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*このブログは名探偵コナン・ごくせん・花より男子・君に届け&ゲーム(ラブレボ・新撰組など)の二次小説のブログになります。
*このブログは管理人個人によるファンサイトです。 原作者や出版社等とは何の関連もありません。
*あくまでも管理人の二次世界の小説ですので、人によってはイメージに大幅なずれがある場合もございますのでご注意ください。
*閲覧については自身の責任においてお願いいたします。
*このブログについての誹謗中傷・クレームなどの書き込みはおやめください。
*このブログの無断転載複製を禁じます。
*万が一このブログをお読みになって不快感を感じられたとしても責任は負いかねますのでご了承ください。

星に願いを ~新蘭~

Category : novels(コナン)
 「やっぱりこんなところで待ち合わせするんじゃなかった」
 蘭は、溜息と共に呟いた。
 ―――新一の馬鹿・・・

 今日は二月十四日。バレンタインデーである。蘭は、前の日に作っておいたチョコレートケーキを箱に入れ、冷蔵庫にしまうといつもよりも上機嫌で家を出た。
 いつもだったら学校に持っていって、いつ渡そうかなんてドキドキしながら新一の様子を伺い、何人もの女の子たちが新一にチョコレートを渡すところをやきもきしながら見ていた。
 でも今年はちょっと違う。蘭はもう、れっきとした新一の彼女で、今日は学校が終ってから会う約束をしているので、学校に持っていく必要もない。もちろん、蘭という彼女がいることを知っても新一にチョコレートを渡す女の子がたくさんいることは分かっているが、それでも今までとは違う、安心感のようなものが蘭にはあった。
 いつものように新一を起こそうと、新一の家の前まで来たとき・・・
「あれ?新一?」
 ちょうど、玄関から出てきた新一に会う。
「よお、蘭、おはよう」
「・・・おはよう。どうしたの?珍しいね。わたしが行く前に新一が起きてるなんて」
「ああ、それが朝っぱらから目暮警部から電話があってよお」
 うんざりしたような口調だが、その表情は声とは裏腹にとても嬉しそうで・・・それを見ただけで、蘭には分かってしまう。
「また事件?」
「そうなんだよ。ま、すぐに解決して学校に行くからよ」
 そう言って、新一はにっと笑って見せた。蘭は、ちょっと溜息をつくと
「・・・分かった。もし間に合わなくっても、今日の約束は忘れないでよ?」
「わあってるよ。ちゃんと約束は守るから」
 そう言うと、新一は素早く蘭の頬にキスをした。途端に真っ赤になる蘭を、面白そうに眺めている。
「も~~~」
「へへ・・・おっと、迎えが来たみてえだな」
 車の音が近づき、パトカーがやってくるのが見えた。
「じゃあな、蘭」
「うん。気をつけてね」
 そうして新一と別れ、1人で学校へ来た蘭。
 予想通り、新一にチョコレートを渡そうという女の子が次々に教室に現れては、新一の不在を知り、がっくりと肩を落として帰っていくという光景を何度も見ることになる。
「ある意味ラッキーよね。新一くんがチョコレートを受け取る姿を見ずにすむんだから」
 と園子が言った。その言葉に、蘭は苦笑いする。もちろんそんな気持ちがないわけではないが・・・。
彼女がいても、せめてチョコレートだけでも渡したい。そんな女の子たちの気持ちがひしひしと伝わってくる。人に恋する気持ちはみんなおんなじ。
 ―――わたしだって、片思いだったらきっと・・・
 そんなふうに思うと、新一の彼女だからといって、得意な気分にはなれない蘭。
「蘭ってば、いちいちあの子達の気持ち考えてたら身が持たないよ?」
 園子が呆れたように言ったが、もって生まれた性格は変えようがない。その日1日、蘭はせつない気持ちを抱えながら過ごしていたのだった。

 
 そして、結局その日新一は学校に現れなかった。
「約束、忘れてなきゃ良いけど・・・」
 一抹の不安を抱えながら、蘭は一旦家に帰ってから約束の場所へと向かった。
 約束の十分前にその場所へついた蘭。しかし、新一が約束に遅れてくることは明白だった。なぜなら・・・
「あ!工藤新一だ!」
 蘭の前を通り過ぎようとしていた女の子が、目の前の大画面テレビを見て声を上げた。
 そう、蘭が新一と待ち合わせをした場所のすぐ目の前に、街頭用の大画面テレビがあって、今まさに生中継で新一の推理ショーが繰り広げられているところだったのだ・・・。
 瞳を輝かせ、時折顎に手をやり考えながら推理を続ける新一。
「やっぱりかっこいいよねえ。彼女とかいるのかなあ」
「いいよねえ、こんな人が彼氏だったら」
 すぐ側に当の彼女がいるとは思ってもいない女の子たちの会話。聞いていた蘭は、思わず溜息をついた。
 ―――やっぱりこんなとこで待ち合わせするんじゃなかった・・・。
 理想と現実は違うのだろうか。推理をしているときの新一は、蘭が見てもかっこいいと思うし、そんな新一を誇りにも思う。だけど・・・
 ―――今の新一の頭の中には、きっとわたしの存在なんてこれっぽっちもないんだろうな・・・。
 途端に寂しさがこみあげる。
 ―――早く来てよ、新一・・・
 だが、今すぐに事件を解決することが出来たとしても、新一のいる場所からここまで、どんなに急いでも三十分はかかってしまう。
 ―――新一の馬鹿・・・。約束は守るって言ったくせに・・・
 テレビの前の人だかりから、少し離れたところに立っている蘭。テレビは高い位置にあるので蘭の位置からでもはっきりと見ることができる。
 約束の時間を二十分ほど過ぎた頃、事件は新一によって見事に解決された。
 テレビの中の新一は誇らしげに集まった記者の質問に答えている。
 ―――まだ来れそうにないわね・・・。
 と、蘭が思ったときだった。突然画面に2人の女の子が現れ、新一に駆け寄った。
「工藤さん!これ、受け取ってください!」
「これも!!」
 2人が新一に差し出したのはかわいらしくラッピングされた包みで・・・
「あ!あれ、チョコレートじゃない?良いなあ!わたしもあの場にいたら渡すのにい!」
 テレビを見ていた女の子が悔しそうに言った。
 テレビの中では、いつの間にか新一の周りに集まった数人の女の子がやはりチョコレートを渡そうとしていた。
 蘭の表情が、一気に曇る。
 ―――あ―あ・・・あんなにたくさん・・・。仕方ないけど・・・でも、やっぱりやだな・・・。
 新一がチョコレートを受け取るところを見ていたくなくて、くるっと画面に背を向けたその時、テレビから新一の声が聞こえてきた。
「ごめん、悪いけど受け取れないんだ」
 え―――!!と言う女の子たちの声。蘭は、驚いてテレビを振り返った。
「ごめん。今年は・・・1つしか受け取らないことに決めてるから」
「え―、やっぱり彼女いるんだァ」
 テレビを見ていた女の子たちもざわざわと騒ぎ出す。
 そして、新一はカメラのほうを見ると・・・
「蘭!今から行くから、ちゃんと待ってろよな!」
 と、まるで蘭に直接語りかけているように・・・まっすぐにこっちを見てそう言うと、にっと笑って、その場にいた人たちに「そういうことで」と手を振って画面から消えてしまったのだった・・・。

 蘭は、ぽかんと口を開けたまま、その場に固まってしまっていた。
 ―――な、な、な・・・何なのよお、あれは~~~っ


 漸く待ち合わせ場所についた新一。息を切らせつつ回りを見回す。が、蘭の姿は見えない。
 ―――帰っちまったのか・・・?まさか、あのテレビを見て怒っちまったとか・・・
 ありえない話ではない。
 新一は、約束を忘れていたわけではない。だが、焦ると返って頭が働かなくなってしまうと思い、努めて冷静な振りをしていたのだ。待ち合わせ場所のすぐ近くにあの大画面テレビがあることは知っていた。だから、蘭にも新一が今どういう状況か分かるだろうと思っていたのだ。そして漸く事件を解決し、さっさとここに来ようと思っていたのに、その場にいた記者につかまり、さらにはファンの女の子たちまで現れ・・・内心、新一はものすごく焦っていたのだ。
 ―――ここで蘭を怒らせるわけにはいかねえんだ!
 そしてとっさにでたあの言葉・・・。
「やっぱ、怒っちまったのかな・・・」
 その場にしゃがみこむ新一。はーっと溜息をついたその時、すっと差し出された缶コーヒー。
「お疲れ様。寒かったでしょ?」
 にっこり笑って言ったのは・・・
「蘭!」
 新一はがばっと立ち上がると、目を丸くして蘭を見つめた。蘭は、きょとんとして新一を見ている。
「どうしたの?」
「あ、いや・・・帰っちまったかと思ってたから・・・」
「だって、待ってろって言ったじゃない、新一」
「そうだけど・・・おめえ、怒ってねえの?」
「何を?」
「何をって、その・・・」
「・・・怒ってるよ」
「!」
「でも、嬉しかったから・・・」
 新一を見上げ、ふわりと微笑む蘭は、まるで花が咲き誇っているように綺麗だった。
「蘭・・・」
「今年は1つだけって・・・これのことだと思っていい・・・?」
 そう言って、蘭が差し出したのは丁寧にラッピングされた箱。
「ああ・・・。ありがとう」
 新一が受け取ると、蘭はまた、嬉しそうに微笑んだ。
 新一は、その箱を持ったまま、そっと腕を蘭の背中に回した。
「ごめんな、遅れて・・・」
「ううん。新一、かっこよかったよ?ああいうときは、きっとわたしのことなんて忘れちゃってるんだろうなって思ってたの。でも、ちゃんと約束思い出してくれて・・・嬉しかった」
「バーロ、俺がおめえのこと忘れるなんて、あるわけねえだろ?ちゃんと覚えてたさ。だから、急いで解決したんだぜ?」
「え、そうなの?」
「あたりめえだろ?推理してるときだって、おめえのことだけは忘れたりしねえよ」
 ほんのり頬を染めてぶっきらぼうに言う新一が、堪らなく愛しかった。
「新一・・・」
 嬉しそうに笑う蘭を、新一はふわりと抱きしめる。
「寒かっただろ?俺の家に行こう」
「うん」
 

 家につき、2人で蘭の作った夕食を済ませてから、コーヒーと紅茶を入れる。
 新一は箱からチョコレートケーキを出してみた。
「お、すげえうまそう」
「えへへ。ちょっとだけブランデーも使ってみたの」
「へえ、食っていい?」
「もちろん」
 蘭は、ちょっとドキドキしながら、ケーキを食べる新一を見ていた。
「どう?おいしい?」
「うん、うめえよ。このほろ苦さがいいかも。甘すぎなくってさ」
「ホント?良かった。新一ってあんまり甘いもの好きじゃないから、ビターチョコを使ってみたの」
「へえ、さすがだな」
 感心したように言う新一に、蘭は嬉しそうに頬を染める。そんな蘭に見惚れつつ・・・新一は思った。
 ―――やっぱりテレビで蘭に呼びかけたのは正解だな。学校で、俺と蘭のこと知らない奴にも、知ってても性懲りもなく蘭に手え出そうとしてやがる奴らにも、見せつけてやれたもんな。
 新一は、そっと手を伸ばすと蘭の頬に触れ、そのまま唇を重ねた。静かに目を閉じ、それを受け入れる蘭。何度も啄ばむようなキスをした後、深く口付ける・・・。
 チョコレートのほろ苦い味が蘭の口の中にも広がる。
「おいしいだろ?」
 唇を離し、新一が耳元で囁くと、蘭の頬が薄く染まった。
「ん・・・」
「蘭・・・?」
「え?」
「・・・俺、こっちも食べたくなちゃったな」
「?・・・こっちって・・・?」
「こっち」
 新一はにっこり笑うと、蘭の瞼に唇を寄せた。
 そして新一の言わんとすることを知り、か―っと顔を赤らめる蘭。そんな蘭を見て、楽しそうに笑う新一。
「蘭・・・いい?」
 耳元で甘く囁く新一に、真っ赤になりながらも小さく頷く蘭。
 新一は愛しそうに蘭の髪をなでると、立ち上がって、蘭を横抱きに抱えた。
「し、新一・・・」
「俺の部屋、行こう」
 熱い瞳で見つめられ、蘭は何も言えなくなってしまった。ただその胸に頬を寄せ、新一の首に腕を回してきゅっとしがみ付いた。
「・・・今日は、ずっとはなさねえからな」
「うん・・・。離さないで・・・」
 新一の部屋の明かりがつき、暫くするとまた消えてしまった。

 恋人たちの幸せなひと時。これ以上覗き見するのは無粋と言うもの。
 どうかいつまでも2人が幸せでいられますように。
 夜空に瞬く星にそんな願い事をしながら・・・。




Fin
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 これはコピー本にも掲載したバレンタインデーのお話です。
もうすぐ3月になっちゃいますが(^^;)
 もうちょっとお付き合いいただければうれしいです♪

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give me chocolate! ~快蘭新~

Category : novels(コナン)
 「ら~んちゃんvチョコちょうだいv」
 満面の笑みで、照れもせずにそうおねだりするのは、毎日のようにここ、工藤邸に足しげく通ってい
る男、黒羽快斗。
 そして、その快斗の言葉を聞いて、寝そべっていたソファからがばっと起き上がったのは、いまや全
国的に名の知れた高校生名探偵、工藤新一。
「快斗っ、てめえ―――!」
 殺気立つ新一の横で、大きな瞳をまん丸に開ききょとんとしているのは、新一の恋人であり、快斗の想い人でもある毛利蘭。
「チョコ、欲しいの?快斗くん」
 不思議そうに聞く蘭を、ギョッとして新一が見る。そして、快斗は嬉々として
「うん、欲しい!くれるの?蘭ちゃん!」
「うん、良いよ」
 そう言って、にっこりと微笑む蘭。もちろん新一が黙っているはずもなく・・・
「なっ、何言ってんだよ!?蘭!」
「新一こそ、何怒ってるの?良いじゃない、チョコくらい。待っててね、快斗くん。今もって来るから」
 慌てる新一をさらりとかわし、蘭はキッチンへと消えた。その後姿を、呆然と見送っていた新一は・・・
「あいつ・・・今日が何の日か、忘れてんじゃねえのか?」
 と呟いた。
 そう、今日は2月14日。バレンタインデーなのだ。その、今日という日にチョコレートを贈るとい
うことは、やはり特別な意味合いがあるもので・・・。今まで、そういう特別な日を忘れてしまうのは、
いつも新一のほうだった。自分の誕生日でさえ忘れ、いつも蘭に思い出させてもらっていた。
 しかし、今年は蘭と恋人同士になってから、初めてのバレンタインデーだ。いつもチョコレートは貰っていたが、今年はちょっと違う贈り物があるのではないかと・・・密かに期待していたりしたのだ。
 今日は土曜日で、学校も休みだ。いつもは学校で、女の子からたくさんのチョコレートを貰う新一も、
今年はまだ誰からも貰っていない。もちろん、今までとは違い、蘭以外の女の子からチョコレートを貰
うつもりなど毛頭なかったのだが・・・。
 しかし、いつも通り朝から新一の家に来て、掃除、洗濯、食事の支度をてきぱきとこなす蘭からは、
チョコレートが渡される気配はまったく感じられず。そうこうするうちに、昼過ぎにやってきた快斗が、
さらっとチョコレートをねだってしまったというわけだ。
「さあね。とりあえず、俺は蘭ちゃんからチョコレートがもらえれば良いや♪」
 ご機嫌な様子の快斗。新一の向かい側に座り、鼻歌など歌っている。先を越された形の新一は、八つ当たり気味に快斗を睨みつけたが、まるっきり効果はなく・・・。
「おまたせ~~」
 にこにこと、無邪気な笑顔をたたえてやってきた蘭は、お盆に3人分の飲み物と、ハート型のチョコ
レートケーキを乗せて持っていた。
「うわっ、うまそ~~!これ、食べても良いの?」
 感激する快斗。それを見て、照れくさそうに頬を染めて微笑む蘭はとてもかわいくて・・・。思わず
見惚れてしまう新一だったが、そんな場合ではないと我に帰り、
「ら、蘭!そ、そのチョコレートケーキ、おめえが作ったのか?」
「ん?そうよ。新一は、どうする?」
「ど、どうするって・・・」
「だって、新一、甘いものあんまり好きじゃないでしょう?これ、食べれる?」
「あ、新一食べないんなら、俺が新一の分も―――」
 快斗がここぞとばかりに身を乗り出すのを、今度こそ食い止めようと、新一は快斗の言葉を遮った。
「食べれる!」
「あ、そう?じゃあ、これ2つに切るね?」
 そう言って、にっこり微笑む蘭。その笑顔はとてもかわいく、快斗はそんな蘭に見惚れていたが、新
一はどうにも納得いかなかった。
 蘭の手作りのチョコレートケーキ。それは、どう見てもバレンタインデー用である。蘭が、今日とい
う日のことを忘れているとはとても思えない。それなのに、蘭はそれについて一言も触れようとせず、
しかもこのチョコレートケーキを新一だけではなく、快斗にも食べさせようとしている・・・。
 ―――一体、どういうことだ??
 ハート型のケーキを綺麗に2つに切り分けると、快斗と新一の前にどうぞと置く。快斗は、嬉しそう
にそのケーキにフォークを刺したが、新一は手をつけようとしない。
 蘭が、不思議そうに新一を見て、首を傾げた。
「食べないの?新一」
「・・・あのさ、蘭」
「何?」
「これ・・・バレンタインデー用のケーキじゃねえのか?」
 恥ずかしい気持ちを抑え、思い切って聞いた新一に、なぜか困ったような表情の蘭。
「蘭?」
「そう、だったんだけど・・・」
「だったって・・・どういう意味だよ?」
「だって・・・新一、バレンタインデーのチョコレートはいらないんでしょう?」
 思いもよらなかった蘭の台詞に、思わず新一の目が点になる。
「―――はァ?なんだよ、それ」
「だって・・・隣のクラスの子が言ってたの、聞いちゃったの。新一が、今年は誰からもチョコレート
を受け取らないって言ってるんだって・・・」
「・・・・・・・」
 ・・・確かに。隣のクラスとの合同体育の授業のとき、「良いよなあ、工藤は毎年余るほどのチョコ
レートが貰えてよォ」と言って冷やかしてきた隣のクラスの男子に言ったのだ。「今年は、誰からも貰
うつもりねえよ」と・・・。
 だが、それは「蘭からのものを除いては」という意味。晴れて恋人同士となった2人。彼女がいれば
至極当然のことと、新一は思ったのだ。もちろん、その場にいた誰もが新一の言いたいことは分かったし、たぶんその話をしていた隣のクラスの女子だって、そんなことは分かっていたはずなのだ・・・。
「・・・で・・・?」
「え?・・・だからね、渡すのやめようかなって思ったんだけど、せっかく材料も買ってあったし・・
・。バレンタインデー用としてじゃなければ、食べてくれるかなあって思って・・・。だめだった?」
 伺うように、不安げな視線を新一に向ける蘭。新一は、体中の酸素を吐き出すかのような、盛大な溜息をついたのだった。
「・・・おめえな・・・俺が、何で誰からも貰うつもりねえって言ったのか、わかんねえの・・・?」
「え・・・?え―と・・・甘いもの苦手だし・・・たくさん貰いすぎて、持って帰るの大変だし・・・
お返しが大変だから・・・?」
 天井を見つめ、考えながら思いつく理由を並べてみる蘭。それを見て、新一はがっくりとその場に突
っ伏してしまった。
「し、新一?どうしたの?」
 蘭はわけがわからず、新一を見ていたのだが・・・。
 それまで、黙って2人の会話を聞いていた快斗が、堪えきれなくなったかのように、急にぷーっと噴
出してしまった。
「か、快斗くん?」
 突然笑いだした快斗を、びっくりして見つめる蘭。新一は、苦虫を噛み潰したような顔で快斗を睨む。
「・・・笑ってんじゃねえよ」
「クックック・・・わ、わりい・・・。蘭ちゃん、サイコーv俺、蘭ちゃんのそ-ゆーとこ、大好きv」
 快斗の台詞に、顔がゆでだこのように真っ赤になる蘭。しかし、なぜうけているのかはさっぱり分か
らない。
 ひたすら笑いつづける快斗と、膨れっ面でそっぽを向いている新一。蘭はだんだん面白くなくなって
来た。
「もう!どういうことよ?」
 ぷうっと膨れてしまった蘭に、快斗が慌てて笑いを止める。
「ごめん、ごめん、蘭ちゃん。教えるからさ、怒らないでよ」
 その言葉に、蘭は伺うような視線を快斗に向けた。
「・・・要するに、新一の欲しかったものはこれなんだよ」
 と言って、快斗が指差したのは、半分に切られたチョコレートケーキ。
 蘭は、きょとんとしてケーキを見る。
「これ・・・?」
「そ。他の子がくれるチョコレートはいらない。でも、これは欲しいんだ。だろ?新ちゃん」
 ニヤニヤしながら視線を送ってくる快斗には答えずに、ふん、とあさっての方向を見る新一。その顔
は真っ赤だ。
 快斗の言った言葉を頭の中で繰り返しながら、新一の顔をまじまじと見つめ・・・。
 たっぷり1分も考えた後、ようやく蘭の瞳が驚きに見開かれる。
「え・・・え~~~!あ、あれって・・・そういう意味だった・・・の・・・?」
 ばつの悪そうな顔で、蘭に視線を戻した新一は・・・。
「・・・普通、そういう意味だろ?」
「そ、そうなの・・・?」
 赤い顔で、快斗に確認するように、上目遣いで見つめる蘭が、堪らなくかわいくて。快斗は思わず蘭
の艶やかな髪に手を伸ばした。
「ま、受け取り方は人それぞれだからね。蘭ちゃんが悪いわけじゃないって。おかげで俺も、蘭ちゃん
のチョコレートv堪能することが出来たしね」
 快斗の指が、蘭の髪に軽く触れたところで、新一の手がバシッと快斗の手を弾いた。
「おめえは、調子に乗ってんじゃねえよ!」
「いってえ・・・。良いじゃねえか、少しくらい分けてくれたってさ。どうせ甘いもの苦手なんだろ?」
「うっせー!これは別なんだよっ」
 すっかりご機嫌を悪くしてしまった新一に怒鳴られ、快斗もむっと顔を顰める。
 蘭はおろおろと2人の顔を見比べ、どうにかフォローしようとするが・・・
「あ、あの、ごめんね!わたしってばすごい勘違いしてたみたいで・・・。えっとね、実はもうひとつ
用意してるの!これは、新一に食べてもらおうと思ってたやつで、快斗くん、来るかどうか分からなか
ったから、会った時に渡せるようにと思って、これ・・・」
 と言って、自分のバッグからがさがさと取り出したのは、可愛らしい巾着。
「はい!」
「へ・・・これ、俺に・・・?」
 快斗が、目をぱちくりとさせる。
 その光景を、新一は呆気に取られ見ていたが・・・
「ちょ、ちょっと待てよ!何で快斗の分まで用意してんだよ?」
「え?だって、新一だけにあげたんじゃ、不公平かなって・・・。あの・・・」
 見る見る顔色が変わっていく新一を見て、蘭は、さすがに自分の行為が今の状況に不適切だったことに気付き、その目を新一からそらせた。
「・・・すっげー嬉しい・・・蘭ちゃんが、俺にチョコレート・・・」
 1人、感激している快斗。新一は、そんな快斗をギロリと睨みつけると、ひくひくと口を開いた。
「・・・出てけ・・・」
「え―――?何でだよ?こっちのケーキ、まだ食い終わってねえのに・・・」
 ぶちぶちと文句を言いつつ新一に顔を向けた快斗は、この世のものとは思えないほどものすごい形相をした新一の表情に、言葉をなくす。
「し、新一・・・」
「出てけ――――――!!!!」


 快斗が一目散に逃げ出し、シーンと静まり返った部屋で・・・
「蘭・・・」
 新一の低い声に、蘭がその身をぴくりと震わせる。
「は、はい・・・」
「わかってるだろうな・・・」
「な・・・何を・・・?」
「今日は、かえさねえからな!」
「・・・・・・・」
 新一の言葉に、ただ引き攣った笑みを返すしかない蘭だった・・・。

 ―――う・・・快斗くん、戻ってこないかしら・・・

 もちろん、今日ばかりはそんな願いも通じることはなかったのだった・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 バレンタインデー企画でございましたv
 うふふ・・・新一、暴走してます・・・。かわいそうな蘭ちゃん。
 個人的には、快斗に助けさせたかったのですが。さすがに新一がかわいそうな気がしたので、
 これで終わらせてしまいました。

 すいませんん(^^;)
 2004年のバレンタインデー企画で書いたお話、こちらでアップするのすっかり忘れてました。
 たぶんまだあると思います・・・ホワイトでー前までには終わらせて、ホワイトデーの企画モノもアップしますね♪
 こんなへぼブログですが、楽しんでいただければうれしいです。
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The Sparks! ~ちび快蘭新~

Category : novels(コナン)
 9月1日。今日から新学期の始まりだ。
そんなさわやかな朝、毛利家の前では小さな炎が燃え上がりつつあった・・・。

「あら」
 窓から下の通りに目をやった英理が声を漏らす。
「蘭!新一くんと快斗くん、もう来てるわよ!」
「え、ほんと!?」
 食卓で、ジャムパンをほおばっていた蘭が顔を上げた。
 大きな瞳がますます大きく見開かれ、蘭は慌てて残りのパンを口の中に押し込んだ。
「あらあら、そんなに慌てて・・・のどに詰まらせないでよ?」
「・・・んん・・・ふぁい・・・」
 目を白黒させながら、アイスティーで流し込むようにごくんと飲み込んだ蘭を、英理は困ったような顔で、それでもいとおしそうに見つめている。

「いってきまーす!」
 元気な声を響かせて蘭が行ってしまうと、それまでずっと新聞を読んでいた小五郎が、ようやく顔を上げた。
「騒がしいやつだな」
「いいじゃない、楽しそうで・・・ナイトが2人もついてるから安心でしょ?」
「フン、なにがナイトだ」
 面白くもなさそうに新聞に目を戻す小五郎を、英理は笑いをかみ殺しながら見つめるのだった・・・。


「新一、快斗くん、おはよー!」
 階段を駆け下り、家の前で待っていた2人に声をかける。
 と、その瞬間、2人の間に燃え上がっていた炎が一瞬小さくなった。
「オス、蘭。ちゃんと朝飯食ってきたか?」
 新一の言葉に、蘭がにっこりと微笑む。
「うん!2人とも、早かったねー」
「蘭ちゃんに早く会いたかったからさ♪今日からまた毎日会えるね」
「・・・俺は毎日会ってたけどな」
 新一の言葉に、また2人の間の炎が大きく燃え上がる。
 それに気付いていない蘭は、無邪気にニコニコと笑っている。
「そうだねー。今日は園子とも会えるんだ♪楽しみーvv」
 3人で学校に向かう毎日。
 幼馴染の新一と蘭は、物心ついたときから兄弟のように育った仲だ。
 泣き虫な蘭を、ナイトのようにいつも守ってきた新一。蘭も新一にいつもくっついていた。

 そんな2人の前に、快斗が現れたのは小学校の入学式だった。
 1人でトイレに行った蘭は、学校の中で迷子になってしまった。
 心細くて泣いているところへ現れたのが快斗。
 快斗はかわいい蘭に一目ぼれ。蘭もまた、優しい快斗に心を開いたのだった。
 もちろん、新一にとっては厄介な相手となるわけで・・・。

「なあ蘭ちゃん、今日学校終わったらうちにおいでよ。母さんがスパゲッティ作ってくれるんだ♪一緒に食べよ♪」
 ニコニコと蘭に笑いかける快斗。しかし、蘭が答える前に、新一が割って入る。
「だめだよ!蘭は今日、うちに来るんだ。うちの母さんは今日パイを焼いてくれるんだ!」
 2人の間の炎が、さらに大きく燃え上がった。
「えっと、どうしようかな・・・」
 蘭が困ったように眉を寄せ、首を傾げる。
 う~んと悩んだ挙句・・・
「あ、じゃあ2人ともうちに来れば?今日ね、お母さんがクッキーの作り方教えて
くれるの♪一緒にしよう?」
 ぱっと顔を輝かせ、にっこりと微笑む蘭。
 2人の間の炎が、ぷしゅ~と一気に小さくなる。
「お、俺は別にいいけど・・・」
「やった♪蘭ちゃんのうちに行っていいんだvv」
 喜ぶ快斗を、じろりと横目でにらむ新一。
 そこへタタタッと駆け足が聞こえてきたかと思うと、
「ら~んvv」
 と、蘭に抱きついてきたのは・・・
「園子!おはよう」
 明るい茶髪が印象的な女の子、蘭の親友園子だった。
「おはよ!久しぶりだね♪―――相変わらず、2人引き連れてんのね」
 園子がちらり、と新一を快斗のほうを見た。
「んだよ、園子・・・」
「べっつに~。がんばってるなあと思っただけ。ね、蘭、どうなの?」
「え?」
 蘭が、きょとんとして首を傾げる。
「だ・か・ら、2人のうち、どっちが好きなの?」
「お、おい!」
 園子の言葉に新一が慌てるが、快斗はうれしそうに笑った。
「あ、それ俺も聞きたかったんだ」
「でしょ?ねえ蘭、どっち?」
 3人の視線が蘭に集中する。
「どっちって・・・わたしは、2人とも好きだよ?」
 蘭は、当たり前のことのように応えた。
「えー、2人ともって・・・だって、2人の人とは結婚できないんだよ?」
「結婚・・・?」
「そう!この2人だったら、どっちと結婚したい?」
 園子は、瞳をきらきらと輝かせながら蘭の答えを待った。
 蘭はう~んと考えてから・・・
「・・・わかんないけど・・・わたし、結婚するならお父さんみたいな人がいいな♪」
 と、にっこりと笑って言った。
 蘭の答えに、3人は首を傾げる。
「蘭のお父さん・・・?あの・・・?」
「うん!だってお父さん優しいし、強いし、かっこいいもん!」
 満面の笑みでそう応える蘭に、新一と快斗はボーっと見とれていた。
「蘭のお父さんみたいになるの?2人とも」
 園子が呆れて言うと、新一と快斗はちらりとお互いを見やった。
 蘭と結婚できるのなら、それもいいかなと思ってはみたが、しかし、問題はこの男・・・
 2人が同じことを考えているのが手に取るようにわかり、園子は大きなため息をついた。
「ねえ、じゃあ蘭の1番好きな人は誰?お父さん?」
「え、1番て、1人だけ?」
「あったりまえじゃない!1番が2人いたらおかしいよ」
 園子の言葉に、蘭は困ったように眉を寄せた。
「でも・・・わたし、みんな好きだもん。新一も、快斗くんも、園子も、お母さんもお父さんも大好き!1人だけなんて選べないよ」
「も~、蘭ってば。1番ってのは特別なんだよ?特別は1人だけなの!」
「とくべつ・・・?」
「そう!」
 園子が大きく頷くと、蘭はまた困ったように瞳を瞬かせた。
「・・・じゃあさ、どうしたら蘭ちゃんの特別になれる?」
 と、突然快斗が言い出した。
「え?」
 蘭が驚いて顔を上げる。
「蘭ちゃんの特別になるにはどうしたらいい?蘭ちゃんの理想のタイプ、教えてよ」
「う~ん・・・」
 蘭はまた、眉間にしわを寄せて考え込んだ。
 3人が、その様子を固唾を呑んで見守る。
「・・・スーパーマンみたいな人・・・がいいな」
「「「スーパーマン???」」」
 蘭の応えに、3人が思わずはもる。
「うん!強くて優しくって、わたしがピンチの時には飛んで来て助けてくれる人!」
 満面の笑みの蘭を前に、園子はあきれたようにため息をついた。
「蘭って・・・ガキねえ・・・」
「なによお」
 蘭が、ぷうっと頬を膨らませる。
 その光景を見ながら、快斗と新一はちらりと目を見交わした。
「・・・俺が、なるからな」
 新一の言葉に、快斗はにやりと笑う。
「ふん、負けねえよ。俺が、蘭ちゃんの1番になるんだ」
「・・・競争だな」
「ああ」
 2人の間に、再び熱い炎が燃え上がった。
 園子と蘭は、そんな2人に気付かず、話はいつの間にかスーパーマンから仮面ライダーになっていた・・・。

