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*このブログは名探偵コナン・ごくせん・花より男子・君に届け&ゲーム(ラブレボ・新撰組など)の二次小説のブログになります。
*このブログは管理人個人によるファンサイトです。 原作者や出版社等とは何の関連もありません。
*あくまでも管理人の二次世界の小説ですので、人によってはイメージに大幅なずれがある場合もございますのでご注意ください。
*閲覧については自身の責任においてお願いいたします。
*このブログについての誹謗中傷・クレームなどの書き込みはおやめください。
*このブログの無断転載複製を禁じます。
*万が一このブログをお読みになって不快感を感じられたとしても責任は負いかねますのでご了承ください。

明日のために!

Category : novels(コナン)
「ねえ、新一、起きて」
 蘭の声が聞こえる。
 今日は日曜日。ここのところ事件続きで会えなかった蘭。その蘭と今日はずっと一緒にいられる・・・。
 そう思うとうれしくって仕方がない。
 新一は目を閉じたままにやっと笑うと、自分を起こそうと肩に置かれた蘭の手をぐっと引っ張る。
「!?きゃ!」
 バランスを失って新一の上に倒れこんだ蘭は、そのまま新一に抱え込まれ、唇を塞がれた。
「―――んんっ」
 驚いて離れようとする蘭の体を抱きこみ、その唇を貪る。
 やわらかい唇を味わいながら、そっと目を開け蘭の表情を盗み見る。
 息苦しさに眉を寄せ、赤くなってきた蘭の顔を見て、ようやくその唇を開放する。
「―――おはよ、蘭」
 乱れた息を整えようと、荒い息を繰り返す蘭を見ながら、新一は満足そうに笑う。
「―――もうっ」
「ん?」
「わたし、新一に言わなきゃならないことがあったのに・・・」
「なんだよ?」
「―――えっと・・・」
 あれ?なんだっけ?なんだかすごく大事なことだったような・・・
 首を傾げて考え込む蘭が可愛くて、もう一度口付けようとした、その時―――
「コホンッ」
 と突然部屋の入り口のほうで咳払いが聞こえ、蘭がパッと新一から離れる。新一が驚いてそっちのほうを見ると、そこには懐かしい姿が・・・
「新ちゃん、おはよう。朝からご機嫌なようね」
 と言って、にっこりと笑ったのは、新一の母である有希子だった・・・。


「帰ってくんならそう言っといてくれよ」
 リビングでコーヒーを飲みながら新一が仏頂面で言う。
「あら、何度も電話したのよ。新ちゃんたらいつもいないんだもの」
 有希子がてんで気にしてないように言うので、新一はなおのことぶーたれている。その様子を見て、蘭ははらはらしていた。
 朝、いつものように工藤家を訪れた蘭は、いきなり有希子に迎えられ、それはそれは吃驚したのだ。
 そして新一がまだ寝ていることを聞き、部屋に起こしに行ったのだが突然のキス攻撃にすっかり有希子のことを忘れてしまっていた蘭。あんな場面を、よりによって新一の母親である有希子に見られてしまうなんて・・・。蘭は顔から火が出そうなほど恥ずかしい思いをしていたのだ。
 だが新一はそんなことはちっとも気にしていないようで・・・むしろ、蘭と2人きりで過ごす筈だった休日を邪魔され、すこぶる機嫌が悪かった。
「んで、今回は何で帰ってきたんだよ?また父さんが原稿書けなくて出版社の奴らから逃げて来たのか?」
「ま、それもあるんだけどね・・・」
 ったくしょうがねえなァ、と呆れたように言う新一を横目で見て、有希子は蘭に視線を移した。
「ねえ、蘭ちゃん」
 突然有希子に名前を呼ばれ、蘭はびくっとして顔を上げる。
「は、はいっ」
 有希子はにっこり笑うと、コーヒーの載った盆を差し出した。
「ごめんね、悪いんだけど、このコーヒーを書斎にいる優作のところに持っていってくれる?」
「あ、はい・・・」
「なんだよ、それくらい自分で持っていきゃあ良いだろ?」
 新一が言うと、有希子は膨れっ面になり、
「だって、さっきちょっと言い合いしちゃったから、顔合わせたくないんだもの。蘭ちゃん、悪いんだけどお願いできる?」
「はい、わかりました」
 蘭はすくっと立ち上がると、渡された盆を手に部屋を出て行った。
「―――で?なんなんだよ?」
 蘭の姿が見えなくなると、新一が聞いた。
「あら、何が?」
「わざわざ蘭をここから追っ払ったろ?」
「やーね、追っ払ったんじゃないわよォ。ただ、ちょっと新ちゃんに聞きたいことがあったから・・・」
「それが、今回の帰国の目的?」
「―――物分りの良すぎる息子って可愛くないわよねえ」
「うっせーよ。さっさと用件言えよ」
「じゃ、単刀直入に聞くけど。あなた、大学はどうするつもり?」
「大学?―――そうだな、帝丹か、杯戸か・・・」
「やっぱりこっちの大学に進むつもりなの?」
「―――どういう意味だよ?」
「わかってるでしょう?これからまじめに探偵を目指すつもりなら、向こうの大学で勉強するほうがあなたのためになるんじゃない?」
「向こう?」
「そうよ。ハーバードとか。新ちゃんならまじめに勉強すれば行けると思うわよ」
「―――興味ねえ」
 あっさりとそう言い放った新一を、有希子がじっと見詰める。
「―――やっぱり、蘭ちゃんと離れるのがいやなのね?」
「・・・・・」
「気持ちはわかるけど。でも蘭ちゃんはあなたがコナンちゃんになっている間もあなたを待っててくれたんだもの。大学に行ってる間だって待っててくれるんじゃない?」
「コナンになっていたときとは違うだろ?あん時は俺はちゃんと蘭の側にいたんだ」
「そうね。今度は完全に離れてしまうわ。蘭ちゃんに誰か別の男の人が近づいても新ちゃんにはわからないんだものね」
 そう言って、意地悪そうににやっと笑った有希子を、新一がじろりと睨む。
「―――話はそれだけかよ?なら・・・」
「あん、まだよ。あなたがそう言うこと位わかってたもの。これでも母親ですからね」
「じゃ、なんなんだよ?」
「あなたがどうしても日本の大学に進みたいって言うのなら、条件があるのよ」
「はァ?なんだよ、俺の進路だぜ?俺がどうしようと・・・」
「あらァ?その学費を出すのは誰かしらァ?」
 その言葉に、新一はうっと詰まる。確かに、探偵業を始めてその報酬を得られるようになるまでは、学費は両親に頼らざるを得ない。
 新一は、勝ち誇ったようににっこり笑っている有希子を見て、溜息をついた。
「わあったよ!!どうすりゃ良いんだ?」
「わかりゃあ良いのよ。大丈夫。そんなに難しいことじゃないわ」


 「やあ、蘭君ありがとう」
 一方、書斎では、優作が蘭の持ってきたコーヒーを受け取ったところで・・・。蘭がそのまま書斎を出て行こうとすると、
「ああ、蘭君ちょっと」
「はい?」
「ちょっと君に聞きたいことがあるんだが・・・。新一の進路のことは、何か聞いてるかい?」
「あ、はい。確か帝丹か杯戸に行くって・・・」
「君と同じ?」
「ええ・・・」
 蘭が赤くなって頷くと、優作は優しく微笑んだ。
「そうか。やはりね。実はね、今回帰国したのは新一の進路のこともあっての事なんだ」
「そうだったんですか」
「あいつも、日本ではかなり探偵としてその名を知られるようになったが、当然世界に出ればまだまだだ。そこで、わたしも有希子も、あいつには向こうの大学に行ってもらいたいと思ってるんだ」
 蘭は、ドキッとして優作の顔を見た。
 いつか、誰かに言われるんじゃないかと思っていたことだ。以前、学校側に留学を進められたこともあると園子が言っていた。それを蘭が知ったのは新一が断った後のことで・・・。新一は「興味ないから」と言っていたが、園子は「きっと蘭と離れたくないのよ」なんて言っていた。 その時は笑い飛ばしたが、1人になって考えたとき・・・もしかしたら、自分は新一が探偵になるための邪魔をしているんじゃないかと、不安になったのだ。もちろん、新一は蘭を邪魔だなどとは思っていないだろう。でも、結果的にそうなっていたら・・・。そう思っても、蘭は自分から新一のそばを離れることはできなかった。
 ―――もう、あんなつらい想いはしたくない・・・。新一のいない生活は、もうたくさん・・・。で
も、この想いのせいで新一が自分の可能性をつぶしているとしたら・・・。
「蘭君・・・。君の気持ちはわかっているつもりだよ」
 優作が優しい笑みを浮かべて言った。
「おじ様・・・」
「大丈夫。君につらい思いをさせる気はないんだ。ただ・・・」
「ただ?」
「君に、折り入って相談があるんだが・・・。聞いてもらえるかい?」
「?はい・・・」


 「おい、蘭の奴コーヒー持ってっただけにしちゃあ遅くないか?」
 新一が言うと、有希子は気のない様子で
「そーお?久しぶりに会って話が弾んでるんじゃないの?」
 と言った。
「父さんと蘭が?」
 新一が怪訝そうな顔をする。
「それか・・・そうね、蘭ちゃんきれいになったし。優作に口説かれてたりしてね」
 その言葉に、新一はガタンと席を立つと、無言で部屋を出て行った。
「あらあら・・・」
 有希子が楽しそうに笑う。冷静に考えればそんなことがあるわけはないとわかるのだが。大体本当にそう思っていたら有希子が黙っているわけがない。ただ単に、蘭のこととなると冷静でいられなくなる新一をからかって遊んでいるだけなのだが・・・。

 新一は、書斎の入り口まで来て、ぴたりと足を止めた。ドアが少し開いていて、中から話し声が聞こえる。
「おじ様・・・でも、わたし・・・」
「蘭君なら大丈夫。それに、僕らもついてるんだ。安心して・・・」
 新一は、そっと中を覗いて見た。すると、そこには信じられないような光景が―――
 蘭はこちらに背を向けていて表情は見えないが、優作が蘭の肩を抱き、優しく何か囁くと、蘭はこくんと頷き優作の胸に顔をうずめるように―――
「!!と、父さん!!」
 堪らず部屋に飛び込む新一。
 蘭は吃驚して振り向き、優作はちょっと目を見開いただけで、すぐに余裕の笑みを浮かべた。
「新一?どうしたの?」
「新一、部屋に入るときはノックくらいするものだよ」
「―――開いてたんだよっ。それより、何の話してんだよ?」
「別に、たいしたことじゃあないよ。新一こそどうしてここへ来たんだ?何か用か?」
「蘭が、なかなか戻って来ないからどうしたのかと思って・・・」
「心配だったわけか」
 優作がにやっと笑うと、新一は顔を顰めた。
「あ、ごめんね、新一。今戻ろうと思ってたところなの」
 そう言って蘭が新一の側へ来た。新一が何か言おうと口を開きかけた時―――
「ちょっと新ちゃん、何してるのお?あ、蘭ちゃん。ね、これからお買い物に行かない?」
 書斎に入ってきた有希子が蘭を見てにっこり笑った。
「え、お買い物、ですか?」
「そうよ。新ちゃん荷物持ちにして。ね、行きましょう」
 有希子に手を引っ張られ、蘭は部屋を出て行きかけたがその前にチラッと優作のほうを見て―――
「行っておいで。話はまた今度―――」
 と優作に言われ、ほっとしたように微笑むとそのまま部屋を出て行った。
 面白くないのはそれを見ていた新一で。
「で、何の話をしてたんだよ?」
「たいしたことじゃないと言ったろう?ほら、君も行くんだろう?早く行かないと有希子が怒り出すよ」
 まだ何か言おうと口を開きかけた新一だったが・・・
「新ちゃーん!何してるのよお、早くしなさーい」
 と言う有希子の声が聞こえ・・・優作も原稿に向かい始めたのを見て、仕方なく肩を竦めて部屋を出て行ったのだった・・・。


 「キャア、見て見て蘭ちゃん、このクロスすっごく素敵vvリビングにどうかしらァ」
「あ、ホント、素敵ですね。色はこっちのほうが合うんじゃないですか?」
「そうねえ、明るくって良いわあ。これにしようかしら。それから・・・」
 雑貨屋できゃいきゃいはしゃぎながら品定めをする2人を、入り口の横で新一が呆れたように見ている。
 ―――ったく、何で・・・。ま、これに付き合うだけで日本に―――蘭の側にいられるんだったら安いもんだよな。
 と考え直し、改めて2人を見る。
 そう、新一が日本に残るために有希子が出した条件とは・・・
『今日1日文句を言わず、買い物に付き合うこと』という至極簡単なものだったのだ。
 あまりにも簡単すぎて・・・何か裏があるんじゃないかと訝った新一だったが、これが条件なら願ってもないことで・・・。不思議に思いながらもその条件を呑むことにしたのだった。
「ねえ、あれ親子かなあ?」
「ええ?お母さん、ずいぶん若くない?いいなァ、若いお母さん。あんな素敵な人だったら一緒に買い物しても楽しいよねえ」
 新一の横を通っていく若い女の子達が話しているのが聞こえる。
 ―――親子に見えんのかね、あの2人。
 確かに、友達というには年が離れているし、姉妹にしても同じだ。今の若い女の子は、藤峰有希子という女優がいたことなど知らないのだろう。きれいで若い母親と、似てはいないがやはり人目を引くきれいな娘・・・。
 思えば、蘭の両親が別居することになった頃、蘭を気遣って有希子が良く蘭を連れ出していたのだ。もちろん新一も一緒に。毎日のように新一の家に来て、有希子とおしゃべりをしたり買い物に行ったり・・・。時には新一がやきもちを妬くくらい一緒にいることが多かった有希子と蘭。本物の親子に見えたとしても、不思議はないのかもしれない。
 ―――あの2人だったら嫁姑の関係もうまくいくかもな。
 などと未来のことを考え、思わずにやける新一。
「ちょっと新ちゃん、何にやけてんのよ?」
 気付くと、有希子と蘭が買い物を終えて、新一のそばへ来ていた。
「もう終わったのか?」
「このお店はね。さ、次行くわよ」
 持っていた紙袋さっさと新一に押し付け、有希子は蘭の手を取って先に歩き始めた。新一は溜息をつきながらも、これも将来のためと思い黙って2人のあとについて歩き始めたのだった。
 その後も様々な店を渡り歩き、新一が手に持ちきれないほどの買い物をし、漸く家路につく頃には、日がとっぷりと暮れていたのだった・・・。

「やあ、お帰り。ずいぶん楽しんだようだね」
 3人を出迎えた優作が、新一の持っている戦利品を見て目を丸くした。
「楽しかったわ――♪しばらく見ないうちに、可愛いお店がたくさんできてるんだものvv1日じゃ廻りきらないくらいよ」
「おい、まさか明日も行くなんていわねえだろうな」
 疲れ果て、ソファに沈んでいた新一がげんなりした様子で言う。
「明日は月曜日。新ちゃんたちは学校でしょう?さすがに学校サボってまで付き合えとは言わないわよ」
 そういう有希子をじと目で睨み、
 ―――言いそうなところがこええんだよ。
 と思った新一だったが、もちろん声には出さない。
 蘭は有希子と2人、買ってきたものを開けてみてはまたきゃいきゃいとはしゃいでいた。
「―――ところで新一君、君は大学はどうするつもりだい?」
 と、突然優作が切り出し、蘭も有希子もぴたっと動きを止めた。
 ―――な、なんだよ?
「どうするって・・・俺は帝丹か杯戸に・・・」
 と新一が言うと、蘭がちょっと困ったような顔をし、有希子はにやりと笑う。優作はわざとらしく目を見開き、
「おや、それは残念だねえ」
 と言った。
「なんだよ?どういう意味だよ?」
「蘭君は、向こうの大学に行ってもいいと言っていたんだが・・・」
「は!?」
 新一が、驚いて大きな声を出すと、有希子が「うるさいわねえ」と眉を顰める。
「向こうって、どこだよ!?」
「無論、アメリカさ」
「な、なんで!?」
「決まってるだろう。君が向こうの大学に進むなら、何年も離れ離れになってしまう。今までも散々待たされたんだからね。これ以上待たせるのはかわいそうだろう。だから、蘭君さえ良ければ、新一と一緒に向こうの大学に行ったらどうかと言ったんだよ。住む所は心配いらない。うちにちゃんと部屋を用意しておくからね。別々の大学に行くとしても、同じところに住んでいればずっと一緒にいられるしね」
 ―――今、なんて言った?同じところに住む!?蘭と!?
 新一が驚きのあまり言葉を発せられないでいると、優作は続けて
「しかし、新一がどうしても日本にいたいと言うのなら仕方がないな。どうせ一緒に住むのなら、いっそ結婚してしまえばと思ったんだが・・・」
 ―――け、結婚!?
「ちょ、ちょっと待てよ!!いつそんな話・・・!大体、母さんそんなこと言ってなかったじゃねえか!」
「うふふ、ごめんねえ、新ちゃん」
 有希子が楽しそうに笑う。
「ちょっと試したかったのよお。新ちゃんがどれだけ蘭ちゃんと一緒にいたいと思ってるか。それから・・・一緒に住んだら蘭ちゃんとうまくやっていけるかどうか」
「おば様・・・」
「蘭ちゃんのことは大好きだし、もちろんうまくやっていけるとは思ってたけどお。今日1日一緒にいて改めて確信したわ。わたし達、絶対大丈夫よ」
 有希子が力強く言うのを聞いて、蘭が感激して瞳を潤ませる。新一はまだ納得できない様子で、
「・・・ただ単に買い物に付き合わせたかっただけなんじゃねえかって気ィするけど?」
「あらァ、失礼ねえ。まあそれもあるけどね」
「で、どうするんだい?もちろん結婚ともなれば蘭君のご両親も説得しなければならないし、それにはわたし達も協力するつもりでいるけれど」
 優作が穏やかに言う。
「ちょっと待ってくれよ。あんまり急で・・・」
「あら、新ちゃんたら蘭ちゃんと結婚したくないの?」
「ばっ、ンなわけねえだろ?俺が結婚する相手は蘭しかいねえんだから!!」
 思わず叫んでしまい、はっとして蘭を見ると、蘭は真っ赤になって新一を見つめていた。
「えーと、その・・・」
「なーんか全然ムードのないプロポーズねえ」
「今のはプロポーズと言うより、口が滑っただけという感じだな」
 冷静に話し合う両親をじろりと睨み、新一は蘭を見つめた。
「蘭・・・その、おめえは、良いのか・・・?」
「―――わたしだって・・・新一以外の人と結婚するつもりなんか、ないもの」
 俯いて囁くように、しかし新一にははっきりと聞こえる声で蘭はそう言った。
「らん!!」
 もう、新一には回りは見えていなかった。ただ蘭が愛しくて、堪らずに蘭の細い体を抱きしめていた。
「し、新一、あの・・・」
 真っ赤になって離れようとする蘭の体を、絶対に離すまいと抱きしめる新一。
 蘭は困ったように視線を彷徨わせ、優作と有希子のほうを見た。
 2人は軽く頷いてみせ、それから静かに部屋を出て行った。
 蘭は照れながらも、2人の好意に感謝し、それから自分の腕を新一の背中にまわし、ぎゅっと抱きついた。それに答えて新一も蘭を抱きしめる腕に力を込める。
 そうして、これからもずっと一緒にいられる幸せを、2人でかみ締めながら、ずっと抱き合っていたのだった・・・。


 「最後は当てられちゃったわね」
「まあ良いだろう。今日は散々新一で遊んだんだから」
「そうね。でも、これからが大変よ。あの小五郎さんを説得しなくちゃいけないんだからね」
「大丈夫。彼も何だかんだ言って、蘭君には弱いからね。きっと許してくれるさ」
「・・・あなたも、蘭ちゃんには弱いのかしら?」
「え?」
「今朝・・・新ちゃんが書斎に行った時、蘭ちゃんに一体何しようとしてたの?」
「別に何も・・・」
「そお?なんだか抱きしめようとしてるみたいだったけど?」
「・・・気のせいだろう」
「ふーん?」
「僕が、君以外の女性にそんなことするはずがないだろう?」
「うふ。それじゃあ、その証拠をみせてね」
「もちろん。今夜、たっぷり証明してあげるよ・・・」
 そうして2組のカップルの熱い夜は更けていったのだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この作品は7000番をゲットされた桜井ねお様のリクエストによるものです~。
工藤夫婦にちょっかい出される新蘭ということで・・・わたしも初めてトライするテーマだったので正直始めは全然話が思い浮かばず・・・ええい、ままよ!と書き始めたら何やら話がとんでもないほうに進んでいき・・・気が付いたらこんなのになってました(笑) ねおさんごめんなさい・・・
工藤夫婦・・・特に優作さんは難しいですね。でも、また書いてみたいかも。
というわけで・・・

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Doki Doki!!~新蘭~

Category : novels(コナン)
「新一おはよう!!」
 明るい声に思わず振り返ると、そこには新一の幼馴染、毛利蘭が立っていた。
 すぐに返事をしようと思っていたのに、なぜかドキドキして、何も言えないでいた。
「?どうしたの?新一、顔赤いよ?かぜ?」
 きょとんとして、首を傾げる蘭。その表情を見て、新一の胸はさらに高鳴る。
「な、なんでもね―よ。早く行こうぜ」
 わざとぶっきらぼうに言って、先に立って歩き出す。すぐに隣に立って、蘭が一緒に歩く。
「今日から中学生だねえ。なんかドキドキしちゃうなあ」
 無邪気に笑う蘭を、横目でちらりと見る。
 ―――吃驚した・・・。制服姿なんて、はじめて見たから・・・。
 セーラー服を着た蘭は、いつもよりもずっと大人っぽく見えた。
 でも、新一はまだこの時、気付いていなかった。自分がなぜ制服を着た蘭を見てドキドキしてしまったのか・・・。


 学校に着くと、蘭の親友の鈴木園子が蘭を見つけて駆け寄ってきた。
「らーん、おはよー!!」
「おはよう、園子」
「ね、わたしと蘭、同じクラスよ!」
「ホント!?やったあ!」
 蘭が嬉しそうに顔を輝かせる。
 その顔を見て、また新一の胸がどきんと鳴った。
「あ、ちなみに新一君も同じクラスよ」
 と、園子が新一に気付き、ついでといった感じで付け加える。
「ホント?良かったあ。ね、新一?」
 蘭がにっこりと笑いかけてくる。その笑顔が眩しくて・・・でも、素直に嬉しいとは言えず、
「べ、別に俺はどっちでも良いけど・・・」
 と言った。
「あ、かわいくなーい、その言い方。ふんだ、良いもんねえ、行こう、園子」
 ぷうっと膨れっ面になり、そのまま園子と2人で行ってしまう蘭を、新一はちょっと慌てて追いかけた。
「ちょ、待てよ。どうせ同じクラスなんだろ?一緒に行きゃあ良いじゃんか」
「素直に蘭と同じクラスで嬉しいって言えば良いのにい」
 と、園子がくすくす笑って言う。
「バッ、バーロー、んなこと思ってねーよっ」
 ドキドキする胸を抑えることができず、新一は顔を赤くしながら2人と一緒に新しい教室へと入っていった。男子は学ラン、女子はセーラー服というこの中学の制服。別に初めて見るわけではない。それに他の女子を見てもなんともない。園子にしても同じだ。なのにどうして蘭を見たときだけこんなにドキドキするのか・・・。
 新一がいくら考えても、その答えは出てこなかった・・・。


 「ねえ、蘭どの部活に入るか決めたの?」
 入学式も終わり、その翌日。部活の紹介などがあるオリエンテーションを終えて教室に戻る最中、園子が蘭に聞いた。すぐ側にいた新一も聞き耳を立てる。
「うん、決めたよ」
 ―――へ?いつの間に?
「へえ、どこ?」
「空手部!」
 その蘭の言葉に、園子も新一も目を見開く。
「「空手部!?」」
 2人同時に言われ、蘭のほうが戸惑う。
「え?なんか変?」
「何で空手部なんだよ?おめえ、そんなもんに興味あったのか?」
「うん、あのね―――」
「わかった!」
 急に園子がにやりと笑っていった。
「蘭ってば、あの人に目ェつけたんでしょう!」
「あの人?」
 蘭が首を傾げる。
「空手部の部長よ!神崎さん!今日の部活紹介で来てた人。超かっこよかったじゃない!蘭、あの人が目当てで・・・」
「やだ、そんなんじゃないよ、わたしは―――」
 慌てて否定しようとする蘭の言葉をさえぎり、園子が続ける。
「まあまあ、良いじゃない。彼本当にかっこいいもん。わたしは空手部に入るなんて大胆なことできないけどさ、がんばってね!」
「だから、違うってば。わたしは―――」
「あ、もうみんな教室入ってるじゃない。わたしたちも急ごう!」
 そう言うと園子は、さっさと教室に入っていってしまった。
「もう・・・」
 蘭がため息をつく。
 新一は、さっきからずっと黙っていたが、やがてぼそっと呟いた。
「・・・ほんとに、空手部に入るのか?」
「え?うん。―――あ、でも、わたしが空手部に入るのは園子が言ってたような理由じゃないからね」
「じゃ、なんでだよ?」
「だからそれは・・・」
 と蘭が言いかけたとき、
「おい、何してるんだ?早く教室に入れ」
 と担任の教師に声をかけられ、2人は仕方なく教室に入った。
 席に着き、担任が話を始めてからも、新一は蘭のことが気になって仕方なかった。ちらちらと蘭の後姿に視線を送り、様子を伺う。
 ―――蘭の奴、何で空手部なんだ?今まで何にも言ってなかったから・・・決まってなかったらサッカー部のマネージャー、やってほしかったのに・・・。
 新一はもう、だいぶ前からサッカー部に入ることを決めていたし蘭にも話していた。部活は毎日あるだろうし、今までみたいに一緒に遊んだりすることも少なくなるだろう。だからこそ・・・一緒にいられる時間の長いマネージャーをやってほしかったのだ。
 でも、そんな風に思っていたのは自分だけだったのか・・・。
 そう思うと新一は無性に腹が立ってきた。
 ―――なんだよ、蘭の奴、俺に何も言わねえで決めやがって・・・。勝手にしろってんだ!
 なぜこんなにも腹が立つのかわからない。今まで何でも話してくれてると思っていた蘭が、自分に黙っていたこと・・・。それがなぜだかとても悔しかったのだ。
 ―――蘭にとって、俺ってなんなんだ・・・?
 いらいらと蘭の後姿を見つめる新一。しかしその問いは、逆に自分にとって蘭はなんなのか、という問いにもなるということに新一は気付いていなかった・・・。


 それから数週間がたち、蘭たち新一年生もようやく中学に馴染み始め、それぞれ仲の良いグループもできてきた。
「蘭、今日も部活?」
「うん。園子は入る部活、まだ決まんないの?」
「考えてはいるんだけどね―。あーあ、蘭と一緒に帰れないのって寂しい~」
「ごめんね、園子」
 蘭がすまなそうに誤る。
「ま、しょうがないもんね。じゃ、わたし帰るから。がんばってね。空手部」
「うん、ありがと」
 蘭はにっこり笑うとちょっと手を振り、胴着を片手に教室を出て行った。
 それを見送って、園子はくるりと振り向いた。
 そこにはこれから部活に向かうジャージ姿の新一がいた。
 園子は新一と目が合うと、にまっと笑った。
「な、なんだよ?」
「ベーつにい?最近良く蘭のこと見てるなあと思って」
「な、何言ってんだよ、見てねえよ、あいつのことなんて!」
「あ、そ~お?」
 相変わらずニヤニヤ笑っている園子。
 ―――こいつは~~。
 実際、最近気が付くと目は蘭を追っていた。どうしてこんなに気になるのか。自分でもわからないまま、いつも蘭を目で追い、蘭の表情1つ1つにドキドキしているのだ。
「あんたもがんばってるみたいね。サッカー部。レギュラー取れそう?」
「さあな。1年でレギュラーなんてそうそう取れねえけど、一応取るつもりでやってっからな」
「ふーん。自信ありそうね。ま、がんばってよ。じゃあね」
「おお」
 教室を出て行く園子のあとから、部活に向かう新一。何はともあれ今は部活に集中だ。
 そう気持ちを切り替え、グラウンドに向かう新一だった。


 その日の帰り。
 新一は同じサッカー部の友達と歩いていた。
「そういえば、工藤と毛利って幼馴染なんだろ?」
「ああ」
「いいよなあ。あんな可愛い幼馴染がいてさ」
「べ、べつに・・・」
「俺の友達で空手部に入った奴がいてさあ、なんか毛利に気があるみて―で・・・」
 その言葉に、新一の足がぴたっと止まった。
「―――誰だよ?それ」
 突然顔色が変わり、低い声で言う新一にその友達は吃驚し、思わず後ずさりした。
「え、えーと、あの、な、永瀬って奴だけど・・・別に、本人に聞いたわけじゃねえんだけど、その・・・」
「―――わりいけど、先に帰っててくれ。俺、忘れ物したから」
 と言うと、新一はパッと身を翻し、学校へと戻って行った。
 残された友達は、わけもわからずその場に突っ立っているしかなかったのだった・・・。

 ―――なんなんだよ、そいつ!蘭に気があるだって?ふざけんなってんだっ、蘭は俺の・・・
 そこまで考えたとき、新一の足が止まった。いつのまにか、空手部の部室の前まで来ていた。そこから出てくる人影。あれは・・・
 ―――蘭!
 新一はとっさに物陰に隠れた。別に隠れる必要はなかったのだが、反射的に隠れてしまったのだ。
 蘭は、男子生徒と2人、歩いてきた。
 ―――あいつ、確か園子が言ってた部長の、神埼とかいう奴・・・。何であいつが蘭と?
 蘭と神崎が何か楽しそうに話しながら歩いている。その光景を見ることが、なぜかとてもつらかった。
蘭の隣にいるのは、いつも自分のはずだったのに・・・。そんな思いが新一の中に渦巻いた。
 ―――なんでそんなに楽しそうに話してんだよ?何でそいつにそんな笑顔見せるんだよ!?
「え?本当ですか?部長!」
 蘭の弾んだ声が聞こえる。
「ああ、今度連れてってやるよ。前田さんの試合。俺もあの人にはずっと憧れてるんだ」
「やった♪ありがとうございます、部長!」
 嬉しそうに笑う蘭・・・。居た堪れなくなった新一は、その場から逃げるように立ち去ったのだった・・・。
 その日、新一はなかなか寝付くことができなかった。
 蘭が、神崎と話している光景が、頭から離れない。楽しそうに話し、笑う蘭。いつもはほっとするその笑顔が、他人に向けられただけで、なぜこんなにもいらいらするのか・・・。いくら考えても答えは見つからず、じっとしていられなくなった新一は気分を変えようと外に出て、夜の街をぶらぶらと歩き回った。
 4月、もうだいぶ暖かくなってきたとはいえ、夜はまだ寒い。そんな寒い中をポロシャツにジーパンという軽装で歩いていれば、風邪を引きそうだったが、今の新一はそんなことを気にしている余裕もなかった。ただ、頭に思い浮かぶのは蘭の顔ばかり。無邪気な笑顔、ちょっと拗ねたような顔。気が強いくせに泣き虫で、そんな泣き顔を見せるのも自分の前だけだと思っていた・・・。でも、蘭にとっては俺は別に特別じゃなかったんだろうか。小さい頃からずっとそばにいて、誰よりも蘭のことを知っていると思ってたのに・・・。
 そんなことを考えながらずっと歩いていて・・・自分の体がすっかり冷えてしまっていることに、新一は気付かなかった・・・。


 翌日・・・。案の定、風邪を引いてしまった新一はベッドの中で、重い体を起こした。
「あったまいてえ~~~」
 ズキズキする頭を手で抑え、ベッドから出ようとするが、思うように体が動かない。
「やべ・・・」
 さすがに学校は休んだほうがいいかな、と思っていると、突然部屋のドアが開いて、吃驚してそちらを見る。
「新一?どうしたの?」
 ひょっこり顔を出したのは、心配そうな顔をした蘭だった。
「ら、蘭?どうしたんだよ?」
「どうしたって・・・呼び鈴鳴らしたのに誰も出てこないし、鍵が開いてるから何かあったのかと思って・・・」
「え・・・鍵、開いてたか?」
「うん。無用心だよ?ねえ、おば様とおじ様は?」
「あいつらは取材旅行で来週まで帰ってこねえよ」
「え、そうなの?新一大丈夫なの?ご飯とかちゃんと食べてる?」
「ああ、適当に買ってきて食ってるよ」
「適当って、それじゃ・・・あれ?新一・・・具合悪いの?」
「ん、ああ・・・ちょっとな。ただの風邪だよ。今支度すっから・・・」
 と言って、新一はベッドから降りようとして、不意に体がよろけた。
「!!し、新一、大丈夫!?」
 慌てて蘭が駆け寄ってきて、新一の体を支える。その拍子に蘭の髪がふわりと新一の頬に触れ、シャンプーの微かな匂いが鼻を擽った・・・。
 ドキンッ
 新一の心臓がとたんに大きく音を立てる。その音が蘭にも聞こえてしまうんじゃないかと思って、新一は慌てて蘭から離れた。だが、蘭は新一の腕を抑え、新一の顔に自分の顔を近付け、その額に自分の額を当てた。
「すごい熱、あるじゃない!!こんなんで学校なんか行けるわけないでしょう?」
 と蘭は怒ったように言う。新一は、その熱とは違う理由で体が熱くなるのを感じ、言葉が出てこなかった。
「今日は休まなきゃ駄目よ。先生にはわたしが言うから・・・。新一、風邪薬ある?」
「―――確か、下の部屋に・・・」
「大体わかると思うから、探して来て良い?」
「ああ」
「じゃ、ちょっと待っててね」
 そう言うと、蘭は部屋を出て行った。
 新一は大きくため息をつき、ベッドに倒れこむように寝転がった。
 ―――なんだ、これ?何で蘭の額が触れただけで、こんなにドキドキするんだ?風邪のせいかな・・・。
 
