」
 きっぱりと言われ、ぐっと詰まる新一。
「・・・あのさあ、俺は何にも聞いてねえんだけど。いつの間にそんな話になってるわけ?」
 いささか不貞腐れ気味に言ったのは快斗。そんな快斗に、ちらりと冷たい視線を送りながら、
「あら、当然のことでしょう?クラスメイトの男女がひとつ屋根の下なんて、学校に知られたらまずいことになるわ」
 と、哀が言った。
「そりゃそうだけど・・・だからって、なんで俺がこいつと・・・」
 と言って、快斗は新一をじろりと睨んだ。
「それはこっちの台詞だ」
 睨み合う新一と快斗。
 そんな2人をどこか楽しげに見ながら、哀が言った。
「とにかく、そういうことだから。さ、行きましょう、らん」
「あ、うん」
 らんは、戸惑いながらも素直に哀に着いて行ってしまったのだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この先はまだできてません。
 いつになることやら・・・気長にお待ちいただければ幸いです(^^;)

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My Little Angel 1

Category : My Little Angel(コナン・快蘭新)
 ある日快斗が家に帰ると、なぜか自分のベッドに、小さな白い羽を背中につけた小さくて可愛い天使が寝ていました。
 吃驚して起こしてみると、小さな天使はここに来たわけを話し出しました。
「悪魔を助けたの。すごくかわいそうだったから。でもそれが大天使様にばれて・・・天界を追放されてしまったの」
 小さな天使は、大きな瞳に涙をいっぱいためて言いました。
「でもそのとき、天使長様が助け舟を出してくれて。人間を1人幸せにすることが出来たらもう1度天界に戻ることを許すと言ってくださったの」
「その人間って・・・」
「うん。あなたのことよ」
 小さな天使は無邪気に笑って言いました。
「何で俺が選ばれたんだ?」
 快斗は不思議に思って聞きました。
「さあ。天使長様が適当に選ばれたから、らんは良く知らないわ」
「らん?」
「うん。わたしの名前よ。よろしくね」
 にっこり笑ったその顔があまりに可愛くて、快斗は思わず見惚れていました。
「快斗?どうしたの?」
「あ、い、いや・・・あれ?俺の名前、知ってんの?」
「うん。黒羽快斗、でしょう?快斗ってよんでも良い?」
「あ、うん・・・よろしく、らん」
こうして快斗と天使のらんの不思議な毎日が始まったのでした。


 ―――俺の家に、天使がやってきた。ちっちゃくて超絶に可愛い「らん」という名の天使だ。最初見たときはさすがにびびった。背中についてる羽はどう見ても本物だったし、いよいよ俺も終わりかと思ったもんだ。けど、らんと話している内に、なぜか楽しい気分になってきたんだ。不思議なもんだな。
 らんの無邪気で可愛い笑顔を見てると、小さなことはどうでも良くなって来る。
「らん、おれが幸せになるにはどうすりゃいいんだ?」
 その夜快斗とらんは同じベッドの中で、一晩中話しこんでいた。
「さあ。らんにも分からない」
 らんはかわいらしく小首を傾げる。
「俺が選ばれたってことは、俺って不幸なのかな。確かに両親死んじゃってるし、貧乏だし、彼女もいねえけど。不幸だなんて思ったことねえぜ?」
「んん~。良く分からないんだけど・・・天使長様も適当に選ばれてたから・・・ただ、本当に幸せだったら選ばれなかったと思うよ?」
「そっか・・・。んで、俺が本当に幸せになったら、らんはその・・・天界に戻れんだな?」
「ん、そゆこと」
 ―――そっか・・・。なんとなくそれも寂しいような気がするよな。せっかくこうして会えたのに・・・。
 と思いながら、快斗がらんを見ると、らんはにっこりと笑って見せた。
 ―――やっぱ可愛いなあ・・・。
 と、快斗が思った瞬間だった。
「てめえ、俺のらんに引っ付いてんじゃねえよ」
 低い唸るような声と共に、部屋の中につむじ風が起きたかと思うと、突然部屋の真中に1人の男が現れたのだ。
 射るように快斗を睨む鋭い目。そして背中には黒い羽が・・・
「新一!」
 らんが、驚いて目を見開いた。
「らん!探したぜ」
 と、黒い羽の男が言った。快斗に向けられた鋭い視線はどこへやら、その格好に似合わない、優しい眼差しでらんを見た。
「新一、どうしてここに?」
「らんに会いに来たに決まってんだろ?俺のせいで天界を追放されたって聞いて・・・」
「え?じゃあ、らんが助けた悪魔って・・・」
「うん、新一のことなの」
「・・・気安くらんなんて呼ぶんじゃねえよ、人間の分際で」
 新一は、険しい顔で快斗を見た。
 ―――こいつ、らんのこと・・・。
「新一ってば!そんな言い方しないで。それより、どうしてここが分かったの?」
 それに答えようと新一が口を開きかけたとき、再び部屋の中につむじ風が起こった。
「わたしが教えたのよ」
 と、静かな声と共に現れたのは、らんと同じ羽根、同じくらいの大きさで赤みがかった茶パツとどこか冷めた瞳の少女で・・・。
「哀!あなたがどうして・・・?」
「天使長様にあなたのお目付け役をおおせつかったのよ。あなたは見ていないと何をするか分からないからってね」
 と、意外にも優しい眼差しをらんに向け、その少女―――哀は言った。
 らんはちょっと頬を膨らませ、
「もう、天使長様ってば・・・」
 と言った。その表情がまた超絶に可愛く・・・快斗がポーっと見惚れていると、それをギロリと新一が睨んだ。
「この悪魔にここを教えたのは、ボディーガ-ドになるかもと思ったからよ」
「ボディーガード?」
「そう。天界と違って、ここには危険がいっぱいなのよ、らん。あなたはその辺の自覚が足りなすぎるから。今だってそうやって平気で人間と同じベッドで寝ているし」
 哀が快斗をちらりと見た。
 ―――なんか、この子、苦手かも・・・。
 と、快斗が思っていると、哀の言葉にらんはきょとんとし、
「快斗と一緒に寝ちゃいけないの?」
 と聞いたのだった・・・。