 それからの毎日は、何かというと競い合う快斗と新一の姿が見られるようになる
のだった・・・。
 そして将来、蘭の特別になれたのはどちらか・・・?
 それはまた、別の話・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
う~ん、どうかなあ。
ちょっと尻切れトンボ?
いまいち小学生らしくない会話なような気がする。
ま・・・次回、がんばろう・・・。
あ、このお話はこれで完結ですけどね。

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My flower 1 ~平・新・快蘭~

Category : novels(コナン)
 「せやから、あそこで犯人のアリバイが・・・」
「いや、あそこじゃねえだろ?だってあの場合被害者が・・・」
 教室の片隅でなにやら熱っぽく話し込んでいる男子生徒が2人。そこへ、ニヤニヤと笑いを含んだ顔で近付いてくるもう1人の男子生徒・・・。
「まーた物騒な話で盛り上がっちゃって。たまにはオンナの話とかしねえの?」
「んだよ、快斗」
「今はオンナの話どころちゃうねんて」
 新一と平次がうざったそうに快斗を見る。

 工藤新一、服部平治、黒羽快斗。高校2年生の彼らはこの学校では知らないものがいないほどの有名人だ。新一と平次は高校生ながら探偵として、いくつもの難事件を解決している。そして快斗は、偉大な手品師であった父、黒羽盗一の跡を継ぎ、いまや父親をもしのぐほどのマジシャンとして日本中で活躍しているのだった。
 そしてそのルックスもさることながら、3人とも成績優秀、スポーツ万能とくれば女の子達が放っておくはずはないのだが、3人とも忙しすぎるのか、今のところ女の子よりも夢中になれるものがあるからなのか、いまだに彼女はいなかった。

「つれねえなあ。せっかくいいニュース持ってきたのにさ」
「ニュースぅ?」
「なんやねん?またどうせくだらないことちゃうか?」
 2人同時に怪訝そうな顔をする。快斗は相変わらず人を見透かしたような表情でにやりと笑った。
「転校生だよ」
「「転校生?」」
 異口同音に言葉を発し、ちらりと顔を見合わせる。
「・・・それが何でいいニュースなんだ?」
「そうや。別に珍しいことやないやろ?」
「それがさ、すっげえ可愛い女の子なんだ」
「なんだよ、もう見て来たのか?」
「相変わらず、抜け目のないやっちゃなあ」
「たまたまだよ。さっき先生に呼ばれて職員室に行ったらさ、いたんだ。で、俺は机運んでくれって頼まれてさ。ホント、世の中にこんなかわいい子がいたのかと思うくらい、かわいかったぜえ」
 ニヤニヤとしまりのない顔をしている快斗を、半ば呆れて見ている2人。
「そら良かったなあ」
「んじゃ、おまえ付き合ってみれば?」
 と言うと、快斗がにんまりとしてやったりという顔をして笑った。
「ああ、彼女さえその気になってくれればな。おめえら、そんなこと言っといて後で後悔すんなよ」
 その時ちょうどチャイムが鳴り、快斗は自分の席へと戻って行った。
 その後姿を見送り、2人は顔を見合わせた。
「何だ?あいつ・・・」
「その子がよっぽどかわいかったんやろ?まあ、俺らには関係のない話や」
「そだな」

 がらりと、教室のドアが開き、担任の教師が入ってくる。その後から、1人の少女がおずおずと入って来た。
 その少女が入ってきた途端、教室は一瞬静まり返り、そして次の瞬間、教室のそこかしこから溜息が聞こえて来た。
「・・・・・おい、工藤・・・・」
「・・・・・ああ・・・・・」
「・・・快斗に言ったこと、取り消さなあかんのやないか・・・?」
「・・・だな・・・」
 平次と新一は、口を半開きにしたまま、その少女に見入っていた。
 窓際の席にいた快斗は、そんな2人を見てにやりと笑った。

 さらさらの黒い髪。陶器のような白い肌。吸い込まれそうな大きな瞳はきらきらと輝いていて、唇はほんのりと桜色。
 転校生、毛利蘭は誰もが見惚れるほどの美少女だった。もちろん、あの3人も例外ではない。
「毛利蘭です。よろしくお願いします」
 いくらか緊張した面持ちで、軽く会釈をした蘭に、担任の教師が快斗のほうを見て口を開く。
「さっき、黒羽くんには会ったわね?彼の隣の席が貴方の席よ。わからないことは彼や・・・そこの、工藤君に聞くといいわ。工藤君は、クラス委員だから」
 と言って、最後に新一の方を向いて言うと、蘭も新一の方を見た。そして、にっこりと微笑むと新一に向かって軽く会釈をした。
 その笑顔を見て、新一と、その後ろにいた平次はあまりのかわいさに固まってしまい、ぽかんと馬鹿みたいに口を開けていたのだった・・・。


「蘭ちゃん、校内を案内するよ」
「ありがとう、黒羽くん」
 休憩時間。快斗が早速蘭に声をかけたが、そこへあの2人がやってくる。
「待てよ。校内の案内ならクラス委員の俺がやるよ」
「俺も一緒さしてもらうわ」
「え・・・・・」
 突然現れた2人に、ちょっと驚いて目を見開く蘭。そんな顔もかわいくて、新一と平次は蘭に見惚れていたが、そこへ快斗が面白くなさそうに言う。
「・・・案内に3人もいるかよ。おめえらは勝手に殺伐とした話でもしてろって。おれは蘭ちゃんと親睦を深めてくんだからよ」
「なあにが蘭ちゃんだよ」
「なれなれしいんやないか?いくら席が隣いうても・・・」
「あ、あの・・・」
 3人の掛け合いに、蘭が慌てて口を挟んだ。それに反応した3人が、一斉に蘭を見る。
「えっと・・・ごめんね、わたし物覚え悪くって・・・黒羽くんは覚えたんだけど。もう1度、名前教
えてくれる?」
 と控えめに言って、新一と平次のほうを見た。その言葉に快斗は得意げにふんと鼻を鳴らし、新一と平次はちょっと面白くなさそうな顔をしたものの、すぐに蘭に笑顔を向けると口を開いた。
「俺は、工藤新一。一応クラス委員やってるよ」
「―――休む日が多うてほとんど仕事してへんけどな」
「んだよ?」
「別に・・・。あ、俺は服部平次や。よろしゅうな」
「うん、よろしく。服部くんって、関西のほうの人・・・?」
「そや。こっちには高校入学のときからや。蘭ちゃんは静岡やったっけ?」
「うん。西伊豆のほうなの」
「ほんまか。俺、1度行ったことあるよ。ええとこやなあ、海が綺麗で」
 いつの間にか会話が弾んでいる平次と蘭を見て、新一と快斗がおほんと咳払いをする。と、蘭がはっとして2人を見る。
「あ、ごめんね。えっと、校内を案内してくれるんだよね?でも、みんなに来てもらうの悪いし・・・。気、使わなくていいよ?徐々に覚えていくから・・・」
 そう言ってにっこりと笑った蘭の笑顔に、3人して見惚れてしまっていた・・・。
 と、その時新一の胸ポケットに入っていた携帯電話が着信を告げた。
「また事件か?」
 快斗がそう言うと、蘭がきょとんとして小首を傾げる。
「事件・・・?」
「―――はい・・・はい・・・分かりました。ではすぐに・・・え?あ、でも・・・分かりました。そ
れでは・・・」
 なぜか不本意そうに電話を切る新一。
「なんや、呼び出しやないんか?」
「呼び出しだけど・・・」
「けど?」
「今回は、俺だけでいいんだと。前回は服部が行ってるから、今回は休んでくれってさ」
「ふーん、さよけ。ほならさっさと行ったらええやん」
 平次はなぜか楽しそうだ。
「なんだよ、おまえら。いつもなら来るなって言われても無理やり行ってるくせに」
 快斗の言葉に、2人はあさってのほうに視線を向ける。
「あの・・・事件って・・・?」
 蘭が遠慮がちに聞くと、快斗が優しく微笑み、説明した。
「こいつら、探偵なんだよ。工藤新一と服部平次って名前に、聞き覚えない?」
 その言葉に、蘭がはっと口を抑える。
「あ・・・!じゃ、あの有名な?やだ、わたしったら全然気付かなくって・・・。あ、じゃあもしかし
て、黒羽くんって、あのマジシャンの黒羽快斗?」
「そういうこと。以後、お見知りおきを」
 そう言って、快斗がさっと手を広げると、ポンッという音と共に白い煙が現れ、そこから飛び出した鳩が蘭の周りを飛び回った。
「!!すごいvvかわいい~」
 快斗の突然のマジックに蘭は大喜びだ。
「蘭ちゃん。だまされたらあかんで。こいつはいつもこうやって女の子をだまくらかしてんねん」
「そうそう。校内一の女ったらしだからな」
「おい、変なこと言うなよ!」
「本当のことだろうが」
「あ、あの・・・」
 3人のムードがいよいよ険悪になってきたところで、蘭が口を開いた。と、3人が険しい顔をそのままに一斉に蘭のほうを見たので、蘭はビクッとして思わずあとずさった。
「あ、ご、ごめんね。あの、工藤君、呼び出しは・・・?」
 その言葉に新一ははっとする。
「あ、やべ!じゃあ、毛利さんまた明日な」
 最後にしっかり蘭に微笑むと、颯爽とその場を後にする新一だった・・・。

 「さ、じゃあ3人で校内回ろうか?」
 気を取り直し、快斗がそう言ったとき・・・
「くぉら~~~!!黒羽ぁ!おまえはまた鳩なんか飛ばしおって!!」
 と怒鳴り込んで来たのは、怖くて有名な学年主任の教師だった。
「げ、やべ・・・」
「今日こそは許さんぞ!職員室まで来い!!」
 そう言って、なかば引きづられるようにして連れて行かれてしまった快斗。平次と蘭は、呆気にとられてその光景を見ていたが・・・
 最初に我に帰ったのは蘭だった。
「ど、どうしよう?黒羽くん、連れていかれちゃった!」
「ま、いつものことやから」
 と、平次は平然としている。
「でも、黒羽くん、わたしに見せるために・・・」
「ああ、気にせんでええよ。あいつのあれは、趣味やねんから。しょっちゅうあんな事して怒られとんのや」
「そ、そうなの・・・?」
 それでも、ちょっと不安そうに平次を見つめる蘭が可愛くて、目を細める平次。
「大丈夫やって。さ、2人になってしもうたけど、校内回ってみよか?」
 人懐っこい笑顔に、蘭もつられて笑顔になる。
「うん、じゃあお願いしようかな」
「おっしゃ!まかしとき♪」


 平次と蘭は、残り少ない休憩時間を使って、校内を回ってみた。
 平次の説明はわかりやすく、話の途中に冗談を交えながら楽しく話をすることが出来、蘭もすっかりリラックスしていた。
「ありがとう、服部くん。すごく分かりやすかった。説明するの、じょうずなのね」
 蘭に微笑まれ、平次が柄にもなく赤くなる。
「ま、まああんなんでええんやったら、またいくらでも付き合ったるよ」
「うん!」
 仲良くまた教室に戻る2人。
 実は、校内を回る2人はとっても目立っていた。平次はもちろん、蘭もただ歩いているだけでも人目を引くほどの美少女だ。そんな2人が仲良さそうに校内を歩き回っていたのだ。目立たない方がおかしいというもの。そして、その噂は瞬く間に学校中に広まったのだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ランキングのリクエスト、「新蘭平快でクラスメイト四角関係」のお話です。
結構難しくて、ですね、全部書き終えるにはもう少し時間が欲しいかなと・・・。
平次が絡むお話のリクは、結構貴重なので、ちょっと平次寄りになってしまいました。
続きも、がんばって書きますのでもう少し待っててくださいね♪

 この続き・・・実は途中までできてるんですけどね。ちょっと行き詰ってて・・・
 もう少ししたら、アップしたいと思ってます。

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Proposal of marriage ~平蘭~

Category : novels(コナン)
 なにやら雑誌をじっと見つめている蘭。
 先ほどまで読んでいた小説から目を上げて、自分をじーっと見つめている目があることにも気付かない。
「なーにをそんなに夢中になって見とんのや?」
「あっ」
 さっと読んでいた雑誌を持っていかれ、蘭が慌てて顔を上げる。
「平次くんっ!!」
 取り返そうとする蘭をかわし、そのページに目を走らす。
「なんや、星占いやんか。こんなんに興味あるんか?」
「い、良いじゃないっ、もう、意地悪しないで返してよおっ」
 真っ赤な顔をして、必死に雑誌を取り返そうとする蘭を面白そうに見つめ、蘭の顔が自分の顔に近付いた瞬間に、その可愛らしい唇にさっとキスをした。
 途端、吃驚して身を引く蘭。
 平次はそんな蘭をにやにやしながら見つめている。
「もう!意地悪なんだから!」
「何が意地悪なんや。蘭は俺にキスされるのいやなんか?」
「そ、そうじゃないけどっ」
 困ったように俯いてしまう蘭。そんな蘭を見つめる平次の目は、意地の悪い中にも優しさが見え隠れしていて・・・。
 頭の上にあげていた雑誌をソファの上に置くと、その手を蘭の顎に添え、そっと上を向かせた。
 ちょっと驚いたような表情で平次を見た蘭だったが、少し頬を赤らめつつも、その潤んだ瞳をそっと閉じた。
 蘭の、艶やかな唇に平次の唇が重なる。
 甘く、痺れるような感覚に蘭の体からは力が抜けていく。そんな蘭の体を、平次の力強い腕が優しく支える。
 長い、夢のようなキスの後、唇を解放された蘭はうるんだ瞳で平次を見上げた。
「―――占い、良いこと書いてあったんか?」
「え・・・まあまあ、かな・・・?」
「なんやそれ」
 おかしそうにクックッと笑う平次を拗ねたように見つめる蘭。平次はそんな蘭がかわいくて、蘭の体をぎゅうっと抱き寄せる。
「きゃっ、ちょっ、平次くんっ」
「―――気にすることあらへん」
「―――え?」
「なんや悪いこと書いてあっても、気にすることあらへんよ。何があっても・・・蘭のことは、俺が守ってやるし」
「平次くん・・・」
「な?」
 優しく自分を見つめて言う平次に、蘭も笑顔になる。
「・・・うん。ありがと・・・」
 平次はソファに座ると、そのまま蘭を自分の隣に座らせ、肩を引き寄せた。蘭もされるがままになっている。
 2人の間に流れる優しく甘い時間。
 2人にとって、何よりも大切な時間だ。
「なあ、蘭」
「ん?」
「・・・一緒に、住もか」
 何気なく零れた平次の言葉に、蘭は目を見開きがばっと体を起こした。
「ええ!?」
「なんや、いやなんか?」
「そ、そうじゃなくて・・・一緒にって・・・それって・・・」
 顔を赤らめ、震える声で聞く蘭に、平次はいつもどおりにやりと笑い、
「ま、プロポーズっちゅうやつやな」
 と言ってのけたのだった。
 蘭のほうは、驚いて声も出せないでいる。
 どのくらいの時間がたったのだろうか。いつまでも呆けたように固まっている蘭を、じっと優しく見つめる平次。
 そして・・・蘭の瞳から、真珠のようにきれいな涙が一粒、零れ落ちた。
「―――蘭―――」
「平次くん、わたし・・・」
「必ず、幸せにする。俺と・・・結婚してくれるか・・・?」
「―――はい―――!」
 ふわりと、零れるように微笑んだ蘭は、花のように美しく・・・平次は、蘭を抱き寄せ、その艶やかな髪に顔を埋めた。
「幸せに、なろうな。2人で―――」
「うん・・・!」
 窓から差し込む優しい光が、2人を包み込む。
 そんな優しい光の中、2人はいつまでも抱き合っていた。
 この幸せが、いつまでも続くように・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 あ~~~ごめんなさい!平蘭、難しいです・・・。できたらいつか、再チャレンジしたいネタです・・・。もっと、平次は平次らしく、そして格好良く書きたかったんです。そして、もっとラブラブに・・・。なのにこんなんでごめんなさい。今度はもっとがんばりますんで・・・。


 見事撃沈したお話でした(^^;)
 今読み返しても恥ずかしいわ・・・
こんな駄文ですが、もしも気に入っていただけましたら、下のバナーをクリックしてもらえるとうれしいです。
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C h a n c e !? ~新蘭~

Category : novels(コナン)
「お父さん、出かけてくるね」
「んあ?こんな日曜の朝っぱらからどこ行くんだあ?」
 いつもよりもおしゃれをして、いそいそと出かけようとする蘭を見て、小五郎は顔を顰めた。
「新一のとこよ」
 しれっとして言う蘭に、不機嫌になる小五郎。
「新一ィ?あの探偵気取りのガキか!まさかおめえ、あんな奴と付き合ってるとかいうんじゃねえだろうな?」
 小五郎の言葉に、蘭がパッと頬を染める。
「な・・・!そうなのか!?ダメだ!!絶対に許さんぞ!!」
「べ、別にまだそんなんじゃ・・・と、とにかく行って来るからね!」
 血相を変えて身を乗り出した小五郎をあとに、蘭は慌てて家を飛び出した。
「おいっ、蘭!!俺は絶対に認めんぞー!!」
 階段を下りる蘭の耳に小五郎の怒鳴り声が響いてきたが、蘭はかまわず家を後にしたのだった。


 「蘭の奴、まだかな」
 一方の新一は、蘭が来るのを今か今かとドキドキしながら待っていた。
 新一が戻ってきてから1ヶ月。
 蘭などが想像も出来なかったような大きな組織と戦い、壊滅に導いた新一。もちろん新一1人の力ではなかったが、世間は久しぶりの高校生探偵、工藤新一の活躍に沸いた。
 せっかくもとの姿に戻れたというのに、世間は新一を放っておいてはくれず、なかなか蘭との時間を作ることの出来なかった新一。
 1ヶ月たって、漸く自由な時間が出来、こうして蘭を自宅に呼ぶことが出来たのだった。
 ―――今日こそは、ちゃんと俺の気持ちを伝えねえと・・・
 実は先日、学校に呼び出された新一は偶然そこにいた園子に会い、
「いいかげん、蘭のこと放ったらかしにしてると他の男にとられちゃうわよ?こないだだって、隣のクラスの男子に告られてたんだから!」
 と言われたのだった。
 ―――冗談じゃねえ!今更他の奴になんか渡して堪るかよ!
 そう決意を新たにし、拳を握りしめた時―――

『ピンポ――――ン』

 玄関でチャイムの音が鳴り、新一ははっと我に帰った。
 ―――蘭か?
 高鳴る心臓を押えつつ、玄関に向かい、ゆっくりとそのドアを開ける。
 目の前に立っていたのは、やはり蘭。
「蘭!」
 新一はほっとして笑顔になったが・・・ふと、蘭の抱えているものに視線を移す。
「それ・・・何だ・・・?」
 困ったようにそれを見つめる蘭。
「赤ちゃん・・・」
 そう、蘭の胸に抱かれて、気持ち良さそうにすやすやと眠っているのはどう見ても生後3ヶ月もたたないような人間の赤ん坊で・・・
「ど、どうしておめえが、赤ん坊なんて・・・!」
 一瞬、まさか蘭の・・・?と思ったが、どう考えてもそんなわけはないと思いなおし・・・
「それが、わたしにも良く分からないの」
 と、蘭も途方にくれたような顔をしている。
 ともかく玄関先で話していても仕様がないと思い、新一は蘭を促し家の中に入った。
 ソファにそっと赤ん坊を寝かせ、蘭はほっと息をつくと自分もその隣に座った。
「―――で?どういうことなんだ?」
「それが・・・阿笠博士の家の前を通ったら、突然家の中から博士と志保さんが飛び出してきて・・・」
「博士と灰原・・・いや、宮野が?」
「うん。で、わたしの顔を見るなり、博士が“蘭君、良いところで会った。ちょっとこの子を預かってくれんか!”って・・・」
 と言って、蘭は赤ん坊を見た。
「博士が?何で赤ん坊なんて・・・」
 新一が困惑気味に言うと、蘭も肩を竦め
「知らないわよ。で、その後出てきた志保さんが“ごめんなさい、ちゃんと後で引き取りに行くから、工藤君と2人でがんばってて”って・・・」
 と言った。
「はあ?」
「で、すぐに車に乗り込んで・・・あ、別れ際に“その子の名前は瞬よって”言ってたけど・・・」
「で、どっかに行っちまったと・・・名前だけ教えてもらってもなあ・・・」
 新一は赤ん坊の顔を見て、溜息をついた。
「あ、それから赤ちゃんと一緒に、紙おむつと着替えと、哺乳瓶とミルクを預かってるけど・・・」
 と言いながら、蘭は持っていた大きなボストンバッグを開けてみた。
「で・・・どうすんだ?この子」
「どうするって・・・博士たちが戻ってくるまで面倒見るしかないでしょ?」
「俺たち2人で、か?」
「他に誰がいるの?」
「・・・・・」
 2人は黙ってその赤ん坊・・・「瞬」を見て・・・同時に溜息をついた。
「・・・でも、可愛いね、赤ちゃんて」
 と言って、蘭はくすっと笑った。新一はそんな蘭の笑顔に見惚れ・・・
 ―――ま、少しの間だし・・・な。
 ちょっとした新婚気分を味わえるのもいいかも・・・などと思う新一だった・・・。
「ところで、誰の子なんだろうな。まさか博士の子ってことはねえだろうし」
「そうね。志保さんの子ってわけでもなさそうだし」
 と2人で首を捻っていると・・・
「・・・ふ・・・」
 と、突然瞬が顔をゆがめ・・・たかと思うと、その瞳をパッチリと開いた。
「あ、起きたvわあ、目がおっきくて可愛いねえ~vv」
 蘭が嬉しそうに言って、瞬を抱き上げた。
 瞬はきょとんとした顔で蘭のことをじいっと見ていたが・・・。やがて安心したのか、ぱあっと笑うと、その小さな手を蘭の口元に伸ばした。
「なあに?瞬君。うふ、笑顔も可愛いvvね、新一も抱いてみる?」
 と言う蘭の言葉に、新一は
「いや、俺は良い・・・」
 と言って、横を向いてしまった。
「?そお?かわいいのに」
 と、蘭は不思議そうな顔をしている。
 ―――なんだよ、蘭の奴・・・。そんな笑顔、俺にだってめった見せねえくせに・・・。
 何のことはない。瞬にやきもちを妬いているのである。
「ふ・・・ん~~~・・・んあ~~」
「ん?どうしたの?オムツ?・・・は、大丈夫みたいね。おなかすいたのかな?ミルク飲む?」
 蘭は、瞬のお尻に手をやり確かめてから、そう言った。その様子を見て、新一が驚いた顔をする。
「おい、おめえずいぶん慣れてねえか?赤ん坊の面倒なんか見たことあんのかよ?」
「こないだ、園子のお姉さんの家に遊びに行ったのよ。園子のお姉さん、2ヶ月前に子供が生まれたでしょ?それで、ちょっとだけお世話のお手伝いしてきたの」
 ―――そういや、そんなこと言ってたっけ・・・?
 事件と、蘭のこと以外には無頓着な新一。うろ覚えの記憶をたどり、蘭がそういえばそんなことを言っていたなと思い出す。
「新一、瞬君抱いててよ」
 蘭がひょいと立ち上がると、瞬を新一の前に出した。
「・・・は?なんで?」
「わたし、ミルク作ってくるから」
「ちょ、ちょっと待てよ。俺、赤ん坊を抱いたことなんて・・・」
「いいから、瞬君おなかすいてるみたいだから、ね」
 と言って蘭は新一に無理やり瞬を押し付けると、キッチンに哺乳瓶とミルクを持って行ってしまった。
「お、おい、蘭!」
 と言ったものの、瞬を放り出すわけにも行かず・・・結局新一はそのまま瞬を抱いて待つことに・・・
 ―――ったくう、博士の奴、どうしてくれるんだよ。せっかくの俺の計画が・・・。
 溜息をつきつつ瞬を見る。瞬は、不思議そうな顔で新一を見ていた。
「あ~~あ~~・・・」
「ん?なんだよ?はら減ってんのか?今蘭がミルク作ってくれるってさ」
「あ~~・・・」
「おめえ、一体どこの子だよ?」
 目の前に伸ばしてくる手をちょいちょいとつついてみると、瞬は新一の指をきゅっと握ってきた。そして、握れたことが嬉しかったのか、顔をくしゃっとさせて笑う。
「ん~?俺の指をおもちゃだと思ってんのか?」
「お待たせ~。あ、瞬君笑ってるv ね、新一、可愛いね~瞬君」
 蘭が哺乳瓶片手に戻ってくるとそう言って嬉しそうに笑った。
「人懐っこい子だよね。知らない人とか慣れてんのかな?」
「さあな。赤ん坊のことはよくわかんねえよ」
「ふ~ん?名探偵の新一にも分からないことあるんだ?」
 そう言って、蘭はいたずらっぽい視線を新一に向けた。
「んだよ」
「う~ん、別に。新一よりもわたしのほうが知ってることもあるんだなあと思って。ちょっと嬉しくなっちゃった」
 嬉しそうに笑う蘭の笑顔に、新一は思わず赤くなる。
「あ・・・あのさ、蘭」
「ん?なあに?」
 小首を傾げて、新一をじっと見つめる蘭。新一は高鳴る胸を押え、すうっと深呼吸した。
 ―――今だ!!
「俺、蘭が―――」
「ふ・・・あ~~~っ」
 まさに絶妙のタイミングである。
「あ、ごめん、瞬君、おなかすいてるんだよね」
 そう言って、蘭は瞬を自分の胸に抱きかかえると、もって来た哺乳瓶を瞬の口に当てた。瞬は、ぱくっとその乳首をくわえると、夢中でミルクを飲み始めた。
「良かった。やっぱりおなかすいてたのね。どうしたの?新一」
 蘭は、ガクッと肩を落として項垂れている新一を不思議そうに見た。
「いや、別に・・・」
 新一は力なく笑い、恨めしそうにミルクを飲む瞬を見た。
 ―――ちぇ、平和そうな顔してら・・・。
 蘭は、ミルクを呑む瞬を、優しい笑顔で見つめている。その光景は、まるで聖母マリアを見ているようで・・・新一は、そんな蘭の姿に思わず見惚れていた。
 ―――綺麗、だな・・・。もし、これが自分の子供だったりしたら・・・当然俺たちは夫婦で・・・
 いろいろな映像が頭の中を駆け巡り、か―――っと顔が赤くなる新一。
「新一?どうしたの?顔赤いよ?」
 気付いた蘭が、きょとんと首を傾げる。
「な、なんでもねえよ。それより・・・もし今日中に博士たちが戻ってこなかったらどうするんだ?俺、1人で赤ん坊の世話なんか出来ねえぜ?」
「そう、だよねえ。どうしよう・・・。やっぱりわたしが連れて帰ったほうがいいかな」
「ばか、それはやめろ」
 慌てて言う新一に、蘭はちょっと顔を顰める。
「なんでよう?」
「あのなあ、おめえはどう見たってまだ高校生なんだぜ?そのおめえが赤ん坊なんか抱いてその辺歩いてみろよ」
「あ・・・」
「明日には、街中その噂で持ちきりだぜ?毛利探偵の娘は17歳で子供を生んで、高校に通いながら育てるらしいとか。差し詰め、その相手は・・・」
 と、そこで言葉を切り、赤くなる新一。蘭も、新一の言わんとすることを理解し、真っ赤になってしまう。
「や、やだ、新一ってば何言って・・・」
「だ、だからさ、小五郎のおっちゃんだって怒るだろうしよ、今日はここに泊まってけばいいじゃねえか」
「・・・え?・・・」
 さらっと、何かすごいことを言われたような気がして、蘭は一瞬呆けた顔をする。
「園子に事情説明して、口裏合わせてもらってよ、園子の家にでも泊まることにすればいいだろ?」
「え、うん、でも・・・」
 ―――泊まるって・・・ここに・・・?そりゃあ、子供の頃は良く泊まったりしたこともあったけど・・・。新一は、わたしが泊まることなんて、大して気にしてないのかな・・・。
「なんだよ、嫌なのか?」
「う、ううん、嫌じゃないよ。じゃあ、博士たちが戻ってこなかったらそうするね」
 首を振ってそう言う蘭を、新一はちょっと不安そうに見つめた。
 ―――蘭の奴、ここに泊まるの、嫌なのか?俺のこと・・・もう、好きじゃねえのかな・・・。
 なんとなく、気まずい空気が流れる。と、その時・・・
「ふえ・・・」
 瞬が、顔を歪ませたかと思うと、突然真っ赤な顔をして
「うあ~~~~、あ”~~~~」
 とぐずり始めたのだ。
「どうしたの?瞬君」
 蘭が、慌てて瞬を抱き上げる。
「ど、どうした?病気か?」
 新一も青くなって瞬を見る。
「あ・・・ううん、違う、オムツみたい。重くなってるもん。おしっこ出ちゃったのかな?」
 蘭はそう言うと、落ち着いた様子でバッグから紙おむつを取り出して、瞬を抱っこしたままソファにそれを広げた。
「おめえ、そんなことできんの?」
 新一が、驚いて言った。
「うん。園子のお姉さんに教えてもらって、3回くらいやったかな?」
 言いながら、蘭は手際良く瞬をソファに寝かせ、服の股の部分のボタンを外し、両足を持ちながらお尻の下に紙おむつを敷いてしていた紙おむつを外した。
「あ、良かった。おしっこだけね。―――あ、ちゃんと男の子だったね」
 蘭が、くすっと笑って言った。何を見てそう言ったのかは誰にでも分かることで・・・新一は、なんとなく複雑な顔をする。赤ん坊と言えども、同じ男、である。その男の・・・を見て、笑う蘭。
 ―――なんか、面白くねえ・・・
 新一が不貞腐れている間にも、蘭はさっさとオムツを変え、服を元通りにするとまた瞬を胸に抱きかかえた。
「はい、おしまい。気持ち良いねえ、瞬君。お尻さらさらでしょう?」
 にっこり笑いながら、瞬に話し掛ける蘭の姿は、なかなか様になっていて・・・それが蘭の子、と言われても納得してしまいそうだった。
 新一は、2人の姿に見惚れている自分に気付き、ぶんぶんと首を振ると、拳を握りしめた。
 ―――冗談じゃねえ!あれが蘭の子のわけねえだろ!?大体、蘭が母親なら父親は俺だ!そうだ、俺しかいねえ!!
「蘭」
「え?」
「俺、今日はおめえに話があるんだけど」
 新一は、真剣な顔をして、蘭を見つめた。
 ―――子供がいたってかまうもんか。今を逃したら、またいつ2人の時間ができるかわからねえ。その間に、もし他の男が言い寄ってきたりしたら・・・
 新一の頭に、一瞬蘭と見知らぬ男が瞬を間に仲睦まじく寄り添う姿がフラッシュバックして・・・慌てて首を振った。
「なあに?新一?」
 きょとんと小首を傾げる蘭。
 ―――可愛い・・・。ぜってえ、他の奴にはわたさねえからな。
 新一は、立ち上がると蘭の隣に行って座った。
「蘭っ」
 新一は、両手で蘭の肩を掴み、ぐっと引き寄せた。蘭は吃驚して、頬を染め、目を見開いた。
「し、新一・・・?」
「蘭、俺・・・蘭が、好きだ・・・」
 じっと蘭の瞳を見つめながら、新一は告げた。蘭の瞳が、一層大きく見開かれ、頬が赤く染まる。
「新一・・・」
「蘭の気持ち・・・聞かせてくれるか・・・?」
「・・・ばかあ・・・」
「え・・・」
「そんなこと・・・今更聞かなくたって分かるでしょ・・・?」
 真っ赤になって俯く蘭を、愛しそうに見つめる新一。
「でも、聞きたいんだ・・・。蘭・・・」
「・・・好き、よ・・・。わたしだって・・・新一が好き。ずっと前から・・・大好きだったんだから
・・・」
「蘭・・・」
 嬉しそうに笑う新一を、潤んだ瞳で見上げる蘭。
 2人の視線が絡み合い、自然に顔が近づいていく。あとほんの数センチで、2人の唇が触れそうになった、その時―――
「ふ・・・ぎゃあ~~~っ」
 と、突然瞬が大きな声で泣き始め・・・2人はパッと体を離し、間にいた瞬を見た。
「瞬君?どうしたの?あ・・・」
 2人の間に立ち込める空気・・・ではなく、匂い。この匂いは・・・
「・・・今度は、ウンチみたいね」
「はあ・・・」
 新一は、がっくりと肩を落とし、せっせとオムツがえをする蘭を見ていたが・・・
 ―――ま、良いか・・・。これで、俺たちは恋人同士になれたわけだし・・・。未来の予行演習だと思えば、な・・・
 そう考えると、急に嬉しくなってくる新一。
「な、俺も何か手伝うよ。何したら良いか言ってくれよ」
「え?ホント?ありがとう!じゃあ、この汚れたオムツ、ビニール袋に入れて捨ててくれる?あ、ウンチはトイレで流してね?」
「・・・・・・・了解・・・・・」
 言ってしまったことを、ちょっと後悔した新一だった・・・。