 やがて蘭が、薬とおかゆを持って部屋に戻ってきた。
「・・・おい、そのおかゆ、今作ったのか?」
 新一が目を丸くして言う。
「まさか。レトルトパックのおかゆがキッチンの棚に入ってたの。なにか食べてから薬飲んだほうが良いから」
 そう言うと、蘭は新一の前におかゆの載ったお盆を置いた。
「無理して全部食べなくても良いけど・・・。食べれるだけ食べて、お薬飲んだらおとなしく寝てるのよ?」
「―――おめえはもう行くのか?」
「うん。今日、朝練あったの。もう今からじゃ間に合わないけど・・・。帰りにまた寄るから。ちゃんと寝てなきゃだめだよ?本ばっかり読んでたら良くならないからね?」
「わかってるよ。―――ごめんな、蘭、朝練休ましちまって・・・」
 と新一が言うと、蘭はにっこり笑って、
「良いよ、別に。じゃあね」
 というと、部屋から出て行ってしまった。パタパタと階段を下りる音、ドアを開ける音が聞こえ・・・
 やがて家の中はまた静かになった。どうしようもなく、寂しい気持ちになってくる。それでも新一は蘭に言われたとおり、おかゆを半分ほど食べ、薬を飲むとベッドに横になった。そっと目を瞑ると、さっきの蘭の笑顔が瞼に浮かび上がる。無邪気なのに、優しく包み込むような笑顔・・・。
 ―――あいつ、あんなに可愛かったっけ・・・。
「らん・・・」
 その名を呟いてみる。いつのまにか、自分の中で大きくなっていた蘭の存在。
 誰にも渡したくない。その笑顔も、声も、すべて自分のものしたい・・・。
 初めて自覚した独占欲。それは蘭だけに向けられた想い。ただの幼馴染なんかじゃない、自分だけの特別な存在・・・。
「らん・・・」
 やがて、薬が効き始め、新一は深い眠りの中へと誘い込まれて行った・・・。


 ふと、人の気配に目が覚める。
「あ、ごめんね、起こしちゃった?」
 ひょいと、蘭の顔が覗き、新一の心臓が跳ね上がった。
「布団が捲れてたから、直したんだけど・・・」
「―――おめえ・・・学校は?―――まだ昼くらいじゃねえか?」
 と言うと、蘭はちょっときょとんとしてから、くすっと笑った。
 その表情に、また新一の胸の鼓動が早くなる。
「今日は土曜日だもん」
「あ、そうか・・・。けど部活は?」
「今日は休ませてもらったの」
 そう言うと蘭は、新一の額にその手を置いた。
「―――少しは下がったかな・・・。ね、何か食べる?」
「あんま、食欲ねえけど・・・」
「でも、少し食べてまた薬飲まないと。卵粥とか、作ろうか」
「―――作ってくれんの?」
「うん。ちょっと待っててね」
 と言って立とうとする蘭の手を、新一がとっさに掴む。
「?何?」
「あ、その・・・ごめん。部活・・・休ませて」
「どうしたの?今日は新一良く謝るね。別に良いのに。部活より、新一の体のほうが心配だっただけ」
 こともなげに言って笑う蘭が、眩しかった。
「おめえさ・・・」
「ん?」
「その・・・なんで空手部に入ったんだ?」
「え?」
 突然聞かれた内容に、蘭は目をぱちくりさせる。
「ほ、ほら、俺、まだ聞いてねえし・・・」
「・・・笑わないで聞いてね?」
「笑わねえよ」
「新一は探偵になりたいんでしょう?」
「?ああ」
「でも、探偵って危険なこともあるじゃない」
「そうだな」
「危なくなったとき・・・わたしでも新一を助けられる方法ってないかなって思って・・・」
「・・・・・」
「それで・・・ね」
 ほんのり頬を染めて照れくさそうに話す蘭。新一は予想もしていなかったことに、言葉が出てこない。
「じゃ、じゃあわたし、おかゆ作ってくるね」
 と言って、蘭はそそくさと部屋を出て行った。
 ―――俺の、ため・・・? 
 じわじわと嬉しさがこみ上げてくる。
 ―――そっか・・・。俺のため、だったんだ・・・。
 そのまま幸せに浸りそうになったとき、ふと思い出した。
 ―――そういや、蘭の奴・・・

 「お待たせ、新一」
 湯気の上がった卵粥と水の入ったコップを盆に載せ、蘭が部屋に入ってくる。
「サンキュー」
「まだ熱いから、気をつけてね」
「ああ」
 そう言って新一は蓮華を持ったが、そのまま動きを止め、じっと黙ってしまった。
「?新一?どうしたの?食べたくないの?」
 蘭が心配そうに顔を覗き込む。
「おめえさ・・・」
「ん?」
「あの、部長と・・・その・・・」
「部長?って、神埼先輩のこと?」
「ああ。その人とさ、その・・・どっか行く約束とか、してんの?」
「ええ?どうして?」
 蘭が吃驚して目を見開く。
「あ、いやその・・・」
 新一はどう言ったものか悩み、口を噤んだ。
「・・・もしかして、新一昨日空手部の部室の前にいた?」
「!!き、気付いてたのか?」
「んー・・・なんか、誰かいたような気がしたの。あれ、新一だったんだ。それで、わたしと部長の話聞いてたの?」
「う・・・ていうか、たまたま聞こえて・・・で・・・どうなんだよ?」
 なんとなくばつの悪い思いをしつつ、それでも思い切って聞いてみる。
「うん。約束はしたけど・・・」
 ―――やっぱり・・・。
 新一は心臓を鷲づかみにされた気分で、ぎゅっと拳を握り締めた。
「でも、2人じゃないよ」
「―――へ?」
 続けられた言葉に、新一は思わず間抜けな声を出し、蘭の顔を見た。
「空手部のみんなで一緒に行くの。前田さんってね、去年の空手の全日本チャンピオンなの。その人の試合をみんなで見に行こうって話をしてたの」
「あ・・・そう・・・なんだ・・・」
 気の抜けたような新一に、蘭はにっこりと笑いかけ、
「昨日もね。あれから空手部のみんなで帰ったの。最後は家が近い隣のクラスの女の子と2人になったけど。みんなとわいわい話しながら帰るの、楽しかったよ」
「ふーん・・・」
「でも・・・」
「でも?」
「・・・新一と帰れなくなるのは、ちょっと寂しいかな。時々は、一緒に帰ろうね」
 無邪気に笑う蘭の笑顔が眩しくて・・・新一は胸のドキドキを抑えることができなかった。それでも、言ってくれたことが嬉しくて、こくんと頷き、
「ああ、そうだな・・・」
 と言ったのだった・・・。
 
 蘭にとって、自分はまだただの幼馴染。だからこそ、簡単にあんな台詞も言えるのだろう。
 今はまだ、このままでいい。蘭の隣にいられるのなら・・・。
 でも、いつか絶対その瞳を俺だけに向けさせて見せる。
 蘭の隣にいるのは、いつでも俺でありたい。他の奴になんか、譲れない。どんなことがあっても・・・。
 そして、いつかこのドキドキを共有できるようになりたい。
 蘭のドキドキの相手が俺であるように・・・。

 きらきらした瞳で楽しそうに話をする蘭を見つめながら、新一はそう思わずにはいられないのだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 この作品はキリ番6666をゲットして頂いたリロ様のリクエストによる作品です。
新一が蘭ちゃんを好きだと気付き始めた頃のお話ということで・・・。
新一君のせつない気持ち、伝わりましたでしょうか?結構難しいですね。何がって、中学生の心理が、ですね。今の中学生って、彼氏なんかいてあたりまえなのかな、とか言葉使いとかどうなんだろう?といろいろ考えながら書きました。ほんとは新一が蘭ちゃんを好きだと気付いたのって、もっと前かな、とも思ったんですけどね。でも、思春期のお話のほうが入りやすいかなあと思って中学生にしちゃいました。新ちゃんのドキドキが伝わったら嬉しいです。

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きみの笑顔は僕のもの ~新蘭~

Category : novels(コナン)
 「ね、蘭お願い!この通り!」
 蘭は、目の前で手を合わせて頭を下げる園子を、困った顔で見ていた。
「そんなこと言われても・・・」
「だーいじょうぶだって!女の子向けの雑誌なんて新一君見ないしさ!バレやしないって!」
「でも、わたし、モデルなんて・・・」
「蘭だったら大丈夫!スタイル抜群だし可愛いし!それにモデルっつったって読者モデルだからさ、緊張することないって大木さんも言ってたよ!」
 園子が必死で頼む姿に、蘭は小さく溜息をつく。
「ね、お願い。1回だけだからさ!」
「・・・これっきりだよ?」
「もちろん!ありがと、蘭!恩に着るわ!」
 と言って、園子が抱きつく。
 そこへタイミング良く(悪く?)現れて園子をジロリと睨みつけたのは、もちろん・・・
「なあにしてんだよ、園子!」
「あ、あら新一君いたの?」
 日本警察の救世主と言われる高校生探偵であり、蘭の恋人でもある工藤新一だ。
「いちゃわりいかよ。何2人でコソコソ話してんだよ?」
 園子が必要以上に蘭に引っ付いているのが気にいらない新一が不機嫌そうな声で言う。
「別にコソコソなんかしてないわよ。なあに、わたしにまでヤキモチ?」
 と、園子がニヤッと笑って言う。と、途端に新一の顔が真っ赤になる。
「べっ、別にそんなんじゃねえよ。ただ、何話してんのかと思ってだな―――」
「はいはい。んじゃわたしは先に帰るから。バイバイ、蘭」
「あ、ばいばい」
 蘭が園子に手を振るのを仏頂面で見て・・・
「何話してたんだよ?」
 と、新一が聞く。
「別にたいしたことじゃないよ。今度の日曜日に見に行くライブの話」
「ふーん、ライブ、ねえ・・・」
 なんとなく、府に落ちないような顔をしていた新一だが、蘭がニコッと笑いかけ、
「かえろっか」
 と言うと、その笑顔にそれまでの不機嫌も消え・・・
「ああ、そうだな」
 と笑って言ったのだった・・・。


 「ら~ん、こっちこっち」
 日曜日、蘭は園子に言われた赤坂のとある撮影所に来ていた。
「ごめん、園子。ちょっと迷っちゃって・・・」
 蘭が息を切らしながら駆けてくるのを園子は笑って見ていた。
「そんなことだろうと思って、蘭には約束より30分早い時間教えといたのよ。大丈夫。まだ10分前よ」
 さすが蘭の親友、と言うべきだろう。蘭もそんな園子に苦笑いしながら、
「もう・・・。でもありがと、園子」
 と言った。
 2人して入って行くと、いろいろな照明器具やカメラが所狭しと並べられ、その中心で何人かの人が動き回っていた。
「大木さん、蘭、来ましたよ」
 と、園子がカメラをいじっていた長身の男に声をかける。
 男が振り向き、蘭を見ると笑顔で
「やァ、よく来てくれたね。俺は大木正人。よろしく」
 と言って、右手を差し出した。つられて蘭も右手を出し、握手を交わした。
「よろしくお願いします。あの、わたしみたいな素人で、ホントに良いんですか?」
 と、蘭が遠慮がちに聞く。
「ああ、全然大丈夫。というより、君にやって欲しいんだよ。鈴木財閥のパーティーの写真の中に君を見つけた時、この子だ!って思ったんだ。園子ちゃんとは面識があったからね。ライブのチケット餌にして無理やり頼み込んだんだ」
 悪びれもせず、笑ってそう言う大木に、蘭も苦笑いするしかない。
「じゃあ、早速着替えてもらおうかな。ちゃんと君のイメージにあわせて衣装も選んだんだ。―――さくら君、この子着替えさせてあげて」
 と、大木が部屋の隅で衣装のチェックをしていた若い女の子に声をかけた。
「はーい!」
 女の子が元気良く返事をし、蘭を連れて奥の更衣室のような所へ入った。
「今日のセット素敵なのよ。衣装もそれに合わせてみたから」
 にこにこしながら衣装を出してくれる女の子。その手際の良さに感心して、蘭は目を丸くした。
 そんな蘭を見た女の子はクスッと笑って、
「あなたって、ホント可愛いわね。大木先生が惚れこむのも分かるわ。ね、芸能界とか興味ないの?あなただったら絶対イケルと思うけど」
「ええ?そんな・・・わたしなんてダメですよォ。あんまりおだてないでください」
 真っ赤になって手を振る蘭を見て、女の子は、ますますおかしそうに笑う。
「本気で言ったんだけど・・・まあ良いわ。はい、じゃあこれ着てね」
 と行って、蘭に衣装を渡すと女の子は外に出た。
 蘭は渡された衣装に着替えると、部屋の外に出た。
「あ、可愛いじゃない!思った通り、似合ってるわ」
 女の子が蘭を見て言った。
「そ、そうですか?なんか恥ずかしい・・・」
「ふふ。さ、次はメイクよ」
「え、メイクまでするんですか?」
「もっちろん!可愛くしてあげるからね♪」
 女の子が心底楽しそうに笑うのを、蘭はなんとなく不安な面持ちで聞いていたのだった・・・。
 あっという間にメイクを施され、いよいよ撮影開始。そのセットを見て、蘭も園子も、思わず言葉をなくした。
「うわあ・・・すてき・・・」
「だろう?蘭ちゃんのイメージに合わせてみたんだ」
 大木の言葉に、思わず蘭が真っ赤になる。
「わ、わたしの?こんな素敵なセットが?」
「そうだよ。ほら、いつまでもビックリしてないで、その中央に立ってみて」
 大木に言われるがまま、蘭はセットの中央に立った。
「うん、そう。カメラ見て。―――そんなに緊張しないで。普通のスナップ写真とる時みたいにリラックスしてよ」
 そう言われても、慣れないことに蘭はなかなか自然に振舞うことが出来ない。大木はう~んと考え、
「―――じゃあ、彼氏が側にいると思ってみて。君は彼氏とデートに来てる。いいかい?ここには2人以外誰もいない。彼氏と君、2人きりの世界だ。目を瞑って、想像してみて」
 そう言われ、蘭は目を瞑ってみた。
 ―――新一のことを考えてみる。
 推理をする時のキラキラと輝く瞳。自分にだけ向けられる優しい瞳。時折見せる拗ねたような表情や、甘えるような表情・・・。
 蘭はゆっくり目を開けた。自然と笑顔が浮かぶ。
 その表情は、そこにいた誰もが見惚れるような美しさで・・・。
「そう、その表情・・・」
 大木は、満足げに笑うと、シャッターを押し続けた。
「すご・・・蘭って、あんなにきれいだったんだ・・・」
 園子が、溜息混じりに呟いた。
 ―――こりゃあ、この写真を新一君が見たら大変なことになるかも・・・。
 そんなことを思い・・・そして、それが現実のものとなる日は、すぐに訪れたのだった・・・。


 「おい!工藤、スゲエな!」
 徹夜である事件を解決してきた翌日。学校につくなり机に突っ伏して居眠りを始めようとした新一のもとへ、クラスメイトの男子がなにやら雑誌を持って近付いてきた・・・。
「ああ?スゲエって、何がだよ?」
 てんで興味なさそうに応える新一の目の前に差し出された雑誌。その表紙を飾っていたのは―――
「な!!!」
 一気に目が覚めた新一はひったくるように雑誌を取り上げると、その雑誌の表紙をまじまじと見つめた。満開の花の中央で、輝くばかりの笑顔を見せているその女性は・・・まぎれもなく、新一の恋人である毛利蘭、その人だったのだ・・・。
 暫しその表紙を呆然と見ていた新一の手から、スッと伸びてきた手が雑誌を持って行ってしまった。
「!おいっ」
 新一がそちらをギロッと見ると・・・そこにいたのは園子だった。園子は、雑誌を持ってきた男子を睨みつけ、
「もう!何で新一君に見せちゃうのよ!」
 と言った。
「だってよお、とっくに知ってると思ったから・・・。大体、もうみんな知ってんだろ?こんなにでかでかと表紙飾ってんだからさ」
「そりゃそうだけど・・・。もう、大木さんてば表紙にするなんて言ってなかったのにィ」
「おい、園子、これどういう事だよ?」
 怒りを押さえているような新一の低い声に、さすがの園子も冷や汗をかいている。
「お、落ち着いてよ。蘭は嫌がってたんだけどさ。この写真とったカメラマンが蘭のこと見て気に入っちゃって・・・。で、前から行きたかったバンドのライブのチケットくれるって言うから・・・」
「蘭を売ったわけだ」
「う、売ったなんて!人聞きの悪いこと言わないでよ!新一君に言ったらきっと反対すると思って黙ってたけど・・・でも、すごくきれいに写ってるのよ?ほら、見てみて」
 園子が、ぱらぱらと雑誌をめくる。中には、5ページにもわたって蘭の写真が載せられていた。
 色とりどりの花の中にいる蘭。衣装は白いノースリーブのワンピースと、ちょっと大胆に胸元の開いた薄いピンクのキャミソールドレス。カメラに向けられた蘭の表情はどれも自然で・・・微笑んでいるもの、はにかんでいるもの、ちょっと拗ねたような表情や、今にも涙が零れそうな儚げな表情・・・。
「すごーい、蘭ちゃん、きれいねえ・・・」
 一緒に覗き込んでいた何人かの女子が溜息をつく。男子にいたっては、皆見惚れたまま声も出ない様子で・・・。ただ一人、新一だけは不機嫌そのものの顔をしていた。
 確かにきれいだ。それは分かっている。でも・・・こんな表情、今まで俺以外の奴には見せたことなかったのに・・・!
 新一は怒りを押さえることが出来ず、がたんと音を立てて席を立つと、無言で廊下に出て行ってしまったのだ・・・。
「あ~あ・・・。やっぱ新一君に見せたのは失敗だったなあ・・・」
 園子は溜息をつき、部活の朝連に出ている蘭に、心の中で謝ったのだった・・・。


 「あれ?新一?」
 朝練を終えて教室に向かっていた蘭が、前からやってくる新一を見つけて言った。
「どうしたの?」
 首を傾げる蘭。新一は無言で蘭を見つめていたが・・・
「あ、毛利せんぱ~い!これ、見ましたよ!すっごくきれいですね!」
 と、1年生の空手部の女の子が雑誌を蘭に見せ・・・蘭の顔色が、サッと変わった。
「ええ?何でわたしが表紙なの?」
 ビックリして声をあげる蘭。周りにはいつのまにか人が集まっていた。
「先輩、ちょ~可愛いですよね!」
「あの、今度一緒に写真とってもらえますか?」
「あ、ずりい!俺も!」
「毛利さん、モデルになったの?」
「ファンクラブとか、あったら入りたいんだけど」
「先輩、握手してください!」
「俺も!」
「わたしも!」
 あっという間に握手攻めにあってしまった蘭は、突然のことに頭がまわらず・・・気付くと、新一の姿がなくなっていたのだ・・・。


 やっとのことで握手攻めから脱出した蘭は新一の姿を探し教室に戻ったが・・・
「あ、蘭、大丈夫?髪、乱れてるけど・・・」
 園子が、蘭を見つけて言った。
「園子・・・新一は?」
「え、新一君なら・・・朝、あんたの載ってる雑誌を見て、教室出てっちゃったきりだけど・・・。あの、ごめんね、蘭。まさか表紙になるとは思ってなくって・・・」
 すまなそうに言う園子に、蘭ははっとして、笑顔で言った。
「園子のせいじゃないでしょ。大丈夫だよ」
「蘭・・・」
「わたし、新一探してくるね」
 蘭は又教室を出ると、新一の姿を探して学校中を走り回った。その間、何度も雑誌を見たらしい生徒につかまり・・・そのたびに丁寧に握手をしたりするもんだから、なかなか新一を見つけることが出来ず・・・。もうとっくに授業は始まっていたが、蘭は諦めることが出来ず。そして、ふとまだ行っていなかった所に思い当たり―――真っ直ぐに屋上に向かったのだった・・・。
「新一!!」
 屋上で寝そべっていた新一に駆寄り、蘭はホッと息をついた。
「良かった。やっぱりまだいたんだ」
 新一はチラッと蘭を見たが、又すぐに視線をそらせた。
「あの―――ごめんね、雑誌のこと、黙ってて・・・」
「・・・・・」
「断ろうと思ったんだけど・・・園子、あのライブ楽しみにしてたし・・・」
「・・・・・」
「1回だけって約束で、OKしちゃったの。その・・・新一には言いづらくて・・・ホント、ごめんな
さい」
 ペコンと頭を下げる蘭にちらりと視線を投げ
「・・・ずいぶん、良い顔して写ってんだな・・・」
「え?」
「あんな顔・・・他の奴の前でも、平気で見せてんだ、おまえ」
「新一?」
「そのカメラマンと、ずいぶん仲良くなったんじゃねえか?オメエのことえらく気に入ったらしいしよ。あの撮影の後、一緒にそのライブにも行ったんじゃねえの?」
「行ってないわよ!何言ってるのよ?わたしのことが気に入ったって言うのは被写体として、だよ?」
「どうだかな。オメエがあんな顔するくらいだからな。オメエも相当そいつのことが気に入ったんじゃねえの?」
「!!」
 2人の間に、沈黙が流れた。
 どの位たったのか。いつまでたっても何も言わない蘭に新一が痺れを切らし、口を開こうと蘭の顔を見て―――
「ら・・・ん?」
 蘭は、その大きな瞳から、ポロポロと大粒の涙を流していたのだ。
「おい、蘭・・・」
「・・・っく・・・ひど・・いよ、しん・・ち・・・」
 その口から言葉を発した途端、堰を切ったように声をあげて泣き出してしまった。
「お、おい、蘭、泣くなよ」
 焦った新一は慌てて起き上がり、蘭の身体を引き寄せた。細い肩をぎゅっと抱きしめる。
「蘭、なくなって・・・」
 ひたすら泣きつづける蘭を、オロオロしながら抱きしめる新一。
 ―――なんだよ?泣きたいのはこっちの方だってのに・・・
「新一、なんだよ」
 泣きながら言った蘭の言葉に、新一は目が点になる。
「へ?」
「新一が、わたしをああいう顔にさせるんだよ?」
「―――って、何だよそれ?俺は撮影ん時いなかったじゃねェか」
「でも、新一だもん」
「だから、なんで・・・」
「大木さんが言ったの」
「大木って・・・カメラマン?」
「うん・・・。わたし、すごく緊張して・・・どうして良いか分からなかったの。そしたら大木さんが
、彼氏のことを考えてって・・・」
「え・・・」
「彼氏と、デートしに来たんだと思ってって言ったの。それで、わたし考えたの。あんなふうにお花がたくさん咲いている場所に新一と行けたらって・・・」
「蘭・・・」
「きっと、すごく楽しいだろうなって・・・そう考えたら自然に笑うことが出来た。それから、新一とのデートの時のこととか思い出して・・・新一に優しくして貰った事とか、からかわれた事とか・・・事件が起きて呼び出されて行っちゃうこととか・・・」
 蘭は、新一の顔を見上げて、潤んだ瞳で見つめた。
「全部、新一のことを考えてああいう顔になったんだよ?」
「蘭・・・」
「他の人なんか、見えてなかったよ?」
「蘭!!」
 新一は、堪らず蘭を抱きしめ、口付けた。
「んっ―――」
 蘭は一瞬驚いて離れようとしたが、新一の腕は更に強く蘭を抱きしめ・・・やがて蘭もその身を新一に預けた。
 長く、深い口付けの後漸く新一は蘭を離した。
「―――ごめんな、蘭」
「ううん。もとはといえば黙ってたわたしがいけないんだし」
 ―――いや、それを言うならそんな話を持ってきた園子が悪いんだ!と言おうとして・・・。友達想いの蘭が園子を庇うことは分かっていたので、やめた。
「もう、モデルなんかすんなよ?」
「うん。1回だけって話だもん。しないよ」
「なら、良いけど。・・・やっぱ他の奴らには見せたくねえよ、蘭のあんな可愛い顔・・・」
 新一のちょっと拗ねたような表情が嬉しくて、蘭は新一の胸に頬を摺り寄せた。
「新一・・・大好きだよ?」
「蘭・・・」
 新一はもう一度蘭の顔をあげさせ、キスをしようと唇を近づけたが・・・
「あ――――!!こんな所にいた!!毛利先輩!」
 突然大声が屋上に響き渡り・・・屋上の入り口を見ると、カメラを持った1年生らしき男子生徒が数人・・・。
「毛利先輩!!ぜひ写真とらせてください!!」
 とっさに蘭を背に隠す新一。
「おいっ!蘭は芸能人じゃねえぞ!」
「良いじゃないですか、写真くらい!」
「そうですよ!減るもんじゃなし」
「俺の気持ち的に減るんだよ!とにかく勝手に蘭の写真撮ることはこの俺がゆるさねえ!!」
 新一と男子生徒の必死の攻防戦を、オロオロと見守る蘭。その光景を入り口の陰から見ているのは・・・
「あ―あ、やっぱりこうなるか・・・。あやつの独占欲の強さにも困ったもんよね」
 と言ったのはやっぱり園子。
「けど惜しいなあ。蘭を芸能界デビューさせるチャンスだったのにい。ま、あの様子じゃ蘭がその気になるはずもないし・・・しょうがないか。しばらくはこのネタであいつを苛めて楽しむしかないわね」
 と言って不敵な笑みを浮かべつつその場を後にする園子・・・。
 屋上では声を聞きつけてやってきたギャラリーがどんどん数を増し・・・
「蘭は俺のもんだあ―――!!!勝手に見るんじゃねえ―――っ!!!」
 という新一の雄たけびが、学校中に響き渡ったのだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 このお話は6000番をゲットして頂いた凛様のリクエストによるお話です。
いつかは書いてみたいと思っていたお話・・・。でも、意外に難しかったです。
気分的には、もっと掘り下げていろいろ書いてみたかったんですが・・・なんか、ジェラ新も中途半端になってしまって、申し訳ありません。いつか又、こういうネタで蘭ちゃんが芸能界に関わっていくお話を書いてみたいなあと思ってます。

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The goddess of the victory 3 ~新蘭+たくさん~

Category : novels(コナン)
 「はあ」
 トイレから出ると、深は大きくため息をついた。
 ―――さすがに疲れるな。もう1週間もこんなことをしているのだから。
 コーヒーでも入れようかと、キッチンへ足を向ける。時間は夜中の2時。もう蘭も園子も寝てしまっているだろう。
 はじめは、蘭と同じ屋根の下、もう少し接近できる機会があるかと期待していたのだが・・・。現実はそう甘くはなかった。ずっと園子が蘭の側にいて目を光らせている上に、蘭の恋人である新一を含め
4人ものライバルが回りにいるのだから・・・。接近するどころか、一言言葉を交わすだけでも大変なことだった。それでも、間近で見る蘭の笑顔は何よりも深の心を癒す存在であることは間違いなかった。
「あれ?白馬君?どうしたの?」
 突然声をかけられ、深は吃驚して振り返る。
「蘭さん。あなたこそどうしたんです?」
「わたしは、ちょっと眠れなくって。何か飲もうかなって」
「僕もですよ。じゃあ、一緒にどうですか?」
「うん。あ、白馬君、コーヒー?じゃ、わたし入れるから座って待ってて?」
「あ、でも―――」
「いいから、ね?」
 にっこり微笑まれ、深は何も言えなくなってしまった。
 ―――あの笑顔は反則ですよ・・・。
 ソファに座りながら、深は苦笑いした。
 ―――きっと本人は無意識なんだろうな・・・。まったく、厄介だな。
 暫くして、蘭がマグカップを2つ手にしてやってきた。
「お待たせ。はい、どうぞ」
「ありがとう」
「―――白馬君、大丈夫?」
 蘭が、心配そうに小首を傾げて聞く。深はそんな蘭に見惚れつつ、質問の意味がわからずに聞き返す。
「何がです?」
「なんかちょっと、元気ないなって・・・。どこか具合悪いとかじゃない?」
「ああ・・・違いますよ。ずっとパソコンの画面を見ていたせいで、ちょっと目が疲れているだけで。心配ありません」
「ホント?それなら良いけど・・・。無理、しないでね」
「大丈夫ですよ・・・。蘭さんの笑顔が見れるなら、ずっとここにいたいくらいなんですけどね・・・」
「え・・・」
 蘭の頬が、ぽっと赤く染まる。
「けど、それは無理そうだな。もうそろそろ誰かがゲームを終わらせる頃ですから」
「え!ほんとに?だって、まだ1週間しか・・・」
 蘭が驚いて目を見開く。
「みんなムキになってますからね。僕ももう最後のところまで来てますよ。多分、みんな同じくらいだと思いますが・・・。明日中には誰が勝つか決まるんじゃないですか」
「すごーい。やっぱり志保さんが選んだだけあるのね。わたしだったらきっと、その最後のところまで行くのに半年くらいかかっちゃいそう」
 その言葉に、深が可笑しそうに笑う。
「そんなこと、ないと思いますけど」
「・・・白馬君も、そんな風に笑うんだね」
「え?」
「うふふ・・・なんか、同じ年頃の男の子なんだって、初めて思えた感じ。嬉しいなあ」
 ふんわりと笑う蘭に見惚れ、深は、無意識にその頬に手を伸ばしていた。
「?なあに?」
「―――蘭さん、僕は・・・」
「何しとんねん」
 突然背後から聞こえた声に、深はさっと手を引っ込める。
「あ、服部君」
 平次が、じろりと深を睨みつけながら、自分もソファに腰をおろした。
 良いところを邪魔され、少し憮然としながらも深はポーカーフェイスを装いにやりと笑った。
「コーヒーを飲んでいただけですよ」
「あ、服部君も飲む?今入れてくるね」
「おおきにー」
 蘭がキッチンへ行ってしまうと、平次はまた、深へと視線を戻した。
「―――トイレに行ったきり戻ってこない思ったら・・・抜け駆けとはええ度胸やん」
「そんなつもりはありませんよ。コーヒーを飲もうと思ったら、たまたま蘭さんに会って、一緒に飲んでただけです」
「ふん、さよけ。まあええわ。どうせ明日には勝負がつくんやからな」
「自信ありそうですね」
「おまえもやろ?こんなところでコーヒー飲んで、余裕やん」
 平次がにっと笑うと、深は肩を竦め、
「余裕なんて・・・。もうあせっても仕方ないと思ってるだけです」
「そら言えてるわな。もちろん勝ちたいけど・・・この1週間、蘭ちゃんと一緒におれたんやしな。それだけでも充分な気もするわ」
「珍しく素直ですね」
「やかましいわ」
「服部君、お待たせ」
 蘭が平次の分のコーヒーを手に戻ってきた。
「おおきに、蘭ちゃん。珍しいな、蘭ちゃんがこんな時間に起きとんの」
「うん、なんか眠れなくって・・・。服部君たちは、いつもこんな遅くまで起きてるの?」
「そうやなあ。大体2時3時までは余裕で起きとるな。ああいうゲームはやめ時が難しいねん。“キリのいいところで”なんて思おててもなかなかやめられへん」
「ふーん。だから、みんな朝いつも眠そうなのね。服部君は体大丈夫?」
「ぜんぜん余裕や。それに、毎日蘭ちゃんがおいしいメシ食べさしてくれてるんやから。逆に体調ええくらいやで?」
「ホント?良かったあ」
 ほっとしたように笑う蘭の笑顔に2人で見惚れ、それからちらりとお互いを伺う。
「―――白馬、コーヒー飲み終わってるやん。そろそろ戻ったらどうや?」
「―――あなたこそ、部屋で飲んだらどうですか?まだゲームの途中でしょう」
「・・・・・」
「・・・・・」
 静かに火花を散らす2人の空気には、まったく気付かずに蘭は不思議そうな顔で、
「?どうしたの?黙っちゃって・・・。でも、最初は2人が同室なんて、どうなるかと思ったけど・・・結構仲良くやってるみたいで良かった」
「仲良く・・・ね」
「そやなあ。絶対気ィあわへんやろおもおとったけど。意外と楽しかったわ」
 平次が意味ありげににやっと笑って見せると、深も不敵な笑みでそれに答え、
「そうですね・・・」
 と言った。
「―――さて、戻るか。蘭ちゃんもそろそろ寝たほうがええで」
 と言って平次が立ち上がる。
「あ、うん。飲み終わったら寝るね」
「じゃあ、僕も戻ります。おやすみなさい、蘭さん」
「おやすみなさい、白馬君、服部君」
 2人は一緒に部屋に戻ると、それぞれのパソコンへと向かった。
「―――ホンマ、おまえとは気ィあわへんと思ったんやけどな。意外と楽しかったわ。蘭ちゃんに関しちゃあ素直なんやな。その反応見てるだけでおもろかったわ」
「―――余計なお世話ですよ。まあ僕も楽しかったですけどね。普段あまり聞かない関西弁を聞けて」
「・・・・・」
「・・・・・」
 お互い、相手の動向を伺いつつ・・・でもどこか楽しげに、いつしかゲームに没頭していったのだった。