 いつもよりも賑やかな朝。
 当然だろう。1人暮らしだった快斗の部屋に、突然天使が2人(?)と悪魔が1匹(?)現れたのだから。
「しっかしせめえ部屋だな。きったねえし。おめえ掃除とかしてんのかよ?」
「っるせーな。1人暮らしにはこんなもんで充分なんだよ。おめえらが出てけば問題ないっつーの」
「快斗、らんがいると邪魔?」
 らんが、うるうるした瞳で快斗を見つめる。
「あ、いや、らんは良いんだよ。邪魔なのは、この悪魔のほうで―――」
「んだとお?」
「・・・広いか狭いかの問題ではなく、わたしは汚いのが嫌なんだけれど」
 哀の冷静な声が聞こえる。
「―――掃除なんて年に1回で充分だっつーの」
「快斗、掃除嫌いなの?」
 らんがきょとんとした表情で快斗を見る。
 ―――あ、今の顔可愛い。
「まあ・・・あまし好きではないな」
 と、快斗が正直に答えると、蘭は、なぜか満面の笑みを浮かべた。
 その笑顔に、快斗と新一が見惚れていると―――
「じゃ、らんがお掃除してあげる!!」
 と元気よく言ったのだった。
「え?掃除?」
「うん。らん、快斗のお手伝いしたいの。だめ?」
「い、いや、だめじゃねえけど・・・」
「じゃ、良い?早速今から・・・」
「あ、ちょっと待って。・・・その前にさ、朝飯くわねえか?」
「朝・・・飯?」
「そう。俺、朝はちゃんと食べねえとだめなたちでさ」
「ふーん、じゃ、らんが作ってあげるよv」
「え、マジ?作れんの?」
 なにせ蘭は人間の女の子でいうと6歳くらいの年にしか見えない。そんな小さな体で料理が出来るのか・・・心配するのも無理からぬことで。
 だが、2人の会話を聞いていた新一はきっと快斗を睨み、
「おめえ、らんを馬鹿にしてんのか」
「馬鹿にしてんじゃねえよ、ただ、できんのかなって・・・」
「らんの手料理は大天使様のお墨付き。人間界のレストランあたりには負けないわよ?」
 クールに、なぜか勝ち誇ったように言う哀。
「へえ、そうなんだ。んじゃ作ってもらおうかな」
 快斗が言うと、らんは嬉しそうににっこりと笑い、
「まかせて!快斗たちは、そこに座ってて?すぐに作るからvv」
 そう言って、台所に向かったらん。
 ほどなく出来上がった朝食は、本当に絶品で、快斗は目を丸くした。
「美味い!!すげえな、らん。俺、こんなに美味い朝飯食ったのはじめてかも」
「ホント?良かったァ」
 らんは照れたように、頬を赤らめて笑った。
 その様子を見ていた新一は面白くなさそうだったが、とりあえずらんの作ったおいしい朝食を食べることに専念することにしたのだった・・・。

「快斗、どこ行くの?」
 朝食の後、おもむろに着替えだした快斗を見て、蘭がきょとんとした顔をする。
「え?学校だよ。俺、高校生だからな。高校行かないと」
「そうなんだ・・・」
 らんはちょっと寂しそうな、残念そうな顔をしている。
「らん・・・ごめんな。終わったらすぐに帰るから」
「うん、大丈夫だよ。お掃除して待ってるね」
 そう言って、蘭は微笑んで見せた。
「ふん、早くいけよ」
 と、らんを見ていた新一が快斗に言う。
「うるせーな、わかってるよ。いいか、おめえは俺のもの勝手にいじんじゃねえぞ」
「頼まれたってさわんねえよ」
 バチバチと火花を散らせて睨み合う2人だったが・・・
「お取り込み中なんだけど、そろそろ行った方が良いんじゃなくて?」
 と、哀がボソッと言った。その声に快斗は我に帰り、
「やべっ、遅刻する!じゃあな、らん、3時半くらいまでには帰るから」
「はあい、いってらっしゃ~い♪」
 らんが快斗を笑顔で送り出し、快斗も笑顔を返して出て行った。

「・・・ねえ、哀」
 快斗が行ってしまった後、何かを考えているようだったらんが口を開いた。
「なあに?」
「らんも、学校にいけないかなあ」
「え?」
「何言ってんだよ、らん?」
 新一が、蘭の言葉を聞いて、その側に駆け寄る。
「だって・・・快斗が学校に行ってる間、らん、お掃除くらいしかしてあげられないじゃない。それだけじゃあ、快斗は幸せになれないでしょ?」
 と言うらんの瞳は真剣そのものだった。
「・・・そうね。出来ないことはないけれど」
「ホント?」
 蘭の顔が、パッと明るくなる。
「おい・・・」
「あなたは黙ってて。要するに、彼と同じ年頃の娘になればいいのよ。面倒な手続きはわたしがやってあげる」
「ありがとう!哀!」
 蘭は、パッと哀に抱きつき、頬擦りした。
 哀はちょっと照れたような顔をしていたが、新一がじっと見ているのに気付くと、ひとつ咳払いをし
「そのかわり、条件があるわ」
「じょうけん?」
「ええ。その条件を呑めるのなら、明日からでも学校に行っていいわよ」
 と哀が言うと、らんはにっこりと微笑んで頷いた。
「うん!わかった。らん、哀との約束は必ず守るよ?」
「そうだったわね。じゃあ・・・」


「ただいまあ」
 快斗は学校から帰ると、そう言ってドアを開けた。
「快斗お帰りなさい!!」
 そう言って飛び出してきた人物を見て、快斗はギョッとする。
「???だ、誰だ?」
 そこに立っていたのは、快斗と同じ年くらいの、髪の長い美しい少女で・・・
「うふふv、わかんない?」
 と、にこにこ笑っている少女。
 その笑い方、仕草・・・まさか・・・
「らん、か・・・?」
「あたり!!さすが快斗!」
 少女―――らんはそう言うなり、がばっと快斗に抱きついてきた。
「うわっ、ら、らんっ」
 途端、快斗は真っ赤になる。それもそのはず。らんの体がぴったりと快斗にくっつき、その柔らかな胸の感触を、嫌でも感じずにはいられないのだから・・・。
「らんっ、何してんだよ?そいつから離れろ!」
 と言って出てきたのはもちろん新一。
「らん、まずは彼にもちゃんと説明しないと」
 と、続いて哀が出てきたのだが・・・
「どうなってんだ?」
 快斗は驚いて目をぱちくりさせている。
 というのも、らんに続いて出てきた新一はなぜか6歳くらいの男の子の姿に、そして哀はらんと同じく高校生くらいの少女の姿になっていたからだ。