 それからどたばたと瞬の世話に追われていた新一と蘭。ミルクを飲んだらすぐに寝るだろうと思っていたのが大きな間違いで、結局夜の8時になって博士と志保が工藤家を訪れた頃、やっとうとうとし始めたところだったのだ・・・。
「すまんかったのう、2人とも。実はあの子は歩美ちゃんの弟でのう」
「歩美ちゃんの?弟なんていたのか?」
 新一が驚いて聞く。
「ええ。3ヶ月前に生まれてね。工藤君は、ちょうど組織を追うために一時日本を離れていたから、知らなかったでしょうけど」
 と、志保が言った。
「で、何でその歩美ちゃんの弟が?」
 と新一が聞くと、志保はちょっと苦笑いして、
「実は、吉田さん、最初は弟が出来たことを喜んでいたんだけれどそのうち両親が弟ばかり構うのが我慢できなくなっちゃったみたいで・・・家出しちゃったのよ」
 と言った。
「家出ェ?」
「ええ。それで吉田さんのご両親が家に見えて・・・吉田さんを探してる間、瞬君を預かって欲しいと言ってきたの」
「そうだったのか」
「で、わしらも言われた通り待ってたんじゃが、1時間ほどして歩美ちゃんのご両親から電話が来てな。歩美ちゃんを見つけたんじゃが、大人では入れないような路地裏に入ったまま動こうとしない、と言うんじゃ。これは、わしらも行って説得せんと、と思ったんじゃ」
「で?今までかかってたのか?」
「まさか。吉田さんはそれから30分くらいして出て来たわよ。博士に説得されてね」
「じゃ、なんで・・・」
「たまには、吉田さんもご両親を1人占めしたいのよ。だから・・・博士の車に3人を乗せて、ドライブに行ったのよ。海に行って、動物園に行って、食事して・・・」
「その間、わしらは一言も俊君のことを話さなかったんじゃ。じゃが、そのうち歩美ちゃんの方から、“瞬を迎えに行こう”、と言い出してな・・・」
「そうだったんですか・・・」
 博士たちの話に、蘭も腕の中で眠る瞬を見つめ、頷いた。
「歩美ちゃんが、そんなこと・・・」
「結局彼女は車の中で寝てしまったからそのまま自宅まで送ることにしたのよ。そしてわたしたちが瞬君をまた彼らのところへ送り届けるってわけ」
「大変だったんですね」
 蘭の言葉に、志保はくすっと笑い、
「あなたたちほどじゃないけどね。どう、1日パパとママになった気分は?」
 と言ったので、2人の顔が見る間に赤く染まり―――
「ばっ、バーロ、そんなのんきなこと言ってる場合じゃなかったんだぞ!」
「あら、そう?新婚気分を味わえるかと思って、気を利かせたつもりだけど?」
「な・・・!おめえな―――」
「ま、まあまあ新一君。ご苦労じゃったのお。それじゃあご両親も心配してると思うから、瞬君は連れて行くぞ」
 博士の言葉に、蘭ははっとして抱いていた瞬を志保に渡した。
「―――バイバイ、瞬君」
 そう言った蘭の顔は、どことなく寂しそうだった。たった1日とはいえ、一生懸命世話をしていたのだ。そのぬくもりが離れる瞬間、なんともいえない寂しさが蘭を襲った。
「今度、みんなで遊びに行きましょう。吉田さんも喜ぶわよ」
 志保が、めったに見せないような優しい表情で蘭に言った。
「そうですね」
 蘭は、にっこりと笑って言った。新一は、そんな蘭の肩をそっと抱いた。


「―――行っちゃったね・・・」
 博士の車が見えなくなると、2人は家の中に戻った。
「ああ。なんか、嵐が過ぎ去ったあとって感じだな」
 新一が言うと、蘭はくすくすと笑った。
「うん、ホント・・・。でも、楽しかった・・・」
「蘭・・・寂しいか?」
「ちょっと、ね。でも、大丈夫よ。またいつでも会いに行けるし・・・」
 そう言って笑おうとした蘭を、新一がいきなり抱きしめた。
「ちょ、ちょっと新一?」
 吃驚して離れようとする蘭を、新一はしっかりと抱きしめた。
「・・・つよがんなよ」
「・・・え・・・?」
「寂しいんだろう?ホントは、泣きたいほど・・・。俺の前では、無理すんなよ。俺には、蘭の考えてることなんてお見通しなんだからよ。無理して笑う必要、ねえよ。泣きたいときは、泣いちまえ」
「・・・もう、偉そうに・・・。でも、ありがと・・・」
 蘭は、そっと自分の腕を新一の背中に回すと、静かに泣き始めた。
 蘭の瞳から零れた涙が、新一の着ているシャツを濡らした。新一は、何も言わず、ただ黙って蘭の背中をさすってやっていた。優しく、包み込むように・・・
 やがて、泣き止んだ蘭が照れくさそうに顔を上げた。
「ありがと、新一。もう大丈夫だよ」
 潤んだ瞳で新一を見上げて微笑む蘭。
 新一の胸が、どきんと音を立てる。
 ―――バーロ、俺が大丈夫じゃねえよ・・・。そんな顔、見せられたら・・・
「蘭・・・」
 新一は、右手を蘭の頬に添えた。
 一瞬吃驚したように目を見開いた蘭も、そのままそっと、瞳を閉じた。
 もう、瞬はいないいし、誰も邪魔する奴はいない・・・と思ったのが、大きな間違いだったのだ・・・。

『Purrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr・・・・・・・』

 突然鳴り響いた電話の音に、蘭が慌ててその身を離した。
 ―――ったくよ~~~~~~っ
 新一は、深いため息をつくと、どたどたと大股に電話まで歩いていき、受話器を上げた。
「はいっ」
『新一!!てめえいつまで蘭を連れこんでやがる!!とっとと帰しやがれ!!』
「お、おっちゃん・・・?」
「え、お父さん?あ、やば、もうこんな時間だっ、ご、ごめん新一、わたし帰るね」
「え、ちょ、待てよ、送ってくから!おっちゃ・・・おじさん、すいません、これから蘭を送っていき
ますから」
『さっさとしやがれ!良いか、蘭に変なことしやがったら承知しねえぞ!!』
 そう言って、思い切り電話を切る音が、新一の耳に響いた。
「ごめんね、新一」
 小五郎の声が聞こえたのか、蘭がすまなそうに言う。
「いや、良いけどよ・・・。じゃあ行くか」


 夜道を2人で歩きながら・・・新一はそっと蘭の横顔を盗み見た。
 
 ―――今度会う時は、ゼッテー邪魔されね―ようにしねえとな・・・

 そんなことを思いながら、密かに拳を握り締め、決意する新一だった・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ランキングのページで頂いたリクエストによる小説です。結構難しかったです。
経験者だけに、赤ちゃんのお世話というのが例え1日でもそんなに楽なものじゃないと知っているので・・・。でもとりあえず、ちょっと無理やりっぽいですが(笑)終わりました♪

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夏の恋人 ~快蘭~

Category : novels(コナン)
 「今日も来てたなあ、彼女v」
「ああ、あの髪の長いかわいい子vvここのところ、毎日だよなあ。どこから来てんだろなあ」
 ここはとある海の家。夕方になり、店じまいを始めたアルバイトの男子学生が、ある話題で盛り上がっていた。
「なあ、快斗知ってるか?」
 話題をふられた快斗はちらりとそちらに目を向けたが、すぐに目をそらし、「さあ・・・」と肩を竦めた。
「なあ、今度誰か話し掛けてみろよ」
「いいね。俺、やろうかなあ」
「・・・お先ィ」
 快斗は、まだ盛り上がってる仲間たちを尻目に、早々にバイトを切り上げ店を出た。
 暫く歩いてからちらりと周りを見回し、誰もいないことを確認すると突然走りだし、近くの林の中へと身を躍らせた・・・。


「蘭ちゃん!!」
 艶やかな長い黒髪を見つけ、快斗はそう呼びかけた。その声に気付いて、ぱっとこちらを振り返る少女。
「快斗くん!」
 快斗を見つけ、ふわりと微笑む蘭。その笑顔があまりにも綺麗で、思わず快斗は立ち止まってしまった。
「?どうしたの?」
 不思議そうに首を傾げる蘭に、快斗は慌てて
「や、何でもねえよ」
 と言って、再び歩を進め、蘭の隣に並んだ。
「ごめん、待たせて」
「ううん。夕日が綺麗だったから・・・。海って、ずっと見てても飽きないよね。待ってる時間なんて、すぐに過ぎちゃう」
 そう言って海に視線を移した蘭の横顔がまた綺麗で、快斗はまたもや見惚れてしまっていた・・・


 蘭は、夏休みに入ってから、同じ学校に通う親友の鈴木園子と一緒に、この海に来ていた。鈴木家の所有する別荘がこの海にあったからだ。
普段、園子と蘭は、鈴木家のプライベートビーチで泳いでいる。だが、人のいないビーチは寂しいのか時々2人で快斗のバイトしている海の家があるビーチへ来ては、焼きとうもろこしやかき氷などを買って食べて行っていた。
 そこで蘭と出会った快斗。
 すぐに気付いた。
 ―――あれは、探偵君の・・・
 蘭の、寂しそうな様子が気になった。
 そして、こっそり園子の別荘まで行き、蘭が1人きりでいるところへ現れた。
「探偵君は、一緒じゃないのかい?」
「あなたは・・・」
 蘭は、すぐに快斗がキッドだということに気付いたようだった。
「なんか、見たことあるような気がしてたの・・・」
 そして、まるで久しぶりに会う友人を見るような瞳で、快斗を見つめた・・・。


「コナンくんね、外国の両親のところへ行っちゃったの・・・。もう、2度と会えないかも・・・」
 寂しそうな笑顔でそう言った蘭を、快斗は知らず抱きしめていた。
「・・・泣きたいときは、泣けよ・・・」
 最初驚いて離れようとしていた蘭も、快斗の優しい声に動きを止め、やがて声を押し殺して泣き出したのだった・・・。


 それから1週間、快斗は毎日のように蘭に会いに行くようになった。
 蘭も、時間になると外へ出て快斗を待っていてくれるようになった。
 そうして2人の距離は、急速に近付いていったのだった・・・。


「蘭ちゃんが来るとさあ、バイトの連中の顔色が変わるんだよなあ」
「え?どうして??」
 きょとんとした表情で首を傾げる蘭。そんな表情もかわいいのだが・・・
「どうしてって・・・蘭ちゃんがかわいいからだろ?」
「え―?そんなことないよォ」
 真っ赤になって否定する蘭は、どう見ても真面目だ。
 ―――分かってないよなあ・・・。
 この分じゃあ、快斗の想いにも気付いていないだろうと思いながら、切なげな視線を送る。
「・・・で、蘭ちゃんの待ってる探偵君はどうしてるの?」
「え?」
「小さい方じゃなくって、蘭ちゃんがずっと待ってるヤツ。そろそろ、帰ってくるんじゃないの?」
「・・・さあ、どうかな・・・。全然、連絡ないし・・・」
 ふと寂しげに俯く蘭。その表情に快斗の胸がちくりと痛む。
「・・・けど、待ってるんだろ?」
 その問いには答えず、蘭は寂しそうに微笑むと空に瞬き始めた星を見つめた。
「・・・蘭ちゃん・・・?」
「・・・わかんない・・・」
「え?」
「わかんないの・・・」
 そう呟いた蘭の瞳から、涙が一滴、零れ落ちた。
 それを見た途端、快斗は蘭の体を抱きしめていた。
「快斗くん・・・?」
「好きだ・・・」
「え・・・」
「蘭ちゃんが、好きだ・・・」
 蘭が、驚いて快斗の顔を見上げる。
 そして、蘭が何か言おうとする前に、その唇を快斗のそれが塞いだ。
「・・・!!」
 突然のことに、蘭の動きは止まり、意識がついてこない。
 何が起こったのか、理解することが出来ない。

 長く、熱い口づけに、蘭の体からは力が抜けていく。
 体が熱く、頭の芯がとろけるような感覚・・・。
  
 いつしか、蘭はその熱い波に飲み込まれ、快斗に体を預けていったのだった・・・。


 
 今日は花火大会だ。
 快斗のバイトしている海の家のアルバイトたちが園子を誘い、快斗たちと一緒に花火を見に行くことになった。蘭と快斗が知り合いだということは、誰も知らない。
 なんとなく、後ろめたい思いで蘭はでかけたが・・・

「蘭ちゃんvこっちの方が良く見えるよ」
「いや、こっちだってvv」
「こっちこっち!!」
 いきなり男の子達に囲まれ、戸惑う蘭。ちらりと快斗に視線を向けてみるが、快斗は蘭のほうを見ようともしない。
 ―――快斗くん・・・?
 快斗の表情が気になり、そちらの方に向こうとした時―――

『ドオ――――ン!!』

「あ、始まった!」
「きれ―――い!!」
 花火大会が始まり、思わず蘭もそちらに気をとられたのだが・・・
 いきなり、ぐいっと腕を捕まれ、すごい力で引っ張られる。
「きゃっ、な―――」
「しっ、蘭ちゃん、俺」
「!」
 人ごみの中を、快斗に手を引かれるままに走り出す。どこに行くのか、なんて聞かない。
 気がつくと、2人はあの林の中にいた。
「快斗くん・・・?ここ、花火見えないよ・・・?」
 ちょっと不満気に呟く蘭に、快斗はにやりと笑いかける。
「ま、見てろよ」
 そう言ったかと思うと、快斗は蘭を横抱きに抱え、すごい速さで走り出した。
「きゃあっ」
「つかまってて」
 たまらず蘭が快斗の首にしがみ付く。快斗は林の木々を器用に避けながら走っていった。
 どのくらい走ったのか・・・
「ついたよ」
 と言う快斗の声に、蘭ははっとして顔を上げる。
「ここは・・・?」
「見てごらん」
 そう言いながら、快斗は蘭を下ろした。
「わ・・・」
 蘭は、目の前の光景に驚いて目を見開いた。
 林を抜けたそこは、小高い丘になっていて、そこからは遮るものは何もなく、海に映る花火までもが綺麗に見えたのだった。
「すごい・・・」
「だろ?とっておきの場所、見つけといたんだ。蘭ちゃんと2人で見たくって・・・」
「快斗くん・・・」
 見上げると、快斗の優しい視線とぶつかる。
 何か言おうと、口を開きかけたが、それは快斗の唇によって塞がれた。
 
 甘く、熱い口づけに酔いしれる・・・。

 花火の音が、遠くに聞こえていた・・・。



「ら~ん、どうかしたあ?」
 物思いに耽っていた蘭に、園子が声をかける。
「え?あ・・・ううん、なんでもないよ」
「そう?ならいいけど・・・そろそろ行くよ?用意できてる?」
「あ、うん・・・」
 今日、蘭と園子は東京へ帰る。
 昨日の花火大会の日に交わした快斗との会話が、脳裏によみがえる。

「明日、帰るんだって?」
「うん・・・」
「・・・・・俺、諦めるつもり、ないけど・・・」
 蘭がはっとして顔を上げると、快斗の真剣な眼差しとぶつかった。
「一夏の思い出で、終わらせたくないんだ」
「快斗くん・・・わたし・・・」
「蘭ちゃんが、迷ってるのわかってるよ。だけど・・・。これからもずっと、俺と付き合ってくれる気があるのなら、帰る前に海の家に来てくれないか。もし、もう会うつもりがないならそのまま帰って・・・」
 
 もうすぐ、迎えの車が来てしまう・・・。
 蘭は、まだ迷っていた。
 快斗の優しさに惹かれている自分。でも、まだ新一を待ちつづけている自分がいる。
 ―――やっぱり、こんな気持ちで快斗くんに会いに行けない・・・
 蘭は、荷物を両手に持つと、玄関へと向かった・・・
「どうしたの?蘭、早く乗りなよ」
 車に乗り込もうとして、躊躇している蘭を不思議そうに見つめ、園子が言った。
「あ・・・うん・・・」
「??何?何か忘れ物?だったら待ってるから取ってくれば?」
「ちがうの。わたし・・・」
 ―――乗らなきゃ。そして、ここから離れなきゃ・・・。わかってるのに・・・体が、動かない・・・
 無理やり体を動かそうと、ぐっと手を握りしめた、その時―――
「―――わりい、彼女は、返さないよ」
 そう言って、蘭の手を握りしめたのは・・・
「快斗くん・・・!?」
「え?あなた、あの海の家の?何であなたがここに?」
 びっくりして快斗を見た園子に、快斗はにっこりと笑って、
「蘭ちゃんを、攫いに来たんだよv」
 と言った。
「はぁ!?何言ってんのよ!?」
「じゃ、そういうことで♪」
 そう言うと、快斗は蘭を抱き上げ、そのまま駆け出した。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!ら―ん!!どうなってんのよぉ!!」
 園子の声が後から追いかけてくるが、快斗は止まる様子はない。
 蘭は、呆気に取られたまま快斗を見つめ、声を出すことも出来ずにいた・・・。


 気がつくと、2人はあの小高い丘の上にいた。
「・・・どうして・・・」
「待ってようと思ったんだ。でも・・・蘭ちゃんの性格考えたらさ、絶対来るわけねえよなって思えてきて・・・そしたら、無償に腹が立ってきた。何で俺が引き下がんなきゃなんないんだってね。蘭ちゃんが、あいつを待ってたっていい。でも、俺だって蘭ちゃんを思う気持ちは負けてないって自信あるから。正々堂々と勝負してやるよ」
 そう言って、にやりと笑った快斗を、蘭は複雑な思いで見つめる。
「快斗くん・・・」
「・・・俺、少しは、自惚れてもいいかな?蘭ちゃんも、俺のことを思っててくれてるって・・・。だ
から、あの車に乗ろうとしなかったんだって・・・」
「み、見てたの?」
 途端に、蘭の頬が赤く染まる。
「うんvvで・・・?どうなの?」
 にやにやと笑いながら顔を覗き込んでくる快斗に、蘭は俯いて真っ赤になっている。
「蘭ちゃん?」
「~~~~~もうっ、わかってるなら聞かないでよおっ」
「分かってないって!なあ、言ってよ?蘭ちゃんの口から、聞きたいんだ」
 耳元で囁かれ、蘭の体がぴくりと震える。
「・・・・・・き・・・・・」
「ん・・・・・?」
「・・・・好き、よ・・・・」
 それを聞いた快斗の顔が、とろけそうな笑顔に変わる。
 そして、俯いたままの蘭の顔に両手を添え、そっと上向かせる。
「俺も、好きだよ・・・」
 甘いささやき。蘭の瞳が、静かに閉じられる。
 そして、ゆっくりと2人の唇が重なった。
 何度も角度を変えながら、まるで離れることを忘れてしまったかのように、2人は1つに溶け合っていった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 日記キリ番51をゲットしてくださったゆんゆんさま(現朝倉菜緒さま)のリクエストです。ちょっと季節はずれになってしまいましたが・・・

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甘えじょうず ~コ蘭~

Category : novels(コナン)
「38,7度。今日は学校お休みね」
 コナンの口から体温計をとり、蘭が言った。
「病院、行ったほうがいいかな?」
 心配そうな顔でコナンの顔を覗き込む蘭に、ドキドキしながら口を開く。
「あ・・・平気だよ。さっき、薬飲んだし・・・。蘭姉ちゃん、心配しないで学校行っていいよ?」
「何言ってるの!今日はお父さん仕事でいないし・・・。コナンくん1人置いていけないよ。今日はわたしも休むから」
 少し強い調子でそう言うと、蘭はにっこりと微笑んだ。
「とりあえず、何か栄養のつきそうなもの買ってくるから、コナンくんはおとなしく寝てるのよ」
そう言って立とうとした蘭の手を、コナンがとっさに掴んだ。
「コナンくん?」
コナンは俯いていたが、その頬は微かに赤く染まっていた。
「あ・・・あのさ・・・」
「なあに?」
「眠るまで・・・ここにいてほしいんだけど・・・」
「え?」
 驚いて、コナンの顔をまじまじと見つめる。いつもの、小学生らしからぬ落ち着きはどこへやら、真っ赤になって俯いているその姿は純情でシャイな少年そのものだった。
「・・・ん、分かった」
 もう一度ベッドの横に座ると、コナンもほっとしたような表情を浮かべ、横になった。


「ん・・・あれ・・・蘭・・・?」
 目を覚ますと、そこには蘭の姿はなかった。
 買い物にでも行ったのか・・・。そう思ったとき、玄関のほうで物音がした。耳を済ますと、蘭の声と、もうひとつ聞き覚えのある声が・・・
「あ、コナンくん、起きてたの?ごめんね。買い物に行ってたの。そしたら途中で新出先生とお会いして・・・」
 蘭の後から顔を出したのは、新出智明だった。コナンの顔が、微かに歪む。それに気付かない蘭が、にこやかに智明を振り返る。
「ちょうどいいから、コナンくんのこと見てもらおうと思ってお連れしたの」
「やあ、コナンくん。風邪だって?」
 にこにこしながら近付いて来る智明。それを見て、コナンもその顔に笑みを浮かべる。もちろん、目は笑っていなかったが・・・。


コナンの診察をする智明を、少し心配そうな瞳で見つめる蘭。
「どうですか?先生」
「うん、そんなに心配は要らないよ。ただ、熱が少し高いようだから、一応薬を出しておこうか。夜になると、また上がるだろうから解熱剤もあったほうがいいね」
 にっこりと優しく笑う智明に、蘭も安心したように微笑む。
「薬は持ってきてないから、ちょっと取りに行って来るよ」
そう言って立ち上がった智明に、蘭が慌てて声をかける。
「あ、だったらわたしも行きます。また戻ってきてもらうの悪いですし」
「そうかい?じゃあ―――」
と、2人で行こうとしたが・・・
「ま、待って!ぼくも行く!」
コナンが、慌てて蘭のスカートを引っ張る。
「ええ?何言ってるの、コナンくん。あなたは寝てなきゃダメよ」
「だって、ぼく1人じゃ寂しいもの。蘭姉ちゃんが行くならぼくも行く!ぜっったい行く!!」
コナンの必死な様子に、蘭は戸惑いの表情を浮かべる。
「コナンくんたら・・・どうしたの?いつもはそんなこと言わないのに・・・」
「熱の所為で、不安になってるのかもしれないね。いいよ、僕が行ってくるから、蘭さんはコナンくんの側にいるといい」
 そう言って、智明は1人、部屋を出て行ったのだった・・・。


「ごめんなさい。蘭姉ちゃん」
コナンが、俯きながら、小さな声で言った。
「え?何が?」
「我侭言って・・・。ぼくのこと、呆れたでしょ?」
 そう言って蘭を見上げたコナンの瞳は不安に揺れていた。
 蘭は、ふと微笑むと、コナンを優しく抱きしめた。
 蘭の柔らかな胸に倒れこむように抱きしめられ、コナンの体がかっと熱くなる。
「ら、蘭・・・姉ちゃん・・・」
「ばかね。そんな心配しなくていいのに。病気のときは、誰だって不安になるものなんだから」
「・・・怒ってない・・・?」
「当たり前でしょう?」
 蘭はコナンの体を少し離すと、少し怒ったような顔をして見せた。が、それも一瞬で、すぐにいつもの笑顔になると、コナンも安心したように微笑んだ。
「さ、新出先生が来るまでまた横になってて」
「蘭姉ちゃんは・・・?」
「ここにいるから」
 蘭に促されベッドに横になったコナンは、布団からそっと手を出して蘭の柔らかな手を握った。
「ん?なあに?」
「・・・手、握ってても、いい・・・?」
 照れたように小声で囁くコナンに、蘭は柔らかな笑みを浮かべ、
「もちろん」
 と言ったのだった。
 やがて、またまどろみ始めたコナンを見つめながら・・・

―――ふふ、かわいい・・・。いつもこのくらい素直に甘えてくれたらいいのに・・・。

 そう思いながらも、早く元気になってほしいと願う蘭だった・・・。


fin.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 日記のキリ番でNo.200をゲットしてくださったREIさまのリクエストによる作品です。
日記のほうでUPしていたのですが、改めてこちらでUPさせていただきました。
あまえんぼうのコナンくん、いかがでした?

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Blue Heart ~快蘭~

Category : novels(コナン)
「黒羽く~んvv」
 後ろから聞こえてくる黄色い声に、振り向く快斗。
「はい?」
 にこにこしながら駆け寄ってきたのは見覚えのない上級生の女生徒2人組。
「お誕生日おめでとう♪これ、プレゼント!受け取ってくれる?」
 ずいっと差し出され、半ば強引に快斗の胸に押し付けられた派手な袋を仕方無しに受け止める。
「あ、ああ、どうも・・・けど、おれ・・・」
「あ、お礼なら気にしないで♪わたしたち、黒羽くんのファンみたいなもんだしいvね~♪」
 快斗の言葉を遮り、勝手に盛り上がる2人組。
「じゃ、またね♪ばいば~いv」
 と、これまた唐突に走り去って行く2人の後姿を、あっけにとられながら見送る快斗。
「・・・なんだあ?あれ・・・」
 呟き、受け取ってしまったプレゼントを、どうしたものかと見ているといつの間にやら3,4人の男子生徒が快斗の周りに集まっていた。
「いいよなあ、黒羽は。ファンだってさ」
「あ~あ、俺も誕生日にこ~んなプレゼント貰ってみてえなあ」
 羨ましがる同級生に、快斗はその袋を差し出した。
「んじゃ、やるよ」
「へ?やるって・・・だって、おめえにくれたんだろ?」
「俺、いらねえし。ほしけりゃやるよ」
「な、なに言ってんだよ、んなことしたらあの人たち・・・」
「大丈夫だって。んじゃ、俺急ぐから」
 呆気に取られている同級生たちを尻目に快斗はさっさと学校を後にしたのだった。


 学校を出たところで、ふと立ち止まり、ひとつ溜息をつく快斗。
 ―――誕生日、か・・・。確かに、去年までの俺ならあのプレゼントを喜んで受け取ってただろうな・・・。でも、今年は・・・。
 思い浮かぶのは誰よりも愛しい、彼女の笑顔・・・。
 自分の誕生日なんて知るはずもない。来るはずはないと分かっていても思わず回りを見渡してしまう。
 ―――いるわけねえよなあ。大体、俺の誕生日なんて知ってたところで、わざわざ来てくれるわけねえんだ。彼女は・・・蘭ちゃんは、あいつのものなんだから・・・
 今は行方不明の、彼女の想い人。
 彼女は、ずっとそいつの帰りを待っている・・・。
 快斗は、自分の気持ちをごまかすように頭をくしゃくしゃとかき回すと、大股に歩き出した。
 そしてわき目も振らずにひたすら家路をたどって歩いていると・・・
「快斗くん!!」
 聞き覚えのある声に、快斗の足がぴたっと止まる。

 ―――まさか・・・

 あるわけない、そんなこと・・・
 そう思いながらも、そろそろと振り向く。
 しかし、そこに立っていたのはまぎれもなく、たった今まで思い浮かべていた愛しい人で・・・
「蘭ちゃん!?何でここに・・・」
 驚きの声をあげる快斗に、蘭は少し悲しそうな表情になった。
「あ、ごめんね、突然・・・。今日、快斗くん誕生日でしょ?だから、プレゼント持ってきたんだけど・・・。もしかしてすごく急いでる?」
 悲しそうな蘭の顔に、快斗ははっとして、慌てて首を振った。
「ぜ、全然!!すっごいひま!!」
「ほんと?よかった」
「けど、なんで俺の誕生日・・・俺、教えたっけ?」
「ううん。この間、快斗くんのマジック見せてもらったときに寺井さんって人がいたでしょう?あの人が教えてくれたの」
「寺井ちゃんが・・・そっか・・・」
「で、プレゼントなんだけど・・・どこか喫茶店にでも入らない?ここで渡すのもなんだし」
 と、ちょこっと首を傾げ、照れたように言う蘭。
 そんな表情にときめきながら、さっきまでの暗い気持ちとは打って変わって上機嫌になる快斗。
「あ、それなら家においでよ」
「え?いいの?おうちの人は?」
「うちの母さん、今日から旅行に行ってていないんだ。だから気にしないで・・・。あ、これでも俺、コーヒーくらいは入れられるから」
 そう言って、器用にウィンクをして見せると、蘭の手を取り歩き出したのだった。