 「蘭」
 蘭が1人でソファでコーヒーを飲んでいると、いつのまにか入り口に新一が立っていた。
「あれ?新一、どうしたの?」
「どうしたのじゃねえだろ?おめえ、何してんだよ」
 不機嫌そうな顔でソファに座り、蘭をじと目で睨む。
「何って・・・ちょっと眠れなかったから、コーヒーを・・・あ、新一も飲む?」
 そう言って立とうとする蘭の腕を掴み、自分の隣に座らせる。
「??新一?」
「・・・さっき、白馬と服部がここにいたろ?」
「うん。見てたの?」
「・・・何、話してた?」
「何って・・・もうすぐゲームが終わりそうだとか、そういうこと、かな。どうして?」
「他には、何もされてねえか?」
「他にはって・・・何もされるわけないじゃない。話をしてただけよ?」
「わかんねえだろ?あいつらだっておめえのことが好きなんだぜ?おめえと1つ屋根の下にいる間に、なんか企んでるかも知れねえじゃねえか」
 新一の真剣な眼差しに、蘭はきょとんとしていたが、やがてくすくすと笑い出し、
「大丈夫だよォ。2人きりでいたわけじゃないし。それに、みんな同じ家にいるのに、変なことしようとする人、いないと思うよ?」
「―――っとに、のんきなやつだな。あんまり人を信用しすぎんなよ。特に男なんて、好きなやつがそばにいたら簡単に理性なんか吹っ飛んじまうんだからな」
「・・・新一も?」
 その問いに、新一は動きを止め、、じっと蘭を見つめた。
「―――あたりめえだろ?俺がこの1週間、どれだけ我慢してたと思ってるんだ?」
 そう言うと新一は蘭の肩を抱き、自分のほうへと引き寄せた。
「ちょっ、ちょっと新一?何す―――」
「おめえが煽ったんだろ?」
「あ、煽ってなんか・・・」
「その表情がいつも煽ってるんだって言ってるだろ?」
 そう言って、その唇を奪おうと顔を近付けたが・・・なぜか寸前で、蘭の手に阻まれてしまった。
「なんだよ?」
 新一がむっとして言う。
「だって・・・こんなとこ、誰かに見られたら、新一失格になっちゃうじゃない」
「んなこと―――」
「せっかく今までがんばってきたのに、だめよ!もうすぐ終わるんでしょう?だったら・・・」
 そこまで言うと、蘭は新一の肩に頭をちょこんと乗せて、急に声を潜めて言った。
「―――わたしだって、新一とハワイ、行きたいんだからね」
「!」
「だから・・・がんばって」
 上目遣いに見上げる蘭が可愛くて、やっぱりキスしたくなる新一だったが、ここは蘭のためにも必死に我慢・・・。ふうっと1つ息を吐き出し、
「わかったよ。―――んじゃ、俺ももう行くわ。このままここにいたらやばいし」
 そう言って、にっと笑うと、とたんに蘭の頬が染まる。
「おめえももう寝ろよ。じゃあな」
「うん、おやすみ」
 そうして新一と蘭もそれぞれの部屋に戻り、再び工藤家に静寂が訪れたのだった・・・。


 その翌日・・・いつものように蘭と園子は朝食の準備をしていた。
 そして、蘭がテーブルに皿を並べだした時―――
「ら~んちゃん、おっはよー!!」
「きゃっ」
 突然蘭に抱きついてきた人物が―――
「か、快斗君!?」
 そう、快斗が満面の笑みで蘭に抱きついたのだ。
「ど、どうしたの?」
「あー!!ちょっと黒羽君何してんのよ!?」
 声を聞いてキッチンから顔を出した園子が叫ぶ。
「蘭に抱きついたりしたら失格だって―――」
「もういいんだよ♪」
「―――え?良いって・・・まさか、黒羽君・・・」
 園子が言いかけると、快斗はにやっと笑い、
「そ、俺、終わっちゃったんだもんね、ゲーム」
「ほ、ほんとに!?」
 蘭も吃驚して快斗の顔を見る。
「ホント♪一緒にハワイ行こうな、蘭ちゃん♪」
「え、あ、あの・・・」
「おはよう」
 突然、部屋の入り口で声がし、3人が吃驚して振り返る。
「志保さん!」
 立っていたのは志保だった。
「あ、志保さん、俺、終わったぜ?」
 快斗が得意げに言うと志保はちょっと笑い、
「おめでとう。でも、残念ね・・・」
 と言ったのだった。
「は?残念って、どういう・・・」
「あのね、あなたたちのゲームのデータは、全てわたしのパソコンに送られてくるのよ」
「―――で?まさか、俺より前にクリアしたやつが・・・?」
「そういうこと。黒羽君は2番目よ」
「じゃ、1番は―――」
「俺だよ。―――快斗、てめえ何蘭に引っ付いてんだよ?離れろっ」
 と言って、顔を出したのは、新一だった。
「し、新一!ホント!?」
 蘭が驚いて言う。
「本当よ。工藤君が、黒羽君よりも10分ほど早かったわ。その次が・・・服部君ね。今、終わったみたいよ」
 志保が、いつのまにか広げていたノートパソコンを見ながら言うのとほぼ同時に、けたたましい音を立てて階段を降りてくる足音が聞こえ―――
「蘭ちゃん!!終わったで―――と・・・なんや、みんな集まって・・・って、もしかして・・・」
「おめえが3番目だとよ」
 と新一に言われ、平次はがっくりと肩を落とした。
「そろそろ白馬君も終わるわ。新出先生は・・・もう少しかかりそうだけど」
 その言葉通り、それから10分ほどたった頃、深が、続いて智明が降りてきた。
「皆さんお揃いで。僕は4番目かな?」
「そうよ」
「で、僕が最後ですね。もっとも僕はまだ終わってないんですけど」
 と言って、智明が笑った。
「1番は工藤君か、黒羽君ですね」
 と深が志保に向かって言うと、志保は頷き、
「ええ、工藤君が1番。黒羽君が2番目よ。みんなご苦労様。おかげでこちらも助かったわ」
 と、にっこり笑った。
「さすが、と言ったところね。少なくとも10日はかかると思っていたんだけど・・・。蘭さんが絡むだけでこんなに違うとは思わなかったわ」
 志保の台詞に、蘭が赤くなる。
「で、まあ結果は知ってのとおり、工藤君の勝ちよ。おめでとう、工藤君」
「ああ。で?これからどうするんだ?」
「もちろん、約束は果たすわよ。賞金のほうはゲーム会社から直接工藤君の口座へ振り込んでもらうことになるわ。―――で、ハワイ行きの航空券はこれよ」
 と言って渡された封筒を受け取り、新一は中を見たが、とたんに顔を顰めた。
「―――おい、ちょっと待てよ。これ、何枚入ってんだ?」
「あら、数が数えられないの?全部で7枚入ってるはずだけど」
 との志保の言葉に、周りの面々もえっという顔をする。
「何で7枚も・・・」
「もちろん、参加してくれた人たちの分と、協力してくれた園子さんの分よ」
「どういうことだよ!?蘭とのデート権は俺が―――」
「そう、デート権はね。―――でもわたし、2人きりでハワイに行けるとは一言も言ってないわよ?」
 にやっと笑って言う志保に、新一は呆気に取られた。
 ―――やられた―――!!
「デートをいつするかは自由よ。ハワイでしたければすれば良いわ。向こうでは全員が自由行動。行く先で偶然会うこともあるでしょうけど」
「―――で、ホテルの部屋は?」
「ツインの部屋を全部で4つとってあるわ。どういう組み合わせで泊まるかは自由だけど。園子さんが1人じゃちょっと気の毒よね」
 新一は、は――っと深いため息をついた。
「―――可笑しいとは思ったんだよな・・・。ったく、騙されたぜ・・・」
「あら、わたしは知ってたわよ?」
 と言ったのは、さっきから黙って聞いていた園子だった。
 その言葉に、蘭も驚く。
「ホント!?園子!」
「うん。だって、この話を頼まれたとき、志保さんに“蘭さんと一緒に旅行できるわよ”って言われたんだもの」
「・・・まんまとしてやられたってわけですか。まあ、ゲームに負けた僕たちとしては願ってもない話ですけどね」
 と、深が楽しそうにくすくすと笑って言う。
「せやな。ちょうど夏休みやし、泊まりの準備も万端や。いつでもいけるで?」
 とニヤニヤしている平次。
「楽しい旅行になりそうだよなあ。新一、向こうでは蘭ちゃんとのデート楽しめよ?志保さんの言う通り、行く先で偶然会うこともあると思うけど。そん時はよろしくな」
「おめえらなあ・・・」
「ね、蘭、向こう行ったらいっぱい買い物しようね♪」
「うん、そうだね」
 新一の怒りのオーラにまったく気付かずに、蘭は園子と楽しそうに話している。そんな蘭を見て、新一は再び大きなため息をついた。
「―――決めた」
 下を向き、黙り込んでしまったと思った新一が、急に低い声で言った。その場にいた人間が、その迫力にぴたりと話を止める。
「決めたって、何を?」
 ただ一人その雰囲気に気付かない蘭が、きょとんとして新一を見た。
「ハワイに行ったら、ゼッテーおめえをはなさねえ。そして・・・」
「そして?」
「ゼッテー2人きりになってやる!!」
 そう言って、握りこぶしを固めた新一は、いつもの犯人を追い詰めるときとは比べ物にならないような迫力で・・・半ばやけくそ気味に叫んだのだった。

「蘭とのデート権を使えんのは、俺だけなんだ――――!!」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 えへへ・・・すいません。こんな終わり方で・・・。もう、自分でも何がなんだか・・・。
キャライメージ、だいぶ違ってるかも、です。あーでも、平次はもっと書いてみたいキャラですね。色黒なところを除けば、すごくわたし好みなんですよ、彼。って、この際私の好みは関係ないか。

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The goddess of the victory 2 ~新蘭+たくさん~

Category : novels(コナン)
「何でこんな話引き受けたりしたんだよ?」
 蘭をリビングに通し、開口1番、新一は不機嫌そうに言った。
「だってえ・・・志保さんが、新一が負けると思ってるのか?っていうからァ・・・」
 蘭はちょっとふくれっつらでそう反論する。その表情がなんとも可愛らしく、全員が見惚れていたが・・・その視線にイライラとしながら新一は志保を睨んだ。
「オメエなあ・・・。こんな危険な状況でこいつをここに置くのかよ?」
「危険?どうして?」
 蘭がキョトンとして聞く。それを見て志保はクスクスと笑い、
「安心して。もちろんこのゲームが終わるまで蘭さんに手を出すことは禁止よ。監視役を園子さんにお願いしたわ。彼女も夕方には来るはずよ」
「園子ォ?」
 新一があからさまに嫌そうな顔をする。
「なんかスゲエうるさそうだな」
「賑やかで良いじゃない?今日から夏休みだし。家に帰らなくても良いと言う人はここに泊り込んだらどうかしら?」
 との志保の言葉に真っ先に返事をしたのは快斗。
「俺はOKだぜ。新一のことを気にしないで蘭ちゃんに会えるんだかんな」
「もちろん俺もや。大阪に帰る時間惜しいしな。メールやのうて直接蘭ちゃんと話せるんやし」
 とにこにこしてるのは平次。
「僕も大丈夫ですよ。泊れるような用意をとのことでしたからね。ちゃんと用意できてます」
 と深が言えば智明もニコニコと頷き、
「もちろん僕も。どうせ1人暮らしですからね。蘭さんの手料理が食べれるならぜひ、泊らせてもらいますよ」
 と、言うわけで、あっさり全員が泊っていくことになり、新一はまた、大きく溜息をついたのだった・・・。のんきににこにこしているのは蘭で、
「なんか修学旅行みたいだね。楽しくなりそう」
 などと言って、更に新一の気を重くさせていた。


 その日の夕方、新一の家に園子がやってきた。
「いらっしゃい園子。今、夕食の用意してるところなの。2階の奥の客間がわたしと園子の部屋だから」
「じゃ、荷物置いて着たら手伝うわね。待ってて」
「あ、ゆっくりしてて良いよ?わたし1人でも平気だから」
 その言葉を聞き、園子はおもむろに蘭に抱きついた。
「蘭ってば可愛い。いいのよ、手伝いたいんだから」
「何やってんだよ、オメエは」
 仏頂面で出てきたのは新一だった。
「あら新一君。アハハ、思った通り機嫌悪そうねえ。安心して、あなたのライバルたちには蘭に手だしさせないから。ま、新一君も例外じゃないけどね」
 と言って、園子は楽しそうに笑った。
「志保にも釘さされたよ。ゲームが終わるまでは恋人だってこと忘れろってな」
「そういうことね。うふふ、楽しそうよねえ。誰が勝つのかしら」
「バーロー、んなもん俺が勝つに決まってんじゃねえか」
「はあ、相変わらずの自信ね。でも蘭、他の人が勝ったらその人とハワイに行くのよ?分かってるの?」
「うん。大丈夫。新一きっと勝つから。ね?」
 と言って、ニッコリ笑って自分を見る蘭が愛しくて・・・新一は思わず蘭を抱き寄せようとしたが・・・
「はい、ストップ」
 と言って、2人の間に入ったのはもちろん園子。
「全く油断もすきもないわね。こりゃ、見張り甲斐がありそうだわ。ところで他の人たちは?」
「くじ引きで割り当てられた部屋で、ゲームを始めてるわ」
「へェ。誰と誰が同室?」
「えっとね、服部君は白馬君と一緒。快斗君が新出先生と一緒よ」
「で、新一君は1人?」
「うん。でも、同室って言っても1部屋がかなり広いから、中で仕切ってあって、1人1部屋みたいなものだけど」
「なるほどね。んじゃ、わたし荷物置いて来るわね」
 園子が行ってしまうと新一は蘭の髪にそっと触れた。
「蘭、大丈夫か?後2週間・・・7人分のめし作んなきゃなんねーんだぜ?」
「大丈夫よ。園子が手伝ってくれるし」
「あいつはあてになんねーだろ?やったことねえんだから」
「そんなことないよ。それに・・・」
「それに?」
「2週間・・・新一の側にずっといられるもん」
 ほんのり頬を染めて言う蘭。新一は、頭に一気に血が上って行くのを感じ・・・
 ―――今なら、誰も見てねえし・・・
 そっと、蘭の頬に手を添え、その唇に自分のそれを近づけた―――。
「はい、そこまで!」
 階段を下りてきながらこちらをジロリと睨みつけてるのは、快斗だった・・・。
「あにしてんだよ?蘭ちゃんに手ェ出すのは禁止だろ?恋人同士も今は関係ねえはずだぜ?」
「―――っるせーな、わーってるよ・・・」
 苦虫を噛み潰したような顔で、蘭から離れる新一。
「ほんとに油断もすきもねーな。新一が1人部屋なんて、絶対危険だと思うんだけどなあ」
「せやなあ。工藤やったらなんとか園子の姉ちゃんまいて、蘭ちゃんを連れ込みそうやしなあ」
 と、いつのまにか階段の上に現れた平次が言う。
「おめえらなあ・・・」
「大丈夫だよ、2人とも。わたし、新一の部屋に1人で行ったりしないから」
 と、蘭がにっこり笑って言う。その言葉に3人とも驚いたような顔になる。
「え、ほんとに?蘭ちゃん」
「ほんまか?」
「蘭?」
「うん。だって、志保さんにも園子にも釘指されてるし・・・。わたしだって、新一に失格になってほしくないから」
 その言葉に3人は、複雑な表情だ。
 ―――何だかんだ言っても、新一のためかよ。
 ―――何やおもろないなあ・・・。
 ―――俺のためってのは嬉しいけど・・・。
「お待たせ、蘭。―――あれ、どうしたの?いつのまにか服部くんと黒羽くん・・・だっけ?まで出てきて」
 エプロン姿で戻ってきた園子が、その場にいた人間の顔を見回し首を傾げる。
「あ、園子。なんでもないの。じゃ、行こうか」
 蘭と園子がキッチンへ入っていくのを見送り、3人は同時にため息をついた。
「何や、長い2週間になりそうやなあ」
「だな。けど俺はゼッテー負けねえぜ?こう見えてもゲームは得意なんだ。2週間もここにいるつもり、ねえからな。1週間以内に勝負つけてやるぜ」
 快斗が、にやっと笑い2人に挑戦的な視線を投げつける。
「バーロ、おめえらなんかに負けるかよ。蘭とデート・・・それもハワイ旅行なんてゼッテーさせねえからなっ」
 新一がギロリと2人を睨みつけ、その場の温度が一気に下がる。
「ま、なんにせよ、はようゲーム終わらせるのが先やな。俺は部屋に戻るわ」
 といって、平次が部屋に戻り、快斗も続いて戻る。
 それを見て、新一も自分の部屋に戻ったのだった。


 食事の時間。全員が集まって7人での賑やかな食卓・・・のはずなのだが、それぞれがお互いの顔色を伺い、腹の内を探りあいながらの会話が続き・・・どこかぴりぴりとした雰囲気のうちに食事の時間を終え、男どもが皆自分たちの部屋へ引き上げたときには園子は一気に疲れを感じ、大きくため息をついたのだった。
「こんなのが2週間も続くわけ?ったく、冗談じゃないわね。せっかくの蘭とわたしの食事の味がちゃんとわからないじゃないの」
 と園子が言うと、蘭はきょとんとして、
「そう?ご飯、おいしくなかった?園子」
「―――って、蘭、もしかしてあんた、食事の間中この場に漂ってた空気に気がつかなかったの?」
「空気って・・・?なんかあったの?」
 首を傾げて目をぱちくりさせる蘭。園子は乾いた笑いを浮かべ、
「はは・・・こりゃ、この役目ができるのはあんたしかいないわ」
 と言ったのだった・・・。


 その後、風呂に入る順番を決め、風呂に入り終わったころ、蘭と園子はコーヒーを入れ、それぞれの部屋に差し入れをしに行った。
 まずは平次と深のいる部屋へ。
「お♪蘭ちゃんやないか、いらっしゃい」
 先に平次が気づいて嬉しそうに声をあげた。
「蘭さん?やあ、どうしたんですか?」
 続いて深も嬉しそうににっこりと笑う。
「―――いつの間に、わたしってば透明人間になったのかしら?2人にはわたしが見えてないみたいなんだけど」
 と、じと目で2人を睨みつけながら園子が言うと
「何や、園子の姉ちゃんもおったんか?すまんすまん、気ィつかへんかったわ」
 としれっとした顔で平次が言う。深はさすがに悪いと思ったのか、
「園子さん、すいません。蘭さんの影になって見えなかったものですから・・・」
「ハイハイ、そうでしょうよ。どうせわたしは蘭の影のような存在よね」
「い、いえ、そういうわけでは・・・」
 深があせって言い訳すると、園子はにやりと笑った。
「へ~え、白馬君でもそんな風にあせることあるのね。いいもの見たわ」
「もう、園子ってば!ご、ごめんね、白馬君。あの、コーヒー入れてきたから2人で飲んで?」
「おお、さっすが蘭ちゃんや、ありがとうな。んじゃ、一息入れるとすっか」
「ありがとう、蘭さん―――、園子さん、ちょうど一息入れようとしていたところで・・・」
「ふふん、ついでみたいに言ったわね」
「そ、園子!」
「ま、いいか。な~んか思ったより白馬君もからかい甲斐有りそうだし♪明日からが楽しみ~」
 さあ次は黒羽君と新出先生ね♪と楽しそうに鼻歌を歌いながら出て行く園子の後ろを、まったく~とため息をつきながら蘭が出て行く。
「なんかええなあ、いつも離れてる蘭ちゃんがこうしてひとつ屋根の下にいるいうだけでもわくわくするわ」
「能天気な人ですね。僕はそこまで楽観的になれないですよ」
「よう言うわ。蘭ちゃん見て鼻の下伸ばしとったくせに」
「なな、何を言うんですか!僕は別に・・・ただ、蘭さんと直接合うのは久しぶりなので、ちょっと頬が緩んだだけですよ」
「―――さよけ」
 平次はあきれたように横目で深の顔を見た。
 ―――案外わかりやすいやっちゃな。工藤のやつよりよっぽど扱いやすいかもしれん。
 

 「蘭ちゃん!ナニナニ差し入れ?」
 部屋に入ったとたん、いすから飛び降りて駆け寄ってきたのは快斗。そのまま蘭に抱きつきそうな勢いだったが、後ろにいた園子に気付きはっと足を止める。
「あ・・・鈴木さんもいたのか」
「悪かったわね。邪魔者がいて。―――けど、新一君と同様、あなたも油断したらすぐ蘭に手ェ出しそうね。要注意だわ」
「そ、そんなことないって。俺がそんなことするわけねえじゃん。なあ蘭ちゃん?」
「あ、うん。そうだね」
 つられて蘭が頷くと、
「あ~もう、蘭ってば乗せられやすいんだから。黒羽君って新一君に似てるし。気をつけなきゃだめよ?蘭」
 という園子の言葉に、蘭はちょっと拗ねたような顔をする。
「わかってるってば・・・」
 その上目使いの表情がかわいくて、思わず見惚れる快斗と、呆れたように快斗を見る園子。
 その光景を見て、さっきから様子を伺っていた智明がくすくすと笑いだした。
「なんですか?新出先生」
 と園子が聞くと、智明は相変わらず笑顔で
「いや、楽しい2週間になりそうだなあと思ってね」
 と言った。
「のんきですねえ。先生も参加してるんでしょう?このゲームに」
「まあね。でも、僕の場合は“参加することに意義がある”と思ってますから」
 と穏やかに笑う智明のところへ、蘭がコーヒーを持っていく。
「先生、どうぞ」
「やあ、ありがとう、蘭さん」
 そう言って、蘭を見てやさしく微笑みかける・・・。
 それを見て、快斗が顔を顰める。
 ―――この先生、案外油断できねえな・・・。あの新一が警戒していただけはあるな。ぜんぜん興味ないような振りして・・・。蘭ちゃんを見るあの目はかなりマジだぜ。
「じゃ、二人ともがんばって。おやすみなさい」
 蘭がにっこり笑って出て行くのを見送って・・・。
「―――さて、もうひとがんばりするか。蘭ちゃんの入れてくれたコーヒーでも飲んで」
「そうですね。―――しかし、きみは本当に工藤君に似てるね。はじめ見たときは間違えそうだったよ」
 2人が、仕切り越しに話をする。
「そうすか?けど、中身は違うでしょ?」
「そうだね。でも・・・案外似てる部分があるんじゃないかい?」
「蘭ちゃんを好きなとことか?」
 快斗が笑って言うと、
「それもあるけど・・・なんていったらいいのかな。相反しているようで、似ていると言うか・・・も
っと根本的な部分で、とても似ているような気がするよ」
 と穏やかに言う智明。
 それを聞いて、快斗の笑いがぴたりと止まる。仕切り越しなので、顔は見えないが・・・
 ―――やっぱこの人、油断できねえ・・・。


 「お、蘭。コーヒーか?」
 蘭と園子が新一の部屋へ行くと、新一が嬉しそうに蘭を見た。
「うん。調子どう?」
「ああ、さすがに難しいよ。けど、今のところ順調だし・・・ゼッテー勝ってやるよ」
 と言って、にやっと笑った。
「あの志保さんと博士が考えたゲームだもんねー。一般の人がやって、果たしてクリアできるの?」
 と、ひょいとゲーム画面を覗いて園子が言う。
「さーな。志保のやつもひねくれてっからな。そう簡単にはクリアできねえよ」
「へェ。わたしじゃ絶対無理だな」
「―――ところで、このコーヒー。あいつらのとこにも持ってったのか?」
 と、新一がじと目で聞く。
「うん。みんな結構仲良くやってるみたいね」
 と、蘭がニコニコして言うと、
「あいつらに、なんかされなかっただろうな?」
 と新一。蘭がきょとんとしている横で、園子が呆れたように言った。
「わたしが一緒にいるのに、なんかされるわけないでしょう?まったく・・・。でも、まあ注意しとかないと危ない人たちばっかよね。筆頭は黒羽君ね。蘭、のせられやすいからあの手のお調子者には注意しないと」
「えー?でも、快斗くん優しくって良い人だよ?新一がいないときとか、遊びに来てくれるから寂しい思いしなくてすんでるし」
 その言葉に新一が顔色を変える。
「おめえなあ、俺以外の男といてそんなに楽しいのかよ?」
「だって・・・ほんとは新一とずっと一緒にいたいけど、無理でしょう?わたし、探偵してる新一も好きだし。でもやっぱりちょっと寂しいの・・・。そんな時快斗くんが来て、いろんな話してくれると時間があっという間に過ぎてくれるから、寂しいって思う時間が短くてすむんだもん」
「あらら、こりゃあがんばんないと、ほんとに蘭を奪われかねないわよ?新一君」
 と、園子が楽しそうに言う。
「っせーな。んなことさせっかよ。あいつらに蘭はわたさね―よ」
「ま、せいぜいがんばってね。蘭、行こう」
「あ、うん。新一がんばってね。お休み」
「おやすみ」
 2人が出て行ってしまうと、新一はコーヒーを一口飲み、またゲームに向かった。
 ―――快斗はアクションが派手だから目立つけどな・・・。他の奴等だって油断は出来ねーんだぜ?園子。大体俺の目を盗んで蘭に近づこうなんて、考えること自体とんでもね―っての。見てろよ。必ず勝って、二度とあいつ等が蘭に近づけねえようにしてやっからな。
 新一は不敵な笑みを浮かべつつ、ゲームを進めていくのだった・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 うわ~~、疲れた。人がたくさん出てくる話って疲れますね~。
とりあえず、蘭ちゃん出番多いようで台詞少ないし。平次や深君には、ちょっとおいしい思いもしてもらいたいと思ってるんですが。

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The goddess of the victory 1 ~新蘭+たくさん~

Category : novels(コナン)
 「なんやねん、このメンバー構成は」
 西の名探偵、服部平次がリビングに集まった面々を見て目を丸くした。
「知るかよ。志保が集めたんだよ」
 と、仏頂面で答えたのは東の名探偵工藤新一。
 ここ、新一の自宅のリビングに集まっている人間は全部で5人。その顔ぶれは、滅多に同じ空間では会えないような顔ぶれで・・・。
 まずは東西の高校生名探偵の2人。そして怪盗キッドという裏の顔を持つ高校生黒羽快斗。そして快斗をキッドだと信じて疑わない同じく高校生探偵の白馬深。最後に、この中では唯一成人している医師の新出智明。
 阿笠博士の養女である志保がこのメンバーに声をかけたのは1週間前。「大事な話があるから」と言ってここ工藤家のリビングに5人を集めたのだが、一体何のために集めたのか、誰も聞いている人間はいなかったのだ。
「で?肝心のあのねーちゃんはまだ来てへんのかいな」
「ああ・・・。全く何考えてんだか・・・」
 と言いながら、新一はどうにもいやな予感がして仕様がなかった。志保にその話を聞いたとき、新一は不機嫌な顔を隠そうともせず
「何で俺んちで集まるんだよ?」
 と聞いたのだ。すると志保はクスッと笑い、
「あなたの家、広いから。それに・・・話を聞いたらそこで良かったと思うはずよ」
「はあ?」
「あなたにとって、とても重要な話だから・・・もしその日、また事件で呼び出されたりしていなくなったりしたら、きっと後悔することになるわよ」
 とまで言われて、承諾しないわけにも行かず・・・。


 メンバー全員が集まり、約束の正午になったとき・・・志保と博士が、連れ立って現れた。なにやら、博士の手には大きな紙袋が・・・
「あら、ちゃんと集まったのね」
 と言って、志保がいつものようにシニカルな笑みを浮かべる。
「一体何の用だよ?」
 新一がイライラと聞く。
「ふふ、そんなに焦らないで。―――まずはこれを見て欲しいの」
 と言って、志保は阿笠博士の持っている袋から、箱を一つ取り出した。その箱から出てきたのは1枚のCDで・・・。
「なんやそれ、なんかのゲームか?」
 と、平次が覗き込んで言うと、志保は頷き、
「ご名答。これは、わたしと博士が共同開発したネット通信専用のロールプレイングゲームよ。博士があるゲーム会社に依頼を受けたものなの」
「で?まさかそれを俺たちにやらせるために呼んだとか?」
 と言ったのは快斗。
「あら、よく分かったわね。その通りよ」
 と、志保がしれっと応えたので他の面々も呆気にとられた。
「大事な話って、そのゲームのことだったんですか?」
 さすがの白馬も目を丸くする。志保は楽しそうにクスクス笑い、
「心配しないで。ちゃんと賞金も用意してるわ。このゲームを1番最初にクリアできた人には賞金100万円がゲーム会社から進呈されることになってるわ。2番目の人には50万円」
 賞金の話を聞いても5人の顔色は変わらず、訝しげな視線が志保に集中する。
「さっさといえよ。わざわざ俺たちを集めた理由、それだけじゃねえだろ?」
 新一が促すと、志保は肩を竦め、
「せっかちな人ね。―――このゲームはかなり難しいはずなのよ。一般の人が短期間でクリアするのは難しいわ。でも半年後には製品化することが決まってるから、今月中には一度クリアしてみなければいけないのよ。そのためにあなたたちを集めたの。でも只賞金出すからやってくれと言ってもやる気にはならないでしょう?揃いも揃って一癖あるような人たちですからね」
 嫌味な志保の言葉に、ほぼ全員が顔を顰める。博士は横で冷や汗をかいていた。
「そこで、あなたたちが絶対にやる気を出す方法を考えたのよ」
 と言って、ニヤッと笑う志保。
 このとき、いやな予感がしたのは新一だけではないはずだ・・・。
「1番最初にこのゲームをクリアした人には副賞があるわ。とっておきのね」
「なんなんだよ?」
 新一がイライラと聞く。
「あなたにとっても最高の副賞だと思うわよ。ね?博士」
 いきなり振られた博士は情けない顔をして・・・それでも全員の“早く言えよ”と言う鋭い視線を受け、仕方なく口を開く。
「ああ・・・その副賞はな・・・毛利蘭さんとのデート権じゃよ」
 その言葉に一同固まり・・・もちろん最初に言葉を発したのは新一で・・・
「な―――なんだよ!?それ!!」
「あら、最高でしょ?もちろんただのデートじゃないわ。行き先はハワイ。航空券もホテルの予約ももう取ってあるわ」
「って、それ旅行じゃん」
 と、快斗が言う。
「そうね」
「ちょ、ちょっと待てよ!何でそれが副賞なんだよ?俺以外の人間がそれもらったって意味ねえだろ?服部には和葉ちゃんがいるんだし、快斗には青子ちゃんが。白馬だって別に蘭のことなんか―――」
 焦って言う新一に、志保は意味ありげな視線を投げる。
「それはどうかしら?―――服部君、あなた最近蘭さんとメール交換してるらしいわね」
 と言うと、平次が目に見えてうろたえる。新一は唖然とし、
「―――なんだよ?それ?聞いてねえぞ」
「あ、いや、それはな工藤、その・・・」
「和葉さんも応援してくれてるらしいじゃない?」
「―――本当か?服部」
「いや、その・・・最近あの姉ちゃん、ごっついきれーになったしな・・・。なんや気になってしゃあないねん・・・」
 と、平時が照れくさそうに顔を赤く(赤黒く?)して言う。
「か、和葉ちゃんは?」
「あいつはただの幼馴染や。あいつも・・・蘭ちゃんならしゃあないって言うてくれとるし・・・」
 突然の平次の告白に、新一は言葉もなかった。
「それから黒羽君。あなた、ここの所3日と空けず蘭さんに会いに行ってるそうじゃない?」
「な・・・快斗、テメエ!?」
 新一が快斗をジロリと睨む。快斗は冷や汗をかきつつ、
「え?えーと・・・」
 と何とか言葉を紡ぎ出そうとするが、うまくいかず、代りに志保が続けた。
「今月に入ってからは、2日、3日、6日、8日・・・それから昨日もあってるわね」
「2日、3日・・・?それって・・・俺が事件で呼び出されてる日じゃねえか」
「そうよ。どこで聞いてくるんだか、あなたが蘭さんの側にいないときを狙って会いに行ってるのね」
「快斗!」
 快斗はあきらめたように肩を竦め、
「しゃあねえだろ?好きになっちまったもんはさ」
 と言った。
「オメエ、青子ちゃんは?」
「あいつはただの幼馴染。青子だって納得してるぜ。っつーか、あいつも蘭ちゃんのファンだから。今日新一の家に行くって言ったらスゲエ羨ましがってたもん。新一の家に行くってことは蘭ちゃんも来るだろうからって。“青子も蘭ちゃんに会いたい~”ってな」
 青子の声を真似て言う快斗に、新一は半ば呆れてしまった。
「あのなあ・・・」
「それから白馬君」
「僕は別に・・・」
 と否定しようとする深に、
「あの黄昏の館の事件以来、蘭さんのことをいろいろ調べてるらしいじゃない?」
 と、志保がニヤッと笑って言う。
「!それは・・・あのころ工藤新一が行方不明だって話だったから、彼女のことを調べれば何かわかるかと―――」
「今はもう必要ないんじゃない?」
「そ、それは・・・」
「それに、蘭さんはあなたから何度か手紙をもらってるって話だけど?」
 そこまで言われて深はグッと詰まってしまった。
 いつもはあまり感情を表に出さない深の態度に、快斗も驚く。
「おい、まじかよ白馬?」
「―――美しい女性に興味を持つのは男として当然のことでしょう?」
 肩を竦め、開き直って言う深に、新一も呆然とする。
「―――で、最後は新出先生ね」
 全員の視線が智明に集中する。
「もうバスケ部の臨時コーチの必要はなくなっているはずなのに、毎日のように放課後になると帝丹高校に現れてるそうね」
「それは、バスケ部のことが心配だからで・・・」
「ついでに空手部も覗いてるわけですか」
 と言ったのは新一だった。
「あら、知ってたの工藤君」
「まあな」
「それは・・・」
「あの“シャッフルロマンス”の代役を頼まれた時もずいぶん熱心に練習なさってたとか」
「あまり時間がなかったですし・・・」
「それにしては立ち稽古の時もあのラブシーンで熱のこもった演技をなさってたと聞きましたけど」
 志保にさらっと言われ、言葉を無くす智明。それを聞いて顔色を変えたのは新一だけではなかった。
「というわけで・・・もちろん強制はしないけど。このゲームに参加したくなければ帰って頂いて結構よ」
 とニッコリ笑う志保。全員相手の出方を伺うように視線を彷徨わせる。
「待てよ。このこと、蘭は知ってんのかよ?」
「ええ、もちろん。蘭さんの承諾済みよ」
「本当か?博士」
「あ、ああ。はじめはいやがっとったんだがなあ。志保君の“工藤君が勝つと思ってるのなら良いでしょう?”と言う一言で・・・」
 新一は深い溜息をついた。
「俺は参加するで。ゲームも面白そうやし、もう工藤にばれてもうたら何も遠慮する必要あらへんし」
 と平次が言うと、快斗も頷き
「そうだな。俺も参加する。蘭ちゃんとハワイ旅行なんてまたとない機会だし」
 と言ってニヤッと笑う。
「では僕も。堂々と蘭さんと旅行できるんですからね」
 と、白馬も頷いた。
「3人決定ね。後は新出先生と工藤君だけど?」
「俺がやらねえわけねえだろ?」
 とヤケクソ気味に言う新一。
「・・・じゃあ僕も参加しますよ。名探偵達相手じゃ勝ち目は薄そうですが・・・。1人だけ棄権するんでは格好つかないですからね」
「これで全員参加ね。ところで、ゲームをする場所だけど・・・。工藤君、この家を提供していただけない?」
 と言う志保の言葉に新一は目を丸くする。
「はあ?何でだよ?」
「さっきも言ったけれど、このゲームはかなり難しいの。この家の書斎には山ほど本があるでしょう。きっと役に立つと思うわ。それに。これから自分の家に帰ってからやるとすると不公平になるでしょう?特に服部君は」
「せやなあ。これから真っ直ぐ帰ってもゆうに3時間はかかるな」
「もちろんどうしても自宅でやりたいと言う人に、無理に留まれとは言わないけれど・・・。パソコンのことならゲーム会社から人数分レンタルしてあるから心配要らないわ。それと・・・」
「それと?」
 新一がまだ何かあるのかと言わんばかりに聞く。
「これだけの人数が一緒に寝泊りすると、食事や洗濯なんかに困るでしょう?男の人ばかりで」
「まあ、そうだけど・・・なんだよ、オメエがやってくれるとか?」
 ちょっと嫌そうに言う新一に、いたずらっぽい視線を向けて志保は笑った。
「わたしよりももっと適任がいるでしょう?ここにいる全員が喜ぶ人が・・・」
「おい、まさか・・・」
「そう、そのまさか、よ。もうすぐ来るころだけど・・・」
 と言って、玄関のほうへ視線を移す。と同時に、チャイムの音が響いてきた。
「来たようね」
 新一が慌てて玄関に向かい、ドアを開ける―――。
「あ、新一。もう話聞いた?」
 そこに立っていたのは、予想通りの人物・・・そう、毛利蘭その人だったのだ・・・。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この作品は、キリ番5555をゲットされたモンブラン様のリクエストによるものです。
「蘭ちゃんとのデート権を賭けたお話」とのことで、「快斗以外の人を出して」というご要望がありましたので、ちょっと考えまして・・・このようなメンバーになりました。
 深君をかいたのは初めてで・・・ちょっとキャラが掴みきれてません。イメージと違っていたらごめんなさい。