「らんが、あなたと同じ学校に行きたいと言ったのよ。あなたを幸せに導くためにね」
 哀が言った。
「それで、その姿になったの。わたしたち天使はいろんなものに姿を変えることが出来るわ。もちろん透明人間のように姿を消すことだって出来る。でも、姿を消していても霊感の強い人間には見えてしまうときがあるのよ」
「へえ、そうなんだ」
「だから、最もばれにくいこの姿になったの。でも、この姿でいられるのは1日10時間と決まってるわ。10時間を過ぎると、本来の姿に戻ってしまう」
「なるほど・・・。で?らんはわかったけど、どうしてあんたやこいつまで?」
 と、快斗は新一をちらりと見て言った。
「わたしは、もちろんらんについてるためよ。1人にしておけませんからね。らんは・・・」
「俺だって、本当はそのくらいの年の男になってらんについてようと思ったんだ!」
 新一が悔しそうに言った。
「けど・・・俺たち悪魔は人間の姿になるときは子供の姿と決まってるんだ」
「へえ、なんで?」
「そのほうが人間が油断するからだよ。人間て生き物はおめでたい奴が多いからな」
 と言って、にやっと笑った新一に、快斗はむっとする。
「・・・けど、その姿じゃ高校には入れねえぜ」
「分かってるさ。だから、姿を消してらんの側にいようと思ったのに・・・」
「だめよ」
 哀が、ぴしゃりと言った。
「さっきも言ったけれど、霊感の強い人にはその姿が見えることがあるのよ。それは悪魔も同じ。あなたのような悪魔がらんにくっついていれば怪しむ人がいないとも限らない。そういう事態は避けたいの」
「ちぇっ」
 拗ねたようにそっぽを向く新一。小さな子供の姿で拗ねるその様は、かわいらしくもあったが・・・
「何じろじろ見てんだよ?てめえみたいな間抜けなやろーにらんはわたさねえからな」
 ―――やっぱ可愛くねえ・・・
 と、改めて快斗は思ったのだった・・・。



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 以前日記のほうで連載していた小説です。
とにかく可愛い蘭ちゃんを書いてみたいと思って、「エンジェルちび蘭」というキャラクターを思いつきました。しかしまた連載もの・・・。
終わるのはいつになることやら・・・。

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きみとちぇりーぱい~vol.2~

Category : きみとちぇりーぱいーコナン(コナン・快蘭)
「探偵?」
 蘭が、驚いて目を見開いた。新一は穏やかにコーヒーを飲んでいる。快斗も、蘭の入れてくれたカフェ・オレを飲みながら、新一の様子を伺っていた。テーブルには、蘭の焼いてきたレモンパイが皿にもってそれぞれの前に置かれていた。


 ―――探偵・・・なるほど、ね・・・
「ああ。俺は高校生になってから、アメリカで探偵をやってたんだ」
「へえ・・・。あ、それでお母さんのお手伝いを?」
「そういうこと。たいしたことじゃねえけどな。妃先生が弁護を担当した被疑者が、以前アメリカ留学してたことがあって、その時のことで調べたいことがあるって言うから協力したんだ」
「そうなんだ・・・。でも、探偵なんてすごいね、新一」
 蘭は素直に感動している。快斗は、黙って2人の会話を聞いていた。
「もともと、父さんがFBIから依頼を受けたのが始まりさ。小説の仕事が忙しくて、どうしても時間を作れなかった。そこで、俺に白羽の矢が立てられたってわけ」
「FBI!すごい!」
「最初はなめられたけどな・・・。その事件を無事に解決して、認めてもらった。本当は4月にはこっちに戻ってくる予定だったんだけど、新しい事件が起きて、協力して欲しいって言われて。世話になった人の頼みだったから、断れなかった」
 新一の話を、目をぱちくりさせながら夢中で聞いている蘭を、快斗はちょっと面白くない思いで見つめていた。
「ねえ、おば様とおじ様は?」
「ああ、あいつらはまだ向こうにいるよ。帰ってきたのは俺だけ」
「ええ?1人で大丈夫なの?」
「なに、心配してくれんの?蘭」
 にやりと笑う新一に、蘭は思わず顔を赤くする。
「だ、だって・・・」
「大丈夫だよ。向こうでもほとんど一人暮らしみたいなもんだったし。これでも、料理とか結構うまいんだぜ?」
「そっか・・・」
「心配なら、メシ、作りにきてくれよ」
 その言葉に、蘭はえっとつまり、快斗がむっとする。
「・・・調子に乗ってんなよ。蘭は、オレの嫁さんだ」
 快斗の言葉に蘭の頬がぽっと赤くなる。それを見て、新一が顔を顰める。
「・・・言っただろ?俺は諦めねえって。俺は、蘭のためだけに日本へ戻ってきたんだ」
「し、新一。でも・・・」
「結婚したってことは、母さんから聞いてたよ。けど、それで諦められるほど俺の気持ちは簡単なものじゃない。昔から、俺には蘭しかいなかったんだ」
 はっきりと言い切る新一に、蘭は真っ赤になる。
「ま、今すぐどうこうするつもりはねえよ。ゆっくり時間をかけて振り向かせて見せるさ」
 にやり、と不敵な笑みを浮かべる新一。快斗は、無言でそんな新一を睨みつけていた・・・。