 「ハイ、どうぞ。蘭ちゃんは紅茶のほうがいいんだよな」
 そう言って、蘭の前に紅茶の入ったティーカップを置く快斗。
 きょろきょろと周りを見回していた蘭ははっとして快斗を見上げる。
「あ、ありがとう。あの、ホントごめんね、突然。快斗くん・・・本当に今日、予定なかったの?」
「うん。なんで?」
「えっと、その・・・もしかして、彼女とデートとか・・・」
 ちょっと言いづらそうに視線を彷徨わせながら言う蘭に、優しく微笑む快斗。
「いないよ、そんなの。今日は1人でいる予定だったんだ」
「そうなの?あの・・・幼馴染の女の子がいるって・・・」
「ああ・・・。あいつはうちの母さんに誘われて一緒に旅行に行ったよ。商店街の福引で当たってさ。それがちょうど今日からで・・・。一応最初は遠慮してたけど、俺ももう、誕生日パーティって年じゃないし。行ってくれば?って言ったら喜んで2人で行っちゃったよ」
「そうなんだ・・・」
 それでも、どこか附に落ちないような表情の蘭。そんな蘭をじっと見つめながら、快斗はまさか、と言う思いを口にする。
「・・・蘭ちゃん、ひょっとして青子のこと誤解してない?」
 その言葉に、ドキッとしたように顔を上げる蘭。その頬は僅かに赤く染まっていて・・・
「ご、誤解って、別に・・・」
「俺と、青子はただの幼馴染だよ?」
「うん・・・でも、すごく仲良いみたいだし・・・。その、青子ちゃんって、快斗くんのこと好きなん
じゃないかなあって・・・」
「だったらどうするの?」
「え・・・どうするって・・・」
「青子が俺のこと好きだったら?」
 そう言いながら、快斗は少しずつ蘭に近づいていった。
「あの・・・」
「うん?」
「快斗くんも、もしかして青子ちゃんのこと好きなのかなあって・・・」
「・・・なんで?」
「え?」
「なんで、そう思うわけ?」
 ふと顔を上げると、いつのまにかすぐ近くまで来ていた快斗が、少しふてくされたような、それでいてちょっと悲しそうな目で、蘭を見ていた。
「だ・・・って・・・仲良いみたいだし・・・」
「そりゃ、兄弟みたいなもんだから。でも、それは恋愛感情とは違うだろ?」
「そう・・・だね」
「・・・蘭ちゃんは・・・?」
「え?」
 きょとんとして快斗を見上げる蘭。
「蘭ちゃんは・・・幼馴染のあいつが好きなの?工藤新一が」
 その問いに、僅かに瞳を見開く蘭。快斗の顔は、真剣そのものだ。じっと、蘭の瞳をまっすぐに見つめている。
 蘭はその瞳に戸惑いながらも、快斗から目をそらさずに口を開いた。
「わたしは・・・新一のこと、好きだった・・・。ずっと一緒にいて・・・一番安心できて、楽しくて
・・・だから、突然あいつがいなくなって、寂しくて・・・。ずっと、待ってるつもりだったの。でも
・・・」
「でも・・・?」
「・・・最近、待ってることに自信がなくなってきて・・・」
「どうして?」
 快斗に聞かれ、蘭はその綺麗な眉を寄せて、困ったような瞳で快斗を見つめた。
「だって・・・変なの、わたし。最近、気がつくといつも快斗くんのこと考えてて・・・すごく気にな
って・・・ドキドキするの・・・快斗くんのことを考えると・・・。苦しくなるの、青子ちゃんのこと
を考えると・・・。どうしていいか、分からなくて・・・」
「蘭ちゃん・・・!」
 快斗は、思わず蘭のその細い肩を掴んだ。その力にはっとして、蘭が下を向く。
「ご、ごめんね、変なこと言って。わたし・・・!」
 蘭が言いかけるのを遮るように、快斗の腕が蘭を思い切り抱きしめていた。
 蘭の瞳が驚きに見開かれる。
「か、快斗く・・・」
「俺も・・・同じだよ」
「え・・・?」
「俺も、蘭ちゃんのことばっかり考えてた。でも、蘭ちゃんはあいつのことが好きなんだと思ってたから・・・。苦しかったんだ」
「快斗くん・・・」
「好きだよ、蘭ちゃん・・・」
 快斗の瞳が、蘭の瞳をまっすぐに見つめる。
 蘭の頬が赤く染まり、潤んだ瞳に快斗が映し出された。
 少しずつ、近付いてくる快斗の顔。
 蘭は自然にその瞳を閉じていた。
 蘭の薄桃色の唇に、快斗の唇が静かに重なった。
 そっと触れて、すぐに離れる唇。
 瞳を開けると、蘭を見つめる快斗の瞳とぶつかる。
 その目があまりにも真剣で、蘭は思わず俯いてしまった。
「あ、あのね、プレゼント・・・持ってきたから、受け取って、くれる?」
 パッと快斗から離れ、自分のバッグをつかみ、中から綺麗にラッピングされた包みを取り出す。
「こ、これ・・・気に入るかわかんないんだけど・・・」
 真っ赤になって差し出したそれを、快斗は優しい笑みを浮かべて受け取った。
「サンキュー。開けていい?」
「うん、もちろん」
 快斗が包みを開くと、中からは夏の空のような水色のシャツが出てきた。
「うわ、すげえ綺麗な色!」
「快斗くんに、似合うかなあって勝手に思って選んだの。これから夏だし・・・どうかな?」
「うん!すげえ気に入った!ありがとう・・・って、あれ?もしかしてこれ・・・蘭ちゃんの手作り?」
 快斗が聞くと、途端に蘭の頬が真っ赤に染まってしまった。
「わ、分かっちゃった?既製品を探しても、なかなか良いものが見つからなくって・・・。なんとなく入った生地やさんでこれ見たら、快斗くんがこのシャツを着てる姿が目に浮かんで離れなくなっちゃって・・・。へ、へたくそなんだけど・・・」
「何言ってんだよ!すげえうまいよ、よく作れたなあ。ぱっと見ただけじゃあ手作りなんてわかんないぜ?」
「そ、そんなこと・・・」
「ほんとだって!すげえ嬉しい。蘭ちゃんが俺のために手作りしてくれるなんて・・・」
 頬を高潮させながら、本当に嬉しそうに話す快斗を見て、蘭の顔にもようやく笑みが浮かんだ。
「良かった・・・気に入ってもらえて。ホントは今日、すごく悩んだの。これを渡しに来るかどうか・・・」
「蘭ちゃん・・・。これ、着てみていい?」
「うん!」
 蘭が答えると、快斗はすぐさまその場で着ていたシャツを脱ぎだした。と、蘭が真っ赤になって後ろを向く。
「や、やだ快斗くんてばっ」
 そんな蘭がかわいくて、快斗はくすくす笑う。
「何照れてんのさ」
「だ、だってえ・・・」
「それより、着たから見てみてよ」
「え、もう?」
 快斗の早業に驚きつつも、そおっと振り向く蘭。
 そこには、言葉どおりプレゼントのシャツを着た快斗が立って微笑んでいた。
「わ・・・やっぱり似合ってる!快斗くん」
「マジ?」
「うん!よかったあ・・・」
 ホッとしたように柔らかな微笑を浮かべる蘭に、快斗の胸が再び高鳴る。
「・・・俺、今年の誕生日は一生忘れないよ」
「え・・・」
「サイコーのプレゼント、もらえたからね」
 パチンと見事なウィンクを決めた快斗に蘭の頬が染まる。
「そ、そんなたいしたものじゃないよ、こんなの・・・」
「んなことないよ。俺にとってはサイコーのプレゼントだよ。このシャツと・・・蘭ちゃんの気持ち、貰ったからね」
 快斗の繊細な掌が、蘭の頬に触れる。
 蘭が何か言おうとしたが、快斗の唇が、それを遮った。
 優しく、何度も繰り返す恋人のキス。

 ―――言葉なんて、要らない。
 きみが側にいてくれるなら、他には何もいらない―――

 そんな快斗の囁きが、蘭の耳元を擽る・・・。
 そして、いつまでも、いつまでも恋人たちの甘いときは終わらない。
 きっと誰にも、何にも引き裂くことは出来ないだろう、この甘い時間を・・・

 ―――Happy Birthday,kaito・・・―――


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 や―――っとできました!このお話は19000番をゲットされたREI様のリクエストによる作品です。
 本当は快斗のお誕生日に間に合わせたかったんですけどね・・・。遅くなっちゃってごめんなさいです、ほんと。そして、なんだか変な終わり方で・・・。あまあまなお話にしようと努力はしてみたんですけども・・・。気に入っていただけたら嬉しいんですけども。

 というわけで、こちらでもやっぱり快斗の誕生日とは関係なくUPしてしまいました(^^;)
それでも、皆さんにも楽しんでいただければうれしいです~。

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ずっと、これからも ~新蘭+園~

Category : novels(コナン)
 「おい蘭、帰るぞ」
 いつものごとく、蘭に声をかける新一。
「あ、うん」
 そして、にっこりとそれに答える蘭。放課後の教室で、毎日のように繰り返されるやり取り。
 そして、もう1つ繰り返されているのは・・・
「ちょいとお2人さん。この園子様を無視して行くつもり?」
 と、ひょいと顔を出したのは、蘭の親友鈴木園子その人だ。
「あ、園子。そんなことないってば。園子も一緒に帰るでしょう?」
 くすくすと楽しそうに笑う蘭の横で不機嫌そうに顔を顰める新一。
「新一君、不満そうね」
「・・・べーつに」
「そうよねえ。新一君がいないときに、蘭と一緒に帰ってその辺のナンパ男の魔の手から蘭を守ってるのはこのわたしなんだから。不満なんてあるはずないわよねえ」
「・・・ははは・・・」
 新一の乾いた笑いも、園子には聞こえない。そう、この3人のやり取りがほぼ毎日繰り返されていることが、このクラスでは当たり前のことだったのだ・・・。


 「お花見に行こうよ!」
 唐突に園子が言い出したのは、そんなある日のこと。
 4月になり、いよいよ高校生活も最後の年を迎えていた。
「花見ィ?おめえらそんな余裕あんのかよ」
「あら、言ってくれるじゃない。そりゃあ頭の良い新一君と違ってこっちは猛烈に勉強しないとだめだけどさ、たまには息抜きも必要じゃない?」
「たまには、ねえ・・・」
「・・・いちいちやな感じね。いいわよ別に、行きたくないんならさ。わたしは蘭と2人で行くし」
 という園子の言葉に、新一が少々焦る。
「べ、別に誰もいかねえとは言ってねえだろっ。行くよっ」
 その言葉に、してやったりと笑う園子。
「じゃ、いつ行こうか?今度の日曜?」
 蘭がのんきににこにこしながら聞く。
「そうね。場所、どこにしようか。公園はたぶん人でいっぱいになるわよ?」
「そうだね・・・」
 う~んと同時に考え込む2人を見て・・・
「・・・俺、良いとこ知ってるけど」
 と言ったのは新一だった。
「え、ホント?」
「ああ。ちょっと歩くけど、人はあんまりいねえし、見晴らしもいいし」
「いいじゃない!そこに決まりね」
「じゃ、わたしお弁当作っていくね」
 蘭が言うと、園子がちらりと横目で見て、
「・・・新一君の分?」
 と言った。
「もちろん、園子の分も作っていくわよ」
「さっすが蘭!!」
 ぎゅっと蘭に抱きつく園子を見て、新一が面白くなさそうな顔をする。
「・・・おい・・・」
「なあに?いいじゃない、女同士の友情を深めたって」
 ニヤニヤと笑う園子。ヤキモチ妬きの新一をからかって遊ぶ。なかなか自分の恋人、京極に会えない園子の、密かな楽しみである・・・。


 そして日曜日。空は晴れ上がり、まさに絶好のお花見日和といったところだ。
 3人が向かった場所は、林を抜け、小高い山を上った先にある場所で、人気もなく夜だったら間違いなく避けて通りそうな、少し不気味な林の中からは想像もできないくらいその場所は明るく、開けた場所でその真中には大きな桜の木が1本、堂々と枝を広げ満開の花を咲かせていた。
「うわあっ、すっごい綺麗!新一、良く知ってたね、こんなところ」
 蘭が感激したように声を上げる。
「まあな」
「へえ、ほんとに誰もいないのね。貸切みたいで良い感じじゃない」
 と、園子も感心したように言う。
 3人は桜の木の下にレジャーシートを広げると、靴を脱ぎ思い思いにくつろいだ。
「すごいね、この桜。こんなに大きな桜の木って、はじめて見るかも」
「ホント。なんだか圧倒されるわね」
「なあ、腹減ったんだけど」
 と言った新一を、園子がギロリと睨んだ。
「・・・ほんっとにデリカシーのない男ね」
「っせーなあ。腹減ってんだからしようがねーだろお」
「じゃ、お弁当食べようか」
 蘭が、持ってきたお弁当を広げ始めた。
「蘭ってば、あんまり甘やかしすぎるとこやつのためになんないわよ」
「うるせーよ、大体なんでおめえは手ぶらなんだよ」
「あんただって手ぶらじゃないよ」
「俺は蘭の作った弁当持ってやったからいいんだよっ」
「えばんないでよね、大体あんたっていつもいつも蘭に甘えて―――」
「ハイハイそこまで。ね、食べようよ、お弁当」
 にっこり微笑む蘭の笑顔に、2人の言い争いがぴたりと止まる。
 そして、広げられた見事なお弁当を見て・・・
「すげーな、これ」
「ずいぶんたくさん作ったのねえ、おいしそ―!」
「えへへ。いっぱいあるほうが楽しいし、2人とも喜んでくれるかなあと思って」
 にこにこと無邪気に笑う蘭を見て、新一と園子が顔を見合わせる。
「・・・一時休戦ね」
「だな」
 2人はそう言うと、にっと笑い、お弁当に向かった。
「いただきまーす!」
 手を合わせ、2人がお弁当に手をつける。それを見て、蘭も嬉しそうに食べ始めた。
 3人で桜を鑑賞しながら、お弁当をほおばり話に花を咲かせる。
 こんなふうに楽しく過ごせるのはいつまでだろう?高校最後のお花見。大学に進み、学部が分かれたりすれば別の友人が出来、いっしょに行動することも少なくなっていくのだろうか。
 ほんの少し感傷的になってしまう蘭は、園子を見つめた。
「・・・ね、園子」
「ん?」
「来年も・・・一緒にお花見しようね」
 蘭の言葉に、園子は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに満面の笑みになって
「もちろんよ!こんなおいしいお弁当を作ってくれるならいくらでも!!」
 と力強く言ったのだった。
 それを見ていた新一の眉が、ぴんと跳ね上がる。
「・・・蘭。その台詞、俺には言ってくんねえの?」
「え?だって・・・」
 蘭の頬がほんのり染まる。
 ―――だって、新一には言わなくても分かってると思ったから・・・。
 と思ったが、恥ずかしくて口に出せない蘭。と、園子が
「言わなくってもわかってるからってわけ?あ~あ、まったくやってらんないわね~」
 と呆れたように言って、蘭の頬はますます赤く染まっていく。それを見て、新一も満足したようににっと笑い、
「そりゃそうだな。毎年来てんだもんな」
 と言った。
「あら、コナン君の時は別でしょう?新一君とは別人だと思ってたんだから」
「う・・・そりゃ、そうだけど・・・」
「いい?新一君。もうあんなふうに蘭を悲しませるようなこと、しないでよね。親友として、絶対許さないんだから!」
「わ、わかってるよ」
「ホントにホントよ?また、蘭を悲しませるようなことしたら、わたしが蘭を貰っちゃいますからね!」
 ビシッと指差しながら言う園子の迫力に押され、一瞬あとずさる新一だったが・・・
「―――わかってる。もう絶対蘭を悲しませたりしねえよ」
 と真剣な顔で言い、それを聞いて園子もホッと息をついた。
「新一・・・」
 蘭は瞳を潤ませ、新一を見つめている。
「良かったね、蘭。でも、ラブシーンは帰ってからにしてよね。今は3人でお花見してるんだから、のけ者にしたら承知しないわよ?」
 と、いたずらっぽく言う園子に、蘭はくすっと笑い、頷いた。
「うん!ありがとう、園子」
 
 3人を見下ろしていた桜の木がざあっと風に揺れ、花びらが雪のように舞い落ちてきた。
 それはまるで、桜の木が3人を祝福の拍手で包み込んでいるようだった・・・・・。

 ―――後日の園子と新一の会話―――
「ところで、良くあんな場所知ってたわね」
「まあな。実はあそこ、昔殺人事件があったって言ういわくつきの場所でさ・・・」
「なるほどね・・・」
「おい、蘭には言うなよ?」
「いいけど・・・高くつくわよ?」
 にやりと笑う園子に、やっぱり言うんじゃなかったと後悔する新一だった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ちょっと中途半端でしたか?この作品は15000番をゲットされたsasna様のリクエストによる作品です。
 いつもより時間がかかってしまい、すいませんでした。気付いたら、もう20000番に近くなっていて内心焦りながらがんばって書いてみました。楽しんでいただけたら嬉しいです♪

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彼女の笑顔 ~新蘭~

Category : novels(コナン)
 あんなに寂しそうな彼女の笑顔を見たことはなかった。
 そして、あんなに綺麗な彼女の笑顔を見たことも、なかった・・・。


 「おはよう、木村君」
 朝、顔を会わすと必ず毛利は俺に笑顔でそう言ってくれる。そして、その横には必ずあいつが・・・
「おはよう毛利。と、工藤・・・」
 俺がそう言うと、毛利はにっこり笑い、あいつはぶっきらぼうに「よお」とだけ言って行ってしまう。
 俺が苦笑いしてそんな2人を見ていると、いつのまにか横にいた鈴木が、声をかけてくる。
「おはよ、木村君。ずいぶん新一君には嫌われてるみたいね」
「おはよう。そうだな。ずいぶん根に持たれてるみてえだけど・・・。別に気にしてねえよ」
「ふうん?」
 鈴木はちょっと不思議そうな顔をしたが、すぐに毛利の側へ行き、おしゃべりを始めた。
 俺は、じっと毛利を見つめた。最近の毛利は、本当に明るい、綺麗な笑顔で笑うようになった。それが誰のせいか、なんて聞かなくてもわかってる。だから、良いんだ。どんなに工藤に嫌われても。彼女に笑顔が戻ったのだから・・・。

 1年前、高校の入学式で毛利に一目惚れした俺。でも、気持ちを伝えることは出来なかった。毛利の横には必ずあの工藤新一がいたし、毛利の気持ちもなんとなくわかっていたから・・・。
 それでも簡単に諦めることは出来なくて、少しでも近付きたいと思っていたのだが、そんな俺の気持ちに気付いたのは、毛利本人じゃなくて、工藤のほうで・・・。それ以来、俺に対するガードが堅くなったのは言うまでもなく・・・。
 が、その後、なぜか突然工藤は学校に来なくなった。何か、大きな事件に巻き込まれているんじゃないかという噂はあったが、それがなんなのか知っているやつはいなかった。
 そしてその頃から、毛利はたまに工藤の机を見ては、溜息をつくようになっていた。笑っていてもその笑顔はどこか寂しそうで・・・。俺は、何とかしてやりたいと思った。部活の話や、テレビの話。何でも良いから気が紛れるような話をして、毛利を元気付けようとした。
 毛利は優しいから、俺の話をいつも楽しそうに聞いてくれていたし、笑ってもくれた。でも、その笑顔も、やっぱりどこか寂しそうに見えて・・・。
 俺じゃあだめなんだ。
 そう思った。きっと、毛利の本当の笑顔を取り戻せるのは、あいつだけなんだ・・・。

 そして、あいつは帰ってきた。
 相変わらず事件で警察に呼び出されることが多いが、それでもなるべく学校へ来るようにしているらしい。ずっと休んでいたから出席日数が危ないというのもあるのだろうが、俺の目には今まで側にいられなかった分、毛利と一緒にいたいからというふうに見える。
 あれから毛利は、本当に嬉しそうに笑う。
 俺が、
「良かったな。帰ってきて」
 と言うと、ちょっと頬を染めながら、
「うん・・・。ありがとう、木村君。いろいろ気遣ってくれて・・・」
 と言った。その笑顔を見て、俺はなんとなく複雑な気分になったのだが・・・。
 でも、やっぱり毛利には笑顔が似合うから。だから、これで良いと思ったんだ。

 だけど・・・。せっかく帰ってきたっていうのに、あの2人はまだただの「幼馴染」らしい。
 工藤のやつ、どうしてさっさと告白しないんだ?警察に呼び出されたりして忙しいから、時間がないのだろうか?
 最近、また毛利が寂しそうな顔をするようになった。
 以前にもまして、有名になった工藤は今年の新一年生のファンに囲まれたりすることも多く・・・。毛利が、そんな工藤をちょっと寂しそうに見つめたりしている姿を見かけるようになった。
 ―――ったく、さっさと付き合っちまえば良いのに、何してんだか・・・


 「あれ、毛利?今帰り?」
 部活が終わり、帰ろうとすると校門のところに毛利が立っていた。
「あ、木村君。うん。木村君も?」
「ああ。あ、もしかして工藤を待ってんのか?」
 と俺が言うと、毛利の頬がピンクに染まった。
「正直なやつだなあ」
 と俺が笑うと、ちょっと拗ねたような表情で軽く俺を睨んだ。そんな表情も可愛いんだけど・・・
「もう・・・あ、新一!」
 毛利の視線を追って振り返ると、工藤が不機嫌そうな顔をして立っていた。
「よお、工藤。ずいぶん遅いんだな」
「・・・補習、だからな」
 と、肩をすくめる。
 そうか。今まで休んでた分補習を受けさせられてるって言ってたっけ。
「そうか。大変だな」
 と俺が言うと、工藤は「別に」と小声で言ってから
「蘭、行くぞ」
 と言って、さっさと歩き出した。
「あ、待ってよ。じゃあね、木村君。また明日」
「ああ、じゃあな」
 2人並んで歩いていくのを何気なく見送っていると・・・ふと、工藤が俺を振り返った。
 ん?なんだ?
 そう思った瞬間、また工藤は前に向き直り、そのまま行ってしまった。
 ?・・・なんだ?工藤のやつ・・・。
 その時、俺の胸にある考えが浮かんだが・・・
 まさか、な・・・。
 そう打消しはしたものの、俺を振り返ったときの、工藤の表情が気になっていた・・・。


 日曜日。
 俺は1人で街に出た。本屋に行った後、目的もなくぶらぶらと歩く。
 天気もいいし、こんな日はデートするには絶好だと思うけど・・・。あいにく、今の俺にはそんな相手はいなかった。それがちょっと寂しい気はするが・・・。まあ1人でいるほうが気楽だし。と、自分を納得させる。
 駅前まで出て、これからどうしようかと立ち止まったとき・・・
「あれ、木村君?」
 と、聞き覚えのある可愛い声・・・
「毛利?」
 振り向くと、そこには毛利がティーシャツにジーパンというラフな格好で立っていた。
「これからどこか行くの?もしかしてデート?」
「いや、1人でぶらぶらしてただけ」
「そうなの?木村君、格好良いんだから彼女くらいすぐできるでしょ?」
「んなことねえよ。毛利は?工藤を待ってんのか?」
 と聞くと、毛利は寂しそうに微笑んで、
「うん・・・。でも、今日は無理かも・・・」
 と言った。
「また事件で呼び出し?」
「うん・・・」
「そっか・・・。どのくらい待ってんの?」
「ん・・・2時間、くらいかな・・・」
 その言葉に、俺は目を見開いた。
「2時間!?そんなに待ってんの?工藤から連絡は?」
 毛利は、ゆっくりと首を振った。
「・・・帰んないの?」
 俺の言葉に、毛利は首をかしげ、
「だって、もしかしたらこれから来るかもしれないし・・・」
 と言った。
 俺は、軽く溜息をつく。
 今更ながら、毛利の工藤に対する想いの深さを思い知らされる。大きな事件に巻き込まれて、ずっと帰ってこなかった工藤を待ち続けた毛利。きっと、誰にもその想いを変える事なんて出来ないんだろう。
 工藤は、そんな毛利の想いに気付いているんだろうか・・・?
「―――なあ、毛利。ちょっと付き合わないか?」
「え?」
「そこの喫茶店。そこからならこの場所も見えるし、俺、1人で退屈なんだ」
 すぐ側にある喫茶店を指差す。ガラス張りになっていて、中の様子もはっきりと見ることができる。工藤が来れば、きっと気付くだろう。
「でも・・・」
「ずっと立ってて疲れたろ?お茶くらい奢るからさ」
 と俺が笑って言うと、毛利もくすっと笑い、
「うん。じゃあ、ちょっとだけ・・・」
 と言った。
 俺と毛利はその喫茶店に入り、窓際の席に座ると紅茶を飲みながら他愛のない会話をしていた。
 その間も、たえず毛利は外に視線を送っている。
「―――工藤は幸せモンだよな」
 と俺が言うと、毛利はドキッとしたように俺を見て、目を見開いた。
「え?どうして?」
「だってさ、こんな風に待っててもらえるなんて、すげえ幸せだと思うぜ?普通、2時間も待たされたら怒って帰っちまうぜ?」
「そ、そうかなあ」
「そうだよ。なあ、おまえらってどうして付きあわねえの?」
 俺が聞くと、毛利はちょっと悲しそうに俯いてしまった。
「どうしてって言われても・・・。片方だけが想ってるだけじゃ、だめなんだよ・・・」
「片方って・・・」
 毛利、気付いてないのか?あいつの気持ちに。
「新一は・・・わたしのことなんて・・・」
 そう言って、毛利がまた外に視線を向けた。
「!!新一!」
「え?」
 俺も一緒に外を見ると、確かに工藤がいるのが見えた。さっき、毛利がいたあたりに立って、きょろきょろと周りを見ている。きっと毛利を探しているのだろう。
「良かったな」
 と俺が言うと、毛利はちょっと照れたように、頷いた。
「ありがと、木村君」
 その時、ちょうど工藤が俺たちに気付いたようだった。
 毛利の姿を見つけると、ほっとしたような表情になり・・・だが、次の瞬間、急に険しい表情になったかと思うと、ぱっと俺たちに背中を向けて歩き出してしまったのだ。
「え・・・新一!?」
 ―――あいつ、やっぱり・・・!!
 毛利が席を立とうとするのを、俺は手で制した。
「毛利、ここで待ってろよ」
「え?」
「俺が、あいつを呼んでくるから」
 俺はそう言い残し、喫茶店を飛び出した。

 商店街の中を、すれ違う人を吹き飛ばしそうな勢いで歩く工藤がいる。
 俺は、走って工藤に追いつくと、その肩を掴んだ。
「待てよ!!また逃げる気かよ!?」
 と、俺が言うと、工藤はきっと俺を睨みつけた。
「逃げてなんかねえ!!」
「じゃあどうして毛利を放って行こうとするんだよ?」
「・・・・・」
「―――なあ、工藤。おまえなんか誤解してねえか?」
「誤解?」
「ああ・・・。俺と毛利のこと」
 俺の言葉に、工藤の眉がぴくりと動いた。その正直な反応に思わず笑みが零れる。
「何が可笑しい?」
「いや、わりい・・・。相変わらず毛利のこととなると別人だなと思ってよ」
 工藤は、ばつが悪そうに俺から視線をそらせた。
「俺は、毛利が好きだよ」
「!!」
「でも、毛利は俺のこと、友達としてしか見てない。あいつが好きなのは・・・ずっと1人だけだ」
 と言うと、工藤の表情が戸惑いのものに変わった。
「あいつはずっと1人のことだけが好きで、ずっとそいつのことを待ってた。そして今も―――あいつは待ってるんだ。そいつが自分のことを見てくれるのを」
「だけど・・・」
「おまえがどうして俺たちのことを勘違いしたのかはしらねえけど、俺はとっくに毛利のことは諦めてたんだぜ。毛利が、本当の笑顔を見せるのはおまえの前でだけだって分かってるからな。だけど、おまえが毛利を放っておくなら・・・俺があいつを貰う」
「な・・・!!」
 工藤の顔色がさっと変わった。
「俺は、もう毛利があんな寂しそうな顔をしているのを見ていたくない。おまえが毛利と付き合う気がないのなら、俺が―――」
「ざけんじゃねえ!!」
 工藤が、突然俺の言葉を遮って叫んだ。周りにいた人たちが驚いて見ていたが、工藤の目には映っていなかった。
「冗談じゃねえ!!俺以外のやつが蘭と付き合うなんてこと許してたまるかよ!!俺だって、ずっとあいつのことが好きだったんだ!!」
「―――それ・・・ホント・・・?」
 俺の後ろから、突然か細い声が聞こえた。
 驚いて振り向くと、毛利が目を見開いてそこに立っていた。
「ら、蘭、おめえ・・・」
 工藤からも、俺や通行人の影になって見えなかったのだろう。毛利を見ると、顔を真っ赤にしてうろたえている。
「ねえ、今の、ホントなの・・・?新一が、わたしのこと・・・」
 毛利は、工藤のことをじっと見つめながら言った。工藤は、真っ赤になって俯いていたが、やがてばつの悪そうな顔で毛利を見ると、
「・・・ああ、本当だよ。俺は・・・蘭のことが、好きだ。ずっと・・・ずっと好きだった」
 と言った。その瞬間・・・毛利が、微笑んだ。
 まるで、大輪の花がゆっくりと開くように・・・回りの風景が全てかすんで見えるほど、それは本当に綺麗な笑顔だった。
 俺も工藤もそんな毛利の笑顔に見惚れ、口が聞けないでいると、毛利の瞳から、今度は大粒の涙が零れた。
「ら、蘭!?」
「よ・・・かった・・・」
 毛利は、涙を零しながらも、そう笑顔で言った。
「わたしも・・・好きだよ、新一が・・・。ずっと好きだった・・・」
 毛利の言葉を聞くと、工藤はゆっくり毛利に近付き、優しく、まるで壊れ物を扱うかのようにそっとその細い体を抱きしめた。
「待たせて・・・ごめん・・・」
「待たせすぎよ・・・」

 ―――やってられねえな・・・
 俺は小さく溜息をつくと、そっと2人の側を離れた。
 もう完全に2人の世界で、俺のことなんか見えてないだろうと思っていたのだが・・・
「木村」
 工藤が、俺を呼び止めた。
 振り向くと、工藤が毛利を抱きしめたまま、俺を見ていた。
「・・・サンキュー・・・」
「・・・別に」
 俺はにっと笑って見せると、その場から立ち去った。

 ―――まったく、世話の焼けるやつらだぜ・・・
 もう、こんな損な役回りはごめんだぜ。と思いながら、俺は妙にさわやかな気分で家に帰ったのだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 このお話はキリ番12345をゲットして頂いたミント様のリクエストによるものです。
第3者から見た新蘭、とのことだったのですが。この木村君と言う人、覚えてる方もいるかと思いますが、キリ番4000番のリク小説で登場した男の子です。結構お気に入りのキャラで、いつか再登場させたいと思っていたのでこんなところで出してしまいましたが、いかがだったでしょうか?