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The kiss of the secret 3 ~快蘭~

Category : novels(コナン)
 「はあ~っ」
 快斗は、教室で大きな溜息をついた。同じクラスの、中学から一緒だった男子が、気付いて快斗の側に来る。
「どうしたんだよ?溜息なんかついて。今日ずっと変じゃなかったか?おまえ」
「別に、何でもねえよ」
 快斗はそっけなく答え、俯いた。
 ―――やべえよなあ・・・。何で俺、あんな事しちまったんだ?そりゃあ、他の奴に渡すつもりなんてねえし、いずれ好きだってことは言おうと思ってたけどよ。でもいきなりあれじゃあ・・・
 蘭の奴、何も言わずに飛び出してっちまったし、今朝も先に家を出てっちまったし・・・。どう思ったんだろう?俺のこと・・・。
 そのとき、勢いよく教室に入ってきた女の子が、友達のところへ駆け寄ると、
「ねえ、聞いて聞いて!すごいもの見ちゃった!」
 と興奮気味に話し始めた。
 快斗も、別に聞く気はなかったものの、その女の子の大きな声は自然に耳に入ってきていた。
「あのね、あの生徒会長の工藤先輩が、女の子に告白してたの!!」
 ―――告白、だって?あいつが?まさか・・・
 快斗の胸が、嫌な予感に溢れた。
「えー!!マジ!?で、誰よ、そのうらやましい女は!」
「それが、2年生みたいなんだけど、超可愛くってきれいな人なの!あの人だったら仕様がないなって感じなんだけどォ。えっとね、名前は・・・たしか毛利とかって言ってたような・・・」
 ガタンッ
 突然大きな音を立てて快斗が席を立ち、教室にいた生徒たちが皆、びくっとする。
「お、おい、快斗・・・」
 快斗は、声をかけられたのにも気付かない様子で・・・怒りに体を震わせ、何も言わずに教室を出て行ってしまった・・・。
「な、何?」
 話をしていた女の子がびっくりしたように言う。快斗と一緒にいた男子はちょっと溜息をつくと、
「その、毛利って人・・・たぶん、快斗の姉ちゃんだよ」
「ええ!?ほんとに?」
「ああ。快斗のシスコンは昔からだけど・・・それにしてもずいぶん怒ってたな」


 ―――あのヤロォ・・・蘭に、告白してただって?ふざけんなよ!蘭はわたさねえって、言っただろうが!!・・・蘭は、なんて答えたんだ?まさか・・・あいつと付き合うのか・・・?
 快斗はまっすぐに生徒会室に向かうと、そのドアをガラッと勢いよく開けた。
 中にいたのは、新一1人。窓際に立っていた新一は、ドアが開けられると、そちらを見た。
「よお、何か用か?」
「・・・蘭に、告白したってのは本当か」
 快斗が、怒りを押し殺したような低い声で聞くと、新一は目を見開いた。
「そんなこと、誰に聞いたんだ?」
「誰だっていいだろう?どうなんだよ!?」
「・・・本当だよ」
「!!」
 快斗はかーっとなり、新一の側へ駆け寄ると、勢いでその胸倉を掴んだ。
「てめえ!!」
「・・・離せよ。そんなことする権利、おめえにあんのか」
「!!」
「毛利が誰と付き合うか。それは毛利が決めることだろう?」
「んな事は分かってるよ!分かってっけど・・・」
「―――そんなに好きなのか、毛利のことが」
 新一の言葉に快斗はびくっと体を震わせ、新一から手を離した。
「・・・昨日、何かあったんだろう?毛利と」
「何で・・・」
「毛利の様子が変だった。・・・泣いてたぜ?」
「泣いてた・・・?」
 快斗は吃驚して新一を見た。
「ああ。でも・・・悔しいが、俺にあの涙は止められないらしい。止められるのは、きっと・・・」
「・・・・・」
「あんまり、泣かすなよ。俺はいつでも、横から掻っ攫うチャンスを狙ってるからな」
「―――させねえよ」
 快斗はちらりと新一を一瞥すると、見を翻し、生徒会室から出て行った。
「・・・たく。何で俺がキューピットみたいな役目しなきゃなんね―んだよ・・・」
 ボソッと言った新一の独り言は、誰にも聞こえることはなかった・・・。


 蘭は一人、とある公園にいた。
「―――懐かしい。この公園、昔は快斗と良く来てたなあ」
 
 ―――初めて快斗と話したのも、この公園だった。
 蘭が7歳、快斗が6歳のとき。2人の両親が再婚することが決まって、快斗と快斗の母が蘭の家にやってきたのだ。蘭は何も聞いていなかった。ショックで、何も言わずに家を飛び出した。
 前日の夜、小五郎は仏壇に飾ってある母、英理の写真に向かって話をしていた。トイレに起きて、その光景を見た蘭は、なんとなく嬉しく思ったのだ。
 ―――お母さんが死んじゃっても、お父さんはお母さんが好きなんだ。
 だから翌日、知らない女の人を、「おまえの新しいお母さんだ」と紹介されたとき・・・すごく裏切られたような気持ちになったのだ。
 ―――どうして?お父さんはお母さんがすきなんじゃないの?
 泣きながら公園にたどり着き、土管の中で膝を抱えていた蘭。そんな蘭を探してやってきたのは、快斗だった。
「泣くなよ」
 泣きつづける蘭を、困ったように見る快斗。
「らん、お父さんをこまらせてるね。・・・きらわれちゃうかな」
 ぽつんと言った蘭の言葉に、快斗は首を振った。
「そんなこと絶対ないよ。おっちゃん、すげえ心配してたぜ?」
「ほんとに?」
 涙にぬれた目を向けると、快斗は優しく微笑んだ。
「おっちゃんは、らんのことが大好きなんだよ。らんのお母さんのことも大好きだって、おれとはじめてあったとき言ってたぜ?」
「でも・・・」
「おっちゃん、言ってたぜ?すきってきもちはへらないって。ふえるもんだって。らんのことも、らんのお母さんのことも。それからおれの母さんのことも、すきなんだって」
「・・・ずっと、かわらないの?ずっと、お母さんのこと、好きなの?」
「かわらない。らんもかわらないだろう?おっちゃんのこと、きらいになったか?」
「ううん!すきだよ!」
 蘭は慌てて首を振った。快斗はにっこり笑うと、蘭の手を取った。
「いこう!おっちゃんしんぱいしてるよ」
「・・・うん」

 その後、蘭を探していた小五郎に会い、蘭はすごく心配をかけていたんだと知った。小五郎の目には涙のあとがあった。そして、蘭を見つけると、小五郎は蘭を力いっぱい抱きしめた。「ごめんな、蘭」
 と言った小五郎に、蘭は首を振ってしがみ付いた。「ごめんなさい、お父さん。大好きだよ」といいながら・・・。
 
 それから10年。蘭は新しい母親のことも大好きになり、快斗のことも大好きだった。もちろんそれは、姉弟としてだと思っていた。ずっと、快斗を守れるような、いい姉になろうと思っていた。
 ―――でも、本当に守ってもらってたのはわたしだったのね。初めて会った時から・・・わたしはいつも快斗に守ってもらってたんだ・・・。いつも、ぞばにいてわたしを見つめてくれていた。
 蘭の頬を涙が伝う。
「快斗・・・」
「蘭!!」
 蘭の小さな囁きに答えるように、快斗が蘭に向かって走ってきた。
「か・・・いと・・・」
 蘭が驚いて快斗を見つめる。
「どうしてここに・・・」
「・・・家に帰ったらいなかったから・・・ひょっとしてここかもしれないと思ったんだ。ここは、思
い出の場所だからな」
 快斗が優しく微笑む。あの日と同じ、快斗の笑顔・・・。
「快斗も、覚えてたんだ」
「あたりまえだろ?あの日、俺必死に蘭のこと探したんだぜ?」
「うん。そうだよね。快斗は、いつでもわたしのこと助けてくれた・・・」
「蘭・・・」
「わたし、快斗を守れるような、いいお姉さんになろうと思ってたのに・・・。出来なかったね」
「んなことねえよ。蘭は良い姉さんだったよ。でも、俺が・・・蘭のこと、姉弟として見れなかったんだ」
「快斗・・・」
「―――昨日はごめん、突然あんな事して。けど・・・あれが、俺の本当の気持ちだから・・・。蘭を・・・他の男に渡すつもりはないから・・・」
 快斗が、蘭をじっと見詰める。蘭も、快斗の瞳を見つめた。
「・・・工藤、先輩に告白されたって・・・」
「知ってるの?」
「ああ・・・。なんて答えたんだ・・・?蘭は、あいつのこと、どう思ってる?」
「・・・先輩は、憧れの人だよ」
「憧れ?」
「うん。優しくて、頭が良くてスポーツも出来て・・・すごく素敵な人だと思ってる。でも・・・」
「でも?」
「でも、それだけ。・・・ちゃんと、断ったよ。好きな人がいるからって」
 蘭は、にっこり笑うと、いたずらっぽい視線を快斗に向けた。
「好きな人?って、誰だよ!?」
 快斗は途端に顔を顰めて言う。今まで、蘭の口から「好きな人」などという言葉は聞いたことがない。
 ―――そんな奴の存在、許して堪るかよ!
「わからないの?」
 蘭が、可笑しそうにくすくす笑う。
「分かるわけねえだろ?教えろよ。誰なんだよ、好きな奴って」
 いらいらと不機嫌そうに言う快斗を見て、蘭は溜息をついた。
「もう・・・そんな人、1人しかいないじゃない」
「だから、誰―――」
 突然蘭はすっと腕を快斗の首に回すと、唇を快斗の耳に寄せ、何かを囁いた。
「!!」
 快斗は目を見開き、蘭を見つめた。蘭は快斗から離れ、にっこりと満面の笑みを浮かべて快斗を見た。
「ら・・・ん・・・本当、か?俺、信じちまうぞ?」
「うん、本当。信じて?わたしのこと」
「蘭!!」
 快斗は、蘭の体を思い切り抱きしめた。
「蘭!好きだ、蘭・・・」
「快斗・・・わたしも、好きだよ・・・」
 蘭は、快斗の胸に顔を埋め、恥ずかしそうに呟いた。
「蘭・・・」
 快斗は、そっと蘭の頬に手を添えると、その唇にそっと口付けた。今度は、蘭も吃驚したりせずに、黙って瞳を閉じていた。
 触れるだけのキスをした後、またすぐに深い口付けをする。まるで、離れられなくなってしまったように、2人は何度も口付けた。
 やがて、蘭が息苦しさに瞳を潤ませているのを見て、快斗は漸く蘭を抱く手を緩めた。
「・・・ごめん、やりすぎた」
 蘭の濡れた唇を指でなぞり、快斗がくすっと笑った。
「もう・・・」
「・・・かえろっか」
「うん。・・・夕飯、何がいい?」
 2人並んで歩き出しながら、蘭が言う。
「蘭が作ったものなら何でも」
 快斗が、蘭の手を握り、言った。
「んん~~~。じゃ、魚料理?」
「うっ、それだけはやめろよな~~~」
 快斗が心底嫌そうな顔をするので、蘭が思わず吹き出す。
「ら~ん」
「あはは、ごめん、ごめん。でも・・・快斗が浮気したときには、これでとっちめちゃおうかな?」
「バーカ、浮気なんてするわけね―だろ?」
「ほんとに?」
「ああ。俺は一生、蘭以外の奴なんか好きになんね―よ」
 快斗の言葉に、蘭は目を見開き、頬を染めた。快斗の手に、力がこもる。
「約束、するよ」
「・・・うん」
 蘭は嬉しそうに微笑むと、快斗の手を、きゅっと握り返したのだった。

 もうすっかり暗くなってしまった帰り道、2人の姿だけが、明るく輝いて見えた・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 終わってしまいました~。どうでした?最後はちょっと難しかったのですが・・・。
ちび快蘭まで出しちゃいました。自分的にもとても気に入ってるパラレルなので、いつかまた続きを書いてみたいなあと思ってます。

 皆さんにも楽しんでいただければと思います♪
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The kiss of the secret 2 ~快蘭~

Category : novels(コナン)
 「天気、悪くなってきたな」
 夕食を食べ終え、テレビを見ていた快斗が、ふと窓の外を見て言った。
「一雨きそうじゃねえ?」
 その言葉に隣にいた蘭が不安そうな顔をする。
「う、うん・・・」
「なんだよ、どうした?」
「雷なんか・・・鳴らないよね」
 同意を求めるように快斗を見上げる蘭。快斗は可笑しそうにくすりと笑い、
「なんだよ、相変わらず雷なんてこええのか?」
「だってえ・・・」
「なんだったら一緒に寝る?昔みたいに」
 からかうように、ニヤニヤしながら言う快斗に、蘭はちょっとむっとして、
「何よォ、1人でだって寝れるわよ、子供じゃないんだから!」
 と言ってみせたが、その瞳には不安げな光が揺れていた・・・。


 夜11時を過ぎた頃・・・やはり雷が鳴り出した。
 ―――やっぱり来たな・・・。蘭のやつ、大丈夫かな。あいつは空手なんかやってるくせに、雷とお化けの類だけは昔っからからっきしだからな。 
 ちょっと様子を見に行ってみようか、と思っていると、快斗の部屋のドアを遠慮がちに叩く音が聞こえ、快斗はちょっと笑った。
「なんだよ?」
 快斗が答えると静かにドアが開いて、毛布に包まり泣きそうな顔をした蘭がそおっと顔を出した。
「―――快斗ォ、雷止むまで、ここにいてもいい・・・?」
 瞳をうるうるさせながら言われては、断れるわけもない。
「別に良いけど・・・。そんなに怖いかね?ピカピカ光ってきれいじゃん?」
 そう言う快斗の声など聞こえないように、蘭はベッドに座っている快斗の隣に来て座り、ぴたっとくっついた。
 風呂上りの、シャンプーの良い匂いがして、快斗の胸がどきんと音を立てる。
「―――大丈夫。すぐ止むよ」
 安心させるように優しく言うと、蘭はちょっと快斗を上目遣いで見て、微笑んだ。
「うん、ありがと、快斗・・・」
 無意識に向けられる、無防備な笑顔。それがどれほど快斗の心を動揺させているか、蘭は知らない。
「あ、そういえば―――」
 急に蘭が何か思い出したように言った。
「快斗、今日新入生代表の挨拶したんだって?わたし全然知らなかったよ」
「誰に聞いた?」
「園子がね、職員室に行ったときに先生が話してるの聞いたんだって。先生がね、吃驚してたって。新入生代表の快斗と、生徒会長の工藤先輩があんまり似てたから」
 くすくす笑って言う蘭を、快斗はちょっと不機嫌そうに見た。
「そんなに似てるかよ?」
「うん。わたしも初めて工藤先輩見たときは吃驚したもの。さすがに見間違えることはなかったけど。不思議よね。まったくの他人なのにあんなに似てるなんて」
 楽しそうに話す蘭に、快斗はなおも不機嫌になる。
「なあ」
「うん?」
「おめえ、あいつのこと・・・」
「あいつ?」
「生徒会長だよ」
「工藤先輩のこと?快斗ってば先輩にあいつだなんて・・・」
「んなことは良いんだよっ、それより、蘭―――おめえ、まさかあいつのこと、好きなんじゃ・・・」
「ええ?」
 快斗の言葉に、蘭は大きな瞳をさらに見開く。
「何言ってるのよ、そんな―――」
 と言いかけたとき、空が突然白く光った。
「!!キャ―――っ!!」
 蘭が、快斗にしがみつく。
「―――なんだよ、まだ光っただけだぜ?」
 快斗が高鳴る胸を静めようと、わざとそっけない言い方をする。
「だ、だって、すぐにきっと―――」
 蘭が快斗にしがみついたままそう言いかけた時、
『ドォォ――――ン!!!』
「!!!キャア――――!!ヤダ―――!!」
 けたたましい音と共に家が揺れ、蘭はいっそう強く快斗にしがみついた。
 がくがく震えながら目をぎゅっと瞑り、しがみついてくる蘭をどうにか安心させようと、快斗は蘭の背中に腕を回し、優しくさすった。
「―――大丈夫だって。俺がついてんだから。な?蘭・・・」
「ふえ・・・快斗ォ・・・」
 震える手を快斗の背中に回し、その胸に擦り寄る蘭。
 快斗の胸に、蘭の柔らかな胸が当たり、その感触に快斗は体が熱くなるのを感じた。
 ―――やべ・・・
 まずいと思った快斗は、蘭の体を離そうとしたが、怯えている蘭はさらに強くしがみつき・・・
 蘭の髪から、また甘い香りが漂い・・・快斗の中で、何かがぷつっと切れる音がした。
「らん・・・」
「え?」
 低く呼ばれた自分の名前に、蘭は顔を上げる。
 いつもとは違う、真剣な眼差しの快斗と視線がぶつかる。
「快斗・・・?」
 近づいて来る快斗の顔。蘭は、すぐに動くことができなかった。
 やがて、快斗の唇が、蘭のそれに重なった。
 掠めるようなキスのあと、呆然としている蘭に、もう一度口付ける―――。今度は、その甘い唇を味わうような深いキス―――。
 外ではまだ雷が鳴っていたが、すでに蘭の耳には届いていなかった。
 快斗は、ゆっくり唇を離すと、まだ呆然としている蘭を見つめた。
「らん―――」
 その声に蘭ははっとし、ようやく事態を理解したようにかーっと赤くなり、自分の口を両手で抑えた。
「か・・・いと・・・?今・・・」
「蘭・・・。好きだ・・・」
「え・・・」
「俺は、蘭が好きだ・・・。ずっと昔から、好きだったんだ」
 その瞳をそらさずに、告げる快斗。
 
 ―――これは夢―――?

 ―――俺は、蘭が好きだ・・・。

 ―――今、目の前にいるのは誰・・・?


 どうやって自分の部屋に戻ったのか。いつ眠りについたのか。
 昨日のことを、蘭は何も覚えていなかった。
 もしかしたらあれは夢だったのかもしれない。快斗にキスされたのも、「好きだ」と告白されたのも・・・。
 そう思いたかった。だが、蘭の唇はその感触を覚えていた。快斗の唇が触れた、その感触を・・・。
 目を覚ましたのは朝の6時。蘭は早々に家を出て、学校に来た。快斗と顔を合わせることはできなかった。どんな顔をして会えば良いのか、わからなかった。
 ―――快斗・・・。
 今まで知らなかった、快斗の想い。ずっと、本当の姉弟のように育ってきた。蘭は快斗を本当の弟のように思っていたし、快斗もそうだと思っていたのだ。
 初めて見る、快斗の男としての表情。自分を姉ではなく1人の女として見る熱い眼差し。今まで自分が知らなかった快斗の男としての一面を、蘭はどう受け止めたら良いのかわからず、途方に暮れていた・・・。

 ―――わたしにとって、快斗は弟、よね・・・?でも、それならどうしてこんなに胸が騒ぐんだろう・・・。どうして、ちゃんと顔を合わせることができないんだろう・・・。お母さん、わたし、どうすればいいの・・・?わたしにとって、快斗は何・・・?

 その日1日、蘭は授業に集中することができなかった。放課後になってもすぐに帰宅する気にはなれず、そのまま図書室へと向かった。 
 ―――どうしよう?今日はまだお父さん達帰って来ないし・・・。家に帰って、ご飯作らなきゃ・・・でも、家に帰ったら快斗と顔会わせなきゃならないし・・・。
「は―――っ」
 思わず深いため息をつくと、すぐ近くでクスリと笑い声が聞こえた。
 驚いて蘭が顔を上げると、蘭の目の前に新一が立っていた。
「あ、せ、先輩・・・」
「どうしたんだ?ため息なんかついて」
 新一が優しくにっこり笑う。
「いえ、別に・・・」
 蘭は本当のことを言うわけにはいかず、俯いて言葉を濁した。
「―――弟のこと?」
 新一の言葉に、蘭ははっと顔を上げる。新一と蘭の視線が絡み合う。
「―――毛利」
「は、はい」
「話が、あるんだけど。ちょっと良いかな」
「あ・・・はい」
 蘭は促されるままに、新一の後について図書館を出た。

 2人は、学校の裏庭に出た。
「あの、先輩、話って・・・」
「―――毛利って、今、付き合ってるやついなかったよな?」
「え、はい、まあ・・・」
「じゃあ、俺と付き合ってくれないか?」
「え!?」
 突然の愛の告白に、蘭は目を見開いた。
「俺は、毛利が好きなんだ」
 ―――俺は、蘭が好きだ・・・。
 新一の顔に、夕べの快斗の顔が重なる。
「毛利?」
「あ、は、はい」
「返事、聞かせてくれないか?」
「あの、わたし・・・」
 答えに詰まる蘭を、新一がじっと見詰める。
「―――好きな奴でも、いるのか?」
 好きな、奴・・・?わたしの、好きな人・・・?
 ―――蘭・・・。
 快斗・・・?
 ―――好きだ・・・。
 いつもわたしの側にいてくれたのは・・・。
 でも・・・快斗は弟よ・・・?
「毛利?」
 ―――わたし、工藤先輩に憧れてたじゃない。優しくて、頭がよくって・・・。すごく素敵な人だって思ってたじゃない。それなのに、どうして答えられないの?先輩の気持ちに・・・。
 ―――蘭・・・。好きだ・・・。

 蘭の頬を、一筋の涙が伝った。
「おい、毛利?どうしたんだ?」
「先輩、わたし・・・」
 蘭は、自分の中で湧き出た想いに戸惑い、涙を流しつづけた。

 ―――快斗は、弟なんかじゃない。どうして今まで気付かなかったんだろう。あんなに近くにいたのに・・・。いつもわたしの事を守ってくれていたのは、快斗だったのに・・・。快斗・・・。

 蘭は、自分をじっと見詰める新一を、まっすぐに見た。
 その瞳に、もう迷いの色はなかった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 えーと。まず、いいわけです。「快蘭のはずなのに、快蘭新になってるのでは?」ということで・・・。
それは気のせいです(笑)。すいません。別に誰でも良かったんです、ライバルの役は。それこそオリジナルキャラを出しても良かったんですが・・・。一番書きやすかったんですよ、新一が(おい)。それに快斗に対抗できるのは、やっぱり新一かな、と思ったんで。次回、いよいよクライマックスです~。
お楽しみに♪

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The kiss of the secret 1 ~快蘭~

Category : novels(コナン)
「快斗ォ、早く!」
 家の玄関で、蘭が言った。
 まもなく、2階から快斗があくびをかみ殺しながら降りてくる。
「ふぁ~い、今行く~」
「んもう・・・また昨日、遅くまでマジックの練習でもしてたんでしょう?今日は入学式だっていうのに・・・」
「へへ、まあな」
「まあなじゃないわよ」
「ほら、2人とも遅刻するわよ」
 と出てきたのは2人の母親。といっても、蘭にとっては本当の母親ではない。
 蘭の父親と、快斗の母親は蘭が小学校2年生、快斗が小学校1年生のときに再婚したのだ。蘭の本当の母親は蘭が3歳のときに交通事故で、快斗の父親は快斗が5歳のときにマジックショーの最中の事故で亡くなっていた。
「はあい、お母さん、行って来ます!」
 と、笑顔で答えると、蘭は先に家を出た。快斗も後からついて来る。
「待てよ、蘭」
「―――ねえ、その蘭っていうのやめない?」
「なんで?」
「だって、姉弟なのに、変じゃない。ちゃんと昔はお姉ちゃんって呼んでくれてたじゃない」
 蘭がちょっと拗ねたようにいう。
「別に良いじゃん。もうこの呼び方で馴れちまってるし。今更お姉ちゃんなんて、恥ずかしくて呼べねえって」
「もう・・・」
 溜息をつく蘭の横顔をそっと盗み見ながら、快斗は苦笑いした。
 ―――今更“姉ちゃん”なんて呼べるわけねえだろ?俺にとって、蘭は姉ちゃんなんかじゃねえんだから・・・。
 そう、快斗にとって、蘭は“姉”ではなく1人の女性だった。そうはっきり自覚したのは、蘭が中学生になった頃。初めてセーラーの制服を着た蘭を見たとき、快斗の胸は今にも破裂しそうなくらい大きく高鳴った。蘭が急に大人になったような気がした。そして、それまでは一応お姉ちゃんと呼ぶこともあったのが、その日を境に決してお姉ちゃんとは呼ばなくなったのだ。自分にとって、蘭は姉なんかじゃないと、はっきりわかったその日から・・・。
「でも、また快斗と一緒に登校できて良かった。もしかしたら快斗は別の高校行くのかな、と思ってたから」
「―――帝丹が一番近いからな。朝、ゆっくりできるじゃん」
「またそんなこと言って・・・。遅刻しないようにしてよ?」
「わーってるって。いちいちうるせーよ」
「あ、何よォ、その言い方。かわいくないなあ」
 蘭が、頬をぷうっと膨らませて言う。快斗はそんな蘭がかわいくって、わざとからかう。
「姉貴風吹かせんなよー。1コしか年ちがわねえんだし、背だって、もう俺のほうが高いんだぜ?」
「1コだって、弟は弟でしょう?ちょっとはお姉さんの言うこと聞きなさいよォ」
「―――やあなこった!」
「もう!!」
 ―――弟、なんて言うなよ。俺は弟なんかじゃねえ・・・
 そう言いたいのをぐっと堪え、快斗は歩き出したが・・・
「毛利、おはよう!」
 と、後ろから声をかけられ、蘭と同時に振り向く。
 そこに立っていたのは、快斗に良く似た、帝丹高校の制服を着た男で・・・
「あ、工藤先輩、おはようございます」
 蘭がにっこり笑って、頭を下げる。
「―――もしかして、弟?」
 その男が快斗を見て言った。
「あ、はい、弟の快斗です。快斗、こちら帝丹の生徒会長の工藤新一先輩よ」
 快斗は、「どうも・・・」と言って、軽く会釈した。
「よォ、君のことは毛利から聞いてるよ。俺に良く似た弟がいるってね。これからよろしくな」
 新一は、にっと笑うと蘭に「じゃあ」と声をかけて、足早に歩いていった。
「―――俺のこと、話したの?」
「え?うん、まあね。何?言っちゃまずかったの?」
 不機嫌そうな快斗を見て蘭が言う。
「そういうわけじゃねえけど・・・俺は、聞いてないぜ、あの人のこと」
「そうだっけ?あのね、工藤先輩とは去年の文化祭でわたしが文化祭委員をやったときにいろいろお世話になったのよ」
「ふーん。いろいろ、ね・・・」
「それ以来、たまに会うとあんなふうに話し掛けてくれるのよ。とってもいい人なのよ」
 にこにこ笑って、新一のことを話す蘭。それを見ている快斗は当然面白くない。
 ―――なんだよ、蘭のやつ・・・。嬉しそうにあいつのこと話しやがって・・・。まさか、あいつのこと、好きなのか・・・?
 快斗の胸に、鈍い痛みが走る。
 

 玄関に着くと、蘭は2年生の教室のほうへと向かった。
「じゃあね、快斗」
 蘭は軽く手を振って行ってしまう。
 快斗はそんな蘭の後姿を見送りながらため息をついた。
 ―――やっぱ蘭にとって、俺はただの弟なんだな・・・。けど、諦めねえからな。ゼッテー他の奴になんかわたさねえ・・・。


 「おっはよー、蘭」
 教室に入ると、親友であり幼馴染である園子が側に来た。
「おはよ、園子」
「窓から見てたわよ。快斗君と一緒に来たんだ」
「うん。今日からまた、一緒の学校だしね」
「ホント、あんたたちって仲良いわよねえ。あ、そういや工藤先輩ともなんか話してたわね。何話してたの?」
「たいしたことじゃないよ。挨拶して、快斗のこと紹介しただけ」
「ふーん。あの2人ってホント似てるよね。・・・女の趣味も似てたりして」
「え?」
「・・・快斗君ってさ・・・結構もてるでしょ」
「?さあ。どうなんだろうね。家ではあんまりそういう話しないけど」
「だってさ、ルックス良いし優しいし、絶対もてるタイプよ?」
「そうかな?」
「そうだって!でも誰とも付き合ってないんでしょ?」
「うん・・・多分、ね」
 蘭は、園子の言いたいことがわからず、首を傾げている。
「快斗君ってさ・・・ひょっとして、あんたのこと好きなんじゃないの?」
 という園子の言葉に、蘭は目を丸くする。
「ええ!?な、何言ってんのよ、園子!」
「だあってさ、快斗君のあんたを見るあの目!あの目は自分の姉を見る目じゃなかったわよ?大体あんたたち―――」
「そ、園子!!」
 何か言いかけた園子を、蘭が慌てて止める。
「大丈夫。言わないわよ、あのことは」
 そう、園子は知っているのだ。蘭と快斗が本当の姉弟ではないことを。
「そう、それにさ、工藤先輩も、あんたのこと好きなんじゃない?」
「ええ?もう、そんなことあるわけないじゃない。あの工藤先輩が・・・」
 半ば呆れたように言う蘭を、園子は横目で睨む。
「あんたってホント、鈍いわねえ。工藤先輩が最近、用もないのにうちの教室の前通ったりすんのって、あんたのこと見に来てるんだと思うわよ?廊下ですれ違ったりするときもさ、必ず声かけてくじゃない」
「それは、工藤先輩優しいから・・・」
 蘭の言葉に園子がため息をつく。
「―――ま、いいわ。そのうちわかるわよ。修羅場になんなきゃ良いけどね」
 その言葉に、蘭は首を捻る。
 ―――園子ってば・・・そんなわけないじゃない。快斗は弟だし、工藤先輩だって・・・あんなに人気のある人が、わたしのこと相手にするわけないよ。
 そんなことを思いながら、蘭は自分の席についたのだった・・・。


 入学式が始まり、快斗もあくびをかみ殺しながら椅子に座っていた。もういいかげんお尻が痛くなってきた頃、生徒会長、工藤新一の挨拶が始まった。会場がざわつく。それはそうだろう。ついさっき、新入生代表として壇上で挨拶をした快斗と新一は、そっくりなのだから。
 隣にいた男子生徒が、
「おめえの兄貴?」
 なんて聞いてくるのをうざったそうに聞き、
「ちげえよ。ぜんぜん関係ねえ」
 と答えてチラッと新一を見る。「格好良いねえ」なんて言ってる女子の声が聞こえる。蘭が、朝言っていたことを思い出す。
 ―――とってもいい人なのよ。
 ―――けっ、なあにがいい人だよ。男が優しくするなんて、大体下心があるに決まってんだ。蘭は、そういうところちっともわかってねえんだ、昔から・・・
 蘭はもてる。かわいくてスタイルも良くて、誰にでも優しくて・・・。男女ともに人気があるのだ。
 快斗が中学生になった頃、蘭のことを待っていて何気に蘭の下駄箱を開けてみてびっくりしたことがある。どさどさと音を立てて落ちたたくさんのラブレター。それを拾い上げ、当然のように自分の鞄にしまった。そして家に帰ってからそれらを開け、名前をチェックしたのだ。自分の知らないところで他の男が蘭に近づく。それが許せなかった。本当は高校だってどこでも良かったのだ。だが、快斗は迷わず蘭と同じ高校を選んだ。近くにいれば、誰かが蘭に近づこうとしてもそれを邪魔することは簡単だと思ったからだ。
 快斗は壇上の新一を睨んだ。
 ―――おめえにだって、わたさねえぜ。たとえ蘭が気に入ってる人間でも・・・ゼッテーゆるさねえ。


 入学式が終わり、ぞろぞろと自分たちの教室に向かって歩いて行く生徒たち。快斗もその中にいた。
 と、突然、快斗は腕をつかまれ、引っ張られた。
「!!な?」
 驚いて引っ張った奴を見ると―――それは、先ほど壇上で挨拶をしていた新一で・・・
「あにすんだよ!?」
「―――おめえな・・・少しは先輩に対する言葉使いっつーもん、覚えろよ」
 新一が呆れたように言った。
「余計なお世話だよ。なんか用か?」
「それは俺の台詞だよ。俺が壇上にいる間中、ずーっと睨んでただろ?」
「俺が?」
「ごまかすなよ。あんだけ殺気のこもった視線送られりゃあ、いやでも気付くぜ?何なんだよ、いったい」
「・・・気のせいじゃねえの?俺別に、あんたに恨みとかないし」
「・・・あ、そ・・・そう来るか。んじゃあ俺から言ってやろうか?毛利のことだろ?」
 いきなり図星を指され、ドキッとする。が、それを顔に出さずに新一を見る。
「何でそう思う?」
 新一は肩を竦め、
「簡単なことだろ?俺とおまえは今日が初対面。特に恨みを買った覚えもない。だとしたら俺とおまえが関わる理由って言ったら毛利のことしかねえだろ」
 と言った。快斗は、ふいっと視線をそらせた。
「俺が、毛利に手ェ出したとでも思ってんのか?だったらまだそんなことしてねえから安心しろよ」
 その言葉に、快斗がぴくっと反応する。
「―――まだって、どういう意味だよ?」
「やっぱそれを心配してたのか。―――まだはまだ。言葉どおりの意味だよ」
「蘭のことが・・・好きなのか?」
「・・・本人より先に、おめえに言うわけにいかねえだろ?」
 快斗が、新一を睨みつける。新一は快斗の鋭い視線にちょっと吃驚したような顔をしたが、怯むことなく受け止めていた。
「―――蘭はあんたにはわたさねえよ」
「・・・それを決めるのは、毛利じゃねえのか?」
「・・・とにかく、蘭には近付けさせねえからな」
 そう言うと快斗は身を翻し、すたすたと歩き出した。
 その後姿を見送りながら、新一は眉を寄せた。
 ―――なんだ?あいつ・・・ただ、姉貴の心配してるにしちゃあ、異常じゃねえか・・・?
 そう思いながら見ていると、向こうからやってきた女生徒が、快斗に声をかけた。
「快斗君、どうしたの?1人で。もうみんな教室に戻ってるでしょう?」
 と言ったのは園子だった。
「トイレ行ってたんだ。体育館にずっといたから冷えちまって」
 さっきまでの憮然とした態度が嘘のように、にこやかに話す快斗。その変わり様に新一は呆れて見ていたが・・・。
「じゃあね」
 と言って歩き出す園子。新一は快斗の姿が見えなくなるのを確認して、園子の前に現れた。
「やあ、鈴木さん」
 突然目の前に現れた新一に、園子はギョッとする。
「あ!先輩ィ、もう、吃驚させないでくださいよォ」
「ごめん、ごめん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「わたしに、ですか?」
「ああ、君、確か毛利の幼馴染だったよな」
「そうですけど・・・」
「じゃ、弟のことも良く知ってるよな」
「はあ、まあ・・・」
「その弟と、毛利のことで聞きたいんだけど・・・」
「・・・・・」
 園子はいやな予感がした。新一は笑っている。とてもにこやかに。だが・・・目が、笑っていなかった。
「あ、あの、わたし、ちょっと急いでて・・・。このプリント、職員室まで持っていかないと・・・」
「俺が持ってってやるよ。どうした?鈴木、顔色悪いぞ。俺のことがこええわけじゃねえだろ?」
「は、はい・・・」
 ―――目がめちゃめちゃ怖い~~~!ぜっっったいやばいわよ~~~、誰か助けて~~~っ
 新一にじりじりと迫られ、園子はいつのまにか壁と新一の間にはさまれていた。
「―――で?毛利とあの弟・・・何かあるのか?」
 単刀直入に聞かれ、園子は言葉が出てこなかった。言ってはいけないことなのはわかっている。わかってはいるが・・・
「ん?鈴木。どうなんだ?」
 相変わらず、凄みのある笑顔で迫られ・・・
 ―――もうだめ~~~っ、蘭、ごめんっ!