 「あのレモンパイって、いつも蘭が作ってたのか?」
 帰り道、蘭と手をつないでいた快斗が言った。
「うん。新一って、甘いものが苦手なの。それでね、有希子おば様・・・新一のお母さんに相談して、作ったの。確かわたしが12歳の時・・・新一が11歳の誕生日のときだったかな」
「ふーん・・・。俺、食ったことなかったよな・・・」
「あ・・・快斗は、甘いもの好きだし、レモンパイよりもチョコレートとかのほうが好きだと思ってたから・・・」
 拗ねてるような快斗を見て、蘭が慌てて言う。と、快斗はそんな蘭を見て、ぷっと笑った。
「快斗・・・?」
「ごめん、ごめん。別に怒ってねえよ」
「もう・・・」
「・・・今度、俺にも作ってくれよな」
 快斗の優しい眼差しに、ほっとしながら、蘭が頷く。
「うん・・・」
「蘭・・・。帰ったら、話があるんだ・・・」
「話・・・?」
 蘭が、きょとんとしながら上目遣いで快斗を見つめる。
「何の話?」
 下から覗き込むように自分を見つめる蘭に見惚れながら、快斗は蘭の肩を優しく抱いて、言った。
「帰ったら、話すよ・・・」
 そして、蘭の肩を引き寄せて、素早くキスをした。
 途端に赤くなる蘭。そんな蘭が愛しくて、ますます腕に力を込める快斗。
「快斗・・・?」
 いつもと少し違う、快斗の様子に戸惑う蘭だったが、快斗は優しい笑みを浮かべるだけで、黙って歩きつづけたのだった・・・。


 マンションに着き、いつも通り夕飯を食べ、入浴後に2人揃ってお茶にする。その間、快斗の様子はいつもと変わりないようにも思えた。
 でも・・・蘭だけには分かる。快斗が、いつもの彼とはほんの少し違うことが・・・。
「快斗?」
 お茶を一口飲み、ひとつ息をついて蘭は声をかけた。
「ん?」
「話って、なに?」
 快斗は、蘭の入れてくれた紅茶をおいしそうに飲んでから、ティーカップを置いて、息をついた。
「・・・俺が、何を言っても、落ち着いて聞いてくれる?」
 快斗の真剣な瞳に、蘭は一瞬どきりとしたが、その目はそらさずにゆっくりと頷いた。
 快斗は一度深呼吸をすると、瞳を閉じ、心を落ち着かせてから口を開いた。
「俺の・・・親父が、どうして死んだのかってのは、前に話したよな?」
「うん。確か、マジックショーの最中に事故にあったって・・・」
「そう。マジックの失敗による事故・・・。そういうことになってる」
「そういうことに・・・?じゃあ、本当は違うの?」
 驚く蘭に、快斗はゆっくりと首を振った。
「・・・わからない。真相は・・・。けど、親父が、ただのマジシャンじゃなかったってことだけは、確かなんだ」
「それ・・・どういうこと・・・?」
「・・・蘭、怪盗キッドって名前を、聞いたことある?」
「怪盗、キッド・・・なんとなくだけど・・・」
「それが・・・俺の、親父のもうひとつの顔だった」
「!!」
 目を見開き、息を呑む蘭。
「・・・驚いた・・・?俺は・・・犯罪者の、息子なんだ」
「・・・・・快斗・・・」
「・・・俺と、別れる・・・?」
 快斗の言葉に、蘭は更に目を見開き、次の瞬間には、その大きな瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
「どうして、そんなこと言うの・・・!?」
「蘭・・・」
「そんなこと聞いて、わたしが快斗のことを嫌いになると思ったの?わたしのこと・・・信じられないの・・・?」
「蘭、それじゃ・・・」
「快斗のお父さんが、何者だって関係ない。快斗がたとえ怪盗キッドだったとしたって・・・わたしの気持ちは、変わったりしない・・・!わたしが好きなのは、快斗自身よ・・・?」
 涙を流しながらそう言い切った蘭を、快斗はその腕に抱きしめた。
 愛しくて、愛しくて、たまらなかった。
 ―――離せない。離れられない・・・。こんなに、愛してる・・・。
「愛してる、蘭・・・」
 快斗の甘い声が、耳元を掠め、蘭の体がぴくりと震える。
 そっと顔を上げ、潤んだ瞳で快斗を見つめる。
 快斗の両手が、そっと蘭の頬を包み込み、ゆっくりと唇を重ねた。
 優しい、触れ合うようなキスから、徐々に深いキスへ・・・。いつしか、蘭の体からは力が抜け、快斗の腕に支えられるように立っていた。
 そのまま、蘭を寝室へ連れて行き、ベッドに横たえる。
 2人は、無言だった。
 言葉は、必要なかった。
 瞳を見れば、お互いの気持ちが充分過ぎるほど伝わって来た。唇を重ね、体を重ねれば、もう、お互いのことしか考えられなかった。
 誰にも邪魔されることのない、2人だけのとき。
 この幸せのときを、誰にも邪魔させたりはしない・・・。
 お互いの想いが、触れ合う肌から熱く、溶けるように染み込んでいった・・・・・。


 「・・・快斗・・・」
 ベッドの中、まどろみながら蘭が口を開いた。
「ん?」
「わたしね・・・なんとなく、気付いてたの・・・。快斗が、わたしに秘密にしてることがあるって・・・」
 蘭の言葉に、快斗が驚いて、上半身を起こす。
「なんで・・・」
「なんとなく、よ。それにね・・・。結婚することが決まったときに、快斗のお母さんがわたしに言ってたの」
「母さんが?なんて?」
「快斗のお父さんのこと・・・そのうち、快斗から話すと思うけど、その時に何を聞いても快斗を好きな気持ちだけは忘れずにいてねって・・・」
 ふふ、と小さく笑いながら告げた蘭に、快斗は少し、不貞腐れたように目を細めた。
「・・・なんだよ・・・んなこと、言われてたのか・・・」
「ん・・・。でも、言われてなくても・・・わたしの気持ちは、変わらないよ?わたしが好きなのは、快斗だけ」
 どこまでも優しく、澄んだ瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚えながら、快斗は蘭の頬に手を伸ばした。
 快斗の手の感触に、気持ち良さそうに目を閉じながら、蘭がまた口を開いた。
「・・・新一に、何か言われたの・・・?」
「・・・・・あいつ・・・知ってたんだ・・・」
「え?」
「俺のオヤジのことさ・・・。どうやって調べたのかはしらねえけどな」
「新一が・・・そうなんだ・・・」
「どうやら、頭は切れるやつらしいな。あの妃先生にあてにされるくらいだ。アメリカで探偵をやってたってのも、ただのお遊びってわけじゃなさそうだ」
 再び横になり、天井を見ながら話す快斗を、蘭がきょとんとしながら見つめている。
「なんだよ?」
「ん・・・快斗が、新一を褒めるなんて意外だなって」
「ほ、褒めてなんかねえよ」
「・・・褒めてるよ?」
「・・・・・」
 蘭に真顔で言われ、快斗は黙ってしまった。
 ―――褒めてたか?俺・・・
「・・・けど、あいつを認めたわけじゃねえからな?蘭だけは、絶対にわたさねえ」
 そう言って、蘭の細い首に唇を寄せた。
「ちょ、ちょっと・・・!」
 びっくりした蘭が身を引こうとするが、快斗の腕がいつの間にかその細い腰に巻きつき、すでに身動きが取れなかった。
「夜は、まだまだこれから・・・だぜ?」
 耳元で、低く甘い声で囁かれ、蘭はもう観念するしかなかった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 後半、思っていたよりもずっと甘々になってしまったような・・・。 まいっか。