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彼女の笑顔

Category : novels(コナン)

 あんなに寂しそうな彼女の笑顔を見たことはなかった。
 そして、あんなに綺麗な彼女の笑顔を見たことも、なかった・・・。


 「おはよう、木村君」
 朝、顔を会わすと必ず毛利は俺に笑顔でそう言ってくれる。そして、その横には必ずあいつが・・・
「おはよう毛利。と、工藤・・・」
 俺がそう言うと、毛利はにっこり笑い、あいつはぶっきらぼうに「よお」とだけ言って行ってしまう。
 俺が苦笑いしてそんな2人を見ていると、いつのまにか横にいた鈴木が、声をかけてくる。
「おはよ、木村君。ずいぶん新一君には嫌われてるみたいね」
「おはよう。そうだな。ずいぶん根に持たれてるみてえだけど・・・。別に気にしてねえよ」
「ふうん?」
 鈴木はちょっと不思議そうな顔をしたが、すぐに毛利の側へ行き、おしゃべりを始めた。
 俺は、じっと毛利を見つめた。最近の毛利は、本当に明るい、綺麗な笑顔で笑うようになった。それ
が誰のせいか、なんて聞かなくてもわかってる。だから、良いんだ。どんなに工藤に嫌われても。彼女
に笑顔が戻ったのだから・・・。

 1年前、高校の入学式で毛利に一目惚れした俺。でも、気持ちを伝えることは出来なかった。毛利の横
には必ずあの工藤新一がいたし、毛利の気持ちもなんとなくわかっていたから・・・。
 それでも簡単に諦めることは出来なくて、少しでも近付きたいと思っていたのだが、そんな俺の気持
ちに気付いたのは、毛利本人じゃなくて、工藤のほうで・・・。それ以来、俺に対するガードが堅くな
ったのは言うまでもなく・・・。
 が、その後、なぜか突然工藤は学校に来なくなった。何か、大きな事件に巻き込まれているんじゃな
いかという噂はあったが、それがなんなのか知っているやつはいなかった。
 そしてその頃から、毛利はたまに工藤の机を見ては、溜息をつくようになっていた。笑っていてもそ
の笑顔はどこか寂しそうで・・・。俺は、何とかしてやりたいと思った。部活の話や、テレビの話。何
でも良いから気が紛れるような話をして、毛利を元気付けようとした。
 毛利は優しいから、俺の話をいつも楽しそうに聞いてくれていたし、笑ってもくれた。でも、その笑
顔も、やっぱりどこか寂しそうに見えて・・・。
 俺じゃあだめなんだ。
 そう思った。きっと、毛利の本当の笑顔を取り戻せるのは、あいつだけなんだ・・・。

 そして、あいつは帰ってきた。
 相変わらず事件で警察に呼び出されることが多いが、それでもなるべく学校へ来るようにしているら
しい。ずっと休んでいたから出席日数が危ないというのもあるのだろうが、俺の目には今まで側にいら
れなかった分、毛利と一緒にいたいからというふうに見える。
 あれから毛利は、本当に嬉しそうに笑う。
 俺が、
「良かったな。帰ってきて」
 と言うと、ちょっと頬を染めながら、
「うん・・・。ありがとう、木村君。いろいろ気遣ってくれて・・・」
 と言った。その笑顔を見て、俺はなんとなく複雑な気分になったのだが・・・。
 でも、やっぱり毛利には笑顔が似合うから。だから、これで良いと思ったんだ。

 だけど・・・。せっかく帰ってきたっていうのに、あの2人はまだただの「幼馴染」らしい。
 工藤のやつ、どうしてさっさと告白しないんだ?警察に呼び出されたりして忙しいから、時間がない
のだろうか?
 最近、また毛利が寂しそうな顔をするようになった。
 以前にもまして、有名になった工藤は今年の新一年生のファンに囲まれたりすることも多く・・・。
毛利が、そんな工藤をちょっと寂しそうに見つめたりしている姿を見かけるようになった。
 ―――ったく、さっさと付き合っちまえば良いのに、何してんだか・・・


 「あれ、毛利?今帰り?」
 部活が終わり、帰ろうとすると校門のところに毛利が立っていた。
「あ、木村君。うん。木村君も?」
「ああ。あ、もしかして工藤を待ってんのか?」
 と俺が言うと、毛利の頬がピンクに染まった。
「正直なやつだなあ」
 と俺が笑うと、ちょっと拗ねたような表情で軽く俺を睨んだ。そんな表情も可愛いんだけど・・・
「もう・・・あ、新一!」
 毛利の視線を追って振り返ると、工藤が不機嫌そうな顔をして立っていた。
「よお、工藤。ずいぶん遅いんだな」
「・・・補習、だからな」
 と、肩をすくめる。
 そうか。今まで休んでた分補習を受けさせられてるって言ってたっけ。
「そうか。大変だな」
 と俺が言うと、工藤は「別に」と小声で言ってから
「蘭、行くぞ」
 と言って、さっさと歩き出した。
「あ、待ってよ。じゃあね、木村君。また明日」
「ああ、じゃあな」
 2人並んで歩いていくのを何気なく見送っていると・・・ふと、工藤が俺を振り返った。
 ん?なんだ?
 そう思った瞬間、また工藤は前に向き直り、そのまま行ってしまった。
 ?・・・なんだ?工藤のやつ・・・。
 その時、俺の胸にある考えが浮かんだが・・・
 まさか、な・・・。
 そう打消しはしたものの、俺を振り返ったときの、工藤の表情が気になっていた・・・。


 日曜日。
 俺は1人で街に出た。本屋に行った後、目的もなくぶらぶらと歩く。
 天気もいいし、こんな日はデートするには絶好だと思うけど・・・。あいにく、今の俺にはそんな相
手はいなかった。それがちょっと寂しい気はするが・・・。まあ1人でいるほうが気楽だし。と、自分
を納得させる。
 駅前まで出て、これからどうしようかと立ち止まったとき・・・
「あれ、木村君?」
 と、聞き覚えのある可愛い声・・・
「毛利?」
 振り向くと、そこには毛利がティーシャツにジーパンというラフな格好で立っていた。
「これからどこか行くの?もしかしてデート?」
「いや、1人でぶらぶらしてただけ」
「そうなの?木村君、格好良いんだから彼女くらいすぐできるでしょ?」
「んなことねえよ。毛利は?工藤を待ってんのか?」
 と聞くと、毛利は寂しそうに微笑んで、
「うん・・・。でも、今日は無理かも・・・」
 と言った。
「また事件で呼び出し?」
「うん・・・」
「そっか・・・。どのくらい待ってんの?」
「ん・・・2時間、くらいかな・・・」
 その言葉に、俺は目を見開いた。
「2時間!?そんなに待ってんの?工藤から連絡は?」
 毛利は、ゆっくりと首を振った。
「・・・帰んないの?」
 俺の言葉に、毛利は首をかしげ、
「だって、もしかしたらこれから来るかもしれないし・・・」
 と言った。
 俺は、軽く溜息をつく。
 今更ながら、毛利の工藤に対する想いの深さを思い知らされる。大きな事件に巻き込まれて、ずっと
帰ってこなかった工藤を待ち続けた毛利。きっと、誰にもその想いを変える事なんて出来ないんだろう。
 工藤は、そんな毛利の想いに気付いているんだろうか・・・?
「―――なあ、毛利。ちょっと付き合わないか?」
「え?」
「そこの喫茶店。そこからならこの場所も見えるし、俺、1人で退屈なんだ」
 すぐ側にある喫茶店を指差す。ガラス張りになっていて、中の様子もはっきりと見ることができる。
工藤が来れば、きっと気付くだろう。
「でも・・・」
「ずっと立ってて疲れたろ?お茶くらい奢るからさ」
 と俺が笑って言うと、毛利もくすっと笑い、
「うん。じゃあ、ちょっとだけ・・・」
 と言った。
 俺と毛利はその喫茶店に入り、窓際の席に座ると紅茶を飲みながら他愛のない会話をしていた。
 その間も、たえず毛利は外に視線を送っている。
「―――工藤は幸せモンだよな」
 と俺が言うと、毛利はドキッとしたように俺を見て、目を見開いた。
「え?どうして?」
「だってさ、こんな風に待っててもらえるなんて、すげえ幸せだと思うぜ?普通、2時間も待たされた
ら怒って帰っちまうぜ?」
「そ、そうかなあ」
「そうだよ。なあ、おまえらってどうして付きあわねえの?」
 俺が聞くと、毛利はちょっと悲しそうに俯いてしまった。
「どうしてって言われても・・・。片方だけが想ってるだけじゃ、だめなんだよ・・・」
「片方って・・・」
 毛利、気付いてないのか?あいつの気持ちに。
「新一は・・・わたしのことなんて・・・」
 そう言って、毛利がまた外に視線を向けた。
「!!新一!」
「え?」
 俺も一緒に外を見ると、確かに工藤がいるのが見えた。さっき、毛利がいたあたりに立って、きょろ
きょろと周りを見ている。きっと毛利を探しているのだろう。
「良かったな」
 と俺が言うと、毛利はちょっと照れたように、頷いた。
「ありがと、木村君」
 その時、ちょうど工藤が俺たちに気付いたようだった。
 毛利の姿を見つけると、ほっとしたような表情になり・・・だが、次の瞬間、急に険しい表情になっ
たかと思うと、ぱっと俺たちに背中を向けて歩き出してしまったのだ。
「え・・・新一!?」
 ―――あいつ、やっぱり・・・!!
 毛利が席を立とうとするのを、俺は手で制した。
「毛利、ここで待ってろよ」
「え?」
「俺が、あいつを呼んでくるから」
 俺はそう言い残し、喫茶店を飛び出した。

 商店街の中を、すれ違う人を吹き飛ばしそうな勢いで歩く工藤がいる。
 俺は、走って工藤に追いつくと、その肩を掴んだ。
「待てよ!!また逃げる気かよ!?」
 と、俺が言うと、工藤はきっと俺を睨みつけた。
「逃げてなんかねえ!!」
「じゃあどうして毛利を放って行こうとするんだよ?」
「・・・・・」
「―――なあ、工藤。おまえなんか誤解してねえか?」
「誤解?」
「ああ・・・。俺と毛利のこと」
 俺の言葉に、工藤の眉がぴくりと動いた。その正直な反応に思わず笑みが零れる。
「何が可笑しい?」
「いや、わりい・・・。相変わらず毛利のこととなると別人だなと思ってよ」
 工藤は、ばつが悪そうに俺から視線をそらせた。
「俺は、毛利が好きだよ」
「!!」
「でも、毛利は俺のこと、友達としてしか見てない。あいつが好きなのは・・・ずっと1人だけだ」
 と言うと、工藤の表情が戸惑いのものに変わった。
「あいつはずっと1人のことだけが好きで、ずっとそいつのことを待ってた。そして今も―――あいつ
は待ってるんだ。そいつが自分のことを見てくれるのを」
「だけど・・・」
「おまえがどうして俺たちのことを勘違いしたのかはしらねえけど、俺はとっくに毛利のことは諦めて
たんだぜ。毛利が、本当の笑顔を見せるのはおまえの前でだけだって分かってるからな。だけど、おま
えが毛利を放っておくなら・・・俺があいつを貰う」
「な・・・!!」
 工藤の顔色がさっと変わった。
「俺は、もう毛利があんな寂しそうな顔をしているのを見ていたくない。おまえが毛利と付き合う気が
ないのなら、俺が―――」
「ざけんじゃねえ!!」
 工藤が、突然俺の言葉を遮って叫んだ。周りにいた人たちが驚いて見ていたが、工藤の目には映って
いなかった。
「冗談じゃねえ!!俺以外のやつが蘭と付き合うなんてこと許してたまるかよ!!俺だって、ずっとあ
いつのことが好きだったんだ!!」
「―――それ・・・ホント・・・?」
 俺の後ろから、突然か細い声が聞こえた。
 驚いて振り向くと、毛利が目を見開いてそこに立っていた。
「ら、蘭、おめえ・・・」
 工藤からも、俺や通行人の影になって見えなかったのだろう。毛利を見ると、顔を真っ赤にしてうろ
たえている。
「ねえ、今の、ホントなの・・・?新一が、わたしのこと・・・」
 毛利は、工藤のことをじっと見つめながら言った。工藤は、真っ赤になって俯いていたが、やがてば
つの悪そうな顔で毛利を見ると、
「・・・ああ、本当だよ。俺は・・・蘭のことが、好きだ。ずっと・・・ずっと好きだった」
 と言った。その瞬間・・・毛利が、微笑んだ。
 まるで、大輪の花がゆっくりと開くように・・・回りの風景が全てかすんで見えるほど、それは本当
に綺麗な笑顔だった。
 俺も工藤もそんな毛利の笑顔に見惚れ、口が聞けないでいると、毛利の瞳から、今度は大粒の涙が零
れた。
「ら、蘭!?」
「よ・・・かった・・・」
 毛利は、涙を零しながらも、そう笑顔で言った。
「わたしも・・・好きだよ、新一が・・・。ずっと好きだった・・・」
 毛利の言葉を聞くと、工藤はゆっくり毛利に近付き、優しく、まるで壊れ物を扱うかのようにそっと
その細い体を抱きしめた。
「待たせて・・・ごめん・・・」
「待たせすぎよ・・・」

 ―――やってられねえな・・・
 俺は小さく溜息をつくと、そっと2人の側を離れた。
 もう完全に2人の世界で、俺のことなんか見えてないだろうと思っていたのだが・・・
「木村」
 工藤が、俺を呼び止めた。
 振り向くと、工藤が毛利を抱きしめたまま、俺を見ていた。
「・・・サンキュー・・・」
「・・・別に」
 俺はにっと笑って見せると、その場から立ち去った。

 ―――まったく、世話の焼けるやつらだぜ・・・
 もう、こんなそんな役回りはごめんだぜ。と思いながら、俺は妙にさわやかな気分で家に帰ったのだ
った・・・。




 このお話はキリ番12345をゲットして頂いたミント様のリクエストによるものです。
第3者から見た新蘭、とのことだったのですが。この木村君と言う人、覚えてる方もいるかと思います
が、キリ番4000番のリク小説で登場した男の子です。結構お気に入りのキャラで、いつか再登場さ
せたいと思っていたのでこんなところで出してしまいましたが、いかがだったでしょうか?

伝わる想い ~コ蘭~

Category : novels(コナン)
 その日、コナンが起きると蘭は出かける支度をしていた。
「あれ、蘭姉ちゃんどっか行くの?」
「あ、コナンくん。おはよう。うん、ちょっとね。コナンくんは今日どこか行く?元太クンたちと約束とかしてる?」
「ううん、別に。蘭姉ちゃんどこ行くの?」
「え?え―とね・・・」
 蘭はなぜかちょっと照れたような顔で・・・
 コナンは胸騒ぎを感じた。
「実は、服部くんと約束してて・・・」
「は・・・平次兄ちゃんと?どうして?」
 コナンは動揺しながらも、どうにか平静な振りをして聞く。
「なんかね、和葉ちゃんと一緒に来る予定だったらしいんだけど、和葉ちゃんかぜひいちゃって来れなくなっちゃったんだって。それで、どうしても今日までに行って買いたいものがあるからって・・・。そのお店に案内して欲しいって言われたの」
「ふーん・・・。2人で行くの?」
「うん、そうよ」
 どこか嬉しそうな蘭。デニムのロングスカートに淡いピンクのタートルネックのセーターを着た蘭はとてもきれいでデートに行く時のようなおしゃれをしているように見え・・・コナンは当然面白くなかった。
「・・・それ、僕もいっちゃダメ?」
「え?コナンくんも?」
「うん。僕も平次兄ちゃんに会うの久しぶりだし。ねえ、いいでしょ?」
 子供らしく、甘えて見せる。と、蘭は苦笑いして
「仕様がないなあ。じゃあ着替えてきて?30分くらいしたら出るから」
 と言った。
「うん、わかった!」
 コナンはすぐに部屋に戻ると服を着替えた。
 ―――それにしても・・・服部の奴どういうつもりだ?俺に何も言わずに・・・
 訝しげに思いながらも支度をし、部屋を出る。
「お待たせ、蘭姉ちゃん」
「出来た?じゃあ行こうか」
 

 家を出て、平次と待ち合わせをしているという駅に向かう。その間中、蘭はご機嫌でにこにこと楽しそうだった。そんな蘭を見て、やはり心中穏やかでないコナン。
 ―――なんだよ、蘭のやつ・・・。服部と会うのがそんなに嬉しいのか?
 イライラと歩くコナンの顔を見て、そっと微笑む蘭。そんな蘭にコナンは気付いていない。

 駅に着くと、もう平次が先にいた。
「おお、姉ちゃん久しぶりやなあ。―――と、何でボウズがおんねん?」
 コナンを見て顔を顰める平次。コナンの顔が引きつる。
「うん、どうしても一緒に行きたいって・・・。ダメ?」
「ダメやないけど・・・しゃあないなあ。せっかく姉ちゃんとデートや思ったのに」
 平次の言葉に蘭は頬を染め、コナンの顔はさらに引きつった。
「あら、江戸川くんじゃない」
 と、聞き覚えのある女の子の声が聞こえ、3人がそちらを見る。
「あ、哀ちゃんじゃない。どうしたの?」
「ちょっと、博士に用事を頼まれて・・・」
 言いながら、哀は3人の顔を見比べた。
「・・・西の名探偵さんがどうしてここに?何か事件でも?」
「いや、今日は事件ちゃうよ。和葉も来るはずやってんけどあのアホ風邪引いてもうて・・・。姉ちゃんに付き合ってもらうことにしたんやけど、このボウズまでついてきおって・・・」
 平次の言葉に、コナンは顔を顰め平次を睨みつける。
 哀はそんな2人を見てくすっと笑うと、蘭に視線を移し
「ねえ、わたしもご一緒しちゃダメ?邪魔はしないから」
「え?哀ちゃんも?」
 哀の言葉に蘭のみならず、ほかの2人も目を丸くする。
「なんや、めずらしいなあ」
「わたしはいいけど・・・」
 言って、蘭は平次の顔を見る。
「俺もかまへんよ。こうなったら3人も4人も変わらん」
 平次が肩を竦める。
 そして歩き出した4人。コナンは哀の横に立つと、小声で言った。
「おい、どういうつもりだよ」
「別に?ただ楽しそうだなと思って」
「楽しそうって・・・」
「あの2人を見てイライラしてるあなたを見てるだけでも充分暇つぶしになりそうだわ」
 くすくすと笑う哀を見て、コナンは目を細めた。
 ―――相変わらず何考えてるかわかんねえ奴だぜ。

 やがて着いたのは渋谷のブランドショップ。今日までセールをやっているというその店はたくさんの女性客で溢れていた。
「ごっつい人やなあ」
「そうだね。みんなはここで待ってる?わたし行って来るから」
「すまんなあ」
「ううん。じゃ、ちょっと待っててね」
 にっこり笑い、蘭は店の中に入って行った。
「おい、どういうことなんだよ」
 蘭の姿が見えなくなった途端、コナンが平次をじろりと睨んで言った。
「なにがや?」
「今日のこと。俺は何にも聞いてねえぞ」
「そやったのか?俺はただ和葉の買い物に付き合って、ここにくる予定やったんや。何でも、ここにしかない限定もののバッグがどうしてもほしい言うてな。けど、あいつ風邪引いてしもうて。俺はブランド物のことなんて分からんから、姉ちゃんに頼んだんや」
「それなら蘭に買ってきてもらって送らせりゃあ良いじゃねえか。何でわざわざ何もわかんねえおめえが来るんだよ」
 そう言ったコナンを見て、平次がにやりと笑った。
「なんや、妬いてるんか」
「ばっ、バーローそんなんじゃ・・・」
「ほーお。ま、ええけど・・・。俺はただ単に久しぶりに姉ちゃん・・・と、おまえに会いたいと思っただけやで?」
「じゃ、何で俺に何にもいわねえんだよ。いつもだったらまず俺に言うじゃねえか」
「たまたま電話したら姉ちゃんが出たんや。そもそも用事があんのは姉ちゃんやったし、姉ちゃんに言えばおまえにも伝わるだろう思ったしな」
「・・・・・」
 まだ納得のいかないコナンは、さらに問い詰めようとしたが、哀の人を小馬鹿にしたような笑顔を見て、口を噤む。
「東西の名探偵さんは恋のライバルでもあり・・・ってとこかしら?蘭さんは魅力的ですものね。実はわたしも彼女の事が好きなのよ」
「・・・おめえな・・・馬鹿にしてんのか?」
「とんでもない。大真面目よ。彼女には男女問わず人を惹きつける不思議な魅力があるのよね」
 そう言って哀は、店の中で目的のものを見つけ微笑む蘭を見つめた。
「そうやなあ。姉ちゃんはほんま綺麗やからな」
 と言って、平次も蘭に見惚れている。
 そんな2人をじろりと睨むコナン。
 ―――そんな目で蘭を見るんじゃねえよ!蘭の魅力を1番良く知ってんのはこの俺なんだからな!


「お待たせ!買ってきたよ、ほら」
 蘭は、店から出て来ると持っていた袋を平次に渡した。
「おおきに。助かったわ」
「あのね、それ最後の1個だったみたい。間に合ってよかったね」
 にっこりと微笑む蘭に3人が見惚れる。先に我に帰ったのはコナン。
「ね、ねえ、これで用事は終わったんでしょう?このあとどうするの?」
「そうやなあ。飯でも食いに行くか。姉ちゃん、どこかうまいもん食えるとこしっとるか?」
「え―と・・・あ、確か園子に教えてもらった洋食のお店が近くにあったはずだけど」
「ほなら、そこいこか」
 蘭と平次が並んで歩き、その後にコナンと哀が続く。
「なかなかお似合いの2人じゃない?」
 哀が前の2人を見て言った。
 コナンは顔を顰め
「おめえ、俺に喧嘩売ってんのか?」
「まさか。本当のこと言ってるのよ。ねえ、あなたが元の姿だったら彼女とあんなふうに並んで歩いてるのかしら」
 言われて、コナンは前の2人に視線を戻した。
 楽しそうに話しながら、並んで歩く2人。その様子は確かに子供の姿になる前の新一と蘭を見ているようで・・・本当だったらあの場所は俺のものだったはず・・・そんな思いがコナンの胸に湧き上がる。
 平次がチラッと後ろを見て、にやっと笑うと蘭の耳元に口を寄せて何か囁く。
 蘭の顔が、ポッと赤く染まる。
 その様子を見て、コナンは拳を握りしめた。
 ―――そんな顔して服部を見るんじゃねえよっ。その場所は・・・おめえの笑顔を近くで見れるのは俺だったはずなのに・・・


 「結構うまいやないか、この店。さすが鈴木財閥のお嬢様のお墨付きだけあるわな」
「うん、ホントおいしいね。和葉ちゃんも来れたら良かったのにね」
 4人で入った洋食のレストラン。平次と蘭は相変わらず楽しそうだったが、コナンの機嫌は最悪だった。仏頂面のまま無言で食事を続けるコナンを、呆れたような顔で見ている哀。
「なんだよ?人の顔じろじろ見て」
「・・・別に。あなたも気苦労が多くて大変だと思って」
「・・・おめえが言うと、微妙に刺があるような気がすんだけど」
「そう?気のせいよ、たぶん」
 しれっと言って肩を竦めると、哀は食事を続けた。ふと、蘭が哀を見る。
「哀ちゃん、おいしい?」
 笑顔で聞かれ、哀の頬が微かに染まる。
「ええ、とっても」
「良かった。哀ちゃん、普段あんまりわたしとお話してくれないから、今日はちょっと嬉しかったんだ。ね、この後どこか行きたい所ある?」
「え・・・別に・・・」
「ないの?」
「ええ・・・。蘭さんの行きたいところなら、どこでもいいわ」
 小声で、照れたように告げる哀を、嬉しそうに見つめる蘭。コナンは不貞腐れたような表情でその光景を見て・・・ふと、平次に視線を移すと平次もやはり面白くなさそうに蘭と哀を見ていた。
 ―――こいつ・・・もしかして、本気で蘭のこと・・・?


 食事を終えると、4人は近くのデパートへ行き中を見て歩いた。
「あ、見て、哀ちゃん。この店可愛い。哀ちゃんに似合いそうな服たくさんあるよ」
 女の子向けの洋服が並んだ店で蘭は止まり、哀の手を取って中に入った。哀もされるがままになり、蘭の持ってくる服を合わせたりしている。
「ふーん、あの哀っちゅう子もあんな顔するんやなあ。案外、姉ちゃんを好き言うのは本気なんかな」
「・・・おめえはどうなんだよ」
「あん?」
「おめえ、蘭のこと本気で好きなんじゃねえのか?」
「・・・さあな」
「おい・・・おめえには和葉ちゃんが・・・」
「あいつは幼馴染や言うてるやん。けど・・・そやなあ。今日、和葉が行かれへん言うて姉ちゃんと2人になれる思うたら、ちょっとうれしかったんは事実や」
 平次がコナンを見てにやりと笑った。
「まあ、おまえが来ることもわかっとったけど・・・」
 淡々と話す平次を険しい目で睨みながら、
「あいつだけは・・・譲る気、ねえからな」
 と低い声で告げるコナン。平次は、ただ笑ってコナンを見返しただけだった。
「ね、屋上行かない?」
 戻ってくるなり蘭が言った。
「屋上?なんかあるんか?」
「あのね、催事やってるんだって。今はガーデニングフェアやってるって」
「ガーデニングって、お花とか?」
 コナンが蘭を見て聞くと、蘭はにっこり笑い、
「そうよ。事務所と、屋上にもちょっと花を置きたいと思ってたの。ね、行ってもいい?」
 といった。見惚れるような笑顔でそう言われて、断れるはずもない。
 4人は屋上に上がると、思い思いに花を見て回った。
「見て、コナンくん。この花綺麗だと思わない?事務所にどうかな」
「いいんじゃない。おじさんには似合わないけど」
「ふふ、そうね。でもちょっと飾ったらあそこの雰囲気も変わるよね」
 楽しそうに花を見る蘭を、コナンは複雑な顔で見つめた。
「どうしたの?コナンくん。わたしの顔に何かついてる?」
「・・・ううん。楽しそうだなと思って」
「そう?」
「うん。・・・平次兄ちゃんと一緒にいて、楽しい?」
「うん、そうね。服部くん面白いし。今日はコナンくんも哀ちゃんも一緒だしね」
「・・・・平次兄ちゃんのこと・・・好き、なの・・・?」
 俯きながら、消え入りそうな声で聞くコナンを、蘭は穏やかに見つめた。
「・・・うん、好きよ」
 その言葉に、コナンはパッと顔を上げ、蘭を見る。
「友達として、ね」
「・・・友達・・・?」
「うん。・・・実はね、ここんとこわたし、ちょっとへこんでて・・・服部くんに相談にのってもらっ
たりしてたの。それで励ましてもらったりしてて・・・。そのお礼がしたくって服部くんに何が良いか聞いたら、和葉ちゃんとこっちに来るから久しぶりに会おうかって言ってたの。和葉ちゃんは来れなくなっちゃったけど・・・。実はね、コナンくんにはあえて言わないでおこうって言われてたのよ」
「へ・・・なんで?」
「言わなくてもきっと着いてくることになるからって。そしたらわたしも少し元気になるんじゃないかって」
「??・・・それ、どういう意味?」
 どこか嬉しそうに話す蘭の言ってることが分からなくて、コナンは首を傾げた。
「わたしがへこんでた理由・・・あいつのこと、なの」
「あいつって・・・」
 聞かなくても分かっている。
「わたしは・・・ずっとあいつのこと待ってるけど、それってあいつにとってはどうなのかなって。待ってて欲しいって言われたけど、期待しちゃってもいいのかなって。あいつにとって、わたしってなんなんだろうって・・・考えてたら落ち込んじゃって・・・。でもね、今日、ちょっとあいつの気持ちが見えた気がしたの」
「・・・どういうこと?」
 コナンが聞くと、蘭は不思議な眼差しでコナンを見つめて、ふわりと微笑んだ。
「不安になったりするのは、わたしだけじゃないんだって。きっとあいつも不安になったりするんだって分かったの」
 コナンは、まだわけがわからず首を捻った。
「わたしが服部くんと会うって分かって、少しは心配した?」
 いたずらっぽい目でコナンを見る蘭。コナンはその眼差しにはっとして・・・
 ―――まさか、蘭、気付いて・・・?
「聞いちゃいけないことだってあるのはわかってる。だから聞かない。でも、時々こんなふうに・・・気持ちを確かめたくなるときもあるの」
「・・・・・」
 蘭の眼差しはどこまでも優しく、穏やかだった。
「ごめんね・・・。でも、おかげでちょっと元気になれたの。また、これからもがんばれるよ」
 蘭はそう言ってにっこり笑うと、鉢植えを1つ持ってすくっと立ち上がった。
「これ、気に入ったから買おうかな。あとは・・・あ、あの辺良さそう」
 楽しそうに歩いていく蘭の後姿を見つめるコナンの側に、いつの間にか平次が来ていた。
「・・・おめえ、あいつに何か言ったのか?」
「なんも言わんよ。ただあんまり姉ちゃんが落ち込んでたから、話し相手になってただけや」
「ったく・・・余計な気ィ回しやがって」
「ほっとけんかったんや。姉ちゃんは何でも我慢しすぎる。たまには我侭言うてもええのにな。なんや姉ちゃんと話してるうち、どうにかしてあげたくなったんや。少しでも元気になってくれたらええと・・・」
 コナンは、吃驚して平次の顔を見た。
 ―――こいつ・・・まさか本当に本気で蘭のこと・・・?
 平次の蘭を見つめる瞳。それは今までのものと確実にどこか違うような気がした。愛しいものを見るような深く、優しい眼差し・・・。それは、今までコナンが見たことのない平次だった。
「安心せい、まだ本気でどうこうしよう思うてるわけやない。とりあえずおまえが元の姿に戻るまでは待っといたるから」
 にやりと笑ってコナンを見ると、ぶらぶらと歩き出した。
 そんな平次の後姿を呆然と見ていると・・・
「早く元の姿に戻らないと、彼女をとられちゃいそうね」
 哀が、どこか楽しそうに言いながら、コナンの隣に来た。
「おめえな・・・そう思うんだったら・・・」
「あら、わたしは努力してるわ。それよりも、ちゃんと彼女の心をつかまえとかないと取り返しのつかないことになるわよ?」
「言われなくっても・・・。他の奴になんかわたさねえよ」
「ふーん・・・ま、がんばってね。・・・わたしもわたしでがんばるし」
「はあ?」
 意味ありげに笑う哀を、コナンは訝しげに見た。
「わたしも蘭さんといっしょに、お花見てこようかしら」
 さっさと蘭の元へ走っていく哀。そして平次も蘭の側に・・・。
「あいつら・・・」
 ―――冗談じゃねえぞ!俺だって毎日言いたいこと言わねえで我慢してるってえのに、今更他の奴になんか渡せるか!!