 快斗は玄関に着くと2年生の下駄箱の所に行き、蘭の下駄箱を覗いた。
 バサバサッ
 思った通り、何通ものラブレターが中から出てきた。
「ったく、油断もすきもねえな」
 ぶつぶつ言いながら、落ちたラブレターを拾う。と、不意に人の気配がして顔を上げると、目の前に新一が立っていた。
「よォ」
「・・・どうも。まだ何か用ですか?工藤先輩」
 わざと敬語を使う。が、その目は合わそうとせず拾ったラブレターに向けられていた。
「―――毛利ってもてるよな。あんだけかわいけりゃ無理ねえけど」
「・・・・・」
「心配だよなあ。弟としちゃあ」
「何が言いたいんですか?」
「―――好きなんだろ?毛利のこと」
 その言葉に、快斗は動きを止め、ちらりと新一を見た。
「そりゃ、姉ですから」
「そういう意味じゃなく・・・女として、好きなんだろ?」
「・・・何言ってんすか?先輩」
 快斗は、唇の端を上げて笑った。
「おめえの方がわかってんだろ?それとも言ってほしいか?おめえと毛利が本当の姉弟じゃないって―――」
 その言葉を言い終わらないうちに、快斗が新一の胸倉をつかんだ。―――周りに人気はなく、聞いている人間はいなかった。
「―――安心しろよ。誰にもいわねえよ。ただ、これだけは言っとくぜ」
「なんだよ?」
「毛利はおめえのもんじゃねえ。俺は・・・諦める気はねえからな」
 今までとは違う、凄みのある視線で快斗を睨みながらそう言うと、新一は快斗の手を払い、すたすたとその場を後にしたのだった・・・。
 快斗は拳を握り締めながら新一の後姿を睨みつけていたが・・・
「あれえ?快斗?どうしたの?」
 後ろから蘭の声が聞こえ、快とははっとして振り向いた。
 蘭がきょとんとした顔で立っている。
「あ、もしかして待っててくれたの?」
「―――ああ、まあな。今日は部活ないんだろ?」
「うん。ちょうど良かった。園子が今日は一緒に帰れないって言うから、寂しいなと思ってたところなの」
 蘭がぺろっと舌を出して照れくさそうに言う。
 そんな蘭を見て、快斗もにっと笑う。
「何だよ、1人じゃ帰れねえのか?お子様みてえだな」
「あ、ひっどーい。帰れなくはないもん。ただ寂しいなあと思っただけよっ」
 頬をぷうっと膨らませる蘭。快斗は可笑しそうにクックッと笑って先を歩いた。
「あ、待ってよ快斗ォ。ね、買い物付き合ってよ」
「んあ?どこに?」
「駅前のスーパー。今日はわたしが夕飯作るからね」
「は?何で?」
「何でって・・・快斗ってば覚えてないのォ?今日からお父さんとお母さん、旅行に行くって言ってたでしょ?」
「あ・・・そういや、そうだったな・・・」
「もう・・・ね、何食べたい?快斗の好きなもの作ってあげるよ」
「マジ?」
「うん!魚料理が良い?」
 その言葉に、固まる快斗。それを見て、蘭がぷっと吹き出す。
「てんめ・・・」
「あっはは、ごっめーん、快斗ってばホントお魚だめなのねえ」
 可笑しそうにけらけら笑う蘭。
「ちっきしょう・・・見てろよ、ゼッテー仕返ししてやっからなっ」
「ごめんってばあ、冗談よ。で?何が良いの?」
「・・・スーパー行ってから決めるよ」
「ん、わかった。じゃ、行こうか」
 にっこり笑う蘭と、それに見惚れる快斗。傍から見たら、姉弟というよりは、仲の良いカップルに見えるのだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 これは5000番をゲットされたREI様のリクエストによる
お話です。3話構成になっています。
 次回もお楽しみに♪

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It wants to approach you. ~新蘭+α~

Category : novels(コナン)
「ねえ、大丈夫?」
 突然、ひょいと木村の顔を覗き込んできた女の子―――毛利蘭。
「え?あ、ああ・・・」
 至近距離に現れた蘭の顔にドキドキしながら、木村は思わず顔を赤らめる。
「顔色、良くないけど・・・。具合、悪いんじゃない?」
 小首を傾げ、心配そうな顔をする蘭から、目が離せない。
 ―――可愛いなあ・・・。
「いや、大丈夫だよ。ちょっと風邪気味なだけで、大した事ねーし」
 本当はかなり辛かったのだが、無理をして笑う木村をじっと見ていた蘭は・・・
「そう?でも―――」
 そう言って、白いきれいな手を木村の額に当てた。

 ドキン

 心臓が大きな音を立てる。と同時に―――
「蘭!」
 どこから見ていたのか。蘭の幼馴染、工藤新一が駆け寄ってくる。が、蘭はそれを気にも止めず顔を顰めて、
「やっぱり!木村君、熱あるよっ」
「え・・・そ、そうか?」
「んもう、気付かなかったの?ほら、保健室行こう!」
 蘭が、椅子に座っていた木村の腕を引っ張る。
「え、や、でも俺、今日は部活にどうしても出なくっちゃ・・・」
「なに言ってるの!自分の身体のほうが大事だよ?ほら、行こうっ」
 蘭がぐいっと腕を引っ張り、木村を立たせて、自分の体で木村を支えるように体を密着させた。
 ―――うわ、胸が腕に・・・
 その柔らかい感触に、思わず赤面する―――と、突然後ろから反対の腕をグッと引っ張られる。
「新一?」
 蘭が、漸く新一を見た。
「俺が連れて行くよ」
 新一の低い声。
 ―――あ、こいつ、妬いてやがるな。
 木村がチラッと新一を見ると、不機嫌な新一の視線とぶつかった。
「そう?じゃあわたしも付き添うね。一応保健委員だし」
 蘭はニッコリ笑うと、先に立って歩き出した。


 「38.3℃・・・結構あるわね。今日は帰ったほうがいいわよ」
 保健の先生に言われ、仕方なく頷く。
「大丈夫?木村君。1人で帰れる?」
 蘭が心配そうに木村の顔を覗き込む。と、新一が横から
「タクシー、呼んでやるよ。蘭、オメエこいつの鞄もって来てやれよ」
「あ、うん、分かった。じゃあ木村君、少しベッドで休んでなよ」
 そう言い残し、蘭は保健室を出ていった。
 新一は木村をチラッと見て、
「寝てろよ。今電話すっから」
 と言って、携帯電話を取り出した。
「ああ―――ワリィな」
 木村はおとなしくベッドに横になり、電話をかけている新一の顔を盗み見た。
 ―――全く、厄介だよなあ。せっかく毛利と接する機会があったって、必ずこいつが出てきて邪魔するんだからな・・・。
 帝丹高校に入って、一番良かったと思ったこと―――それは、蘭と同じクラスになれたこと。入学式の日に一目惚れし、ずっとその姿を見つめてきた。さらさらの長い髪、大きな瞳、桜色の唇・・・。何もかもが魅力的で―――。
 そんな蘭に思いを寄せているのは木村だけではなかったが―――いつもそんな男たちに睨みをきかせ、蘭の隣をキープしている男―――それが工藤新一だった。蘭の幼馴染だという新一は、当然のように蘭と一緒に登下校し、その名を呼んでいる。蘭は気付いていないようだが、新一が蘭を好きだということは一目瞭然で―――新一が側にいる限り、蘭に近づくのは至難のわざと思われていた。
 それが、少し変わってきたのは最近のこと。新一がある事件を解決したのをきっかけに高校生探偵として有名になり、今ではちょくちょく警察に呼び出され、もともと成績の良かったこともあり学校側も警察側の要請を承諾しているのだ。
 このときとばかり、新一のいないときを狙って蘭に迫る男の多いこと―――。だが、超がつくほど鈍感な蘭はそんなことには気付かず、はっきり告白しても、やんわりと断られ・・・。未だ蘭のハートを掴む男は現れていなかった。
 木村も、まだ告白こそしていないものの、アプローチだけは他のやつらに負けじとしているつもりだったが・・・蘭がそれに気付く様子はなく・・・。
 ―――あ―あ、もし今日工藤のやつがいなかったら、スゲエチャンスだったのに・・・。こういうときに限っているんだよなあ・・・。
 木村は、深々と溜息をついた。新一は、そんな木村を何か言いたげにじっと見ていた・・・。


 「あ、蘭、木村君どうしたの?」
 蘭が教室に戻ると、園子が話し掛けてきた。
「なんか、熱があるみたいだから、今新一がタクシー呼んでるの。―――これ、木村君のよね?」
「うん。新一君が持って来いって言ったの?鞄」
「うん。じゃ、わたしもう1回保健室行って来るね」
 木村の鞄を持って、再び教室を出て行く蘭を見送って、
 ―――木村君もかわいそうに。せっかく蘭が付き添ってくれるとこだったのにね。
 と園子は思った。さっきの一部始終をずっと見ていた園子は、思わず木村に同情してしまったのだ。
 ―――木村君て結構イイ男だからちょっと狙ってたんだけど・・・。彼、蘭のことしか眼中にないんだものね。いつも蘭のこと目で追っててさ。あの熱い視線に気付かないなんて、蘭の鈍感さもかなりのモンよね。―――ま、でも、あの新一君が相手じゃね。さっきだって蘭が木村君の側に行ったときからずっとそっちの様子伺っててさ・・・。蘭が木村君の額に触ったときの慌てぶりったら・・・。可笑しいったらなかったわ。ホンットあやつってばヤキモチやきなんだから。さっさと告っちゃえば良いのにね。蘭にははっきり言わなきゃわかんないのに・・・。


 「お待たせ、新一、タクシー呼んだ?」
 保健室のドアが開き、蘭が顔を出した。
「ああ、10分くらいで来るってよ」
「そう。木村君、これ・・・」
 と、蘭は鞄を木村に渡した。木村はベッドに体を起こし、それを受け取った。
「サンキュ、毛利」
「ね、お家の人いるの?1人で大丈夫?」
「ああ、母親がいるから。さっき、工藤の携帯貸してもらって、電話しといたから平気だよ」
「そう、良かった」
 蘭は心底ホッとしたように微笑んだ。その笑顔が可愛くて、思わず見惚れていると
「蘭、オメエ教室戻ってろよ。授業、始まるだろ?」
「え?でも―――」
「後はタクシーが来たらこいつ連れてくだけだろ?俺がやるから、オメエは良いよ」
「そう?じゃあ・・・木村君、気を付けてね」
「ああ、サンキュー」
 蘭はもう一度笑うと、保健室から出ていった。
 ―――あ―あ、いっちまった。
 がっかりして、溜息をつくと―――新一が、横目で木村を見た。
「な、なんだよ」
「―――別にっ」
 ふいっと顔を背ける。それがなんだか憎らしく思えて―――
「なあ―――工藤と毛利って、幼馴染だったよな」
 と木村が言うと、新一はまた横目で木村を見て
「―――そうだけど?」
「別に、付き合ってるわけじゃねーんだよな?」
「・・・だから、なんだよ?何が言いたい?」
「ベーつに。ただ・・・毛利って可愛いよなあと思って、さ」
「・・・・・」
「あんだけ可愛いのに彼氏がいないって不思議だよなあ。何でつくんね―のかな。やっぱ好きな奴がいるのかね」
 “好きな奴”という言葉に、新一がぴくっと反応する。 
 ―――正直な奴・・・。普段はクールなくせに、毛利が絡むだけで180度変わるんだな・・・。毛利は工藤のこと、どう思ってるんだろう?やっぱ好きなのかな・・・。けど、今は“ただの幼馴染”だって言ってるし・・・。やっぱ、今がチャンスだよな・・・。
 木村は、新一の顔色を伺いつつ、熱でボーっとする頭で考えをめぐらしたのだった・・・。
 新一は新一で、木村に言われたことを考え、イライラしていた。
 ―――こいつ、ゼッテ―蘭に気があるな・・・。どうにか諦めさせねーと・・・。でも蘭の奴に言ってもなあ。あいつ警戒心っつーモンがまるでねーし。あんなふうに顔覗き込んだり、額触ったり、腕掴んだり・・・挙句にあんな可愛い笑顔見せやがって。俺以外にあんな顔見せんじゃねーよ・・・それとも、まさか蘭のやつも木村のこと・・・?まさか!そんなわけねえ!そんなこと・・・ゼッテ―ゆるさねーぞ!


 ―――日曜日。蘭は新一と映画を見に行く約束をしていて、待ち合わせ場所の駅で、新一を待っていた。
 ところが、1時間待っても新一は現れず・・・
 ―――もう、映画始まっちゃてるよ・・・。新一ってば、また事件なのかな・・・。
 電話をしてみたが、留守電になっていて誰も出ない。蘭は溜息をつき、家に帰ろうと歩き出したのだが・・・
「ねえ、君時間ある?」
 と、蘭の前に立ったのは、見たことのない2人組の男。
「もし良かったら、俺たちと遊ばない?」
「―――どいてください」
「なあ、すっぽかされたんだろ?見てたんだぜ、ずっと」
「いやなことは忘れてさ、俺らと楽しもうよ」
 1人の男の手が、蘭の肩に触れようとした、そのとき、蘭は思わず空手技を出そうとしたのだが・・・
「毛利、遅れてごめん!」
 という声が後ろから・・・
「え?」
 驚いて振り向くと、そこには木村が立っていた。
「木村君!」
 目を見開く蘭に、目配せしながら木村が蘭の横に立つ。
「どうした?早く行こうぜ」
 木村がさり気なく蘭の手をとると、蘭もハッとしたように笑い、
「あ、うん!もう、遅いよっ。今日は木村君のおごりねっ」
 と言って、くるっと向きを変え、歩き出した。
 残された2人組は呆気に取られ、その場に突っ立っていたのだった・・・。


 「ありがとう、木村君」
 2人から見えないところまで来ると、蘭は立ち止まり、木村を見て言った。
「あ、いや・・・余計なことかと思ったんだけどさ・・・。毛利、空手やってんだもんな。俺なんかが助ける必要、なかったかな」
 木村が照れたように笑う。
「ううん。あんまり人前で空手技とか出したくないし。ホント、助かったよ。ありがとう」
 ふわりと微笑まれ、木村の顔がカーッと赤くなる。
 ―――やべ・・・可愛すぎ。今告ったら・・・どんな顔するかな・・・。
「木村君?どうしたの?」
 小首を傾げる蘭。そして―――まだ手を繋いでいたことに気付いた木村は、その手をパッと離し、
「あ、ご、ごめん」
 と慌てて言った。蘭はそんな木村を見てキョトンとしていたが、やがてクスクスと笑い出し、
「木村君、なんか今日変だよ?―――あ、もしかして、まだ風邪治ってないの?」
 と、途端に心配そうな顔をする。
「あ、大丈夫だよ。もう熱も下がったし、部活にも出てるよ」
「そう―――あ、ごめんね。あの日・・・バスケ部でレギュラーを決める練習試合があったんでしょう?わたし、無理やり帰しちゃって・・・」
「ああ、良いんだ。あんな状態じゃ、どうせろくなプレーできなかったし・・・それに、今回は1年でレギュラーになった奴いないから。俺だけが遅れをとったわけじゃないからね。また次、がんばるよ」
 と、木村が笑って言うと、蘭はちょっとまだ気にしているようだったが・・・
「―――うん。じゃあがんばってね。わたし、応援するから。―――あ、そうだ」
「何?」
「この間のお詫びと、今日のお礼に―――何か奢らせて?」
「ええ?良いよっ、この間のはこっちがお礼言わなきゃなんないくらいだし・・・それに、今日だって、別に大した事は―――」
 木村は慌てて手を振ったが、蘭は首を振り、
「だめっ、わたしの気が済まないもん。ね、何が良い?何でもいいよ」
 と、ニコニコしながら聞いてくる。木村はどうしたものか悩んでいたが―――ふと、あるものに気付き、
「じゃあさ、ジュース奢ってくれる?そこのでいいから」
 と言って、指差したのは―――ジュースの自動販売機だった。
「え―――?でも・・・」
 蘭が、戸惑ったような顔をする。
「でさ、あそこの公園のベンチで一緒に飲もうよ。今日は天気も良いし―――外のほうが気持ち良いよ」
「そんなんでいいの?本当に?」
「それで充分だよ。な、そうしよ?」
 と、笑って言う木村に、蘭も漸く納得したように笑うと、
「うん、わかった。何が良い?」
 と聞いた。
「俺、コーラ」
 蘭はジュースを2本買い、2人で公園のベンチに座った。
「はい」
 蘭に渡されたコーラの缶を開け、口をつける。
「サンキュー、毛利」
「ううん、これくらい・・・」
 蘭はニッコリ笑って、自分もジュースを飲んだ。そんな蘭の横顔を、木村はじっと見詰めて・・・
「―――なあ、もしかして今日、工藤と約束してたのか?」
 と聞くと、蘭はちょっと寂しそうに笑い、頷いた。
「ん・・・でも、来なかったの。きっと、また何か事件が起きて呼び出されちゃったのね」
「そういうこと、多いのか?」
「うーん・・・2回に1回は・・・」
「そんなに?んで、毛利はおこんね―の?」
「怒っても仕様がないし・・・。あいつ、事件の事となると、回り見えなくなっちゃうんだもん。悪いとは思ってるみたいだけど・・・」
 蘭は、今まで木村が見た事もない、寂しそうな顔で笑った。
「毛利・・・あの・・・さ、もしかして、工藤のこと・・・」
「え?」
「・・・あ、いや、なんでもない」
「?変なの、木村君」
 蘭がクスッと笑う。それは、さっきまでとは違う無邪気な、明るい笑顔だった。それを見て、木村の胸が痛んだ。
 ―――こんな可愛い笑顔を見せてくれるのに・・・。あいつのこと話す時は、あんな寂しそうな顔もするんだな。それは、あいつが特別だからか―――?でも・・・俺は、毛利にはいつも笑顔でいて欲しい・・・いつもあんなふうに笑っていて欲しい・・・。
「―――やめろよ」
「え?」
 突然真剣な眼差しで見つめられ、蘭は戸惑った。
「何?木村く―――」
「やめちまえよ、あんな奴―――」
 木村が、蘭の細い腕を掴む。
「木村く・・・」
 今までの優しい目と違い、有無を言わさぬような、強い眼差し―――。蘭が戸惑っている間に、木村の顔がそっと近づき―――
「蘭!!」
 もう少しで唇が触れる、というところで、公園の入り口のほうから蘭を呼ぶ声が―――見なくても、それが誰だか分かっている。
 反射的に蘭がパッと木村から離れ、そちらを見て目を見開く。
「新一!」
 新一が、それこそ鬼のような形相で、木村を睨みつけながら走ってきた。
「どうしたの?事件で呼び出されたんじゃないの?」
「どうしたのじゃねーだろ!?何やってんだよ、オメエら!」
「何って・・・何怒ってんの?新一」
 木村にキスされようとしていたとは思ってもいない蘭が、キョトンとして聞く。
「何って―――何って、オメエ、わかってね―のか!?」
「分かるわけ、ないじゃない。ちゃんと言ってくれなきゃわかんないわよ」
 ぷうっと頬を膨らませる蘭に、怒りを通り越してなんと言って良いのか分からない新一。―――その光景を見ていた木村が、急にぷっと吹き出した。
「木村君?」
「―――何笑ってんだよ、テメエは!」
 新一がギロリと睨む。木村はその視線を受け止めながら、笑って言った。
「いや・・・工藤も苦労してんだなあと思ってさ」
「どーいう意味だよっ?」
「別に。―――事件じゃなかったのか?」
「・・・ああ、そうだけど・・・すぐに犯人がわかっちまったから、さっさと片付けて急いで来たんだよ。―――蘭、ごめん。連絡できなくて・・・」
 新一が、一転すまなそうに蘭に謝る。蘭は肩を竦めて苦笑いすると、
「いつものことでしょ。もう良いよ」
 と言った。新一は少しホッとしたようだったが、また顔を顰め、木村を見た。
「で?何で木村がここにいんだよ?」
「木村君、助けてくれたのよ」
 と、蘭が言う。
「助けてって・・・何かあったのか?」
 新一の顔色が、サッと変わる。
「2人組みに、ナンパされてたんだよ」
「ナンパァ?」
「ま、毛利みたいな可愛い子が待ちぼうけ食らってんの見たら、誰でも声かけたくなるんじゃね―の?」
 と木村がいうと、新一はばつの悪そうな顔をし、蘭はちょっと頬を赤らめた。
「木村君てば・・・。あ、でね、そのとき木村君が助けてくれて・・・お礼に何か奢らせてって言ったんだけど、木村君が缶ジュースで良いっていうから・・・。あ、新一も何か飲む?」
「え?―――ああ、じゃあコーヒー、買ってきてくれるか?」
「うん、。じゃ、ちょっと待ってて」
 と言うと、蘭は公園の外の自動販売機まで駆けて行った。
「―――何か、言いたいことあんだろ?」
 蘭が行ってしまうと、木村が新一を見て言った。
「・・・蘭を助けてくれたことは礼を言うよ。―――サンキュ」
「どういたしまして」
「けど、さっきのは・・・ゼッテ―ゆるさねーからな」
 木村が蘭にキスしようとしていたことを言っているのだ。
「・・・オメエにそんなこと言う権利、あるわけ?毛利の彼氏でもね―のにさ」
 と木村が言うと、新一はグッと詰まる。
「好きなら早いとこ告っちまえばいいだろ?毛利を好きな奴は他にもたくさんいるってことくらい知ってんだろ?」
「―――今言ったって、ダメなんだよ」
 新一が、苦しげに言った。その顔が、本当に辛そうなのを見て、木村は驚いた。
「ダメって、何でだよ?」
「―――蘭にとって、俺はまだ只の幼馴染でしかねーんだ。今言ったら―――その幼馴染って関係でさえ壊れかねない・・・」
「・・・ふーん・・・。怖いのか」
「!!な―――っ」
「新一お待たせ!―――どうしたの?」
 缶コーヒーを持ってきた蘭が、新一の険しい顔を見て、目を丸くする。
「いや、なんでもね―よ。んじゃ、俺もう行くよ。ご馳走様、毛利」
「え、もう行くの?」
「ああ。―――じゃあな工藤」
 木村は立ち上がると、新一の肩をぽんと叩いた。
「あ、ああ」
「―――言っとくけど、俺、諦め悪いから」
「!!それ―――どういう意味だよ?」
「油断すんなってこと。じゃあな、毛利、また学校で」
「うん。今日はありがとう、木村君」
 蘭がニッコリ笑うと、木村は軽く手を振って、走って行った。
「新一?どうしたの?怖い顔して」
「―――オメエさ、あいつのことどう思ってる?」
 蘭の質問には答えず、新一は逆にそう聞き返した。
「どうって・・・?良い人だと思うけど・・・」
「それだけ、か?」
「ん?うーん・・・なんか、親しみやすいよね、木村君って。悩み事とかなんでも聞いてくれそうだし・・・。それに、かっこ良いし。ね、木村君って好きな子とかいるのかなあ?」
 いきなりドキッとするようなことを言われ、新一は動揺してしまう。
「な、何でそんなこと聞くんだよ?」
「うん?園子がね、前に言ってたの。木村君てかっこよくて良いなあって。彼女いなかったらアタックしちゃうのになんて言ってたから」
 のんきにニコニコしながら言う蘭を見て・・・新一はホッとしながらも、なんとなく木村に同情してしまうのだった。
 ―――これだからなあ・・・木村、オメエこそはっきり告んねえと蘭にはつたわらねえぜ?・・・ま、でも、今んところ蘭にその気はねえみたいだし・・・。
「遅くなっちまったけど、これからどこか飯でも食いに行くか?」
 と、新一が笑って言うと、蘭はパッと輝くような笑顔を見せて、
「うん!」
 と頷いたのだった・・・。

 ――――今はまだ、このままで良い・・・。そのうち・・・

 蘭の零れるような笑顔に見惚れながら、新一はその思いを胸にしまった。
 いつか必ず蘭に伝えようと心に決めながら・・・。




fin
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この作品はキリ番4.000をゲットして頂いたぷい様のリクエストによる作品です。
はじめはショートストーリーにしようかと思ってたんですけど・・・。木村君というオリキャラが妙に気に入ってしまい、長くなってしまいました。
 
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前途多難・おまけ ~新蘭+園~

Category : novels(コナン)
「あ、そうだ、蘭」
 新一は、蘭の家の前まで来ると、急に何か思い出したように足を止めた。
「何?」
「あのさ、これ・・・」
 と言いながら新一はポケットの中を探り、小さな箱を取り出した。
「?何?これ」
 蘭は不思議そうな顔をしてそれを受け取った。
「開けてみろよ」
「う、うん」
 蘭は、そっとその箱を開けた―――。中には可愛いピンクのビロード地のハート型の箱が入っていた。
 蘭の瞳が、驚きに輝く。そのハートの箱の中から出て来たのは、同じくハートの形をしたピンクトルマリンの指輪で・・・。シルバーのリングにちょこんと乗ったそれは愛らしく、キラキラと輝いていた。
「新一、これ・・・」
「今日さ、オメエらが映画見てる間に買って来たんだ。―――今はこんな安もんだけど、そのうち―――俺がもっと自分に自信持てるようになったら、ちゃんとしたやつ買うから・・・。それまで待っててくれよな」
 と新一が言うと、蘭はその大きな瞳に涙をため、新一を見上げふわりと微笑んだ。
「うん・・・ありがとう新一・・・。すっごく嬉しい。大事にするよ、これ」
 新一はなんだか恥ずかしくなって一つ咳払いすると、蘭の手からその指輪を取り蘭の右手の薬指にそれをはめた。
「今はまだ、こっちな。―――こっちも予約しとくから・・・他のやつの予約は受けるなよ?」
 と、蘭の左手を取りながら言うと、蘭も照れたように笑い、頷いた。
 二人の視線が絡み合い、自然にその顔が近づいていく。もう少しでその唇が重なろうという時―――、
「くぉら―――!テメエら何してやがる!!」
 と、突然頭の上から声がして―――驚いて見上げると、2階の窓から、鬼のような形相をした小五郎の姿が―――
「お、お父さん!どうして・・・」
「今園子から電話があってなあ、送り狼が蘭を送っていくから気をつけろって言われたんだよ!新一!貴様人の娘に何しようとしやがった!」
「い、いや、その―――」
 ―――園子のやつ~~~!
「お父さん!新一は送ってきてくれただけよ!」
「だったらもう用は済んだだろ?とっとと帰れ!いいな!」
 というと、小五郎は頭を引っ込めた。
 2人は同時に溜息をつくと、顔を見合わせた。
「ごめんね、新一」
「蘭が謝ることはねえよ。―――んじゃ、俺帰るよ・・・。また明日な」
「うん。おやすみなさい」
「おやすみ」
 新一は蘭の頭をそっと撫でると、ちょっと手を振り、歩き出した。そして―――

 ―――園子のやつ、見てろよ。オメエにはゼッテ―負けね―からなっっ

 と、握りこぶしを固めつつ、誓ったのだった・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 というわけで先日のお話の続きでした♪
 ちょっと短めですが・・・たまにはあっさりでいいでしょう(^^)

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前途多難 ~新蘭+園~

Category : novels(コナン)
 園子は校門を入るとすぐに2人の姿を見つけた。
 ―――おーおー、相変わらず夫婦してるわねー。ったく、新一くんったら長い間姿見せないで、帰ってきたと思ったらずっと蘭にべったり・・・。この園子様を差し置いて!・・・けど知ってるんだからね。新一君が、まだ蘭に告白できないでいること・・・。大体あやつは事件って言うと一も二もなく飛び出してって、蘭との約束何回すっぽかしたのかしら。蘭は健気に何もいわず待ってるけどさ・・・。そのくせ、他の男がちょっとでも蘭に近づこうものなら目の色変えて邪魔するのよね。全く分かりやすいやつ。クラス中の誰もがそれを知ってて、知らないのって多分蘭くらいよ?あの子はホント、自分のことに関して鈍いから・・・。はっきり言ってあげなきゃわかんないのよね。でもまあ、そこが蘭のいい所でもあるんだけど・・・。ホント蘭ってかわいいのよ。あやつなんかにゃもったいない!で、今まで散々蘭を泣かせた罰として、あやつに告白のチャンスを与えないことを決めたのよ。フフフ、見てらっしゃい。


「ら~ん、おはよ~!!」
 園子は、新一と蘭の元へ駆けて行った。
 蘭が振り向き、ニッコリ笑う。
「おはよう、園子」
 その横で、新一がまたかという顔をする。
「あら、何よ新一君。何か言いたそうな顔してるわね」
「別に。毎朝よく会うなと思って」
「当たり前じゃない。毎日同じ時間に出てるんだからさ。何よ、蘭とは毎朝一緒に登校して来るくせに、わたしには会いたくないってわけえ?」
「んなこたァ言ってねえだろ?」
 2人のやり取りを見て、蘭がクスクスと笑い出す。
「なんだよ蘭」
「何よ、蘭」
「ん―ん。2人とも仲良いなあと思って。2人の会話って聞いてて面白いよ」
 蘭ののんきな言葉に、2人同時に溜息をつく。
「何?なんかわたし変なこと言った?」
 蘭がキョトンとして首を傾げる。
 ―――か、可愛い・・・。
 新一が抱きしめたい衝動に駆られたその時、園子がガバッと、蘭に抱きついた。
「キャっ、そ、園子?」
「んもう、蘭ってば可愛すぎ!いいのよ、あんたはそのままで!」
「おいっ、園子、離れろよ!」
 先を越され、一気に機嫌が悪くなる新一。そんな新一に向かって、園子はぺろっと舌を出し、
「い・や・よ。蘭はわたしのもの♪」
「て、テメ―――」
 新一がさらに何か言おうとしたとき、園子が蘭に抱きついたまま蘭に言った。
「ねェ、蘭。今度の日曜の約束覚えてる?」
「日曜?」
 と、顔を顰める新一。
「そ。蘭と映画見に行く約束してるのよ。ね、蘭」
「うん。覚えてるよお、もちろん。わたしだって楽しみにしてたんだから」
「ちょ、ちょっと待てよ。俺聞いてねーぞ、そんな話」
「え?言ってなかったっけ?」
「聞いてね―よ!」
「新一くん、ここんとこ事件で呼び出されること、多かったからねェ」
「うん。あのね、ずっと前から約束してたの。この映画が公開されたら2人で見に行こうねって」
「って、俺は!?」
「あら、新一くんはダメよ」
「なんで!!」
「だァって、またいつ事件で呼び出されるかわかんないしィ、聞けばあんた、いつも映画の途中で寝ちゃうらしいじゃない」
「そ・・・それは・・・」
「それじゃ、一緒に見てる蘭がかわいそうでしょ?だから私と行くの。ね、蘭?」
「う、うん。ごめんね、新一」
「・・・・・」 
 新一は何も言えずに園子を睨みつけたが、園子はしてやったりという顔をしてニカッと笑うと、蘭の腕をとった。
「さ、もう予鈴鳴っちゃうよ、行こう、蘭。
「うん」
 さっさと行ってしまう2人を見送って・・・
 ―――園子のヤロォ・・・。今度の日曜は、蘭と2人で海にでも行って告白しようと思ってたのに・・・。くそォ!
 コナンから新一の姿に戻って2ヶ月。やっと元の姿に戻ることが出来たっていうのに、なぜか蘭と2人きりになろうと思うと邪魔が入り、告白できずにいた。
 ―――まあ、事件ってーと、そっちにかかりっきりになっちまう俺もワリーんだけど・・・。
 そして、その日もやはり目暮警部に呼び出され、蘭のことを気にしつつ学校を後にする新一だった・・・。
 