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きみとちぇりーぱい~vol.1~

Category : きみとちぇりーぱいーコナン(コナン・快蘭)
「―――ただいま・・・」
「お帰り、蘭」
 その日、部活を終え、帰ってきた蘭を快斗が玄関で迎えた。
「快斗、あの・・・」
「とりあえず、飯にしよう。今日は、俺が作ったから」
「え、快斗が?ホント?」
「なんだよ、その顔。俺だって飯くらい作れるぜ?蘭みたいにうまくはねえけどさ」
 冗談めかして言う快斗に、蘭は安心したように笑顔になる。
「ありがと・・・。じゃ、わたし着替えてくるね」
「ああ」
 部屋に入っていく蘭を見送り、快斗は小さく溜息をついた。
 あれから・・・蘭は、新一のことを快斗に説明してくれた。
 新一とは幼馴染で、新一がアメリカへ渡る小学校6年生の頃まで、本当に毎日のように遊んでいたこと。「結婚の約束」というのがよくある小さな子供の頃の話だということ。
 蘭がそのことを一生懸命快斗に説明している間、新一は終始ニヤニヤと笑い聞いていた。
「蘭にとっては子供の頃の他愛のない約束だったとしても、俺は本気だった。ずっとな。だからこそ、日本に帰って来て、この高校に入ったんだ」
 新一はそう言い切って、快斗のことを睨みつけたのだ。
「俺は、必ずあんたから蘭を奪って見せる。必ず、な・・・」


 「うん、おいしい!!」
 蘭が、快斗の作った料理を食べて言った。
「マジ?」
「うん!すごくおいしいよ。快斗、料理上手なんだね?」
「あんまり褒めんなよ、俺、調子に乗るから」
「うふふ。だって本当においしいもん」
 花がほころぶように笑う蘭に、快斗は思わず見惚れていた。
 ―――あいつになんか、渡せるかよ・・・。
 そんなことを思いながらも、口には出さずに、夕食の時間は穏やかに過ぎていった・・・。
 夕食の後、居間に寝そべってテレビを見ていた快斗の隣に、蘭が紅茶を2人分入れて来て座った。
「はい、快斗」
「ああ、サンキュー」
 体を起こした快斗は、紅茶を一口飲んでから、蘭の肩を抱いた。蘭も、そのまま体を預けている。
「蘭・・・」
「ん?」
「俺・・・蘭のこと、信じてるから」
 蘭が、顔を上げて快斗を見た。
「快斗・・・」
「あいつのことは気にいらねえけど・・・。蘭の気持ちを、疑ったりはしねえから。だから、蘭も俺に隠し事はしねえでくれよな」
「うん。約束する。わたし・・・快斗が大好きだよ」
「蘭・・・」
 2人は見つめあい、自然に唇を合わせた。何度も角度を変えながら、次第に深くなっていく口付けに、蘭の息が上がってくる。
「んっ・・・ふ、んん・・・」
 切なげに眉を寄せる蘭の顔をそっと見つめ、漸くその唇を離す快斗。
 口を半ば開いて、荒い呼吸をしながら潤んだ瞳で、快斗を上目遣いで見つめる蘭。
 その表情に、快斗の体が熱くなる。
「蘭・・・」
 もう一度熱く囁いて、その唇を塞ごうとした、その時・・・