「蘭姉ちゃん!!」
 3人の間に割り込むように蘭の側に駆け寄ったコナン。
 蘭はそんなコナンを優しい笑みを浮かべて見つめた。
 
 何も言えなくても。その気持ちは伝わっている。
―――だから、大丈夫だよ。 
 コナンの手を、黙って握った蘭の瞳がそう語っているようだった・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 このお話は12000番をゲットして頂いたモンブラン様のリクエストによる作品です。
当初、コナンをはめて楽しむ平次ということにしようと思っていたのですが・・・
書いているうちに変わってきてしまい、なぜか哀ちゃんも含め蘭ちゃんを巡る四角関係となってしまいました。でも、書いててとても楽しかったです♪

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きみの記憶 ~新蘭~

Category : novels(コナン)
 新一が帰ってきた。 
 あんなに会いたいと思っていた新一が・・・。
 でも、新一は・・・

 「おはよう、新一!」
「ああ、おはよう。―――毛利、さん・・・」
 家の前で待っていた蘭に、新一はそう挨拶を返した。
 その瞬間、蘭の表情が悲しげに歪む。新一は、すっと顔を背けた。
「・・・行こうか」
 蘭は、すぐに気を取り直すと、にっこりと笑い新一の横に立って歩き出した。
 そんな蘭を、新一は戸惑いながら見つめる。
 新一の視線に気付きながらも、蘭は前だけを向いて歩く。

 新一は帰ってきた。
 でも、新一は蘭のことを覚えてはいなかった。
 蘭のことだけではない。自分のこと、家族のこと・・・全て、忘れてしまっていたのだ。
 新一と一緒に現れ、付き添っていた宮野志保は言っていた。
「ショックによる一時的な記憶障害だと思うわ」
 ショック・・・新一は、ある闇の組織と戦っていた。回りの協力もあり、漸くその組織を壊滅させ、元の姿に戻ることが出来たのだ。だが、その戦いによるダメージが、極限状態で戦っていた新一に相当のショックを与えることとなって・・・。
 志保は、泣きながら蘭に謝った。
「ごめんなさい・・・。わたしがあんな薬を作らなければ・・・」
 でも、蘭には志保を責めることは出来なかった。たった1人の姉を殺され、組織に追われながら新一のために解毒剤の研究をしていた志保。どんなにつらかったか・・・。
「志保さん、自分を責めないで。大丈夫、きっとそのうち治るわ。わたしは、新一が帰って来てくれればそれでいいの。それより、志保さんもちゃんと休まなきゃ駄目よ?すごく、疲れてるでしょう?」
 蘭は、志保を優しく抱きしめた。志保は、蘭の胸にすがり、泣きつづけたのだった・・・。


 新一は学校へ戻り、以前と変わらぬように生活していた。
 友達のことは覚えていなかったが、すぐにクラスに馴染み、友達も出来ていた。
 蘭も、表面上は以前と変わりなく過ごしていた。
 たぶん、蘭の本当の気持ちに気付いているのは親友である鈴木園子だけだろう。
「蘭、大丈夫なの?無理しないでよね?」
 いつも、園子は蘭のことを心配してくれている。
「大丈夫だよ?わたしには園子がいるもん」
 冗談めかして言うと、園子はちょっと拗ねたように、
「もう、すぐそうやってごまかして・・・」
 と文句を言っていたが、蘭は本気で言っていたのだ。
 新一が記憶を失い、平気でいられるはずはない。でも、園子が常に蘭を気遣ってくれるおかげで、表面上だけでも明るい顔をしていられるのだ。園子がいなかったら・・・学校へ来るのもつらかったかもしれない。


「園子さん?わたし、宮野志保です」
 園子の元へ、突然志保から電話があったのは新一が戻ってきて1ヶ月ほどたったある日のことだった。
 園子は、その電話に驚きを隠せなかった。蘭から話は聞いていたものの、直接彼女と話したことはない。どうしてその志保が・・・?
「志保、さん?なあに?」
 はっきり言って、園子は志保にあまり良い感情を抱いていなかった。詳しくは聞いていなかったが、新一があんなふうになってしまった原因は志保にあるのでは、と園子は思っていたのだ。
「ごめんなさい、突然電話なんかして・・・。あなたに、お聞きしたいことがあるの」
「わたしに?」
「ええ・・・工藤くんのことで」
「新一君のこと?それならわたしに聞くより、蘭に聞いたほうがいいんじゃない?」
 園子の言葉に、電話の向こうで志保が一瞬黙った。
「だめなのよ・・・」
「だめって・・・」
「蘭さんは・・・本当のことを言ってはくれないの」
「?それ、どういうこと?」
「学校での、工藤くんの様子を聞いても、ただ“新一は元気だよ。前と変わらない”と言うだけで。わたしに気をつかっているのだと思うの。わたしの前ではほとんど工藤くんのことに触れずに・・・そのかわり、わたしのために食事の支度をしてくれたり、ケーキを焼いてくれたり・・・」
「そう・・・あの子らしいわ」
 園子は溜息をついた。
「だから、迷惑かもしれないと思ったけれど・・・あなたに聞こうと思ったの。学校での工藤くんの様子を」
「分かったわ。でも、何から話せばいいの?」
「友達に接している様子や、蘭さんといるときの様子を」
「う~ん、そうねえ。友達といるときは、もう前と変わらないくらい普通に接してるわ。休み時間にサッカーやったり冗談言って笑わせたり・・・。でも、蘭とはあまり話したがらないわね」
「そう・・・」
「ただ・・・これは、たぶん蘭も気付いてないと思うけど」
「なあに?」
「蘭が他の男の子と話したりしてると、すごい目で睨みつけてるわ」
「それ、ホント?」
「うん。本人無意識かもしれないけど・・・」
「そう・・・」
「これ、参考になる?」
「ええ、とても。ありがとう、園子さん」
「ううん、別に・・・」
 園子は、ちょっと照れくさそうに言った。
「それで・・・ひとつ相談したいことがあるんだけど、良いかしら」
「?わたしに出来ることなら、良いけど・・・なあに?」


 それから3日後、蘭たちのクラスに1人の転校生がやってきた。
 担任の教師に連れられてやってきたその人物は蘭も良く知っている人物で・・・
「大阪から来ました、服部平次いいます。よろしゅう」
 平次は、にっと笑い、教室を見渡した。
「服部くん!?」
 蘭が驚いて、声を上げる。
「おお、姉ちゃん久しぶりやのう。これからよろしゅうな」
「どうして・・・」
「ちょっと事情があってな、当分こっちにおることになったんや」
 平次はそういいながら、ちらりと新一を見た。
 新一は、平次のことも覚えていなかった。組織と対決するときは一緒にいたのだが、その後記憶を失ってからは1度も会っていない。要するに今の新一にとって、平次は初対面の人物なのだ。その平次と、蘭はどうやら知り合いらしい・・・。新一は、仏頂面で平次を睨みつけていた。そんな新一の様子を見て、平次はにやりと笑った。同じくその様子を見ていた園子も、満足そうに微笑んでいた・・・。

「ある事件の捜査でな、一時的にこっちへ来ることになったんや」
 休み時間になり、蘭の隣の席に座った平次は話し始めた。園子も側に来て話を聞いている。
「そうなの」
「どのくらい時間がかかるかわからないさかい、ここの校長にも親父のほうから頼み込んでもろうて協力してもらってんねや」
「大変だね。和葉ちゃん寂しがってるんじゃない?」
「ああ、平気やあいつは。そんなことより、姉ちゃんに頼みたいことがあるんやけどなあ」
「え?わたしに?」
「そや。昨日はビジネスホテルに泊まったんやけど、ずっとそこにいるわけにもいかんからな。事務所のほうでええから、こっちにいる間泊めてくれへん?」

『ガタンッ!!』

 突然椅子が倒れる音がして、蘭が驚いて振り向く。と、そこには椅子を倒して立ちあがっている新一が・・・
「新一?どうしたの?」
「あ、いや、別に・・・」
 ばつが悪そうに俯く新一を見て、平次と園子は顔を見合わせ、にっと笑った。
「で?どうや、姉ちゃん」
「え、わたしは良いけど、一応お父さんにも聞いてみないと・・・。それにしても、服部くん、泊まるところも決めないでこっちに来たの?」
「ああ、急な話やったからなあ。あのおっちゃんのことなら大丈夫やろ。親父のほうから頼んでもらっとくわ」
 平次はそう言うと、「トイレ行って来るわ」と言って、席を立った。そして、園子も他の友達のほうへと離れていった。
 新一は、すたすたと蘭の側へ歩みより、蘭をじっと見詰めた。
「?どうしたの?新一」
 蘭が、不思議そうに首を傾げる。とにかく、記憶を失ってからというもの、新一から蘭に話し掛けてくることはほとんどなかったのだ。
「あのさ・・・本当に、あいつを家に泊めるの?」
「服部くんのこと?うん・・・事務所のほうだけどね。泊まるところがないのに、追い出すわけにもいかないでしょう?」
 きょとんとしながら事も無げに言う蘭を見て、新一は胸にもやもやとするものを感じていた。
「けど・・・危険じゃねえの?」
「危険?どうして?」
「どうしてって・・・年頃の男を、同じ家に泊めるなんて・・・」
 蘭は、暫く目を瞬かせていたが、漸く新一の言わんとすることを理解し、おかしそうにぷっと吹き出した。
「やだあ、新一ってば。服部くんなら大丈夫だよォ。それにね、わたしのお父さん、探偵でしょう?そこにいれば何かと便利だと思ったんじゃない?別に下心があるわけじゃ・・・」
「ん・・・なことわかんねえだろ!?何でそんな平気な顔してられんだよ!?」
 突然声を荒げ、机を叩きつけた新一に、蘭は目を丸くした。
「・・・新一・・・?」
「あ・・・わりい・・・」
 新一ははっとし、蘭から視線をそらせた。
 その様子を廊下から見ていた平次の側に、園子がやってくる。
「思った以上の効果があったみたいね」
「ああ。まったく正直なやっちゃ。これはやりがいありそうやなあ」
「ちょっと・・・やりすぎて、本当に蘭に手え出したりしないでよ?」
 園子が、平次をじろりと睨む。
「あったり前や。んなことしたら工藤に殺されてまう。宮野の姉ちゃんにも釘刺されとるからな」
「なら良いけど。でも、志保さんもすごい作戦思いついたもんよね」
「ホンマや。策士っちゅうんはあの姉ちゃんみたいな人のことを言うんやなあ」
「これからが楽しみねえ」
 ニヤニヤと笑う園子を見て、あんたも悪趣味やけどなあと内心で思う平次だった・・・。


 ―――なんでこんなにイラつくんだ。いくら幼馴染だって、ここまで気になんのはおかしくねえか?
 蘭の家の前の通りを隔て、建物の陰に身を置いた新一は、今日1日わけのわからない苛立ちを抱えながら過ごしたことに疑問を抱いていた。
 毛利蘭という女の子が、自分にとってどういう存在なのか。記憶を失ってからというものずっと胸の中にあった疑問。志保から、彼女は新一の幼馴染だと聞いた。彼女もそう言っていた。 だけど、本当にそれだけなのだろうか?新一は、気付けば蘭のことを目で追っていた。友達と話している蘭、真剣に授業を聞いている蘭、そして、せつなそうに自分を見る蘭・・・。どうしてそんな目で俺を見る―――?
 新一は蘭が自分以外の人間に笑顔を向けることが、すごく嫌だった。そして、今日も・・・。
 ―――なんなんだよ?あの服部とかいう奴は!蘭に馴れ馴れしくしやがって・・・。蘭も蘭だ!何であんな奴と仲良さそうに話してんだよ!?俺は・・・蘭にとってなんなんだ?俺にとって、蘭は・・・?

 いくら考えても分からない疑問を打ち払うように、新一は家に着くなりすぐに着替え、こうして蘭の家の前までやってきたのだ。事務所には、まだ蘭の父親の小五郎がいるのが見えた。
 暫く見ていると、平次が小五郎の後ろの窓際まで来たのが見えた。新一は、はっとして身を隠す。
 それからそっと様子を伺ってみると、平次は窓に背を向けて小五郎と話していた。小五郎とも知り合いらしい平次は、かなり打ち解けた感じで話をしていた。その様子を見て、新一はますます不機嫌になるのだった・・・。


「んで、こっちにはいつまでいるんだ?」
 小五郎が、平次に聞いた。
 ここは毛利探偵事務所。応接セットのソファには3人分のお茶をいれて来た蘭が座っていた。
「そんな長いことかからへんと思うで。ま、2,3日でどうにかなるんちゃうか?」
「2,3日?そんなに早く!?」
 蘭が吃驚して目を見開く。
「何だ、そんなに早く解決するんなら、わざわざ転校することもなかったんじゃねえか」
「だから、本当は転校ちゃうねんて。学校側には説明してるんやけど、クラスの奴らにまで詳しく話すわけにはいかんからそういうことにしてもらってんのや」
「ふーん、ずいぶんまどろっこしいことするんだな。で、どんな事件なんだ?」
「それはまだ言えん。解決したら話したってもええけどな」
 と、平次がにやっと笑って言ったとき、小五郎のデスクの上の電話が鳴り出した。
「おっと・・・はい、こちら毛利探偵事務所・・・ああ、警部殿、お久しぶりで・・・はァ・・・はい
、分かりました。では、すぐに・・・はい」
「何か事件?」
 蘭が、心配そうな顔をして聞く。
「ああ、今日は遅くなるかもしれん。―――おい、おめえ、分かってんだろうが・・・」
 小五郎が、ギロリと平次を睨む。
「わかっとるって。俺は紳士やで」
「何言ってやがる」
 にやりと笑う平次に、半ば呆れ気味にそう言ってから、小五郎は出かけて行った。
「さあて・・・」
 平次は、窓からチラッと外を見て、その姿を見つけると、口の端で笑った。
「姉ちゃん、ちょいこっち来てみい」
「?なあに?」
 蘭が、きょとんとしながらも窓の側へ寄る。
「ま、ええから。ほれ、おっちゃんが歩いとるのが見えるで」


「ん・・・?」
 新一は、事務所から小五郎が出てくるのを見ていた。
 ―――どこか行くのか?そういや探偵だったよな。何か事件か・・・?
 なんとなく気になり、小五郎の姿を目で追っていた新一だったが・・・
 突然、はっとして事務所の窓に目を向ける。
 ―――あのおっちゃんが出てったってことは、今あそこには、あの服部って奴と蘭の2人きりじゃねえか!
 その時、ちょうど窓際にいた平次の側に蘭が来たところだった。
 蘭が、窓から小五郎の姿を見つけ、柔らかく微笑む。
 新一の胸が、どきんと音を立てる。
 蘭と平次は、その場で何か話しながら、時々笑っている。楽しそうに笑う蘭の姿を見ていると、また新一の胸にもやもやとしたものが広がり始める。
 ―――ちきしょう・・・何なんだよ、この妙な気持ちは・・・。蘭・・・。
 暫く見ていると、平次が、蘭の耳に唇を寄せ、何か囁いているのが見えた。
 ―――!!!な、何してるんだっ、あいつはァ!!蘭から離れろっ!
 が、そんな心の声が届くはずもなく・・・。平次は、蘭の腕を掴み、そのまま蘭の体を引き寄せた。蘭は一瞬、吃驚したような顔をして身を引きかけたが、平次にまた何か言われ、そのままおとなしく平次に体を預けている。
 ―――なな、なんなんだよ!?どうなってるんだ!?
 新一は、その光景に動揺し、パニック状態になりかけたが・・・
 その時、不意に新一の脳裏に蘭の姿が浮かんだ。
 ―――え?何だ?今の・・・蘭・・・?でも制服が・・・帝丹高校のじゃねえぞ・・・?それに、蘭ももう少し幼かったような・・・
 突然浮かんだその映像に戸惑っていたが、平次が蘭の耳に再び唇を寄せたのを見て、またむっとしてその光景を睨みつける。―――と、また、新一の脳裏に蘭の姿が浮かんだ。今度は、もっと幼い・・・小学生くらいの蘭の姿だ。
 ―――な・・・んだ・・・?蘭・・・?どうして・・・いや・・・俺は、知ってるんだ・・・。この
ときの蘭も・・・さっきの蘭も・・・ずっと、見てきた・・・。そうだ・・・俺は、ずっと蘭のことを
・・・
「蘭・・・」
 知らずに、声に出していた。
 すると、その声に応えるかのように、蘭が窓の外を見た。
 ―――やべ!
 新一は慌ててまた建物の陰に身を隠そうとしたが・・・
 ―――!?
 続いて目に飛び込んできた光景に、新一は固まった。
 平次が、自分の体で隠すように蘭を抱き寄せる。そして、蘭の顔を両手で挟み、そのまま顔を近付けて・・・
「あ―――あんのやろォ―――っ!!」
 その瞬間、新一の中で何かが音を立ててはじけた。
 通りを行き交う車を無視して道路を突っ切り、事務所の階段をものすごい勢いで駆け上がる。
 
 『バター――ン!!!』

 突然、すごい音がしてドアが開き、蘭はギョッとして入り口に顔を向けた。
「し・・・んいち・・・?」
「服部!!蘭から離れろ!!」
 入ってくるなり、ものすごい形相でそう叫んだ新一を見て、蘭は目を丸くする。
「新一・・・今、蘭って・・・」
「なんや、無粋なやっちゃなあ、せっかく良いところやったのに・・・」
「うるせえっ、てめえには遠山さんがいるだろうが!!蘭には手ェ出すんじゃねえよ!」
「!!」
 蘭が、驚いて目を見開く。平次も、一瞬驚いたような顔をしたが・・・
「なんや、もう記憶戻ってしもおたんか。おもろないなあ」
 と言った。
 その言葉に、蘭が平次の顔を見る。
「記憶、戻ったって・・・ほんとに・・・?」
「本人に聞いてみい?」
「新一・・・?」
 蘭が、戸惑いがちに、新一を見ると・・・新一は思い切り仏頂面で2人を睨み、
「んなことより、いつまで抱き合ってんだよ!?」
 と言った。蘭は、はっとして慌てて平次から離れた。
「だ、だって、突然すごい音でドアが開くから、吃驚して・・・。そ、それより、本当なの?記憶が・・・戻ったって・・・」
「・・・ああ、ついさっきな・・・。ごめん、蘭。心配かけて・・・」
 と新一が言うと、蘭の瞳に、瞬く間に涙が溢れた。
「新一・・・」
「蘭・・・今まで、悪かった・・・。ずっと待っててくれたのに、俺・・・」
 蘭は、首をぶんぶんと振って、新一の言葉を遮った。
「そんなの・・・!もう、いいよ。わたしは・・・新一が無事に戻ってきてくれれば・・・それで、い
いの。わたしのこと、思い出してくれなくても・・・新一が無事なら・・・」
 とうとう顔を伏せて泣き出してしまった蘭の背中を、服部が優しくぽんぽんと叩くと、新一を見てにっと笑った。
「ほなら、俺ももう帰るわ」
「え?服部くん、帰るの?」
 蘭が、驚いて顔を上げる。
「ああ、俺の役目も終わったみたいやし」
「役目って?何かの捜査のために来てたんじゃないの?」
「・・・おい、まさかおめえの役目って・・・」
「言うとくけど、考えたのは俺やないで。あの姉ちゃんや。宮野とかいう・・・それと、鈴木さんやな」
「志保さんと、園子・・・?」
 蘭が、きょとんとしながら首を傾げる。
「あのやろお・・・」
 全ての事情を理解したらしい新一が、苦々しげに呟く。
「まあ、結果的に工藤の記憶も戻ったんやし、許してやり。2人とも工藤の・・・というより、2人のことを心配してたからこそこんなことを俺に頼んだんやから」
「―――わかってるよ」
「ねえ、どういうこと?」
 さっぱり理解できない蘭が、拗ねたような表情で聞く。
「ああ、後でゆっくり工藤に説明してもろたらええよ。俺はもう行かんと新幹線に間に合わんし。今度2人で大阪に遊びに来たらええ。和葉も姉ちゃんに会いたがってたし」
 そう言いながら、平次は素早く身支度を終わらせ、事務所のドアをあけ、出て行こうとした。
「おいっ、待てよ、おめえさっきのこと―――」
「ああ?」
「さっきみてえなこと・・・今度やりやがったら、ゼッテーゆるさねえからな!」
 新一がきっと睨みつけると、平次はにやりと笑い、
「ほなら、そうされないようにしっかり捕まえとくんやな。―――さいなら~」
 ばたんとドアを閉め、行ってしまった平次を呆然と見送る蘭。
「―――なんだったのかな?」
 小首を傾げ、考えている蘭をちらりと見て
「おめえも・・・なんだって服部の奴なんかとくっついてんだよ?」
 と言った。
「え?―――ああ、さっきの?だって、服部くんが捜査のためだから協力してくれって・・・」
「だからって、あんな―――キスまですることねえだろ!?」
「キ、キスなんてしてないわよ!」
「されそうになってたじゃねえか!」
「そんなことないってば!何よ、何でそんなに怒ってんのよ!」
 蘭にそう切り返され、ぐっと詰まる新一。
「新一?」
「・・・嫌だからに決まってんだろ?」
「え?」
「誰だって・・・好きな子が他の奴にキスされそうになってんの見たら、怒るだろうが」
 ぷいっとそっぽを向いて、真っ赤になっている新一。蘭は、驚きに目を見開いた。
「新一・・・それって・・・」
「ずっと・・・おめえのことが好きだった・・・」
 今度はまっすぐに、蘭の瞳を見つめながら、新一は言った。
「誰にも、渡したくねえんだ・・・。それが、どんな奴でも・・・」
「新・・・一・・・」
「蘭・・・おめえの気持ち、聞かしてくれるか・・・?」
「・・・・・」
「蘭・・・?」
 黙ってしまった蘭に、新一は不安になる。
 もう、気持ちが変わってしまったのだろうか・・・?
「蘭・・・」
「わたしも・・・好きだよ、新一が・・・大好き・・・」
 ふんわりと、零れるような笑顔で、蘭は言った。
「蘭!」
 思わず、ぎゅっと蘭を抱きしめる新一。
「蘭・・・もう、絶対はなさねえから」
「うん・・・離さないで・・・どこにも行かないで・・・」
「蘭・・・」
「新一・・・。もしも、またわたしのこと忘れたら・・・」
「もう、忘れねえよ」
「でも、その時も・・・わたし、離れないからね?ずっと・・・側にいるからね?」
「蘭・・・」
 新一は、蘭を抱きしめる腕に力を込めた。
 愛しさが、こみあげる。
 ―――もう、忘れねえよ。こんなに愛しい存在を・・・一瞬だって、忘れて堪るか。絶対・・・もう、他の奴には触らせねえ。

 2人は、いつまでも飽きることなく抱き合っていた。まるで、1つのものになってしまったかのように、身動きもせず・・・。


 それから1時間後、帰ってきた小五郎が抱き合っている2人を見て、怒り狂ったのは言うまでもない・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この作品は11111番をゲットして頂いたできそこないの迷探偵様のリクエストによるお話です。このお題を頂いたとき、すごく悩みました。「記憶喪失」というテーマが、どうしても暗くなってしまいそうで・・・。何とか明るい話に持っていけないかと思い、考えた結果がこれで・・・。
ちょっとイメージとは違うものになってしまったかもしれませんが・・・。でも、わたし的にはかなり気に入ってます。平次も出せたし(笑) すいません。自分勝手な管理人で・・・。

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Two holidays ~新蘭~

Category : novels(コナン)
 「あ、服部くんだ」
 と、突然蘭がテレビを見て言った。
 一緒にソファに座り、蘭の髪をもてあそびながら他愛のない話をしていた新一が、その言葉を聞いてテレビを見る。
 なるほど、テレビには新一と蘭の友人でもある西の名探偵服部平次が映っていた。どうやらワイドショーで平次が解決した事件を取り上げているらしい。
 高校を卒業し、大学に通う傍ら、本格的に探偵業を始めた平次と新一。東京と大阪と、離れてはいるが、たまに同じ事件に関わったりして合同捜査をしたりすることもあり、今や日本中知らない人間はいないほどで、こうしてテレビで取り上げられることもしばしばだ。
 若くて格好も良く頭の良い2人は女性に絶大の人気があり、新一もよくテレビの出演依頼を受けたりしているが、新一はどちらかというとテレビに出ることをあまり好まない。と言うのも、ただでさえ忙しく、蘭との時間が少ない新一は、せめて事件のない日は蘭と過ごしたいと思っているからで・・・。それに比べ平次は結構頻繁にテレビに出ていた。そこで2人は、新一はクールでポーカーフェイス。平次はユーモアがあり目立ちたがり。というように世間では見られているらしかった。

「くすくす・・・服部くんてば相変わらず面白いね」
 蘭が、テレビの平次を見て、楽しそうに笑う。
「あいつ、良く出るなあ。宣伝のためだなんて言ってたけど、和葉ちゃんに怒られんじゃねえの?」
「そうでもないみたいだよ?この間和葉ちゃんと電話で話したとき言ってたけど、服部くん、必ず1日5回は和葉ちゃんに電話くれるんだって」
「へえ、あいつが?」
 新一が意外そうな顔をする。
「うん。やっぱり和葉ちゃんのこと心配みたい」
 蘭が、まるで自分のことのように嬉しそうに言う。新一は、そんな蘭の笑顔に見惚れ、蘭の肩を抱いて、その唇にそっとキスをした。
「俺も、おめえのこと心配してるぜ?」
「え?心配って、何を?」
 蘭がきょとんとして言う。
「何でも。今みてえにおめえが服部のことばっか見てるのとか」
「え・・・」
「嬉しそうな顔してよお、あいつのこと見んなよ」
 蘭の髪に顔を埋め、拗ねたように囁く新一。
「それって・・・やきもち?」
 蘭がくすくす笑いながら言う。
「う・・・まあ・・・」
「ふふ・・・変なの。テレビだよォ?」
「それでもやなんだよっ、おめえが俺以外の奴見て笑うのは」
「もう・・でも、わたしだって心配してるんだよ?」
 蘭の言葉に、新一は顔を上げる。
「事件のこと?」
「それもだけど・・・新一も最近たまにテレビに出たりするじゃない。その時に、レポーターの女の人に笑いかけてるの見たときとか・・・」
「へ?俺、笑ってる?」
「笑ってるよォ、にっこりと」
 今度は、蘭がすねたように言う。
「そおかあ?けど、それは完全な愛想笑いだぜ?あんまりむすっとしてるとイメージ悪いかと思ってさ」
「うん、わかってる。だからね、怒っちゃいけないなあとは思ってるの。でも、やっぱり・・・新一が他の女の人に笑いかけてるのとか、見たくないんだもん・・・」
 ちょっと頬を膨らませながら、俯いて言う蘭が、堪らなく可愛い。新一はぎゅうっと蘭を抱き寄せると、その頬に口付けた。
「俺が、本当の笑顔見せるのはおめえだけだよ」
「本当?」
「ああ。だから、おめえも本当の笑顔見せんのは俺だけにしとけよ?」
 新一の言葉に、頬を染めながら、蘭は嬉しそうに微笑んだ。
「うん―――。あ!藤谷直樹!」
「へ?」
 突然テレビを見て嬉しそうな声を上げた蘭に、新一は目を丸くする。
「ほら、この人、最近良くCMとかに出てるの!今度ね、連ドラにも出るんだって!」
「・・・・・で?」
「かっこいいと思わない!?背も高くって、美形だし!」
「・・・・・」
「この間、たまたま見たサスペンスドラマに出ててね、すっごくかっこよくって、好きになっちゃったの!」
「・・・・・好き・・・・・?」
「うん!園子も好きって言ってたよ?演技も上手いし、声も良いよねって」
「・・・・・ふーーーん・・・・・?」
「で・・・えーと・・・」
 一気にまくし立てるように言ってしまってから、蘭ははっとした。
 “しまった!”
 恐る恐る新一の顔を見てみると、思いっきりじと目で自分を睨んでいる新一と視線がぶつかる。
「あ・・・でも、やっぱり新一のほうが、かっこいいよねっ」
「・・・とってつけたように言ってんじゃねえよ」
「そそ、そんなこと・・・」
「今、言ったばっかりじゃなかったっけ?俺以外の奴見て笑うなって」
「そ、そうだね・・・」
「今、おめえ思いっきり笑ってたよなあ?テレビのあいつ見て、めちゃめちゃ嬉しそうに」
「そ、そうだっけ・・・?」
「んで、あいつのことが好きだっつってたよなあ?」
「それはっ、芸能人としてってことで、別に深い意味はないわよ!?」
「・・・・・・」
「し・・・新一?あの・・・」
 無言で自分を見つめる新一の視線を受けながら、蘭はじりじりと後退をする。
 その蘭の肩を、新一の手ががしっと掴む。
「蘭?」
 にっこりと微笑む新一。でも、その笑顔は犯人を追い詰めるときのそれのように迫力があり―――
「は、はい?」
 思わず引きつった笑顔で答える蘭。
「今日、泊まっていくだろ?」
「え・・・で、でも、あの・・・」
「泊まっていくよなあ?」
 蘭の肩を掴む手に、力がこもる。
 ―――もう、逃げられない・・・。
 蘭は、観念することにした。
「と、泊まって、いく・・・」
「よろしい」
 新一は、蘭の答えを聞くとぐっとその体を引き寄せ、唇を重ねた。さっきまでの触れるだけのキスとは違う、深く激しい口付け。僅かな隙間から舌を滑り込ませ、思う存分味わい尽くしたあと、漸くその唇を開放する。激しい口付けに、蘭のひとみは潤み、呼吸は乱れてしまっている。
「じゃ、いくか?」
「え?どこに?」
「俺の部屋」
 再びにっこり笑う新一。
「え・・・でも、まだコーヒー残ってるよ?新一」
「後でも一度入れるから良い」
「あ、でもまだテレビ、服部くんのことやるかも・・・」
 どうにかそこに留まろうとして言ったことだったが、逆効果だったようで・・・新一の目が、すっと細くなる。
「俺は別に見たくねえ」
「あ、そ、そう・・・」
「ったく、しょうがねえなあ」
 と言ったかと思うと、新一は立ち上がり、蘭の体をひょいと横抱きに抱えた。
「きゃっ、し、新一っ」
「往生際がわりいんだよっ。今日はゼッテー離さねえから、覚悟しとけよ?」
 そのまま、自分の部屋へと向かう新一。
 もう、何を言っても無駄である。
 心の中で、蘭はそっと溜息をついた。

 ―――口は災いの元、ってホントだわ・・・。

 蘭はつくづく、もう新一の前で、他の男の名前は言うまい、と思ったのだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 このお話は9999番をゲットして頂いたkkk様のリクエストによる作品です。
ラブラブな新蘭ということで・・・。好き勝手に書かせていただいちゃいました♪
とても楽しかったです~。やっぱりラブラブをかくにはジェラ新だろう。
と、勝手に決め付けてしまいまいた。喜んでいただければ幸いです♪


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だ い す き! ~新蘭快~

Category : novels(コナン)
「ね、アイススケート行かない?」
 と、唐突に蘭が言い出したのは、いつものように新一、快斗と3人で新一の家に集まっていた土曜日の午後のこと。
「「アイススケート?」」
 と異口同音に言ってから、ちらりと顔を見合わせ、そっと火花を散らす。
「うん。トロピカルランドのスケートリンク!あそこで見る花火って、すごくきれいなんだよ!ね、3人で行こうよ!」
 楽しそうに言う蘭が可愛くて、思わず顔がにやけるところだが・・・。
「俺はかまわねえよ?」
 と、新一。が、快斗はというと、なんとなく困ったような顔をしていて・・・
「快斗くん?どうかした?」
 蘭がきょとんとして聞く。
「や、別に・・・俺もかまわねえよ?」
 と言ったものの、その顔はどことなく引きつっていて・・・。新一は、にやりと笑った。
「おめえ、もしかしてスケート出来ねえのか?」
「え?うそお、快斗くん運動神経抜群だもん。出来るよねえ?」
「・・・・・できない・・・・・」
 ボソッと言った快斗の言葉に、一瞬空気が変わる。
 最初に口を開いたのは、新一。意地悪そうな視線を快斗に向け、ニヤニヤと笑っている。
「へ~~~、おめえ出来ねえんだ?んじゃあ、行っても面白くねえだろ?留守番してれば?」
「ちょっと新一!ね、快斗くん、ぜんぜん出来ないの?」
「う・・・まあ・・・」
「そっか・・・。でも、わたしもスケートって苦手なの。むかし新一に教えてもらったんだけど、なかなか上達しなくて・・・。だから、良かったらわたしと一緒に滑ろうよ」
 にっこり笑って言う蘭に、快斗は赤くなり、新一は眉を吊り上げた。
「おい、何言ってんだよ、蘭」
「だって、せっかく3人で行こうと思ったのに・・・。快斗くんが行かないならわたしも行かない」
 そう言い放った蘭に、新一は呆気にとられ、蘭の言葉に感激した快斗は―――
「蘭ちゃん!!」
 がばっと蘭に抱きつき、頬擦りをしたのだ。
「きゃっ!!か、快斗くんっ」
 真っ赤になってじたばたする蘭。
「快斗っ!てめえ、何しやがる!!」
「決めた!!俺もスケートに行くぜ!」
「は!?」
「ホント?快斗くん」
「うん。その代わり、練習に付き合ってくれよな?蘭ちゃんv」
「うん」
 2人が微笑みあいながら楽しそうに話す姿を見て、新一は青筋を立てながら・・・
「―――分かった。じゃあ俺が教えてやる」
 と言った。
「ホント?新一」
 嬉しそうに言う蘭の横で、快斗が顔を引きつらせる。
「ゲ・・・良いって。俺は蘭ちゃんと2人で・・・」
「遠慮すんなって。親切丁寧に教えてやっからよっ」
「良かった!新一のほうが断然上手いから、その方が良いよ!ね、快斗くん」
「そ・・・だな・・・ははは・・・」
 無邪気に微笑む蘭に、引きつった笑いを返すしかない快斗だった・・・。