 それから、事件がようやく解決したのが土曜日の夜。思いの外時間がかかってしまい、さすがに新一も疲れていた。
 ―――あ―、蘭に会いて―。蘭の声が聞きて―・・・。けど、もう夜中だしな・・・。そういや明日は園子と映画見に行くっつってたよな。ってことは、また蘭に告白できねー。くっそー、告白できなくってもとりあえず会いて―よ・・・蘭・・・。
 そんなことを思いながら、新一は眠りに落ちていった・・・。
 

 そして翌日。疲れていたにもかかわらず、8時に目が覚めた新一。原因は、いやな夢を見た所為で・・・。
 ―――最悪な夢・・・。何で園子が男になってて、蘭と付き合ってんだよ。蘭の奴、うっとりした目で園子を見やがって・・・。
 夢の中の2人に腹を立てつつ、新一は起き上がると決心した。
 ―――ゼッテ―邪魔してやる!蘭は俺のもんだっ。
 さっさと着替え身支度を終えると、家を出て蘭の家へと向かったのだった。
「あれえ?新一?どうしたの?」
 蘭はもうすっかり身支度を終えていた。
 赤いカットソーにデニムのスカートというシンプルだが、スタイルの良い蘭には良く似合っていた。
 大きく開いた胸元と、すらりと伸びたきれいな足に思わず目を奪われる。
「―――オメエ、その格好で行くのか?」
「え?うん。変?」
「変じゃねーけど・・・」
「で、新一はどうしたの?」
「―――俺も行く」
「え?だって―――」
「後ろからついてくから。んで、映画終わるまで外で待ってる」
 いつになくムキになっている新一に、蘭は目をぱちくりさせていた・・・。


 「ちょっとォ、なんで新一くんが来るのよォ」
 駅で待っていた園子は、新一を見た途端仏頂面でそう言った。
「っるせーな。いいじゃねーかよ」
「今日はね、珍しく時間あるみたいなの。ダメかな?園子」
 蘭が伺うように園子を見る。蘭には弱い園子。ハアッと溜息をつくと、
「・・・しょうがないわね。いいわよ、じゃあ」
 と言った。
「ホント?ありがとう、園子」
 ぱあっと嬉しそうに笑う蘭に見惚れる2人。
「・・・やっぱあんたにゃもったいないわ」
 ボソッと呟く園子を、ジロッと睨む新一。
「さ、行こう蘭」
 さっさと蘭の腕を取り先に行く園子。新一は何も言わず、その後をついていった。こうやって後ろについて歩くのも、全く意味がないわけではない。その辺のナンパ野郎が近づこうとすると、新一が後ろから“近づくんじゃね―”という怒りのオーラを発し、ナンパ男をけん制しているのだ。その甲斐あって、1度もナンパされることなく映画館にたどり着いたのだった。
「ね、新一、せっかくだからいっしょに見ない?」
 と、蘭が新一に言う。園子が伺うようにジロッと新一を見ていた。
「いや、俺昨日あんま寝てねーし、また寝ちまうと思うから外にいるよ。映画終わったころにまた来るからよ」
 と、新一が穏やかに言った。
「そォ?じゃ、行って来るけど・・・」
「ああ、行ってこいよ」
 いやに機嫌の良い新一に、怪訝な顔をする園子。
「な―んか企んでない?新一君」
「何の事だよ?別に何も企んでねーぜ」
「―――ふーん・・・。ま、いいわ。蘭、行きましょ」
 2人が映画館の中に入っていくのを見送ってから、新一は近くのデパートへ入って行った。もちろん、新一が映画を見ずに残ったのも考えあっての事。もうこうなったら、絶対今日中に告白してやろう、という気になっていた。告白して、付き合ってしまえば園子も今までのように邪魔したりしないだろう・・・多分。


 「―――な―んか怪しいなァ」
 パンフレットとジュースを買い、2人で席に落ち着くと園子が言い出した。
「え?何が?」
「あやつよ。あれはぜーっったい何か企んでるわよ」
「新一のこと?そんなこと、ないと思うけどなあ・・・。園子の考えすぎだよ」
「甘い!蘭ってば甘やかしすぎよ!」
「そ、そんなこと・・・」
「大体、今まで散々蘭を悲しませてきたんだから、もうちょっと痛い目見たっていいのよ」
「園子ってば・・・。私、もう平気よ?新一だって、きっとすごく辛かった筈だもん。それでも、わたしのそばにいてくれた。わたしの元に帰って来てくれた。それだけで充分だよ」
 そう言って蘭はきれいに、暗い中でも輝くように、本当にきれいに微笑んだのだ。園子はホウッと溜息をつくと、
「―――ま、あんたがそう思ってんなら仕方ないけどさ・・・。ホント、あやつは幸せモノよね」
 と言ったのだった。
 本当は蘭の気持ちは痛いほど分かっていた。でも、蘭の親友として新一がいなかった間、どんなに蘭が新一に会いたがっていたか、その気持ちを隠して耐えていたか、それを知っているだけにあっさりと新一が蘭とくっついてしまうのが、許せなかったのだ。


 2人が映画を見終わり、外に出るとさっき別れた時と同じ場所に、新一は立っていた。
「新一、お待たせ」
「よお、面白かったか?映画」
「うん、とっても。新一は?何してたの?」
「俺はその辺ぶらぶらしてたよ。で?この後どうするんだ?」
「この後はお昼ごはん食べに行って、それから買い物!実は今日、わたしの好きなブランドショップでバーゲンやってるのよ。で、それに行くのよね?蘭」
「うん」
「ふーん。じゃ、俺も付き合うよ」
 新一はニッと笑うと、また2人の後について歩き出した。その間にも、ナンパ男たちを威嚇しながら・・・。
 ―――ふん、見てろよ、園子。今日はゼッテ―蘭から離れね―からな。
 実は今日は、新一の携帯電話の電源は切られていたのだ。今日は、何が何でも告白して蘭と恋人同士になるために・・・。
 
 その後3人はパスタレストランに入り、昼食を食べてから、園子のお気に入りのブランドショップへと向かった。店内で2人が買い物をしている間、また新一は外で待っていた。店はガラス張りになっているので、中の様子は良く見えた。
 園子が、あれもこれも手に取り、試着しては戻したり、悩んだりしている。
 ―――忙しい女だな。
 蘭はというと、やはり何着か手にとって見ては、よく見比べ悩んで戻したり、また手に取ったりとやっている。
 ―――・・・可愛いなあ、やっぱ・・・。
 眉間に皺を寄せて悩んでいる姿も、新一から見れば可愛くて仕方がないのだ。
 園子がなにやら手に持って、蘭の側にやって来た。蘭にそれを渡し、試着室を指差す。どうやら何か試着させようとしているらしいが・・・。園子のニヤニヤした顔に、新一は何かいやな予感がしていた。しばらくして、試着室から蘭が顔を覗かせる。なんだか頬を赤らめ、困ったような顔をして・・・。
 ―――なんだ?
 新一が不思議に思って見ていると、園子が無理やり試着室の扉を大きく開け放った。
 ―――!!な・・・なんだありゃあ!
 新一は思わず目をむいた。
 蘭が着ていたのは黒い光沢のあるワンピースで・・・。ハイネックだが、胸の谷間のところが大きく
丸く切り抜かれたようなデザインで、裾にはかなり深くスリットが入っている。
 シンプルだが、かなり大胆なそれを着た蘭は、超絶に色っぽく・・・。
 新一はぽかんと口を開けたまま、しばらく動くことが出来ずにいた。
 ふと、蘭がこちらを見た。新一ははっと我に返る。園子もこちらを見てニヤニヤしている。気付くと、通りすがりの男たちの何人かが、足を止めて蘭の姿に見惚れていた。
 新一は慌てて店に入り、急いで試着室の扉を半分ほど閉めた。
「し、新一?」
「ちょっとォ、何すんの、新一君」
「バーロー、オメエ何考えてんだ、こんなもん蘭に着せやがって」
「あら、似合ってたじゃない。蘭ってスタイル良いからさあ、こういうの似合うのよね。どう?今度あれ着てうちのパーティ出ない?」
「え・・・」
「ぜっっったいダメだ!!」
 新一の剣幕に、園子は仕方ないといった感じで肩を竦める。
「分かったわよォ。良いと思ったんだけどなあ。パーティの華になること間違い無しなのに」
「るせー。蘭、着替えろよ」
「あ、うん」
 蘭は試着室のドアを閉めると、自分の服に着替え、出てきた。
「―――あーあ、もったいない」
 と、園子はまだぶつぶつ言っている。
「あんな大人っぽいの、まだわたしには早いよ」
 と、蘭は苦笑いしている。
 ―――すげー似合ってたけど・・・あんなもん着た蘭、もったいなくって人前になんか出せねーよ・・・。
「で?何にするかまだ決まんねーのか?」
 と新一が聞くと、蘭は
「あ、あのね、良いなあと思ったのはあるんだけど、迷ってて・・・」
 と言いながら、たくさん並んでいる服の中から、赤いワンピースを2着持ってきた。
「この2つね、色は同じなんだけど、デザインがちょっとちがくて・・・。ね、どっちが良いかなあ?」
 蘭が持ってきたのは、1つはボートネックにノ―スリーブの特に飾りのないシンプルなもの。ミニ丈で、ちょっとボディコンシャスなデザインだ。もう1つはキャミソール風のワンピースで、胸の部分の
切り替えでギャザーが寄せてあり、その真ん中に白いリボン。そしてミニ丈の裾には白いレースがあしらわれた可愛いデザイン。
「なんか、色は同じでも、タイプが全然ちがくないか?」
「うん、そうなの。どっちも良いんだよね。こっちはシンプルで大人っぽいし、こっちは可愛くって・・・。どっちにしよう?」
 真剣に悩むその姿が可愛くて、新一はクスッと笑った。
「もうっ、笑ってないで新一も考えてよー」
「どっちも似合うと思うぜ」
「え・・・」
 パッと蘭の頬が赤く染まる。
「バーゲンなんだろ?2つとも買っちまえば良いじゃねーか」
「そーよ、蘭!買っちゃえ、買っちゃえ!」
「でも・・・」
 新一は、まだ悩んでいる蘭の手から片方のワンピースをひょいと取り上げると、さっさとレジの方へと歩いていく。
「え?ちょ、ちょっと新一?待ってよ」
「こっちは俺が買ってやるよ」
「ええ?そんなの、悪いよ」
 蘭が驚いて目を見開く。
「良いんだよ。いつも俺、約束ドタキャンしちまってるからな。これはそのお詫び―――。すいません、これください」
 新一は、蘭が止めるのを無視して、さっさと会計を済ましてしまった。
「ほら、オメエも買えよ」
「あ、う、うん」
 新一に急かされ、蘭はもう1つのワンピースをレジに出した。
 ―――ホントは両方買ってやっても良かったんだけど・・・それじゃ、こいつが気にしそうだしな・・・。
「ドタキャンのお詫びねェ・・・。それならもう2、3着買ってもらっても良さそうだけど」
 と、園子が横で呟いた。
「―――蘭が気にすんだろ?蘭がよけりゃ、いくらでも買ってやるよ」
「ふふん、大きく出たわね。さてはこのままピッタリついて回って、わたしと別れたら速告白、なんて考えてない?」
 ニヤッと笑って園子が言う。一瞬ドキッとした新一だが、そこは得意のポーカーフェイスで乗り切る。
「んなこと考えてね―よ。せっかくの休みだし、呼び出しもないから付き合ってるだけだよ」
「ふーん・・・?」
 探るような目つきで、じっと新一を見ている園子。そこへ、会計を済ませた蘭がやって来た。
「ねェ、園子は何買うか決まったの?」
「それがさ~、いまいち気に入ったのがなくって・・・。来週新作が出るのよね。そのときまた来ようかなって」
「そうなんだ」
「んじゃ、行こうぜ。この中、人が多くてかなわね―よ」
 と新一が言って、さっさと店を出て行く。
「な~によ、勝手に入ってきたくせに」
 新一に聞こえないよう、ボソッと言った園子の言葉に、蘭は苦笑いしながら店を出た。
「んで?これからどうすんだ?」
「そ~ね~。あ、そういやこの近くにおいしいケーキ屋さんが出来たのよね。行ってみない?」
 と園子が言うと、甘いものが苦手な新一が、思わず顔を顰める。
「ケーキ~?」
「あら、行きたくなければ別に帰っても良いのよ、新一くん?」
「園子ってば・・・。でも、どうする?新一」
「―――行くよ。甘さ控えめなやつとかあんだろ?」
「そうだね、多分。じゃ、3人でいこ」
 園子と新一の水面下の攻防戦に全く気付かない蘭。ニコニコ嬉しそうに笑いながら先に立って歩き出す。
「今日はずいぶんご機嫌ね、蘭。」
「ん?だって・・・3人で出かけるのなんか久しぶりでしょ?なんか嬉しくって・・・。ね、また今度3人でトロピカルランド行こうよ」
 素直な蘭の笑顔に、2人はちょっと顔を見合わせ・・・。
「そうね」
「ああ、いいよ」
 と、ともにニッコリ笑って頷いた。
 ―――蘭には、敵わない・・・。
 お互い、そんな気持ちで。


 それから3人は、ケーキ屋さんでケーキを食べ(ちなみに園子が3個、蘭が2個、新一がかろうじて1個食べた)、その後は本屋、雑貨や、ゲームセンターなどを渡り歩き、気がつくと外はもう暗くなっていた。
「あ~あ、もう1日が終わっちゃう。早いなあ。休みの日が終わるのは」
 と、園子がしみじみと言ったとき、園子のバッグで、携帯電話の音が鳴り出した。
「―――は~い。―――あ、お母様・・・。え?―――え~?これから~?―――は~い、分かりました」
「どうしたの?園子」
「なんか、急にお客様が見えて・・・これから外へ食事しに行くから、すぐに帰って来いって」
「あ、そうなんだ」
「ごめんね、蘭。夕食も一緒したかったのに・・・」
「仕方ないよ。気をつけて帰ってね」
 園子は、思いっきり後ろ髪をひかれながらも、通りでタクシーを止めると、乗り込んでいってしまった。園子に手を振る蘭の後ろで、新一はポーカーフェイスを保ちながらも、心の中で小さくガッツポーズを決めた。
 ―――おっしゃあ、これで邪魔者はいなくなったぜ!チャーンス!
「ねェ、新一、これからどうする?どこかで食べてく?それとも帰る?」
 蘭が新一に言う。
「え?ああ、そうだな。どっちでも良いぜ。蘭はどっちが良い?」
「うーん・・・。じゃあ、帰ろうか。新一の家で、何か作るよ。こないだ行った時、冷凍庫に鶏肉があったし」
「でも、疲れてねーか?良いんだぜ、外で食ってっても」
「新一がそうしたいならそうするけど・・・。疲れてるのは新一もでしょ?」
 と、蘭がニッコリ笑う。そんな蘭の優しさが嬉しくて、新一も笑った。
「―――サンキュ。じゃ、帰るか」
「うん」
 2人は、仲良く肩を並べて歩き出した。


 新一の家につき、蘭が作ったからあげとスープを2人で食べる。
「味、どう?急いで作ったから、いつもと違うかな」
 蘭が心配そうに新一に聞くが、新一はから揚げをほおばりながら、
「うまいよ!いつもとおんなじ。オメエの作る料理はホント、うめ―よ」
 と、笑顔で言う。蘭は少し照れながらも嬉しそうに笑った。
 夕食を食べ終わり2人で片付けをした後、コーヒーを入れ、リビングで寛ぐ。
「今日は、楽しかったね」
 と、蘭がコーヒーを一口飲んで言った。
「ああ、そうだな。―――蘭、あのさ」
「なあに?」
 急に真剣な口調になった新一を、蘭が不思議そうな顔で見る。
「俺―――ずっとオメエに言いたかったことがあるんだけど・・・」
「うん?」
「俺は―――オメエが、好きだ」
 蘭の瞳が、大きく見開かれる。
 ―――やっと言えたぜ!
「好きだよ、蘭。世界中の誰よりも、オメエのことが―――」
 真っ直ぐに、蘭の瞳を見つめる。蘭は、目を見開いたまま、固まってしまっている。
 そうしてどのくらい時間がたったか・・・。とうとう痺れを切らした新一が、口を開く。
「蘭?聞いてっか?」
「―――へ?あ、あ、うん、あの」
 漸く我に帰った蘭の顔が、見る間に真っ赤に染まる。
「蘭―――返事が、聞きてえんだけど?」
 新一が、優しく促す。
 蘭は、真っ赤になりながらも、その口を開いた。
「わ、わたしも・・・わたしも、好きだよ。新一が・・・大好き・・・」
 言った瞬間、蘭の大きな瞳から、涙が零れ落ちた。
「ら、蘭?」
 新一が慌てて蘭の隣に来て座る。
「おい、泣くなよ」
 優しく肩を抱いてやると、蘭は涙をぬぐいながら、新一を上目遣いで見つめた。
 新一の胸がどきんと音を立てる。
「だって、嬉しいんだもん・・・。新一は、わたしのこと幼馴染としか思ってないんだと思ってたから・・・」
「バ、バーロ、そんなわけねーだろ?好きでもねーやつに“待ってて欲しい”なんていわねーよ」
「だって・・・戻ってきてからだって、何も言ってくれなかったし・・・」
「そ、それは・・・俺だって言いたかったんだけど、なんかタイミング逃しちまってて・・・。大体、
2人きりになれること、あんましなかっただろ?学校じゃ園子がいつもそばにいたしよ」
「―――そうだっけ?」
「そーだよ!・・・ま、俺が事件で呼び出されて行っちまうからってのもあるけどよ」
 と新一が言うと、蘭はクスッと笑って、
「そっちのほうが多かった気がするけど?」
 と言った。
「う・・・。―――ごめんな、待たせて」
「ううん。すごく嬉しいよ。新一がそう言ってくれて」
 蘭が優しく、花開くように笑う―――。
「蘭・・・」
 新一の顔が、そっと近づいて・・・蘭も目を閉じ、2人の唇が触れようとした、その瞬間―――
『Prurururururu・・・』
 まるで狙いすましたかのように、電話が鳴り出した。
 蘭が、パッと体を離す。
 ―――!んだよ!良いとこだったのに!
 一気に最悪な気分になった新一は、大股に歩いて行くと、乱暴に電話の受話器を取った。
「―――はい」
 思いっきり不機嫌な声で電話に出る。
『あら、やっぱり家に帰ってたのね?蘭も一緒?』
 と言ったのは、園子だった。
「―――オメエな・・・」
『で?告白は出来たの?』
「余計なお世話だよ!他に用がねえなら切るぞ?」
『何よお、せっかく2人きりにしてやったのに。告白したの?してないの?』
「―――したよ」
『―――な―んだ、しちゃったのか。つまんない。せっかく電話で邪魔してやろうと思ったのに。1歩遅かったか』
 ―――充分邪魔してんだよ!!
「で?用はそれだけかよ?」
『あん、そう邪険にしないでよ。これでもわたし、心配してんだからね。蘭の親友として』
「そうかよ」
『今まで散々待たせたんだから、蘭のこと大事にしてやってよね』
 新一は、その声にハッとした。今までのからかうような口調とは違う、本当に蘭を心配している園子の声に・・・。
「―――ああ、分かってるよ」
『本当でしょうね?もしまた蘭を泣かせるようなことしたら、わたしが蘭を貰いますからね!』
「オメーな・・・」
『約束、してよね?絶対泣かさないって』
「ああ、ゼッテ―泣かさね―よ」
『じゃ、蘭に代わってくれる?』
「へ?あ、ああ」
 新一は、蘭に受話器を差し出した。
「園子から」
「え?園子?」
 蘭が不思議そうな顔をして、受話器を受け取った。
「もしもし、園子?―――うん―――うん―――ありがとう。―――え?どうして?―――でも、そんな―――うん―――分かった、じゃあ、そうする―――うん、じゃ、また明日」
 電話を切ると、蘭はちょっと考えるようなそぶりを見せてから、新一を振り返った。
「?園子の奴、なんだって?」
 蘭の様子を不思議に思いながらも新一が聞く。
「うん、新一とうまくいって良かったねって。それから―――」
「それから?」
「あの、ね・・・今日はもう帰りなさいって・・・」
 言いづらそうにそう言う蘭。
「な、なんだよ?それ!」
「その・・・あんまり2人でいると、新一が我慢できなくなるだろうからって・・・どういう意味かわ
かんないんだけど、わたしのためだからって・・・」
 ――――ああああんのあま~~~っ余計なこと言いやがって・・・!!
 怒りのあまりフルフルと震えだした新一に、ただごとでないことを感じ取ったのか、蘭は、そろそろと後ずさりながら、
「え、と、じゃあわたし、帰るね。もう遅いし・・・お父さんも心配するから・・・」
 と言って、ソファに置いてあったバッグを取り、出口に向かおうとした。
「―――待てよ」
 新一の低い声に、思わずビクッとして立ち止まる。
「な、何・・・?」
 新一は、蘭に背を向けたまま1つ大きく溜息をつくと、
「送ってくよ」
 と言って、振り向いた。蘭はちょっとホッとして、ニッコリ笑うと、
「うん。ありがとう」
 と言った。新一は部屋の隅に置いてあった、今日買った蘭の服を手に取ると玄関に向かった。


 「どうしたの?新一。さっきから溜息ばっかり」
 蘭は、帰り道、口数が少ない新一を心配して言った。
「―――前途多難だな、と思ってさ」
「?何が?」
「きっと、これからも園子の奴がいろいろオメエの心配して俺たちにくっついて来るんだろうな、と思ってよ」
 と新一が言うと、蘭は嬉しそうに笑って、
「園子、本当に心配してくれてるんだよね。わたしって、良い友達もって幸せだよね」
「はは・・・そだな」
 新一は、引きつったような笑顔を浮かべて言った。
「園子がいてくれたから、わたしは学校でも元気でいられたんだもん。感謝してるの。本当に」
 新一は、蘭の顔を見つめた。
「新一がいて、園子がいて・・・素敵な友達と・・・素敵な恋人に会えて、すっごく幸せ」
 頬を赤く染めて、恥ずかしそうに呟く蘭。新一はそんな蘭が愛しくて・・・
 ―――園子がいるから、蘭が元気でいられるってのは事実だしな・・・。ま、多少のことは目ェ瞑ってやるか・・・。
 そう思うことにして、愛しい恋人の肩を抱いて、幸せをかみ締めながら歩くのだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この作品は、わたしの探していた小説を探してくださったミント様のリクエストによる作品です。ちょっと書いたことのない組み合わせで、”できるかな?”って感じで始めたんですけど・・・何とか出来上がりました!イメージと違っていたらごめんなさい~。
 園子は私も好きなキャラなので、またそのうち機会があれば書いてみたいです。 
 このお話にはおまけのお話がありますので、また後日こちらでアップしますね♪


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ス パ イ ~コ蘭~

Category : novels(コナン)
 その会話を聞いてしまったのは偶然だった。
 クスクスと忍び笑うような蘭の声。
「・・・うん、わたしは大丈夫よ。あなたこそ大丈夫なの?」
 ―――誰と話してんだ?
 コナンは蘭の部屋のドアへ耳を寄せた。
 少し隙間が空いていて、電話で話しているらしい蘭の声が聞こえる。
「―――彼女に知られたらまずいんじゃない?わたしと一緒にいるの―――ホント?―――大丈夫、ちゃんと行くから。あなたも、遅れないでね」
 ―――この会話、まさか・・・
 コナンは自分の耳を疑った。聞こえてくる会話から察するに・・・相手は、男だろう。しかも“彼女”がいる男・・・。その男と蘭が、待ち合わせの約束―――?
 コナンは今すぐドアを開けて、蘭に詰め寄りたい気持ちに駆られたが・・・
「―――うん、じゃあ明日ね」
 蘭が電話を切る。そして、こちらへ向かってくる気配。コナンは、慌ててその場を離れた。
 リビングに行き、テレビを点け、そこに座る。ずっとそこにいたような振りをして・・・。
「―――あ、コナンくん。お腹空いたでしょう?今から夕飯作るからね」
 ニッコリ笑って、蘭が台所に消える。
 コナンはその姿を黙って見送っていたが―――。ふと立ち上がり、台所へ行く。
「蘭ね―ちゃん」
「ん?なあに?」
「明日の日曜・・・何か予定ある?」
 コナンの言葉に、蘭は手の動きをぴたっと止め、ビックリしたようにコナンを振り返る。
「ど、どうして?」
「ん―?せっかくの日曜だし、蘭ね―ちゃんとどっかに遊びに行きたいなーと思って」
 と、コナンが言うと、蘭は困ったように視線を彷徨わせた。
「ご、ごめん、コナンくん。明日はちょっとその・・・そ、園子と約束しちゃってるから・・・」
「・・・ふーん。そうなんだ。じゃあ、仕様がないね・・・」
「ホントに、ごめんね」
 すまなそうに謝る蘭に、ちょっとだけ笑って台所から出たコナンは・・・
 ―――蘭の奴・・・あんな嘘ついて、一体誰と会うつもりなんだ!?
 コナンの顔は、今や新一のそれになっていて・・・
 ―――ゼッテ―突きとめてやる!!
 と、拳を握り締め、誓うのだった・・・。


 日曜日、蘭は昼過ぎにいそいそと出かけて行った。それを見送ってから、コナンも出かける支度をする。
「―――なんだ、オメエもどっか行くのか?」
 玄関で靴を履くコナンを見て、小五郎が声をかける。
「うん。玄太達と約束してるから―――。じゃあ行って来ます!」
 慌しく出て行ったコナンを見送って。
「?あんなに慌てて、どうしたんだ?あいつ」
 と、首を捻ったのだった。


 ―――いたいた。
 駅へと続く道、コナンはやっと、蘭の姿を捉えた。蘭は何も気付かず、歩いている。
 ―――誰と会うつもりなのか、ゼッテ―確かめてやるからな。
 コナンは密かに闘志を燃やし、蘭に見つからないよう注意しながら、その後をついて行った。
 やがて蘭は電車に乗り、渋谷の駅で降りた。そして、周りをきょろきょろ見回していたが、まだ相手は来ていないらしく、そのままそこに立っていたが・・・
 1人の男が蘭に近づくと、声をかけた。
 ―――あいつか?
 茶髪で長髪のその男は、ニヤニヤしながら蘭に何か言っている。蘭は戸惑ったような顔をして、1歩身を引きその男に何か言っている。どうやら只のナンパのようだった。
 男が、蘭の肩になれなれしく手を置いた。
 ―――ヤロォ!!
 我慢できずにコナンが飛び出そうとしたそのとき、1人の男が蘭に近づき、ナンパ男の腕を掴んだ。
 ―――あれは・・・?
 蘭が、その男の顔を見てホッとしたように笑った。
 ―――あいつか・・・
 男がナンパ男に何か言う・・・と、ナンパ男はぶつぶつと何か言いながらも、その場を去って行った。
 蘭とその男が、何か話しながら一緒に歩き出す。コナンも、気付かれないようにその後について行った。
 コナンは、正直ちょっとビックリしていた。―――その男は、顔も背格好も、なんとなく新一に似ていた。
 ―――一体誰なんだ?あいつ・・・なんか、どっかで見たような気もするけど・・・。俺に似ているからか・・・?


 一方、蘭のほうは・・・
「時間通りだね」
 と言って蘭がニッコリ笑うと、その男も笑って、
「女の子を待たせちゃ悪いからね」
 と言った。この男・・・名前は黒羽快斗。蘭と同じ高校2年生。そして・・・何を隠そう、“怪盗キッド”という別の顔を持っている。そして、蘭はそれを知っているのだった・・・。
「さ、行こうか」
「うん。―――どの辺に行くか、考えてきた?」
「一応は・・・ね」
「そう。―――ね、彼女にはばれなかった?」
「ばれてないよ。何、心配してんの?」
 快斗が、ニッと笑って聞くと、蘭はまじめな顔で、
「当たり前でしょ?わたしの所為で2人の仲がおかしくなったら、いやだもの」
「―――っつーか、俺達まだ付き合ってるわけじゃねーぜ?仲ってほどのもんじゃ・・・」
「でも、好きなんでしょ?」
 ニコッと悪戯っぽく微笑んで蘭が言うと、途端に快斗の顔が赤くなる。蘭はクスクス笑って、
「彼女のことになると、ポーカーフェイスが崩れちゃうのね?快斗くん」
 と言った。快斗は言い返す言葉もなく、横目でチロッと蘭を睨む。
「―――そーいうこと言ってて良いわけ?蘭ちゃんだって、俺と2人で出かけたこと、あいつに知られたらまずいんじゃないの?」
 と、快斗が言うと、蘭は笑うのを止め、俯いてしまった。
「―――知られること、ないもの。あいつは“厄介な事件”にかかりきりで・・・。それに、別にわたしが誰といても気にしないと思うし」
「そんなことねーと思うけど・・・」
 快斗はまずいこと言っちまった、と思ったが後の祭りである。あいつ―――とは、もちろん新一のこと。快斗と蘭が出会ったのは、以前怪盗キッドが現れた船上パーティでのこと・・・。快斗はキッドとしてそこへ行き、蘭に変装した・・・。そのとき、幼馴染である青子と蘭の姿が重なり、不覚にも一瞬、顔を見られてしまったのだ。
 だが、蘭はそのことを誰にも言わなかった。快斗は不思議に思ったが、はっきりとは見られなかった
のだと思い、安心していたのだ。それが・・・
 渋谷で偶然会った蘭。快斗は青子と一緒で、そちらには気付かない振りをしていたのだが、蘭は快斗の方を見ていた。それに気付き、チラッと蘭を見て―――彼女が、自分を覚えていることを確信した。
 そして、快斗は蘭に会いに行った。
「どうして、俺のことを黙ってる?」
 そう聞くと、蘭はちょっと寂しそうに微笑んだ。
「だって、新一に似てるから」
「新一って・・・工藤新一?」
「うん。あなた、新一にそっくりなんだもん・・・。初めて見た時、ビックリしちゃった」
 フフフと笑った後、蘭は快斗をまっすぐに見た。
「新一に・・・似てるあなたが、悪いことしてるって思いたくないの。何か深いわけがあるはずだって、そう思いたいの・・・。只それだけよ」
 その後、2人は時々会っていたのだ。もちろん誰にも知られないように・・・。お互い、知り合って間もないのになぜか、気持ちが通じ合う・・・。本当の気持ちを素直に言えるようになっていた。
「でも快斗くんも律儀よね。キッドとして彼女にお礼がしたい、なんて」
 蘭が、快斗にしか聞こえないように言った。
「そりゃ・・・そのくらいは、な。仕事の後、不覚にも怪我しちまって公園にいたところに、青子が現れたときには、マジ焦ったけど」
 快斗は、ちょっと赤い顔をしてそう言った。
 公園で休んでいたキッドの前に現れたのは青子。腕から血が流れているのを見て、黙って自分の持っていたハンカチで腕を縛り、止血してくれた。そして、
「今日は、捕まえないでいてあげる。宝石も戻ってるみたいだし。早くちゃんと治療したほうが良いよ?」
 そう言って笑うと、青子はキッドの前から消えた。
 そのお礼にキッドから何か贈りたい、と思った快斗は今日、蘭にその買い物に付き合ってもらおうと思ったのだ。
「キッドとしてのお礼を選ぶのに、青子に付き合ってもらうわけにいかねーし、かといって俺1人でその手の店に入るのは抵抗があるしさ」
「それでキッドのことを知っているわたしに頼んだってわけね」
「そゆこと」
 快斗がニッと笑い、2人は微笑み合った。
 それを見て、怒りの炎を燃え上がらせているのは・・・もちろん、2人を陰から見ているコナン。
 ―――なんなんだよ、あいつは!?傍から見たら、まるっきり恋人同士じゃねーか!蘭の奴、楽しそうに笑いやがって・・・。しかし、あいつ何者なんだ?どっかで見たことがある気がすんだけど・・・。くそっ、思い出せねー・・・。
 コナンはイライラと頭を掻き毟った。
 冷静になろうと思っても、目の前で蘭が他の男と仲良く歩いているのを見ては、冷静になれるはずもない。
 そんなコナンに気付くはずもなく、2人はなんだか可愛らしい雑貨屋さんに入って行った。
 ガラス張りで中のほうが見えるようになっている。
 コナンは、そっと中を伺った。蘭と快斗がなにやら楽しそうに話しながら、店内を見ている。
 ムッと顔を顰めるコナン。その気配に殺気が満ちる。と、突然快斗がこちらを見た。
 ―――ヤベ!
 慌てて陰に隠れるコナン。
 ―――見つかったか・・・?
 またそーっと中を覗いてみる。何事もなかったかのように2人は話しながら、店内のものを手に取ったりして見ている。コナンはホッと息をついた。
 ―――大丈夫だったみて―だな。