『Purrrrrrrrrrrrr・・・・・・・・』

 絶妙のタイミングで鳴り出す電話。
 ガクッと肩を落とした快斗を置いて、慌てて電話に出る蘭。
「はい、もしもし・・・あ、お母さん。うん、元気よ。・・・え?うん、知ってるけど・・・ええ?・・・でも・・・・うん・・・うん・・・分かった・・・うん。じゃあね」
 電話を置いた蘭の表情は、どことなく曇っていた。
「どうした?蘭。電話。お義母さんから?」
「うん、そうなんだけど・・・」
 どうも、歯切れが悪い。
「なんだよ?どうしたんだ?―――俺に言えないこと?」
 自然と低くなる声に、蘭ははっと顔を上げる。
「ち、違うの。あの・・・新一のことで・・・」
 その名前を聞いた途端、快斗の顔が不機嫌に歪む。
「あいつが・・・何?」
「今度の日曜日、新一のところに、レモンパイを作って持ってってあげて欲しいって・・・」
「はァ?レモンパイ?何で?」
「新一の大好物なのよ、レモンパイ」
「そうじゃなくってさ、なんでそれを蘭が持っていくんだよ?」
「詳しいことはよく分からないんだけど、お母さんの仕事を手伝ってもらったんだって、新一に。それで、お礼は何が良いかって聞いたら、新一がわたしの作ったレモンパイが食べたいって・・・」
「お義母さんの仕事を手伝ったって、どういうことだよ?」
「詳しいことは新一から聞いてくれって」
「で、OKしたのか?」
「うん。だって、お母さん、約束しちゃったって言うし・・・。ごめんね、快斗」
 上目遣いで謝る蘭。
 快斗は溜息をついた。
「んな目で見んなよ。怒れなくなんだろ?」
「快斗・・・」
「日曜日・・・俺も行って良いんだろ?」
「うん!もちろん。ありがとう、快斗」
 嬉しそうに微笑む蘭に見惚れながらも、快斗はちぇっと舌打ちしてそっぽを向いた。
 蘭が、快斗の隣に座り、ちょこんとその肩に頭を乗せた。
「快斗、大好き・・・」
 満足そうに紅茶を飲む蘭を、ちょっと恨めしそうに見ていた快斗だったが・・・。
「ら~ん」
 突然、何かを思いついたように満面の笑みを浮かべて蘭の肩を抱く。
 蘭は、快斗の何か企んでいるような声にはっとし、思わずあとずさる。
「な、何?快斗?」
「風呂、入ろう。一緒に」
「え・・・」
 蘭の顔が、一気に赤くなる。
 夫婦になってから、一緒にお風呂に入ったことはまだ1度しかない。とにかく蘭はそういうことを恥ずかしがってしたがらないのだ。快斗がいくら誘っても、なんだかんだとはぐらかされていた。だが、今日は・・・
「良いだろ?」
「で、でもわたし、その・・・」
 逃げ腰の蘭の体をしっかり捕まえ、迫る快斗。蘭も、今日は快斗に対して強く出れないので、本気で焦っていた。
「俺たち夫婦だぜ?良いじゃん、それくらい。それとも蘭は、俺のこと愛してないわけ?」
「そ、そんなわけないじゃない!」
「だったら、良いだろ?蘭v」
 有無を言わさぬ笑顔。蘭は、溜息をつき、囁くように呟いた。
「―――分かったわよ」
「ん。いい子だ」
 快斗は蘭の頬に軽くキスをすると、そのまま蘭を抱き上げ、風呂場に向かったのだった・・・。




 ―――日曜日。
「でけえ家・・・」
 新一の家についた快斗と蘭。邸宅という言い方が相応しいような新一の家を見上げ、快斗は目を丸くした。新一の家族についても蘭から聞いている。父親は有名な推理小説家で、母親は元女優。なるほど、と納得するような家だった。
 蘭が、門に付いている呼び鈴を鳴らすと、ほどなく新一の声が聞こえた。
「開いてるから、入れよ」
 2人は、そのまま玄関のドアを開け、中に入った。
「いらっしゃい」
 と、新一が出迎える。
「あの、新一、これ・・・」
 と、蘭が焼いてきたレモンパイを差し出すと、
「サンキュー。上がってくれよ。まさか、これだけ置いてさっさと帰るわけじゃねえだろ?」
 新一が蘭を見て、にやっと笑う。
「え、でも・・・」
「話したい事もあるしさ、とにかく中に入ってくれよ」
 そう言いながら、新一はさっさと入っていってしまう。蘭は戸惑ったように快斗を見上げた。
「―――ああ言ってんだから、上がってくか」
 快斗が肩を竦めて言うと、蘭も頷き、2人は新一のあとについて行った。
「何飲む?蘭は紅茶だろ?」
 リビングのテーブルにつき、新一が2人の顔を見比べて言う。快斗は、新一の言葉に挑戦的なものを感じ取りむっとしたが、表面上はポーカーフェイスを装っていた・・・。
「あ、お茶ならわたしが入れるよ」
「わりい。置いてあるところは昔と一緒だから」
「うん、分かった」
 蘭が行ってしまい、快斗と新一の2人だけになると、新一は快斗を見てにやりと笑った。
「なんだよ?」
「いや・・・親父さんと一緒でポーカーフェイスが得意なんだなと思ってな」
 新一の言葉に、快斗の表情が一瞬険しくなる。
「おめえ・・・俺の親父のことを・・・」
「ああ、知ってるよ。有名なマジシャンだろ?黒羽盗一って言ったか。あんたもマジシャン目指してるんだって?」
「・・・・・」
「後継ぎってわけか?―――ついでにあっちのほうも引き継ぐのか?」
「―――あっち?」
「そう、あっち・・・。あんたの親父のもうひとつの顔だ」
 新一の瞳が、きらりと光った。
「・・・何のことだ」
「とぼけても無駄だぜ?とっくに調べはついてんだ。あんたの親父が、あの怪盗キッドだったってことはな!」
 快斗が、椅子をけって立ち上がる。
 『がたん!!』という大きな音が鳴り、トレイに3人分のカップを乗せて入って来た蘭が、びくっと立ち止まった。
「快斗?どうしたの?」
「!蘭・・・。いや、何でもねえよ」
 快斗は、いつものポーカーフェイスに戻り穏やかに微笑むと、椅子に座りなおした。
 新一は、そんな快斗を見て面白そうにニヤニヤと笑っている。
 ―――こいつ・・・一体何者なんだ・・・。どうして、誰も知らないはずの親父のことを・・・?
 今すぐ問いただしたかった。だが、蘭にはまだ聞かれていない。蘭の前で、まだそれを言うわけにはいかなかった。いずれは、言わなければならないことと、わかってはいたが・・・

 3人にレモンパイを切り分ける蘭を挟み、2人の男の間に緊迫した空気が流れ始めたいた・・・。



************************************************

 予想以上に新一の意地悪さが目立ってますね(笑) 
 新一ファンの方ごめんなさい。
 楽しんでいただければうれしいです(^^)

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きみとちぇりーぱい~プロローグ~

Category : きみとちぇりーぱいーコナン(コナン・快蘭)
*このお話は「名探偵コナン」のパラレルです。
快斗と蘭が結婚してます。新一は蘭の幼馴染です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「蘭・・・」