 「うわあーーーっ」
 ズデーーーン!!
 派手にしりもちをついた快斗を、じと目で睨む新一。
「―――おめえ、やる気あんのかよ?」
「てて・・・っせーな、これでもがんばってんだよっ」
「快斗くんっ、大丈夫?」
 腰を打って座り込んだままの快斗に、蘭が駆け寄る。
「大体、俺の言うとおりにしててなんでそんな転びかたすんだよ?」
「知らねえよっ、新一の言うとおりにしてたら転んじまったんだろ」
「何ィ?」
「ちょっと新一!ね、快斗くん、ちょっと休んだら?何かあったかいものでも飲もうよ」
「蘭、あんまり甘やかすなよ、つけあがるから」
「だって、新一厳しいから・・・。でも、少しづつ上手くなってきてるよ?」
 と、蘭が言うと快斗は照れくさそうに笑った。
「そう?へへ・・・じゃ、ちょっと休んだら蘭ちゃんと一緒に滑ってみようかな」
「おめえ、調子に乗ってんじゃねえぞ」
「ね、新一も一緒に行かない?わたし、飲み物買ってくるから」
 と蘭に微笑まれ、結局3人でリンクから出てベンチで休むことに。

「しっかしなんでこんなもん履いて、あんなふうにすべれんだよ」
 快斗が、リンクで滑っている人を見て言った。
「ホント。わたしもやっぱりまだ怖くって、あんなふうには滑れないなあ。つかまる所が側にないと怖いよね」
「だったら、俺につかまってすべればいいじゃん」
 新一がにやっと笑って言った。蘭はちょっと赤くなり、照れくさそうに
「だって、今日は快斗くんも一緒だし・・・。3人で滑りたいんだもん」
 と言った。そんな蘭を愛しそうに、けれど少し複雑そうな顔で見詰める新一と快斗。
 新一と快斗にとって、誰にも譲れない、大切な存在である蘭。もちろん蘭にとっても2人はとても大切な存在なのだが・・・。いつかは揺らぐときが来るであろう、この微妙な三角関係。蘭がいるからこそもめるのであり、また蘭がいるからこそ上手くやってこれた。
 2人ともまったく相手に譲る気はなかったが、蘭が笑っていてくれるなら三角関係も悪くないか、と思っているのだった。


 ひと休みした後、またリンクに出て滑り始める3人。
 快斗が蘭と2人で滑ろうとしたのだが、新一の
「もう少し練習してからだ!!」
 という言葉に、仕方なく諦め、また新一の特訓が始まったのだ・・・。
 2人が喧々轟々と言い合いながら滑っていくとの後ろから見て、苦笑いする蘭。
 ―――あれで、結構上手くやってるのよね。ふふ、なんか兄弟みたい。
 と、2人が聞いたら即効否定しそうなことを考えていると・・・
「ねえ、きみ可愛いね。1人?」
 いつの間にか蘭の隣で並んで滑っていたらしい背の高い男が話し掛けてきた。
「は?」
 いかにも軽薄そうな絵に描いたようなナンパ男。
「俺、スケート得意なんだ。良かったら教えてやるぜ?」
 ニヤニヤしながら言う男に、蘭は思わず顔を顰めた。
「―――結構です。連れがいますから」
「連れ?そんな、君をほっぽって滑ってる連れなんかどうでも良いじゃん。2人で滑ったほうが楽しいよ。ほら―――」
 と言って、男は強引に蘭の手をとったが・・・
「汚ねえ手で触んじゃねえよっ」
 いきなり低い声が聞こえたかと思うと、男が足を滑らせ、思いっきり転んだ。
「うわあっ、――――いってえ・・・何すんだてめえ!」
 男が怒鳴ると、いつの間にか蘭たちの目の前に立っていた新一は、じろりと男を睨みつけ、
「そりゃあこっちの台詞だ。人の女に手ェ出してんじゃねえよっ」
 と低い声で言い放った。その迫力に、男は一瞬怯んだが、
「な、なんだよ、自分の女なら何で一緒に滑ってねえ―――」
 と、言い返そうとしたところに、ものすごい勢いで突っ込んでくるものが―――
「どけ―――っ、ぶつかるぞォ―――っ!!」
「うわあ―――っ!!」
 
 そして、避ける間もなく、男は見事に突き飛ばされ―――男にぶつかったおかげで止まることの出来た快斗は一つ溜息をつき、
「ふう、やっと止まれたぜ。わりいな」
 と言って、男に向かって不適に笑ったのだった・・・。
「快斗くんっ、大丈夫?」
 蘭が、慌てて快斗に駆け寄る。
「ったく、ろくに滑れもしねえのに突っ込んでくんじゃねえよ」
 新一が言うと、快斗は肩を竦め、
「仕様がねえだろォ?変な男が蘭にちょっかいだしてんのが見えたら、自然に体が動いちまったんだから」
 と言った。
「へ、変な男ってなんだよっ!?」
 と、突き飛ばされたナンパ男が立ち上がりながら言った。
「おめえのことに決まってんだろうが」
 と快斗は言ったが、しりもちをついたままの姿では、あまり迫力がなく・・・
「か、快斗くん、とりあえず立たないと。立てる?手、貸すから・・・」
「あ、わり・・・」
 快斗は、蘭の手につかまって立とうとした。が、スケート靴を履いている快斗は立ち上がるだけでも大変なのだ。それに加えてつかまっているのが女の子の蘭では・・・
「きゃあっ」
「わあっ」
「!!蘭っ」
 快斗は見事にまた転び、それに引っ張られるようにして蘭も倒れ、新一は蘭の手をとろうとして失敗し・・・
 快斗に覆い被さるように倒れた蘭の唇が、蘭を支えようとした快斗の唇に重なったのだった・・・。

 一瞬、その場が静まり返った。ナンパ男も、その光景を呆然と見ていた。
 そして、一番先に口を開いたのはやはり新一で―――
「な――――何してんだ、おめえらっっ!!!」
 蘭を快斗からべりっと引き剥がすと、快斗から隠すようにして蘭を抱きしめた。
 蘭はまだ、突然のことに吃驚して声も出ないようだった。
 新一のあまりの迫力に、周りで様子を見ていた人達やナンパ男は、そそくさとその場から離れて行った。
「なにって・・・」
 快斗も突然のキスに赤い顔をしていたが、青筋を立てて怒っている新一を見て、にやっと笑うと
「不可抗力だぜ?怒るなよ」
 と言った。
「な、何が不可抗力だ!おい蘭!帰るぞ!!」
「え・・・?でも、まだ花火・・・」
 蘭が、まだ顔を赤くしたまま言う。
「そうそう。せっかく来たのに花火見ないで帰るのは勿体ねえだろ?どうしても帰るんだったら新一1人で帰れよ。俺は蘭ちゃんと2人、花火を堪能してくからよ」
「てめ・・・」
「新一、帰っちゃうの?」
 蘭が、不安そうな瞳で、新一を見上げていた。
 それを見た新一は、ふっと肩の力を抜き、安心させるように微笑んで言った。
「おめえを置いて、帰るわけねえだろ?ちゃんといるよ」
「ホント?良かった」
 ホッとしたように笑う蘭の笑顔に見惚れる新一。そんな光景を見て、快斗は面白くなさそうな顔をしていたが・・・
「あのさあ、俺、立てねえんだけど」
 と言った。
「だから、なんだよ?」
「新一、立たせてくんねえ?」
「ああ?何で俺が・・・」
「じゃ、また蘭ちゃんにつかまってもいいか?」
「――――ほら、つかまれよ」
 仕方なく出された新一の手を掴み、やっと立ち上がった快斗。そのまま蘭の前に立ち、その顔を見詰めた。蘭は、真っ赤になって俯く。
「ごめんな、蘭ちゃん」
「う、ううん、別に・・・」
「けど・・・」
 と、快斗は何か言いかけ、にやりと笑った。蘭が不思議そうな顔をして、快斗を見る。
「蘭ちゃんの唇、すげえ美味かったから、癖になりそう。また隙があったら頂いちゃおうかな」
「え・・・・・」
 途端に真っ赤になる蘭。
「快斗っ、てめえ何言ってやがる!」
 と、新一が快斗を蘭から引き剥がそうとしたその時―――

『ひゅううううーーー、ぱあーーーーーんっ!!』

 突然花火の打ち上げが始まり、3人とも動きを止め、夜空を見上げた。
「わあ・・・きれーい!」
 蘭が嬉しそうに声をあげ、瞳を輝かせた。そんな蘭の、花火に照らし出された横顔に、新一と快斗は見惚れる。そして、蘭を挟んでちらりと視線を交わす2人・・・。
 ―――蘭は、わたさねえからな。
 ―――もう、諦めらんねえよ。火がついちまったからな・・・。
 そんな会話が目だけでされていることを、蘭は知らない。
「ね、2人ともちゃんと見てる?すっごくきれいだね!!」
 次々に打ち上げられる花火に、歓声を上げる蘭。
「ああ、見てるよ」
「きれいだな」
 優しく蘭を見つめる2人。

「あのね、わたし・・・」
 蘭が、突然花火の音にかき消されそうな声で言った。
「わたし、2人のことが大好きだよ」
 新一と快斗が、驚いたような顔で同時に蘭を見る。
「ホントに、すごく好き」
「蘭・・・」
「蘭ちゃん・・・」
「でも・・・こんなのってやっぱりずるいし、欲張りだよね・・・」
 花火を見上げていた蘭の大きな瞳から、涙が一粒、零れ落ちた。
 その涙さえも、真珠のように輝いて見え、新一と快斗は暫しその姿に見惚れていた。
「ごめんね、わたし・・・」
「あ、あやまんなよっ」
 とうとう俯いてしまった蘭に、快斗が慌てて言った。新一もとっさに蘭の肩を抱いた。
「おめえが謝ることねえって。俺らが勝手に好きになったんだしっ」
「あ、あのさ、蘭ちゃんまさかとは思うけど・・・」
 快斗の探るような声に、蘭はその顔を上げる。
「え?」
「その・・・どっちも選べないから、もう俺らとは会わないとか、言わねえよな?」
 その言葉に、新一の顔色が変わる。
「!!蘭っ、俺はそんなのゆるさねえぞ!」
「し、新一・・・」
「・・・選べないなら、それでも良い。いや、良かねえんだけど・・・けど、俺はおめえと別れるなん
て考えらんねえから・・・。だから、今のままでも良いから、別れるなんて言うなよな」
「俺も。今更あとに引く気はねえけど、蘭ちゃんを苦しめたくはねえんだ。だから、答えを急ぐ必要はねえよ。3人でいるのも結構楽しいし。蘭ちゃんが笑顔でいてくれるなら、それで良いんだ」
 2人の優しい笑顔に見つめられ、蘭の瞳にまた涙が溢れた。
「新一・・・快斗くん・・・」
「蘭・・・」
 新一はそっと顔を蘭に近付けると、その柔らかそうな頬に唇を寄せた。が―――
「?」
 もうちょっとのところで、新一の唇が当たったのは、快斗の白い手袋で・・・。
「抜け駆けはなしだぜ?新一君」
「てめ・・・」
「俺とおめえは今日から同じ位置に立ったんだぜ?お互いフェアにいこうぜ」
 にやりと笑う快斗を、じと目で睨む新一。
 一方の蘭は・・・
「あっ、見た?今の花火すっごくきれいだったよ!」
 と、すでにその瞳に涙はなく、夜空に咲き乱れる花火を映し出していたのだった。
 そんな蘭を、少し恨みがましい目で見てから・・・2人は同時にぷっと噴き出すと、クックッとのどの奥で笑った。
 蘭はそんな2人を見てぷうっと膨れ、
「もう、何よお、2人とも」
 と言った。
「いや・・・いんだよ、おめえは気にしないで」
「そうそう。蘭ちゃんはそのままでいてくれよ」
 楽しそうに言う2人をきょとんとした顔で見比べる蘭。そんな蘭を見て、また2人は笑っていたが・・・。突然、後ろを通りかかった女性が、快斗にぶつかった。
「うわっ」
 よろける快斗。
「あ、ごめんなさ~い」
 と言ったものの、急いでいたのかそのまま行ってしまう女性。快斗はそのままよろよろとバランスを崩し、倒れそうになったが―――
「快斗くん!」
 とっさに蘭が快斗の手をつかみ、そして蘭の手の上から新一がその手をとり、ぐいっと引っ張って体制を戻した。
「ふ~~~、あっぶねえ・・・」
 新一が溜息をついた。
「新一・・・ありがと・・・」
「また一緒に倒れて、キスなんかされたらたまんねえからな」
「ちぇっ、もうちょいだったのに・・・」
「おめえな・・・」
 2人が睨みあうのを、はらはらしながら見つめる蘭。
「今度来るときは、もっと厳しく特訓してやっから覚悟しとけよ?」
 新一がにやっと笑って言うと、快斗も不敵な笑みを浮かべ、
「ふん、んなこと言っといて俺に抜かされたときに吠え面かくなよ?」
 と言った。
 そのやり取りを聞いていて、蘭はふと思いついたように言った。
「新一・・・快斗くんも・・・また3人で、ここに来てくれるの?」
「仕様がねえからな。それに・・・まあ、今日も割と楽しかったし・・・」
 と新一が照れくさそうに言えば、快斗も鼻の頭をぽりぽり掻いて、
「まあ、な。蘭が一緒ならどこだって良いんだけどさ・・・」
 と言った。
 そんな2人を見て、蘭はとても嬉しそうに、ふわりと微笑んだ。
「ありがと、2人とも・・・。大好きだよ」
 花がほころぶように、とろけそうな笑顔を見せる蘭に2人が平気でいられるはずもなく・・・
「蘭っ」
「蘭ちゃん!」
 2人同時に蘭に抱きつき、その両頬に2人してキスをした。
「/////!!」
 途端に真っ赤になってしまう蘭。
「ちょ、ちょっと、2人ともっ、まだ花火がっ」
「花火より、蘭を見てるほうがいい」
「花火よりも、蘭ちゃんのほうが断然きれいで可愛いぜっ」
「もお~~~~~~/////」
 真っ赤になってじたばたする蘭が可愛くて、余計にくっつく2人。
 
 花火なんかそっちのけではしゃぐ3人はこの上なく幸せそうで・・・。華やかな花火が、そんな3人を応援してくれているかのようだった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 この作品は、9000番をゲットして頂いた後藤うさぎ様のリクエストによるものです。
快蘭新の3人でスケートに行く話・・・と伺ってから、いろいろ考えていたのですが、なかなか考えがまとまらず、結局こんな、スケートはどうでも良いんかいって感じのお話になってしまいました。
書き始めてからすぐに、ラストのほうの蘭ちゃんの告白シーンが書きたくなってしまい・・・。
こんなんでもだいじょぶでしょうか?すごいドキドキ・・・。

 今では懐かしいお話です。
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In always the side ~新蘭~

Category : novels(コナン)
 その日家に向かう新一の足は、軽やかだった。
 ―――もうすぐだ。もうすぐ家に着く!
 1週間ぶりだった。いつものように事件の要請を受け、行った先は北海道の山奥・・・。携帯電話も通じないし、公衆電話もない。これは、早いとこ片付けて、帰らないと。そう思って事件に集中した。
そして、今日やっと事件が解決し、新一はその足で飛行機に乗って帰ってきたのだった。
 
 我が家につき、鍵を出すのももどかしくドアを開け、勢いよく中に入る。
「蘭、湖南、ただいま!!」
 と家中に響くような声で言ったのだが・・・。
 ―――シーン・・・
「あれ?・・・おーい、蘭?湖南?いねえのか?」
 新一は荷物をその場に置き、リビングやキッチン、そして寝室を覗いて見たが、妻と息子の姿はどこにもない。
「?買い物にでも行ってんのか?」
 不思議に思いつつも、疲れていた新一はリビングのソファにどかっと座り、テレビをつけた。
 この1週間、まともにテレビも見ていない。昼間のこの時間は、ワイドショーがやっている。いつもはくだらないワイドショーなど見たりしないのだが、たまたまチャンネルがそれになっていたので、ボーっと見るでもなく眺めていたのだが・・・。
 それは、突然新一の目に飛び込んできた。
「―――さて、次はあの有名な西の名探偵こと服部平次さんに不倫発覚の話題です!」
「は?服部?」
 突然聞こえてきた友人の名前に、新一はパッと体を起こす。
 ―――何言ってんだ?服部の奴はこの間和葉ちゃんと結婚したばっかりじゃねえか。
「服部平次さんといえば、東の名探偵、工藤新一さんと並ぶ名探偵としてその名を知られていますが、先日大阪府警の遠山刑事部長のご令嬢、遠山和葉さんとの入籍を済ませたばかりなんですね。その服部さんが、ある女性と2人でホテルから出てきたところを写真週刊誌に激写されていたんです!!」
 大げさな女性レポーターの声と共に、テレビの画面いっぱいに、「西の名探偵が不倫!?」という文字が躍った。そして、映し出されたモノクロの写真は・・・
「おい・・・うそだろ・・・?」
 テレビに映った、その女性を見て、新一は固まった。平次と並んで楽しそうに笑っているその女性。
 見間違えるはずもない、長い黒髪が美しいその人物は・・・
「この美しい女性はあの東の名探偵、工藤新一さんの奥様、工藤蘭さんなんですねえ。実は工藤新一さんは、現在ある事件の捜査で電波の届かない場所へ行っているそうで、今回はそんな工藤さんの留守の間に2人が密会し、不倫が発覚したものと―――」
「ふ・・・ざけんな―――!!」
 新一は持っていたリモコンをテレビに投げつけ、立ち上がると、わなわなと震える拳を握り締めた。
 ―――不倫?蘭が?服部と?冗談じゃねえっ!んなことあってたまるか!!

『Pulllllll・・・・・』
 突然鳴り出した電話の音に、一瞬びくっとし、弾かれたように走り寄る。
「―――もしもし」
『あ、新一?良かった。帰ってたのね』
 電話の向こうから聞こえてきたのは、今まさにテレビに映っている蘭その人だった。
「蘭!おめえ何してんだよ?今どこにいる!?」
『あのね、今大阪にいるの。実は―――』
「大阪!?どういうことだよ!?おめえ、まさか本当に服部と会ってんのか?」
『え?うん、服部君と一緒だけど・・・あ、もしかして、今テレビ見てるの?』
 電話から聞こえてくる蘭の声は、心なし楽しそうで・・・新一は、疲れから来るイライラも手伝ってカーっと頭に血が上り、気付くと受話器に向かって怒鳴っていた。
「バーロー!!俺のいねえ間に何やってんだよ、おめえは!!服部とホテルに行ったってどういうことだ!!浮気なんて俺はゼッテーゆるさねえぞ!!!」
『・・・新一・・・』
 受話器の向こうから、蘭の低い声が響く。
『あんた・・・わたしが浮気したと思ってるの?』
 怒りを押し殺したような、静かな声。その声に、新一は一瞬詰まったが・・・
「ホ、ホテルから出てきたところ、写真に撮られてんじゃねえか!」
『・・・ばっかじゃないの!?』
「ば―――ばかってなんだよ!?大体なんでおめえ、大阪なんかに行ってんだよ!?服部に会いに行ったんじゃねえのか!?」
『・・・ほんっとに馬鹿ね!!そんなにわたしのことが信じられないなら勝手にしなさいよ!!』
 蘭の怒鳴り声と共に、受話器を思い切り叩きつける音が聞こえ、新一は思わず耳から受話器を離す。
「な―――!!おいっ、蘭!?―――くそっ」
 新一はいまいましげに受話器を戻すとソファに戻り、どかっと座ると腕を組んでテレビを睨みつけた。テレビは、もう他の芸能人の話題にかわっていた。
「あのヤロ・・・なんで俺が馬鹿呼ばわりされなきゃなんね―んだ・・・」
 ―――大体、俺のいねえ間に、何で大阪なんて行ってんだよ?しかも、ホテルなんて・・・一体何の為に行ったっていうんだよ?
 とにかく、蘭のこととなると冷静な判断というものが出来なくなる新一。
 自分の知らない間に蘭が大阪に行ってしまったというだけで、頭に血が上ってしまったのだ。
「―――こうしてても仕様がねえ・・・」
 新一はすくっと立ち上がるとテレビを消し、玄関に向かった。そして玄関に置きっぱなしになっていたバッグを持つと、家を出たのだった・・・。


 「お母さん、どうしたの?」
 怒った表情のまま電話の前に立って腕組している蘭の横に、1人息子の湖南がやってきた。
「あ、湖南。ううん、なんでもないのよ、ごめんね」
 蘭は湖南の手をとると、リビングへ戻った。
 リビングでは平次が蘭のために紅茶を、湖南にココアを入れてくれたところだった。
「おお、どうやった?工藤の奴おったか?」
「うん、いたんだけど・・・」
「?なんや、どうかしたんか?」
「・・・ううん、なんでもないの。紅茶、ありがとう。服部君て結構家庭的なのね」
「ま、お客様やからなァ。湖南も飲みい」
「うん。ありがとう、平次兄ちゃん」
 湖南は平次に礼を言うと、ソファにちょこんと座って、ココアを飲み始めた。
「ホンマ、工藤がちっこくなってた頃と瓜二つやなァ、湖南は。今、ちょうど小学校1年生やろ?」
「うん」
「・・・蘭ちゃん」
「え?何?」
「もしかして、工藤の奴怒ってたんとちゃうか?」
 平次が言うと、蘭は黙って紅茶を飲んだ。
「―――やっぱりな。俺と蘭ちゃんの写真、見たんやろ」
「テレビで、見たみたい。さっき、ワイドショーでちょうどやってたから」
 蘭が苦笑いしながら言うと、平次は呆れたように溜息をついた。
「なるほどなあ。で、蘭ちゃんが説明する前に、逆上して怒鳴り散らしたんやろォ、あのあほは」
「あはは、さすが服部君。よく分かったね」
「あいつはホンマ、蘭ちゃんのこととなるとすうぐ頭に血ィ上りよるからな」
「お母さん、お父さんとけんかしたの?」
 湖南が、その大きな瞳で蘭を見る。
「あ、ううん。そんなんじゃないの」
 蘭がちょっと慌てて言うと、湖南はちょっと考えるようなそぶりを見せ、
「・・・僕、お母さんの味方だよ?お父さんが怒ってたら、僕が守ってあげるね」
 と言って、にっこり笑った。
「ふふ・・・ありがと、湖南」
「頼もしいなあ、湖南は。工藤の奴よりよっぽど頼りになるかも知れんな」
「だって、僕お母さん好きだもん」
 蘭が、湖南を愛しそうに見詰める。そんな蘭の顔に、平次は一瞬見惚れていた。
「母親の顔、やなァ。和葉もそんな顔するようになるんやろか」
「あたしがどうかした?」
 と言って入ってきたのは、青い顔をした和葉で・・・。
「和葉ちゃん!起きて大丈夫なの?」
 蘭が立ち上がって、和葉の側に駆け寄る。
「ありがとお、蘭ちゃん。少しは動かんとね・・・病気とちゃうんやし」
 和葉は蘭に付き添われ、ソファに座った。
「和葉、おまえもなんか飲むか?」
「そうやね。お茶、入れてくれる?」
 和葉が言うと、平次が、よし、と立ち上がってキッチンへ消えた。
「堪忍な、蘭ちゃん。うちのおかんがおったら蘭ちゃんを呼び出すようなこともなかったんやけど・・・」
「気にしないで、和葉ちゃん。わたしが妊娠したときも、和葉ちゃんにいろいろ手伝ってもらったもん。今度はわたしに何かさせて?」
 ふわりと微笑む蘭に、和葉は安心したように笑った。
「ホンマ、蘭ちゃんが来てくれて助かったわ」
「ホンマや。まったく和葉の妊娠がわかってつわりがひどいいうのに、うちのおかんと和葉のおかんは、のんきに海外旅行なんぞ行きよってからに」
 お茶を盆に載せて戻ってきた平次が和葉と並んで座り、お茶を和葉に渡す。
「仕方ないよ。妊娠が分かったの、2人が旅行に行っちゃってからだったんでしょう?」
「そうなんや。その旅行も、1年も前から2人で計画して楽しみにしとったから・・・」
「わざわざ呼び戻したりするのもどうかと思うてな。蘭ちゃんには悪い思うたんやけど・・・」
 珍しく平次が恐縮そうに言うので、蘭は思わずくすくすと笑い出す。
「なんや、俺なんかおかしなこと言うたか?」
「ううん、ごめんね。なんでもないの」
「それより蘭ちゃん、工藤君は大丈夫なんか?あんな写真撮られてしもうて、怒られへんの?」
 心配そうに言う和葉に、平次と蘭は一瞬顔を見合わせた。
「和葉が心配することあらへん。工藤かてあほやないんやから、きっちり説明すれば納得するはずや。なんも言えんようなことしてるんとちゃうんやからな?蘭ちゃん」
「うん、そうよ、和葉ちゃん。わたしたちのことは心配しないで?」
「うん・・・。平次と蘭ちゃんがそう言うんならええけど・・・」
「お父さんなら大丈夫だよ」
 と、突然それまで黙ってココアを飲んでいた湖南が言った。3人が、驚いて湖南を見る。
「お父さん、絶対にお母さんには敵わないんだもの。ちょっとくらい怒ってたって、お母さんの顔見て、お母さんがちょろっとでも涙を見せればすぐに怒ってるのなんか忘れちゃうんだからさ」
「こ、湖南っ」
 湖南の言葉に、蘭が思わず真っ赤になる。
 その光景を見て、平次と和葉は、ぷっと噴き出した。
「くくく、敵わんなあ、湖南には」
「ホンマや。なんか家での様子が目に浮かぶようやねえ」
 蘭はちょっと罰が悪そうな顔をしてコナンのほうを見たが、湖南は我関せずといった感じでコクコクとココアを飲んでいるのだった・・・。


 一方新一は、あれからすぐに東京駅に向かうと大阪行きの新幹線に乗り込んだのだった。
 新幹線が動き出し、窓の外を流れる景色を眺めているうちに、新一もだんだん落ちついてきていた。
 ―――そういや、蘭の奴、電話でなんか言いかけてたみたいだったな。俺、あいつの言うこと何も聞かないで怒鳴っちまって・・・。考えてみりゃあ、あの2人が不倫なんかするはずねえよなあ。ホテルに行ったってのも、きっと何かわけがあるに決まってる。それを俺は・・・
 新一は、自分が情けなくなった。
 ―――蘭が怒ってあたりまえだよな・・・。大体湖南もいるってのにあいつが浮気なんかするわけねえよ。ああ、俺って馬鹿みてえ。こんなんじゃ蘭の奴に愛想つかされるかも・・・
 新一は大きな溜息をつき、がくっと肩を落とした。
 そして、それまでの疲れもあり、いつしか眠りに落ちていったのだった・・・。


 「さ、そろそろ夕飯の支度しようかな。今日は湖南と服部君の好きなハンバーグよ」
 蘭はソファから立ち上がると湖南にウィンクして言った。和葉は自分の部屋へ戻り、休んでいた。
 蘭がキッチンへ行ってしまうと、湖南はチラッと壁の時計に目をやった。
「どうしたんや?湖南」
 平次が気付いて言う。
「ん?もうそろそろかなあと思って・・・」
 と、湖南が言うと平次も時計をチラッと見て、
「ああ、そうやなァ。そろそろやな」
 と言って、にやっと笑った。


 「どうすっかな・・・」
 新一は、大阪駅に着いたものの、これからどうすべきか迷っていた。
 ―――まっすぐ服部の家に行くか?けど、蘭のやつ相当怒ってそうだし、素直に会ってくれるかどうか・・・。手土産持っていくのも、いかにもご機嫌とってるみてえだしな。だからと言って、手ぶらで行くのも・・・。
 ホームに突っ立ったまま考え込んでいる新一。その新一のポケットに入っている携帯が突然鳴り出した。
 ―――!!蘭か!?
 素早くその画面を見ると・・・「服部」の表示・・・。
「・・・もしもし」
 仕方なく、それでももしかしたら蘭かもしれないと思いながら電話に出る。
「あ、お父さん?僕」
「湖南?おめえ、今服部の家にいるのか?蘭・・・お母さん、いるか?」
「うん、いるにはいるけど・・・」
 いつになく、歯切れの悪い湖南。
「何だ、どうした?」
「さっき、お母さんと平次兄ちゃん、一緒に平次兄ちゃんの部屋に入ったまま出てこないんだ」
「な・・・!で、なんでおめえは入っていかねえんだよ?」
「だって、平次兄ちゃんが入っちゃだめだって・・・。大人同士の話だからって。でも、何の話なんだろうね。なんだか、時々お母さんの泣き声みたいなのが聞こえるんだけど・・・」
 ―――な、泣き声だとお!?あのやろう、一体何してやがんだ!!
 また、一気に頭に血が上ってしまった新一。
「湖南!俺が今からそこに行くから!おめえはそこから離れんじゃねえぞ!!」
 そう言い放ち乱暴に電話を切ると、駅を飛び出し、止まっていたタクシーに乗り込んで平次の家に向かったのだった・・・。