 ―――やっぱりあいつだったか・・・。どーもさっきから、殺気立った気配がすると思ったら・・・。
 快斗は思わず苦笑いした。
「快斗くん?どうしたの?」
 蘭が首を傾げて聞く。
「あ、いや」
「ね、この小物入れ、すっごく可愛いよ」
 と言って蘭が手に持ったのは、色とりどりの石が散りばめられた小物いれ。鮮やかな色の石が、まるで本物の宝石のようで、とてもきれいだった。
「へェ、きれいだな。あいつも好きそうだし・・・。これにしようかな」
「喜んでくれると良いね」
 蘭がニッコリと笑う。その笑顔に、思わず見惚れてしまう。
「―――あのさ、蘭ちゃんにも何か買ってあげたいんだけど」
「え?いいよ、そんな・・・」
「今日付き合ってもらったお礼。好きなもの選んでよ」
「良いってば。今日はわたしも楽しかったし。―――あ」
 突然、蘭が快斗の後ろのほうを見て声を上げた。
「え?」
 と言って、快斗も後ろを向く。
 蘭は、タタッと小走りしてその場所へ行った。快斗も蘭の後について行く。そして見たものは・・・
「これ、かっこ良くない?」
 と言って、蘭が手に取ったのは銀のチョーカーだった。シンプルなデザインの十字型のそれは、男女問わずつけられそうなものだった。
「へェ、良いじゃん。―――もしかして、あいつに似合いそう、とか思ってる?」
 快斗がニヤッと笑って蘭を見る。と、途端に蘭の顔が真っ赤になる。
「や、やーね。そんなこと思ってないもん!自分でつけるの!」
「ふーん?」
 快斗がニヤニヤしながら見ている。蘭は居心地が悪くなって、
「んもう!わたし、先に買って来る!」
 と言って、レジに向かった。
「あ、待てよ。俺も行く」
 続いて、快斗もレジに向かう。


 ―――な―んで蘭の奴、あんなに真っ赤になってんだよ!
 2人の会話が聞こえないコナンは歯軋りしながら、中を見ていた。
 ―――お互い、プレゼントしあうってか・・・?冗談じゃねーぞ!ったく・・・。


 その後店を出た2人は、何やら楽しそうに話しながら歩いていた。そして、その後をつけるコナン・・・。
 ―――なんか俺って、情けなくねェ?あいつが他の男と一緒にいるとこコソコソつけてって・・・。スゲ―カッコわり―・・・。
 ふと立ち止まるコナン。無償に虚しくなってきて、くるりと2人に背を向けるとそのまま駅へ向かって走り出した。まるで、その場から逃げ出すかのように・・・。
 そのまま家へ帰り、ボーっとテレビを見ていたコナン。だが、5分とあけず、時計を見てはイライラしていた。自分が勝手に帰って来てしまったというのに、あの後の2人のことが気になって仕方がないのだ。
 ―――くそっ、やっぱりちゃんと見張っときゃ―良かったぜ・・・。蘭・・・早く帰って来いよ・・・。
 思い出すのは、蘭があの男と2人で並んでいる光景。蘭があいつに向けた笑顔・・・。
 コナンはそれを振り払うかのように首を振る。
 ―――くそっ、一体どうすりゃ良いんだよ!?
 と1人でジタバタしているところへ、玄関の開く音がして―――
「ただいまー」
 蘭の声。
「あ、コナンくん、ごめんね。遅くなって。すぐに夕飯の支度するね。―――お父さんは?」
 手にスーパーの袋を下げ、そのまま台所へと向かいながら聞いてくる。
「さあ。僕が帰って来た時にはいなかったから」
 必死に平静を装って言う。
「ふーん?コナンくん、出かけてたの?」
「う、うん。玄太達と、遊ぶ約束してて・・・」
「あ、そうなんだ―」
 台所にスーパーの袋だけ置くと、蘭は出てきて、コナンを見た。
「今日は、コナンくんの好きなハンバーグだよ」
 と言って、ニッコリ笑う。コナンは蘭の顔を真っ直ぐに見ることが出来ず、
「あ、うん・・・」
 と、テレビを見ながら言った。
「ちょっと着替えてきちゃうね」
 そう言って、自分の部屋へ行く蘭。その後姿を見て、コナンはあれ?と思った。
 ―――今日、あいつが持ってたあの小物入れ・・・どうしたんだ?
 蘭が持っていたのは小さなポシェットだけ。あれに、あの小物入れは入らないだろう・・・。どうして持ってないんだ?
 しばらくして戻ってきた蘭と、目が合う。
「何?コナンくん」
 いつもと同じように、優しく笑いかけてくる蘭。
「―――あ、あのさ、今日―――」
 コナンは思い切って口を開いたが・・・
「オー、今帰ったぞー」
 濁声とともに、小五郎が入ってくる。
 コナンは溜息をついた。
「お帰り。どこ行ってたの?」
「―――ちょっとな。それより腹減ったぞ」
「ハイハイ、今作るから―――。マージャン、負けたの?」
「う、うるせー!!」
 ばつが悪そうに睨む小五郎をかわして、クスクス笑いながら、蘭は台所に入っていく。
「―――何だあいつ、ごきげんだな。なんか良いことでもあったのか?」
 台所のほうを訝しげに見つつ、小五郎がコナンの向かい側に座る。コナンは何も応えずに、またテレビを見た。台所からは、蘭の鼻歌が聞こえてくる。
 ―――チェッ・・・そんなに楽しかったのかよ・・・。あいつのこと、好きなのか・・・?彼女がい
るっていうあいつのことを・・・。
 コナンはもやもやした気持ちで、じっとテレビを見ていた。内容なんか、ちっとも頭に入っちゃいなかったが・・・。
 食事が終わり、お風呂に入ると、「疲れたから」と言って早々に部屋に引き上げた。ずっと蘭の顔を見ているのは辛かった。楽しそうな蘭の顔を・・・。
 早く寝て、いやなことは忘れちまおうなんて思っていたのに、眠れやしない・・・。目を瞑ると、今日の光景が浮かんできて・・・。
 ―――クソッ
 真夜中、小五郎が寝てしまうと、コナンは1人屋上に出た。
「―――何やってんだろな、俺は―――」
 自嘲気味に呟く。と、突然後ろから―――
「夜更かしは体に悪いぜ?」
 と声がして、コナンはビックリして振り向いた。
「おまえっ・・・キッド!」
 そこにいたのは、白いマント、白いシルクハットにモノクルをつけた、気障な怪盗だった。
「よォ、どうしたんだ?浮かない顔して」
 ニヤリと笑うその顔。相変わらず人をなめた態度だ。
「オメエこそ、何してやがる?ノコノコ俺の前に現れて・・・俺が簡単に逃がすとでも思ってんのか?」
 コナンが睨んでも、変わらずニヤニヤしている。
「ふーん?相当機嫌が悪そうだな。―――原因は彼女か?」
「な、何を―――」
「図星、ってか?彼女のこととなると顔色が変わるな。おもしれー」
 クスクスとからかうような口調。
「オメエには関係ねー!一体何しに来やがった!?」
「ベーつに。尾行は楽しかったかな―と思ってさ」
「!!」
 その一言にハッとする。そうだ、こいつのこの目・・・!
「オメエ・・・今日、蘭と一緒にいた・・・」
「ん―?何のことかなあ?」
「誤魔化すな!何で蘭と・・・」
「んな怖い顔すんなよ。ちょっと彼女に頼みたいことがあってさ、付き合ってもらったんだよ」
「頼みたいこと?」
「そ。ある人へ贈るプレゼントを選んでもらったんだよ」
「ある・・・人・・・?」
「まあ、そのことは置いといて。彼女も、誰かさんに何か買ってたみたいだぜ」
「!」
 キッドがにやりと笑ってコナンを見る。
「大変だよなあ?彼女、もてそうだし、無防備だし・・・。お人好しだから、頼まれるといやって言えないタイプだろ。心配で心配で、目が離せねーんじゃねーか?」
 クスクスとおかしそうに言うキッドに、コナンはカチンと来て、
「余計なお世話だよっ。オメエ、どういうつもりで蘭と!!いつからだよ!?」
「おこんなって。別に付きあってるわけじゃねーぜ?俺もオメエに殺されたくねーからな。彼女とは・・・秘密を共有する仲間ってとこからな。俺の正体を知っても態度が変わんなかったのは彼女くらいだよ。いい子だよな、ホント」
 好きな子を誉められて、嬉しくないわけではないが・・・どうも額面どおりに受け取ることが出来ず、胡散臭そうにキッドを睨みつける。
「そう睨むなって。誤解されたままじゃ、彼女がかわいそうだから、わざわざ捕まる危険を冒してまで来てやったんだぜ?」
「余計なお世話だっつーんだよっ。そんなことよりも、もうあいつに近づくなっ」
「ん―。どうすっかなー。彼女と話すの結構楽しくってさー。彼女も俺といると気が紛れるみたいで楽しそうだぜ?」
「っるせー、とにかく近づくな!」
 我慢できずに怒鳴ると、キッドは肩を竦め、
「ハイハイ分かったよ。じゃ、会うのはやめるけどさ、急に音沙汰なくなると心配するだろうから、たまには電話するぜ?そんくらいは良いだろ?」
 コナンは納得行かないような顔をしていたが、蘭の性格を考えると、奴のいう通り心配してわざわざ会いに行ったりしかねない・・・と思い、仕方なく頷いた。
「―――分かった。約束は守れよ?」
「OK。その代わり、今日は見逃してくれよな。オメエと彼女の仲、心配して来たんだからさ」
 とキッドが言って、ニヤッと笑うと途端にコナンの顔が赤くなる。
「な―――!俺と蘭は、そんなんじゃね―よ!!」
 そんなコナンを見てキッドは楽しそうに笑うと、ひらりと手すりに身を躍らせ、背中のカイトを広げた。
「ま、そういうことにしといてやるよ。お互いがんばろーぜ、じゃな!名探偵」
 あっという間に飛び去っていくキッドを見送り、コナンは首を捻った。
「お互いって、どういう意味だ?」
 その意味は結局わからなかったが、とりあえずキッドと蘭が特別な仲というわけではないということに安心し、その夜はゆっくり眠ることが出来たのだった。


 「え?これ、蘭から?」
 翌日、博士に呼び出され、行ってみると小さな包みを渡された。
「昨日な、ここに来たんじゃよ。わしから新一に送っておいて欲しいといわれたんじゃ」
 博士がニコニコして言う。哀は地下室にいるようだった。
 コナンはその包みを開けてみた。中から出て来たのは―――
「!これ・・・」
 それは、十字型の銀のチョーカーだった。昨日、あの店で蘭が手にとって見ていたものだ・・・。
 ―――じゃあ、これは俺に贈るつもりで・・・そっか・・・そうだったんだ・・・。
 コナンの顔に、知らず笑みが浮かんだ。
 胸に幸福感が迫る。
 コナンは首にそれをつけ、蘭に電話をかけた。
「―――あ、蘭か?俺だけど・・・あれ、サンキューな。銀の・・・ああ、貰ったよ。昨日の内に、博士が人に頼んで届けてくれたんだ。これ、スッゲーかっこいいじゃん。―――ああ、つけてるよ。今度オメエにも何か贈るよ。お礼に、さ。―――遠慮すんなって。ま、あんま期待しないで待ってろよ。―――ああ、分かってるよ。なるべく早く帰っから・・・じゃあな」
 コナンは電話を切ると、チョーカーを握り締め、誰にも聞こえない声で呟いた。
「早く帰っから・・・オメエもちゃんと待っててくれよな。俺のこと―――」


                                            fin
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 2222番をゲットされたモンブラン様のリクエスト作品です。
「尾行」と聞いて、すぐに浮かんだのが槙原敬之の「スパイ」でした。
あの歌、すっごく好きなんです。でも、なかなかうまく話しに繋がらなくて・・・。こんなんで良かったでしょうか?気に入っていただけたら嬉しいんですけど・・・。
 コナンくんがちょっと情けなくなってしまい、キッドがでしゃばってしまいました。
もうちょっと蘭ちゃんも出したかったなあ、なんて思ったり。
 とりあえず、そんな感じです。(ってどんな感じ?スイマセン・・・)


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I cheer you!~快蘭新+志+園~

Category : novels(コナン)
 「あ、新一ィ!」
 聞き覚えのある可愛い女の子の声に、新一は振り返った。
 廊下の向こうから体操着姿で手を振る、可愛い女の子・・・毛利蘭、新一の幼馴染である。
「蘭!」
 新一もちょっと手を上げ、蘭の元へ駆け寄る。
「いよいよだねー。がんばろうね、お互い」
「ああ」
 微笑み合う2人。美男美女の組み合わせで、1人でも目立つ2人、一緒だとなおさら目立っているのだが、本人たちに自覚はない。
 今日は、ここ帝丹高校の運動会である。
 新一や蘭達3年生にとって最後の運動会だ。新一は白組、蘭は赤組である。ところで2人が頭にしているハチマキ、他の人よりもずいぶん長いのだが・・・それにはわけがあり、実は新一は白組の応援団長、蘭は赤組の副団長なのだ。そして、赤組の団長は・・・
「らーんちゃん、おっはよー!」
 と、どこからか現れて後ろから蘭に抱きつき、その頬に素早くキスしたこの男―――
「!てっめえ~~~っっ!!」
「か、快斗くん?」
 そう、黒羽快斗である。
「おーっと、大事な決戦の前に暴力沙汰はやめてくれよな、新一くん」
 殴りかかろうとした新一をひょいとかわし、蘭の横に並ぶ快斗。
「俺が団長、蘭ちゃんが副団長をやるからには、赤組絶対優勝だよな」
 と、快斗が蘭にニッコリ微笑むと、蘭も笑って、
「そうだね」
 と言った。
「ふん、言ってろよ」
 新一は不機嫌この上ない。蘭とはクラスが別な上、運動会でも敵同士。なのに快斗はクラスも一緒で、運動会でも・・・。面白くないのは至極当然のことだった。何しろ新一は、物心ついたときから蘭に片想いしているのだから―――。
 快斗とは高校に入ったときからの付き合いだ。1年生のときは3人とも同じクラス。快斗が蘭に一目惚れし、蘭もまんざらでもない様子。そしてこの三角関係が始まったのだった・・・。
 ところで、白組の副団長が誰かというと・・・
「あら、こんな所で3人寄って、何の相談?」
 と言ったのは、新一と同じクラスの宮野志保。
「あ、志保ちゃん、おはよう」
 蘭がニッコリ笑うと、志保も笑みを返す。
「おはよう、蘭さん。今日はがんばってね」
「ありがと、志保ちゃんもね」
「わたしはいいわ。蘭さん見てるほうが楽しいし」
 と、肩を竦めてしれっと言う。その言葉に蘭は赤くなり、新一は顔を顰める。
「宮野・・・オメエ、ちっとはやる気っつーもんを見せろよ」
「いやよ。副団長なんてやりたくてやってるわけじゃないもの」
 ときっぱり。そう、毎年運動会の団長、副団長はそれぞれのチームの人気投票によって決められているのだ。新一、快斗、蘭は最初は戸惑っていたものの、やるからにはちゃんとやろう、と思ってやっていた。特に快斗は蘭と一緒なら何でもやる気だったし・・・。しかし、志保だけはどうにかして誰かに代わってもらおうといろいろ動いていたようだが、結局代わってくれる人物が見つからず、当日になってしまったというわけだ。


 「らーん、おっはよ―」
 校庭に出ると、すでに出ていた園子が蘭に手を振る。園子も、蘭と同じ赤組だ。
「あ、園子、おはよう」
「ねえねえ、例の格好、まだしないの?」
 にやにやしながら言う園子を見て新一が、
「例の格好?なんだ、それ」
 と、訝しげに首を捻る。
「園子ってば!まだみんなには内緒なんだから・・・。あれは、午後の応援合戦のときよっ」
「な―んだ、そうなの?」
「おい、蘭。なんだよ例の格好って」
 と新一が聞くと、蘭は困ったような顔をした。
「オメエには教えらんね―んだよ」
 蘭の代わりに、快斗が応える。
「何でだよ?」
「バーカ、敵に手の内を見せられるかっつーの。ま、応援合戦のときを楽しみにしてな」
 ニヤッと、快斗が不適に笑う。
 新一は面白くなかったが、蘭も教えてくれそうになかったので、それ以上は聞かないことにした。
 

 何はともあれ運動会は始まった。中学校のときまでと違って家族が見に来るわけではなかったが、充分盛り上がり、勝負も白熱していた。なんと言っても両団長の私情もあいまった応援の応酬に2人の思惑に気付かない蘭と、バカバカしくて付き合いきれないと思っている志保以外の人間が皆、のまれてしまっていた。
「あ、ねえ次の100m走、2人とも出るじゃない」
 蘭の隣でプログラムを見ていた園子が言った。
「2人?」
「そうよ。新一くんと快斗くん。ね、どっちが勝つと思う?」
「うーん。新一もサッカーやってたから早いけど・・・快斗くんも運動神経良いし・・・。でも、同じ
チームだからやっぱり快斗くんを応援したほうが良いよね」
「ま・・・ね。けど、ホントはどっちを応援したいの?」
 と、園子が興味津々という感じで聞く。
「どっちって・・・そりゃどっちも・・・でも―――」
「でも?」
「わたしが応援しなくても・・・」
 と言いながら見た蘭の視線の先には―――
「うひゃあ、何あれ」
 今まさに始まろうとしている男子100m走。その周りに群がるたくさんの女の子たち―――。
「すごいわね。みんな新一くんと快斗くんの応援?」
「さあ・・・でも、ホントにすごいね。2人とも人気あって。あれだけの子達がみんなで応援してたら、わたしの声なんて聞こえないよ、きっと」
「何言ってんのよ、蘭」
 と、園子が呆れたように言った。
「あの2人に、蘭の声が聞こえないわけないじゃない」
「え?だって、あんなに一杯・・・」
「良いから、来て!」
 戸惑っている蘭の手を掴み、園子は群がっている女の子たちの間を縫って、前に出た。
「あの2人は何番目かな。―――あ、最後か。思った通り、新一くんと快斗くん、一緒に走るのね。アハハ、2人ともわざと目ェ合わさないようにしてるわよ」
「ホントだ。どうしてかな?」
 と首を捻る蘭に、園子は呆れ顔で、
「さあね・・・」
 とだけ言った。
 いよいよ競技が始まり、蘭と園子は同じ赤組の男子を一生懸命応援していた。それを見ていた新一と快斗は―――
「―――蘭のやつ、何他のやつの応援してんだよ」
 と、ボソッと呟く新一。それを聞きつけた快斗は、
「蘭ちゃんは誰にでも優しいからな。やきもちばっか妬いてっと身がもたねえぜ?新一」
 と、ニヤッと笑って言う。
「余計なお世話だよ。―――言っとくけど、蘭はオメエにはわたさねえからな」
「ふん、俺だって負けるつもりはねえよ。付き合ってる年数はオメエのほうがなげえかも知れねェけどな、蘭ちゃんを想う気持ちじゃ負けてねェつもりだぜ」
 2人は睨み合い、見えない炎を燃え上がらせていた・・・。
「あ、次、あの2人だよ!」
 と、園子が言い終わるより早く、女の子の黄色い声援が響き渡る。
「工藤く~ん、がんばって~~!!」
「黒羽せんぱ~い!がんばってくださ~い!!」
「は~、すっごいわね・・・。ほら、蘭も応援しなきゃ」
 と園子に言われ、周りの女の子たちの迫力に呆気にとられていた蘭ははっと我に帰り、
「え?あ、う、うん、そ・・・だね」
 と言いながら2人を見て、一瞬どっちを応援するか迷ってから・・・
「新一!快斗くん!がんばって!!」
 と大きな声で言った。―――と、新一と快斗がほぼ同時に蘭のほうを向き・・・新一は軽く手を上げニッと笑い、快斗はその手でVサインを作り、バチッとウィンクして見せた。
 周りにいた女の子たちが、いっせいに羨望と嫉妬の視線を蘭を向ける。それにうろたえる蘭。
「あ・・・あれ・・・?な、なんで・・・」
「ほーらね?あの2人が蘭に気付かないわけないんだから」
 と言って、園子が得意気に笑った。

 パンッ

 スタートの合図とともにギャラリーの注意は再び競技に集中する。
「工藤先輩、がんばれ!!」
「黒羽くーん、負けないでー!!」
 2人の早さはほぼ同じ。
 そしてゴール前10mのところで、快斗がつまづきそうになり、一瞬新一が前に出た。それを見た瞬間、蘭は思わず叫んでいた。
「快斗くん!!がんばれー!!」
 そして―――2人同時にゴール!
 再び辺りは黄色い声援に包まれた。
「すっごーい!2人ともやっぱり早いわね!ね、蘭行こうよ!」
 と言って、園子は蘭の手を取りゴールへ走って行った。
 新一と快斗は2人同着と言うことで、1位の旗の下でハアハアと苦しそうに息をしていた。
「新一!快斗くん!」
 蘭が声をかけると、2人同時に顔を上げた。最初に立ち上がって蘭に駆け寄ったのは快斗だった。
「蘭ちゃん!応援してくれてありがとうな!ちゃんと聞こえたぜ?蘭ちゃんの声」
「ほんと?」
 蘭がビックリして目を見開く。
「ああ、同着だったけどな」
「うん。2人ともすごいね。かっこ良かったよ、新一」
 と言って、蘭がニッコリ笑って新一を見る。新一はちょっと不貞腐れたような顔をしていたが、蘭にそう言われて一気に頬が緩む。それでもポーカーフェイスを装って、
「あ、ああ、サンキュ」
 とだけ言った。
 そんな新一の心理に気付いている園子と快斗は、必死に笑いを堪えるのだった・・・。
 その後も競技は続き、応援団の熱のこもった応援(主に蘭の出ている競技のときだったが)も続いていた。

 そして午前中の競技が終わり、休憩時間になった。
 蘭たちは仲良く芝生でお弁当を広げることにした。
「はい、新一、快斗くん、お弁当」
 と言って、蘭がお揃いのバンダナで包まれたお弁当箱を2人の前に置く。
「え―、蘭ってばもしかして、3人分のお弁当作ってきたの?」
「うん。2人も3人もそんなに変わんないよ?どうせ同じおかずだし」
 と言ってニッコリ笑う蘭。
「やったあ♪サンキュー、蘭ちゃん」
 と言って、快斗は早速お弁当の包みを開いた。それを横目で見ていた新一。
「何でオメエまで蘭に弁当作ってもらってんだよ?」
「だって、今俺んち母さん旅行中だもん。それ話したら、弁当作ってくれるって言ったの蘭ちゃんだぜ?」
「そうなのか?蘭」
「え?うん。だってみんなお弁当なのに1人でパン買ってたりするの、寂しいじゃない」
 とニコニコしながら言う蘭に、何も言えない新一。それを見ていた志保はくすくす笑い、
「良いじゃない、3人仲良くお揃いで」
 と言ったのだった・・・。


 午後は、両チームの応援合戦で始まる。
 始めは志保率いる白組女子応援団から。全員チアガールの格好で登場し、男子から“おおっ”という歓声が上がる。軽快な音楽に合わせ、踊る団員たち。だが、肝心の志保は1番端で笛を吹いているだけという・・・志保のファンである男子たちは皆がっかりしていたが、新一は予想していたのでやっぱりな、と言う感じで見ていたのだった。
 次は新一率いる白組男子応援団。こちらは体操部の部員と新一がいるため、かなり難易度の高いアクロバットを取り入れた組体操を披露した。もちろん、女の子は皆大喜び。赤組の女子も新一に見惚れていたが・・・
「どうせ、新一君は蘭だけが見ててくれれば良いと思ってんのよね」
 と園子が呟く。それに頷くクラスメイトの女子。
「ホント、蘭以外は一派一絡げって感じよね」
 白組男子の演技が終わり、女子の歓声が響く中、いよいよ赤組女子応援団の登場だ。
 実は新一はそれが気になって、あまり演技に身が入らなかったのである。と言っても、一応そつなくこなしたのだが・・・。
 校舎の陰から走って出てきた赤組女子応援団。その格好は・・・
 
 『おおおおー――っ』
 どよめく男子生徒。それもそのはず。蘭たちの格好ときたら・・・。
 赤いエナメルのビスチェに、同じ生地の超ミニスカートで、しかもスリットが入っていて太ももも露に実に露出度の高い格好で登場したのだから・・・。胸の谷間もおへそも丸出しというその格好に、さすがの新一も、ポーカーフェイスを保つことが出来ず・・・
 ―――ななな、何なんだァ、あの格好は―――!!
 ワナワナと震えながら、ふと園子と目が合う。園子が新一に向かってニカッと笑い、Vサインを見せた。
 ――――園子のやつだな!あんな格好考えたやつは~~っ
 蘭は長い髪をポニーテールにし、少し恥ずかしそうに笑っている。
 ―――くっそー、すげー可愛いじゃねーか!他のやつになんか見せたくねーよ!!
 新一が一人悶々とする中、ロック調の音楽が流れ、蘭たちの演技が始まった。持っていたバトンを器用にくるくる回しながら踊る蘭たち。動くたびにスカートからちらちらと太ももが覗き、男子たちの視線はそこに集中していた。
 ―――だ~か~ら~、見んじゃねーよー!!
 と思いながらも新一は蘭の姿を見つめていたのだが・・・演技も終盤に入ったころ、今度はその音楽に合わせ、男子のほうが登場してきた。快斗達男子はガクランを着ての登場だ。そして、音楽に合わせやはり踊っていたのだが・・・。後少しで音楽も終わりというところで、男子が1列に並び、女子がその前に出た。
 何をするんだ?と思って見ていると、女子が音楽に合わせバトンを上に上げ、くるっと回ってまたバトンを受け取る―――と、そこまではよかった。問題はその後―――終わるタイミングにあわせ、男子全員が一人一人女子を肩に担ぎ上げたのだった。もちろん蘭を肩に乗せたのは快斗で・・・蘭の太ももを快斗が抱きしめるような格好になっていたのだから、新一がどれほどのダメージを受けたか・・・お分かりいただけるだろう。
 女子が退場し、男子の演技に移っても新一は放心状態で・・・
「ちょっと、工藤君大丈夫?」
 と、声をかけてきたのは志保だった。肩をうさぶる様にして呼ぶと、やっと新一は我に帰った。
「ら、蘭、蘭は?」
「もうとっくに退場しちゃったわよ。今ごろもう着替えてるんじゃない?」
 と、志保が呆れたように言うと新一は蘭たちが退場した校舎裏へと、猛ダッシュで走り出したのだった。
「仕様がない団長ね・・・。でも、さっきの蘭さんの格好、良かったわね。後で園子さんに写真貰おうかしら」
 と、真面目な顔で呟く志保を、前にいた男子生徒がギョッとした顔で振り返ったのだった・・・。


 「蘭!!」
 プールの更衣室で着替え終わって出てきた蘭の前に、突然新一が顔を出した。
「キャッ、新一?ビックリするじゃない。どうしたの?」
「どうしたのじゃねーよ!何だよあのカッコ!」
 と、すごい剣幕で言う新一に、蘭はちょっと顔を赤らめ、
「だって・・・園子が最後の運動会なんだから、あれくらいやったほうが良いって・・・」
「だ、だからって、あんなカッコ・・・しかも、最後のあれ、何だよ?快斗に太腿触られてたじゃねーか!」
「あ、あれは、園子がせっかくだから男子も絡んだほうが良いって・・・」
「~~~ッたく、いちいちあの女に乗せられやがって~」
 頭を抱える新一に、蘭はちょっと悲しそうに、
「新一・・・いやだったの?あの格好、変だった?わたし」
 と言った。新一は悲しそうな蘭の声にハッとし、
「べ、別に変じゃねーよ!変じゃねーけど・・・その・・・ヤロ―どもの視線がさ・・・気になっちま
って・・・」
 と、最後のほうはぼそぼそと言う新一に、蘭は首を傾げ、
「―――変じゃなかったの?」
 と聞いた。
「ああ、変じゃねーよ。その・・・結構似合ってたけどよ・・・」
「ほんと?」
 パッと顔を輝かせる蘭。
「あ、ああ。けどその、あんま、ああいう格好はしないほうが、その・・・」
「うん!ありがと、新一。新一に似合ってるって言ってもらいたかったんだ!」
 と言って、満面の笑みを浮かべる蘭に、新一の胸は高鳴り・・・。
 ―――うあ~~~、ヤベェ、スゲエ可愛いよ。どうしよう、スゲエ抱きしめたい・・・。
「蘭・・・」
「ん?なあに?」
 小首を傾げて上目遣いで新一を見る蘭に、新一は我慢できなくなり、抱きしめようとしたそのとき・・・
「くぉ―ら、何やってやがる、スケベ団長」
 と言って、ぬっと顔を出したのは演技を終えて戻ってきた快斗で・・・。
「あ、快斗くん、お疲れ様」
 蘭がニッコリ笑う。
「サンキュ、蘭ちゃんもスゲエかわいかったぜ。最後もいっぱい練習した甲斐あって、ばっちり決まったな」 
「うん!」
「いっぱい・・・練習した・・・だと・・・?」
 途端に顔が険しくなった新一。
「あったりめえだろ?あれが1番大事なとこなんだからさ。そりゃもう何十回と練習したぜ?」
 わざと挑発するようにニヤッと笑う快斗に、新一の血管はぶちぶちと切れ・・・
「あ、蘭、あんたこの後の競技出るんでしょう?もうみんな行ってるわよ」
 と、絶好のタイミングで蘭を呼びに来た園子。新一と快斗の険悪なムードに気付いていない蘭は、
「あ、そうだった。じゃ、わたし先に行くね?新一も早く戻ったら?快斗くん、着替えたらまた応援してね」
 とのんきに微笑んで、行ってしまったのだった。
 残された3人は・・・
「ま、今回は最後の運動会ってことで大目に見てやってよ新一君。後で、蘭のパンチラ写真あげるからさ」
 と園子がニヤッと笑って言う。
「あのなァ、オメエ・・・」
「あ、その写真、俺も欲しい」
「!何言ってやがるテメエ!」
「あら、良いわよ。焼き増しするから。志保ちゃんも欲しいって言ってたし」
 園子の言葉に2人とも絶句する。
「ねえ、早く戻ったほうが良いんじゃない?蘭、次のに出るのよ」
 と言う園子の言葉に、2人とも我に帰り、
「―――後で覚えてろよ」
 と新一が言うと、
「あ、俺蘭ちゃんの応援で忙しいから忘れるわ、多分。ワリィな」
 と快斗はニヤッと笑い、服を着替えるべく、走って行ってしまったのだった―――。
 新一はムッとしたが、仕方なく自分の席に戻り―――そして、当然のように赤組の蘭の応援をして白組の女子に睨まれる羽目になるのだった・・・。


 結局その日の結果は・・・蘭の挑発ルック(!)による演技と、新一の応援(?)の成果か、赤組の優勝で幕を閉じたのだった―――。
 
 その後、蘭のパンチラ写真が裏で数千円の値で取引されたとか、されないとか、またソレを聞きつけた新一と快斗が、疑わしい男子をボコボコにしたとかしないとか・・・。それはまた、別の話・・・。

        
                                            fin

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この作品はリクエスト権を取得された夏輝様のリクエストによるものです。
 「新蘭快」の運動会と言うことで・・・。いかがでしょうか。運動会って、その学校によって結構違いがあるものだと思うんですけど。わたしの中学校のときってこんな感じだったかな、と言う感じで、ちょっと遠い昔(笑)を思い出しながら書いてみました。気に入って頂けたら嬉しいです!