「なあに?快斗」

「愛してるよ」

「わたしも」

「蘭」

「なあに?」

「結婚しよう」

「―――うん!!」


    ~プロローグ~


快斗は、その日も愛しい妻の声で目を覚ました。
「快斗、起きて。朝食できてるよ」
「ん―・・・蘭、キスして」
「はいはい」
 蘭はクスクス笑いながら、快斗の唇に優しくキスをした。と、突然腕を伸ばし蘭を抱き寄せる快斗。
「!」
 蘭が驚いて唇を離す前に、その体を抱きこみ、深く口付ける。
 散々その可愛い唇を味わい尽くした後、やっと快斗は腕を緩めた。
すっかり息の上がってしまった蘭が、潤んだ瞳で快斗を見る。
「もう・・・」
「へへ、おはよ、蘭。今日も可愛いぜ」
 しれっと言う快斗に、仕方なく蘭も苦笑いする。
「ありがと。ね、顔洗ってきて。ご飯食べよ?」
「OK」
 漸く快斗はベッドから出ると、顔を洗いに洗面所へ行った。蘭はキッチンへ行き、落としたばかりの
 コーヒーをカップに入れ2人分のカフェ・オ・レを作って食卓へ運んだ。快斗もやってきて、2人で席につく。
「お、今日もうまそー。俺、蘭の作るスクランブルエッグ、すげー好き」
「ふふ、ありがと。じゃ、いただきまーす」
「いただきまーす」
 2人でこのマンションに住むようになって、2ヶ月が経っている。帝丹高校3年生でプロのマジシャンを目指している快斗と、同じく2年生で空手部に所属し今年の都大会では見事優勝を果たした蘭は、今年6月、快斗が18歳の誕生日を迎えたその日にめでたく入籍した新婚ほやほやのカップルである。
 この事を知っているのはお互いの親とごく親しい友人。そして学校の校長、教頭とお互いの担任の教師だけ。もちろん一緒に住んでいることも秘密なので登下校も別々にしている。
「蘭、そろそろ時間じゃねーか?」
 と、快斗が壁にかけられた時計を見て言った。
「あ、ホント。じゃ、行ってくるね」
「おー、気をつけてな」
 と言って、快斗は蘭を玄関まで行って送り出した。
 蘭は、毎朝空手部の朝練で快斗よりも1時間くらい早く出ているのだ。


「さて、やるか」
 と、1人呟きリビングに戻ると、テーブルの上にある皿を片付け、それを洗った。家での役割分担は、自然に決まってきていた。食事を作るのは蘭、後片付けは快斗、洗濯は蘭、お風呂掃除は快斗、部屋の掃除は2人で・・・という感じ。
 もちろん若い2人の結婚、反対されないわけがない。特に蘭の父親、小五郎はなかなか許してくれず・・・。まあそれは最初に予測できたので、まず快斗は自分の母親に打ち明けた。一流のマジシャンだった父が死に女手一つで快斗を育ててくれた母。驚きはしたものの、笑顔で許してくれたときは、心底感謝した。
 そして蘭の母、英理。10年前から別居している蘭の両親は英理が弁護士、小五郎が探偵をしている。
 英理ももちろん驚き、心配もした。でも2人の決意が固いと知り、許してくれたのだ。そして問題の小五郎・・・これはもう、頭ごなしに反対された。いきなり水をぶっ掛けられ、放り出され・・・。話をする暇など皆無だった。何度も何度も足を運んだが、全く相手にされず・・・。それが、急に話を聞いてくれると言い出したのは、快斗の誕生日の1週間前だった。どうやら英理が蘭の為に一肌脱いだらしいのだが・・・詳しいことは、英理も小五郎も未だに教えてはくれないのだった。
 とにかく話を聞いてくれると言う小五郎のもとへ行き、快斗は真剣に話をした。そして漸く小五郎の許しを得ることが出来たのだった・・・。
 学校のほうにも報告した。校長、教頭、そしてそれぞれの担任に・・・。皆一様に驚き、反対したものの2人の親が認めており、しかも弁護士の英理が認めているのでは、渋々認めざるをえず・・・。そして、晴れて2人は結婚することが出来たのだった。
 しかし、最初2人は一緒に住む予定ではなく・・・。とりあえず籍を入れて、式を挙げたり新居に2人で住むのは高校を卒業してから、と言っていたのだが、快斗の母親が、「結婚したら一緒にいるべき」と言い、快斗の死んだ父が生前仕事のために購入し、ほとんど使われていなかったマンションに住めるようにしてくれたのだ。それが今の新居、というわけだ。生活費などはまだ親に援助してもらっていたが、受験が終わり、快斗が大学へ進んだらアルバイトを始めるつもりだった。
 快斗は愛する蘭のためならどんなことでもするつもりだった。一緒にいられるのなら、家事をするのもいやだと思ったことはなかった。いや、それさえも幸せに感じる―――まさに、今2人は幸せの絶頂期にいるのだった・・・。


 「らーん、おっはよー」
 空手部の朝練を終え、蘭が自分の教室へ行くと、親友である園子が笑顔で言った。
「おはよう、園子」
 蘭も笑顔で返し、園子のそばへ行った。園子は蘭と快斗の関係をしている人間の一人だった。
「今朝、快斗さんに会ったわよ」
「あ、ホント?」
「うん。わたしは挨拶しただけだけど。相変わらず人気者よね、快斗さん。心配じゃない?」
「え・・・全然心配じゃないって言えばうそになるけど・・・でも、信じてるもん」
 と、ニッコリ微笑む蘭を見て、園子は半ば呆れ顔で、
「はいはいごちそうさま」
 と言ったのだった。
「あ、そういえば、昨日1年にかなりイケメンの男の子が転校してきたらしいわよ」
「ふーん、1年生のことまで良く知ってるね、園子」
「そりゃあ、イイ男ゲットするためにはね。1年生だったら守備範囲だし」
 と笑う園子に、苦笑いする蘭だった。
 蘭が結婚すると言ったとき、園子は本当にビックリしていた。でも、反対したりはせず、ただ羨ましがり、そして応援してくれたのだ。
「もしみんなにばれて、蘭が辛い思いをすることがあっても、わたしは蘭の味方よ?だから困ったことがあったら言ってねっ、絶対力になるからっ」
 と真剣な目をして蘭に言ってくれた。それが蘭には本当に、涙が出るほど嬉しかったのだ・・・。
 結婚していることを隠しながら通う学校。一応付き合っていることにはなってはいるものの、必要以上にべたべたしたりすることは出来ない。それでも2人はそんな高校生活を楽しんでいた。学校内で目があったり、姿を見つけたりするだけで幸せになれる毎日・・・。そんな充実した生活に、影を落とす存在が現れることなど、このときの2人は想像もしていなかったのだ・・・。