 平次と和葉が新居にしているマンションに着くと、エレベーターを待つのももどかしく、階段で5階まで駆け上がり、そのドアをドンドンと力任せに叩いた。
 が、なかなか出て来ない。イライラした新一がノブを回してみると、意外にもドアはすんなりと開いた。
「おいっ!!蘭!!」
 新一は玄関に入ると靴を脱ぎ、ずかずかとその中へ入って行った。
「蘭!!湖南!どこだ!?」
「お父さん?」
 リビングに入ると、湖南がひょいと顔を出した。
「湖南!蘭は!?」
「平次兄ちゃんの部屋だけど・・・お父さんずいぶん早かったね。大阪に来てたの?」
 鋭い湖南の突っ込みに、新一は一瞬たじろぐ。
「そ、そんなことは良いんだよ!服部の部屋は!?」
「あっちだよ」
 湖南が指差した方へ行き、そのドアを叩いた。
「おいっ、蘭!いるのか!?」
「新一!?」
 中から、蘭の驚いた声。
 その声を聞いた途端、新一はかっとなり、勢いよくドアを開けた。
「蘭!!」
 部屋に飛び込んだ新一。
 そこにいたのは・・・呆気にとられ新一を見詰める、蘭・・・。
「新一?どうしてここにいるの?」
「おめえこそなんで服部の部屋に―――って、服部は?」
「服部君なら和葉ちゃんと一緒に寝室にいるけど・・・。ここ、服部君の部屋じゃないわよ?わたしが借りてる客間」
 そう言われ、新一ははっとした。
 ―――湖南の奴・・・!
「・・・で?どうして新一がここにいるの?」
「え、どうしてって、その・・・」
 蘭の目が、すっと細くなる。
「わたしを疑って来たの?浮気の現場を押えようと思って?」
「ち、違う!!そうじゃなくって・・・」
「何よ?」
「・・・ごめん、蘭」
 俯いて、低い声でそう言った新一を、蘭が驚いた目で見詰める。
「疑ったりして、悪かったよ・・・。おめえが、浮気なんかするわけねえのに・・・頭に血が上っちまって・・・ごめん」
「新一・・・」
 蘭は、じっと新一を見詰めていたが、やがてふんわりと、優しく微笑んだ。
「蘭・・・」
 新一はその笑顔に見惚れ、蘭をやさしく抱きしめた。
「・・・あのね、和葉ちゃんに赤ちゃんが出来たのよ」
「え?マジ?」
「ホントよ。それでね、和葉ちゃんつわりがひどくって・・・でも、和葉ちゃんのお母さんと服部君のお母さんて、今海外旅行に行ってていないの。それで、わたしに電話が来たの。お母さんたちが帰ってくるまでの間、家のこととか手伝ってくれないかって」
「そっか・・・。それで・・・」
 新一の胸にあった不安が、見る見るうちに小さくなっていく。
「それでね、湖南も連れてこっちに来たの。それからあの写真だけど」
「ああ」
「あれはね、服部君に依頼があったの。あの日にあのホテルで会うある2人の写真を撮って欲しいってね。出来れば怪しまれないように女性と一緒に来てくれって」
「なるほど。で、和葉ちゃんは具合が悪いから・・・」
「そう。わたしが代わりに行ったの。まさか、あんなところを写真に撮られるなんて思わなかったから吃驚しちゃったけど」
「おめえな・・・」
 のんきにくすくす笑う蘭に、新一は溜息をついた。
「ごめんね?心配かけて」
 蘭は、自分の腕を新一の背中にまわし、きゅっと抱きついた。
「いや・・・俺も、理由も聞かずに怒鳴っちまったし」
「ね、もしかして、あの電話の後すぐに出てきたの?」
「ああ、まあ・・・」
「何か食べた?帰って来てすぐだったんじゃない?」
「は?何でおめえそんなこと・・・」
「だって・・・書き置きとかして来なかったから、1時間に1回くらいは電話してたんだもの」
 恥ずかしそうに言う蘭が可愛くて、新一は蘭を抱く腕に力を込めた。
「し、新一っ、ね、お腹すいてない?何か食べないと・・・」
「いらね・・・胸がいっぱいで食えねえよ」
「もう・・・あのね、夕飯ハンバーグにしようと思ってるの。新一も一緒に食べよう?」
「ああ・・・そういや湖南の奴・・・」
「湖南?」
「ああ。あいつ、俺を騙しやがって・・・。服部の奴だな。湖南にあんな入れ知恵してんのは」
 悔しそうに顔を顰める新一を、蘭は不思議そうに眺めていた・・・。
 ―――けど、あいつの挑発のおかげでここに早く来れたし・・・。ま、良いか。
 新一は心の中で1人納得し、きょとんとした表情の蘭に、素早くキスをした。
 途端に真っ赤になる蘭。結婚してからもまるで変わらない蘭が、愛しくてたまらない。新一は満足そうに微笑むと、蘭の顔を両手で包み込み、もう一度唇を重ねた。今度は深く、甘く、ゆっくりと味わうように・・・。
 ―――今日は、蘭に免じて許してやるとするか・・・。また、蘭の機嫌を損ねたくねえし、な。
 そう心の中で思いつつ、更に深く口付ける新一だった・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 これは8888番をゲットして頂いたアーサー様(現yosirou様)のリクエストによる作品です。
結婚後の新蘭を書くのはこれが初めて。結構難しいですね。ついつい息子の存在を忘れてしまいそうになって・・・。湖南の名前は、変換したときに最初に出る漢字をそのまま使っちゃいました。響き的に好きなんです。そして、これも初めて書く平和。関西弁については、深く突っ込まないでくださいね・・・。でも書いてて楽しかったです。今度ぜひ、平蘭を書いてみたいです。

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You are my treasury. ~快蘭+園~

Category : novels(コナン)
 やっと手に入れた俺だけの宝物。もう誰にも渡さない。そう誓ったはずなのに・・・
「快斗君、おっはよ~!!」
 何でこいつがここにいるんだよ!?
「おはよう、快斗」
 にっこりと超絶に可愛い笑顔を見せてくれたのは毛利蘭。俺の最愛の恋人だ。
 今日は、その蘭との記念すべき初デートだっていうのに!何でこいつ・・・鈴木園子が蘭の隣にいるんだ?
「あらァ、なんでこいつがここにいるんだって言わんばかりの顔ね」
 園子が、にやりと意地の悪い笑みを浮かべる。
「はは・・・いや、別に・・・」
「ごめんね、快斗。今日、園子京極さんとデートのはずだったんだけど、京極さん急に来れなくなっちゃったらしくて・・・」
「お世話になってる空手の先生が怪我して、臨時で空手教室の子供たちに教えることになったのよ。仕方ないわよね。真さん、そういうこと断れるタイプじゃないし」
「それで、もし良かったら一緒にって、誘ったの。大勢のほうが楽しいし」
 蘭が屈託なく笑う。
 ・・・俺は、2人きりのほうが良かったんだけど・・・でも、蘭のこういうお人好しのところも好きだし。仕様がねえな。
「トロピカルランドに来るのって久しぶり!そういえば、蘭と中学生のとき来たよね」
「うん。新しいアトラクション、出来たんだよね。楽しみ♪」
 蘭と園子が楽しそうに話しながら、先を歩く。
 ・・・別に良いんだけどよ。今日は俺と蘭のデートだってこと、忘れてね―か・・・?
 そんなことを思いながら。それでも表情には出さずに2人の少し後を歩き、トロピカルランドに向かう。
 ―――思えばここまで長い道のりだったよな。蘭と園子の通う女子高と、俺の通う男子校は隣同士。蘭の事を知ったのは、同じクラスのやろうどもが騒いでるのを聞いてから。休み時間の度に隣が見える廊下に鈴なりになっていた奴ら。最初は全然興味なんかなかったんだ。女の子に興味がなかったわけじゃねえけど、アイドルに群がる一般人って感じでいやだった。それが、ある日そいつらの隙間から垣間見えた人物を見たことで、変わっちまった。さらさらの長い髪を揺らしながら歩く少女。ふわりとした笑顔はまるで花のようで・・・。
「おいっ、あれ、だれ?」
「ああ?なんだよ、快斗おめえも彼女に目え付けてんのか?彼女は競争率高いぜ?」
「んなこと良いから教えろよ!」
「毛利蘭。1年生だよ。可愛いだろ?」
 毛利蘭・・・。その名前は俺の胸に深く刻まれた。それからというもの、どうにかして蘭に近づこうと、偶然を装い待ち伏せしたり、ストーカーのように尾行してみたり・・・。でも、なかなか話し掛けることが出来なかったんだ。
 きっかけはいつものように蘭の後をつけていた時。一瞬の隙をつき、蘭に襲い掛かったふとどきモノがいたんだ。それを俺が助け・・・ようとしたのだが。いや、最初に一発殴ってやったのは俺だけど、その後また起き上がったそいつを倒したのは、蘭本人だった。
「ありがとう、助けてくれて」
 呆気に取られていた俺に、蘭はそう言ってふわりと微笑んだ。
 ―――そういえば、彼女空手やってんだっけ・・・。


 あれから3ヶ月・・・漸く、友達から恋人へ昇格することが出来た俺。だけど蘭の人気は半端じゃなかったから、俺はずいぶんいやみを言われたりいやがらせをされたりした。が、そんなことでめげるような俺ではない!はずなんだが・・・。俺は忘れていたんだ。蘭は男だけではなく、女の子にも人気があるってことを・・・。特にこの鈴木園子は、いつも蘭にべったりだ。京極真という恋人がいるにもかかわらず、蘭に近づく男どもを追い払うことにかけちゃあ右に出るものはいないってぐらいだ。おかげで俺も今まで何度邪魔されたことか・・・。
「快斗?どうかした?」
 ちょっと後れて歩いていた俺を、蘭がくりんと振り返って見た。
「あ、なんでもねえよ」
 慌てて蘭の隣に行く。園子がじろりと俺を睨んだが、ここは気付かない振りをしておく。

 トロピカルランドにつき、俺たちは次々とアトラクションを楽しんだ。横に引っ付いている園子は邪魔だったが、蘭の楽しそうな笑顔を見られただけでも来た甲斐があったってもんだ。
 俺がそんな蘭に見惚れていると、園子が溜息をついた。
「?どしたの?園子」
 蘭がきょとんとして聞く。
「やってらんないなと思ったのよ。あんた達すっかり2人の世界なんだもん」
「え・・・」
 蘭が、ポッと頬を赤らめた。
「蘭が、好きな人が出来たって言ったときはびっくりしたけどさ、人の良い蘭のことだから騙されやしないかって心配だったのよね」
「そ、園子!」
 ますます顔を赤くする蘭。
 ―――好きな人って・・・俺のこと、だよな・・・?うわ、すっげー嬉しいっ。蘭、俺のこと園子にちゃんと言ってたのかあ・・・。
 俺が感動して蘭をじっと見詰めていると、園子は呆れたように俺を見た。
「でも、その相手がこうも蘭にべた惚れだとは・・・」
「な、なんだよ」
「騙される心配はなさそうだけど・・・違う意味で心配だわ」
「どういう意味だよ?」
「自分で気付いてないの?快斗君、さっきから蘭のこと見てる男どもを睨みまくってるじゃない」
 ―――そ、そうだっけ・・・?
 俺は、ちょっと今までの自分の行動を思い起こしてみる。
 ・・・確かに、そうだったかも・・・けど、それも仕方ないだろ?横に俺がいるっつーのに、蘭のことを見てく奴らが多すぎるんだよ。
「蘭は俺のものって感じがみえみえなのよ。言っとくけど、蘭はその辺すっごく鈍感だからね?」
 ―――それはわかってる。付き合う前、どんなに好きだってことを態度で示しても、気付かなかったもんな・・・。
「ちょっと、園子・・・」
 蘭が不本意そうに唇を尖らす。
「本当のことでしょ?中学の時だって、空手部の先輩もサッカー部やバスケ部のエースも、学校1の秀才君も、人気ナンバー1のイケメンもみ―んな蘭に気があったのに、あんたってば全然気付かないんだから・・・」
 ―――ちょっと待て。そんなにいたのかよ?
「あれは、園子の思い過ごしだよ。みんなそんなこと言ってなかったし・・・」
「・・・気付いてなかったのは、あんただけよ・・・。快斗君もね、気を付けないと気付いたらただの友達に戻ってたなんてことになるかもよ?」
 ―――げっ、なんつー不吉なことを・・・
「そんなことないもん!」
 園子の言葉に、蘭が珍しく大きな声で反論した。俺たちが吃驚して蘭を見ると、はっとしたように赤くなり、
「あ・・・。えと、だから・・・わたしは、快斗のことただの友達なんて、思ってないから・・・」
 と小さな声で言い、下を向いてしまった。
 ―――か、可愛いっ、可愛すぎるっ。ああ、抱きしめてえ・・・
「・・・今、抱きしめたいとか思ったでしょ?快斗君」
 園子が、俺の心の中を読んだかのようににやりと笑って言った。
「蘭にぞっこんなのは分かるけど、あんまり束縛しないようにしてよね?」
「わかってるよ、んなこと」
「どうだかねえ・・・。でも、蘭は女子高だから、学校にいる間は安心とか思ってるでしょう」
「・・・別に」
 ちょっと図星を指され、視線をそらす。・・・やべ、俺、完全に顔に出てんな。
「ふ~ん・・・?でもね、安心するのは早いって知ってた?」
 その言葉に、思わずぴたっと動きを止める。
「・・・どういう意味だよ?」
「何のこと?園子」
 蘭が、きょとんと首を傾げて言う。
「蘭は気付いてないだろうけど。あのね、うちの校医の先生って男の人なのよ」
「新出先生のこと?」
「そ。その新出先生って、結構若くて格好良いんだけど、わたしの勘じゃあ彼、蘭に気があると思うのよ」
「ええ?そんなことないよォ」
 蘭が呆れたように言う。そんな蘭を園子は横目で見て、
「快斗君が見たら、きっとわたしの言ってることが正しいって思うわよ?」
「だって・・・」
「あのね、新出先生って毎日必ずうちの教室の前通るし、外で体育の授業があるときは保健室の窓からちらちら外見てるし、大体廊下で会った時に蘭に向けるあの笑顔!あれは絶対蘭に気があるわよ」
 園子の力説に、蘭は思わずあとずさる。
「おい、それ本当か?」
 黙って聞いていた快斗言うと、園子はにやりと笑い、
「もちろん。蘭の大親友の園子様が言ってんだから間違いないって」
 と言った。
「それから今うちのクラスに来てる、教育実習の大学生も、蘭狙いだと思うわよ?」
「ええ?嘘お」
「嘘じゃないって。ったく蘭は鈍いんだから。あの大学生と新出先生、目が合うと火花散ってるわよ?」
 それを聞いて、快斗の顔が引きつる。
 ―――なんだよ、それ?保健の校医に教育実習生だと?実習生はともかく・・・もし蘭の具合が悪くなって1人で保健室なんか行くことになったらどうすんだ?めちゃめちゃあぶねえじゃねえか!!
 そんな快斗の心理を読み取ったのか、園子が不敵な笑みを浮かべ、快斗を見る。
「ふふふ・・・今すっごく焦ってるでしょう?快斗君」
「あのなあ・・・」
「言っとくけど、今の話は全部本当だからね?いくら快斗君でも学校の中までは入って来れないもんねえ。どうする?」
 完璧に面白がっている・・・。
「どうするって・・・なんか方法があるのかよ?」
「そうねえ。ど―――してもって言うのなら、この園子様が協力してあげても良いけどォ?」
 ―――こ、こいつ・・・
「でも、ただじゃねえ・・・」
「~~~どうすりゃ良いんだよっ!?」
 快斗の言葉に、園子はしてやったりと満足そうに微笑んだ。
「学校の側に、蘭とわたしが良く行くおいしいケーキ屋さんがあるのよ」
「・・・で?それ奢れば良いのか?」
「そう。そこ喫茶店になってるから、お茶つきでね。それを毎週金曜日に」
「ま、毎週!?」
「あら、当然でしょう?蘭を狼の魔の手から守るんだもの、それくらい。何よ、嫌なの?」
「嫌ってわけじゃあ・・・」
「・・・そう言えば、2年の受け持ちの数学の先生も蘭に気があるって話だったなあ・・・」
 園子が、思い出すように遠い目をする。
 ―――っくそ―――!!
「わーったよ!!」
「やったvvさっすが快斗君!良かったね、蘭。毎週あそこのケーキ食べれるわよ」
「もう、園子ってば・・・。快斗?」
「え?」
「そんなに心配しなくっても、わたしは他の男の人を好きになったりしないよ?」
 頬を桜色に染めながら、上目遣いに言う蘭。
 ――――っっっ!もう限界だっ!
「蘭!!」
 快斗は、たまらず蘭を抱きしめた。
「ちょ、ちょっと快斗!」
 蘭が真っ赤になって離れようとするが、快斗はますます腕に力を込め、蘭をしっかりと抱きこんだ。
「蘭のこと、信じてるよ。けど、相手がどんな手を使ってくるかわかんねえからな。大丈夫、ケーキぐらい蘭のためならいくらだって奢ってやる!」
「―――その言葉、確かに聞いたわよ?」
 ―――げっ、こいつがいるの忘れてた!
「その顔・・・わたしの存在、忘れてたわね」
「い、いやあ・・・」
「ふっ・・・今日はこの辺で帰ってあげようかと思ったんだけど・・・。気が変わったわ。このまま夜までばっちり付き合ってあげる」 
 にっこりと笑う園子に、快斗はさーっと青くなる。
「え・・・べ、別に無理に付き合ってくれなくても・・・」
 と弱々しく抵抗してみるが、
「あら、遠慮しないで?時間はたーっぷりあるから」
「・・・・・」
「さ、次のアトラクション行こうか。ねえ、蘭、帰りに新しく出来たレストラン行ってみない?この間姉貴が友達と行ったらしいんだけど、なかなかおいしかったって話よ」
「ほんと?わたしも行ってみたいと思ってたんだァ」
「じゃ、決まり!快斗君もいいわよね?嫌なら先に帰っても良いけど?」
「・・・行かせて頂きます」
「よろしい。もちろん快斗君の奢りよね」
「園子!快斗、無理しないで?」
「・・・いや、いいよ」
 もうこうなったらやけくそである。
 蘭にとって園子が親友であることは間違いないのだ。その園子を邪見に出来るはずもなく、また園子もそれを十分に分かっていてやっているのだから・・・。
 楽しそうに次のアトラクションに向かう2人の後姿を見つめながら、本当のライバルは、保健の校医でも教育実習生でもなく、鈴木園子その人かもしれないと思わずにはいられない快斗だった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 このお話は8000番をゲットしてくださったちり様のリクエストによる作品です。園子にからかわれる快斗ということで・・・。難しかったのは快斗。園子にからかわれて慌てている様子というのがなかなか想像できなくて・・・。その役目はいつも新一だったもんね。でも、こういうのも良いなあ。
園子対快斗!また書いてみたい組み合わせかも。というわけで、喜んでいただければ嬉しいですvv

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ライバル ~新蘭←志~

Category : novels(コナン)
 「なんか用かよ?」
 その日突然現れた宮野志保に、新一はあからさまに嫌そうな顔をした。
「あら、ご挨拶ね。博士に頼まれたのよ。はい、これ」
 そう言って、志保は新一に紙袋を手渡した。新一はそれを受け取り、中身を確認する。
「サンキュー。・・・って、何人ンちじろじろ見てんだよ?」
「・・・今日は、蘭さん来てないの?」
「ああ?蘭?これから来ると思うけど・・・。なんだよ?蘭に用があんのか?」
「いえ、そういうわけじゃないわ・・・」
 珍しく歯切れの悪い志保を、新一が訝しげに見る。
「・・・ちょっと、工藤君に話があるんだけど、良いかしら?」
「別にいいけど・・・」
 不思議に思いながらも、新一は志保をリビングに通し、コーヒーを入れてやった。

「で?なんなんだよ?」
「・・・わたしね、蘭さんのことを好きになってしまったの」
「はあ?」
 突然言われた突拍子もない台詞に、新一が目を丸くし、間抜けな声を出す。
「何言ってんだ?おめえ」
 志保が蘭のことを気に入っているのは新一も知っている。この愛想のない女性が、唯一蘭にはやさしい笑顔を向けるのだ(阿笠博士や少年探偵団は別)。でも、なぜ今更そんなことを新一に言いにきたのか、さっぱりわけがわからなかった。
 志保は、一口コーヒーを飲み、そっと息を吐き出した。
「―――蘭さんのいれてくれたコーヒーのほうがおいしいわね」
「悪かったな、美味くなくって。んで、結局おめえは何が言いたいんだよ?」
「だから言ってるじゃない。わたし、蘭さんが好きなのよ」
 その言葉に、微妙な含みを感じた新一。
「・・・おい、それ、どういう意味だ?まさか、おめえの好きってのは・・・」
「やっと気付いたの?相変わらずその手のことには疎いのね」
 冷めた目で新一を一瞥した志保。そしてふっと笑い、視線をそらすと、今度はうっとりしたような表情で遠くを見つめた。
「蘭さんて、きれいよね。その姿だけじゃなく、中身も・・・。心の美しさって表面にも出てくるものなのね。彼女を見てると自分の心まできれいになっていくような・・・浄化されていくような気がするわ」
「ちょ、ちょっとまてよっ、あいつは女だぜ?」
「何あたりまえのこと言ってるのよ?」
 馬鹿じゃないの。とでも言いたそうな冷めた目を新一に向ける。
「そ、それに、あいつには俺が―――!!」
「・・・でも、事件が起きると彼女をほったらかして行っちゃうじゃない」
「そ、それは・・・」
「ホント、気の毒よね。いつもほったらかしにされて。この間、あなたが行ってしまった後に偶然彼女と会ったのよ」
「蘭に?」
「ええ。彼女、寂しいくせにちっともそんなそぶり見せずに・・・わたしには分かったけど。あんまり気の毒だったからお茶に誘ったのよ。すごく喜んでくれたわ。・・・それから、あなたが事件で呼び出されて行ってしまった時はわたしのところに来てくれるようになったのよ」
「は?ちょっと待てよ。俺はそんな話聞いてねえぞ?」
「あら、そう?ま、とにかくそういうことだから」
「そういうことってどういうことだよ!?」
「わたしは、あなたのライバルになるってことかしら?」
「何勝手なこと言ってんだよ!?俺とあいつは付き合ってるんだぞ!?」
「でも最近は、あなたよりもわたしといる時間のほうが長いんじゃない?」
「!!」
「蘭さんもわたしといると安心できるって言ってたわよ?」
「!それでも、あいつは俺のもんだ!!」
「新一ィ?何大きな声出してんのォ?」
 2人が話に夢中になっているうちに、蘭がやってきていたのだ。
「蘭!」
「なあに?あ、志保さん。来てたんだァ」
 蘭が、志保を見て嬉しそうに笑う。それを見て、新一の顔色がさっと変わる。
「おい、蘭」
「何よォ、そんな怖い顔して」
「おめえ、ここんとこ、俺がいないときに志保と会ってたって本当か?」
「え?」
 蘭がきょとんとして新一を見る。
「うん。言ってなかったっけ?新一最近忙しそうだったもんね。あのね、志保さんて紅茶いれるのすごくうまいのよ?いつもわたしの好きなお茶入れてくれるの。だからわたしもお菓子とか作って持って行くの。あ、今日も作ってきたから3人で食べよう?」
 のんきににこにこと笑顔で言いながら、お菓子の入った箱をテーブルの上に置く。
「今、コーヒーいれ・・・あれ?もう飲んでたんだ」
「でも、もう冷めてしまったみたいだから、もう1度いれてもらえるかしら?」
「うん。じゃあ用意してくるね」
 にっこりと微笑んで行ってしまった蘭を、うっとりとした目で見つめる志保。
「・・・んな目であいつを見てんじゃねえよ」
 新一が志保をじろりと睨んで言う。
「あら、どんな目で見ようとわたしの勝手でしょう?」
 一転、冷めた目で新一を見る。
「言っとくけど、俺はあいつを渡す気はねえからな」
「ふふ、そう言うと思ってたわ。今のところは彼女もあなたが1番好きみたいだから仕方ないけど・・・。でも、これからどうなるか分からないわよね?人の心なんて変わっていくものだし?」
「!ざけんなっ、あいつは、そんなに簡単に心変わりするような女じゃねえ!」
 思わずかっとなりテーブルを思い切り叩いた新一。その音に吃驚した蘭が、キッチンから飛び出してきた。
「どうしたの?新一。今の音、何?」
「なんでもないのよ、蘭さん。ちょっと小虫が飛んでたから叩いただけよ」
 志保がしれっと答えると、蘭も安心したのか、またキッチンへと戻って行った。
「まったく・・・彼女のこととなると、すぐに熱くなるのね」
 志保が呆れたように言うと、新一はちょっとばつが悪そうな顔をして、ぷいっと顔を背けた。

「おまたせ~」
 蘭が3人分の飲み物を盆に乗せ、リビングにやってきた。
「ありがとう、蘭さん」
「今日はね、久しぶりにレモンパイを焼いてきたの。新一が家にいるなんて久しぶりだし。志保さんは好きかなァ?」
「蘭さんの作ったものなら何でも好きよ」
「えへ、ありがと」
 蘭はちょっと照れたように笑い、レモンパイに包丁を入れた。さくっとおいしそうな音を立ててレモンパイが切られていくのを、新一は黙って見ていた。
「ハイ、どうぞ」
 お皿に切り分け2人の前に置くと、蘭も椅子に座った。
「?どうしたの?新一、食べないの?」
 レモンパイを前にじっと動かずにいた新一に、蘭が声をかけた。
「・・・いや、食うけど・・・」
「どうしたの?食欲ないの?どこか具合悪い?」
 心配そうに新一の顔を覗き込んでくる蘭。そんな蘭を見て、新一は少し気が抜けたようにくすっと笑った。
「何でもねえよ、大丈夫。さ、食おうぜ」
 そう言って、レモンパイを食べだした新一はいつもの新一で・・・蘭はちょっと不思議そうな顔をしていたが、すぐに自分も食べ始めた。それを見ていた志保は、何か思いついた様子で、そっとほくそえんだのだった・・・。

 レモンパイを食べながら、他愛のない話をしていた3人だったが・・・
「・・・工藤君」
「あん?」
「ちょっと本を借りたいんだけど、いいかしら?」
「ああ、いいけど・・・」
「この紙に書いてあるものなんだけど、あなたの書斎、たくさん本があって分からないから取ってきてくださる?」
 と言って、志保はポケットから折りたたんだ紙を出して、新一に渡した。
「俺が行くのかよ?・・・まあいいや、ちょっと待ってろよ」
 新一は一瞬嫌そうな顔をしたが、蘭の手前そんなに嫌がるわけにもいかず、しぶしぶ席を立ち、部屋を出て行った。それを見送って、志保はにやっと笑った。
「志保さん、もうひとつ食べない?」
 志保の様子にまったく気付いていない蘭が、無邪気に言った。志保はそんな蘭を愛しそうに見つめ、
「そうね、頂くわ」
 と言った。


「ったく、何で俺があいつのために本なんか探さなくちゃならねえんだか・・・」
 新一はぶつぶつ文句を言いつつも、紙に書いてあった5冊の本を探して、持って行くことにしたのだが・・・。
 リビングへ入ろうとした瞬間、その光景は目に飛び込んできた。
 一瞬、見間違いかと思った。何でそんなことになっているのか・・・まるっきりわけがわからなかった。その光景とは・・・
「―――志保!!てめえ何してんだよ!!」
 新一はずかずかと部屋に入っていくと、蘭の肩を掴み、ぐいっと自分のほうへ引き寄せた。
 蘭は、呆然とした表情で、目を見開いていた。それはそうだろう。志保が蘭に何をしていたか。新一の位置からははっきり見えてしまったのだ。志保が蘭の唇にキスしている姿が・・・。
「あら、どうしたの?工藤君」
「どうしたのじゃねえだろ!てめえ、俺の蘭に何しやがる!!」
「何って・・・口に付いていたレモンパイの欠片を取ってあげたんだけど?ねえ、蘭さん」
「え?あ・・・うん・・・」
 蘭はまだ呆けた表情のまま、頷いた。確かに「お口に、レモンパイが付いているわよ?取ってあげるわ」とは言われた。でも、まさか自分の口で取るとは誰も思うまい・・・。
「~~~とにかく、そこにある本持って、さっさと帰れよ!!」
 新一が、真っ赤な顔で怒鳴るのを、志保は呆れたように見返した。
「そんなに怒鳴らなくても帰るわよ。いやあね、嫉妬深い男って」
「な!!!」
「蘭さん、工藤君のことが嫌になったらいつでもわたしのところに来なさいね。いつでも待ってるわ」
 志保が蘭に満面の笑みを向けると、蘭は一瞬間を置いてから、慌てたように、
「え?あ、は、はい」
 と言ったので、今度は新一の顔は青くなり・・・
「―――志保、いいかげんにしろよ。蘭はおめえにはわたさねえっつってんだろ」
 と低い声で言った。その目は、かなり本気で怒っていた。志保は肩を竦め、
「ハイハイ、怖いわね、ホント。じゃあね、蘭さん、また今度」
 と言って、最後に優しい笑みを蘭に向けると、何事もなかったかのように、悠々と部屋を出て行ったのだった。
 そのまま玄関を出ようとして・・・ふと動きを止めると、くるっと向き直り、足音を殺してリビングの部屋を覗いて見た。
 リビングの中では、新一が蘭を抱きしめ、キスをしているところだった。それを見て志保はふっと笑うと、また玄関へ行き、今度は本当に靴を履いて外に出たのだった・・・。

「蘭、あいつには気をつけろよ。何考えてんだか・・・」
 甘く、長いキスの後、新一は蘭の腰に手をまわしたまま言った。
「でも・・・志保さん、いい人よ?」
「あんな事する奴がか?」
「あれは、その、唇に付いたレモンパイを・・・」
「ほんとにそんな理由のわけねえだろ!?いいか、とにかくもうあいつのとこには行くな!―――って、何笑ってんだよ、蘭?」
 新一の顔を目を丸くして見ていた蘭が、急にクスクスと笑いだしたのを見て、新一はむっとしたように言った。
「ゴメ・・・志保さんの言ったとおりだなって・・・」
「ああ?あいつに何言われたんだよ!?」
「ふふ・・・あのね、たまには新一にも心配させたほうが良いって・・・。わたしが他の人といるところ見たら、きっと血相変えて飛んでくるわよって言われたの。わたしは、新一はそんなことないだろうって思ったんだけど・・・」
 蘭の言葉に、新一はまた怒りがこみ上げる。もちろん、志保に対してだ。
「あいつ~~~、わざとやりやがったな」
「でも、わたしはうれしかったよ?新一がわたしのこと、ちゃんと想ってくれてるんだってことがわかって」
 恥ずかしそうに頬を赤らめて言う蘭。新一は蘭の肩を引き寄せ、強く抱きしめた。
「―――俺は、いつだって蘭のこと想ってるよ。・・・ごめんな、事件で放っといてばっかりで・・・。でも、俺は蘭のことを忘れたことなんてないから・・・。これからもずっと、おめえだけを想ってるから」
「新一・・・」
「だから、おめえも俺のことだけ、想っててくれよ」
「・・・うん・・・」
 蘭は嬉しくて、新一の胸に頬を摺り寄せた。そんな蘭が愛しくて、抱く腕に力を込めながら・・・
 ―――志保のヤロォ・・・今度やったらゼッテーゆるさねえ・・・
 と思う新一だった・・・。


「たまには、あのくらいの罰を与えてもいいでしょう。普段蘭さんをほったらかしにしてるんですからね。もっと危機感を持ってもらわないと、他の男に奪われてからでは遅いのよ?・・・最も、あの蘭さんが工藤君以外の人を好きになるとは思えないけれど・・・。ホント、羨ましい男ね」
 と、志保は帰り道を歩きながら呟いた。
 そしてふっと小さく溜息をつき、結局工藤君においしい思いさせてないかしら?今度は蘭さんと2人で旅行にでも行ってやろうかしら・・・。などと思いながら、不敵な笑みを浮かべたのだった・・・。

 ―――工藤君、覚悟なさい。油断していたらすぐに蘭さんを奪いにいっちゃうわよ?―――


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 これは7000番をゲットされたアゲハ苺様のリクエストによる作品です。
志保ちゃんメインのお話はこれが初めて。結構難しいものですねえ。口調とか、しぐさとか、志保ちゃんらしくかけているでしょうか。蘭ちゃんもてるお話は書いていて楽しいです。そしてジェラ新。このサイトの中の新一は常に余裕ないです。良いんです、蘭ちゃんさえ良ければ(^^)
というわけで、楽しんでいただけたでしょうか?

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