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Triangle その後のお話 ~快蘭新~

Category : novels(コナン)
 蘭が帰ってしまってから3日が立っていた。
 明日からは、新一も快斗も新学期が始まる。
 にもかかわらず、2人は魂が抜けてしまったかのような状態で、毎日をボーっと過ごしていた。


 そして、この日の朝―――
「A Happy new year!!ただいまあ!新ちゃん、快ちゃん、いるう!?」
 と、元気いっぱいに帰ってきたのは、2人の母親である工藤有希子だった。
「―――ちょっとォ、いるんならお出迎えくらいしてよォ。久しぶりに帰ってきたのにィ」
 と、ぷうっとほおを膨らませて見せるが、2人はソファに寝そべりちらりと有希子を見ただけで、また視線を戻す。
「―――お帰り」
「―――お帰り」
 2人して気のない言葉を返す。
 そんな2人を見て、有希子は溜息をついた。
「ふーん・・・。せっかく2人の喜びそうなお土産用意したのに・・・いらないのね」
 そんな有希子の言葉にも、2人は無反応。有希子は、仕方がないとばかりに肩を竦めると、
「じゃ、わたしが貰うことにするわ。後で撤回しようとしても駄目だからね?」
 と言いながらリビングを出ると、なにやら玄関に向かった。
 そして、玄関のドアを開け、誰かと話してるような気配。
「?誰か来たのか?」
 その気配に気付き、快斗が体を起こす。
「ああ?父さんじゃねえのか?」
 と、新一は相変わらず寝そべったまま。
「けど・・・」
 と、快斗が言いかけたところに、また有希子がひょいと顔を出した。
「母さん、誰か来てんの?」
「ふふふ・・・まあね」
 有希子がにやりと笑って答える。その、何か企んでそうな声に、新一もようやく体を起こす。
「なんだよ?父さんじゃねえのか?」
「優作は今向こうでホテルに缶詰よ。原稿が終わらなくってね。わたしも待ってたんだけどもう冬休み終わっちゃうし、とりあえず1度こちらに来たかったから」
「ふーん?で?今来てるのは誰なんだよ?」
 と快斗が聞くと、また有希子はにやっと笑い、後ろを向いた。
「さ、どうぞ入って頂戴」
 有希子に促されるように、おずおずと部屋に入ってきたのは―――
「!!蘭ちゃん!?」
 快斗が驚いた声を上げ、続いて新一も蘭を見て目を見開く。
「何で蘭ちゃんがここに!?」
「あらァ、ずいぶんな言い方ね。2人とも蘭ちゃんのこと嫌いなの?」
「んなわけねえだろ!?」
「そうだよ!俺らはただ、何で蘭ちゃんが母さんと一緒にここへ来たのかってことを聞きたいだけで・・・」
 2人の慌てぶりに、有希子が楽しそうにくすくすと笑った。隣にいる蘭は、なんとなく困ったような表情で・・・
「あの、わたし・・・」
「大丈夫よ、蘭ちゃん。わたしがちゃんと説明するわ。とりあえず座りましょう?快ちゃん、わたしと蘭ちゃんに紅茶入れてくれる?」
「あ、わたしが・・・」
「あ、良いよ、蘭ちゃん。俺、入れてくるから座ってなよ」
 と言って、快斗は立ち上がると、キッチンへ行った。快斗が行ってしまってからも、新一はなんだか信じられないような思いで蘭をじっと見詰めていた。3日ぶりに見る蘭は、相変わらず可愛くて・・・
 素直にこの再会を喜びたかったが、有希子が何を考えているのか分からない状態ではそれも出来なかった。
「はい、紅茶入れてきたぜ?」
 キッチンから快斗が出てきて、2人の前にカップを置いた。
「ありがとう、快斗くん」
 蘭に微笑まれ、快斗は思わず顔を赤らめる。それを見た新一はちょっとむっとし、
「で?どういうことか、説明してくれよ、母さん」
 と、有希子に言った。
「そうね。何から説明したら良いかしら・・・。あのね、蘭ちゃんのお母様の妃英理さんとわたしは、高校の同級生だったのよ」
「蘭ちゃんのお母さんと?」
「ええ」
「ちょっと待てよ、妃英理って・・・まさかあの弁護士の?」
 と、新一が言った。
「そうよ。あの有名な法廷のクイーン、妃英理は蘭ちゃんのお母様なの。そして、お父様は探偵の毛利小五郎」
「!」
 今度は2人同時に吃驚した顔をする。探偵の毛利小五郎といえば、有名な名探偵だ。娘が1人いると聞いたことがあるが、まさかそれが蘭だったとは・・・
「驚いた?このことはあまり知られていないからね。両親とも有名すぎて、そして敵も多いわ。だから蘭ちゃんのことはなるべく表に出さないようにしていたのよ」
「で・・・どうして、蘭ちゃんが家政婦なんかになってうちに来たんだ?」
「実はね、小五郎さんがアメリカのある事件の捜査をF.B.I.から依頼されてるの」
「F.B.I.だって!?」
「そう。そして、英利も・・・小五郎さんの補佐役として、依頼を受けてるのよ。でも、それはとても危険な仕事で・・・まだ高校生の蘭ちゃんを一緒に連れて行くことは出来ないと、2人は判断したの。でも、1人暮らしをさせるのも心配だったのね。英理から相談を受けたの。わたしは、最初アメリカのわたしたちのところに来たら?と言ったのよ。でも、蘭ちゃんが高校を卒業するまでは日本にいたいと言ったの。あ、勘違いしないでね?蘭ちゃんはその時この話をほとんど知らなかったの。ただ英理からアメリカの友人のところにいかないかと言われて、そう答えたのよ。で、考えて・・・この家に来たらどうかしら?と思ったのよ」
 有希子の言葉に、さすがに新一と快斗は驚いて言葉が出ない。
「でも、なんと言っても男2人で暮らしてるわけですからね。こんな可愛いお嬢さんが一緒に住むことになって、何か間違いが起こったりしたら大変でしょう」
「おい・・・」
「母さん!」
「怒らないで。当然考えることでしょう?もちろんわたしはあなたたちのことを信じているけれど・・・・。英理はすぐに2つ返事とは行かなかったわ、もちろん。それで、わたしが提案したの。ためしに何日間か一緒に暮らしてみるのはどうかしらってね。英理の知り合いがやってる家政婦協会の会長に頼んで臨時で雇ってもらうことにして、わたしからの依頼と言う形で蘭ちゃんをここに派遣する。蘭ちゃんは何も知らないわ。ただ、英理に「冬休みにバイトくらいしたら」と言われてここに来たのよ。3人がうまくやっていけるかどうか・・・。隣の阿笠博士にも協力してもらって様子を見てたってわけ」
「博士にも?博士は知ってたのか?」
「ええ。もし2人が変な気を起こして蘭ちゃんに何かしそうになったら遠慮なく警察に知らせてくれるように頼んでおいたわ」
 にっこりと微笑みながら言う有希子を、2人がじろりと睨む。
「ふふふ・・・。この家に盗聴器が仕掛けてあったの、2人とも気付かなかったようね」
 有希子が得意げに言うと、新一はポケットから、なにやら小さい箱のようなものを取り出した。
「―――これだろ?さっき、テーブルの下から見つけたよ。まだあんだろうけど」
「あら、ばれてたの?ま、良いわ。もう必要ないし。で、4日間の3人の様子を博士から聞いて・・・。これなら大丈夫、と思ったのよ」
「大丈夫って・・・」
「小五郎さんが向こうにいるのは1年の予定よ。事件が解決すればもっと早く戻ってこれると思うけど。でも、長くなる可能性もあるわ。その間、蘭ちゃんをこの家で預かることにしたの」
「預かるって・・・」
「一緒に住むってことか・・・?」
 ―――蘭ちゃんと?
「そういうこと。蘭ちゃんにはここに来る前に説明して、本人の了解はとってあるわ。ね、蘭ちゃん」
「あ、はい。でも、もし2人が迷惑なら・・・」
 蘭が、心配そうな顔をして2人を見る。
「あらァ、そんな心配は要らないわよ。見て、2人のこの嬉しそうな顔!わたしが久しぶりに帰ってきたって相手にもしてくれなかったくせにね」
「そ、それは・・・」
「その・・・」
 有希子にじろりと睨まれ、さすがに2人はばつの悪そうな顔をする。
「さっき、わたしが言ったこと覚えてる?このお土産・・・2人がいらないならわたしが貰うって話」
「お土産って・・・まさか蘭ちゃんのことかよ?」
「そうよ?いらないんでしょう?」
「ば!馬鹿言うなよ!大体きたねえじゃねえか!」
 新一が有希子に食ってかかる。有希子は肩を竦め、
「自業自得よ。―――どうしても欲しいなら、わたしの言うこと聞いてよね?」
 と言って、にやっと笑った。新一と快斗は顔を見合わせ、同時に溜息をつくと頷いた。
「わあったよ。何すりゃ良いんだ?」
「素直でよろしい。―――今回、優作のせいであんまりわたしも日本にいられないの。今日の夜の便でもう帰らなきゃ。で、お買い物行ってる暇がないから、2人に頼みたいのよ。このメモに書いてあるお店で、そこに書いてあるものを買って送ってくれない?」
 と言いながら、有希子はバッグから1枚の紙を出し、快斗に渡した。
 そのメモを見て、快斗が溜息をつく。
「なんか、めちゃめちゃいっぱいあるんだけど・・・これ全部かよ?」
「もちろん!ないものは取り寄せてもらってね。それともう1つ―――」
「まだあんのかよ?」
「これが1番大切なことよ。良い?2人の気持ちは分かってるわ。でも・・・蘭ちゃんの気持ちを無視して変なことしたら、絶対に許しませんからね?」
 有希子は、真剣な表情になって2人を見て言った。
 2人は顔を見合わせると、同時ににやっと笑い、
「あったりめえだろ?」
「大事なもの、傷つけるような真似しねえよ」
 それを聞いて、有希子は満足したように微笑んだ。
「よろしい。これで、わたしも英理と小五郎さんに報告することが出来るわ。ね、蘭ちゃん。そういうことだから、安心してここにいてちょうだい」
 蘭は有希子の言葉に嬉しそうに微笑み、
「はい、ありがとうございます」
 と言ったのだった・・・。

 その日は有希子も含め4人で賑やかな1日を過ごし、夕食の席には阿笠博士も招いて女性2人で手料理を振る舞い、あっという間に時間が過ぎていった。

 「じゃあ、わたしは行くわね」
 荷物をまとめ、帰り支度を済ませた有希子が玄関で言った。
「気をつけて」
「父さんによろしくな」
「ええ。じゃあ、蘭ちゃんまたね。3人で仲良くしてね」
「はい。ありがとうございます、おば様。母と・・・父にもよろしくお伝えください」
「もちろんよ。大丈夫、あの2人ならさっさと解決して帰ってくるわよ」
 と言って、有希子はパチンとウィンクした。
 それを聞いた新一と快斗は、
 ―――あんまり早く解決されんのもつまんねえよな・・・。
 などと、蘭には決して言えないようなことを思っていたのだった。
「―――新ちゃん、快ちゃん、今、何を考えてたか当ててあげましょうか?」
 有希子がにやりと笑って言った。
「―――いや、良い」
「じゃあ、わたしの言いたいことは?」
「・・・わかってるよ。約束は守る」
「ま、大切なのは蘭ちゃんの気持ちだから。蘭ちゃんが望むことならわたしは構わないのだけどね?」
「は!?」
「か、母さん!?」
「うふふ、2人ともがんばってねv どっちが勝つか楽しみにしてるからvv」
 有希子は楽しそうに笑うと、2人にウィンクして旅立っていったのだった・・・。


「ったく、あの母親は何考えてんだよ」
 リビングへ戻り、新一が文句を言う。
「結局、母さんも蘭ちゃんのことを気に入ってるってことだろ」
 快斗も少々呆れ気味。
 そんな2人を見て、蘭は首を捻り・・・
「ねえ、おば様が最後に言ってたのって、どういう意味?」
 蘭の言葉に、2人は目が点になる。
「・・・何って、え―と・・・」
「蘭ちゃん・・・マジでわかんなかった・・・?」
「え、うん・・・何か、2人で勝負でもしてるの?何の勝負?」
 きょとんとした顔で無邪気に聞かれ、2人は言うべき言葉が見つからず・・・
 この戦いは長くなりそうだ、と思い、同時に深い溜息をついたのだった・・・。

 とにもかくにもこうして3人の共同生活は始まった。
 ちょっと鈍感で、誰よりも優しく、誰よりも可愛い蘭をめぐる双子の戦い。
 どちらが蘭のハートを掴むのか―――?

 それはまた、別の話・・・。


                                         fin

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ようやく完結です~♪う~ん、思ったより長くなってしまった。
 そして、思ったよりも盛り上がりに欠ける話になってしまいました・・・。
でも、考えるのはとっても楽しかったです。また機会があれば、書いてみたいお話です♪

 実はこのお話の続きがもう1つあります。
 でもそれはクリスマスのお話なので、こちらで紹介できるのは、今年のクリスマスごろになります。それまでどうぞお楽しみに♪

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Triangle vol.4 ~快蘭新~

Category : novels(コナン)
 1月2日。3人で過ごす最後の日・・・。

 蘭が起きてリビングに入ると、もう新一と快斗が起きてそこにいた。
「おはよう、蘭ちゃん」
 快斗がにっこり笑う。
「今日は、俺と快斗でお雑煮作ったんだ。食べるだろ?」
 と新一。蘭は吃驚して目を丸くした。
「え?2人で作ったの?すごいね!」
「ずっと2人で交代して飯作ってたからな。一応これでも一通り出来るんだぜ?」
「そういうこと。で、これ食ったら出かけよう」
「どこに?」
 と、不思議そうな顔をする蘭に、2人はにっと笑う。
「すげえ良いとこ。きっと蘭ちゃんも気に入るぜ?」
 と快斗が言えば、新一も
「どこに行くかはついてからのお楽しみってことで」
 といたずらっぽく笑ったのだった。蘭は、首を捻るばかりだが・・・楽しそうな2人を見て、くすっと笑った。
 ―――この2人と一緒なら、きっとどこでも楽しいよね。
 そんなことを考えて・・・。


 蘭がおいしそうにお雑煮を食べる姿を見て、2人は顔を見合わせ満足そうに微笑んでいた。
 2人で密かに話して決めたこと。それは、今日1日は喧嘩をせずにいようという事だった。蘭に楽しんでもらうため、2人で協力しようと、約束したのだった。
「―――そろそろ来る頃じゃねえ?」
 と、新一が壁の時計を見上げて言った。
「そうだな。俺、ちょっと見てくるよ」
 快斗がリビングを出て行くのを見て、蘭は首を傾げる。
「何が来るの?」
「車、頼んでたんだ」
「車?」
「そ。あとで蘭ちゃんにも紹介するよ」
 さっぱりわからない、という顔をしている蘭を、楽しそうに見詰め、新一は微笑んだ。
 そこへ快斗が戻ってきた。
「今、用意してるみてえ。こっちも準備しようぜ」
「ああ」
 蘭は、首を捻りながらも食べ終わった食器をキッチンへ片し、着替えをするために部屋へ戻った。


「やあ、君が蘭くんか。はじめまして」
 家の前で待っていたのはかっぷくの良い白髪頭に白い口ひげを生やした初老の男性だった。
「あ、はじめまして、毛利蘭です」
 挨拶をされて、蘭も慌てて頭を下げる。
「蘭ちゃん、この人は隣に住んでる阿笠博士。俺らが小さい頃から世話になってる人だよ」
 と、新一が紹介してくれる。
「博士?」
「そ、っつってもなんだか怪しげなもんばっか発明してるへんてこな博士だけどな」
 と、快斗がニヤニヤしながら言うと、博士は顔を顰め、
「快斗くん、そりゃあないじゃろう」
 と言った。
「けど、本当のことだろう?」
 と、今度は新一が言ったので、博士はますますしかめっ面になる。
 そのやり取りを聞いて、蘭がぷっと吹き出した。
「あ、ごめんなさい、博士。すっごく仲良いんですね、2人と」
「あ、ああ、まあそうじゃな・・・」
 いきなり笑われて目を丸くしていた博士だが、蘭の笑顔を見ているうちに自分もふっと笑い、
「2人の言っていたとおり、素敵なお嬢さんだのう」
 と言ったので、蘭はぴたりと笑うのを止め、かあっと顔を赤らめた。
「だろ?」
 と快斗が言い、新一も微笑む。
「さ、それじゃあ行こうぜ」
 4人で車に乗り込み、早速出発。だが、どこへ行くのか・・・?


 「ここは?」
 着いた先には、たくさんの温室が並んでいた。中には色とりどりの花が咲き乱れ、その花のいい匂いが外まで届いていた。
「すごい花・・・」
 蘭が目を丸くする。
「だろ?と言っても俺らも来るのは今日が初めてなんだけどさ。実は博士に教えてもらったんだ。この場所」
 と、快斗が楽しそうに言った。
「さ、入ろう」
 新一がみんなを促す。
 4人で温室のひとつに入る。中にはきれいな蘭の花が咲いていた。
「わあ、わたし、こんなにいろんな蘭を見るの初めて!きれい・・・」
 蘭が瞳をきらきら輝かせながらきょろきょろと花を見て回った。
「ねえ、でもここ入っても良いの?」
「もちろんじゃよ。ここの持ち主の人とは知り合いでな。今日、ぜひ見せてもらいたいと言ったら、快く承諾してくれたんじゃ」
「博士にそんな知り合いがいるとは思わなかったよ」
 と、新一が意外そうに言う。快斗も同じ気持ちらしい。そんな2人を見て、蘭は博士が2人にとって本当に信頼できる人物なのだと知った。
 4人は心ゆくまで蘭の花を見て回り、他の温室にも入ったりして楽しんだ。
 そんな楽しい時間もあっという間に過ぎ、いつの間にかもう日が傾き始めていた。
「げっ、もうこんな時間かよ」
 快斗が時計を見て言った。
「来るのに、だいぶ時間かかったもんな。蘭ちゃん、おなかすいてないか?ここへ来る前に、車の中でサンドイッチ食べたきりだろ」
 と新一が言った。蘭はにっこり笑って、
「わたしは平気だけど・・・。3人の方がおなかすいてるんじゃない?」
 と言った。新一、快斗、博士は顔を見合わせると、苦笑いして頷いた。
「そうだな。なんかこの辺で食っていこうか」
 という新一の言葉にみんなが頷き、温室を後にしたのだった。

 近くのレストランで食事をした後、車に乗って、家に向かう。その間中他愛のない会話が続き、楽しい時間が過ぎていったが、誰も今日が最後だということに触れなかった。まるで、触れてしまえばそこで楽しい時間が終わってしまうような、そんな気さえしていた。
 家に着く頃には、すっかり暗くなり嫌でも今日の終わりを感じずにはいられなかった。

「博士、今日はありがとうございました。とっても楽しかったです」
 蘭が、博士に頭を下げた。
「いやいや、わしも楽しませてもらったよ。またぜひ、遊びに来るといい」
「はい、ぜひ・・・」
 博士の姿がなくなり、3人は暫く家には入らず、門の外に無言で立ち尽くしていた。

「風邪、引くぜ」
 始めに口を開いたのは新一だった。
「そうね。中に入ろう」
 蘭が頷き、門を開けた。
 3人で家の中に入り、リビングに向かう。
「コーヒー、入れるね。快斗くんはカフェオレ?」
 蘭が、上着を脱ぐと、キッチンへ入って行った。
「―――とうとう、来ちまったな」
 快斗が、ボソッと言う。いつもの明るい声とは違う、どこか元気のない声・・・。
「ああ―――。快斗、蘭ちゃんの前でそんな顔すんなよ?」
「わかってるよ。蘭ちゃんが戻ってきたらいつもの俺になるさ」
 やがて、蘭がトレイに3人分のカップを載せて戻ってきた。
 新一にはコーヒー、快斗にはカフェオレ、蘭は紅茶。この4日間で蘭が覚えた2人の好み。そして、3人でのいつものお茶の時間。それも今日が最後・・・。 
 なんとなく、静かになってしまう3人。
「あのね」
 突然、蘭が口を開いた。2人が蘭のほうを見る。
「すっごく楽しかったよ、この4日間」
 にっこりと、本当に嬉しそうに微笑んだ蘭に、2人は見惚れていた。
「始めは緊張してたの。初めての仕事だし、うまくやれるかなって。でも、2人と話してたらそんな不安も吹っ飛んじゃった。仕事だってこと忘れそうになるくらい楽しくって・・・時間があっという間に過ぎて・・・」
 蘭の瞳に、涙が溢れた。
「ずっとね、ここにいれたらいいのにって・・・思うくらい楽しかった・・・」
「蘭ちゃん!!」
 2人が蘭の側に寄り、蘭の手を片方ずづ握り締めた。
「ありがと・・・。また、遊びに来てもいい?」
「当たり前だろ?いつでも大歓迎だよ」
「俺1人のときでも全然オッケーだから」
「おめえ、また抜け駆けしようとしてやがるな!」
 新一がじろりと快斗を睨み、快斗はいつものようにいたずらっぽい目をして蘭を見つめた。蘭は、嬉しそうに2人を見つめ、ふわりと微笑んだ。
「2人に会えて・・・ここに来て、本当によかった。絶対、また遊びに来るからね」
 新一と快斗は、蘭の手を握る手に一層力を込めた。
 出来ることなら、このまま離したくない。このまま抱きしめて、自分だけのものにしてしまえたら・・・。だが、それは蘭が望んでいることではない。蘭にとって、自分たちはあくまでも友達なのだから。
 それでも、少しは特別な存在だと思われていると、自惚れても良いのではないか?同じ屋根の下で4日間一緒に過ごしてきたものとして・・・きっと、それくらいは許されるだろう。
 2人は顔を見合わせ、そっと笑みを交わした。
 ―――今は、この状態で満足しよう・・・。そのうち、きっと・・・
 そんな風に思って、熱い眼差しを蘭に向ける2人だった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 終わりました~♪この後、番外編へ続きますが、とりあえずここでおしまいです。
また、別のイベントでもこのシリーズのお話を書けたらいいなと思ってますので、その時もどうぞ読んでやってくださいませ。

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Triangle vol.3 ~快蘭新~

Category : novels(コナン)
1月1日,午前0時
「―――わああーーっ」
 目の前の光景を見て,蘭が驚きの声を上げた。
 新一と快斗が,顔を見合わせ,にっと笑う。
「すごい・・・」
 そこには,さっきよりもはるかに華やかなイルミネーションの数々が姿を見せていた。
「だろ?街中にいるとあんまりわかんねえんだけどさ,1月1日になった瞬間にイルミネーションをつけるビルなんかが,結構あるんだ」
「あっちにある公園から見る人は結構いるんだけど,この丘はなぜか人が来ないんだ。俺らはガキの頃からこの場所を知ってたからさ」
「ほんとに,きれい・・・。でも,わたしにそんな大切な場所,教えちゃっていいの?」
 遠慮がちに言う蘭に,2人は笑みをこぼす。
「蘭ちゃんだったら大歓迎だよ」
「絶対見せてあげたかったんだ,この景色」
「新一くん,快斗くん・・・2人とも,ありがとう」
 ふんわりと,幸せそうに微笑む蘭に,見惚れる2人。
 ―――これで,こいつがいなかったら・・・。
 と,同時に同じことを考える双子であった・・・。

 その後3人は家に戻り,年越しそばを食べ,風呂に入ったあと自分の部屋へ行き眠ったのだった。


 「あけましておめでとうございます!」
 快斗と新一が,朝起きてリビングへ行くと,蘭がそう言って頭を下げた。
「「――――――」」
 2人とも口をあんぐりと開け,目の前の蘭を呆然と見つめた。まるで,お化けでも見たような顔をしている2人。もちろんそれにはわけがあり・・・
「どうしたの?2人とも。あ・・・もしかして,この格好変かなあ?」
 と,小首を傾げる蘭。自分の姿を見下ろす。
「へ,変じゃねえよ!!ぜんっぜん!」
「すげえ似合ってる!!」
 2人が慌てて口を開く。蘭の格好・・・それは,お正月らしい華やかな柄の振袖だったのだ。赤地にきれいな桜の模様のそれは,蘭の雰囲気にぴったりで2人は思わず見惚れてしまい,言葉を失ってしまったのだ・・・。
「ホント?よかったあ。やっぱりお正月だし,お母さんに買ってもらったものだから着てみたいなあって思って,持ってきちゃったの」
 ぺろっと舌を出して言う蘭。今日は髪も着物に合わせてアップにし,そのうなじがドキッとするほど色っぽかった。
「すげえ可愛いよ。吃驚した」
「ああ。けど,それ自分で着たのか?」
 新一が聞くと,蘭は照れくさそうに頷いた。
「うん。この着物買ったときにね,お母さんに教えてもらったの。今日は1人だったから,ちょっと時間かかっちゃったけど」
「へえ,じゃあずいぶん早起きしてたんじゃないの?」
 快斗が感心したように言う。
「うん,まあね。あ,おせち料理ももう完成してるの。みんなで食べよう?」
 にこにこと笑いながら,リビングに入っていく蘭。その後姿を2人でじっと見つめ・・・
「やべ・・・マジ可愛すぎるぜ」
 新一がぼそっと呟くと,
「ああ・・・。あんな可愛い蘭ちゃん,他の奴には見せたくねえな」
 と,快斗も言う。
「なあ・・・この後,初詣に行こうって言ってなかったか?」
「言ってた・・・どうする?」
「どうするったって・・・蘭ちゃん楽しみにしてるしよ・・・」
 う~んと2人で頭を抱えていると,キッチンからおせち料理を運んで来た蘭が,2人を見て
「どうしたの?起きたばっかりでおなかすいてない?」
 と心配そうな顔をする。それを見た2人は,パッと顔を上げ,
「「とんでもない!!」」
 と同時に言って,席についたのだった。
 蘭の作ったおせち料理はどれも絶品で,快斗と新一は取り合うように食べ,あっという間に重箱を空にしてしまったのだった。
「ごちそうさま」
「すげえおいしかったよ」
「ありがとう。ちょっと薄味だったかなって思ったんだけど」
「いや,ちょうど良かったよ。なあ,快斗」
「ああ,ホント。蘭ちゃんて料理美味いよなあ。いつでも嫁に来れるよ?」
 快斗はにっと笑って蘭を見つめた。もちろん,自分の所へ来てほしいという意味をこめたのだが・・・
「ありがと,快斗くん」
 と,蘭に普通に返され・・・快斗の意思はまったく伝わっていないと分かったのだった。快斗は小さく溜息をつき,新一はほっとしながらもまたもや抜け駆けをした快斗を睨みつけた。
「ね、これ片付け終わったら初詣,行くんでしょう?2人とも着替えてきたら?」
 と,蘭が重箱を片付けようとするのを見て,2人は立ち上がった。
「あ,俺らがやるよ,蘭ちゃん」
「え、でも・・・」
「いいから。その着物,汚れちゃったら大変だろ?別にいそがねえしさ、その辺に座ってなよ」
 快斗と新一はさっさと片付けを始めた。
 蘭は少し迷っていたが,結局言われたとおり,座って待っていることにしたのだった。

 キッチンへ入った途端、新一が快斗の足を蹴っ飛ばす。
「いてっ,あにすんだよ!?」
「うるせー、どさくさに紛れて変なこと言いやがって」
「嫁に来れるって言ったことか?結局蘭ちゃんにはその意味伝わってねえんだからいいじゃんよ」
「そーいう問題じゃねえだろ?抜け駆けすんじゃねえよ」
 新一がギロリと睨むと、快斗は肩を竦めた。
「それより、初詣どうすんだよ?」
「行くしかねえだろ?約束だし。とりあえず,蘭ちゃんとはぐれね―ように2人で両脇固めてれば,声かけてくるような馬鹿はいねえだろ」
「そうだな。おめえがはぐれねえようにしろよ?」
「そりゃあこっちの台詞だよ」


 2人は片付け終わるとそれぞれ自分の部屋へ行き,着替えてからまたリビングへ行った。
「お待たせ、蘭ちゃん」
「行こうか」
「うん」
 にっこり笑って立ち上がる蘭。その姿に見惚れる2人。
 ―――ゼッテー、はぐれらんね―な・・・。
 と、やはり同時に同じことを考える双子だった・・・。


 「すごい人・・・」
 神社近くまで来て、あまりの人の多さに蘭が目を丸くする。
「蘭ちゃん、はぐれないようにしなよ?」
 と,新一が心配そうに言う。
「う、うん」
「なんだったら腕に掴まってても良いぜ?その格好じゃ歩きづらいだろ?」
 と快斗がにっと笑っていうと、さすがに蘭も赤くなり、
「だ、大丈夫。ちゃんとついて行けるよ」
 と慌てて言ったのだったが・・・。


 「どうすんだよ?」
 と快斗。
「どうするったって・・・探すしかねえだろ?」
 新一も途方に暮れたように言う。
 ついさっきまで2人と一緒にいたはずの蘭が、お参りを済ませ、帰って行く人の波に紛れて2人とはぐれてしまったのだ。
「探すったってどこをだよ?」
「どこでも良い。おめえ、携帯持って来てんだろ?見つけたら知らせろよ。俺もそうすっから。んで、この場所で落ち合おう」
「分かった」
 2人は二手に分かれ、蘭を探すべく人の波に逆らうように歩き始めたのだった・・・。
 一方の蘭は・・・
「どうしよう・・・はぐれちゃった・・・」
 と、こちらも途方に暮れていた。
「ここ、来たことないから・・・全然わかんないよ・・・」
 人ごみから少し外れた路地裏に入って、息をつく。
 蘭は、泣きたい気持ちになっていた。なんだか、突然一人になってしまい、もうあの2人に会えないんじゃないかという気がして来たのだ。
 ―――そんなの、やだよお・・・
 蘭の瞳に、じわりと涙が浮かぶ。
 たった2日、一緒にいただけだけれど、2人といるのは本当に楽しかった。家政婦として働きに行っているはずなのに、まるで友達の家にでも遊びに行っているような気持ちになっていた。優しくて、気さくな2人のおかげで気分も明るくなれた。この仕事が終わっても、ずっと友達でいられたら・・・と思っていたのだった。
 ―――快斗くん、新一くん・・・どこにいるの・・・?
 慣れない草履を履いたせいで、足も痛い。この人ごみの中を2人を探して歩くのは無理だった。それに、下手に歩き回って余計に2人から離れてしまうということもある。
 きっと2人とも自分を探してくれているはず。今は、この場所でじっとしていたほうがいい・・・。蘭はそう思ったのだった。

 どのくらいそうしていたのか。寒さに吐く息も白く、手もかじかんできた。
 ―――どうしよう。やっぱり探しに行こうか・・・
 と思ったときだった。
「ねえ、彼女1人?」
 と、後ろから突然声をかけられ、蘭は吃驚して振り向く。
 そこには、いつの間に近づいたのか、長髪の軽薄そうな若い男がニヤニヤしながら立っていた。
「誰か待ってんの?それとも待ちぼうけ?」
 蘭は、どこかいやなものを感じ、眉を顰めた。
「ねえ、良かったらこれから一緒に遊びに行かない?俺、良いとこ知ってんだけど」
「結構です。人を待ってますから」
 きっぱりと言い放った蘭に、男の顔がぴくりと引きつる。
「で、でもさ、さっきからずっとそうしてるじゃん。もう来ないんじゃないの?」
 その男の言葉に、蘭の顔色がさっと青くなる。それを見て、男はにやりといやらしい笑みを浮かべた。
「ね、そんな薄情な奴ほっといてさ、俺と楽しいことしようよ」
 なれなれしく肩に触れ、ぐっと近づいてきた男を、慌てて押しのけようとした、その時―――
「きたねえ手でさわんじゃねえよ」
 唸るような低い声が聞こえたかと思うと、男が後ろからぐいっと引っ張られ、その場に倒された。
「うわっ、な、なにすんだよ!?」
 男を、氷のように冷たい視線でギロリとにらみつけたのは・・・
「新一くん!!」
 蘭は、ホッとしたように新一を見て叫んだ。その瞳には、うっすらと涙が見え・・・
「蘭ちゃん・・・大丈夫だったか?このヤロウに何かされた?」
「ううん、大丈夫」
 蘭ににっこりと微笑まれ、思わず新一は赤面する。
「―――っのやろ・・・」
 倒された男が立ち上がり新一に向かってこようとしたが、男の足元を何かがすくい、またその場に倒れてしまった。
「いってえ!!」
「バーカ。おめえに触られたら、蘭ちゃんが汚れちまうだろうが」
 と言って、男の前に立ったのは、快斗だった。
「快斗くん!」
「う・・・ち、ちきしょうっ」
 相手が2人になり、さすがに分が悪いと思ったのか、男は立ち上がると、さっさと逃げるように走り去っていったのだった・・・。
「蘭ちゃん、大丈夫?怪我はない?」
 快斗が心配そうに蘭の側に寄る。
「うん、大丈夫よ。ありがとう2人とも」
 蘭は満面の笑みでそう言ったかと思うと、その瞳からぽろぽろと涙を流した。
「ら、蘭ちゃん!?」
「ど、どうしたんだ?どこか痛いのか?」
 快斗と新一は蘭の涙に焦り、おろおろとその顔を覗き込んだ。
「ううん、違うの。嬉しくって・・・。1人でいたらね、なんか不安になっちゃって、このまま2人と
会えなくなっちゃいそうな気がしたの。だから、また会えて、嬉しくって・・・」
 涙で濡れた瞳で、それでも笑顔を見せながら言う蘭が堪らなく可愛くて、2人は蘭を抱きしめたい衝動に刈られたが・・・
 ちらりと視線を交わし、目だけで会話をする。
 ―――抜け駆け、すんじゃねえぞ。
 ―――ふん、そっちこそ。俺のいねえ間に変なことしてねえだろうな。
 ―――おめえと一緒にすんなっつうの。
 2人はほぼ同時にその顔に不敵な笑みを浮かべると、蘭の右手を新一が、左手を快斗が、ぎゅっと握り締めた。
「え・・・」
「蘭ちゃん、もうはぐれねえように、手、繋いでよう」
「足、痛いんだろう?ゆっくり歩くからさ」
 2人の優しい笑顔に、蘭も安心し、微笑んだ。
「うん。ありがとう」

 3人仲良く手を繋ぎ、無事に参拝を済ませると、家に戻った。その頃には蘭の足も限界で・・・歩いてる最中少しも痛そうな様子を見せなかった蘭だが、家につき、リビングでソファに座るなりそこから動けなくなってしまった。
 それでも、2人に心配をかけまいと痛みを堪える蘭に、2人は優しく声をかけた。
「蘭ちゃん・・・痛いときは痛いって言って良いんだぜ?」
 新一が苦笑い交じりで言う。快斗は台所からアイスノンを持って来て、蘭が履いていた足袋をそっと脱がせた。
「ああ、真っ赤になってるよ。ちょっと冷やしておこう。今日はもう、働いちゃ駄目だぜ?」
 そう言う快斗に、蘭は困ったような表情になる。
 何しろ、蘭はこの家に家政婦として働きに来ているのだ。
「でも、わたし・・・」
「良いから。うちのことは俺と快斗がするから、蘭ちゃんはおとなしく休んでな。元はといえば、初詣に誘った俺らが悪いんだし」
「そ、そんなことないよ!」
 蘭が、慌ててぶんぶんと首を振る。
「新一くんと快斗くんは悪くないよ?わたし、今日すごく楽しかったし・・・。だからね、我慢したの。ちゃんと、楽しみたかったから・・・」
「蘭ちゃん・・・俺らもすげえ楽しかったよ。ハプニングはあったけどさ。蘭ちゃんといるとすげえ楽しいんだ。だから、もう今日は休んでてくれよ。無理して全然歩けなくなったりしたら、明日、一緒に遊べねえだろ?明日で最後なんだし・・・な?」
 快斗の言葉に、蘭ははっとして、顔を伏せた。
 ―――そうだ・・・。もう、明日でお別れなんだ・・・。
「うん・・・そうだね。明日で最後だもんね。ちゃんと治さなくちゃ、ね」
 と、蘭は明るく言うと、ぱっと顔を上げ、2人に微笑んで見せた。
 その笑顔を見て、2人はほっとして笑った。
「そうそう、蘭ちゃんはいつも笑顔でいてくれよ」
「俺ら、その笑顔が大好きだからさ。蘭ちゃんにはいつも笑ってて欲しいんだ」
「うん・・・」
 蘭は笑顔で頷いた。
 本当は、涙が出そうだった。
 ―――もう、明日になったら2人とお別れしなくちゃいけないのね・・・。せっかく仲良くなれたのに・・・。4日間て、なんて短いんだろう・・・。
 
 一方、新一と快斗も、言いようのないもどかしさを感じていた。
 ―――明日には、蘭はこの家を出てっちまう・・・。そうしたら、もう会えないのか?もうこれっきり?そんなの・・・堪えられっかよ!!
 ―――このまま別れるなんて、冗談じゃねえぜ。まだ何ひとつ始まっちゃいねえのに、このままで終われっかよ。新一との勝負だって、まだついてねえんだ!

 3人、それぞれの思いを胸に抱え・・・
 いよいよ、最後の1日を迎えようとしていた・・・。


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 第3話です~。4話完結にしようと思ってたのですが・・・。その後のお話として、第5話まで作ってみようかなあと思ってます。とりあえず、クライマックスは明日かな?ってことで・・・。


 改めまして、新年明けましておめでとうございます。
  今年も「meet in a dream」をよろしくお願いいたします。

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