 3時間目の終わり、快斗は自分の教室の、自分の席に座っていた。
「お、あれ毛利さんじゃん」
 と言ったのは、前の席に座っている山田。快斗と蘭が結婚していることは知らないが、付き合っていることは知っていた。 
 快斗がそっちを見ると、快斗の教室の窓から向かい側の校舎の廊下が見え、その2階、蘭のクラスの横の廊下を蘭が園子と歩いているところだった。
「やっぱかわいいよなあ、彼女・・・。あ―あ、な―んで可愛い子にはみんなもう相手がいんのかね」
 しみじみと言う山田を見て苦笑いし、蘭に視線を戻す。園子と楽しそうに話しながら歩く蘭。快斗は蘭の笑顔が大好きだった。
 ―――あの顔見てると癒されるんだよなあ・・・。ん・・・?
 ふと、蘭の歩く廊下の先に立っていた男子生徒に目が行く。
「あれえ?あいつ、なんだかおまえに似てねえか?あんなやつ、うちの高校にいたっけ?」
 と、山田もその男に気付いて言う。そう、その見慣れない男子生徒は快斗にそっくりだったのだ。そして、男がじっと見つめているのは―――蘭だった。
 蘭が、男に気付き足を止める。男が、蘭を見て微笑んだ。蘭の目が、驚きに見開かれ―――その唇が
 何かを呟く。と、それが合図になったかのように、男が蘭に駆け寄り・・・なんと、蘭の身体をぎゅっと抱きしめたのだ。
「な!!」
 ガタンッと大きな音を立てて、快斗が席を立つ。
「・・・んだよっ、あれ・・・!」
「お、おい、快斗、落ち着けって・・・」
 快斗の顔が怒りに歪んだのを見て、山田が慌ててなだめようとする。が、快斗に山田の声は聞こえない。
 蘭が真っ赤になって男から離れようとするが、男は離そうとせず、蘭の耳元で何か囁いた。蘭が驚いて、男の顔を見る。男はニヤッと笑いながら、蘭の頬に軽く自分の唇を触れたのだ。
「!!―――んのやろォ!」
 頭に血が上り、そのまま教室を飛び出そうとした快斗の腕を誰かががしっと掴む。
「!離せよ!」
 と言って、その手を振り解こうとする―――が、
「黒羽、4時間目が始まるぞ。席につけ」
 と、厳しい声で言ったのは快斗の担任であり、4時間目の古典の教師である河村だった。がっしりとした河村に腕をつかまれ、快斗は仕方なく席に戻る。チラッと向かい側の校舎を見ると、もう蘭も男の姿もなくなっていた・・・。
 ―――クソッ、誰なんだあいつは!蘭の知ってるやつなのか・・・?何であんな・・・熱い目で蘭を見るんだよ!?何で、蘭はもっとちゃんと拒絶しねーんだよ!?
 もう快斗の頭には、授業の内容など入ってこなかった。先ほどの蘭と男のシーンで埋め尽くされ、今すぐ蘭のもとへ行きたい衝動を抑えるだけで精一杯だった・・・。


 4時間目が終わるチャイムが鳴り終わる前に、快斗は教室を飛び出していた。それはまさに疾風のごとくー――目にもとまらぬ速さで、まだ教室にいた河村が、
「今、何か通ったか・・・?」
 と呟くほどだった・・・。
「蘭!!」
 その数秒後、快斗は蘭の教室の戸を勢いよく開け放った。クラス中の生徒たちの視線が快斗に集中する。
「か、快斗!?」
 蘭が目をぱちくりさせる。
 快斗はずんずんと教室の中に入り、蘭の腕を掴むと、そのまま教室の外へと連れ出した。
「ちょ、ちょっと快斗!?どうしたの!?」
 わけがわからない蘭は、快斗に引っ張られながらそう聞いたが、快斗はただ無言のまま蘭の腕を引っ張り、先に立って歩いていた。そのまま屋上まで蘭を連れて行き、そこでやっと蘭の腕を離した。
「―――どうしたの?快斗」
 いつもと様子の違う快斗に戸惑いながら、蘭が言った。
「―――誰だよっ?」
 低く、絞り出すような声で快斗が言った。
「え?」
「誰なんだよ、あいつ!?」
「あいつって―――」
「さっき!廊下でオメエのこと抱きしめて、キスしたやつだよ!」
 怒鳴るようにそう言った快斗に、蘭はハッとした。
「―――見て、たの・・・?」
「―――偶然、な」
 低い声で言う快斗。その顔には表情がなかった。本気で、怒っているのだ。
「あの―――」
 と蘭が口を開きかけた時―――
「俺から説明しようか?蘭」
 という声が、屋上の入り口から聞こえ・・・
「し、新一!」
 振り向いた蘭が、その人物―――さっき蘭を抱きしめた男に、驚いて言った。
 快斗は男を親しげに呼ぶ蘭に顔を顰め、その男を睨んだ。
「どうして―――」
「蘭に会いに行ったら、2人で教室出て行くのが見えたから、追っかけてきた―――。あんたが黒羽快斗?」
 その男はゆっくり近づいてくると、挑むような目で快斗を睨んだ。その視線を真っ直ぐに返しながら、快斗は言った。
「なんだよ、テメエは」
「俺は工藤新一。昨日、この学校に転校してきた」
「―――1年か」
「ああ」
「蘭とどういう関係だ?」
 快斗が聞くと、新一はニヤッと笑い、
「結婚の約束をした仲―――だよ」
と言ったのだった。



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 以前、日記でちょっとだけ紹介した小説です。一昔(二昔?)前にドラマでやってた「だんな様は18歳」風になっちゃいました。自分で快蘭新の小説やってて、どうしてもワンパターンになってしまう
なあと思っているときに浮かんだお話です。
 「ああ、わたしが書きたかったのはこれなんだ」とか思って。
 そのときに題名も決まってしまいました。

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